説明

車両の駆動システム

【課題】複数のコンデンサを冷却するシステムを最適化した車両の駆動システムを提供する。
【解決手段】車両の駆動システムは、バッテリ900と、バッテリ900からの電力を用いて車両を駆動、または車両に駆動されるモータジェネレータMG1,MG2と、モータジェネレータMG1,MG2と一体化され、インバータ720,730を有し、モータジェネレータMG2を制御するPCU700と、インバータ720,730を冷却する冷却水1350と、モータジェネレータMG1,MG2を冷却するオイル1050とを備える。PCU700は、平滑コンデンサC2および平滑コンデンサC2に対して電気的にバッテリ900に近い側に設けられるフィルタコンデンサC1を含む。ここで、平滑コンデンサC2は冷却水1350により冷却され、フィルタコンデンサC1はオイル1050により冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動システムに関し、特に、回転電機と該回転電機の動作を制御する電気機器とが一体化された車両の駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機と該回転電機に電気的に接続された電気機器とが一体化された構造を有する車両用の駆動装置が従来から知られている。
【0003】
たとえば、特開2001−119898号公報(特許文献1)では、インバータケースを駆動装置ケースに対して一体化し、車両への搭載性を向上させた車両用駆動装置が記載されている。
【0004】
同様に、特開2001−322439号公報(特許文献2)、特開平10−248198号公報(特許文献3)および特開2004−343845号公報(特許文献4)などにおいて、回転電機であるモータと電気機器であるインバータとを一体化した車両用駆動装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−119898号公報
【特許文献2】特開2001−322439号公報
【特許文献3】特開平10−248198号公報
【特許文献4】特開2004−343845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転電機を制御する電気機器に複数のコンデンサが設けられる場合、複数のコンデンサの発熱状態が異なる場合にも、これらのコンデンサを冷却するシステムを最適化することが望まれる。また、上記とは異なる観点では、複数のコンデンサに繋がれる配線を最適化することで、該配線を短くして駆動システムの車両への搭載性を向上させることが望まれる。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4では、複数のコンデンサの冷却システムや電気的接続構造について具体的に開示されていないため、上記の要請を必ずしも十分に満たすことができない。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものである。本発明の1つの目的は、複数のコンデンサを冷却するシステムを最適化した車両の駆動システムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、複数のコンデンサに接続される配線を短くして搭載性を向上させた車両の駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両の駆動システムは、1つの局面では、電源と、電源からの電力を用いて車両を駆動、または車両に駆動される回転電機と、回転電機と一体化され、インバータを有し、該回転電機を制御する電気機器と、インバータを冷却する第1の冷媒と、回転電機を冷却する第2の冷媒とを備え、電気機器は、第1コンデンサおよび該第1コンデンサに対して電気的に電源に近い側に設けられる第2コンデンサを含み、第1と第2コンデンサの一方は第1の冷媒により冷却され、第1と第2コンデンサの他方は第2の冷媒により冷却される。
【0009】
上記構成によれば、第1と第2コンデンサを異なる冷媒により冷却することで、第1と第2コンデンサで発熱状況が異なる場合、たとえば、第1と第2コンデンサの一方の発熱量が顕著に大きくなった場合でも、システム全体に及ぼす影響を緩和することができる。
【0010】
1つの局面では、上記車両の駆動システムは、インバータに取付けられる冷却器をさらに備え、第1の冷媒は冷却器内を流れる冷媒を含む。
【0011】
他の局面では、上記車両の駆動システムは、回転電機を収納するハウジングをさらに備え、第2の冷媒はハウジング内に貯留されたオイルを含む。
【0012】
さらに他の局面では、上記車両の駆動システムは、インバータに取付けられる冷却器と、回転電機を収納するハウジングとをさらに備え、第1の冷媒は冷却器内を流れる冷媒を含み、第2の冷媒はハウジング内に貯留されたオイルを含み、第1コンデンサは第2コンデンサよりも大きな容量を有し、第1コンデンサは第1の冷媒により冷却され、第2コンデンサは第2の冷媒により冷却される。
【0013】
1つの例として、上述した車両の駆動システムにおいて、電気機器は、直流電圧の昇圧または降圧を行なうコンバータを有し、第1コンデンサは、電気的にインバータと並列に接続され、第2コンデンサは、電気的に電源とコンバータとの間に設けられる。
【0014】
本発明に係る車両の駆動システムは、他の局面では、電源と、電源からの電力を用いて車両を駆動、または車両に駆動される回転電機と、回転電機と一体化され、該回転電機を制御する電気機器とを備え、電気機器は、第1コンデンサおよび該第1コンデンサに対して電気的に電源に近い側に設けられる第2コンデンサを含み、回転電機は車両前方に位置するエンジンルーム内に設けられ、電源は回転電機よりも車両後方側に設けられ、第2コンデンサは第1コンデンサよりも車両後方側に配置される。
【0015】
上記構成によれば、第1コンデンサに対して電気的に電源に近い側に設けられる第2コンデンサを、第1コンデンサに対して車両の後方側に設けることにより、電源と第2コンデンサとを繋ぐ配線を短くすることができるので、駆動システムの車両への搭載性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1つの局面では、車両の駆動システムにおいて、複数のコンデンサを冷却するシステムを最適化することができる。また、他の局面では、車両の駆動システムにおいて、複数のコンデンサに接続される配線を短くして搭載性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0018】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の構成を適宜組合わせることは、当初から予定されている。
【0019】
図1は、本発明の1つの実施の形態に係る車両の駆動システムを有するハイブリッド車両の構成を示す概略図である。
【0020】
図1を参照して、ハイブリッド車両1は、エンジン100と、モータジェネレータ200と、動力分割機構300と、ディファレンシャル機構400と、ドライブシャフト500と、前輪である駆動輪600L,600Rと、PCU(Power Control Unit)700と、ケーブル800と、バッテリ900とを備える。
【0021】
図1に示すように、エンジン100と、モータジェネレータ200と、動力分割機構300と、PCU700とは、エンジンルーム2内に配設される。モータジェネレータ200とPCU700とは、ケーブル800Aにより接続される。PCU700とバッテリ900とは、ケーブル800Bにより接続される。また、エンジン100およびモータジェネレータ200からなる動力出力装置は、動力分割機構300および減速機構を介してディファレンシャル機構400に連結されている。ディファレンシャル機構400は、ドライブシャフト500を介して駆動輪600L,600Rに連結されている。
【0022】
モータジェネレータ200は、3相交流同期電動発電機であって、PCU700から受ける交流電力によって駆動力を発生する。また、モータジェネレータ200は、ハイブリッド車両1の減速時等においては発電機としても使用され、その発電作用(回生発電)により交流電力を発電し、その発電した交流電力をPCU700へ出力する。動力分割機構300は、後述するプラネタリギヤを含んで構成される。
【0023】
PCU700は、バッテリ900から受ける直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ200を駆動制御する。また、PCU700は、モータジェネレータ200が発電した交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ900を充電する。
【0024】
図2は、図1に示されるモータジェネレータ200および動力分割機構300の詳細について説明するための模式図である。
【0025】
図2を参照して、モータジェネレータ200は、モータジェネレータMG1,MG2を含んで構成される。モータジェネレータMG1,MG2は、それぞれ、ロータ211,221と、ステータ212,222とを含んで構成される。
【0026】
また、動力分割機構300は、プラネタリギヤ310,320を含んで構成される。プラネタリギヤ310,320は、それぞれ、サンギヤ311,321、ピニオンギヤ312,322、プラネタリキャリヤ313,323およびリングギヤ314,324を含んで構成される。
【0027】
エンジン100のクランクシャフト110と、モータジェネレータMG1のロータ211と、モータジェネレータMG2のロータ221とは、同じ軸を中心に回転する。
【0028】
プラネタリギヤ310におけるサンギヤ311は、クランクシャフト110に軸中心を貫通された中空のサンギヤ軸に結合される。リングギヤ314は、クランクシャフト110と同軸上で回転可能に支持されている。ピニオンギヤ312は、サンギヤ311とリングギヤ314との間に配置され、サンギヤ311の外周を自転しながら公転する。プラネタリキャリヤ313は、クランクシャフト110の端部に結合され、各ピニオンギヤ312の回転軸を支持する。
【0029】
動力分割機構300からの動力取出用のカウンタドライブギヤが、リングギヤ314と一体的に回転する。カウンタドライブギヤは、カウンタギヤ350に接続されている。そしてカウンタドライブギヤとカウンタギヤ350との間で動力の伝達がなされる。カウンタギヤ350はディファレンシャル機構400を駆動する。また、下り坂等では車輪の回転がディファレンシャル機構400に伝達され、カウンタギヤ350はディファレンシャル機構400によって駆動される。
【0030】
モータジェネレータMG1は、主として、永久磁石による磁界とロータ211の回転との相互作用により三相コイルの両端に起電力を生じさせる発電機として動作する。
【0031】
モータジェネレータMG2のロータ221は、減速機としてのプラネタリギヤ320を介して、プラネタリギヤ310のリングギヤ314と一体的に回転するリングギヤケースに結合されている。
【0032】
モータジェネレータMG2は、ロータ221に埋め込まれた永久磁石による磁界とステータ222に巻回された三相コイルによって形成される磁界との相互作用によりロータ221を回転駆動する電動機として動作する。またモータジェネレータMG2は、永久磁石による磁界とロータ221の回転との相互作用により三相コイルの両端に起電力を生じさせる発電機としても動作する。
【0033】
プラネタリギヤ320は、回転要素の1つであるプラネタリキャリヤ323が車両駆動装置のケースに固定された構造により減速を行なう。すなわち、プラネタリギヤ320は、ロータ221のシャフトに結合されたサンギヤ321と、リングギヤ314と一体的に回転するリングギヤ324と、リングギヤ324およびサンギヤ321に噛み合い、サンギヤ321の回転をリングギヤ324に伝達するピニオンギヤ322とを含む。
【0034】
図3は、PCU700の主要部の構成を示す回路図である。図3を参照して、PCU700は、コンバータ710と、インバータ720,730と、制御装置740と、フィルタコンデンサC1と、平滑コンデンサC2とを含んで構成される。コンバータ710は、バッテリBとインバータ720,730との間に接続され、インバータ720,730は、それぞれ、モータジェネレータMG1,MG2と接続される。
【0035】
コンバータ710は、パワートランジスタQ1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトルLとを含む。パワートランジスタQ1,Q2は直列に接続され、制御装置740からの制御信号をベースに受ける。ダイオードD1,D2は、それぞれパワートランジスタQ1,Q2のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにパワートランジスタQ1,Q2のコレクタ−エミッタ間にそれぞれ接続される。リアクトルLは、バッテリBの正極と接続される電源ラインPL1に一端が接続され、パワートランジスタQ1,Q2の接続点に他端が接続される。
【0036】
このコンバータ710は、リアクトルLを用いてバッテリBから受ける直流電圧を昇圧し、その昇圧した昇圧電圧を電源ラインPL2に供給する。また、コンバータ710は、インバータ720,730から受ける直流電圧を降圧してバッテリBを充電する。
【0037】
インバータ720,730は、それぞれ、U相アーム721U,731U、V相アーム721V,731VおよびW相アーム721W,731Wを含む。U相アーム721U、V相アーム721VおよびW相アーム721Wは、ノードN1とノードN2との間に並列に接続される。同様に、U相アーム731U、V相アーム731VおよびW相アーム731Wは、ノードN1とノードN2との間に並列に接続される。
【0038】
U相アーム721Uは、直列接続された2つのパワートランジスタQ3,Q4を含む。同様に、U相アーム731U、V相アーム721V,731VおよびW相アーム721W,731Wは、それぞれ、直列接続された2つのパワートランジスタQ5〜Q14を含む。また、各パワートランジスタQ3〜Q14のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD3〜D14がそれぞれ接続されている。
【0039】
インバータ720,730の各相アームの中間点は、それぞれ、モータジェネレータMG1,MG2の各相コイルの各相端に接続されている。そして、モータジェネレータMG1,MG2においては、U,V,W相の3つのコイルの一端が中点に共通接続されて構成
される。
【0040】
フィルタコンデンサC1は、電源ラインPL1,PL3間に接続され、電源ラインPL1の電圧レベルを平滑化する。また、平滑コンデンサC2は、電源ラインPL2,PL3間に接続され、電源ラインPL2の電圧レベルを平滑化する。
【0041】
インバータ720,730は、制御装置740からの駆動信号に基づいて、平滑コンデンサC2からの直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータMG1,MG2を駆動する。
【0042】
制御装置740は、モータトルク指令値、モータジェネレータMG1,MG2の各相電流値、およびインバータ720,730の入力電圧に基づいてモータジェネレータMG1,MG2の各相コイル電圧を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ3〜Q14をオン/オフするPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成してインバータ720,730へ出力する。
【0043】
また、制御装置740は、上述したモータトルク指令値およびモータ回転数に基づいてインバータ720,730の入力電圧を最適にするためのパワートランジスタQ1,Q2のデューティ比を演算し、その演算結果に基づいてパワートランジスタQ1,Q2をオン/オフするPWM信号を生成してコンバータ710へ出力する。
【0044】
さらに、制御装置740は、モータジェネレータMG1,MG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリBを充電するため、コンバータ710およびインバータ720,730におけるパワートランジスタQ1〜Q14のスイッチング動作を制御する。
【0045】
PCU700の動作時において、コンバータ710およびインバータ720,730を構成するパワートランジスタQ1〜Q14およびダイオードD1〜D14は発熱する。したがって、これらの半導体素子の冷却を促進するための冷却構造を設ける必要がある。
【0046】
次に、図4,図5を用いて、本実施の形態に係る車両の駆動システムについて説明する。図4,図5は、それぞれ、本実施の形態に係る駆動システムに含まれる駆動ユニットを模式的に示した側面図および上面図である。
【0047】
図4,図5に示すように、駆動ユニットは、モータジェネレータMG1,MG2と、カウンタギヤ350と、ドライブシャフト500に連結されるディファレンシャル機構400とを含んで構成される。モータジェネレータMG1,MG2を収納するハウジングの底部には、オイル貯留部1000が形成され、オイル貯留部1000にはオイル1050が貯留されている。また、駆動ユニットの上方側には、キャッチタンク1100が形成されている。オイル貯留部1000に貯留されたオイル1050は、駆動ユニットの動作に伴なって、キャッチタック1100に向けて掻き上げられる。キャッチタンク1100に貯留されたオイルは、駆動ユニットの各部に向けて供給され、潤滑や冷却に利用される。
【0048】
フィルタコンデンサC1およびリアクトルLは、カウンタギヤ350の側方に設けられる。図2,図5に示すように、駆動ユニットは、軸方向に並ぶ2つのモータジェネレータMG1,MG2の間に動力分割機構300が設けられ、動力分割機構300から動力が伝達されるようにカウンタギヤ350が設けられる構成を有する。したがって、カウンタギヤ350の側方には、モータジェネレータMG1,MG2の軸長分の余裕スペースが空きやすい。本実施の形態では、この余裕スペースにフィルタコンデンサC1およびリアクトルLを配置している。なお、フィルタコンデンサC1およびリアクトルLは、キャッチタンク1100に貯留されたオイル1050により冷却される。
【0049】
駆動ユニットの下方側には、冷却プレート1200が取り付けられている。冷却プレート1200上には、パワートランジスタQ1〜Q14およびダイオードD1〜D14を含むIPM(Inteligent Power Module)および制御装置740(制御基板)が搭載されている。冷却プレート1200内には、ラジエータから供給された冷却水が流入する。これにより、IPMの冷却が行なわれる。なお、冷却プレート1200内を流れた冷却水1350は、駆動ユニットの車両前方側に位置する平滑コンデンサC2の外周に形成された冷却水路内に流れ込む。これにより、平滑コンデンサC2の冷却が行なわれる。すなわち、本実施の形態では、フィルタコンデンサC1の冷却と平滑コンデンサC2の冷却とを異なる冷媒により行なっている。
【0050】
図4,図5の例のように、、パワートランジスタQ1〜Q14およびダイオードD1〜D14を含むIPMならびに制御装置740をモータジェネレータMG1,MG2の下方に設けることで、モータジェネレータMG1,MG2とPCU700とを一体化した構造を採用する場合において、PCU700のメンテナンス性を向上させることができる。また、駆動ユニットの支持構造は、駆動ユニットの上方または側方から該駆動ユニットを支持する場合が多い傾向にあるため、モータジェネレータMG1,MG2の下方に比較的スペースの余裕が生じやすくなる。図4,図5の例では、このスペースの余裕部分にIPMを搭載している。
【0051】
本実施の形態に係る車両の駆動システムによれば、フィルタコンデンサC1と平滑コンデンサC2とを異なる冷媒により冷却することで、たとえば、フィルタコンデンサC1および平滑コンデンサC2の一方の発熱量が顕著に大きくなった場合でも、システム全体に及ぼす影響を緩和することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、図4に示すように、フィルタコンデンサC1を平滑コンデンサC2に対して車両の後方側に配置している。このようにすることで、平滑コンデンサC2に対して電気的にバッテリ900に近い側に設けられるフィルタコンデンサC1とバッテリ900とを繋ぐ配線を短くすることができるので、駆動システムの車両への搭載性を向上させることができる。
【0053】
図6は、本実施の形態に係る車両の駆動システムに含まれる駆動ユニットの変形例を模式的に示した側面図である。図6を参照して、本変形例に係る駆動ユニットは、パワートランジスタQ1〜Q14およびダイオードD1〜D14を含むIPMおよび制御装置740を車両前方側に配置したことを特徴とする。
【0054】
エンジン100とモータジェネレータMG1,MG2を含む駆動ユニットとを車両の幅方向に沿って並べた場合、エンジン100の方が駆動ユニットよりも大きいため、エンジン100と車両前方に位置するラジエータとの隙間を確保しようとすると、駆動ユニットの前方側には比較的スペースの余裕が生じやすくなる。図6の例では、このスペースの余裕部分にIPMを搭載している。
【0055】
図6の例においても、図4,図5の例と同様に、カウンタギヤ350の側方にフィルタコンデンサC1およびリアクトルLが配置される。また、平滑コンデンサC2の冷却用のウォータジャケット1300には、図4,図5の例と同様に、冷却プレート1200内の冷却水が導かれれている。
【0056】
次に、図7〜図10を用いて、モータジェネレータMG1,MG2と一体化されるインバータ720,730の各種搭載構造を比較検討した結果について説明する。
【0057】
図7,図8は、パワートランジスタQ1〜Q14およびダイオードD1〜D14を含むIPMを分割して搭載した例を示す。図7の例では、IPMは、パワートランジスタQ1〜Q8およびダイオードD1〜D8を含むIPMと、パワートランジスタQ9〜Q14およびダイオードD9〜D14を含むIPMとに分割して搭載されている。また、図8の例では、IPMは、さらに多くのモジュールに分割して搭載されている。図7,図8の例のように、IPMを分割することで、IPM用のスペースを容易に確保することができる。しかしながら、一方で、IPMを分割することで、分割されたIPM間の冷却水路構成やバスバー構成、および、モータジェネレータMG1,MG2の外周におけるインバータ防水用カバーの構成が複雑になるという問題がある。結果として、図7,図8の例では、モータ−インバータ一体化構造の製造コストが増大する。
【0058】
図9は、パワートランジスタQ1〜Q14およびダイオードD1〜D14を含むIPMと、フィルタコンデンサC1およびリアクトルLと、平滑コンデンサC2とをすべて一枚の冷却プレート1200上に搭載した例を示す。図9の例によれば、冷却水路構成、バスバー構成、およびインバータ防水用カバーなどが簡素化され、モータ−インバータ一体化構造の製造コストを抑制することができる。一方で、一枚の冷却プレート1200上にインバータ720,730を構成するすべての素子を搭載することで、これらの素子が駆動ユニット外周における一箇所に集中し、搭載スペースに余裕が無くなるという問題がある。
【0059】
図10は、図4〜図6に示す例と同様に、インバータ720を、フィルタコンデンサC1およびリアクトルLと、パワートランジスタQ1〜Q14およびダイオードD1〜D14を含むIPMと、平滑コンデンサC2とに分割して搭載した例を示す。図10の例によれば、モータ−インバータ一体化構造の製造コストが過度に増大することを抑制しながら、搭載スペースに比較的余裕をもたせて駆動ユニットの小型化を図ることができる。
【0060】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係る車両の駆動システムは、「電源」としてのバッテリ900と、バッテリ900からの電力を用いて車両を駆動、または車両に駆動される「回転電機」としてのモータジェネレータMG1,MG2と、モータジェネレータMG1,MG2と一体化され、インバータ720,730を有し、モータジェネレータMG2を制御する「電気機器」としてのPCU700と、インバータ720,730を冷却する「第1の冷媒」としての冷却水1350と、モータジェネレータMG1,MG2を冷却する「第2の冷媒」としてのオイル1050とを備える。PCU700は、「第1コンデンサ」としての平滑コンデンサC2および平滑コンデンサC2に対して電気的にバッテリ900に近い側に設けられる「第2コンデンサ」としてのフィルタコンデンサC1を含む。ここで、平滑コンデンサC2は冷却水1350により冷却され、フィルタコンデンサC1はオイル1050により冷却される。
【0061】
上記車両の駆動システムは、PCU700に取付けられる「冷却器」としての冷却プレート1200を備える。冷却水1350は冷却プレート1200を流れる冷媒である。また、オイル1050は、モータジェネレータMG1,MG2を収納するハウジングに形成されたオイル貯留部1000に貯留される。
【0062】
また、本実施の形態に係る駆動システムにおいて、モータジェネレータMG1,MG2は、車両前方に位置するエンジンルーム2内に設けられる。他方、バッテリ900は、モータジェネレータMG1,MG2よりも車両後方側に設けられる。電気的にバッテリ900に近い側に配置されるフィルタコンデンサC1は、平滑コンデンサC2よりも車両後方側に配置される。
【0063】
より具体的には、本実施の形態に係る車両の駆動システムにおいて、PCU700は、直流電圧の昇圧または降圧を行なうコンバータ710および直流電圧と交流電圧との相互変換を行なうインバータ720,730を有し、平滑コンデンサC2は、電気的にインバータ720,730と並列に接続され、フィルタコンデンサC1は、電気的にバッテリ900とコンバータ710との間に設けられる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の1つの実施の形態に係る車両の駆動システムが適用されるハイブリッド車両の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示されるモータジェネレータおよび動力分割機構の詳細について説明するための模式図である。
【図3】図1に示されるPCUの主要部の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の1つの実施の形態に係る車両の駆動システムに含まれる駆動ユニットを模式的に示した側面図である。
【図5】図4に示される駆動ユニットを模式的に示した上面図である。
【図6】本発明の1つの実施の形態に係る車両の駆動システムに含まれる駆動ユニットの変形例を模式的に示した側面図である。
【図7】回転電機と一体化される電気機器の搭載構造について説明する図(その1)である。
【図8】回転電機と一体化される電気機器の搭載構造について説明する図(その2)である。
【図9】回転電機と一体化される電気機器の搭載構造について説明する図(その3)である。
【図10】回転電機と一体化される電気機器の搭載構造について説明する図(その4)である。
【符号の説明】
【0066】
1 ハイブリッド車両、2 エンジンルーム、100 エンジン、110 クランクシャフト、200,MG1,MG2 モータジェネレータ、211,221 ロータ、212,222 ステータ、300 動力分割機構、310,320 プラネタリギヤ、311,321 サンギヤ、312,322 ピニオンギヤ、313,323 プラネタリキャリヤ、314,324 リングギヤ、350 カウンタギヤ、400 ディファレンシャル機構、500 ドライブシャフト、600L,600R 駆動輪、700 PCU、710 コンバータ、720,730 インバータ、721U,731U U相アーム、721V,731V V相アーム、721W,731W W相アーム、740 制御装置、1050 オイル、800,800A,800B ケーブル、900 バッテリ、1000 オイル貯留部、1100 キャッチタンク、1200 冷却プレート、1300 ウォータジャケット、C1 フィルタコンデンサ、C2 平滑コンデンサ、D1〜D14 ダイオード、L リアクトル、PL1,PL2,PL3 電源ライン、Q1〜Q14 パワートランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
前記電源からの電力を用いて車両を駆動、または車両に駆動される回転電機と、
前記回転電機と一体化され、インバータを有し、該回転電機を制御する電気機器と、
前記インバータを冷却する第1の冷媒と、
前記回転電機を冷却する第2の冷媒とを備え、
前記電気機器は、第1コンデンサおよび該第1コンデンサに対して電気的に前記電源に近い側に設けられる第2コンデンサを含み、
前記第1と第2コンデンサの一方は前記第1の冷媒により冷却され、前記第1と第2コンデンサの他方は前記第2の冷媒により冷却される、車両の駆動システム。
【請求項2】
前記インバータに取付けられる冷却器をさらに備え、
前記第1の冷媒は前記冷却器内を流れる冷媒を含む、請求項1に記載の車両の駆動システム。
【請求項3】
前記回転電機を収納するハウジングをさらに備え、
前記第2の冷媒は前記ハウジング内に貯留されたオイルを含む、請求項1に記載の車両の駆動システム。
【請求項4】
前記インバータに取付けられる冷却器と、
前記回転電機を収納するハウジングとをさらに備え、
前記第1の冷媒は前記冷却器内を流れる冷媒を含み、
前記第2の冷媒は前記ハウジング内に貯留されたオイルを含み、
前記第1コンデンサは前記第2コンデンサよりも大きな容量を有し、
前記第1コンデンサは前記第1の冷媒により冷却され、
前記第2コンデンサは前記第2の冷媒により冷却される、請求項1に記載の車両の駆動システム。
【請求項5】
前記電気機器は、直流電圧の昇圧または降圧を行なうコンバータを有し、
前記第1コンデンサは、電気的に前記インバータと並列に接続され、
前記第2コンデンサは、電気的に前記電源と前記コンバータとの間に設けられる、請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両の駆動システム。
【請求項6】
電源と、
前記電源からの電力を用いて車両を駆動、または車両に駆動される回転電機と、
前記回転電機と一体化され、該回転電機を制御する電気機器とを備え、
前記電気機器は、第1コンデンサおよび該第1コンデンサに対して電気的に前記電源に近い側に設けられる第2コンデンサを含み、
前記回転電機は車両前方に位置するエンジンルーム内に設けられ、
前記電源は前記回転電機よりも車両後方側に設けられ、
前記第2コンデンサは前記第1コンデンサよりも車両後方側に配置される、車両の駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−290621(P2008−290621A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139316(P2007−139316)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】