説明

車両サスペンション用の液圧式システム

車両の液圧式サスペンションシステムは、左前方(15)、右前方(16)、左後方(18)及び右後方(17)の車輪ラムを有する。モード分断装置(100)は、シリンダ/ピストンロッドアセンブリ(124,125,126)によって形成された第1(129)、第2(130)、第3(132)及び第4(131)のバランスチャンバを有する。左前方車輪ラム(15)の圧縮チャンバ(45)は、第1のバランスチャンバ(129)と流体連通し、右前方車輪ラム(16)の圧縮チャンバ(46)は、第2のバランスチャンバ(130)と流体連通し、左後方車輪ラム(18)の圧縮チャンバ(48)は、第3のバランスチャンバ(132)と流体連通し、右後方車輪ラム(17)の圧縮チャンバ(47)は、第4のバランスチャンバ(131)と流体連通している。車体と車輪アセンブリの間には、前方及び後方の弾性車両支持手段もある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に車両用サスペンションシステムに関し、特に1以上のサスペンションパラメータの制御を与える液圧式システムに関する。
【0002】
車体に関する車輪運動の異なるモードを受動的に区別すると共に、従って機能性に種々の代替例を与える能力を有した多くの交互相互連結型サスペンションシステムが知られている。例えば、フランス特許公開第FR2663267号は、車体を支持すると共に、異なるヒーブ及びロール剛性率をゼロワープ剛性で与える液気圧併用型サスペンションシステムを開示している。ピッチ剛性は、ヒーブ剛性(これは、ロッド径、アキュムレータサイズ、及び前後のラム位置によって決定される)に関係している。このシステムは車両を支持するので、車両に対する支持力を与えるためには、4つの流体ボリューム中の圧力が高いか、ロッド径が大きくなければならず、このことはシール摩擦及び有意な乗り心地の制限へとつながる。更には、温度が変化するに従って、システム中の気体及び流体のボリュームが車高変化を引き起こし、高価な高圧流体供給及び制御システムを必要にする。また、4つの流体ボリュームの各々の圧力は、必要とされる支持を各車輪に与えるためには個別に正しくなければならず、それ故複数の圧力は通常異なり、これにより制御の複雑さ、流体ボリューム間のピストンシールを通り越す漏洩、及びピストンシール摩擦の増加を生じる。
【0003】
同様に、出願人の米国特許第6,270,098号は、圧力バランス式“負荷分布”ユニットを、対角線上で相互連結された複動式車輪ラムの2対の間に与える。このシステムは、異なるヒーブ、ロール及び付加的なピッチ剛性率をゼロワープ剛性及び異なる減衰率で4つの基本サスペンションモード(ヒーブ、ロール、ピッチ及びワープ)の全てに与える。このシステムはまた、車両の重量を支持するので、車両上の負荷が変化するに従い、又は流体温度が変化するに従い、システム中の6つのボリュームの各々における流体のボリュームは調整されなければならない。また、システム中の6つのボリュームは、ある負荷条件では、全て異なる圧力になることがあるので、流体がシールを横切って漏れる可能性があり、このことはまた、流体ボリューム調整がなされて、正しい車両姿勢を保つことを必要とする。これは、高圧流体源、センサ、制御電子回路及び弁を必要として、システムのコストを受動的システムに対して相対的に高いものにする。
【0004】
同様にEP1426212及び国際出願第PCT/EP2004/004885では、車両の支持とロール剛性にゼロワープ剛性を与える多数の受動的液圧式システムが開示されている。これら液圧式システムは車両の支持を与えるので、それらは出願人の前述した米国特許第6,270,098号と同様の欠点を持つ。
【0005】
高ロール剛性を低ワープ剛性及び無視できるヒーブ剛性で与えると共に高ロール減衰を、より低く、より快適で孤立したヒーブ減衰で与える受動的システムの一例が、出願人の米国特許第6,761,371号に見出すことができる。このシステムは、有意なヒーブ剛性を与えないので、別々の支持スプリングが必要とされる。液圧式システムの必要なロールモーメント分布は、車輪ラムサイズの選択を余儀なくし、ピーク減衰力の妥協へと導く。
【0006】
ロール及び/又はピッチ減衰特性だけを持つシステムの一例が、米国特許第5,486,018号及び第6,024,366号に見出される。これら文献中のシステムは、一対の車輪減衰ラム間の装置を使用するもので、各車輪減衰ラムは、そのピストン中にダンパー弁を有して、複動式減衰を与えるが、ラムを単動式にする(即ち、単一の流体ポートだけがある)。この装置は、個別レベルの減衰を同相(即ち、ヒーブ)及び同期外れ(即ち、ロール及び/又はピッチ)運動に対して与える。しかしながら、このシステムは、どのモードでも有意な剛性を与えないので、支持スプリングに対する必要性に加えて、前後の反発及びロール剛性率間の良好なバランスに対し、一般にアンチロールバーが必要とされる。加えて、車輪ラムが事実上単動式(1つの流体ポートだけを有する)であるので、装置が与えることができる減衰の量は制限される。この問題と戦うためにシステムに対してなされたいくつかの改良がある。これらは、日本国特許庁公開第11291737号に見出すことができるが、より多くの配管及びスプール弁を設けることによってシステムの複雑さを増加する。
【0007】
従って、本発明の1つの目的は、早期の車両サスペンションシステムの欠点の少なくとも1つを緩和する車両サスペンション用の液圧式システムを提供することにある。
【0008】
本発明の好ましい1つの目的は、ロール剛性、ロール減衰特性、及びヒーブ減衰特性を有し、そのロールモーメント分布が車輪減衰圧力とは独立して構成及び調整され得る液圧式システムを提供することにある。
【0009】
このことを心に留めて、本発明の1つの形態により、車両用のサスペンションシステムが提供される。この車両は、車体と、少なくとも2つの前側及び2つの後側車輪アセンブリとを有し、このサスペンションシステムは、液圧式システムを有し、この液圧式システムは、
少なくとも1つの左前方車輪ラムと、少なくとも1つの右前方車輪ラムと、少なくとも1つの左後方車輪ラムと、少なくとも1つの右後方車輪ラムとを有し、各々はそれぞれの前記車輪アセンブリと車体の間に配置され、各車輪ラムは少なくとも圧縮チャンバを有し、この液圧式システムはまた、
モード分断装置を有し、この装置は、少なくとも2つのシリンダ部分と1つのピストンロッドアセンブリとの配置によって形成される第1、第2、第3及び第4のバランスチャンバを有し、第1及び第4のバランスチャンバは、ピストンロッドアセンブリの運動によって容積を互いに同じ方向に変化させ、第3及び第2のバランスチャンバは、ピストンロッドアセンブリの運動によって容積を互いに同じ方向に且つ第1及び第4のバランスチャンバとは逆の方向に変化させ、
左前方車輪ラムの圧縮チャンバは、モード分断装置の第1のバランスチャンバと流体連通して左前方流体ボリュームを形成し、右前方車輪ラムの圧縮チャンバは、第2のバランスチャンバと流体連通して右前方流体ボリュームを形成し、左後方車輪ラムの圧縮チャンバは、第3のバランスチャンバと流体連通して左後方流体ボリュームを形成し、右後方車輪ラムの圧縮チャンバは、第4のバランスチャンバと流体連通して右後方流体ボリュームを形成し、モード分断装置のピストンロッドアセンブリは、車両のロール運動中は流体圧力を比例させるように動作し、そしてワープ中及びオプションでロール運動中はそれぞれの流体ボリューム間に流体を分配するように動作し、
このサスペンションシステムは更に、前方及び後方の弾性車両支持手段を車体と車輪アセンブリの間に有して、車両の少なくとも一部を車輪アセンブリの上方に弾性的に支持する。
【0010】
かくして、車両のロール運動は液圧式システムによって抵抗されるのに対し、車体に対する車輪のワープ運動は液圧式システムによって許容される利点がある。モード分断装置は、ロールの圧力に比例してロール抵抗を与え、ワープに流体を分配して、前方ロール流体変位の後方への転移を、逆方向の後方ロール変位(即ち、ワープ)に対して許容する。
【0011】
本発明の1以上の形態による液圧式サスペンションシステムは、サスペンションパラメータ、例えばロール剛性、ロールモーメント分布、ロール減衰及びヒーブ減衰の個別調整及び構成を可能にする。このことは、これらサスペンションパラメータの必要とされる多くの最適化を可能にする。
【0012】
車両は、主として弾性車両支持手段によって支持されることが好ましい。車体の支持をあまり又は全く与えない液圧式システムの利点は、非常に多い。先ず、このシステムの動作圧力は低減可能であり、そのことでシール摩擦を低減し、且つ乗り心地を改善することができる。また、4つの流体ボリュームの各々の動作圧力は共通であり、そのことでピストンシールを横切る圧力差を低減し、それ故制御の複雑さ、摩擦を低減し、乗り心地を改善し、そして4つの流体ボリューム間のピストンシールを横切る潜在的漏洩を低減することができる。更に、各ラムのロッド径は、さらに低減可能であり、このことがシール摩擦を低減し、乗り心地を改善する。また、ロッド径の減少は、シリンダ径の減少を可能にし、これが流体質量加速効果を低減し、且つ乗り心地を改善する。最後に、この液圧式システムは、ワープ剛性を与えることなく車両の一方又は双方の端部に対する支持の一部を与えるように設計可能であると共に、車両に加わる負荷を補償することに使用できる。事実、後方ラムロッドが、前方ラムロッドよりも径が大きい場合、負荷が車両の後方に向かって加わり、弾性車両支持手段を圧縮するに従い、液圧式システム内の圧力は増加され、より多くの負荷補償を後方に与える。同時に、弾性車両支持手段のロールモーメント分布が車両の前方に向かい、且つ液圧式システムのロールモーメント分布があまり前方にバイアスされていない場合は、液圧式システムの圧力及び剛性が増加されるに従い、車両の合計サスペンションロールモーメント分布は後方に移動して、その要求を、後方に位置決めされた負荷と更に良好に一致させる。
【0013】
車両支持手段は、既知の支持手段、例えばコイルスプリング、エアースプリング、トーションバー、リーフスプリング及びラバーコーンでよい。車両支持手段は、コイルスプリングやエアースプリングの場合、車輪ラムの回りに搭載されるか、別々に搭載される。
【0014】
車両の少なくとも一端に対する車両支持手段は、車両上の負荷の少なくとも一部に対する支持を与えるための第1の支持手段を有する。この第1の支持手段は、ロール剛性を与える。
【0015】
車両の少なくとも一端に対する車両支持手段は、車両上の負荷の少なくとも一部に対する支持を与えるための第2の支持手段を有する。この第2の支持手段は、ほぼゼロのロール剛性を与える。
【0016】
第1及び第2の支持手段の組合せは、車両の一方又は双方の端部に設けられる。例えば、第1の支持手段なしに、第2の支持手段が車両の双方の端部で使用される場合、サスペンションシステムは、ゼロワープ剛性を与える。従って、平坦でない地形を移動する時に、各車輪上の負荷は、一定のままである(ただし、車輪荷重上の動的運動の過渡的効果は除く)。
【0017】
前方車輪ラムは複動式であり、従って反発チャンバを有することがある。一方の前方車輪ラムの圧縮チャンバは、横方向に隣接する車輪ラムの反発チャンバと流体連通している。
【0018】
後方車輪ラムは複動式であり、従って反発チャンバを有することがある。一方の後方車輪ラムの圧縮チャンバは、横方向に隣接する車輪ラムの反発チャンバと流体連通している。
【0019】
その代わりに、車輪ラムの前方及び/又は後方の対の一方又は双方が単動式である場合には、これらラムが実質的に剛性用に単動式であっても、ダンパー弁配置を通して圧縮チャンバに接続された反発チャンバを有する複動式ラムを利用することが望ましい。このことは、ラムピストンにダンパー弁を使用することで達成される。圧縮チャンバは、上述したようにモード分断装置のバランスチャンバの1つに接続され得る。
【0020】
各車輪ラムの少なくとも1つのチャンバに対する流体の流れの出入りを減衰するために、減衰手段が設けられることがある。
【0021】
各流体ボリュームに対して、少なくとも1つの流体圧力アキュムレータが設けられることがある。各アキュムレータは、それぞれの流体ボリュームに流体連通されている。各車輪ラムの少なくとも1つのアキュムレータに対する流体の流れの出入りを減衰するために、減衰手段が設けられることがある。
【0022】
モード分断装置のピストンロッドアセンブリに作用するように、弾性手段が設けられることがある。
【0023】
モード分断装置は、2つのシリンダ部分を有することがあり、またピストンロッドアセンブリは、2つのピストンと、少なくとも1つのロッドとを有することがある。
【0024】
モード分断装置は、3つのシリンダ部分を有することがあり、またピストンロッドアセンブリは、第1の中央ピストンと、少なくとも2つのロッドとを有することがある。ピストンロッドアセンブリは更に、2つの端部ピストンを有することがある。その代わりに又は加えて、モード分断装置は、第2の中央ピストンを有することがある。第1及び第2の中央ピストンは、少なくとも1つの流体圧力チャンバを形成する。少なくとも1つの流体圧力チャンバと流体連通された少なくとも1つの付加的流体圧力アキュムレータが設けられることがある。
【0025】
シリンダ部分の直径は異なることがあり、またロッドの直径は異なることがある。
【0026】
車両支持手段が車両支持の主たる手段であるので、液圧式システム内のボリュームの全てが同じ圧力で動作させられることが好ましい。また、このシステムは、温度上昇に伴い双方共に膨張する液圧式流体及び気体を含むので、システムの静圧及びロール剛性を設計温度にわたり設計範囲内に維持するために、圧力補償配置が必要とされる。この圧力補償配置は、経時的な流体損失を補償することにも使用され得る。それ故、流体ボリュームの少なくとも2つの、好ましくは各々に対し、それぞれの制限体又は弁を通して接続された圧力維持装置が設けられる。
【0027】
圧力維持装置は、制限体を通して各流体ボリュームに接続された単純なアキュムレータであり得る。この代わりに、圧力維持装置は、ポンプ、タンク及び流体流制御装置を有することがある。圧力は、左側流体ボリュームと右側流体ボリュームで異なるように制御され、低い周波数でも、能動的には高い周波数でも、ロール姿勢制御を与える。同様に、圧力は、前方流体ボリュームと後方流体ボリュームで異なるように制御され、ピッチ角度制御を与える(ロッド径が押出力に意義ある変化を与えるに十分である場合)。
【0028】
左側流体ボリュームの間に少なくとも1つの弁が設けられ、また右側流体ボリュームの間に少なくとも1つの弁が設けられ、これによりモード分断装置の影響をバイパスすることがある。これは、液圧式システムのロールモーメント分布を変化させる一方で、依然としてロール剛性を実質的にゼロのワープ剛性で与えることに使用され得る。その代わりに又は加えて、それは、圧力維持機能の一部として、関連する圧力を等化することに使用され得る。
【0029】
その代わりに又は加えて、少なくとも1つの弁が前方流体ボリュームの間に設けられ、及び/又は少なくとも1つの弁が後方流体ボリュームの間に設けられ、これにより液圧式システムのロール剛性を除去することがある。
【0030】
その代わりに又は加えて、モード分断装置と車輪ラムの間に弁が設けられて、フェールセーフ機能を与えるか、又は車輪上昇を制限することができる。
【0031】
添付の図面は、本発明の好ましい実施形態を描いている。他の配置も可能であり、その結果、添付図面の特殊性は、発明の先行する説明の一般性に取って代わるものとして理解されるべきではない。
【0032】
[好ましい実施形態の説明]
先ず、図1を参照すると、車両用サスペンションシステムが示されている。4つの車輪ラム(11,12,13,14)は、車体(図示せず)と車両の4つの対角的に配置された車輪(図示せず)との間に配置されている。各車輪ラムは、車輪ハブ又は他のサスペンション構造に接続されて車輪と共に移動するシリンダ(15,16,17,18)と、シリンダ内に摺動自在に収納されたピストン(19,20,21,22)と、ピストンと車体との間に固定されたロッド(23,24,25,26)とを有する。ロッドと車体との接続は、既知の手段によって、通常はゴムブッシングを通してなされる。このブッシングは、マクファーソン型圧縮材構造の場合には、ベアリングを有する。
【0033】
理解を容易にするために、弾性車両支持手段は、“コイルオーバー”、即ちコイルスプリング(27,28,29,30)として示されている。これらスプリングは、車輪ラムの回りに位置決めされ、そしてシリンダに固定された下側スプリング板(31,32,33,34)と、車体又はロッドに(直接、又は間接的に例えばベアリング又はブッシングを介して)接続され得る上側スプリング板(35,36,37,38)と、の間に配置されている。ここで理解されるべきことは、弾性支持手段は、例えばエアースプリングのような既知の代替タイプでもよく、またシリンダの回りに、コイルスプリングと共に示されているように配置されるか、ラムとは独立に配置され得る。このことは、代替策を、例えば車輪位置を与える構造に接続されたトーションバーまで広げる。弾性支持手段は、支持及びある程度のロール剛性を与える(例えば、各車輪に対して独立なトーションバー又はコイルスプリングで)か、あるいはそれらはゼロロール剛性で支持を与える(例えば、横方向に隣接する車輪間に接続されたエアースプリング、液圧式シリンダ又はトーションバーにより)か、あるいは支持手段の組合せが車両の一方又は双方の端部において、ロール剛性有り又は無しで使用されることがある。分離されたロール制御システムで使用されるこのタイプの支持手段の変形は、出願人の米国特許第6,217,047号に詳細に説明されており、その詳細は参照によってここに組み入れられる。
【0034】
車輪ラムは、車体に接続されたシリンダ部分と、車輪ハブ又は他のサスペンション構造に接続されて車輪と共に移動するピストンロッドとを持つように、反転され得る。このことは、液圧式システムのシリンダと残部との間の流体接続が、車輪に対してではなく、車体に対して配置され、これにより前記流体接続を与えるホースの必要とされる変位を減少させるという利点を持つ。この場合、そして特に支持スプリングが車輪ラムの回りに位置決めされる場合、シリンダ15は、外側チューブの内側に摺動可能及び回転可能に搭載され、そして外側チューブに固定されたロッドは、今度は車輪ハブ又は他のサスペンション構造に接続され得る。外側チューブはまた、下側スプリング板を支持することができる。上側スプリング板はそれからシリンダに又は直接車体に搭載される。
【0035】
図示の車輪ラムは、単純化のために基本的に従来の複動式ラムである。左前方の車輪ラム11を例にすると、ピストン19(これはロッド23の一体的部分として形成され得る)は、2つの溝を有して、ベアリング39と、シール40を収容している。いくつかの場合には、個別のベアリング及びシールパーツは、単一品(図示せず)によって置換され得る。この単一品は、組立の容易性及び低コストのために、ピストンに結合されたり、その回りに形成される。シリンダ端(41)は、3つの溝を有して、ロッドシール42と、ベアリング43と、ロッドワイパー44又は他の形態のバランスシール、例えばエクスクルーダを収容している。従って、各ラムは、圧縮チャンバ(45,46,47,48)と、各シリンダ(15,16,17,18)内のピストン(19,20,21,22)によって形成された反発チャンバ(49,50,51,52)とを有する。
【0036】
各車輪ラムの直接減衰は、各車輪ラムの圧縮及び反発チャンバ側の導管(61〜68)上に搭載された圧縮(53〜56)及び反発(57〜60)ダンパー弁によって達成される。これらの車輪ダンパー弁は単動式であって、圧縮又は反発チャンバからの流体流を制限するように作用する。あるいは、それらは複動式であって、この場合は、(圧縮チャンバか、好ましくは反発チャンバの)一方の弁だけが利用される。車輪ダンパー弁は、パッケージ空間がある車輪ラム本体内に配置されるか、車輪ラム本体に対して、又は図示のように導管内に取り付けられる。車輪ダンパー弁は、既知のタイプである。例えば、単純受動オリフィス、多段受動オリフィス及びシムベースのダンパー弁であって、オプションの吹出しスプリング付きであるか、(快適、通常及びスポーツのような選択可能な設定値間で制御されるか、操縦及び他の入力に依存して制御される)切換式ダンパー弁であるか、車輪ホップ及び全車体運動を制御するためのアルゴリズムを有する制御型連続可変減衰である。
【0037】
4つの複動式車輪ラムは、前後の対となって交差接続され、各々が左右の流体ボリュームを備える前後の流体導管を形成している。左前方流体ボリュームは、左前方圧縮チャンバ45と、左前方圧縮導管61と、右前方反発導管66と、右前方反発チャンバ50とによって形成される。右前方流体ボリュームは、右前方圧縮チャンバ46と、右前方圧縮導管62と、左前方反発導管65と、左前方反発チャンバ49とによって形成される。同様に、左後方流体ボリュームは、左後方圧縮チャンバ48と、左後方圧縮導管64と、右後方反発導管67と、右後方反発チャンバ51とによって形成される。そして、右後方流体ボリュームは、右後方圧縮チャンバ47と、右後方圧縮導管63と、左後方反発導管68と、左後方反発チャンバ52とによって形成される。
【0038】
アキュムレータ69,70,71及び72は、液圧式システムに弾性を与えるために、流体ボリュームの各々の上に示されている。各アキュムレータは、圧縮又は反発導管に沿って、圧縮及び反発車輪ダンパー弁が設けられている場合には、それら間の任意の点に位置決めされるべきである。アキュムレータダンパー弁73,74,75及び76は、各流体ボリュームとそれぞれのアキュムレータとの間に流体流の減衰を与える。
【0039】
上記の流体接続された車輪ラムの単純な前後対によって、異なるモードの流体変位は次のようになる。
【0040】
a)ロールでは、車両が右側に急旋回しているときは、遠心力が左側に向かって車体に作用し、そして車体は左側にロールして、流体を、左前方圧縮チャンバ及び右前方反発チャンバの双方から左前方アキュムレータ69中へ、また左後方圧縮チャンバ及び右後方反発チャンバから左後方アキュムレータ72中へ変位させる。このとき、右前方アキュムレータ70によって供給される流体の右前方圧縮チャンバ及び左前方反発チャンバへの侵入、及び右後方アキュムレータ71によって供給される流体の右後方圧縮チャンバ及び左後方反発チャンバへの侵入もある。
【0041】
b)ワープでは、例えば、左前方及び右後方の車輪が右前方及び左後方の車輪よりも高い地表にあるとき、右前方及び左後方の流体ボリュームでは流体が過剰になり、そして右前方及び左後方の流体ボリュームでは、より多くの流体が要求される。
【0042】
c)ヒーブ及びピッチでは、1つの車輪ラムの圧縮チャンバに出し入れされる流体と横方向に隣接する車輪ラムの反発チャンバに出し入れされる流体との差は、運動中に変位されるロッドボリュームと等しい。このロッドボリュームは、ヒーブ及びピッチ運動でアキュムレータに出し入れされる全てである。
【0043】
ロールモードで変位された相対ボリュームは、ヒーブ及びピッチモードに対して高いものであるが、これはヒーブ及びピッチ剛性よりも高いロール剛性を与える。これはまた、ダンパー弁がアキュムレータに出入りする流体の流れを減衰することに使用される場合には、この減衰がヒーブ又はピッチでよりもロールで大きな効果を持つ、ということを意味する。
【0044】
従って、各シリンダのシリンダ径とロッド径の差が大きいほど、システムのロール(及びワープ)剛性(及び減衰)とシステムのヒーブ(及びピッチ)剛性(及び減衰)との比は大きくなる。
【0045】
更には、液圧式システムと無関係なコイルスプリング又は他の支持手段が車両上の負荷に対する支持の大きな部分を与えるので、シリンダからの押出力が低くなるに従い、ロッド径は小さくされ得る。同様に、液圧式システムの動作圧力は、一般的にはシステム内のどの点においても通常の駆動条件でキャビテーションを回避するために十分高く設定されるが、これは低くされ得る。
【0046】
4つの流体ボリュームの各々は追加的に、それぞれの接続導管77,78,79及び80を有して、4つの流体ボリュームとモード分断装置との間に流体連通を与える。4つの車輪全てを一緒に1つの液圧式配置に接続することによって、ロール及びワープ運動を受動的に区別することが可能になる。モード分断装置を使用することの利点は、車輪シリンダが共通径となり、且つモード分断装置内の有効面積が、バランスを扱うために前方から後方にかけて必要とされる液圧式システムのロールモーメント分布に比例することに使用できる点である。
【0047】
図1のモード分断装置100は、3つのシリンダ部分を備え、その内の2つのシリンダ部分101及び102は直径が等しく、そして直径が異なる中央シリンダ部分103のいずれかの端部に位置決めされている。各シリンダ部分の内部には1つのピストンが摺動可能に実装され、2つの端部ピストン(104,105)は、それぞれのロッド107及び108によって中央ピストン106に固定されている。この配置は、4つのチャンバを形成し、左前方のバランスチャンバ109は、左前方の流体ボリュームに接続され、右前方のバランスチャンバ110は、右前方の流体ボリュームに接続され、右後方のバランスチャンバ111は、右後方の流体ボリュームに接続され、左後方のバランスチャンバ112は、左後方の流体ボリュームに接続されている。この接続性は、ロール運動が抵抗されると共にワープ運動が自由に許容される一方で、前後流体回路のピッチ及びヒーブ特徴が影響を受けなくなることを確実にする。
【0048】
等価な接続性を与える流体導管の任意のレイアウトが使用され得る点は、容易に理解されるべきである。例えば、左前方の接続導管77は省略され得る。また、左前方圧縮導管61及び右前方圧縮導管66は共に、モード分断装置100の左前方バランスチャンバ109に対し直接及び個別に接続され得る。
【0049】
モード分断装置100を含めて、異なるモードの流体変位が以下のように説明される。
【0050】
a)ロールでは、車両が右側に急旋回しているときは、遠心力が左側に向かって車体に作用し、そして車体は左側にロールして、流体を、左前方圧縮チャンバ及び右前方反発チャンバの双方から左前方アキュムレータ69中へ、また左後方圧縮チャンバ及び右後方反発チャンバから左後方アキュムレータ72中へ変位させる。このとき、右前方アキュムレータ70によって供給される流体の右前方圧縮チャンバ及び左前方反発チャンバへの侵入、及び右後方アキュムレータ71によって供給される流体の右後方圧縮チャンバ及び左後方反発チャンバへの侵入もある。モード分断装置100の左前方及び左後方バランスチャンバ(109及び112)内の圧力上昇は、ロッド107による反作用を受け、そしてモード分断装置の右前方及び右後方バランスチャンバ(110及び111)内の圧力低下は、同様にロッド108による反作用を受ける。ロールでは、力のバランスは、モード分断装置のピストンロッドアセンブリ(ピストン104,105及び106とロッド107及び108のアセンブリ)を横切って、あまり又は全く運動なしに維持される。また、液圧式システムによって発生されるロール作用性負荷は、前方から後方へ、シリンダサイズによって決定されるように比例させられる。
【0051】
b)ワープでは、左前方及び右後方の車輪が右前方及び左後方の車輪よりも高い地表にあるとき、左前方及び右後方の流体ボリュームの過剰流体は、モード分断装置のチャンバ109及び111に入ると共にピストンロッドアセンブリ(即ち、ピストン104,105及び106とロッド107及び108)を右に向け、これにより流体をチャンバ110及び112から右前方及び左後方の流体ボリューム中へ追い出す。この場合、車輪の垂れ下がりは、より多くの流体に対する要請を作り出す。液圧システムの前方から後方へのロールモーメント分布がワープモードでの後方から前方への車輪移動に適合される限り、4つの流体ボリューム内の圧力は変化すべきでない。
【0052】
c)ヒーブ及びピッチでは、1つの車輪ラムの圧縮チャンバに出し入れされる流体と横方向に隣接する車輪ラムの反発チャンバに出し入れされる流体との差は、運動中に変位されるロッドボリュームと等しい。このロッドボリュームは、ヒーブ及びピッチ運動でアキュムレータに出し入れされる全てである。純粋なヒーブ及びピッチ運動では、モード分断装置のピストン(104,105及び106)とロッド(107及び108)にかかる力はバランスされたままであるので、モード分断装置は、これらモードに何の影響も与えない。
【0053】
従って、この液圧式システムは、ロール剛性を与えるが、ワープ剛性を与えない。アキュムレータダンパーが設けられる場合、それらはワープ減衰の一因となることなしに、液圧式システムに同様にロール減衰を与える。液圧式システムのロール剛性は、一定のロールモーメント分布(RMD)で、前方から後方へ分布させられる。この分布は、前後の車輪ラムサイズ、アキュムレータ気体ボリューム及び機械的利点によって決定されるが、モード分断装置のピストンの有効面積によっても決定され得る。かくして、モード分断装置は、共通サイズの車輪ラム部品を使用して、必要なRMDを発生することに使用され得る。製造時には、標準径の範囲から車輪ラム及びモード分断装置を選択することで、システムのRMDの微調整を可能にする。その代わりに、ピーク車輪減衰圧力が設計要求と一致することが重大である場合には、車輪ラムサイズの範囲は制限され、それからRMD調整の大部分又は全てさえもが、モード分断装置で異なる有効ピストン面積を使用してなされる。液圧システムのヒーブ及びピッチ剛性は、前後の回路の2輪平行バンプ入力剛性による。この入力剛性は、液圧システムのロール剛性に対し、車輪ラムシリンダ孔および車輪ラムシリンダロッドの直径によって設定される。
【0054】
依然として所望の総合車両RMDを与えながらも液圧システムのRMDの調整に利用可能である別のオプションは、上述したように異なる度合いのロール剛性を持つ支持手段を使用することである。例えば、前方へバイアスされた車両RMDが65%である車両が、より均一なサイズの車輪ラム部品を使用すると共に前後の車輪ラムチャンバ内に同様のピーク減衰圧力を発生することを可能にするために、車両支持手段のRMDは選択されて、受容可能な液圧システムのRMDを与えることができる。支持手段のRMDを、必要とされる65%の総合車両RMDと同じに設定することが望ましい。その場合、前方支持手段は、独立したコイルスプリングであり、また後方支持手段は、独立したコイルスプリングと、横方向に接続されたトーションバーと、の組合せであり得る。
【0055】
図2は、相互接続された車輪ラムの同様な液圧式配置を有するモード分断装置100の代替構成を示している。この場合、モード分断装置100は、2つの主チャンバ121及び122を備え、これらは固定壁123によって形成されている。各主チャンバ内に1つのピストンが摺動可能に実装されて、4つのバランスチャンバを形成している。2つのピストン124及び125は、共通ロッド126に固定され、このロッドは、ロッドシールを含んだ固定壁123を通過している。
【0056】
4つのバランスチャンバは、図1のように、左前方流体ボリューム接続導管77及び左前方流体ボリュームの残部に接続された左前方バランスチャンバ129と、右前方流体ボリューム接続導管78及び右前方流体ボリュームの残部に接続された右前方バランスチャンバ130と、右後方流体ボリューム接続導管79及び右後方流体ボリュームの残部に接続された右後方バランスチャンバ131と、左後方流体ボリューム接続導管80及び左後方流体ボリュームの残部に接続された左後方バランスチャンバ132とである。
【0057】
図1のように、この図2の接続性は、ロール運動が抵抗されると共にワープ運動が自由に許容される一方で、前後流体回路のピッチ及びヒーブ特徴が影響を受けない状態におくことを確実にする。
【0058】
図2に示されたモード分断装置の構成では、この装置の端部のバランスチャンバ131及び132は、固定壁123に隣接するバランスチャンバ129及び130よりも大きな有効ピストン面積を有する。チャンバ131及び132を通して追加ロッド(図示せず)が設けられる場合、モード分断装置は、所望の有効ピストン面積を持つように作られるが、追加ロッドとモード分断装置の端壁との間の追加シールは、一般に摩擦を加えると共に有害な影響を乗り心地に与えるようになる。同様に、ピストン124及び125と、これらピストン間のロッド126と、端部バランスチャンバの1つを通して延びる追加ロッドと、を有する2つのバランスチャンバ121及び122が使用される場合、再び言うが、モード分断装置は、異なる主チャンバ径と異なるロッド径とを選択することによって、各チャンバに対して所望の有効ピストン面積を持つように作られる。
【0059】
液圧式システムのRMDによって、前方流体ボリューム接続導管が後方流体ボリューム接続導管とは大きく異なるサイズであることが、受容可能な流体速度及び加速効果にとって必要がある場合、モード分断装置を車両の一方の端部に近づけて位置決めすることが有利となる。前後流体回路の圧縮及び反発導管のサイズもまた、モード分断装置の位置に敏感であって、その車両内の縦方向位置を、与えられた性能レベルに対するシステムサイズ及び質量の最適化に有意なものにする。このことは、本発明の実施形態のどれにおいても明らかに真である。
【0060】
加えて、図2のモード分断装置100は、コイルスプリング133及び134として示されるオプションの弾性手段を有する。これらは、ピストンロッドアセンブリの運動に対して剛性を与えること、従ってワープ剛性を液圧システムに与えることに使用できる。しかしながら、それらは、ピストンロッドアセンブリの位置を2つの主チャンバ121及び122内で中心に向けてバイアスする力を与えることに使用されることが好ましい。
【0061】
上述したように、液圧システム内の各流体ボリュームは、圧縮導管と、反発導管と、接続導管と、モード分断装置バランスチャンバとを含む。各流体ボリュームはまた、少なくとも1つのアキュムレータを含むことがあるが、これは、コンプライアンスの他のソースが利用可能である場合、例えば流体が圧縮可能である場合、又は導管(導管の部分)が圧力変化を伴って適切な量だけ拡張する場合には、必要ではない。
【0062】
液圧システム内の流体及び気体のボリュームは、温度によって変化する。ある場合には、このことは、剛性変化及び/又は摩擦(これは部分的に動作圧力に依存する)に起因したシステムの特性の受け入れがたい変化につながる。従って、圧力維持装置139を有する圧力維持システムは、図2にも示されている。
【0063】
液圧システムは支持の主たる手段ではない(即ち、コイルスプリング又はエアー、トーション等のスプリングが車両支持の大部分を与える)ので、システム内の4つの流体ボリュームは全て、共通のプリチャージ静圧で動作させられる。全てのシステムを同じプリチャージ静圧で動作させる利点は、システム全体を通してピストンシールを横切る静圧差が消去され、これによりボリューム間の流体漏洩によって引き起こされるロール姿勢変化を低減できる点である。ボリューム間で流体をポンピング可能な電動式制御システムは、オプションではあるが、必須ではない。望ましい2つの圧力制御機能は、流体ボリューム間の圧力等化と、流体ボリュームの平均圧力を所望動作圧力の公差内に維持すること、である。
【0064】
従って、図2では、4つの流体ボリュームは、流れ制御装置140〜143を介して共通の導管又は通路144に接続され、この通路は、圧力維持装置139に接続されている。その最も単純な形態で、各流れ制御装置は、制限体、典型的には封鎖を防止するためにいずれの側にもフィルタが付いたマイクロオリフィスであるが、既知の制限手段、例えば毛管又は多孔性材料のブロックも使用され得る。オリフィスが使用される場合、それらは一般に4つの流体ボリューム内の圧力を受容可能な範囲内に維持するに必要な特徴を与える一方で、急旋回中に有意な流体流を防止して静的ロールモーメント分布及び剛性を維持するようにサイズ設定されると共に、直線走行に復帰したときにロール姿勢を受容可能な範囲内に維持するようにサイズ設定される。その代わりに、流れ制御装置140〜143は、選択的に流体ボリュームを圧力維持装置に連通させるための弁であり得る。この弁は、例えば車両状態信号の組合せに依存して電気的に制御されるソレノイド作動型弁であり得る。車両状態信号には、例えば車両スピード、ステアリング角、ステアリング率、横方向加速度、液圧式システム内の1以上の圧力、周囲温度又は車両又は液圧式システムの1以上の部品の温度が含まれる。
【0065】
圧力維持装置139は省略され得るが、液圧式システム及びそのアキュムレータにおける流体及び気体のボリュームの車両の動作温度範囲内の変化は、通常、ある形態の補償装置を必要とするに足る大きなものである。この装置の複雑さは、設計パラメータ及び必要とされる機能性に依存して、非常に有意となることができる。
【0066】
その最も単純な形態において、圧力維持装置(139)は、既知の構成(例えば、気体スプリング付きブレーダ型、気体スプリング付き又は機械的スプリング付きピストン型)を持つ流体圧力アキュムレータであり得る。
【0067】
その代わりに、圧力維持装置(139)は、流体圧力源(例えば、ポンプ付きタンク、又はパワーステアリングのような他の車両システム)であって、液圧式サスペンションボリューム内の圧力を固定又は可変圧力のいずれかに維持するものである。固定圧力が選択される場合、必要とされる部品は、単純、安価で受動的且つ機械的なパーツであり得るが、システム温度が変化するに従い、システム剛性は僅かに変化するであろう。温度が変化してもシステム剛性特性を一定に維持するためには、システム内の圧力は、それらの温度に依存して調整されなければならない。このことは、一般に1以上の温度センサと、少なくとも1つの可変圧力スイッチ又は圧力変換器と、電子制御ユニットとを必要とする。
【0068】
液圧式サスペンションシステムのロール剛性は、システム内の圧力を変化させることによって調整され得るので、可変圧力設定点付きの圧力維持装置(139)が使用される場合、圧力は、車両内の負荷に依存して、及び/又は運転手動作式モードセレクタ又は可変セレクタによって変更され得る。システム内の圧力を迅速に調整するために、圧力維持装置と4つの流体ボリュームの間には、制限体だけよりも弁の方が好ましい。
【0069】
圧力維持装置にとって、1つの代替例は、2つの異なる圧力を調節することである。このことは、弁を使用して4つの流体ボリューム内の圧力を対として制御することによってなされる。その代わりに、圧力維持装置は、弁付きの流体ボリューム中の2つに接続されて、圧力調節されたボリュームの各々と、もう1つの流体ボリュームと、の間を横切ってブリッジすることができる。あるいは、圧力維持装置は、2つのアキュムレータを含むことができる。この場合、各アキュムレータは、流れ制御装置を通して2つの流体ボリュームに接続される。流体ボリュームの異なる対を調節することは、異なるパラメータの制御を与える。例えば、前方流体ボリュームが後方流体ボリュームとは異なる圧力に調節される場合、ラムの前方から後方への押出力は、同じシステム部品サイジングを使用して4つのボリューム全てが同じ圧力に調節される場合とは異なるものとなる。液圧式システムのロール剛性を変化させると、支持スプリングのRMDが液圧式システムのRMDと異なるときに、総サスペンションシステムのRMDを変化させることができる。ロール剛性及びピッチ姿勢は、前方流体ボリューム及び後方流体ボリューム内の圧力を独立に制御することによって制御され得る。このことは、例えば、駆動スタイルセンサ、運転手選択可能制御入力、車両負荷センサ及び/又は車両負荷位置センサのような信号に依存してなされ得る。その代わりに、2つの左側流体ボリュームが2つの右側流体ボリュームとは異なる圧力に調節される場合、液圧式システムは、車両にかかるロールモーメント、例えば車両のオフセット有効搭載量に起因した静的ロール負荷に作用する。
【0070】
その代わりに、又は加えて、4つの液圧式ボリューム内の圧力は、ロール姿勢及び/又はピッチ姿勢を能動的に制御するためのステアリング及びハンドリング対策に依存して、より高い周波数で制御され得る。これらのタイプの制御用部品(多くの異なるアルゴリズム用のポンプ、タンク、弁、センサ及びコントローラ)は、周知である。
【0071】
図3は、本発明の液圧式システムに対する能動的制御の代替形態を示している。4つの流体ボリューム間に制御された流体変位をもたらす2つの流体変位装置150及び170が示されている。
【0072】
第1の流体変位装置は、2つの主チャンバ151及び152を備え、これらは固定壁153によって分離されている。各主チャンバは、固定壁153を通過する中央ロッド156のいずれかの端部に固定されたそれぞれのピストン154,155によって、2つの制御チャンバ(157及び158と、159及び160)に分割される。制御導管は、第1の流体変位装置の制御チャンバをモード分断装置100のバランスチャンバに接続する。この結果、ピストン154,155及び中央ロッド156の運動は、車両の一方側の流体ボリューム中に変位すると共に車両の他方側の流体ボリュームから変位して、車両のロール姿勢を調整する。図3では、第1の流体変位装置の制御チャンバを液圧式システムの4つの流体ボリュームに接続する制御導管は、明瞭化のために、第2の流体変位装置の制御チャンバをモード分断装置100のバランスチャンバに接続するように示されているが、それらは明らかに液圧式システムの4つの流体ボリュームの各々における任意の点に接続され得る。
【0073】
第1の流体変位装置は、車両のロール姿勢を制御することに使用できるので、それはロール姿勢流体変位装置と呼ばれる。その中の制御チャンバは、ロール姿勢制御チャンバと呼ばれる。それから図3に示された接続シーケンスにおいて、左後方ロール姿勢制御チャンバ157は、左後方バランスチャンバ132に接続され、右前方ロール姿勢制御チャンバ158は、右前方バランスチャンバ130に接続され、左前方ロール姿勢制御チャンバ159は、左前方バランスチャンバ129に接続され、右後方ロール姿勢制御チャンバ160は、右後方バランスチャンバ131に接続される。
【0074】
制御ロッド165は、第1のピストン154の逆側に固定されて、制御チャンバ157を貫通している。調和用ダミーロッド166は、第2のピストン155の逆側に固定されて、制御チャンバ160を貫通している。制御ロッド165は、鋸歯状部分又はラック187を有して、ロール姿勢流体変位装置のピストンロッドアセンブリのピストンが、大歯車又はピニオン188の回転を駆動することによって制御されることを可能にする。ピストンロッドアセンブリのピストンは、他の既知の配置(例えば、制御ロッド及びダミーロッドがその中に突き出す追加の液圧式チャンバであり、その液圧式チャンバ内の流体のボリュームが制御される)によっても駆動され得る。
【0075】
ロール姿勢流体変位装置と液圧式システムの4つの流体ボリュームとの間の接続シーケンスは、同じ機能性を達成しながら変化される。このことは、必要であれば、異なる径の中央ロッド156を使用するか、あるいは例えばチャンバ158及び160が交換される場合は(158が今度は右後方ロール姿勢制御チャンバとなり、そして160が今度は右前方ロール姿勢制御チャンバとなる)、主チャンバ151又は152の一方の直径を変更することによって、前後で異なる相対変位を許容することに使用できる。ある種の応用では、ラムのサイジング及び前後の運動比に依存して、2つの後方流体ボリューム間でよりも、2つの前方流体ボリューム間で異なる量の流体を移送することが望ましい。
【0076】
第2の流体変位装置は、2つの主チャンバ171及び172を備え、これらは固定壁173によって分離されている。各主チャンバは、固定壁173を通過する中央ロッド176のいずれかの端部に固定されたそれぞれのピストン174,175によって、2つの制御チャンバ(177及び178と、179及び180)に分割される。制御導管は、第2の流体変位装置の制御チャンバをモード分断装置100のバランスチャンバに接続する。この結果、ピストン174,175及び中央ロッド176の運動は、車両の一方の端部で流体ボリューム中に変位すると共に車両の他方の端部で流体ボリュームから変位して、車両の一方の端部で流体ボリューム中の圧力を増加すると共に車両の他方の端部で流体ボリュームの圧力を低減することによって、車両のピッチ姿勢を調整する。図3では、第2の流体変位装置の制御チャンバを液圧式システムの4つの流体ボリュームに接続する制御導管は、明瞭化のために、第2の流体変位装置170の制御チャンバを第1の流体変位装置150の制御チャンバに接続するように示されているが、それらは明らかに液圧式システムの4つの流体ボリュームの各々における任意の点に接続され得る。
【0077】
第2の流体変位装置は、車両のピッチ姿勢を制御することに使用できるので、それはピッチ姿勢流体変位装置と呼ばれる。その中の制御チャンバは、ピッチ姿勢制御チャンバと呼ばれる。それから図3に示された接続シーケンスにおいて、左後方ピッチ姿勢制御チャンバ177は、左後方ロール姿勢制御チャンバ157に接続され、右前方ピッチ姿勢制御チャンバ178は、右前方ロール姿勢制御チャンバ158に接続され、右後方ピッチ姿勢制御チャンバ179は、右後方ロール姿勢制御チャンバ160に接続され、左前方ピッチ姿勢制御チャンバ180は、左前方ロール姿勢制御チャンバ159に接続される。
【0078】
制御ロッド185は、第1のピストン174の逆側に固定されて、制御チャンバ177を貫通している。調和用ダミーロッド186は、第2のピストン175の逆側に固定されて、制御チャンバ180を貫通している。制御ロッド185は、鋸歯状部分又はラック187を有して、ロール姿勢流体変位装置のピストンロッドアセンブリのピストンが、大歯車又はピニオン188の回転を駆動することによって制御されることを可能にする。ピストンロッドアセンブリのピストンは、他の既知の配置によっても駆動され得る。
【0079】
ピッチ姿勢流体変位装置と液圧式システムの4つの流体ボリュームとの間の接続シーケンスは、同じ機能性を達成しながら変化される点が容易に認められるべきである。
【0080】
前後で異なる相対流体ボリューム変位を生成することが望ましい。例えば、(車両の一方の端部の流体ボリュームから車両の他方の端部の流体ボリューム中に)移送された流体ボリュームが他のシステム剛性の設定値と一致しない場合、ロール剛性は影響される(このことは正の効果に対して故意になされ得る)。加えて、車両の一方の端部の2つの流体ボリュームを増加又は減少させる(即ち、互いに同じ方向にボリュームを変化させて、例えば後方流体ボリュームの圧力を制御する2つの制御チャンバだけを持つロールモーメント分布流体変位装置を提供する)ことが可能である。このことは、ピッチ姿勢を変化させることに加えて、ロール剛性を変化させることになる。ピッチ姿勢の変化は、出願人の国際特許出願第PCT/AU02/01331に記されているように望ましいものであり、それは2つの図示されたような流体変位装置によって比較的高い周波数で能動的に、あるいは負荷及び/又は負荷位置に依存して低い周波数でも制御される。
【0081】
異なる有効面積の容易なサイジングを可能にする1つの配置は、ダミーロッド166,168を流体変位装置150又は170から除き(関連したロッドシールに対する必要性を主チャンバ152又は172の端部から不要にする利点がある)、それから中央ロッド(156又は176)よりも大径の制御ロッド(165又は185)を使用し、そして制御ロッド(165又は185)を含んだ主チャンバ(151又は171)に対して、他方の主チャンバ(152又は172)に対するよりも大きな径を使用することである。このようにして、先に論じたように、1つの装置の制御及び中央ロッド並びに2つの主チャンバをサイズ設定して、チャンバの対の有効面積を一致させることが可能になる。事実、この配置は、各流体変位装置の構成にとっては好ましいものであり、図示の等部品サイズの実施形態は、この概念のより容易な理解に使用される。
【0082】
ここで留意されるべき点は、2つの流体変位装置が図示されているが、別の変形例も可能である。例えば、1つの流体変位装置だけが設けられて、ピッチ姿勢の独立した制御なしに、ロール姿勢が制御されるようにしてもよい。
【0083】
この配置と共に任意のタイプの(上述したような)圧力維持装置が使用され、各流体ボリューム内の平均動作静圧を維持又は制御するようにしてもよい。流体変位装置を利用してロール姿勢及び/又はピッチ姿勢の能動的制御を与える1つの利点は、圧力維持装置が、4つの流体ボリュームに対してそれぞれの流れ制御装置を通して接続された1つのアキュムレータの最も単純な受動的形態になるという点である。
【0084】
モード分断装置100の別の代替配置が図4に示されている。この実施形態は、モード分断装置のレイアウトが図1と同様であって、中央シリンダ部分103と、2つ端部シリンダ部分101及び102とを有するが、これら端部シリンダ部分は、今度は壁190及び191によって中央シリンダ部分から分離されている。中央ピストン106は中央シリンダ部分103内に同様に配置されているが、ロッド107及び108は、より大径であって、壁190及び191をシール可能な状態で通過している。このことにより、便宜上図1と同じ手法で接続され、そして動作する同じ4つのチャンバ109,110,111及び112がモード分断装置内に形成される。既に明らかとされているように、同じ機能性を与える任意の接続シーケンスを使用することが可能である。
【0085】
ロッドは、重量及び材料を節約するために中空品として示されているが、それらは中実であったり、又はロッド材料よりも軽い材料で充填されたものであってもよい。ロッドは、その代わりに又は加えて、ロッドの端部内に配置されてそこから突出した弾性部材を有することもある。この弾性部材は、バンプストップとして作用し、ピストンロッドアセンブリをその移動の端部へ向かって吸収する。
【0086】
コイルスプリング133及び134は、図2及び3にも示されているように、ピストンロッドアセンブリに作用する。
【0087】
図4は、図2の液圧式システムに対する別のオプションの追加物を示しているが、これらの追加物はシステムの任意の実施形態に適用することができる。右及び左の縦方向相互接続導管192及び193は、左前方流体ボリュームを左後方流体ボリュームに、また右前方流体ボリュームを右後方流体ボリュームにそれぞれ接続するために設けられている。これらの導管は、モード分断装置100を効果的にバイパスして、出願人の米国特許第6,761,371号と同様の流体接続性を生じる。この場合、液圧式システムのRMDは、前方及び後方車輪ラムの直径とそれらの実装配置によって決定されるもので、モード分断装置100は最早定常状態のRMDに何らの効果も与えない。縦方向相互接続導管を通る流体の流れを制御するために、その導管内に弁装置194及び195が設けられている。この弁装置は、制限体や、多段又は制御型ダンパ弁及び/又はロックアウト弁を有する。
【0088】
弁装置194及び195がロックアウト弁を有する場合、これらロックアウト弁は、システムのRMDを2つの設定値(一方は車輪ラムとモード分断装置によって決定され、他方は車輪ラムだけによって決定される)間で切り換えるように動作する。このことは、検知された車両ハンドリング入力に、例えばアンダーステアを奨励するために液圧システムの更に前方へバイアスされたRMDへの切換に応答してなされる。この場合、両設定値のRMDは、車両ハンドリングバランス要因によって決定することができる。この代わりに、一方の設定値は、車両の所望ハンドリングバランス(これは典型的に液圧式システムの前方へバイアスされたRMDを生ずる)を与えることに使用でき、そして他方の設定値は、より均一なRMDを車両に与えて、所定のロール剛性に対して低減されたヘッドトス並びに改良された快適さを与えることに使用できる。それから、ロックアウト弁は、車両が直線走行しているか又は急旋回しているかを決定するために検知された入力(例えば、車両スピード、横方向加速度、流体圧力、ステアリング角及び/又はステアリング率)を使用して自動的に制御され、直線の起伏した表面にわたって増加された快適さを与えると共に、急旋回時に所望のハンドリングバランスを与える。ロックアウト弁は、その代わりに、オンロード又はオフロード使用のために手動又は自動的に制御される。この場合、両設定値は、ロール剛性をワープ剛性無しで液圧式システムから与え、オフロードの快適さ(大きなワープ入力中)は、前方から後方へ合理的にバランスされたRMDから有意に利益を得る。
【0089】
弁装置194及び195が減衰特性を有する場合、動的RMDは、導管192,913が完全に閉鎖されているかのように、液圧式システムのRMDに向かうことができる。また、液圧式システムの定常状態ロールRMDは、導管192,913が完全に開放されているかのようになる。これは、車両のロール減衰の前方から後方へのバランスを微調整するために特に有用なツールであるが、これは液圧式システムのRMDとは異なる必要がある。
【0090】
縦方向相互接続導管(192,193)及び関連する弁装置(194及び195)は、流体ボリューム接続導管(77及び80、又は78及び79)の間を接続するように示されているが、それらは4つの流体ボリュームの各々における任意の点の間に接続され得ると共に、モード分断装置100内に組み込まれ得る。
【0091】
縦方向相互接続導管192及び193を設ける別の利点は、与えられる任意の圧力維持システムが、2つのチャネル(即ち、左側流体ボリュームの一方と右側流体ボリュームの一方だけに接続される)だけでよい点である。このことは、パーツを減少させるだけでなく、それでもロール姿勢制御を許容する。
【0092】
各流体ボリューム接続導管内に配置された別の弁装置196,197,198及び199もまた、図4に示されている。これらの弁装置は、制限体や、多段又は制御型ダンパ弁を含むことがあるが、単純なロックアウト弁であることが好ましい。各流体ボリューム接続導管内でロックアウト弁を使用することには、いくつかの利点がある。1つの利点は、故障の場合(即ち、流体圧力の損失が流体ボリュームの1つで検出された場合、あるいはシステム不具合又は部品故障に起因して、流体圧力が車両の動的状態に対してマップされた流体圧力に一致しない場合)に、1つの流体ボリュームの大部分を液圧式システムの残部から隔離する能力である。受動的制限型圧力維持が使用される場合、ロックアウト弁は、圧力維持導管と各流体ボリュームの圧縮/反発導管との間にあることが理想的である。もう1つの利点は、モード分断装置100の使用を制御する能力である。この場合は、2つのロックアウト弁だけが必要とされる。モード分断装置の使用を制御して、前方及び後方システムの独立した2対へ逆戻りすることは望ましい。この前方及び後方システムは、図4に関連して論じられた他の2つの設定値に対して異なるRMDを有することができる。図4の場合、制御は、それら2つの設定値に対して論じられたように、手動又は自動式である。その代わりに又は加えて、モード分断装置の使用を制御して、液圧式システムの自由ワープ形態を除去することは、車輪上昇のような理由に対して望ましい。
【0093】
この別の弁装置は、図4に示された位置の代替位置に設けら、例えばモード分断装置中に、又はアキュムレータダンパー弁(単一又は複数)を含むマニホルドブロック中に一体化される。
【0094】
図5は、図2のモード分断装置と図4の弁オプションとの組み合わせを示しているが、この場合でも単動式車輪ラムを後方に示している。車輪ラムは、車両の端部のいずれか又は両方で単動式であり得るが、フロントエンジン型車両の後方の車輪は、前方よりも低いロール安定化力を要するのが一般的である。ラム13及び14は、反発チャンバ(51,52)を持つように示されている。また、ダンパー弁(59,60)は、なお存在している。これは、後方車輪にとって十分な減衰力が反発方向に発生されることを可能にするために、これらダンパー弁が一般に必要とされるためである。反発チャンバは、反発ダンパー弁を介してそれぞれの圧縮導管に接続されているように示されている。しかしながら、ダンパー弁は、従来のショックアブソーバー内で通常構築されているにように、各後方ラムのピストン(21,22)中に組み込まれ得る。
【0095】
図5にはまた、4つの流体ボリュームを相互接続する制限体140〜143の配置が示されている。この配置は、4つの流体ボリューム間における圧力の非常に低い周波数の等化を許容することに使用できる。この場合、流体圧力源又はアキュムレータに対する必要性は低い。これら相互接続は、モード分断装置の隣接するバランスチャンバ間の制限体によって置換され得る。
【0096】
図6は、図1の液圧式システムに対する追加の変形及び改良を示している。図2,3及び4に対して説明された圧力維持、能動制御及び追加導管及び弁は、発明のこの実施形態にも等しく適用可能である。モード分断装置100は、中央ピストンで2つの同様な半体201及び202に分割される。2つの中央ピストン半体203及び204は、左側流体圧力チャンバ205と、右側流体圧力チャンバ206とを形成する。左右の流体圧力チャンバは、導管207によって接続され、図1のシステムと同様の機能性を与える。加えて、弁208が導管内に配置されて、左右の流体圧力チャンバ間の導管に沿う流体の流れを減衰及び/又は阻止する。この弁は、図4で説明された別の弁装置196,197,198及び199と同様の(故障、RMD変更、車輪上昇制限又は防止に対する)効果を持つモード分断装置の使用を制御することに使用され得る。
【0097】
オプションのアキュムレータ209及び210もまた、図6に示されている。これらのアキュムレータは、追加ヒーブ抵抗を液圧式システムに与える。これは、車輪ラムのロッドの径が何らかの理由で(例えば強度のために、又は液圧式システムから支持及びピッチ剛性を加えるために)大きいときには、弁であり得る。この追加ヒーブ抵抗は、液圧式システムのヒーブ剛性を低減する一方で、ロール剛性及び前後のラム(11〜14)及びアキュムレータ(69〜72)からのピッチ剛性分布は維持する。追加ヒーブ抵抗は、オプションのアキュムレータダンパー弁211及び212によって減衰され得る。
【0098】
図7は、モード分断装置100に対する別の変形を示している。図1のモード分断装置のピストンロッドアセンブリは、図6におけると同様の手法で分割されて、2つの中央ピストン半体203及び204を生じ、これにより中央流体圧力チャンバ221を形成している。この中央流体圧力チャンバに対し、アキュムレータ222によって弾性が加えられている。このアキュムレータは、導管223を介して中央流体圧力チャンバに流体連通している。導管223は、ダンパー手段及び/又はロックアウト弁(図示せず)のような他の弁手段を有することができる。この配置は、図6におけるように、単純にヒーブ弾性を加える。加えて、モード分断装置109,100とそれぞれの流体ボリュームの残部との間に、ダンパー弁224及び225が追加される。これらの追加ダンパー弁は、少量のヒーブ減衰を与えるが、主として有益なワープ減衰を与える。モード分断装置内に配置されて、モード分断装置と流体ボリュームの間で作用するこれらのダンパーの使用は、図4で説明された別の弁装置196,197,198及び199の一体化の一例である。
【0099】
液圧式システムの機能性にとって必須の接続シーケンスを維持しながら、部品の基本配置に対してなされる多くの他の明らかな変更は、この出願の範囲に入るものと考えられる。例えば、このシステムの製造設計では、車輪ラムの主本体中には、車輪ダンパー弁(53〜60)だけでなく、アキュムレータ及びアキュムレータダンパー弁も組込み可能である。例えば、左前方車輪ラムは、車輪ダンパー弁53及び57と、アキュムレータ69と、アキュムレータダンパー弁73とを含むことができる。
【0100】
車輪ダンパー弁は、車輪ラムのチャンバから更に遠く離れて配置され、そしてマニホルド内にさえ配置され得る。このマニホルドは、アキュムレータダンパー弁と、アキュムレータとを与え、更に圧縮、反発及び接続導管の間の接合部さえも与える。同様に、アキュムレータは、車輪ラムから離れて配置される。例えば、前方アキュムレータは、エンジンベイ内に、あるいは関連する流体ボリューム内の他の点であれば接続導管上であっても配置されるか、あるいはモード分断装置内に又は単純に車体の下側にパッケージ及び冷却用に組み込まれる。
【0101】
図全体を通して、図示のアキュムレータは、先に論じられたように液気圧併用型であるが、任意の形態の流体圧力蓄積手段、例えば流体圧力で拡張するホースも使用され得る。
【0102】
既に論じられたように、液圧式システムのロール剛性を変化させることは好ましいが、上記で論じられた圧力制御以外に、このことを達成する多くの単純な既知の方法がある。例えば、液圧式システムのロール剛性の切換を許容するために、前方又は後方流体ボリューム内に、或いは4つの流体ボリューム全ての中に、追加アキュムレータが設けられる。各追加アキュムレータに対して1つのロックアウト弁が設けられる。このロックアウト弁は、手動制御されるか、あるいは入力、例えば車両スピード、横方向加速度、流体圧力、ステアリング角及び/又はステアリング率を使用して自動制御される。追加アキュムレータは、減衰されてもされなくてもよい。
【0103】
1つの全アキュムレータを流体ボリュームと連通/非連通させる液圧的切換え法の変形例は、2つの気体ボリュームを持つアキュムレータ設計を使用することである。それから、より単純、小型で安価な気体切換弁が、ロックアウト弁を2つの気体ボリューム間で切換えて気体ボリュームの一方を隔離することによって、システムで利用可能な気体ボリュームを変化させることに使用され得る。
【0104】
ロール剛性を切り換えるための別の代替法は、少なくとも2つ(即ち、左前方及び右前方及び/又は左後方及び右後方)の流体ボリュームを一緒に接続する‘ブリッジ弁’を使用することである。この方法は、より安価に使用され得る(ブリッジ弁だけが必要とされる)が、液圧式システムから全てのロール剛性とアキュムレータダンパー弁のロール減衰効果とを除去してしまう。一般に、ブリッジ弁を前方流体ボリュームの導管の間及び/又は後方流体ボリュームの導管の間に接続することが最も安価である。別の代替例は、制御型切換可能又は可変バイパス弁を、各車輪ラムの圧縮及び反発チャンバ間のピストン中に設計することである。これはシステムを効果的にショートするので、システムを通る流体の流れを大幅に低減し、そして最良の快適性能を低流体加速度で与えることができる。理想的には、制御は電子的検知入力、例えばステアリング角及び/又はステアリング速度、車両スピード及び横方向加速度である。他の入力、例えば車輪速度は、バイパスが車輪ダンパー弁の効果を維持する場合にも有益であり得る。これは、低減されたロール剛性が、低減された単一車輪剛性及び異なる減衰要求に至るからである。
【0105】
先行する図面の全てを通して、アキュムレータダンパー弁、又は実際に液圧システム内に位置決めされた任意のダンパー弁は、受動的又は制御型であり、その制御は、単純な切換型ダンパー弁から完全に連続可変のダンパー弁まで、既知の形態である。単純な切換型ダンパー弁は、既知のタイプ、例えば各ロールダンパー弁の回りの切換可能なバイパス、又は単純な制御型ブリードオリフィスであり得る。
【0106】
実際に、図に示されたダンパーがある全ての点で、そのダンパー弁は、双方向に同じ特性を持つ単一ダンパー弁であるか、流体流の一方向と他方向で異なる特性を持つ単一弁であるか、一方向には流れ制限特性を持つが逆方向には比較的自由な流れである単一弁であるか、一方向の流れに対する制限を制御する1つのダンパー弁並びに逆方向の流れに対する制限を制御する第2のダンパー弁を含む2つの単動式弁である。この2つの弁は、従来のダンパー弁技術では知られているように、並列に、又は各弁と並列な逆止弁と直列に使用される。
【0107】
各アキュムレータとシステムとの間に、一方が他方とは逆方向に作用すると共にオプションで異なる制限特性を与える2つのアキュムレータダンパー弁を使用することが望ましい。アキュムレータ反発ダンパー弁によってアキュムレータから出る流れに与えられる制限と比較して、アキュムレータ圧縮ダンパー弁によってアキュムレータへ入る流れが少なくしか制限されない場合、車両がロールするに従い、車高は一時的に低減され、そしてサスペンションの動的ロール軸の位置は調整され得る。しかしながら、ここで留意されるべき点は、1つのアキュムレータダンパー弁だけを使用して、双方向制限を与えるか、あるいは一方向減衰だけを与えることも可能である、ということである。例えば、アキュムレータ反発方向の減衰だけが与えられる場合(あるいは、アキュムレータ圧縮方向の減衰が省略さられる場合)は、再び言うが、車両がロールするに従い車高は一時的に低減される。
【0108】
追加の負荷支持及び/又は非常に小さなロール剛性が、車両の一端で液圧式システムから必要とされる場合、車輪ラムは、単動式ラムであることができる。この単動式ラムは、圧縮チャンバ及び反発チャンバを含むことができる。この場合、車輪ラムのピストンは、関連する車輪に対して、反発を、そしてある程度の圧縮減衰をオプションで与えるためのダンパー弁である。この一例は、出願人の国際特許出願第PCT/AU02/00028に見出すことができ、その詳細は参照によりここに組み入れられる。
【0109】
この液圧式システムは、90度にわたり左右に振られて、ロール剛性に代えてピッチ剛性を与えることができる。モード分断装置は、依然として液圧式システムからワープ剛性を取り除き、このシステムは、液圧式システムが適用されるベースサスペンションのロール、ヒーブ又はワープ剛性に影響を与えることなしに、高いピッチ剛性が使用されることを可能にする。
【0110】
車輪は、任意の形態の表面係合手段、例えばスキット、トラック、フロートであり得る。これらは、任意の一般的横断表面、例えば鉄道又は路面電車軌道、タールマク又は他の道路又は舗装道路、泥、砂、水、雪又は氷に係合するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明に係るロール剛性及びロール減衰特性を有した液圧式システムの第1の好ましい実施形態の模式図である。
【図2】圧力維持装置を更に有した、本発明に係る液圧式システムの第2の好ましい実施形態の模式図である。
【図3】ロール剛性及びロールモーメント分布の能動的制御を組み入れた、液圧式システムの第2の好ましい実施形態に対する変形例の模式図である。
【図4】追加の弁及び導管を有した、液圧式システムの第1の好ましい実施形態に対する変形例の模式図である。
【図5】本発明の第3の好ましい実施形態の模式図である。
【図6】本発明の第4の好ましい実施形態の模式図である。
【図7】本発明の第5の好ましい実施形態の模式図である。
【符号の説明】
【0112】
15 左前方の車輪ラム
16 右前方の車輪ラム
17 右後方の車輪ラム
18 左後方の車輪ラム
45 左前方車輪ラム(15)の圧縮チャンバ
46 右前方車輪ラム(16)の圧縮チャンバ
47 右後方車輪ラム(17)の圧縮チャンバ
48 左後方車輪ラム(18)の圧縮チャンバ
100 モード分断装置
124,125,126
シリンダ/ピストンロッドアセンブリ
129 第1のバランスチャンバ
130 第2のバランスチャンバ
131 第4のバランスチャンバ
132 第3のバランスチャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のサスペンションシステムであって、この車両は、車体と、少なくとも2つの前側及び2つの後側車輪アセンブリとを有し、このサスペンションシステムは、液圧式システムを有し、この液圧式システムは、
少なくとも1つの左前方車輪ラムと、少なくとも1つの右前方車輪ラムと、少なくとも1つの左後方車輪ラムと、少なくとも1つの右後方車輪ラムとを有し、各々はそれぞれの前記車輪アセンブリと車体の間に配置され、各車輪ラムは少なくとも圧縮チャンバを有し、この液圧式システムはまた、
モード分断装置を有し、この装置は、少なくともシリンダ部分と1つのピストンロッドアセンブリとの配置によって形成される第1、第2、第3及び第4のバランスチャンバを有し、第1及び第4のバランスチャンバは、ピストンロッドアセンブリの運動によってボリュームを互いに同じ方向に変化させ、第3及び第2のバランスチャンバは、ピストンロッドアセンブリの運動によってボリュームを互いに同じ方向に且つ第1及び第4のバランスチャンバとは逆の方向に変化させ、
左前方車輪ラムの圧縮チャンバは、モード分断装置の第1のバランスチャンバと流体連通して左前方流体ボリュームを形成し、右前方車輪ラムの圧縮チャンバは、第2のバランスチャンバと流体連通して右前方流体ボリュームを形成し、左後方車輪ラムの圧縮チャンバは、第3のバランスチャンバと流体連通して左後方流体ボリュームを形成し、右後方車輪ラムの圧縮チャンバは、第4のバランスチャンバと流体連通して右後方流体ボリュームを形成し、モード分断装置のピストンロッドアセンブリは、車両のロール運動中は流体圧力を比例させるように動作し、そしてワープ中及びオプションでロール運動中はそれぞれの流体ボリューム間に流体を分配するように動作し、
このサスペンションシステムは更に、前方及び後方の弾性車両支持手段を車体と車輪アセンブリの間に有して、車両の少なくとも一部を車輪アセンブリの上方に弾性的に支持することを特徴とするサスペンションシステム。
【請求項2】
車両は、主として弾性車両支持手段によって支持される請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項3】
車両の少なくとも1つの端部に対する車両支持手段は、車両上の負荷の一部分に対する支持を与えるための第1の支持手段を有し、この第1の支持手段は、ロール剛性を与える請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項4】
車両の少なくとも1つの端部に対する車両支持手段は、車両上の負荷の一部分に対する支持を与えるための第2の支持手段を有し、この第2の支持手段は、実質的にゼロのロール剛性を与える請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項5】
各前方車輪ラムは更に、それぞれの反発チャンバを有し、一方の前方車輪ラムの圧縮チャンバは、横方向に隣接する車輪ラムの反発チャンバと流体連通している請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項6】
各後方車輪ラムは更に、それぞれの反発チャンバを有し、一方の後方車輪ラムの圧縮チャンバは、横方向に隣接する車輪ラムの反発チャンバと流体連通している請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項7】
各車輪ラムの少なくとも1つのチャンバに出入りする流体の流れを減衰するためのダンピング手段を更に有する請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項8】
少なくとも1つの流体圧力アキュムレータを各流体ボリューム用に更に有し、各アキュムレータはそれぞれの流体ボリュームと流体連通している請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項9】
ダンピング手段は、少なくとも1つのアキュムレータに出入りする流体の流れを減衰するために設けられる請求項8に記載のサスペンションシステム。
【請求項10】
モード分断装置のピストンロッドアセンブリに作用する弾性手段を更に有する請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項11】
モード分断装置は、2つのシリンダ部分を有し、またピストンロッドアセンブリは、2つのピストンと、少なくとも1つのロッドとを有する請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項12】
モード分断装置は、3つのシリンダ部分を有し、またピストンロッドアセンブリは、第1の中央ピストンと、少なくとも2つのロッドとを有する請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項13】
ピストンロッドアセンブリは更に、2つの端部ピストンを有する請求項12に記載のサスペンションシステム。
【請求項14】
モード分断装置は、第2の中央ピストンを有し、第1及び第2の中央ピストンは、少なくとも1つの流体圧力チャンバを形成する請求項12又は13に記載のサスペンションシステム。
【請求項15】
少なくとも1つの流体圧力チャンバと流体連通した少なくとも1つの追加の流体圧力アキュムレータを更に有する請求項14に記載のサスペンションシステム。
【請求項16】
それぞれの制限体又は弁を通して流体ボリュームの少なくとも2つ、好ましくは各々に接続された圧力維持装置を更に有する請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項17】
圧力維持装置は、制限体を通して各流体ボリュームに接続された流体圧力アキュムレータである請求項16に記載のサスペンションシステム。
【請求項18】
圧力維持装置は、ポンプ、タンク及び流体流制御装置を有する請求項16に記載のサスペンションシステム。
【請求項19】
圧力は、左側流体ボリュームと右側流体ボリュームで異なるように制御され、低い周波数でも、能動的には高い周波数でも、ロール姿勢制御を与える請求項18に記載のサスペンションシステム。
【請求項20】
圧力は、前方流体ボリュームと後方流体ボリュームで異なるように制御され、ピッチ姿勢制御を与える請求項18又は19に記載のサスペンションシステム。
【請求項21】
左側流体ボリュームを選択的に相互接続するための少なくとも1つの弁、及び右側流体ボリュームを選択的に相互接続するための少なくとも1つの弁を更に有し、これによりモード分断装置の影響をバイパスする請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項22】
前方流体ボリュームを選択的に相互接続するための少なくとも1つの弁、及び/又は後方流体ボリュームを選択的に相互接続するための少なくとも1つの弁を更に有し、これにより液圧式システムのロール剛性を除去する請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項23】
弁は、モード分断装置と車輪ラムの間に設けられて、フェールセーフ機能を与えるか又は車輪上昇を制限する請求項1に記載のサスペンションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−531379(P2008−531379A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557281(P2007−557281)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000265
【国際公開番号】WO2006/092013
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(501399751)キネティック プロプライエタリー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】