説明

車両制御装置

【課題】自車両の不必要な燃料消費を防止し、燃費を向上させる。
【解決手段】車両制御装置10は、自車両の速度を検出す車両状態センサ13と、自車両の位置を検出する現在位置検出部21と、自車両の進行方向前方に存在する車両停止位置を検出する停止位置検出部25と、自車両が慣性走行をおこなう状態での速度変化を予測する速度変化予測部23と、現在位置から自車両が慣性走行をおこなった場合に車両停止位置に到達する時点での速度を第1速度として算出する第1速度算出部26と、現在位置から自車両が慣性走行をおこなった場合に車両停止位置から所定距離手前の手前位置に到達する時点での速度を第2速度として算出する第2速度算出部27と、第1速度が第1所定値(例えば、ゼロ)以上である場合または第2速度が第2所定値以上である場合に加速制御の実行を禁止する車速制御部28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自車両が各種施設内に存在する場合あるいは各種の施設に接近した場合に、スロットル開度および燃料消費量を所定の上限値未満に制御して不要な加速を防止すると共に、変速段が所定の低速段かつ速度が所定値以下である場合にアップシフトを禁止する制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−272913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係る制御装置によれば、単に、施設に応じて自車両の走行形態を規制するだけであるから、不必要に自車両の燃費が低下してしまう虞がある。
例えばスロットル開度および燃料消費量を所定の上限値未満に制御するだけでは、この上限値に到達するまでスロットル開度および燃料消費量の増大が許可されることになり、不必要な加速が実行されてしまう虞がある。
また、例えばアップシフトを禁止するだけでは、低速段での回転数の増大が許可されることになり、不必要な回転数増大が実行されてしまう虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自車両の不必要な燃料消費を防止し、燃費を向上させることが可能な車両制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る車両制御装置は、自車両の速度を検出する車速検出手段(例えば、実施の形態での車両状態センサ13)と、自車両の位置を検出する自車位置検出手段(例えば、実施の形態での現在位置検出部21)と、自車両の進行方向前方に存在する車両停止位置を検出する車両停止位置検出手段(例えば、実施の形態での停止位置検出部25)と、前記車速検出手段により検出された前記速度に基づいて、自車両が慣性走行をおこなう状態での速度変化を予測する速度変化予測手段(例えば、実施の形態での速度変化予測部23)と、前記車両停止位置検出手段により検出された前記車両停止位置と、前記自車位置検出手段により検出された前記位置と、前記速度変化予測手段により予測された前記速度変化とに基づいて、前記位置から自車両が慣性走行をおこなった場合に前記車両停止位置に到達する時点での速度を第1速度(例えば、実施の形態での速度VPs、速度VAs)として算出する第1速度算出手段(例えば、実施の形態での第1速度算出部26)と、前記第1速度算出手段により算出された前記第1速度が第1所定値(例えば、実施の形態でのゼロ)以上である場合に加速制御の実行を禁止する車速制御手段(例えば、実施の形態での車速制御部28)とを備える。
【0005】
さらに、本発明の第2態様に係る車両制御装置では、前記車速制御手段は、前記第1速度が第1所定値以上であり、かつ、所定制動開始位置からの所定制動の開始により前記車両停止位置にて自車両を停止可能である場合に、前記加速制御の実行を禁止する。
【0006】
また、本発明の第3態様に係る車両制御装置は、自車両の速度を検出する車速検出手段と、自車両の位置を検出する自車位置検出手段(例えば、実施の形態での車両状態センサ13)と、自車両の進行方向前方に存在する車両停止位置を検出する車両停止位置検出手段(例えば、実施の形態での現在位置検出部21)と、前記車速検出手段により検出された前記速度に基づいて、自車両が慣性走行をおこなう状態での速度変化を予測する速度変化予測手段(例えば、実施の形態での速度変化予測部23)と、前記車両停止位置検出手段により検出された前記車両停止位置と、前記自車位置検出手段により検出された前記位置と、前記速度変化予測手段により予測された前記速度変化とに基づいて、前記位置から自車両が慣性走行をおこなった場合に前記車両停止位置から所定距離手前の手前位置に到達する時点での速度を第2速度(例えば、実施の形態での速度VPq、速度VAq)として算出する第2速度算出手段(例えば、実施の形態での第2速度算出部27)と、前記第2速度算出手段によって算出された前記第2速度が第2所定値(例えば、実施の形態での慣性走行にて車両停止位置での速度Vがゼロとなる場合に対応する手前位置での速度)以上である場合に加速制御の実行を禁止する車速制御手段(例えば、実施の形態での車速制御部28)とを備える。
【0007】
さらに、本発明の第4態様に係る車両制御装置では、前記車速制御手段は、前記第2速度が第2所定値以上であり、かつ、所定制動開始位置からの所定制動の開始により前記車両停止位置にて自車両を停止可能である場合に、前記加速制御の実行を禁止する。
【0008】
さらに、本発明の第5態様に係る車両制御装置は、地図情報を記憶する地図情報記憶手段(例えば、実施の形態での地図記憶部22)を備え、前記速度変化予測手段は、前記車速検出手段により検出された前記速度と、前記地図情報記憶手段に記憶されている前記地図情報とに基づいて、前記速度変化を予測する。
【0009】
さらに、本発明の第6態様に係る車両制御装置では、前記車両停止位置検出手段は、前記地図情報記憶手段に記憶されている前記地図情報に基づいて前記車両停止位置を検出する。
【0010】
さらに、本発明の第7態様に係る車両制御装置は、自車両の進行方向前方に存在する信号機の状態を取得する信号機状態取得手段(例えば、実施の形態での信号機状態取得部24)を備え、前記車両停止位置検出手段は、前記信号機状態取得手段により取得された前記信号機の状態に基づいて前記車両停止位置を検出する。
【0011】
さらに、本発明の第8態様に係る車両制御装置は、操作者の入力操作に応じて所定の燃費優先走行の実行を許可する操作スイッチ(例えば、実施の形態での入力装置14)を備え、前記車速制御手段は、前記操作スイッチにより前記燃費優先走行の実行が許可されている場合に前記加速制御の実行を禁止する。
【0012】
さらに、本発明の第9態様に係る車両制御装置は、前記慣性走行において自車両の駆動源と駆動輪との接続を遮断する遮断制御手段(例えば、実施の形態での変速制御部29)を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1態様に係る車両制御装置によれば、慣性走行の実行状態で車両停止位置に到達する時点での第1速度が第1所定値(例えば、ゼロ)以上である場合には、加速の必要無しに車両停止位置に到達可能であることから、加速制御の実行を禁止することにより、自車両の不必要な燃料消費を防止し、燃費を向上させることができる。また、不要な加速および減速が実行されることが防止され、車両の走行挙動をなめらかに変化させることができる。
さらに、本発明の第2態様に係る車両制御装置によれば、所定制動開始位置からの所定制動の開始により車両停止位置にて自車両を停止可能である場合に、加速制御の実行を禁止することにより、単に第1速度が第1所定値以上である場合に加速制御の実行を禁止する場合に比べて、車両停止位置付近にて自車両の速度が過剰に低下することを防止し、例えば後続の他車両などが自車両の減速走行挙動に違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0014】
また、本発明の第3態様に係る車両制御装置によれば、慣性走行の実行状態で車両停止位置から所定距離手前の手前位置に到達する時点での第2速度が第2所定値、例えば、車両停止位置での速度がゼロとなる状態に対応した値以上である場合には、加速の必要無しに車両停止位置に到達可能であることから、加速制御の実行を禁止することにより、自車両の不必要な燃料消費を防止し、燃費を向上させることができる。また、不要な加速および減速が実行されることが防止され、車両の走行挙動をなめらかに変化させることができる。
さらに、本発明の第4態様に係る車両制御装置によれば、所定制動開始位置からの所定制動の開始により車両停止位置にて自車両を停止可能である場合に、加速制御の実行を禁止することにより、単に第2速度が第2所定値以上である場合に加速制御の実行を禁止する場合に比べて、車両停止位置付近にて自車両の速度が過剰に低下することを防止し、例えば後続の他車両などが自車両の減速走行挙動に違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0015】
さらに、本発明の第5態様に係る車両制御装置によれば、地図情報に基づき、例えば道路勾配やカーブ形状などを取得することができ、自車両が慣性走行をおこなう状態での所定時間経過後の速度変化を、道路の形状に応じて精度よく予測することができる。
さらに、本発明の第6態様に係る車両制御装置によれば、地図情報に基づき、自車両が停止すべき車両停止位置を精度よく検出することができる。
さらに、本発明の第7態様に係る車両制御装置によれば、信号機の状態、例えば点灯している信号灯の種類や信号灯の点灯が切り替わるタイミングなどに応じて、信号機の停止線にて停止する必要があるか否かを精度よく判定することができ、自車両が停止すべき車両停止位置を精度よく検出することができる。
【0016】
さらに、本発明の第8態様に係る車両制御装置によれば、加速制御の実行を禁止する制御に対して操作者の意思を適切に反映させることができる。
さらに、本発明の第9態様に係る車両制御装置によれば、慣性走行において自車両の駆動源と駆動輪との接続を遮断することにより、内燃機関の運転およびトランスミッションでの変速動作およびトルク伝達などに係る摩擦損失に応じて自車両の速度が低下してしまうことを防止し、車両停止位置に到達するまでに慣性走行により走行可能な距離を増大させることができ、慣性走行を開始するタイミングを早めることができ、燃費を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る車両制御装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両制御装置10は、例えば図1に示すように、内燃機関(E)の駆動力をトランスミッション(T/M)を介して車両の駆動輪(図示略)に伝達する車両に搭載され、外界センサ11と、通信装置12と、車両状態センサ13と、入力装置14と、出力装置15と、処理装置16と、ブレーキアクチュエータ17とを備えて構成されている。
さらに、処理装置16は、例えば現在位置検出部21と、地図記憶部22と、速度変化予測部23と、信号機状態取得部24と、停止位置検出部25と、第1速度算出部26と、第2速度算出部27と、車速制御部28と、変速制御部29と、制動制御部30とを備えて構成されている。
【0018】
外界センサ11は、例えば可視光領域や赤外線領域にて撮像可能なカメラ(図示略)および画像処理部(図示略)と、例えばレーザ光やミリ波等のレーダ(図示略)およびレーダ制御部(図示略)とを備えて構成されている。
例えば画像処理部は、カメラにより撮影して得た自車両の進行方向の外界の画像に対して、例えばフィルタリングや二値化処理等の所定の画像処理を行い、二次元配列の画素からなる画像データを生成し、処理装置16に出力する。
また、例えばレーダ制御部は、例えば自車両の進行方向前方に設定された検出対象領域を角度方向に沿った複数の領域に分割し、各領域を走査するようにして、例えばミリ波の発信信号を発信すると共に、各発信信号が自車両の外部の物体によって反射されることで生じた反射信号を受信し、反射信号と発信信号とを混合してビート信号を生成し、処理装置16に出力する。
【0019】
通信装置12は、自車両の外部に設けられた情報発信装置、例えば路側等に配置された路車間通信装置(路上機)や他車両に搭載された車車間通信装置などから発信される情報を受信する。
【0020】
車両状態センサ13は、自車両の車両情報として、例えば自車両の速度(車速)を検出する車速センサや、車体に作用する加速度を検出する加速度センサや、車体の姿勢や進行方向を検出するジャイロセンサや、ヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)を検出するヨーレートセンサや、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号などの測位信号を受信する受信機などを備えて構成されている。
【0021】
入力装置14は、操作者により操作可能な操作スイッチなどを備え、操作者による各種の入力操作に応じた信号、例えば所定の燃費優先走行の実行を許可する信号や、例えば自車両の進行方向前方に存在する信号機の状態(例えば、点灯している信号灯の種類や、信号灯の点灯が切り替わるタイミングなど)を示す信号や、自車両の各種の車両状態を示す信号など、を処理装置16に出力する。
【0022】
出力装置15は、モニタおよびスピーカなどを備え、処理装置16の制御により、例えば所定の燃費優先走行に対する運転操作の指示を運転者に報知したり、例えば外界センサ11による検知結果を表示する。
【0023】
処理装置16の現在位置検出部21は、例えば車両状態センサ13から出力されるGPS(Global Positioning System)信号などの測位信号によって、あるいは、車両状態センサ13の車速センサおよびジャイロセンサおよびヨーレートセンサなどの各センサから出力される検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、あるいは、通信装置12により取得される情報に基づいて、あるいは、測位信号および自律航法の算出処理および通信装置12により取得される情報の少なくとも何れか2つを適宜に組み合わせて、自車両の現在位置を検出すると共に、この現在位置に基づいて、地図記憶部22に記憶されている地図情報に対してマップマッチングを行う。
【0024】
速度変化予測部23は、例えば、車両状態センサ13の車速センサにより検出された自車両の速度(車速)などの車両状態の情報と、地図記憶部22に記憶されている地図情報(例えば、走行路の勾配(道路勾配)やカーブの形状(カーブ形状)など)とに基づいて、慣性走行をおこなう状態、例えば運転者のアクセル操作に係るアクセル開度がゼロとされ、自車両の駆動源の駆動力が駆動輪に伝達されていない走行状態での、速度変化を予測する。
【0025】
この速度変化の例として、例えば図2に示す慣性走行速度変化VA(低速)および慣性走行速度変化VB(高速)では、所定の制限速度VUで走行する自車両が適宜の位置LAまたは位置LBから慣性走行を開始すると、走行路の勾配や路面と車輪との間の摩擦損失、さらに内燃機関(E)およびトランスミッション(T/M)と駆動輪とが接続されている場合での内燃機関の運転およびトランスミッション(T/M)での変速動作およびトルク伝達などに係る摩擦損失に応じて、自車両の速度Vは所定の減小傾向に変化する。
【0026】
また、例えば図2に示す理想走行速度変化VPでは、慣性走行で所定制動開始位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)に到達した自車両が所定制動(例えば、運転者による通常の制動動作など)を開始することを前提として、所定の制限速度VUで走行する自車両が適宜の位置LPから慣性走行を開始すると、走行路の勾配や路面と車輪との間の摩擦損失、さらに内燃機関(E)およびトランスミッション(T/M)と駆動輪とが接続されている場合での内燃機関の運転およびトランスミッション(T/M)での変速動作およびトルク伝達などに係る摩擦損失に応じて、自車両の速度Vは所定の減小傾向に変化する。そして、自車両が所定制動開始位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)に到達すると、自車両が車両停止位置(例えば、図2に示す停止位置LS)にて停止するようにして所定制動(例えば、運転者による通常の制動動作など)が開始される。
【0027】
信号機状態取得部24は、例えば、地図記憶部22に記憶されている地図情報と、現在位置検出部21により検出される自車両の現在位置と、外界センサ11による検知結果と、通信装置12により取得される情報と、入力装置14を介して操作者から入力される情報との、何れかあるいは適宜の組み合わせにより、自車両の進行方向前方に存在する信号機の状態(例えば、点灯している信号灯の種類や、信号灯の点灯が切り替わるタイミングなど)を取得する。
【0028】
停止位置検出部25は、例えば、地図記憶部22に記憶されている地図情報と、現在位置検出部21により検出される自車両の現在位置と、外界センサ11による検知結果と、信号機状態取得部24により取得された信号機の状態との、何れかあるいは適宜の組み合わせにより、自車両の進行方向前方に存在する自車両が停止すべき位置(車両停止位置)を推定あるいは検出する。なお、この車両停止位置は、例えば、走行路上の所定の停止位置(信号機の停止線や一時停止線など)や、先行車両や歩行者から所定距離だけ手前の位置などとされている。例えば停止位置検出部25は、自車両の進行方向前方に存在する信号機の停止線にて停止する必要があるか否かを判定する。
【0029】
第1速度算出部26は、停止位置検出部25により検出された車両停止位置と、現在位置検出部21により検出される自車両の現在位置と、速度変化予測部23により予測された速度変化とに基づき、自車両の現在位置から慣性走行を開始した場合に車両停止位置に到達する時点での速度を第1速度として算出する。
この第1速度は、例えば図2に示すように、自車両が適宜の位置LAから慣性走行を開始した場合には停止位置LSでの速度VAsとなり、自車両が適宜の位置LPから慣性走行を開始した場合には停止位置LSでの速度VPsとなり、自車両が適宜の位置LBから慣性走行を開始した場合には停止位置LSでの速度VBsとなる。
【0030】
第2速度算出部27は、停止位置検出部25により検出された車両停止位置と、現在位置検出部21により検出される自車両の現在位置と、速度変化予測部23により予測された速度変化とに基づき、自車両の現在位置から慣性走行を開始した場合に車両停止位置から所定距離手前の手前位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQなど)に到達する時点での速度を第2速度として算出する。
この第2速度は、例えば図2に示すように、自車両が適宜の位置LAから慣性走行を開始した場合には制動開始位置LQでの速度VAqとなり、自車両が適宜の位置LPから慣性走行を開始した場合には制動開始位置LQでの速度VPqとなり、自車両が適宜の位置LBから慣性走行を開始した場合には制動開始位置LQでの速度VBqとなる。
【0031】
車速制御部28は、操作者による入力操作によって入力装置14から所定の燃費優先走行の実行を許可する信号が出力されている状態において、第1速度算出部26により算出された第1速度が第1所定値(例えば、ゼロ)以上である場合あるいは第2速度算出部27により算出された第2速度が第2所定値(例えば、自車両の慣性走行時に車両停止位置にて第1速度が第1所定値となる状態に対応する手前位置での速度)以上である場合に、加速制御の実行を禁止する。
【0032】
例えば図2に示す慣性走行速度変化VA(低速)のように、所定の制限速度VUで走行する自車両が適宜の位置LAから慣性走行を開始した場合には、車両停止位置(例えば、図2に示す停止位置LS)での速度VAsはゼロとなり、この速度VAsに対応して車両停止位置から所定距離手前の手前位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)での速度Vは速度VPsとなり、位置LAから加速の必要無しに車両停止位置(例えば、図2に示す停止位置LS)に到達可能である。このため、第1速度算出部26により算出された第1速度が速度VAs(=ゼロ)以上、あるいは、第2速度算出部27により算出される車両停止位置から所定距離手前の手前位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)での第2速度が速度VAq以上である場合に、加速制御の実行が禁止される。
【0033】
さらに、車速制御部28は、より好ましくは、第1速度算出部26により算出された第1速度が第1所定値(例えば、ゼロ)以上である場合あるいは第2速度算出部27により算出された第2速度が第2所定値(例えば、自車両の慣性走行時に車両停止位置にて第1速度が第1所定値となる状態に対応する手前位置での速度)以上であり、かつ、所定制動開始位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)からの所定制動(例えば、運転者による通常の制動動作など)の開始により車両停止位置(例えば、図2に示す停止位置LS)にて停止可能である場合に、加速制御の実行を禁止する。
【0034】
例えば図2に示す理想走行速度変化VPのように、所定の制限速度VUで走行する自車両が適宜の位置LPから慣性走行を開始した場合には、所定制動開始位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)での速度VPqは理想制動直前速度VQとなり、この所定制動開始位置にて理想制動直前速度VQの状態から所定制動(例えば、運転者による通常の制動動作など)の開始により車両停止位置(例えば、図2に示す停止位置LS)での速度VPs1はゼロとなり、位置LPから加速の必要無しに車両停止位置(例えば、図2に示す停止位置LS)に到達可能である。このため、所定制動開始位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)から所定制動(例えば、運転者による通常の制動動作など)が開始されることが前提とされていれば、第1速度算出部26により算出された第1速度が、速度VPqに対応する速度VPs2つまり位置LPから慣性走行を継続して車両停止位置(例えば、図2に示す停止位置LS)に到達した場合の速度と等しくなった場合、あるいは、第2速度算出部27により算出される車両停止位置から所定距離手前の手前位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)での第2速度が速度VPqに到達した場合に、加速制御の実行が禁止される。
【0035】
また、車速制御部28は、自車両が所定制動開始位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)に到達した場合に所定制動動作が開始されることによって車両停止位置(例えば、図2に示す停止位置LS)にて停止可能(つまり、停止位置LSでの速度Vがゼロ)となることを前提として、加速制御の実行を許可してもよい。この加速制御は、例えば図2に示す理想加速走行VCのように、所定の理想制動直前速度VQ以上の速度を維持する定速走行を行うために必要とされる加速制御であって、加速時のエネルギー消費を最小とする制御であり、この加速制御は、理想加速走行VCによる速度Vおよび位置Lの組み合わせが、理想走行速度変化VPにおける速度Vおよび位置Lの組み合わせに一致した時点(例えば、図2に示す位置LDに自車両が到達した時点)で禁止され、所定制動開始位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)から所定制動(例えば、運転者による通常の制動動作など)が開始されることが前提とされて、この位置Lから慣性走行が開始される。
【0036】
また、車速制御部28は、加速制御の実行を禁止して自車両の慣性走行をおこなう状態では、変速制御部29によりトランスミッション(T/M)を制御し、自車両の駆動源(つまり、内燃機関(E))と駆動輪との接続を遮断する。
また、車速制御部28は、所定の燃費優先走行に対する情報として、例えば図2に示す各速度変化のグラフ図を出力装置15のモニタに表示したり、加速制御の実行が禁止されたことを出力装置15により運転者に報知したり、運転操作の指示、例えば所定制動開始位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)に到達した場合に所定制動の運転操作を開始することの指示などを出力装置15により運転者に報知する。
【0037】
また、車速制御部28は、自車両が所定制動開始位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)に到達した場合に所定制動が開始されることを前提とした状態(例えば、図2に示す理想走行速度変化VPによる速度変化を示す走行状態など)には、制動制御部30によりブレーキアクチュエータ17を制御し、自動的に制動力を発生させてもよい。
なお、車速制御部28は、例えば自車両の速度Vが所定の制限速度VUよりも大きい場合においても、加速制御の実行を禁止する。
【0038】
本実施の形態による車両制御装置10は上記構成を備えており、次に、この車両制御装置10の動作、特に、理想走行速度変化VPに応じて自車両の加速制御を禁止する動作について添付図面を参照しながら説明する。
【0039】
先ず、例えば図3に示すステップS01においては、操作者により所定の燃費優先走行の実行が許可されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS01の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進む。
そして、ステップS02においては、車両状態センサ13から自車両の車両状態(例えば、車速など)の情報を取得すると共に、外界センサ11または通信装置12から自車両の外界状態の情報(例えば、自車両の進行方向前方に存在する他車両や歩行者や信号機や所定停止位置などの情報)を取得する。
【0040】
そして、ステップS03においては、例えば、車両状態センサ13の車速センサにより検出された自車両の速度(車速)などの車両状態の情報と、地図記憶部22に記憶されている地図情報(例えば、走行路の勾配やカーブの形状など)とに基づいて、慣性走行をおこなう状態での速度変化(例えば、慣性走行速度変化VA(低速)など)を予測する。
そして、ステップS04においては、操作者の入力操作に応じた各種情報、例えば自車両の進行方向前方に存在する信号機において点灯している信号灯の種類や、信号灯の点灯が切り替わるタイミングなどの情報を取得する。
【0041】
そして、ステップS05においては、自車両の進行方向前方に存在する自車両が停止すべき位置(車両停止位置)を推定する。
そして、ステップS06においては、所定制動開始位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)、つまり所定制動(例えば、運転者による通常の制動動作など)が開始されると車両停止位置(例えば、図2に示す停止位置LS)にて停止可能(つまり、停止位置LSでの速度Vがゼロ)となる位置を推定する。
そして、ステップS07においては、理想走行速度変化VP、つまり自車両が所定制動開始位置(例えば、図2に示す制動開始位置LQ)に到達した場合に所定制動が開始されることで車両停止位置(例えば、図2に示す停止位置LS)にて停止可能(つまり、停止位置LSでの速度Vがゼロ)となることを前提として、所定速度(例えば、図2に示す制限速度VU)にて走行中の自車両が所定の位置L(例えば、図2に示す位置LA)に到達した時点で加速制御の実行が禁止される際の速度変化を推定する。
【0042】
そして、ステップS08においては、例えば自車両の速度Vと現在位置(位置L)との組み合わせが、理想走行速度変化VPにおける速度Vと位置Lとの組み合わせの何れかに一致したか否かを判定することによって、加速制御の実行を禁止するか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS01に戻る。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS09に進み、このステップS09においては、加速制御の実行を禁止して、一連の処理を終了する。
【0043】
上述したように、本実施の形態による車両制御装置10によれば、慣性走行の実行状態で車両停止位置に到達する時点での第1速度が第1所定値(例えば、ゼロ)以上である場合には、加速の必要無しに車両停止位置に到達可能であることから、加速制御の実行を禁止することにより、自車両の不必要な燃料消費を防止し、燃費を向上させることができる。また、不要な加速および減速が実行されることが防止され、車両の走行挙動をなめらかに変化させることができる。さらに、所定制動開始位置からの所定制動の開始により車両停止位置にて自車両を停止可能である場合に、加速制御の実行を禁止することにより、単に第1速度が第1所定値以上である場合に加速制御の実行を禁止する場合に比べて、車両停止位置付近にて自車両の速度が過剰に低下することを防止し、例えば後続の他車両などが自車両の減速走行挙動に違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0044】
また、慣性走行の実行状態で車両停止位置から所定距離手前の手前位置に到達する時点での第2速度が第2所定値、例えば、車両停止位置での速度がゼロとなる状態に対応した値以上である場合には、加速の必要無しに車両停止位置に到達可能であることから、加速制御の実行を禁止することにより、自車両の不必要な燃料消費を防止し、燃費を向上させることができる。また、不要な加速および減速が実行されることが防止され、車両の走行挙動をなめらかに変化させることができる。さらに、所定制動開始位置からの所定制動の開始により車両停止位置にて自車両を停止可能である場合に、加速制御の実行を禁止することにより、単に第2速度が第2所定値以上である場合に加速制御の実行を禁止する場合に比べて、車両停止位置付近にて自車両の速度が過剰に低下することを防止し、例えば後続の他車両などが自車両の減速走行挙動に違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0045】
さらに、速度変化予測部23は、地図記憶部22に記憶されている地図情報に基づき、例えば道路勾配やカーブ形状などを取得することができ、自車両が慣性走行をおこなう状態での速度変化を、道路の形状に応じて精度よく予測することができる。
さらに、停止位置検出部25は、地図情報に基づき、自車両が停止すべき車両停止位置を精度よく検出することができる。
さらに、停止位置検出部25は、信号機の状態、例えば点灯している信号灯の種類や信号灯の点灯が切り替わるタイミングなどに応じて、信号機の停止線にて停止する必要があるか否かを精度よく判定することができ、自車両が停止すべき車両停止位置を精度よく検出することができる。
【0046】
さらに、操作者による入力操作によって入力装置14から所定の燃費優先走行の実行を許可する信号が出力されている場合に加速制御の実行を禁止することから、加速制御の実行を禁止する制御に対して操作者の意思を適切に反映させることができる。
さらに、慣性走行においてトランスミッション(T/M)により自車両の駆動源(内燃機関(E))と駆動輪との接続を遮断することにより、内燃機関(E)の運転およびトランスミッション(T/M)での変速動作およびトルク伝達などに係る摩擦損失に応じて自車両の速度が低下してしまうことを防止し、車両停止位置に到達するまでに慣性走行により走行可能な距離を増大させることができ、慣性走行を開始するタイミングを早めることができ、燃費を向上させることができる。
【0047】
なお、上述した実施の形態において、速度変化予測部23は、車速と地図情報に基づき速度変化を予測するとしたが、これに限定されず、内燃機関(E)およびトランスミッション(T/M)と駆動輪とが接続されている場合には、さらにトランスミッション(T/M)での変速比に基づき、速度変化を予測してもよい。
【0048】
なお、上述した実施の形態においては、車両停止位置から所定距離手前の手前位置を所定制動開始位置と同一としたが、これに限定されず、車両停止位置から所定距離手前の手前位置と、所定制動開始位置とを、互いに異なる位置としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両制御装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る自車両の速度変化の例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10 車両制御装置
13 車両状態センサ(車速検出手段)
14 入力装置(操作スイッチ)
21 現在位置検出部(自車位置検出手段)
22 地図記憶部(地図情報記憶手段)
23 速度変化予測部(速度変化予測手段)
24 信号機状態取得部(信号機状態取得手段)
25 停止位置検出部(車両停止位置検出手段)
26 第1速度算出部(第1速度算出手段)
27 第2速度算出部(第2速度算出手段)
28 車速制御部(車速制御手段)
29 変速制御部(遮断制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の速度を検出する車速検出手段と、
自車両の位置を検出する自車位置検出手段と、
自車両の進行方向前方に存在する車両停止位置を検出する車両停止位置検出手段と、
前記車速検出手段により検出された前記速度に基づいて、自車両が慣性走行をおこなう状態での速度変化を予測する速度変化予測手段と、
前記車両停止位置検出手段により検出された前記車両停止位置と、前記自車位置検出手段により検出された前記位置と、前記速度変化予測手段により予測された前記速度変化とに基づいて、前記位置から自車両が慣性走行をおこなった場合に前記車両停止位置に到達する時点での速度を第1速度として算出する第1速度算出手段と、
前記第1速度算出手段により算出された前記第1速度が第1所定値以上である場合に加速制御の実行を禁止する車速制御手段と
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記車速制御手段は、前記第1速度が第1所定値以上であり、かつ、所定制動開始位置からの所定制動の開始により前記車両停止位置にて自車両を停止可能である場合に、前記加速制御の実行を禁止することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
自車両の速度を検出する車速検出手段と、
自車両の位置を検出する自車位置検出手段と、
自車両の進行方向前方に存在する車両停止位置を検出する車両停止位置検出手段と、
前記車速検出手段により検出された前記速度に基づいて、自車両が慣性走行をおこなう状態での速度変化を予測する速度変化予測手段と、
前記車両停止位置検出手段により検出された前記車両停止位置と、前記自車位置検出手段により検出された前記位置と、前記速度変化予測手段により予測された前記速度変化とに基づいて、前記位置から自車両が慣性走行をおこなった場合に前記車両停止位置から所定距離手前の手前位置に到達する時点での速度を第2速度として算出する第2速度算出手段と、
前記第2速度算出手段によって算出された前記第2速度が第2所定値以上である場合に加速制御の実行を禁止する車速制御手段と
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
前記車速制御手段は、前記第2速度が第2所定値以上であり、かつ、所定制動開始位置からの所定制動の開始により前記車両停止位置にて自車両を停止可能である場合に、前記加速制御の実行を禁止することを特徴とする請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
地図情報を記憶する地図情報記憶手段を備え、
前記速度変化予測手段は、前記車速検出手段により検出された前記速度と、前記地図情報記憶手段に記憶されている前記地図情報とに基づいて、前記速度変化を予測することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記車両停止位置検出手段は、前記地図情報記憶手段に記憶されている前記地図情報に基づいて前記車両停止位置を検出することを特徴とする請求項5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
自車両の進行方向前方に存在する信号機の状態を取得する信号機状態取得手段を備え、
前記車両停止位置検出手段は、前記信号機状態取得手段により取得された前記信号機の状態に基づいて前記車両停止位置を検出することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1つに記載の車両制御装置。
【請求項8】
操作者の入力操作に応じて所定の燃費優先走行の実行を許可する操作スイッチを備え、
前記車速制御手段は、前記操作スイッチにより前記燃費優先走行の実行が許可されている場合に前記加速制御の実行を禁止することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1つに記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記慣性走行において自車両の駆動源と駆動輪との接続を遮断する遮断制御手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項8の何れか1つに記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−173143(P2009−173143A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13097(P2008−13097)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】