説明

車両横転時の乗員保護装置および乗員保護方法

【課題】 車両のロールオーバー時に乗員の頭部空間を積極的に増大して、頭部の保護効果をより高めることができる車両横転時の乗員保護装置の提供を図る。
【解決手段】 車両1のロールオーバー状態を検出する車両横転検出手段20と、乗員Cをシート2に拘束するシートベルト装置30と、シートバック3を所定量後傾させるシートバック後傾手段40と、車両横転検出手段20の検出信号からロールオーバーを判断してシートベルト装置30およびシートバック後傾手段40を作動するコントロールボックス50と、を備えることにより、ロールオーバーが検出されると乗員Cはシート2に拘束された状態でシートバック3が所定量後傾されるので、乗員Cの頭部Chはシートバック3の後傾に伴ってシートバック3の回動中心を中心として後方に移動し、頭部Chと車室内の天井との間の空間を増大できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールオーバーによる車両横転時の乗員保護装置および乗員保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両がロールオーバーした際の乗員の保護装置としては、乗員の頭部の車室外側にエアバッグ袋体を配置し、ロールオーバーを検出した際にエアバッグ袋体を膨張させて乗員の頭部を保護するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−142303号公報(第5−6頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両がロールオーバーした際には車両の天地が略逆となってルーフから接地する場合があり、このように天地が逆となった場合は乗員の頭部が天井と干渉する恐れがある。しかし、特許文献1に示した保護装置では、エアバッグ袋体によって乗員頭部が側方移動するのを阻止できるのであるが、頭部が天井と干渉するのを積極的に防止できるものではない。
【0004】
そこで、本発明は車両のロールオーバー時に乗員の頭部上方空間を積極的に増大して、頭部の保護効果をより高めることができる車両横転時の乗員保護装置および乗員保護方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両のロールオーバー状態を検出する車両横転検出手段と、乗員をシートに拘束する乗員拘束手段と、シートを所定量後傾させるシート後傾手段と、車両横転検出手段の検出信号からロールオーバーを判断して前記乗員拘束手段および前記シート後傾手段を作動する制御手段と、を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両のロールオーバーが検出されると乗員がシートが拘束された状態で該シートが所定量後傾されるので、乗員の頭部はシートバックの後傾に伴って後方に移動し、頭部と車室内の天井との間の空間を増大できるので、頭部が天井に干渉するのを効率良く抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0008】
図1〜図11は本発明にかかる車両横転時の乗員保護装置の第1実施形態を示し、図1は乗員保護装置を示す車両前半部分の側面図、図2は乗員保護装置が適用されるシートの斜視図、図3はシートの内部構造を示す背面図、図4は図3中A部の側面図であり、図5はロールオーバーによる車両の横転状態を(a)〜(c)に順を追って示す背面図、図6は乗員保護装置の作動状態を(a)〜(c)に順を追って示すシートの側面図である。
【0009】
また、図7はシートバック下部の内部構造を詳細に示す分解斜視図、図8はシートバックの後傾機構に用いられるシャフトガイドを詳細に示す拡大図、図9はシート下部の内部構造を要部断面として示す背面図であり、図10は乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図、図11はロールオーバーの判定の一例を示すマップである。
【0010】
本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10は、図1に示すように車両1のシート2に適用され、車両1のロールオーバーによって車両1が横転する際に乗員Cを保護するようにしたもので、車両1のロールオーバー状態を検出する車両横転検出手段20と、乗員Cをシート2に拘束する乗員拘束手段としてのシートベルト装置30と、シート2具体的にはシートクッション4に対してシートバック3を所定量後傾させるシートバック後傾手段40(図3参照)と、車両横転検出手段20の検出信号からロールオーバーを判断して前記シートベルト装置30および前記シートバック後傾手段40を作動する制御手段としてのコントロールボックス50と、を備えている。
【0011】
前記シートベルト装置30は、図2にも示すように乗員Cの上半身Cuをシートバック3に拘束するショルダーベルト31と、乗員Cの腰部Cwをシートクッション4に拘束するラップベルト32と、を備えて3点式シートベルトとして構成される。
【0012】
即ち、前記ショルダーベルト31は、乗員Cの車外側の肩部Csから車内側の腰部Cwに亘って斜めに配索されるとともに、前記ラップベルト32は腰部Cwの車内外両側に亘って配索され、車内側で連続するショルダーベルト31とラップベルト32との間に挿通したタング33をインナーバックル34に係脱自在に装着してある。
【0013】
また、ショルダーベルト31の肩側上端部は、シートバック3の上端部に設けたウエビング挿通口35からシートバック3内に取り込まれ、該シートバック3の下部に内蔵したウエビング巻取装置としての電動リトラクタ36に巻き取られるようになっている。
【0014】
前記電動リトラクタ36はプリテンショナー機能とロードリミッター機能とを備え、更に、通常時の巻き取り・巻き戻しを行うモータ巻取手段と、ロールオーバーや衝突時等の緊急時にウエビング37を巻き取る火薬式巻取手段と、を備えている。
【0015】
前記車両横転検出手段20は、図1に示すように少なくとも車両1のロール角度およびロールレイトを測定する角速度センサ21を備え、コントロールボックス50は、これらロール角度信号およびロールレイト信号を入力して図11に示すマップに基づいて、それらロール角度およびロールレイトがしきい値Kを越えた領域Bをロールオーバーとして判断するようになっている。
【0016】
また、前記車両横転検出手段20は、前記角速度センサ21に加えてロールオーバーをより正確に検出するために、車両1の横加速度を測定する加速度センサ22と、乗員Cとシート2の接触圧力分布を測定するシート圧力センサ23と、乗員Cとドアトリム5の接触圧力を測定するトリム圧力センサ24と、乗員Cの頭部Chの移動および上体Cu(頭部Ch)の移動をそれぞれ測定する小型カメラ25aおよび超音波センサ25bからなる乗員移動センサ25と、を備えている。
【0017】
そして、前記コントロールボックス50は、ロール角度およびロールレイト、横加速度、シートの接触圧力、ドアトリムの接触圧力、および乗員移動量、つまり、乗員Cの上体移動量がそれぞれしきい値Kを越えた領域をロールオーバーと判断するようになっている。
【0018】
従って、コントロールボックス50は、乗員Cの上体移動を検出し、その上体移動が所定値を超えたときに前記シートベルト装置30が作動される。
【0019】
前記シートバック後傾手段40を設けたシート2は、図3,図4に示すように逆U字状のシートバックフレーム3aの上端辺にヘッドレスト6のヘッドレストフレーム6aが取り付けられるとともに、左右辺の上下中央部間にはシートバックスプリング3bおよび補強フレーム3cが設けられ、かつ、シートバックフレーム3aの下端部には、シートバック3の傾動中心となる主シャフト100が設けられ、この主シャフト100がシートクッション4のシートクッションフレーム4aの車両後方端部に連結される。
【0020】
前記主シャフト100の両端部には、シートバック3の傾動位置を固定するシャフトガイド101,102が設けられるとともに、主シャフト100の片側端部にはシートバック3の前後方向傾斜位置を任意に設定するシートバックリクライナー103が設けられる。
【0021】
また、主シャフト100のシートバックリクライナー103を設けた片側端部には、シャフトガイド101、シートバックリクライナー103およびシートバックフレーム3aに亘って係脱する作動ピン104aを有するソレノイド104が設けられ、コントロールボックス50からの指令信号によりソレノイド104の作動ピン104aが出没作動する。
【0022】
更に、前記シャフトガイド101,102のうち片方のシャフトガイド101の外周には、シートクッションフレーム4aに設けたシート可倒用モータ105のギア106が噛合するギアが形成され、ロールオーバー時にコントロールボックス50から出力される指令信号によりシート可倒用モータ105が作動してギア106を回転し、シャフトガイド101を介してシートバック3を所定量後傾させるようになっている。
【0023】
そして、前記シャフトガイド101、前記ソレノイド104および前記シート可倒用モータ105によって前記シートバック後傾手段40が構成される。
【0024】
前記シートバックフレーム3aには前記電動リトラクタ36の取付け部分から上方にウエビングガイド38が延在され、該ウエビングガイド38はシートバックフレーム3aの上端から若干突出して、その突出部分に前記ウエビング挿通口35が形成され、電動リトラクタ36から繰り出されたウエビング37はウエビング挿通口35からシートバック3前方へと延びてショルダーベルト31となる。
【0025】
前記乗員保護装置10を搭載した車両1は、図5(a)〜(c)に示すようにロールオーバーにより横転した場合、図6(a)〜(c)に示すようにシートベルト装置30およびシートバック3が作動して乗員Cを後方に所定量倒し、乗員頭部Chと天井との間の空間を拡大するようになっている。尚、図5(a)は横力Fの入力状態、図5(b)は車体1が1/4回転した状態、図5(c)は車体が3/4回転した状態を示す。
【0026】
図6(a)はロールオーバーが発生しない通常の状態を示し、乗員Cはシートベルト装置30を着用してシート2に着座しており、この状態で前記車両横転検出手段20によりロールオーバーが検出されると、電動リトラクタ36が作動してウエビング37を巻き込み、ショルダーベルト31が所定の張力をもって乗員Cをシートバック3に強く拘束するとともに、図6(c)に示すようにシート可倒用モータ105によりシートバック3とともに乗員Cを所定量後傾させるようになっている。
【0027】
このとき、前記電動リトラクタ36および前記シート可倒用モータ105は、それぞれが正・逆回転が可能となっているため、シートベルト装置30およびシートバック後傾手段40はロールオーバーの検出前の状態に復帰する可逆機能を備えることになる。
【0028】
前記シート2の詳細な下部構造は、図7〜図9に示すようにシートバックフレーム3aの下端部はシートスライダー110に取り付けられるようになっている。
【0029】
シートスライダ110は、車両前後方向に延在してフロアパネルに固定される車幅方向内外のスライドレール111と、これらスライドレール111に前後移動自在に配置されるスライダー112とからなり、車幅方向内外のそれぞれのスライダー112には、ピン113を介してプレート114が結合され、これらプレート114にシートバックフレーム3aの下端部が回動可能に連結される。
【0030】
即ち、車幅方向内方(図中右方)のプレート114にはボス付穴115がシート内側に突設され、そのボス付穴115がシートバックフレーム3aの下端部に形成した支持穴116に回動可能に嵌合される一方、車幅方向外方(図中左方)のプレート114にはボス部115a(図9参照)がシート内側に突設され、該ボス部115aがシートバックフレーム3aの下端部に形成した支持穴116に回動可能に嵌合される。
【0031】
車幅方向内方(図中右方)のシートバックフレーム3aの下端部内側には、円盤状の前記シートバックリクライナー103と、同様に円盤状の前記シャフトガイド101がその順に配置されるとともに、車幅方向外方(図中左方)のシートバックフレーム3aの下端部内側には、円盤状のシャフトガイド102が配置され、それぞれのシャフトガイド101,102の中心穴101a,103aに、前記主シャフト100の両端部に形成した小径支持部100a,100bが回転自在に嵌合される。
【0032】
このとき、シャフトガイド101,102はピン117によってシートバックフレーム3aにそれぞれ結合されている。
【0033】
シャフトガイド101の中心穴101aの周縁部と、シートバックリクライナー103の中心穴103aの周縁部、およびシートバックフレーム3aの前記支持穴116の周縁部には、それぞれ対応させて周方向に複数の長穴101b,103b,116aが形成され、各長穴101b,103b,116aには主シャフト100に取り付けたソレノイド104の作動ピン104aが突出状態で貫通してシートバックフレーム3aを固定する。
【0034】
また、前記シートバックフレーム3aと車幅方向内・外のプレート114との間には、シートバックフレーム3aを復帰方向に回動付勢する渦巻きばね118が配置され、その渦巻きばね118の内周端部は前記ボス付穴115の周縁および前記ボス部115aと反対側の側面からそれぞれ突設した係止突起119に係止されるとともに、渦巻きばね118の外周端部はシートバックフレーム3aの側面から突設した係止突起120に係止される。
【0035】
車幅方向内・外のスライダー112間に連結フレーム121が架設され、この連結フレーム121に結合した支持台122で前記主シャフト100の車内側端部を回転自在に支持し、この支持台122に前記シート可倒用モータ105が取り付けられるとともに、前述のようにシャフトガイド101の外周にはギア歯が形成されており、前記シート可倒用モータ105の回転軸に設けたギア106がシャフトガイド101の外周に常時噛合される。
【0036】
また、本実施形態ではシートバック3を、その前後方向傾斜位置を任意に設定するリクライニング装置60を介してシートクッション4に連結してある。
【0037】
即ち、前記シートバックリクライナ103が配置される側には、プレート114の外側にリクライナ可動レバー123が配置され、これらシートバックリクライナ103とリクライナ可動レバー123とによって前記リクライニング装置60が構成される。
【0038】
前記リクライナ可動レバー123は、中間部分に設けた長穴123aに挿通したピン124を介してプレート114に取り付けられるとともに、操作部123bとは反対側端部123cが前記ボス付穴115から挿通されてシートバックリクライナ103の中心穴103aに係合される。
【0039】
そして、前記乗員保護装置10では、コントロールボックス50が図10に示すフローチャートに従ってロールオーバーを検出し、その結果に基づいてシートバック後傾手段40およびシートベルト装置30を制御するようになっており、また、本実施形態ではカーテンエアバッグを設けて、このカーテンエアバッグをも制御するようになっている。
【0040】
即ち、前記フローチャートでは、まず、イグニッションのオンによって制御がスタートすると、ステップS1によってシートバック3の倒れ状態を判定するフラグを0とした後、ステップS2によってタイマーを0設定し、ステップS3〜S5によってロールレイト、ロール角度、横加速度を順次読み込む。
【0041】
そして、ステップS6で制御開始から規定時間が経過していないことを確認して、ステップS7〜S9によって乗員頭部Chの移動量、シート圧力分布、ドアトリム接触圧力を順次読み込んだ後、ステップS10で制御開始からの時間を計算して、ステップS11で乗員Cの横移動量が規定値を超えた場合はロールオーバーの可能性があるとして、ステップS12でシートバック3が後傾状態に無い場合に、ステップS13によって電動リトラクタ36を作動してショルダーベルト31で乗員Cをより強くシートバック3に拘束する。
【0042】
次に、ステップS14では、図11に示すマップに基づいてロール角度およびロールレイトがしきい値Kを越えない領域Aにあると判断した場合は、ステップS15でシートバック3が倒れていない状態を確認した後、ステップS16によってソレノイド104の作動ピン104aを後退させてシートバック可倒用ロックを解除するとともに、ステップS17によってシート可倒用モータ105を作動してシートバック3を所定量後傾させた後、ステップS18で前記ソレノイド104の作動ピン104aを突出させて、シートバック3を所定量後傾させた状態にロックしてステップS19でシートバック3の倒れ状態を判定するフラグを1とする。
【0043】
その後、再びステップS2のデータの入力制御に戻り、ステップS2〜S11まで同様の制御を実行した後、ステップS12からステップS14に進んでマップの領域Aを越えてステップS20によってマップが領域Bにあると判断した場合は、ロールオーバーが発生した場合であるためステップS21によって電動リトラクタ36のプリテンショナーを作動させるとともに、カーテンエアバッグを展開させて乗員頭部Chが車体側部に衝接するのを緩和する。
【0044】
一方、ステップS11で乗員Cの横移動が規定値を超えなかった場合、かつ、ステップS22でシートバック3が倒れた状態にある(フラグ=1)と判断した場合は、ステップS23でソレノイド104の作動ピン104aを後退させてロック解除した後、ステップS24でシート可倒用モータ105を逆回転させてシートバック3を後傾させる前の状態に戻し、ステップS25では再度ソレノイド104の作動ピン104aを突出させてシートバック3をロックする。
【0045】
以上説明したように本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10によれば、車両のロールオーバー状態を検出する車両横転検出手段20と、乗員Cをシート2に拘束するシートベルト装置30と、シートバック3を所定量後傾させるシートバック後傾手段40と、車両横転検出手段20の検出信号からロールオーバーを判断して前記シートベルト装置30および前記シートバック後傾手段40を作動するコントロールボックス50と、を設けて構成したので、ロールオーバーが検出されると乗員Cはシート2に拘束された状態でシートバック3を所定量後傾することができるので、乗員Cの頭部Chはシートバック3の後傾に伴ってシートバック3の主シャフト100を中心として後方に移動し、頭部Chと車室内の天井との間の空間を増大して、頭部Chが天井に干渉するのを効率良く抑制することができる。
【0046】
また、前記シートベルト装置30は、乗員Cの上半身Cuをシートバック3に拘束するショルダーベルト31と、乗員Cの腰部Cwをシートクッション4に拘束するラップベルト32と、を備えた3点式シートベルトとして構成したので、ロールオーバー時に乗員Cをシート2に拘束する際に、ショルダーベルト31によって乗員Cをシートバック3に効率良く拘束し、シートバック3を後傾した際に乗員頭部Chと天井との間の空間を確実に増大することができる。
【0047】
更に、ショルダーベルト31の肩側上端部を、シートバック3の上端部に設けたウエビング挿通口35からシートバック3内に取り込み、該シートバック3に内蔵した電動リトラクタ36に巻き取るようにしたので、乗員Cをシートバック3とともに倒す際にウエビング37を引き込み易くなるとともに、ウエビング37の巻取り量が少なくなるため迅速に乗員Cを拘束することができる。
【0048】
更にまた、前記電動リトラクタ36はプリテンショナー機能とロードリミッター機能とを備え、更に、通常時の巻き取り・巻き戻しを行うモータ巻取手段と、ロールオーバーや衝突時等の緊急時にウエビング37を巻き取る火薬式巻取手段と、を備えていることにより、通常時は任意にウエビング37の巻き取り、ロールオーバー時の緊急時には瞬時にウエビング37を巻き取ることができるため、迅速にかつ効果的に乗員Cを拘束することができる。
【0049】
また、シートベルト装置30およびシートバック後傾手段40は、ロールオーバーの検出前の状態に復帰する可逆機能を備えたことにより、車両1がロールオーバーに至らなかった場合は、ショルダーベルト31の強い拘束を自動的に解除するとともに、シートバック3を自動的に元の状態に復帰できるので、その都度シートベルト装置30やシートバック3のリクライニング位置を手動で調整し直す手間を省くことができる。
【0050】
更に、車両横転検出手段20は、車両1のロール角度およびロールレイトを測定する角速度センサ21を備え、コントロールボックス50は、これらロール角度およびロールレイトがしきい値Kを越えた領域Bをロールオーバーとして判断するようにしたので、簡単な装置によって容易に車両横転を判断できる。
【0051】
更にまた、車両横転検出手段20は、前記角速度センサ21に加えて車両1の横加速度を測定する加速度センサ22と、乗員Cとシート2の接触圧力分布を測定するシート圧力センサ23と、乗員Cとドアトリム5の接触圧力を測定するトリム圧力センサ24と、乗員Cの頭部Ch移動および上体Cuの移動をそれぞれ測定する乗員移動センサ25とを備え、コントロールボックス50は、ロール角度およびロールレイト、横加速度、シートの接触圧力、ドアトリムの接触圧力、および乗員移動量がそれぞれしきい値Kを越えた領域をロールオーバーと判断するようにしたので、車両の横転をより精度良く判断できる。
【0052】
図12〜図18は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図12は乗員保護装置が適用されるシートの斜視図、図13はシートの内部構造を示す背面図、図14は図12中B部の側面図であり、図15は乗員保護装置の作動状態を(a)〜(c)に順を追って示すシートの側面図である。
【0053】
また、図16はシートバック下部の内部構造を詳細に示す分解斜視図、図17はシート下部の内部構造を要部断面として示す背面図であり、図18は乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図である。
【0054】
本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Aは、基本的に第1実施形態の乗員保護装置10と略同様の構成となり、車両横転検出手段20と、乗員拘束手段としてのシートベルト装置30と、シートバック後傾手段40Aと、コントロールボックス50と、が設けられ、車両横転検出手段20およびコントロールボックス50は第1実施形態の図1と同様に構成されるとともに、図12に示すようにシートベルト装置30は第1実施形態と同様にショルダーベルト31およびラップベルト32を備えた3点式シートベルトとして構成される。
【0055】
特に、本実施形態では図12〜図14に示すように、シートベルト装置30とシートバック後傾手段40Aとの間に、それらを互いに連動させて乗員を拘束しつつシートバック3を後傾させる連動手段200を設けてある。
【0056】
即ち、前記連動手段200は、図13,図14に示すようにシートベルト装置30の電動リトラクタ36の回転部36aと、シートバック3の傾動軸としての主シャフト100に設けたプーリ201と、これら回転部36aとプーリ201とを周回して回転力を伝達する無端ベルトとしてのリング状のワイヤ202で形成してある。
【0057】
そして、車両1が第1実施形態の図5に示したようにロールオーバーにより横転した場合、図15(a)〜(c)に示すように第1実施形態と同様に、シートベルト装置30およびシートバック3が作動して乗員Cを後方に所定量倒し、乗員頭部Chと天井との間の空間を拡大するようになっている。
【0058】
即ち、図15(a)はロールオーバーが発生しない通常の状態を示し、乗員Cがシートベルト装置30を着用してシート2に着座した状態で、車両横転検出手段20によりロールオーバーが検出されると、図15(b)に示すように電動リトラクタ36が作動してウエビング37を巻き込み、ショルダーベルト31が所定の張力をもって乗員Cをシートバック3に強く拘束するとともに、図15(c)に示すように電動リトラクタ36の作動によりワイヤ202を介してシートバック3とともに乗員Cを所定量後傾させるようになっている。
【0059】
また、本実施形態にあっても前記電動リトラクタ36は正・逆回転が可能となって、シートベルト装置30およびシートバック後傾手段40Aを、ロールオーバーの検出前の状態に復帰する可逆機能を備えている。
【0060】
前記シート2の詳細な下部構造は、図16,図17に示すようにシートバックフレーム3aの下端部がシートスライダ110のスライダー112にプレート114を介して回動可能に取り付けられる。
【0061】
また、車幅方向内方(図中右方)のシートバックフレーム3aの下端部内側には、シートバックリクライナー103とシャフトガイド101がその順に配置されるとともに、車幅方向外方(図中左方)のシートバックフレーム3aの下端部内側にはシャフトガイド102が配置されており、それぞれのシャフトガイド101,102の中心穴101a,102aに、前記主シャフト100の両端部の小径支持部100a,100bが回転自在に嵌合される。
【0062】
そして、シャフトガイド101とシートバックリクライナー103およびシートバックフレーム3aに形成した複数の長穴101b,103b,116aには、主シャフト100に取り付けたソレノイド104の作動ピン104aが突出状態で貫通してシートバックフレーム3aを固定するようになっている。
【0063】
また、シートバックフレーム3aと車幅方向内・外のプレート114との間には、シートバックフレーム3aを復帰方向に回動付勢する渦巻きばね118が設けられるとともに、車幅方向内・外のスライダー112間に架設した連結フレーム121に結合した支持台122によって主シャフト100の車内側端部が回転自在に支持される。
【0064】
ここで、本実施形態では前記支持台122の車内側に位置して主シャフト100に前記プーリ201を回転方向に係止して設けるとともに、そのプーリ201の上方に位置する電動リトラクタ36の回転部36aとプーリ201との間に無端状の前記ワイヤー202を周回し、電動リトラクタ36の回転力を主シャフト100に伝達するようになっている。
【0065】
また、第1実施形態と同様に前記シートバックリクライナ103が配置される側には、プレート114の外側にリクライナ可動レバー123が配置され、これらシートバックリクライナ103およびリクライナ可動レバー123によって、シートバック3の前後方向傾動位置を任意に設定するリクライニング装置60が構成される。
【0066】
そして、前記乗員保護装置10Aにあっても、コントロールボックス50が図18に示すフローチャートに従ってロールオーバーを検出し、その結果に基づいてシートバック後傾手段40Aおよびシートベルト装置30を制御するようになっており、以下そのフローチャートを説明するが、第1実施形態の図10に示すフローチャートと同一処理部分に同一ステップ符号を付して重複する説明を省略するものとする。
【0067】
即ち、前記フローチャートではステップS1〜S16、ステップS18〜S20およびステップS22,S23,S25は第1実施形態と同様の処理が実行され、本実施形態が第1実施形態と異なる点は、ステップS17Aでは電動リトラクタ36を作動してシートベルト装置30のウエビング37を巻き取りつつ、ワイヤ202を介して主シャフト100を回転することによりシートバック3を後傾させることになる。
【0068】
また、ステップS20によってマップが領域Bにあると判断した場合は、ステップS21Aによってソレノイド104の作動ピン104aを後退させてシートバック可倒用ロックを解除した後、ステップS21Bで電動リトラクタ36のプリテンショナーを作動させる。このとき、電動リトラクタ36の作動によりウエビング37が巻き取られつつシートバック3が後傾される。そして、ステップS21Cによってカーテンエアバッグを展開することになる。
【0069】
更に、ステップS24Aでは、ステップS23によってソレノイド104の作動ピン104aを後退させてシートバック可倒用ロックを解除した状態で、電動リトラクタ36の作動を停止してフリーにすることにより、シートバック3は渦巻きばね118の付勢力で起立方向に回動し、元の状態に戻った時点でソレノイド104を作動ピン104aを突出させてシートバック3をロックする。
【0070】
尚、本実施形態のフローチャートの制御にあってもロールオーバーを判断するマップが用いられるが、これは図11に示す第1実施形態と同様であるためその説明を省略する。
【0071】
以上説明したように本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Aによれば、第1実施形態と同様にロールオーバーが検出されると乗員Cはシート2に拘束された状態でシートバック3を所定量後傾することができるので、乗員Cの頭部Chはシートバック3の後傾に伴ってシートバック3の主シャフト100を中心として後方に移動し、頭部Chと車室内の天井との間の空間を増大して、頭部Chが天井に干渉するのを効率良く抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では電動リトラクタ36とシートバック後傾手段40Aとの間に、それらを互いに連動させて乗員を拘束しつつシートバック3を後傾させる連動手段200を設けたので、ロールオーバーの発生時にシートベルト装置30により乗員Cをシート2に拘束しつつ、シートバック3を後傾させることができるので、シートバック3の後傾を迅速に行って、ロールオーバー時には乗員頭部Chと天井との間に確実に空間を設けることができる。
【0073】
更に、前記連動手段200を、シートベルト装置30の電動リトラクタ36の回転部36aと、主シャフト100に設けたプーリ201とを周回するワイヤ202と、で形成したので、電動リトラクタ36の回転力を確実に主シャフト100に伝達でき、かつ、簡単な構成にしてシートバック3を後傾させることができる。
【0074】
図19〜図26は本発明の第3実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図19は乗員保護装置が適用されるシートの斜視図、図20はシートの内部構造を示す背面図、図21は図20中C部の側面図であり、図22は乗員保護装置の作動状態を(a)〜(c)に順を追って示すシートの側面図である。
【0075】
また、図23はシートバック下部の内部構造を詳細に示す分解斜視図、図24はシート下部の内部構造を要部断面として示す背面図、図25は連動手段の回転力伝達部の作動を(a),(b)に順を追って示す要部断面図であり、図26は乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図である。
【0076】
本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Bは、基本的に第1実施形態の乗員保護装置10と略同様の構成となり、車両横転検出手段20と、乗員拘束手段としてのシートベルト装置30と、シートバック後傾手段40Bと、コントロールボックス50と、が設けられ、車両横転検出手段20およびコントロールボックス50は第1実施形態の図1と同様に構成されるとともに、図19に示すようにシートベルト装置30は第1実施形態と同様にショルダーベルト31およびラップベルト32を備えた3点式シートベルトとして構成される。
【0077】
また、本実施形態では第2実施形態と同様に、シートベルト装置30とシートバック後傾手段40Bとの間に、それらを互いに連動させて乗員を拘束しつつシートバック3を後傾させる連動手段200Aを設けてある。
【0078】
即ち、前記連動手段200Aは、図20,図21に示すようにシートベルト装置30の電動リトラクタ36から繰り出されるウエビング37を相対移動自在に周回し、ロールオーバー時にそのウエビング37を係合してウエビング37の巻取移動によってシートバック3の主シャフト100を回転する回転体としてのボビン210によって構成してある。
【0079】
そして、車両1が第1実施形態の図5に示したようにロールオーバーにより横転した場合、図22(a)〜(c)に示すように第1実施形態と同様に、シートベルト装置30およびシートバック3が作動して乗員Cを後方に所定量倒し、乗員頭部Chと天井との間の空間を拡大するようになっている。
【0080】
即ち、図22(a)はロールオーバーが発生しない通常の状態を示し、乗員Cがシートベルト装置30を着用してシート2に着座した状態で、車両横転検出手段20によりロールオーバーが検出されると、図22(b)に示すように電動リトラクタ36が作動してウエビング37を巻き込み、ショルダーベルト31が所定の張力をもって乗員Cをシートバック3に強く拘束するとともに、図22(c)に示すように電動リトラクタ36にウエビング37が巻き取られることによりボビン210のロータ213とともに主シャフト100が回転して、シートバック3とともに乗員Cを所定量後傾させるようになっている。
【0081】
また、本実施形態にあっても前記電動リトラクタ36は正・逆回転が可能となって、シートベルト装置30およびシートバック後傾手段40Bを、ロールオーバーの検出前の状態に復帰する可逆機能を備えている。
【0082】
前記シート2の詳細な下部構造は、図23,図24に示すようにシートバックフレーム3aの下端部がシートスライダ110のスライダー112にプレート114を介して回動可能に取り付けられる。
【0083】
また、車幅方向内方(図中右方)のシートバックフレーム3aの下端部内側には、シートバックリクライナー103とシャフトガイド101がその順に配置されるとともに、車幅方向外方(図中左方)のシートバックフレーム3aの下端部内側にはシャフトガイド102が配置されており、それぞれのシャフトガイド101,102の中心穴101a,102aに、前記主シャフト100の両端部の小径支持部100a,100bが回転自在に嵌合される。
【0084】
そして、シャフトガイド101とシートバックリクライナー103およびシートバックフレーム3aに形成した複数の長穴101b,103b,116aには、主シャフト100に取り付けたソレノイド104の作動ピン104aが突出状態で貫通してシートバックフレーム3aを固定するようになっている。
【0085】
また、シートバックフレーム3aと車幅方向内・外のプレート114との間には、シートバックフレーム3aを復帰方向に回動付勢する渦巻きばね118が設けられるとともに、車幅方向内・外のスライダー112間に連結フレーム121が架設される。
【0086】
ここで、本実施形態では電動リトラクタ36をシートクッション4のシートパン4b(図21参照)下面に配置するとともに、主シャフト100のソレノイド104よりもシート2中央側にボビン210を設け、ウエビング挿通口35(図19参照)からシートバック3内に取り込んだウエビング37を、ウエビングガイド38の下端部に設けた上方ローラ211に沿わせて前記ボビン210に通した後、前記連結フレーム121に設けた下方ローラ212に沿わせて前記電動リトラクタ36に案内させてある。
【0087】
前記ボビン210は、図25に示すように外周に凹凸部213aを形成したロータ213と、そのロータ213を収納するケース214と、を設けて概略構成され、ロータ213は主シャフト100と回転方向に係止されるとともに、ケース214はソレノイド104の配置側とは反対側で主シャフト100に支持され、ソレノイド104側にピン挿通孔210aが形成されて作動ピン104aがロータ213とケース214との間に挿入可能となっている。
【0088】
つまり、前記ソレノイド104の作動ピン104aは、シートバックリクライナー103とは反対側となる前記ボビン210方向に突出可能としておき、作動ピン104aが後退してシートバックリクライナー103およびシートバックフレーム3aの長穴103b,116aから抜け出ると同時に、前記作動ピン104aの他端部分がロータ213とケース214との間に挿入されることになる。
【0089】
そして、前記ウエビング37をケース214の外周開口部214bの上方から挿入して、図25(a)に示すようにロータ213の外周部に沿わせて通した後に、その外周開口部214bの下方から取り出して前記下方ローラ212へと配索してある。
【0090】
また、図25(b)に示すように前記ソレノイド104の作動ピン104aがロータ213とケース214との間に挿入されることにより、該作動ピン104aがウエビング37をロータ213の凹凸部213aに押し付けて互いに係合する状態となり、この状態で電動リトラクタ36によってウエビング37を巻き取ると、該ウエビング37の移動に伴ってロータ213が回転するようになっており、このロータ213の所要の角回転によって主シャフト100とともにシートバック3が後傾できるようになっている。
【0091】
また、第1実施形態と同様に前記シートバックリクライナ103が配置される側には、プレート114の外側にリクライナ可動レバー123が配置され、これらシートバックリクライナ103およびリクライナ可動レバー123によって、シートバック3の前後方向傾動位置を任意に設定するリクライニング装置60を構成してある。
【0092】
そして、前記乗員保護装置10Bにあっても、コントロールボックス50が図26に示すフローチャートに従ってロールオーバーを検出し、その結果に基づいてシートバック後傾手段40Bおよびシートベルト装置30を制御するようになっており、以下そのフローチャートを説明するが、その制御は第2実施形態の図18に示すフローチャートと略同一の処理となり、その第2実施形態のフローチャートと同一処理部分に同一ステップ符号を付してその説明を省略するものとする。
【0093】
尚、本実施形態のステップS17Bでは、第2実施形態と同様に電動リトラクタ36を作動してシートベルト装置30のウエビング37を巻き取ることによりシートバック3を後傾するのであるが、特に本実施形態ではウエビング37の巻き取りによりボビン210のロータ213が主シャフト100とともに回転してシートバック3が所定量後傾される。
【0094】
また、本実施形態のフローチャートの制御にあってもロールオーバーを判断するマップが用いられるが、これは図11に示す第1実施形態と同様であるためその説明を省略する。
【0095】
以上説明したように本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Bによれば、第1実施形態と同様にロールオーバーが検出されると乗員Cはシート2に拘束された状態でシートバック3を所定量後傾することができるので、乗員Cの頭部Chはシートバック3の後傾に伴ってシートバック3の主シャフト100を中心として後方に移動し、頭部Chと車室内の天井との間の空間を増大して、頭部Chが天井に干渉するのを効率良く抑制することができる。
【0096】
また、本実施形態にあっても第2実施形態と同様に、電動リトラクタ36とシートバック後傾手段40Bとの間に、それらを互いに連動させて乗員を拘束しつつシートバック3を後傾させる連動手段200Aを設けたので、ロールオーバーの発生時にシートベルト装置30により乗員Cをシート2に拘束しつつ、シートバック3を後傾させることができるので、シートバック3の後傾を迅速に行って、ロールオーバー時には乗員頭部Chと天井との間に確実に空間を設けることができる。
【0097】
更に、前記連動手段200Aを、電動リトラクタ36から繰り出されるウエビング37を相対移動自在に周回し、ロールオーバー時に該ウエビング37を係合してウエビング37の巻取移動でシートバック3の主シャフト100を回転するボビン210によって構成したので、ウエビング37で直接ボビン210を作動させることができるため、電動リトラクタ36の回転力を確実に主シャフト100に伝達でき、かつ、比較的簡単な構成にしてシートバック3を後傾させることができる。
【0098】
図27〜図34は本発明の第4実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図27は通常運転状態のシートの斜視図、図28は車両のロールオーバー検出時のシートの斜視図、図29はシートの内部構造を示す背面図であり、図30は(a)に通常運転状態と(b)にロールオーバー検出時をそれぞれ示す図29中D部の側面図、図31は乗員保護装置の作動状態を(a)〜(c)に順を追って示すシートの側面図である。
【0099】
また、図32はシートバック下部の内部構造を詳細に示す分解斜視図、図33はシート下部の内部構造を要部断面として示す背面図であり、図34は乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図である。
【0100】
本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Cは、基本的に第1実施形態の乗員保護装置10と略同様の構成となり、車両横転検出手段20と、乗員拘束手段としてのシートベルト装置30と、シートバック後傾手段40Cと、コントロールボックス50と、が設けられ、車両横転検出手段20およびコントロールボックス50は第1実施形態の図1と同様に構成されるとともに、図27,図28に示すようにシートベルト装置30は第1実施形態と同様にショルダーベルト31およびラップベルト32を備えた3点式シートベルトとして構成される。
【0101】
また、本実施形態にあっても図29,図30に示すように、シートベルト装置30とシートバック後傾手段40Cとの間に、それらを互いに連動させて乗員を拘束しつつシートバック3を後傾させる連動手段200Bを設けてある。
【0102】
即ち、前記連動手段200Bは、図29,図30に示すようにシートバック3の背面に沿って上下方向に配索したウエビング37の下方部分を前後移動可能に周回して、シートクッション4の前方に配置した電動リトラクタ36に案内する可動ローラ220と、該可動ローラ220をロールオーバーの発生時に車両前方に移動する移動手段としてのソレノイド221と、によって構成し、ロールオーバー時に可動ローラ220が前方移動することによりウエビング37の巻取力をシートバック3の後傾力に変換するようになっている。
【0103】
そして、車両1が第1実施形態の図5に示したようにロールオーバーにより横転した場合、図31(a)〜(c)に示すように第1実施形態と同様に、シートベルト装置30およびシートバック3が作動して乗員Cを後方に所定量倒し、乗員頭部Chと天井との間の空間を拡大するようになっている。
【0104】
即ち、図31(a)はロールオーバーが発生しない通常の状態を示し、乗員Cがシートベルト装置30を着用してシート2に着座した状態で、車両横転検出手段20によりロールオーバーが検出されると、図31(b)に示すように電動リトラクタ36が作動してウエビング37を巻き込み、ショルダーベルト31が所定の張力をもって乗員Cをシートバック3に強く拘束するとともに、図31(c)に示すように電動リトラクタ36の作動によりウエビング37を介してシートバック3とともに乗員Cを所定量後傾させるようになっている。
【0105】
また、本実施形態にあっても前記電動リトラクタ36は正・逆回転が可能となって、シートベルト装置30およびシートバック後傾手段40Cを、ロールオーバーの検出前の状態に復帰する可逆機能を備えている。
【0106】
前記シート2の詳細な下部構造は、図32,図33に示すようにシートバックフレーム3aの下端部が、本実施形態で新たに設けられるシートバックプレート222および前記各実施形態に用いたプレート114を介してシートスライダ110のスライダー112に回動可能に取り付けられる。
【0107】
前記シートバックプレート222は、それぞれのシート2内方にリブ223が突設して平面形状が略T字状に形成され、シートバックフレーム3aの下部はシートバックプレート222のリブ223よりも車両前方部分に設定した傾動軸としての回動支点224を介して回動可能に連結される。
【0108】
シートバックフレーム3aには、前記回動支点224部分を連結するシャフト226が設けられるとともに、シートバックフレーム3aの下端部間を連結する下部フレーム227が設けられ、かつ、シートバックフレーム3aの車内側辺には前記第1〜第3実施形態で設けられたと同様のウエビングガイド38が設けられる。
【0109】
また、シート2の下部には、前記各実施形態と同様にシートクッション4を前後移動自在に支持するシートスライダー110が設けられており、車幅方向内・外のスライダー112間に連結フレーム121が架設されている。
【0110】
前記シートバックフレーム3aの下部フレーム227と前記シートバックプレート222のリブ223との間には、図30にも示すように前記回動支点224よりも下方部分に位置して引張りばね225を設け、その引張りばね225の収縮方向の付勢力でシートバックフレーム3aを復帰方向(前傾方向)に回動させるようになっている。
【0111】
また、車幅方向内方(図中右方)のプレート114に設けたボス付穴115がシートバックプレート222の下部に形成した支持穴228に回動可能に嵌合される一方、車幅方向外方(図中左方)のプレート114に設けたボス部115aがシートバックプレート222の下部に形成した支持穴228に回動可能に嵌合される。
【0112】
そして、車幅方向内方のシートバックプレート222の内側には、シートバックリクライナー103とシャフトガイド101がその順に配置されるとともに、車幅方向外方のシートバックプレート222の内側にはシャフトガイド102が配置され、それぞれのシャフトガイド101,102の中心穴101a,102aに、主シャフト100の両端部の小径支持部100a,100bが回転自在に嵌合される。
【0113】
尚、本実施形態では前記シャフトガイド101、シートバックリクライナー103およびシートバックフレーム3aには、第1〜第3実施形態で形成される長穴101b,103b,116aは形成されていない。
【0114】
前記シートバックリクライナー103および前記シャフトガイド101はピン117aによってシートバックプレート222に結合するとともに、前記シャフトガイド102はピン117aによってシートバックプレート222に結合してある。
【0115】
更に、シートバックフレーム3aと車幅方向内・外のプレート114との間には、シートバックプレート222を復帰方向に回動付勢する渦巻きばね118が設けられており、該渦巻きばね118の内周端部は前記ボス付穴115の周縁および前記ボス部115aと反対側の側面からそれぞれ突設した係止突起119に係止されるとともに、渦巻きばね118の外周端部はシートバックプレート222の側面から突設した係止突起229に係止される。
【0116】
ここで、本実施形態ではシートクッション4のシートパン4b下面の車内側縁部に電動リトラクタ36を配置して、ウエビングガイド38に沿って配置されたウエビング37を巻き取るようになっている。
【0117】
即ち、ウエビングガイド38の下方に位置する車内側のスライダー112には、ウエビングガイド38の略直下から車両前方(図32中右方)に延びる車両前後方向の長穴230を形成し、この長穴230に可動ローラ220を前後移動自在に取り付けて、該可動ローラ220にウエビング37を周回して車両前方に配置した前記電動リトラクタ36へと案内する。
【0118】
また、前記長穴230の車両後方には前記可動ローラ220を前後移動させるソレノイド221を設け、このソレノイド221から出没する作動部材221aを可動ローラ220に連結して、ロールオーバーの発生時に作動部材221aを突出させて可動ローラ220を車両前方に押しやり、ウエビング37の周回部分をウエビングガイド38の下方延長線よりも車両前方に移動させるようになっている。
【0119】
更に、シートバックフレーム3aの最下端部となる前記下部フレーム227には、ウエビングガイド38から下方に配索されるウエビング37に当接するガイドローラ231を設けてある。
【0120】
従って、本実施形態ではロールオーバーの検出によりソレノイド221を作動部材221aが突出する方向に作動させて可動ローラ220を車両前方に移動させると、この可動ローラ220でのウエビング37のガイド(周回)点がウエビングガイド38の下方延長線よりも車両前方に移動し、この状態で電動リトラクタ36でウエビング37を巻き取ると、ウエビング37に発生する巻き取り力がシートバックフレーム3aの下端部のガイドローラ231に車両前方の押力として作用する。
【0121】
すると、シートバックフレーム3aは回動支点224を中心として後方に傾斜するため、シートバック3は乗員Cとともに後方に所定量だけ傾動して、乗員頭部Chと天井との間の空間を拡大することができる。
【0122】
このとき、電動リトラクタ36はウエビング37を巻き取っているため、乗員Cはショルダーベルト31によってシートバック3により強く拘束されることになる。
【0123】
また、本実施形態にあっても前記シートバックリクライナ103が配置される側には、プレート114の外側にリクライナ可動レバー123が配置され、これらシートバックリクライナ103およびリクライナ可動レバー123によって、シートバック3の前後方向傾動位置を任意に設定するリクライニング装置60を構成してある。
【0124】
この場合にあっても、前記リクライナ可動レバー123は、中間部分に設けた長穴123aに挿通したピン124を介してプレート114に取り付けるとともに、操作部123bとは反対側端部123cを前記ボス付穴115から挿通してシートバックリクライナ103の中心穴103aに係合させてある。
【0125】
そして、前記乗員保護装置10Cにあっても、コントロールボックス50が図34に示すフローチャートに従ってロールオーバーを検出し、その結果に基づいてシートバック後傾手段40Cおよびシートベルト装置30を制御するようになっており、以下そのフローチャートを説明するが、前記各実施形態のフローチャートと同一処理部分に同一ステップ符号を付して重複する説明を省略するものとする。
【0126】
ところで、本実施形態の乗員保護装置10Cは、主シャフト100はリクライニング装置60によるシートバック3の傾動中心としてのみに用いられるため、第1〜第3実施形態に示すソレノイド104が廃止されてシートバックリクライナー103をシートバックフレーム3aにロックする必要が無いため、前記各実施形態のフローチャートで実行されるステップS18およびステップS25の制御が必要無くなる。
【0127】
また、ステップS24Bでは、ステップS23Aによってソレノイド221の作動部材221aを後退させて可動ローラ220を図32に示す元状態に復帰させた状態で、電動リトラクタ36の作動を停止してフリーにすることにより、シートバック3は引張りばね225の付勢力で起立方向に回動してロールオーバーの判断以前の状態に復帰される。
【0128】
尚、本実施形態のフローチャートの制御にあってもロールオーバーを判断するマップが用いられるが、これは図11に示す第1実施形態と同様であるためその説明を省略する。
【0129】
以上説明したように本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Cによれば、第1実施形態と同様にロールオーバーが検出されると乗員Cはシート2に拘束された状態でシートバック3を所定量後傾することができるので、乗員Cの頭部Chはシートバック3の後傾に伴ってシートバック3の主シャフト100を中心として後方に移動し、頭部Chと車室内の天井との間の空間を増大して、頭部Chが天井に干渉するのを効率良く抑制することができる。
【0130】
また、本実施形態にあっても第2,第3実施形態と同様に、電動リトラクタ36とシートバック後傾手段40Cとの間に、それらを互いに連動させて乗員を拘束しつつシートバック3を後傾させる連動手段200Bを設けたので、ロールオーバーの発生時にシートベルト装置30により乗員Cをシート2に拘束しつつ、シートバック3を後傾させることができる。
【0131】
更に、前記連動手段200Bを、シートバック3の背面に沿って上下方向に配索したウエビング37の下方部分を前後移動可能に周回して、シートクッション4の前方に配置した電動リトラクタ36に案内する可動ローラ220と、該可動ローラ220をロールオーバーの発生時に車両前方に移動するソレノイド221と、によって構成し、ロールオーバー時に可動ローラ220が前方移動することによりウエビング37の巻取力をシートバック3の後傾力に変換するようにしたので、電動リトラクタ36の巻き取り力で確実にシートバック3を後傾させることができる。
【0132】
図35〜図43は本発明の第5実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図35は通常運転状態のシートの斜視図、図36は車両のロールオーバー検出時のシートの斜視図であり、図37はロールオーバーによる車両の横転状態を(a)〜(c)に順を追って示す背面図、図38は乗員保護装置の作動状態を(a)〜(c)に順を追って示すシートの側面図である。
【0133】
また、図39はシートバック下部の内部構造を詳細に示す分解斜視図、図40はシートバック下部の内部構造を詳細に示す組付状態の斜視図であり、図41はシートバック後傾手段のロック状態およびロック解除状態を(a),(b)に示す要部拡大側面図、図42はロック解除手段のロック状態およびロック解除状態を(a),(b)に示す拡大斜視図であり、図43は乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図である。
【0134】
本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Dは、基本的に第1実施形態の乗員保護装置10と略同様の構成となり、車両横転検出手段20と、乗員拘束手段としてのシートベルト装置30と、シートバック後傾手段40Dと、コントロールボックス50と、が設けられ、車両横転検出手段20およびコントロールボックス50は第1実施形態の図1と同様に構成されるとともに、図35,36に示すようにシートベルト装置30は第1実施形態と同様にショルダーベルト31およびラップベルト32を備えた3点式シートベルトとして構成される。
【0135】
特に、本実施形態では前記シートバック後傾手段40Dは、シートバック3の下部を回転支持部としての支持ピン242を介してシートバック3の後傾を可能に支持するとともに、リクライニング装置60に結合されるシートバックプレート240と、シートバックプレート240とシートバック3との相対回転をロックするロック機構250と、ロック機構250のロック状態を車両横転検出手段20によるロールオーバーの検出により解除するロック解除手段としての破断ピン260と、ロック機構250のロック解除に伴ってシートバック3に後傾力を付加する後傾力付加手段としてのスプリング280と、を備えている。
【0136】
そして、車両1が第1実施形態の図37に示したようにロールオーバーにより横転した場合、図38(a)〜(c)に示すように第1実施形態と同様に、シートベルト装置30およびシートバック後傾手段40Dが作動して乗員Cを後方に所定量倒し、乗員頭部Chと天井との間の空間を拡大するようになっている。
【0137】
尚、図37(a)はロールオーバー直前の状態、図37(b)はロールオーバー1/4回転の状態、図37(c)はロールオーバー1/2回転の状態を示す。また、図37(a)に対応した図38(a)では通常運転状態と同様に乗員Cはシートベルト装置30を着用しており、図37(b)に対応した図38(b)ではロールオーバーモードに入ったと判断された直後の状態で、電動リトラクタ36が作動してウェビング37が巻き取られてショルダーベルト31が引き込まれ乗員Cがシートバック3に強く拘束されるとともに、図37(c)に対応した図38(c)では車両がロールオーバーにあると判断された時の状態で、シートバック3が所定量後傾される。
【0138】
本実施形態では前記電動リトラクタ36が正・逆回転が可能となって、シートベルト装置30をロールオーバーの検出前の状態に復帰する可逆機能を備えている。
【0139】
前記シート2の詳細な下部構造は、図39,図40に示すようにシートバックフレーム3aの下端部が、シート2の車幅方向両側に配置されるシートバックプレート240,240Aおよびこれらシートバックプレート240,240Aに対応したプレート114を介してシートスライダ110のスライダー112に回動可能に取り付けられる。
【0140】
また、シートバック3の車幅方向両側のシートバックフレーム3aの下部間に跨って傾動中心軸270が配置されている。
【0141】
前記シートバックプレート240,240Aは、上下方向に延びる略菱形の板材で形成され、その上端部に形成した上方取付穴241に支持ピン242を挿通し、該支持ピン242をシートバックフレーム3aに形成した取付穴243に挿通して前記傾動中心軸270の端部に螺合して結合することにより、該支持ピン242を中心としてシートバックプレート240,240Aとシートバックフレーム3aとの相対回転が可能となっている。
【0142】
また、シートバックプレート240,240Aの下端部に形成した下方取付穴244が、スライダー112に結合したプレート114のボス付穴115およびボス部115a(図9参照)に回転自在に嵌合される。
【0143】
ここで、車幅方向内方(図39中右方)に配置されるシートバックプレート240には、図41に示すようにその上下方向中央部の前後両側に、前記支持ピン242を中心とする弧状開口部245,245aが形成され、これら弧状開口部245,245aにはシートバックフレーム3aから突設したガイドピン246,246aが相対移動自在に嵌合される。
【0144】
また、前記シートバックプレート240と前記シートバックフレーム3aとの間に前記スプリング280が設けられる。このスプリング280は、その両端部がシートバックプレート240の前記支持ピン242の下方に突設した係止ピン281と、この係止ピン281の上方でシートバックフレーム3aの車両後側部に突設した係止ピン282と、に引張り状態で掛止される。
【0145】
従って、前記スプリング280の付勢力が、シートバックプレート240に対してシートバックフレーム3a、つまりシートバック3を前記支持ピン242を中心として後傾させる力として作用する。
【0146】
前記ロック機構250は、前記シートバックプレート240の中央部に設けられ、上端部に逆U字状の鉤部251aと、該鉤部251aの車両後側部を下方に延設した腕部251bと、によって形成されるフック部材251を備え、該フック部材251は腕部251bの中間部がセンターピン252によってシートバックプレート240に回転自在に軸支される。
【0147】
そして、前記腕部251bの下端部とシートバックプレート240の前側部とにそれぞれ突設したピン253a,253bに、スプリング253の両端部が引張り状態で掛止され、該スプリング253によって前記フック部材251は、センターピン252を中心とした図中反時計回り方向の回転付勢力が付与される。
【0148】
前記フック部材251は、図41(a)に示すロック状態では鉤部251aが前記ガイドピン246aに係合されるとともに、腕部251bの下端部が前記破断ピン260に係止されている。
【0149】
破断ピン260は、図42(a)に示すように電気抵抗体が内蔵された円柱状に形成されて、ロールオーバーの検出によってコントロールボックス50(図1参照)から電流が印加されることにより発熱して図42(b)に示すように破断され、前記フック部材251の腕部251bの係止が解除される。
【0150】
このように破断ピン260の破断によってフック部材251の腕部251bの係止が解除されることにより、図41(b)に示すようにフック部材251はスプリング253の付勢力でセンターピン252を中心として反時計回り方向に回転し、鉤部251aとガイドピン246aとの係合が外れる。
【0151】
すると、シートバックフレーム3aは、スプリング280の付勢力によってガイドピン246,246aが弧状開口部245,245aの前方終端に当接するまで支持ピン242を中心として後傾される。このとき、前記フック部材251は腕部251bがストッパーピン254に当接した時点で回動が停止される。
【0152】
また、本実施形態にあっても車幅方向内方(図39中右方)のシートバックプレート240の内側には、シートバックリクライナー103とシャフトガイド101がその順に配置されるとともに、車幅方向外方(図39中左方)のシートバックプレート240Aの内側にはシャフトガイド102が配置され、それぞれのシャフトガイド101,102の中心穴101a,102aに、主シャフト100の両端部の小径支持部100a,100bが回転自在に嵌合される。
【0153】
前記シートバックリクライナー103および前記シャフトガイド101はピン117aによってシートバックプレート240に結合されるとともに、前記シャフトガイド102はピン117aによってシートバックプレート240Aに結合してある。
【0154】
更に、シートバックフレーム3aと車幅方向内・外のプレート114との間には、前記各実施形態と同様にシートバックプレート240を復帰方向に回動付勢する渦巻きばね118が設けられており、該渦巻きばね118の内周端部は前記ボス付穴115の周縁および前記ボス部115aと反対側の側面からそれぞれ突設した係止突起119,120に係止されるとともに、渦巻きばね118の外周端部はシートバックプレート240,240Aの側面から突設した係止突起247に係止される。
【0155】
また、本実施形態にあっても前記シートバックリクライナ103が配置される側には、プレート114の外側にリクライナ可動レバー123が配置され、これらシートバックリクライナ103およびリクライナ可動レバー123によって、シートバック3の前後方向傾動位置を任意に設定するリクライニング装置60が構成される。
【0156】
この場合にあっても、前記リクライナ可動レバー123は、中間部分に設けた長穴123aに挿通したピン124を介してプレート114に取り付けるとともに、操作部123bとは反対側端部123cを前記ボス付穴115から挿通してシートバックリクライナ103の中心穴103aに係合させてある。
【0157】
シートバックプレート240とプレート114との面接触を回避するため、シートバックプレート240にスペーサを兼ねた緩衝部材248を設けて、それら両者の接触を緩和するようになっている。
【0158】
そして、本実施形態の乗員保護装置10Dにあっても、コントロールボックス50が図43に示すフローチャートに従ってロールオーバーを検出し、その結果に基づいてシートバック後傾手段40Dおよびシートベルト装置30を制御するようになっており、以下そのフローチャートを説明するが、前記各実施形態のフローチャートと同一処理部分に同一ステップ符号を付して重複する説明を省略するものとする。
【0159】
ところで、本実施形態の乗員保護装置10Dにあっても第4実施形態と同様に、主シャフト100はリクライニング装置60によるシートバック3の傾動中心としてのみに用いられるため、第1〜第3実施形態のフローチャートで実行されるステップS18およびステップS25の制御が必要無くなるとともに、後傾したシートバック3を復帰させる機構が存在しないため、第1〜第4実施形態のフローチャートで実行されるステップS23(S23A)およびステップS24(S24A,S24B)の制御が不要となる。
【0160】
また、ステップS16Aでは、ロック機構250をロック解除するための破断ピン260に電流を印加し、ステップS17Dでは破断ピン260が破断することによりロック機構250がロック解除されて、スプリング280の付勢力でシートバック3が所定量後傾される。
【0161】
尚、本実施形態のフローチャートの制御にあってもロールオーバーを判断するマップが用いられるが、これは図11に示す第1実施形態と同様であるためその説明を省略する。
【0162】
以上説明したように本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Dによれば、第1実施形態と同様にロールオーバーが検出されると乗員Cはシート2に拘束された状態でシートバック3を所定量後傾することができるので、乗員Cの頭部Chはシートバック3の後傾に伴ってシートバック3の主シャフト100を中心として後方に移動し、頭部Chと車室内の天井との間の空間を増大して、頭部Chが天井に干渉するのを効率良く抑制することができる。
【0163】
また、本実施形態のシートバック後傾手段40Dは、シートバック3の下部を支持ピン242を介してシートバック3の後傾を可能に支持するとともに、リクライニング装置60に結合されるシートバックプレート240と、シートバックプレート240とシートバック3との相対回転をロックするロック機構250と、ロック機構250のロック状態を車両横転検出手段20によるロールオーバーの検出により解除する破断ピン260と、ロック機構250のロック解除に伴ってシートバック3に後傾力を付加するスプリング280と、を備えているので、ロールオーバー時に破断ピン260は電流の印加によって確実に破断させ、ひいては、ロック機構250を確実にロック解除させて、シートバック3の迅速な後傾を可能とする。
【0164】
更に、本実施形態によればシート2の車幅方向両側にシートバックプレート240,240Aを設けたことにより、シートバック後傾手段40Dとリクライニング装置60とをそれぞれ別作動させることが可能となり、更には、シートバック3の後傾をスプリング280で行うことができるので、簡素な構造によってロールオーバー時のシートバック3の後傾を実現することができる。
【0165】
図44は前記第5実施形態の変形例を示し、同図はシートバック後傾手段のロック状態およびロック解除状態を(a),(b)に順を追って示す要部拡大側面図である。
【0166】
即ち、第5実施形態ではシートバック後傾手段40Dの後傾力付加手段としてスプリング280を用いた場合を開示したが、これに限ることなくロック機構250のロック解除に伴ってシートバック3に後傾力を付加できる手段であればよく、例えば、本変形例の図44に示すようにソレノイド283を用いることもできる。
【0167】
即ち、前記ソレノイド283はシートバックプレート240の上部に設けられ、該ソレノイド283への電流をON・OFFすることによって進退移動する部材にワイヤ284を接続し、該ワイヤ284の中間部をシートバックプレート240に突設したピン285にガイドさせて、ワイヤ284の先端部をシートバックフレーム3aに突設した係止ピン286に結合してある。
【0168】
そして、図44(a)に示すロック機構250のロック状態ではワイヤ284をソレノイド283から進出させた状態にしておき、ロールオーバーの検出によりロック機構250をロック解除すると同時にソレノイド283を作動してワイヤ284を後退させることにより、図44(b)に示すようにワイヤ284で係止ピン286を略下方に引っ張ってシートバックフレーム3aを支持ピン242を中心として後傾させることができるようになっている。
【0169】
図45〜図48は本発明の第6実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図45はシートバック下部の内部構造を詳細に示す分解斜視図、図46はシートバック後傾手段のロック状態およびロック解除状態を(a),(b)に示す要部拡大側面図、図47はロック解除手段のロック状態およびロック解除状態を(a),(b)に示す拡大斜視図、図48は乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図である。
【0170】
本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Eは、基本的に第1実施形態と同様に車両横転検出手段20と、乗員拘束手段としてのシートベルト装置30と、シートバック後傾手段40Eと、コントロールボックス50と、が設けられるとともに、シートバック後傾手段40Eは図45,図46に示すように第5実施形態の乗員保護装置10Dと略同様の構成となり、シートバックプレート240,240Aと、一方のシートバックプレート240に設けられるロック機構250とを備えており、特に、本実施形態ではロック解除手段としてソレノイド261が用いられるとともに、後傾力付加手段としてモータ287が用いられる。
【0171】
即ち、前記シートバックプレート240,240Aは、第5実施形態と同様にシート2の車幅方向両側に配置され、それらの上端部が支持ピン242を介してシートバックフレーム3aに相対回転可能に連結されるとともに、下端部がプレート114のボス付穴115およびボス部115aに回転自在に嵌合される。
【0172】
前記ロック機構250は、車幅方向内方(図45中右方)に配置されるシートバックプレート240の中央部に設けられ、鉤部251aと腕部251bとによって形成されるフック部材251は、センターピン252によってシートバックプレート240に回転自在に軸支されるとともに、スプリング253によって図中反時計回り方向の回転付勢力が付与される。
【0173】
そして、図46(a)に示すように前記フック部材251の鉤部251aがガイドピン246aに係合されたロック状態では、腕部251bの下端部が前記ソレノイド261の出没ピン261aに係止されている。
【0174】
前記ソレノイド261は、図47(a)に示すようにロールオーバーが検出されない通常時には出没ピン261aが突出状態にあり、ロールオーバーの検出によってコントロールボックス50(図1参照)から電流が印加されることにより図42(b)に示すように出没ピン261aが没入して、前記フック部材251の腕部251bの係止が解除される。
【0175】
従って、第5実施形態の破断ピン260と同様に、ソレノイド261の出没ピン261aの没入によってフック部材251の腕部251bの係止が解除されることにより、図46(b)に示すようにフック部材251はスプリング253の付勢力でセンターピン252を中心として反時計回り方向に回転し、鉤部251aとガイドピン246aとの係合が外れる。このとき、前記ソレノイド261の作動と同時に前記モータ287が駆動されてシートバックフレーム3aが支持ピン242を中心として後傾される。
【0176】
即ち、前記モータ287は、図45に示すように車幅方向両側のシートバックフレーム3aに跨って結合された固定板271に取り付けられ、該モータ287の回転軸に設けたギア287aが傾動中心軸270に設けたギア287bに噛合されており、モータ287が駆動されることによりギア287a,287bを介して傾動中心軸270を回転し、ひいては、該傾動中心軸270の端部が一体に結合されたシートバックフレーム3aが傾動されることになる。
【0177】
そして、本実施形態の乗員保護装置10Eにあっても、コントロールボックス50が図48に示すフローチャートに従ってロールオーバーを検出し、その結果に基づいてシートバック後傾手段40Eおよびシートベルト装置30を制御するようになっており、以下そのフローチャートを説明するが、前記各実施形態のフローチャートと同一処理部分に同一ステップ符号を付して重複する説明を省略するものとする。
【0178】
ところで、本実施形態の乗員保護装置10Eの制御フローチャートは、基本的に図43に示した第5実施形態の乗員保護装置10Dの制御フローチャートと同様の制御が実行されるが、特に、本実施形態では図43のステップS16Aに代えて、ロック機構250を解除するためにソレノイド261を作動するステップS16Bを実行するとともに、図43のステップS17Dに代えて、ステップS17Eでシートバック3を後傾するためにモータ287を作動するようになっている。
【0179】
また、前記本実施形態のフローチャートでは、ステップS11で乗員Cの横移動が規定値を超えなかった場合、かつ、ステップS22でシートバック3が倒れた状態にある(フラグ=1)と判断した場合は、ステップS24Cによって前記モータ287を逆転させて後傾したシートバック3を元の状態に復帰させるようになっている。
【0180】
尚、本実施形態のフローチャートの制御にあってもロールオーバーを判断するマップが用いられるが、これは図11に示す第1実施形態と同様であるためその説明を省略する。
【0181】
以上説明したように本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Eによれば、第1実施形態と同様にロールオーバーが検出されると乗員Cはシート2に拘束された状態でシートバック3を所定量後傾することができるので、乗員Cの頭部Chはシートバック3の後傾に伴ってシートバック3の主シャフト100を中心として後方に移動し、頭部Chと車室内の天井との間の空間を増大して、頭部Chが天井に干渉するのを効率良く抑制することができる。
【0182】
また、本実施形態のシートバック後傾手段40Eは、後傾力付加手段としてモータ287を用いたことにより、シートバック3の傾動を簡素な構成をもって可逆的に行うことができ、ロールオーバーの検出により後傾したシートバック3を原因の除去後に自動的に復帰させることができる。
【0183】
図49〜図57は本発明の第7実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図49はロールオーバーによる車両の横転状態を(a)〜(d)に順を追って示す背面図、図50は乗員保護装置の作動状態を(a)〜(d)に順を追って示すシートの側面図である。
【0184】
また、図51は通常運転状態の右側シートの斜視図、図52は通常運転状態の左側シートの斜視図、図53は車両のロールオーバー検出時にシートバックが後傾した右側シートの斜視図、図54は車両のロールオーバー検出時にシートバックが後傾した左側シートの斜視図、図55はロールオーバー状態時の右側シートの斜視図、図56はロールオーバー状態で後退した左側シートの斜視図であり、図57は乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図である。
【0185】
本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Fは、基本的に第1実施形態と同様に車両横転検出手段20と、乗員拘束手段としてのシートベルト装置30と、シートバック後傾手段と、コントロールボックス50と、が設けられる。シートバック後傾手段としては前記第1〜第6実施形態に示すシートバック後傾手段40,40A〜40Eのいずれも用いることもできるが、特に、本実施形態では第6実施形態のシートバック後傾手段40Eを用い、その詳細な説明は省略するものとする。
【0186】
また、本実施形態では図51,図52に示すように車両右側に配置されるシート2Rおよび車両左側に配置されるシート2Lに、それらシート2R,2Lを所定量後退させるシート後退手段300を備え、前記コントロールボックス50は、ロールオーバーの検出によりシート後退手段300を作動するようになっている。
【0187】
尚、右側のシート2Rと左側のシート2Lとは、シートベルト装置30やシートバック後傾手段40Eおよびシート後退手段300等の各構成部材が対称かつ同一構成となり、両シート2R,2Lの各構成部材に同一符号を伏して以下説明する。
【0188】
前記シート後退手段300は、シートクッション4を車両前後方向の移動を可能にフロアに支持するシートレール301,301aと、ロールオーバーの検出時にこのシートレール301,301aに沿ってシートクッション4を車両後方に駆動するアクチュエータとしてのモータ302と、を備えている。
【0189】
前記シートレール301,301aのうち、一方のシートレール301にラックギア303が設けられるとともに、前記モータ302はシートクッション4に取付けられて前記ラックギア302に噛合するピニオンギア304が設けられ、モータ302の回転によりシートクッション4とともにシート2全体が車両前後方向に移動可能となっており、ロールオーバーの検出時にはシートクッション4を後退(車両後方移動)させる方向にモータ302が駆動される。
【0190】
車両1がロールオーバーする際には図49(a)〜(d)に示すように挙動され、同図(a)はロールオーバー直前の状態、同図(b)はロールオーバー1/4回転の状態、同図(c)はロールオーバー1/2回転の状態、(c)はロールオーバー1/2回転以降の状態を示す。
【0191】
また、図50(a)〜(d)は、前記図49(a)〜(d)にそれぞれ対応したシート2Rや2Lの挙動を示し、図49(a)に対応した図50(a)では、通常運転時と同様に乗員Cはシートベルト装置30を着用しており、このとき、図51,図52に示すように左右両側のシート2R,2Lの前後位置は乗員Cの体格に応じた位置に設定されている。
【0192】
図49(b)に対応した図50(b)では、ロールオーバーモードに入ったと判断された直後の状態で、電動リトラクタ36が作動してウェビング37が巻き取られてショルダーベルト31が引き込まれ、乗員Cがシートバック3に強く拘束される。
【0193】
また、図49(c)に対応した図50(c)では、車両がロールオーバーにあると判断された時の状態で、図53,図54にも示すように左右両側のシート2R,2Lはともにシートバック3が所定量後傾される。
【0194】
図49(d)に対応した図50(d)では、車両がロールオーバー状態であると判断された時で、図55,図56に示すように乗員Cの着座位置と回転方向により車両回転中心に対して遠い側のシート、例えば、車両が右方向にロールオーバーしている時には左側のシート2Lを車両後方に移動させるようになっている。勿論、これとは逆に車両の左方向にロールオーバーしている時には右側のシート2Rを車両後方に移動させることになる。このとき、左右両側のシート2R,2L側ではともにカーテンエアバッグ310が展開される。
【0195】
ところで、本実施形態の乗員保護装置10Fの制御フローチャートは、基本的に図48に示した第6実施形態の乗員保護装置10Eの制御フローチャートと同様の制御が実行されるが、特に、本実施形態ではステップS20でマップが領域Bにあると判断した場合以降の制御が異なっており、ステップS20の判断後、ステップS26によって車両がロールオーバーする際の回転方向を検出して入力するとともに、ステップS27によって乗員Cが着座しているシート2Rおよび2Lを検出して入力する。
【0196】
そして、次のステップS28では乗員Cが着座しているシート回転中心に対して近い側(Near Side)にあるか、遠い側(Far Side)にあるかを判断し、近い側にあると判断した場合は、ステップS29によって電動リトラクタ36にプリテンショナーを作動させるとともに、図55に示すようにカーテンエアバッグ310を展開させる。
【0197】
一方、ステップS28で遠い側にあると判断した場合は、ステップS30によって図56に示すようにシート2Lを所定量後方移動させるとともに、ステップS31によって電動リトラクタ36にプリテンショナーを作動させるとともに、図55に示すようにカーテンエアバッグ310を展開させる。
【0198】
尚、本実施形態のフローチャートの制御にあってもロールオーバーを判断するマップが用いられるが、これは図11に示す第1実施形態と同様であるためその説明を省略する。
【0199】
以上説明したように本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Fによれば、第1実施形態と同様にロールオーバーが検出されると乗員Cはシート2に拘束された状態でシートバック3を所定量後傾することができるので、乗員Cの頭部Chはシートバック3の後傾に伴って頭部Chと車室内の天井との間の空間を増大して、頭部Chが天井に干渉するのを効率良く抑制することができる。
【0200】
また、本実施形態ではシート後退手段300を設けて、車両がロールオーバー状態にある時に、車両回転中心に対して遠い側のシート2Rまたは2Lを車両後方に移動させるようになっているので、乗員Cの頭部Chと天井との間の隙間をより大きく確保することができ、結果としてルーフ前方部から乗員Cの頭部に向けての入力を緩和し易くなる。
【0201】
図58〜図68は本発明の第8実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図58は通常運転状態の右側シートの斜視図、図59は通常運転状態の左側シートの斜視図、図60は車両のロールオーバー検出時にシートバックが後傾した右側シートの斜視図、図61は車両のロールオーバー検出時にシートバックが後傾した左側シートの斜視図、図62はロールオーバー状態時の右側シートの斜視図、図63はロールオーバー状態時の左側シートの斜視図である。
【0202】
また、図64はシートクッションの内部構造を示す拡大斜視図、図65は図64中E−E線に沿った拡大断面図、図66はシートクッションの下降状態を示すシートクッションの内部構造の拡大斜視図であり、図67は乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図、図68はサイドエアバッグを展開させるためのマップである。
【0203】
本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Gは、基本的に第1実施形態と同様に車両横転検出手段20と、乗員拘束手段としてのシートベルト装置30と、シートバック後傾手段と、コントロールボックス50と、が設けられる。シートバック後傾手段としては第7実施形態と同様に、前記第1〜第6実施形態に示すシートバック後傾手段40,40A〜40Eのいずれも用いることもできるが、特に、本実施形態では第6実施形態のシートバック後傾手段40Eを用い、その詳細な説明は省略するものとする。
【0204】
また、本実施形態では図64〜図66に示すようにシートクッション4を所定量下降させるシートクッション下降手段400を備え、前記コントロールボックス50は、ロールオーバーの検出によりシートクッション下降手段400を作動するようになっている。
【0205】
尚、右側のシート2Rと左側のシート2Lとは、シートベルト装置30やシートバック後傾手段40Eおよびシートクッション下降手段400等の各構成部材が対称かつ同一構成となり、両シート2R,2Lの各構成部材に同一符号を伏して以下説明する。
【0206】
前記シートクッション下降手段400は、シートクッション4の座面部4cを形成する弾発力を有する座面プレート401と、この座面プレート401をロールオーバーの検出時に下方に撓ませるアクチュエータとしてのモータ402と、を備えている。
【0207】
即ち、前記座面プレート401は、中央部に十字状のブリッジ401aを残すように四隅部分に大きな矩形状の開口部401bが形成されている。そして、図65に示すように座面プレート401の下方にシートクッションフレーム4aに結合される棚部403を設けて、この棚部403の中央部、つまり、前記十字状ブリッジ401aの中央部に略対応する部位に前記モータ402を取り付け、該モータ402に設けたプーリ404に先端部405a〜405dが4本に分岐されたワイヤ405が巻回される。
【0208】
前記ワイヤ405の各分岐された先端部405a〜405dは、前記十字状ブリッジ401aの各辺の中央部近傍にそれぞれ分配して結合され、モータ402をワイヤ405の巻取り方向に回転することにより、該ワイヤ405がプーリ404に巻き取られて、図66に示すように十字状ブリッジ401aとともに座面プレート401が全体的に下方に凹設変形し、これによってシートクッション4の座面部4cが下降される。
【0209】
尚、前記モータ402は、ワイヤ405を所定量巻き取った時点で回転停止はするが、その巻取り力は通電を継続するなどして維持して座面プレート401の下降状態を保持し、モータ402への通電を遮断することにより座面プレート401の弾発力でワイヤ405が巻き戻されつつ、該座面プレート401が元の状態に復元して座面部4cが上昇されて可逆機能が備えられる。
【0210】
また、本実施形態にあっても第7実施形態に示したように、車両1がロールオーバーする際には図49(a)〜(d)に示すように挙動され、ロールオーバー直前状態の図49(a)に対応した図50(a)では、通常運転時と同様に乗員Cはシートベルト装置30を着用しており、このとき、図58,図59に示すように左右両側のシート2R,2Lの前後位置は乗員Cの体格に応じた位置に設定されている。
【0211】
また、ロールオーバー1/4回転状態の図49(b)に対応した図50(b)では、ロールオーバーモードに入ったと判断された直後の状態で、電動リトラクタ36が作動してウェビング37が巻き取られてショルダーベルト31が引き込まれ、乗員Cがシートバック3に強く拘束される。
【0212】
更に、ロールオーバーの1/2回転状態の図49(c)に対応した図50(c)では、車両がロールオーバーにあると判断された時の状態で、図60,図61にも示すように左右両側のシート2R,2Lはともにシートバック3が所定量後傾されている。
【0213】
更にまた、ロールオーバーの1/2回転以降状態の図49(d)に対応した図50(d)では、車両がロールオーバー状態であると判断された時で、図62,図63に示すように左右両側のシート2R,2Lともにシートクッション4を下降させるようになっている。
【0214】
このとき、左右両側のシート2R,2L側ではともにカーテンエアバッグ310が展開されるとともに、車両回転中心に対して遠い側のシート(本実施形態では2L)では、シートバック3に内蔵されたサイドエアバッグ311がルーフ間距離に応じて展開される。
【0215】
ところで、本実施形態の乗員保護装置10Gの制御フローチャートは、基本的に図57に示した第7実施形態の乗員保護装置10Fの制御フローチャートと同様の制御が実行されるが、特に、本実施形態ではステップS28で乗員CがNear SideかFar Sideかを判断した後の制御が異なっている。
【0216】
尚、本実施形態のフローチャートの制御にあってもロールオーバーを判断するマップが用いられるが、これは図11に示す第1実施形態と同様であるためその説明を省略する一方、サイドエアバッグ311を展開させるためのマップは、図68に示すように時間とルーフ間距離との相関によって判断されるようになっており、ロールオーバーの判断領域αの所定時間後にサイドエアバッグ311の展開領域βが設定されている。
【0217】
また、本実施形態の制御フローチャートを説明するにあたって、図57の制御フローチャートと同一処理部分に同一ステップ符号を付して重複する説明を省略するものとする。
【0218】
即ち、本実施形態の制御フローチャートでは、図57に示した制御フローチャートのステップS28でNear Sideであると判断した場合、ステップS32によってシートクッション4を下降した後、ステップS29でプリテンショナーおよびカーテンエアバッグ310を作動する。
【0219】
また、前記ステップS28でFar Sideであると判断した場合、ステップS33によってシートクッション4を下降した後、ステップS31でプリテンショナーおよびカーテンエアバッグ310を作動し、その後、ステップS34によって乗員Cの頭部とルーフとの間の距離を測定して、その距離が変化する場合はステップS35によってサイドエアバッグ311を展開させることになる。
【0220】
以上説明したように本実施形態の車両横転時の乗員保護装置10Gによれば、第1実施形態と同様にロールオーバーが検出されると乗員Cはシート2に拘束された状態でシートバック3を所定量後傾することができるので、乗員Cの頭部Chはシートバック3の後傾に伴って頭部Chと車室内の天井との間の空間を増大して、頭部Chが天井に干渉するのを効率良く抑制することができる。
【0221】
また、本実施形態ではシートクッション下降手段400を設けて、車両がロールオーバー状態にある時に左右両側のシート2R,2Lのシートクッション4を下降させるようになっているので、乗員Cの頭部Chと天井との間の隙間をより大きく確保することができる。
【0222】
更に、本実施形態ではロールオーバー時の車両回転中心に対して遠い側(Far Side)のシート2でサイドエアバッグ311を展開させることで、車両回転による遠心力で車室内側面の上部に移動する可能性のあるFar Side乗員Cを車室内中央部に留めやすくすることができ、結果としてルーフ接地直前の乗員頭上空間をより大きく確保することができる。
【0223】
図69,図70は第8実施形態の変形例を示し、第8実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図69はシートクッションが通常位置にあるシートの斜視図、図70はシートクッションが下降位置にあるシートの斜視図である。
【0224】
本変形例のシートクッション下降手段400Aは、シートクッション4に内臓されて充填された気体により膨張されている気体封入袋410と、この気体封入袋410内の気体をロールオーバーの検出時に排出する弁部材411と、を備えている。
【0225】
即ち、前記弁部材411は、コントロールボックス50からの制御信号により開閉される電磁弁として構成され、該弁部材411はチューブ412を介して前記気体封入袋410に連通されており、この気体封入袋410は膨張状態で通常のシートクッション4の高さとなるように設定されている。尚、気体封入袋410に封入される気体としては空気または不活性ガスである窒素等が用いられる。
【0226】
従って、本変形例では、第8実施形態の図62,図63に示すようにシートクッション4が下降される際には、弁部材411が開弁されて気体封入袋410内の気体が乗員Cの体重で排出されることにより、気体封入袋410は縮小してシートクッション4が下降されることになる。
【0227】
また、本変形例の制御フローチャートは、前記第8実施形態に用いた図67に示した制御フローチャートを用いることができるが、同フローチャート中でステップS32およびステップS33のシートクッション下降では弁部材411を開弁することになる。
【0228】
ところで、本発明は前記第1〜第8実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができ
、例えば、前記各実施形態ではロールオーバー時にシートバックを後傾させるようにしてるが、シートを全体的に後傾させることでシートバックを後傾させ、乗員頭部と天井との間の空間を広げることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】本発明の第1実施形態における乗員保護装置を示す車両前半部分の側面図。
【図2】本発明の第1実施形態における乗員保護装置が適用されるシートの斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態におけるシートの内部構造を示す背面図。
【図4】図3中A部の側面図。
【図5】本発明の第1実施形態におけるロールオーバーによる車両の横転状態を(a)〜(c)に順を追って示す背面図。
【図6】本発明の第1実施形態における乗員保護装置の作動状態を(a)〜(c)に順を追って示すシートの側面図。
【図7】本発明の第1実施形態におけるシートバック下部の内部構造を詳細に示す分解斜視図。
【図8】本発明の第1実施形態におけるシートバックの後傾機構に用いられるシャフトガイドを詳細に示す拡大図。
【図9】本発明の第1実施形態におけるシート下部の内部構造を要部断面として示す背面図。
【図10】本発明の第1実施形態における乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図。
【図11】本発明の第1実施形態におけるロールオーバーの判定の一例を示すマップ。
【図12】本発明の第2実施形態における乗員保護装置が適用されるシートの斜視図。
【図13】本発明の第2実施形態におけるシートの内部構造を示す背面図。
【図14】図12中B部の側面図。
【図15】本発明の第2実施形態における乗員保護装置の作動状態を(a)〜(c)に順を追って示すシートの側面図。
【図16】本発明の第2実施形態におけるシートバック下部の内部構造を詳細に示す分解斜視図。
【図17】本発明の第2実施形態におけるシート下部の内部構造を要部断面として示す背面図。
【図18】本発明の第2実施形態における乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図。
【図19】本発明の第3実施形態における乗員保護装置が適用されるシートの斜視図。
【図20】本発明の第3実施形態におけるシートの内部構造を示す背面図。
【図21】図20中C部の側面図。
【図22】本発明の第3実施形態における乗員保護装置の作動状態を(a)〜(c)に順を追って示すシートの側面図。
【図23】本発明の第3実施形態におけるシートバック下部の内部構造を詳細に示す分解斜視図。
【図24】本発明の第3実施形態におけるシート下部の内部構造を要部断面として示す背面図。
【図25】本発明の第3実施形態における連動手段の回転力伝達部の作動を(a),(b)に順を追って示す要部断面図。
【図26】本発明の第3実施形態における乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図。
【図27】本発明の第4実施形態における通常運転状態のシートの斜視図。
【図28】本発明の第4実施形態における車両のロールオーバー検出時のシートの斜視図。
【図29】本発明の第4実施形態におけるシートの内部構造を示す背面図。
【図30】本発明の第4実施形態で(a)に通常運転状態と(b)にロールオーバー検出時をそれぞれ示す図29中D部の側面図。
【図31】本発明の第4実施形態における乗員保護装置の作動状態を(a)〜(c)に順を追って示すシートの側面図。
【図32】本発明の第4実施形態におけるシートバック下部の内部構造を詳細に示す分解斜視図。
【図33】本発明の第4実施形態におけるシート下部の内部構造を要部断面として示す背面図。
【図34】本発明の第4実施形態における乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図。
【図35】本発明の第5実施形態における通常運転状態のシートの斜視図。
【図36】本発明の第5実施形態における車両のロールオーバー検出時のシートの斜視図。
【図37】本発明の第5実施形態におけるロールオーバーによる車両の横転状態を(a)〜(c)に順を追って示す背面図。
【図38】本発明の第5実施形態における乗員保護装置の作動状態を(a)〜(c)に順を追って示すシートの側面図。
【図39】本発明の第5実施形態におけるシートバック下部の内部構造を詳細に示す分解斜視図。
【図40】本発明の第5実施形態におけるシートバック下部の内部構造を詳細に示す組付状態の斜視図。
【図41】本発明の第5実施形態におけるシートバック後傾手段のロック状態およびロック解除状態を(a),(b)に示す要部拡大側面図。
【図42】本発明の第5実施形態におけるロック解除手段のロック状態およびロック解除状態を(a),(b)に示す拡大斜視図。
【図43】本発明の第5実施形態における乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図。
【図44】本発明の第5実施形態の変形例でシートバック後傾手段のロック状態およびロック解除状態を(a),(b)に順を追って示す要部拡大側面図。
【図45】本発明の第6実施形態におけるシートバック下部の内部構造を詳細に示す分解斜視図。
【図46】本発明の第6実施形態におけるシートバック後傾手段のロック状態およびロック解除状態を(a),(b)に示す要部拡大側面図。
【図47】本発明の第6実施形態におけるロック解除手段のロック状態およびロック解除状態を(a),(b)に示す拡大斜視図。
【図48】本発明の第6実施形態における乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図。
【図49】本発明の第7実施形態におけるロールオーバーによる車両の横転状態を(a)〜(d)に順を追って示す背面図。
【図50】本発明の第7実施形態における乗員保護装置の作動状態を(a)〜(d)に順を追って示すシートの側面図。
【図51】本発明の第7実施形態における通常運転状態の右側シートの斜視図。
【図52】本発明の第7実施形態における通常運転状態の左側シートの斜視図。
【図53】本発明の第7実施形態における車両のロールオーバー検出時にシートバックが後傾した右側シートの斜視図。
【図54】本発明の第7実施形態における車両のロールオーバー検出時にシートバックが後傾した左側シートの斜視図。
【図55】本発明の第7実施形態におけるロールオーバー状態時の右側シートの斜視図。
【図56】本発明の第7実施形態におけるロールオーバー状態で後退した左側シートの斜視図。
【図57】本発明の第7実施形態における乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図。
【図58】本発明の第8実施形態における通常運転状態の右側シートの斜視図。
【図59】本発明の第8実施形態における通常運転状態の左側シートの斜視図。
【図60】本発明の第8実施形態における車両のロールオーバー検出時にシートバックが後傾した右側シートの斜視図。
【図61】本発明の第8実施形態における車両のロールオーバー検出時にシートバックが後傾した左側シートの斜視図。
【図62】本発明の第8実施形態におけるロールオーバー状態時の右側シートの斜視図。
【図63】本発明の第8実施形態におけるロールオーバー状態時の左側シートの斜視図。
【図64】本発明の第8実施形態におけるシートクッションの内部構造を示す拡大斜視図。
【図65】図64中E−E線に沿った拡大断面図。
【図66】本発明の第8実施形態におけるシートクッションの下降状態を示すシートクッションの内部構造の拡大斜視図。
【図67】本発明の第8実施形態における乗員保護装置を制御するフローチャートの説明図。
【図68】本発明の第8実施形態に用いられるサイドエアバッグを展開させるためのマップ。
【図69】本発明の第8実施形態の変形例でシートクッションが通常位置にあるシートの斜視図。
【図70】本発明の第8実施形態の変形例でシートクッションが下降位置にあるシートの斜視図。
【符号の説明】
【0230】
1 車両
2 シート
3 シートバック
4 シートクッション
4c 座面部
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G 乗員保護装置
20 車両横転検出手段
21 角速度センサ
22 加速度センサ
23 シート圧力センサ
24 トリム圧力センサ
25 乗員移動センサ
30 シートベルト装置(乗員後側手段)
31 ショルダベルト
32 ラップベルト
35 ウエビング挿通口
36 電動リトラクタ(ウエビング巻取り装置)
36a 電動リトラクタの回転部
37 ウエビング
40,40A,40B,40C,40D,40E シートバック後傾手段
50 コントロールボックス(制御手段)
60 リクライニング装置
100 主シャフト(傾動軸)
200,200A,200B 連動手段
201 プーリ
202 ワイヤ(無端ベルト)
210 ボビン(回転体)
220 可動ローラ
221 ソレノイド
224 回動支持部(傾動軸)
240 シートバックプレート
242 支持ピン(回転支持部)
250 ロック機構
260 破断ピン(ロック解除手段)
261 ソレノイド(ロック解除手段)
280 スプリング(後傾力付加手段)
300 シート後退手段
301,301a シートレール
302 モータ(アクチュエータ)
400,400A シートクッション下降手段
401 座面プレート
402 モータ(アクチュエータ)
410 気体封入袋
411 弁部材
C 乗員
Cu 上半身
K しきい値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のロールオーバー状態を検出する車両横転検出手段と、
乗員をシートに拘束する乗員拘束手段と、
シートを所定量後傾させるシート後傾手段と、
車両横転検出手段の検出信号からロールオーバーを判断して前記乗員拘束手段および前記シート後傾手段を作動する制御手段と、を設けたことを特徴とする車両横転時の乗員保護装置。
【請求項2】
シート後傾手段が、シートクッションに対して、シートバックを後傾させるシートバック後傾手段であることを特徴とする請求項1に記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項3】
乗員拘束手段は、乗員の上半身をシートバックに拘束するショルダーベルトと、乗員の腰部をシートクッションに拘束するラップベルトと、を備えたシートベルト装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項4】
シートベルト装置のウエビングをシートバック上端部から取り込むとともに、ウエビング巻取装置をシートバックまたはシートクッションに内蔵したことを特徴とする請求項3に記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項5】
ウエビング巻取装置は、通常時の巻き取り・巻き戻しを行うモータ巻取手段と、緊急時にウエビングを巻き取る火薬式巻取手段と、を備えたことを特徴とする請求項4に記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項6】
乗員拘束手段およびシートバック後傾手段は、ロールオーバーの検出前の状態に復帰する可逆機能を備えることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項7】
乗員拘束手段とシートバック後傾手段との間に、それらを互いに連動させて乗員を拘束しつつシートバックを後傾させる連動手段を設けたことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項8】
連動手段は、シートベルト装置のウエビング巻取装置の回転部と、シートバックの傾動軸に設けたプーリと、これら回転部とプーリとを周回して回転力を伝達する無端ベルトと、によって構成したことを特徴とする請求項7に記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項9】
連動手段は、シートベルト装置のウエビング巻取装置から繰り出されるウエビングを相対移動自在に周回し、ロールオーバー時にそのウエビングを係合してウエビングの巻取移動によってシートバックの傾動軸を回転する回転体であることを特徴とする請求項7に記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項10】
連動手段は、シートバックの背面に沿って上下方向に配索したウエビングの下方部分を前後移動可能に周回して、シートクッションの前方に配置したウエビング巻取装置に案内するローラと、該ローラをロールオーバーの発生時に車両前方に移動する移動手段と、によって構成し、ロールオーバー時にローラが前方移動することによりウエビングの巻取力をシートバックの後傾力に変換することを特徴とする請求項7に記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項11】
シートバックは、その前後方向傾斜位置を任意に設定するリクライニング装置を介してシートクッションに連結されることを特徴とする請求項2〜10のいずれか1つに記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項12】
車両横転検出手段は、ロール角度およびロールレイトを測定する角速度センサを備えるとともに、制御手段はロール角度およびロールレイトがしきい値を越えた領域をロールオーバーとして判断することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項13】
車両横転検出手段は、ロール角度およびロールレイトを測定する角速度センサに加えて、車両の横加速度を測定する加速度センサと、乗員とシートの接触圧力分布を測定するシート圧力センサと、乗員とドアトリムの接触圧力を測定するトリム圧力センサと、乗員の頭部移動および上体移動をそれぞれ測定する乗員移動センサと、を備えるとともに、制御手段はロール角度およびロールレイト、横加速度、シートの接触圧力、ドアトリムの接触圧力、および乗員移動量がそれぞれしきい値を越えた領域をロールオーバーと判断することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項14】
前記制御手段は、乗員の上体移動を検出し、その上体移動が所定値を超えたときに前記乗員拘束手段を作動することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項15】
シートバック後傾手段は、シートバックの下部を回転支持部を介してシートバックの後傾を可能に支持するとともに、リクライニング装置の回転軸に結合されるシートバックプレートと、
シートバックプレートとシートバックとの相対回転をロックするロック機構と、
ロック機構のロック状態を車両横転検出手段によるロールオーバーの検出により解除するロック解除手段と、ロック機構のロック解除に伴ってシートバックに後傾力を付加する後傾力付加手段と、を備えたことを特徴とする請求項11〜14のいずれか1つに記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項16】
シートを所定量後退させるシート後退手段を備え、制御手段は、ロールオーバーの検出によりシート後退手段を作動することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項17】
シート後退手段は、シートクッションを車両前後方向の移動を可能にフロアに支持するシートレールと、ロールオーバーの検出時に該シートレールに沿ってシートクッションを車両後方に駆動するアクチュエータと、を備えたことを特徴とする請求項16に記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項18】
シートクッションを所定量下降させるシートクッション下降手段を備え、制御手段は、ロールオーバーの検出によりシートクッション下降手段を作動することを特徴とする請求項1〜17のいずれか1つに記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項19】
シートクッション下降手段は、シートクッションの座面部を形成する弾発力を有する座面プレートと、この座面プレートをロールオーバーの検出時に下方に撓ませるアクチュエータと、を備えたことを特徴とする請求項18に記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項20】
シートクッション下降手段は、シートクッションに内臓されて充填された気体により膨張されている気体封入袋と、この気体封入袋内の気体をロールオーバーの検出時に排出する弁部材と、を備えたことを特徴とする請求項18に記載の車両横転時の乗員保護装置。
【請求項21】
車両のロールオーバーを車両横転検出手段により検出して、乗員拘束手段により乗員をシートに拘束するとともに、シートバック後傾手段によりシートバックを所定量後傾させることを特徴とする車両横転時の乗員保護方法。
【請求項22】
車両のロールオーバーを車両横転検出手段により検出して、乗員拘束手段により乗員をシートに拘束するとともに、シートバック後傾手段によりシートバックを所定量後傾させつつ、シート後退手段によりシートを所定量後退させることを特徴とする車両横転時の乗員保護方法。
【請求項23】
車両のロールオーバーを車両横転検出手段により検出して、乗員拘束手段により乗員をシートに拘束するとともに、シートバック後傾手段によりシートバックを所定量後傾させつつ、シートクッション下降手段によりシートクッションを所定量下降させることを特徴とする車両横転時の乗員保護方法。
【請求項24】
車両のロールオーバーを車両横転検出手段により検出して、乗員拘束手段により乗員をシートに拘束するとともに、シート後傾手段によりシートを所定量後傾させることを特徴とする車両横転時の乗員保護方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【公開番号】特開2007−153306(P2007−153306A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228872(P2006−228872)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】