説明

車両用ハイブリッド駆動組立体の機能モードの制御方法及びそれを利用するハイブリッド駆動組立体

本発明は、内燃エンジン(3)及び電気機械(32)を有する車両、特にスクータのためのハイブリッド駆動組立体の管理方法に関する。本発明による管理方法では、内燃エンジン(3)を、トルクを出さないように作動させるステップを有する。要求トルクが負であるとき、電気機械(32)を、バッテリ(36)を充電する発電機として機能するように作動させる。要求トルクが正で且つ内燃エンジン(3)の最大トルクよりも低いとき、要求トルクを満足させるように、バッテリ(36)を予め定められた充電レベルにするように、内燃エンジン(3)を最大効率条件下で稼働させるように、内燃エンジン(3)及び/又は電気機械(32)を作動させる。要求トルクが正で且つ内燃エンジン(3)の最大トルクよりも高いとき、内燃エンジン(3)及び/又は電気機械(32)を、所要トルクを満足させるように、推進トルクを供給して作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特にスクータのためのハイブリッド駆動組立体の機能モードの制御方法及びその制御方法を利用するハイブリッド駆動組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、ハイブリッド駆動組立体を用いた道路車両、特に自動車両、即ち、内燃エンジン及び電気モータが互いに組合せて用いられる車両が既に存在している。
【0003】
既知のハイブリッドの構成により、2つの推進システムの二者択一的な使用又は組合せの使用が可能であり、「直列型(シリーズ)ハイブリッド」と呼ばれる第1の既知の組合せ形態によれば、内燃エンジンは、電流発生器を伝動する唯一の機能を有し、電流発生器は、電気モータに給電するバッテリを再充電し、従って、推進は、専ら電気モータによって行われる。
【0004】
この構成は、内燃エンジンが平均的な動力を供給するだけで済み、従って、静止条件及び最適化条件下において機能することができるので、エネルギー消費量を実質的に減少させるという利点を有する。
【0005】
「並列型ハイブリッド」形態として知られている第2の形態では、内燃エンジンと電気エンジンの両方が、特定の伝動運動機構によって駆動輪に連結される。
【0006】
既知のハイブリッド駆動組立体は、複雑な構造を有し、コスト高であり、しかも大きな負担を必要とするという欠点があり、その結果、この種類のハイブリッドシステムの適用例は、小型の自動車両、例えばスクータにほんの少しあるに過ぎない。
【0007】
具体的に説明すると、特許文献1は、スクータ用のハイブリッド駆動組立体を記載しており、このハイブリッド駆動組立体は、内燃エンジンの駆動シャフトと伝動シャフトとの間に介在する伝動ユニットの遠心クラッチと同軸の電気機械を使用する。この場合、電気機械のロータは、クラッチベルと一体である。
【0008】
スクータ用の既知のハイブリッド駆動組立体は、「熱」、「電気」、「並列型ハイブリッド」、「直列型ハイブリッド」の作動モードを含む方法に従って作動し、「熱」の作動モードでは、推進力が専ら内燃エンジンによって供給され、「電気」の作動モードでは、推進力が専ら電気機械によって供給され、「並列型ハイブリッド」の作動モードでは、内燃エンジン及び電気モータが、駆動力を供給するのに寄与し、「直列型ハイブリッド」の作動モードでは、内燃エンジンが、バッテリを再充電する発電機の伝動のために専ら用いられ、駆動輪への推進トルクは、電気モータだけによって供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】イタリア国特許出願公開第TO2002A001088号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
スクータ用のハイブリッド駆動組立体の操縦のために現在用いられている組合せ式の作動モードは、車両のエネルギー消費量を最適化して、バッテリの充電レベルを予め定められた値に保証することができない。かかる組合せの作動モードは、実際には、両方のエンジンのトルクを駆動輪に供給し、又は、内燃エンジンを介してバッテリを充電し、電気モータが要求トルクを供給するという可能性を想定しているに過ぎない。
【0011】
後者の場合、特定の電流発生器の使用も必要である。というのは、電気機械は、モータとして作用する際に連動し、従って、その可逆性を利用することができない。
【0012】
本発明が提案して取扱うことは、エネルギー制御の最適化の観点で高い機能性能を保証することができる方法を提供することによって、ハイブリッド駆動組立体の機能モードを管理する既知の種類の方法における上述した欠点をなくすことにある。
【0013】
この取扱いの範囲内において、本発明の目的は、バッテリの充電レベルを予め定められたレベルに保つために組合せのモードで機能する間、バッテリの充電レベルを制御することができるハイブリッド駆動組立体の機能モードの管理方法を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、作動モードの管理方法を用いるハイブリッド駆動組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この計画及び他の目的は、請求項1記載の車両、特にスクータのためのハイブリッド駆動組立体の機能モードの管理方法によって達成される。
【0016】
本発明の別の特性及び利点は、添付の図面に例示的且つ非限定的に記載された本発明のハイブリッド駆動組立体の機能モードの管理方法の、好ましいが非限定的な実施形態の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による方法を利用する、スクータ用のハイブリッド駆動組立体の第1の実施形態の概略図である。
【図2】選択された作動モードに応じて、アキュムレータ装置と電気機械との間で交換される動力の流れを示す概略図である。
【図3】本発明の方法を利用する、スクータ用のハイブリッド駆動組立体の第2の実施形態の略図である。
【図4】駆動組立体の最適化されたエネルギー管理の制御システムの概略図である。
【図5a】本発明によるハイブリッド駆動組立体の管理モジュールと制御モジュールとの間の第1の通信アーキテクチャの概略図である。
【図5b】本発明によるハイブリッド駆動組立体の管理モジュールと制御モジュールとの間の第2の通信アーキテクチャの概略図である。
【図5c】本発明によるハイブリッド駆動組立体の管理モジュールと制御モジュールとの間の第3の通信アーキテクチャの概略図である。
【図5d】本発明によるハイブリッド駆動組立体の管理モジュールと制御モジュールとの間の第4の通信アーキテクチャの概略図である。
【図6】エネルギー管理装置の入力指令の処理のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照すれば、本発明による方法を利用するスクータ用のハイブリッド駆動組立体1は、駆動シャフト4を備えた内燃エンジン3を有し、駆動シャフト4は、伝動ユニット5によって伝動シャフト6に連結されている。この伝動シャフト6は、減速装置28によって駆動輪2に結合されている。
【0019】
伝動ユニット5は、駆動プーリ10と、従動プーリ11と、駆動プーリ10及び従動プーリ11に巻付けられたベルト12とを有している。従動プーリ11は、遠心クラッチ8を介して伝動シャフト6に選択的に連結可能である。ハイブリッド駆動組立体1は、遠心クラッチ8と同軸の電気機械32を有し、電気機械32は、伝動シャフト6と異なる軸線方向位置に配置されている。
【0020】
特に、電気機械32は、伝動シャフト6と同軸に固定ケース34に取付けられたステータ33と、伝動シャフト6に直接取付けられているロータ35を有している。
【0021】
電気機械32のこの革新的な配置構成により、既知の種類の電気機械に関する半径方向の負担が軽減されると共に、電気機械32のロータ部の慣性が減少する。
【0022】
さらに、上述した配置構成では、電気機械32のロータ35は、遠心クラッチ8によって生じる熱による応力を受けない。
【0023】
上述した例示の実施形態で用いられている電気機械32は、三相型の巻線を備えたステータ33と、永久磁石を備えたロータ35とから成り、永久磁石は、ロータ35自体の内部に位置決めされている。永久磁石の配置は、磁気ロータ回路に非対称性を生じさせるようなものである。
【0024】
電気機械32は、その機能のために、ロータに設けられている磁石の寄与と磁気ロータ回路の異方性の両方を利用することができる。従って、電気機械32は、両方向に回転することが可能であり、トルクを吸収したり供給したりすることがかのうである。その結果、電気機械32は、エネルギーをアキュムレータ装置36から取出すことによって、推進トルクをスクータに供給するためと、エネルギーをアキュムレータ装置36内に回収することによって、制動トルクを取出すための両方に使用される。
【0025】
この目的のため、電気機械32の制御電子機器50は、電気機械に相を供給する第1の電子装置(インバータ)51と、入力電圧を上昇させるための高周波変圧器を備えた第2の電子装置(ブースタ)52とを有している。
【0026】
第2の電子装置52は、アキュムレータ装置36による入力電圧の変化と無関係に、出力電圧を、入力インダクタンスの使用によって調整することが可能である。
【0027】
図2に示すように、第1の電子装置51及び第2の電子装置52は両方とも、アキュムレータ装置36から電気機械32への及び電気機械32からアキュムレータ装置36への両方向の動力の通行を可能にする。
【0028】
アキュムレータ装置36は、種々の種類の電池の使用が可能であり、電池は、例えば、亜鉛電池、亜鉛−ゲル電池、ニッケル金属水素電池、リチウム電池であり、スーパーコンデンサ及び適当な管理・制御電子機器(図示せず)を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0029】
エネルギーアキュムレータ装置を、通常行われるように、外部電池充電器によって充電することが可能である。上述した制御電子機器50の更なる特徴は、エネルギーシステムを電気機械32によって直接充電することを可能にすることであり、それにより、外部電池充電器の使用を回避する。
【0030】
図3に示す第2の実施形態では、遠心質量自動クラッチ8に代えて、従動クラッチ21の使用が想定されている。この構成により、システムが必要とするときだけ、内燃エンジン3が駆動輪2及びそれと一体の電気モータ32に永続的に結合されたりそれから分離されたりることを可能にする。従動クラッチ21を使用すれば、電気モータ32により内燃エンジン3を作動させ、それにより、「アイドルストップ」方式を実行することができるという利点があり、「アイドルストップ」方式では、車両が停止しているときに、内燃エンジン3をオフに切替え、また、電気推進力だけを再始動した後、電気機械32を利用して、推進のために用いられる内燃エンジンを再点火する。電気機械32は、従動クラッチによって内燃エンジン3のシャフト4と一体に作られる。
【0031】
この第2の実施形態により、駆動組立体を、「直列型ハイブリッド」の作動モードとして構成することを可能にし、「直列型ハイブリッド」の作動モードでは、電気モータが推進力をもたらし、内燃エンジンは、それが機能しているときに最大効率点で常時作動し、且つ、内燃エンジンの出力軸に組付けられた発電機を介してバッテリを再充電する。
【0032】
システムは、内燃エンジン3と、アキュムレータ装置36と、電気機械32とから成り、電気機械32は、相対的制御電子機器50を有し、システムは、高い動作性能を保証するよう管理される。
【0033】
車両に搭載されたアキュムレータ装置36は、実際には、エネルギーを供給するために用いられ、又は、選択されたエネルギー管理方式に応じて最適化された仕方で、電気機械32の同一の制御電子機器50を介して再充電される。
【0034】
この目的のため、電気機械32及び内燃エンジン3を、受取った一連の入力パラメータ及び/又は指令に基づいて特定の制御装置39,50によって適切に作動させることができるエネルギー管理ユニット38が提供される。機能モード及び推進トルクに関し、エネルギー管理ユニット38は、実際には、操縦者の要求を解釈することができ、かくして、内燃エンジン3及び電気機械32の統合された機能及びアキュムレータ装置36の充電レベルを最適化された仕方で管理する。
【0035】
電子制御装置38,50,39,36の物理的実施形態について、種々の形態が考えられる。
【0036】
「コンパクト」として定められる構成では、上述した種々の制御電子機器38,50,39,36のハウジングは、同一の電子装置に設けられる。一方、「分散型」として定められる構成では、種々の制御電子機器38,50,39,36は、車両の種々の箇所に配置された異なる装置内に収納される。
【0037】
2つ又は3つ以上の装置が車両に設けられた中間の形態も又提供され、かかる中間の形態は、これらの内部の1つ又は2つ以上の制御電子機器を具体化する。
【0038】
車両に分散配置された2つ又は3つ以上の装置を想定した構成について、システムの正しい機能を発揮させるために、種々の制御電子機器の間における情報交換の問題がある。この目的のために、CAN(コントロールエリアネットワーク)プロトコルを用いる通信ライン75の使用が想定される。
【0039】
図5aは、本発明による方法を利用するハイブリッド駆動組立体を搭載した車両の好ましい実施形態において用いられるCAN通信ネットワーク75を示し、ネットワーク75は、相対的ノードを有している。
【0040】
CANの各ノードは、電子装置に結合され、以下に述べる機能を有している。「電気機械制御」ノードは、電気機械32の制御電子機器50に対応し、制御電子機器50は、電気的作動に関する情報をCANライン75上に送り、種々の作動指令信号をCANライン75から受取る。「内燃エンジン制御」ノードは、内燃エンジンの機能の制御電子機器39に対応し、制御電子機器39は、内燃エンジンに関する情報をCANライン75上に送り、種々の作動指令信号をCANライン75から受取る。「ディジタルダッシュボード」ノードは、操縦者に車両の機能状態に関する情報を与える視覚化装置74に対応し、視覚化装置74は、視覚化すべき入力信号を受取り、オプションとして、収集可能な種々の信号に関する情報、例えば、アクセルハンドル44の位置及び以下に詳細に特定される情報(図4)を送ってもよい。「アキュムレータ装置制御」ノードは、車両に搭載されているアキュムレータ装置36に対応し、アキュムレータ装置36は、その充電レベルに関する情報をCANライン上に送ったり種々の指令及び制御入力信号を受取ったりする。「エネルギー管理システム」ノードは、エネルギー管理ユニット38に対応し、エネルギー管理ユニット38は、他の装置50,39,74,36から送られた信号をCANライン75から受取ったり種々の指令及び制御信号を別の装置に送ったりする。
【0041】
視覚化装置74に代えて、アナログ表示器を備えた等価なダッシュボードを用いてもよく、その場合、CANライン75上の「ディジタルダッシュボード」ノードが不要になる。この構成の一例を、図5bに示す。
【0042】
例えばアキュムレータ装置36を得るために、亜鉛電池を備えた構成を用いる場合、「アキュムレータ装置制御」ノードは、ライン75上には存在しないのが良い。この場合、アキュムレータ装置36の特性値を得て場合によってはCAN75を介してデータを送るのは、車両に設けられている他の装置のうちの1つであろう。この構成の一例を、図5cに示す。
【0043】
エネルギー管理ユニット38が車両に搭載されている制御装置50,39のうちの一方と同一のハードウエアサポート上で行われる場合、「エネルギー管理システム」ノードを無くすことができる。この場合、エネルギー管理ユニット38の機能を行う制御装置50,39が、相対的管理プロセスを行うことになる。この形態の一例を、図5dに示す。
【0044】
以下、ハイブリッド駆動組立体の機能モードを管理するためのエネルギー管理ユニット38が実施する方法を説明する。
【0045】
一般的には、ハイブリッド駆動組立体1の最適機能モードを選択するため、エネルギー管理ユニット38は、以下のステップを実施する。
【0046】
ステップaにおいて、エネルギー管理ユニット38は、一連の入力パラメータ及び/又は指令を受取り、一連の入力パラメータ及び/又は指令は、操縦者がセレクタA,B,C,Dを介して定めた管理方式、アクセルハンドル44の回転量、ブレーキ45の状態、電気機械32のロータ35の回転速度、蝶形弁40の角度位置、内燃エンジン3により供給されるトルク、内燃エンジン3の回転速度、及びアキュムレータ装置36の充電状態を含む。
【0047】
ステップbにおいて、エネルギー管理ユニット38は、受取った入力パラメータ及び/又は指令に基づいて、車両の状態及び操縦者が要求するトルクを決定する。
【0048】
ステップcにおいて、ステップbで決定された値に基づいて、両方のモータリゼーション(内燃エンジン3と電気機械32)によって供給されるトルクの合計が、操縦者が要求するトルクに等しくなるように、内燃エンジン3と電気機械32の両方を作動させる。
【0049】
本発明によるハイブリッド駆動組立体の機能モードの管理方法は、操縦者が、「純粋電気」、「標準ハイブリッド」、「高充電ハイブリッド」、「低充電ハイブリッド」の管理方式を選択できることを想定しており、「純粋電気」方式では、電気機械だけが推進のために用いられ、「標準ハイブリッド」方式では、電気機械と内燃エンジンの両方が推進のために用いられ、エネルギー管理ユニット38が、バッテリの充電状態を予め定められたレベルに維持し、「高充電ハイブリッド」方式では、操縦者が要求するトルクを満足させると共にアキュムレータ装置をできるだけ多く充電するように、エネルギー管理ユニット38が2つの機械を管理し、「低充電ハイブリッド」方式では、操縦者が要求するトルクを満足させると共にアキュムレータ装置内に入っているエネルギーを用いて燃料消費量を最小にするように、エネルギー管理ユニット38が2つの機械を管理する。
【0050】
「純粋電気」方式では、クラッチ8は、内燃エンジン3を電気機械32から永続的な仕方で機械的に切離し、その結果、これと一体の車両の駆動輪2からも永続的な仕方で機械的に切離す。このモードでは、要求トルクが正である場合、トルクは電気機械32だけによって供給され、要求トルクが負である場合、制動トルクが電気機械32に必要とされる。
【0051】
特に蓄積(エネルギー貯蔵)及び/又は牽引システムの組合せ式の管理方式に関し、エネルギー管理ユニット38は、操縦者が選択した管理方式に従って、以下の作動モードで作動することができる。
(I)発電機として機能する電気機械によってバッテリを再充電するために、内燃エンジンによって供給される動力の一部を用いる。
(II)アキュムレータシステム内に蓄えられているエネルギーを用いて、内燃エンジンによって供給される推進力に必要な動力の一部に代えて電気機械を用いる。
(III)それと同時に、内燃エンジンによって供給可能な最大動力で、電気機械によって供給される動力を利用する。
(IV)アキュムレータシステム内の或る特定の充電レベルを維持するように、2つの機械を管理する。
【0052】
図6を参照すると、選択された組合せ式の管理方式に従って、どのようにエネルギー管理装置38を決定するかについての例示の説明が与えられ、この作動モードでは、内燃エンジン3及び電気機械を作動させなければならない。
【0053】
図6は、内燃エンジンによって供給可能な最大トルクと電気モータによって供給可能な最大トルクの合計の結果として利用できる最大トルクを、参照符号61で示し、内燃エンジンだけによって利用可能な最大トルクに関する曲線を、参照符号62で示し、減速の際に電気機械によって吸収されるトルクを、参照符号63で示し、制動中に電気機械によって吸収される制動トルクを、参照符号64で示し、発電機として機能したときに電気機械が吸収できる最大トルクを、参照符号65で示し、最後に、アクセルの全百分率位置を、参照符号66で示す。
【0054】
車両の機能実行中、アクセル位置の垂直セグメント66は、最大推進トルク61と、減速の際に電気機械によって吸収される制動トルク63との間に位置し、従動プーリ11の回転速度に応じて移動する。
【0055】
各時点tにおいて、エネルギー管理ユニット38は、垂直セグメント66を、従動プーリ11の回転数の値のところに位置決めし、アクセルハンドル44の現在の位置を垂直セグメント66上の百分率で示す。
【0056】
このようにして定められた点は、座標軸上のトルク値に対応している。この値を、操縦者が要求するトルクとして解釈する。
【0057】
組合せ式の「標準ハイブリッド」管理方式の場合、要求トルクは、これがあてはめられる以下の3つの領域に従って別々に管理される。
【0058】
第1の領域は、減速時に電気機械によって吸収される制動トルクを特定する線63と水平軸線との間の領域である。この場合、要求トルクは負である。エネルギー管理ユニット38は、蝶形弁40の閉鎖を制御し、オプションとして、制御装置39により燃料供給を止め、或る特定の速度以上において、負のトルク参照値を、発電機として働くように要求される電気機械32に送り、エネルギーをバッテリ内に回収する。
【0059】
第2の領域は、水平軸線と内燃エンジンだけによって利用可能な最大推進トルクを特定する線62との間の領域である。この場合、要求トルクは正であり、内燃エンジンが供給可能な最大トルクよりも低い。エネルギー管理ユニット38は、燃焼室内への空気とガソリンの混合気の供給量を調整するように、蝶形弁40の開き(開度)を制御装置39を介して制御すると共に、要求トルクを満足させ、充電状態レベルを制御し、そして内燃エンジン3の機能を最適化するために、参照値(正又は負)を電気機械32に送る。
【0060】
第3の領域は、線62と利用可能な最大推進トルクに関する線61との間の領域である。この場合、要求トルクは、内燃エンジン3が供給可能な最大トルクよりも高い。エネルギー管理ユニット38は、内燃エンジン3が最大トルクを供給するように、蝶形弁40の開きを制御装置39を介して制御すると共に、操縦者が要求する高いトルクを満足させるために、正のトルク参照値を電気機械32に送る。
【0061】
最後に、操縦者が、ブレーキレバー45を作動させた場合、エネルギー管理ユニット38は、従動プーリ11の所与の回転速度のところの曲線64上の位置に対応するトルク値に等しい負のトルク参照値を電気機械32に送る。
【0062】
組合せ式の「高充電ハイブリッド」管理方式は、アキュムレータ装置36をできるだけ迅速に再充電し、次いで、充電状態を、到達最大値に維持する目的を有している。
【0063】
要求トルクが内燃エンジン3だけによって利用可能な最大トルクを特定する線62と利用可能な最大トルクに関する線61との間に位置している場合、回転数に関する最大トルク値を、加速時に車両の性能をそれほど損なわないようにするよう決定する。このように、電気機械によって供給される推進トルクは制限され、その結果、エネルギーがバッテリから取出される。
【0064】
他方、要求トルクが水平軸線と線62との間に位置している場合、内燃エンジンは、推進のために必要な全てのトルクを供給することになる。さらに、内燃エンジンが最大効率領域内で作動している場合、システムは、要求トルクに対して過剰なトルクを用いて、アキュムレータ装置を再充電し、電気機械を発電機として用いる。
【0065】
減速及び制動段階では、システムは、「標準ハイブリッド」モードの場合と同じ仕方で機能し、電気機械を発電機として利用し、エネルギーをアキュムレータ装置内に再充電する。
【0066】
「低充電ハイブリッド」モードでは、その目的は、燃料消費量を減少させるために燃料から来るエネルギーではなく、電気機械32内に存在するエネルギーの使用を許可することにある。
【0067】
操縦者が要求するトルクが水平軸線と線62との間の領域内に当てはめられるとき、「標準ハイブリッド」モードで用いられる制御との実質的な差が見られる場合がある。電気機械32は、要求トルクの一部を供給し、残りの部分は、内燃エンジン3によって供給される。電気機械32が必要とするトルクは、いずれの場合においても、内燃エンジン3の機能を最大効率領域内に維持するようなものでなければならない。
【0068】
内燃エンジン3がキャブレータ式エンジンでなく、噴射エンジンである場合、トルク供給の制御に関し、エンジン内への空気供給量を調節し且つ噴射エンジンに特有のパラメータを自動的に管理することができる電子装置39が設けられる。
【0069】
実際に、上述した本発明の方法により、エネルギー管理の最適化の観点で高い機能性能を達するハイブリッド駆動組立体の機能モードの管理を保証することが立証された。
【0070】
電気機械が、エネルギー消費量最適化要件に応じて、モータとして又は電流発生器として作動することが実際に確かめられた。本発明の特定の管理により、電気機械が、充電状態を予め定められた値に維持することができ、かかる予め定められた値は、最大充電値に一致してもよいし、別の予め設定された値に一致してもよいし、内燃エンジンが最適化された仕方で作動することができるように推進トルク供給に寄与してもよい。
【0071】
また、上述したスクータ用のハイブリッド駆動組立体は、本発明の作動モードの管理方法を実施することができるということが立証された。
【0072】
かくして、開示した本発明に関し、多くの改造例、追加例及び変形例を考えることができ、これら全てが本発明の範囲内に含まれる。
【0073】
したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の保護範囲は、本明細書及び図面に例示として記載された好ましい実施形態によって限定されると考えられてはならず、当業者により均等であると考えられる特性を有する本発明に固有の全ての特許要件を備えた新規な特徴を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの内燃エンジン(3)及び電気機械(32)を有する車両、特にスクータのハイブリッド駆動組立体の機能モードの管理方法であって、
(a)受取った一連の入力パラメータ及び/又は指令に基づいて、要求トルク及び車両状態を決定するステップと、
(b)前記要求トルクが負である場合、前記内燃エンジン(3)がトルクを供給しないよう前記内燃エンジンを作動させ、前記電気機械(32)がアキュムレータ装置(36)を充電するための発電機として機能するように前記電気機械を作動させるステップと、
(c)前記要求トルクが正であり且つ前記内燃エンジン(3)によって供給可能な最大トルクよりも低い場合、
前記内燃エンジン(3)及び/又は前記電気機械(32)を、前記所要トルクを満足させるように作動させ、且つ/又は、
前記アキュムレータ装置(36)を予め定められた充電レベルに至らせ且つ/又は前記内燃エンジン(3)を最大効率条件下において作動させるように、前記内燃エンジン(3)及び/又は前記電気機械(32)を作動させるステップと、
(d)前記所要トルクが正であり且つ前記内燃エンジン(3)によって供給可能な最大トルクよりも高い場合、前記内燃エンジン(3)及び/又は前記電気機械(32)を、前記所要トルクを満足させるように、推進トルクを供給して作動させるステップと、有する管理方法。
【請求項2】
前記所要トルク及び前記車両状態を決定する際に用いられる一連のパラメータ及び/又は指令は、
車両の管理方式、
車両のアクセルハンドル(44)の回転量、
車両の少なくとも1つのブレーキ(45)の状態、
前記電気機械(32)のロータ(35)の回転速度、
前記内燃エンジン(3)の蝶形弁(40)の角度位置、
前記内燃エンジン(3)内の空気流量、
前記アキュムレータ装置(36)の充電状態、及び
これらの組合せから成る群から選択される、請求項1に記載の管理方法。
【請求項3】
前記車両の管理方式に関する指令は、
前記電気機械(32)だけを推進に用いる純粋電気作動モードと、
前記電気機械(32)と前記内燃エンジン(3)の両方を推進に用い、前記アキュムレータ装置(36)の充電状態を予め定められたレベルに維持する標準ハイブリッド作動モードと、
前記電気機械(32)と前記内燃エンジン(3)の両方を、前記所要トルクを満足させると共に前記アキュムレータ装置(36)をできるだけ多く充電するように作動させる高充電ハイブリッド作動モードと、
前記電気機械(32)と前記内燃エンジン(3)の両方を、前記所要トルクを満足させ且つ燃料消費量を最小にするように作動させる低充電ハイブリッド作動モードとから成る群から選択可能である、請求項2記載の管理方法。
【請求項4】
前記管理方式が、標準ハイブリッド作動モードであるとき、
前記ステップ(c)において、前記内燃エンジン(3)を、要求トルク全てを供給するように駆動し、前記アキュムレータ装置(36)が予め定められたレベルよりも低い充電レベルを有している場合に、過剰のトルクを用いて前記アキュムレータ装置(36)を予め定められた充電レベルに再充電し、
前記ステップ(d)において、前記内燃エンジン(3)を、前記供給可能な最大トルクを供給するように駆動し、前記電気機械(32)を、高い要求トルクを満足させるように駆動する、請求項3に記載の管理方法。
【請求項5】
前記管理方式が、標準ハイブリッド作動モードであるとき、
前記ステップ(c)において、前記内燃エンジン(3)を、最大効率条件下で作動するように駆動し、前記アキュムレータ装置(36)を、実質的に予め定められた充電レベルにし、前記電気機械(32)を、高い要求トルクを満足させるように駆動し、
前記ステップ(d)において、前記内燃エンジン(3)を、供給可能な前記最大トルクを供給させるように駆動し、前記電気機械(32)を、前記高い要求トルクを満足させるように駆動する、請求項3に記載の管理方法。
【請求項6】
前記管理方式が、電気高充電ハイブリッド作動モードであるとき、
前記ステップ(c)において、前記内燃エンジン(3)を、前記要求トルク全てを供給させるように駆動し、前記内燃エンジン(3)を最大効率条件下で作動しているときに過剰トルクを用いて前記アキュムレータ装置(36)を再充電し、
前記ステップ(d)において、前記電気機械(32)を、制限された推進トルクを供給するように駆動し、前記内燃エンジン(3)を、供給可能な前記最大トルクを供給するように駆動する、請求項3に記載の管理方法。
【請求項7】
前記管理方式が、低充電ハイブリッド作動モードであるとき、
前記ステップ(c)において、前記内燃エンジン(3)を、最大効率条件下で作動させるように駆動し、前記電気機械(32)を、前記高い要求トルクを満足させるように駆動し、
前記ステップ(d)において、前記内燃エンジン(3)を、前記供給可能な最大トルクを供給させるように駆動し、前記電気機械(32)を、前記高い要求トルクを満足させるように駆動する、請求項3に記載の管理方法。
【請求項8】
更に、少なくとも1つのブレーキ(45)の作動時、負のトルク参照値を前記電気機械(32)に送るステップを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の管理方法。
【請求項9】
前記管理方式が、純粋電気作動モードであるとき、
前記ステップ(b)において、前記電気機械(32)は、制動トルクを供給し、
前記ステップ(c)及び(d)において、前記電気機械(32)だけを駆動して推進トルクを供給する、請求項3に記載の管理方法。
【請求項10】
少なくとも1つの内燃エンジン(3)と、前記内燃エンジン(3)の代わりに又はそれと組合せて作動可能な少なくとも1つの電気機械(32)とを有する車両、特にスクータのハイブリッド駆動組立体であって、
前記少なくとも1つの内燃エンジン(3)及び前記少なくとも1つの電気機械(32)を、請求項1に記載の方法に従って一連の入力信号に応答して操縦するためのエネルギー管理ユニット(38)を有する、ハイブリッド駆動組立体。
【請求項11】
前記一連の入力信号は、
車両の管理方式、
車両のアクセルハンドル(44)の回転量、
車両の少なくとも1つのブレーキ(45)の状態、
前記電気機械(32)のロータ(35)の回転速度、
前記内燃エンジン(3)の蝶形弁(40)の角度位置、
前記内燃エンジン(3)により供給されるトルク、
前記内燃エンジン(3)の回転速度、
前記内燃エンジン(3)内の空気流量、及び
前記アキュムレータ装置(36)の充電状態、から成る群から選択された1つ又は2つ以上のパラメータに対応する、請求項10に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項12】
前記電気機械(32)は、可逆型のものである、請求項10又は11記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項13】
前記電気機械(32)は、三相型の巻線を備えたステータ(33)と、ロータ(35)とを有する、請求項10〜12のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項14】
前記ロータ(35)は、永久磁石を有し、前記永久磁石は、前記ロータの磁気回路に非対称性を生じさせるように前記ロータ(35)内に位置決めされる、請求項10〜13のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項15】
前記ステータ(33)は、車両の伝動シャフト(6)と同軸の固定ケース(34)に取付けられ、前記ロータ(35)は、前記伝動シャフト(6)に直接取付けられる、請求項13又は14記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項16】
前記電気機械(32)は、その前記相に給電するのに適した第1の電子装置(51)及び/又は前記入力電圧を上げるのに適した第2の電子装置(52)を備えた制御電子機器(50)を有する、請求項10〜15のうちいずれか一に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項17】
前記第2の電子装置(52)は、高周波変換器を有する、請求項16に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項18】
前記第1の電子装置(51)は、インバータであり、前記第2の電子装置(52)は、ブースタである、請求項16又は17に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項19】
前記内燃エンジン(3)は、トルクを供給するように、制御装置(39)によって駆動される、請求項10〜18のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項20】
前記エネルギー管理ユニット(38)は、前記電気機械(32)の制御電子機器(50)及び前記内燃エンジン(3)の制御装置(39)のうちの選択された少なくとも一方に作用する、請求項19に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項21】
前記エネルギー管理ユニット(38)は、制御信号を、前記電気機械(32)の制御電子機器(50)、前記内燃エンジン(3)の制御装置(39)、前記アキュムレータ装置(36)、及びディジタルダッシュボード(74)から選択された少なくとも1つに送る、請求項19又は20に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項22】
前記エネルギー管理ユニット(38)は、通信ライン(75)を介して、前記制御電子機器(50)、前記制御装置(39)、前記アキュムレータ装置(36)、及び前記ディジタルダッシュボード(74)と通信する、請求項21に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項23】
前記通信ライン(75)は、CAN(コントロールエリアネットワーク)通信プロトコルを用いる、請求項22に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項24】
前記内燃エンジン(3)は、遠心質量自動クラッチと結合される、請求項10〜23のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項25】
前記内燃エンジン(3)は、従動クラッチ(21)と結合される、請求項10〜23のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項26】
前記電気機械(32)は、「アイドルストップ」方式を実行することによって、前記内燃エンジン(3)を始動させるために用いられる、請求項25記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項27】
前記電気機械(32)は、所要の推進力を供給するよう駆動され、前記内燃エンジン(3)は、最大効率点で作動するよう駆動され、前記内燃エンジン(3)の出力軸に取付けられた発電機を介して前記アキュムレータ装置(36)を再充電する、請求項25又は26記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項28】
前記制御電子機器(50)は、前記アキュムレータ装置(36)を再充電するために用いられる、請求項15〜27のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動組立体。
【請求項29】
ディジタルコンピュータの内部メモリ内で直接充電可能なコンピュータのための製品であって、前記製品が前記コンピュータ上で実行されているとき、請求項1〜9のいずれか1項に記載のステップを実施するのに適したコード部分を有する、製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−539697(P2009−539697A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514929(P2009−514929)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001812
【国際公開番号】WO2007/144765
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(501441773)ピアジオ アンド コンパニア ソシエタ ペル アチオニ (15)
【Fターム(参考)】