説明

車両用冷凍サイクル装置

【課題】ナビゲーション装置20からのデータを利用して効率良く蓄冷/蓄熱と放冷/放熱とを行い、車両の燃費を向上させる。
【解決手段】経路データから加減速パターンを生成し、その加減速パターンに基づき、減速区間A〜Fでは蓄冷熱器6に冷媒の冷温熱を蓄積し、加速区間a〜fでは蓄冷熱器6に蓄積した冷温熱を冷媒に放出する蓄放パターンを生成し、その蓄放パターンに基づいて冷凍サイクルRを制御する。
これにより、ナビゲーション装置20の推奨する経路に沿って走行する場合、減速時のエネルギーを熱エネルギーとして蓄冷熱し、その蓄冷熱を加速時の冷却/加熱に利用することで車両の省エネルギーを図ることができる。つまりは、加速区間a〜fでの放冷/放熱に備え、それより前の減速区間A〜Fを有効に利用して効率良く蓄冷/蓄熱を行うことにより、車両の燃費向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動源によって駆動されて車内の一部を冷却/加熱する冷凍サイクルと、その冷凍サイクル中にあって冷媒を循環させることにより蓄冷/蓄熱する蓄冷熱タンクと、地図データを用いて出発地から目的地に至る経路を探索するナビゲーション装置と、そのナビゲーション装置から取得した経路データを用いて冷凍サイクルを制御する冷凍制御装置とを備える車両用冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両制動時の慣性エネルギーを利用して蓄冷器に蓄冷し、車両加速時に蓄冷器の蓄冷を利用する従来技術として、下記特許文献1の車両用回生制動装置がある。また、車両用のナビゲーション装置からデータを取得し、蓄冷の予定を立てる従来技術として、下記特許文献2の車両のエネルギー蓄積装置用制御装置がある。
【特許文献1】特開2003−158801号公報
【特許文献2】特開2002−36903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に示された従来技術では、実走行パターンによって蓄冷を利用するため、蓄えた冷熱を使い切れなかったり、蓄冷時に捨ててしまうエネルギーが発生して無駄が生じたりして、省燃費効果が上がらないという問題点がある。また、上記特許文献2に示された従来技術では、ナビゲーション装置から勾配データを取得し、下りでエネルギーを回収する技術であるが、これだけでは平地を走行する場合には全く省エネルギー効果が出ないという問題点がある。
【0004】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、ナビゲーション装置からのデータを利用して効率良く蓄冷/蓄熱と放冷/放熱とを行って車両の燃費向上を図ることのできる車両用冷凍サイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、車両の駆動源によって駆動されて車内の一部を冷却/加熱する冷凍サイクル(R)と、冷凍サイクル(R)中にあって冷媒を循環させることにより蓄冷/蓄熱する蓄冷熱手段(6)と、地図データを用いて出発地から目的地に至る経路を探索するナビゲーション装置(20)と、ナビゲーション装置(20)から取得した経路データを用いて冷凍サイクル(R)を制御する冷凍制御手段(10)とを備える車両用冷凍サイクル装置において、
経路データから加速区間(a〜f)、減速区間(A〜F)、および各加減速によって生じる速度差を含む加減速パターンを生成し、その加減速パターンに基づき、減速区間(A〜F)では蓄冷熱手段(6)に冷媒の冷温熱を蓄積し、加速区間(a〜f)では蓄冷熱手段(6)に蓄積した冷温熱を冷媒に放出する蓄放パターンを生成し、その蓄放パターンに基づいて冷凍サイクル(R)を制御することを特徴としている。
【0006】
この請求項1に記載の発明によれば、ナビゲーション装置(20)の推奨する経路に沿って走行する場合、ナビゲーション装置(20)からの経路データを利用して加減速パターンを生成することができるため、その加減速パターンから減速時のエネルギーを熱エネルギーとして蓄冷熱し、その蓄冷熱を加速時の冷却/加熱に利用することで車両の省エネルギーを図るものである。つまりは、加速区間(a〜f)での放冷/放熱に備え、それより前の減速区間(A〜F)を有効に利用して効率良く蓄冷/蓄熱を行うことにより、車両の燃費向上を図ることができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用冷凍サイクル装置において、冷凍制御手段(10)は、加速区間(a〜f)毎で必要な放冷/放熱量と、減速区間(A〜F)毎で蓄積可能な蓄冷/蓄熱量とを算出し、各加速区間で必要な放冷/放熱を行いつつ加速が終了した時点(P1〜P6)で蓄冷熱手段(6)に残留する冷温熱量がほぼ無くなるように、その加速区間(a〜f)より前の減速区間(A〜F)毎での蓄冷/蓄熱量を決定することを特徴としている。
【0008】
この請求項2に記載の発明によれば、加速区間(a〜f)で放冷/放熱に使う冷温熱量分だけを、前の減速区間(A〜F)で蓄冷/蓄熱することで、無駄の無い蓄放が可能となる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の車両用冷凍サイクル装置において、蓄冷熱手段(6)内の温度を検出する蓄冷熱温検出手段(8)を備え、冷凍制御手段(10)は、蓄冷熱温検出手段(8)で検出される温度から蓄冷熱手段(6)内の使用可能な冷温熱量を算出し、その残存冷温熱量を含めて減速区間(A〜F)毎での蓄冷/蓄熱量が決定することを特徴としている。
【0010】
この請求項3に記載の発明によれば、蓄冷熱手段(6)内に残っている使用可能な冷温熱も有効に利用することで、例えば、出発地からの最初の加速区間(a)から放冷/放熱させることもでき、無駄の無い蓄放が可能となる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用冷凍サイクル装置において、冷凍制御手段(10)は、加速区間(a〜f)毎で必要な放冷/放熱量に対応する蓄冷/蓄熱量は、その加速区間(a〜f)に近い減速区間(A〜F)から優先的に割り当てることを特徴としている。この請求項4に記載の発明によれば、蓄冷/蓄熱した冷温熱はすぐに放冷/放熱に使う関係となり、永く冷温熱を貯めないことから無駄の無い蓄放が可能となる。
【0012】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用冷凍サイクル装置において、外気の温度を検出する外気温検出手段(9)を備え、冷凍制御手段(10)は、加速区間(a〜f)毎で算出された放冷/放熱量を、外気温検出手段(9)で検出される外気温に応じて補正を加えることを特徴としている。
【0013】
この請求項5に記載の発明によれば、車室内の冷暖房に適用した場合、外気温が高いほど放冷量を大きくしたり、外気温が低いほど放熱量を大きくしたりすることで、乗員の感覚に合った空調が可能となる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用冷凍サイクル装置において、冷凍制御手段(10)は、蓄放パターンにおいて、目的地に到着する時点で蓄冷熱手段(6)に残留する冷温熱量がほぼ無くなるように補正を加えることを特徴としている。この請求項6に記載の発明によれば、使う予定の無い冷温熱を残さないようにすることより、無駄の無い蓄放が可能となる。
【0015】
また、請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用冷凍サイクル装置において、ナビゲーション装置(20)は、道路交通情報を受信する受信手段(29)を備えており、経路データはその道路交通情報を加味して生成されることを特徴としている。この請求項7に記載の発明によれば、渋滞や速度規制なども加味することで、より正確な加減速パターンを生成することができる。
【0016】
また、請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の車両用冷凍サイクル装置において、冷凍制御手段(10)は、道路交通情報により渋滞と想定される区間を、小刻みに加減速を繰り返す所定の渋滞運転パターンを用いて蓄放パターンを生成することを特徴としている。この請求項8に記載の発明によれば、渋滞と想定される区間においても蓄冷/蓄熱と放冷/放熱とを小刻みに実行することにより、車両の省燃費効果を向上させることができる。なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜5を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態における蓄冷熱式の車両用空調装置(以下、空調装置と略す)の概略構成を示す模式図である。この蓄冷熱式の空調装置は、熱源としてのヒートポンプ式の冷凍サイクルRと、蓄冷熱手段としての蓄冷熱器(蓄冷熱手段)6と、これらの作動を制御する空調制御装置(冷凍制御手段)10と、地図データを用いて出発地から目的地に至る経路を探索するナビゲーション装置20とから概ね成っており、以下、順に説明する。
【0018】
ヒートポンプ式の冷凍サイクルRは、圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、膨張弁4、室内熱交換器5、および蓄冷熱器6を備えており、これらを冷媒配管によって環状に連通することにより、一つの冷凍サイクルRを構成している。圧縮機1は、車両の駆動源となる図示しない走行用エンジンによって駆動され、冷凍サイクルR内の冷媒を高温高圧に圧縮して吐出する流体機械である。
【0019】
圧縮機1は、例えば1回転当たりの吐出容量が調節可能な斜板式の可変容量型圧縮機であり、後述する空調制御装置10によって吐出容量が調節されるようになっている。圧縮機1の吐出容量は、ほぼゼロとなる最小吐出容量から、圧縮機1自身が吐出し得る最大吐出容量まで連続的に調節されるようになっている。圧縮機1の吐出量は、上記吐出容量と圧縮機回転数との積によって決定される。
【0020】
また、圧縮機1の作動時の必要動力は、上記吐出量に相関する。なお、圧縮機1としては、上記した可変容量型圧縮機に代えて、1回転当たりの吐出容量を固定とし、電磁クラッチ1aの接続/切断によってエンジンからの駆動力が断続されるクラッチ式の圧縮機としても良い。この場合の圧縮機では、電磁クラッチ1aの接続時間と切断時間との比を変えることで、実質的な吐出量を調節できる。
【0021】
圧縮機1から吐出された冷媒の循環方向は、四方弁2を切り換えることにより逆にもすることができ、これにより、冷房モード(図1内実線矢印方向)と暖房モード(図1内破線矢印方向)とに切り換えられる。なお、四方弁2の作動も空調制御装置10によって制御され、冷房モードと暖房モードとが選択される。
【0022】
室外熱交換器3は、車両前方部に配設されて外気と熱交換する熱交換器であり、外気を通風させるための図示しない送風機を備えている。また、室外熱交換器3よりもさらに車両前方部には、外気の温度を検出する外気温センサ(外気温検出手段)9が配設されており、その検出値は空調制御装置10に入力される。
膨張弁4は、圧縮機1で圧縮された冷媒を等エンタルピ的に減圧膨脹させる弁機構である。なお、膨張弁4には、この膨張弁4に対して並列配置される絞り機構としてのブリードポート4aが設けられている。ブリードポート4aの絞り度合いは、膨張弁4の最大開度に対して1/10程度に設定されており、通常の冷凍サイクル作動時、冷媒は膨張弁4側を流通し、圧縮機1を停止させて膨張弁4が閉じてしまった場合、冷媒はブリードポート4aを流通するようになっている。
【0023】
室内熱交換器5は、車室内空間へ連通する空調ケース5a内に配設されている。空調ケース5aの室内熱交換器5の上流側には送風機5bが配設されており、空調制御装置10によって制御されて外気(車室外空気)もしくは内気(車室内空気)を室内熱交換器5に送風し、室内熱交換器5で冷却/加熱された冷風/温風が車室内に吹き出されるようになっている。
【0024】
蓄冷熱器6は、冷媒回路の途中に設けられた開閉弁7と並列配置となるように設けられた蓄熱タンクである。蓄冷熱器6は、蓄冷熱熱交換器6aと、この蓄冷熱熱交換器6aを内部に収容する蓄冷熱タンク6bとを備えている。そして、蓄冷熱タンク6b内には、例えばパラフィンや水などの蓄熱材が所定量充填されており、蓄熱材は蓄冷熱熱交換器6aの外表面と接触するようになっている。蓄冷熱器6は、例えばシェルアンドチューブタイプの熱交換器として形成することができる。
【0025】
そして、開閉弁7は、空調制御装置10によって開閉制御される。蓄冷/蓄熱しない場合は開閉弁7が開状態となっており、冷媒は蓄冷熱器6をバイパスして流通する。蓄冷/蓄熱する場合、もしくは蓄冷熱器6に蓄冷/蓄熱した冷温熱を放冷/放熱する場合は、開閉弁7を閉状態として冷媒回路中に蓄冷熱器6を直列に接続する。これにより、冷媒が蓄冷熱熱交換器6aの中を流れて蓄熱材と熱交換し、冷媒の冷温熱を蓄熱材に貯めるか、もしくは蓄熱材に貯めた冷温熱を冷媒に取り出すことができる。
【0026】
なお、蓄冷熱器6としての伝熱性能は、蓄熱材の選定、蓄冷熱熱交換器6aの熱交換容量(体格)の設定、および蓄熱材の封入量などによって決定することができる。また、蓄冷熱器6には、蓄熱材の温度を検出する蓄冷熱温センサ(蓄冷熱温検出手段)8が配設されており、その検出値は空調制御装置10に入力される。空調制御装置10では、この検出値に基づいて使用可能な冷温熱量を算出するようになっている。
【0027】
上述したヒートポンプ式、且つ蓄冷熱式の空調装置の作動は、空調制御装置10によって制御されている。この空調制御装置10へは、上述した蓄冷熱温センサ8、および外気温センサ9の検出値が入力され、圧縮機1(もしくは電磁クラッチ1a)、四方弁2、送風機5b、および開閉弁7などに制御信号を出力する。また、本実施形態の空調制御装置10は、車両に搭載されたナビゲーション装置20と通信線によって結線されており、双方向のデータ通信を行うようになっている。なお、このデータ通信は、Blue Tooth(登録商標)などの無線通信を用いて通信線を省略しても良い。
【0028】
次に、ナビゲーション装置20の概要について、図2を用いて説明する。図2は、図1中のナビゲーション装置20の概略構成を示すブロック図である。図2に示すようにナビゲーション装置20は、位置検出器21、地図データ入力器26、操作スイッチ群27、外部メモリ28、本発明の受信手段としてのVICS(登録商標)受信機29、通信装置30、マイク31、音声出力装置32、表示装置33、リモコンセンサ34、リモートコントロール端末(いわゆるリモコン)35、およびこれらと接続された制御装置36を備えている。
【0029】
位置検出器21は、車両の現在位置を検出するためのもので、地磁気センサ22、距離センサ23、ジャイロスコープ24、および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機25を備えている。なお、精度によっては上述した内の一部で構成しても良く、さらにステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサなどを用いても良い。位置検出器21によって、表示装置33に現在位置を示す車両現在位置マークを付加して表示することが可能となる。
【0030】
地図データ入力器26は、図示しない記憶媒体が装着され、その記憶媒体に格納されている位置検出の精度向上のための、いわゆるマップマッチング用データ、地図データ、および目印データを含む各種データを入力するための装置である。また、上記記憶媒体には、各種施設の種類、名称、住所のデータなども記憶されており、それらのデータは経路探索の際の目的地設定などに用いられる。なお、上記記憶媒体としては、CD−ROMまたはDVD−ROM、メモリカード、HDDなどが用いられる。
【0031】
操作スイッチ群27は、例えば表示装置33と一体になったタッチスイッチ、もしくはメカニカルなスイッチなどが用いられ、スイッチ操作により制御装置36へ各種機能の操作指示を行う。また、操作スイッチ群27は、出発地および目的地を設定するためのスイッチを含んでいる。このスイッチを操作することにより、ユーザは、予め登録しておいた地点、施設名、電話番号、住所などから、出発地および目的地を設定することができる。
【0032】
外部メモリ28は、HDD(ハードディスクドライブ)やフラッシュROMなどの書き込み可能な大容量記憶装置である。外部メモリ28には大量のデータや、電源をOFFしても消去してはいけないデータを記憶したり、頻繁に使用するデータを地図データ入力器26からコピーして利用したりするなどの用途がある。なお、本実施形態では、車両情報や利用者からの質問事項(インタビューと呼ぶ)の回答結果なども外部メモリ28に記憶する。また、外部メモリ28は、比較的記憶容量の小さいリムーバブルなメモリであっても良い。
【0033】
VICS受信機29は、道路沿いに設置された路上機から無線送信された道路の渋滞情報、交通規制情報などを受信して、制御装置36に出力する無線受信機である。なお、VICS受信機29は、ナビゲーション装置20に外付け、内蔵のどちらでも良い。通信装置30は、携帯電話などで車外との通信を可能とする装置である。
【0034】
マイク31は、車両のステアリングコラムに設置され、音声認識や携帯電話のハンズフリー通話に使用される。また、音声出力装置32は、スピーカなどから構成され、音声認識結果のトークバック、ハンズフリー通話の受話音声、経路音声案内の出力などに利用される。
【0035】
表示装置33は、フルカラー表示が可能なものであり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどを用いて構成することができ、地図データ入力器26より入力された地図データと、位置検出器21からの位置情報を基に生成する車両現在位置マークと、更に地図上に表示される案内経路などの付加データとを重ねて表示することができる。
【0036】
リモコン35には複数の図示しない操作スイッチが設けられ、スイッチ操作によりリモコンセンサ34を介して各種指令信号を制御装置36に入力することにより、操作スイッチ群27と同じ機能を制御装置36に対して実行させることが可能である。制御装置36は通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスライン(いずれも図示せず)が備えられている。
【0037】
制御装置36は、地磁気センサ22、距離センサ23、ジャイロスコープ24、GPS受信機25、地図データ入力器26、操作スイッチ群27、外部メモリ28、VICS受信機29、リモコンセンサ34から入力された各種情報に基づき、ナビゲーション機能としての処理(例えば、経路探索など)を実行する。
【0038】
そして、制御装置36で処理された情報は、音声出力装置32や表示装置33によって利用者に報知される。なお、不具合情報取得処理を行うためのプログラムなどは制御装置36内のROMに格納されるものとし、ROMは本実施形態における後述の加減速(走行)パターンを記憶する記憶手段に相当する機能も有する。なお、地図のデータや推奨経路、渋滞情報などはG−BOOK(登録商標)などのセンターから取得したデータをROMなどの記憶手段に記憶しておいて利用するようにしても良い。
【0039】
図3は、ナビゲーション装置20の概略処理を示すフローチャートであり、図4は、本発明の第1実施形態における空調制御装置10の概略処理を示すフローチャートである。そして図5は、図3の処理による加減速パターン例と、図4の処理による蓄放パターン例を示すタイムチャートである。
【0040】
まず、図3のフローチャートにおけるステップS1では、出発地から目的地までの経路データを作成する。このとき、より正確な後述の加減速パターンとするために、VICS受信機29からの渋滞や速度規制などの道路交通情報がある場合は、その道路交通情報を加味した経路データが生成される。
【0041】
ステップS2では、その経路データから走行道路の交差点、カーブ、インターチェンジ、踏切など、加減速が予測される区間、その加減速区間までの距離、加減速区間の長さ、加減速前後の速度差などから、図5の上側に示す加減速パターンを作成する。そして、ステップS3では、その作成した加減速パターンを空調制御装置10へ送信する。
【0042】
次に、図4のフローチャートにおけるステップS10では、ナビゲーション装置20で作成した加減速パターンを受信し、ステップS20では、受信した加減速パターン中の各加速区間(図5の例ではa〜f)毎の速度差を求め、ステップS30では、求めた速度差の大きな順に優先順位を付ける。なお、ここで計算する速度差や優先順位は、予めナビゲーション装置20側で計算しておき、データとして空調制御装置10に送っても良いし、図示しない第3のユニットを用いても良い。
【0043】
ステップS40では、各加速区間a〜fで必要な放冷(放熱)量と、各減速区間(図5の例ではA〜F)で蓄積可能な蓄冷(蓄熱)量を算出する。そしてステップS50では、ステップS30で付けた優先度の高い加速区間順に、加速終了ポイント(加速が終了した時点、図5の例ではP1〜P6)で残存蓄冷(蓄熱)量がほぼ0となるように、前の減速区間での蓄冷(蓄熱)量を決めてゆく。
【0044】
例えば図5の例では、高速道路に入りレーンを通過してから高速の定常速度までの加速区間dで最も速度差が大きく、蓄冷熱を利用したい最優先の加速区間となる。このため、加速区間dでの放冷(放熱)量を確保するため、それより前の減速区間C、さらに前の減速区間Bで、可能なだけの蓄冷(蓄熱)を割り当てているが、それでも足りないため、交差点通過後(P2後)の定常走行時にも蓄冷(蓄熱)を行うとともに、その後の踏切一旦停止後の加速区間cでの放冷(放熱)量を小さくしている。
【0045】
なお、踏切一旦停止後の加速区間cでの放冷(放熱)を無くし、その代わりに交差点通過後(P2後)の定常走行時には蓄冷(蓄熱)を行わないパターンとしても良い。このように、加速区間で放冷/放熱に使う冷温熱量分だけを、前の減速区間で蓄冷/蓄熱するようにしている。また、なるべく永く冷温熱を貯めないようにするために、加速区間毎で必要な放冷/放熱量に対応する蓄冷/蓄熱量は、その加速区間に近い減速区間から優先的に割り当てるようにし、蓄冷/蓄熱した冷温熱はすぐに放冷/放熱に使うようにするものである。
【0046】
ステップS60では、目的地に到着する時点で蓄冷熱器6に残留する冷温熱量がほぼ無くなるように補正を加えている。図5の例では、最後の減速区間Fでは蓄冷/蓄熱をしないようにしている。これは、使う予定の無い冷温熱を残さないようにするための操作である。なお、本実施形態ではこのように、冷温熱を残さないようにしているため、出発地から走行を開始して定常走行までの最初の加速区間aでは、蓄冷/蓄熱した冷温熱が無いために放冷/放熱は行えない。
【0047】
ステップS70では、補正も加えられた最終的な蓄放パターンをROMに格納する。以降は、車両がナビゲーション装置20で設定した経路に従って走行するのに合わせ、空調制御装置10も作成した蓄放パターン基づいて冷凍サイクルRでの蓄放を制御することとなる。
【0048】
なお、ここで使用する蓄放パターンのデータは、空調制御装置10内に限らず、ナビゲーション装置20のROM内に保存しても良いし、第3の保存用機器を使用しても良い。また、経路を離脱した時は、再探索(リルート)後に得られた経路から再度、加減速パターンと蓄放パターンとを演算し直して制御を再開する。
【0049】
次に、本実施形態の特徴と、その効果について述べる。まず、経路データから加速区間a〜f、減速区間A〜F、および各加減速によって生じる速度差を含む加減速パターンを生成し、その加減速パターンに基づき、減速区間A〜Fでは圧縮機1を駆動させて蓄冷熱器6に冷媒の冷温熱を蓄積し、加速区間a〜fでは蓄冷熱器6に蓄積した冷温熱を冷媒に放出する蓄放パターンを生成し、その蓄放パターンに基づいて冷凍サイクルRを制御している。
【0050】
これによれば、ナビゲーション装置20の推奨する経路に沿って走行する場合、ナビゲーション装置20からの経路データを利用して加減速パターンを生成することができるため、その加減速パターンから減速時のエネルギーを熱エネルギーとして蓄冷熱し、その蓄冷熱を加速時の冷却/加熱に利用することで車両の省エネルギーを図るものである。つまりは、加速区間a〜fでの放冷/放熱に備え、それより前の減速区間A〜Fを有効に利用して効率良く蓄冷/蓄熱を行うことにより、余分なエネルギーを使うことなく、車両の燃費向上を図ることができる。
【0051】
また、冷凍制御装置10は、加速区間a〜f毎で必要な放冷/放熱量と、減速区間A〜F毎で蓄積可能な蓄冷/蓄熱量とを算出し、各加速区間で必要な放冷/放熱を行いつつ加速が終了した時点P1〜P6で蓄冷熱器6に残留する冷温熱量がほぼ無くなるように、その加速区間a〜fより前の減速区間A〜F毎での蓄冷/蓄熱量を決定するようにしている。これによれば、加速区間a〜fで放冷/放熱に使う冷温熱量分だけを、前の減速区間A〜Fで蓄冷/蓄熱することで、無駄の無い蓄放が可能となる。
【0052】
また、冷凍制御装置10は、加速区間a〜f毎で必要な放冷/放熱量に対応する蓄冷/蓄熱量は、その加速区間a〜fに近い減速区間A〜Fから優先的に割り当てるようにしている。これによれば、蓄冷/蓄熱した冷温熱はすぐに放冷/放熱に使う関係となり、永く冷温熱を貯めないことから無駄の無い蓄放が可能となる。
【0053】
また、冷凍制御装置10は、蓄放パターンにおいて、目的地に到着する時点で蓄冷熱器6に残留する冷温熱量がほぼ無くなるように補正を加えるようにしている。これによれば、使う予定の無い冷温熱を残さないようにすることより、無駄の無い蓄放が可能となる。
【0054】
また、ナビゲーション装置20は、道路交通情報を受信するVICS受信機29を備えており、経路データはその道路交通情報を加味して生成されるようにしている。これによれば、渋滞や速度規制なども加味することで、より正確な加減速パターンを生成することができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6〜9を用いて説明する。まず図6は、本発明の第2実施形態における空調制御装置10の概略処理を示すフローチャートであり、図7は、図3の処理による加減速パターン例と、図6の処理による蓄放パターン例を示すタイムチャートである。
【0056】
なお、本実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。図6のフローチャートでは、ステップS35として、蓄冷熱温センサ8で検出される蓄熱材の温度から、蓄冷熱器6内の使用可能な冷温熱量を算出しており、後のステップS50では、その残存冷温熱量を含めて減速区間A〜F毎での蓄冷/蓄熱量を決定するようにしている。
【0057】
これによれば、蓄冷熱器6内に残っている使用可能な冷温熱も有効に利用することで、例えば、出発地からの最初の加速区間aから放冷/放熱させることもでき(図7参照)、無駄の無い蓄放が可能となる。そのため本実施形態では、上述の第1実施形態で図4のステップS60で行っていた「目的地で残存する冷温熱量を0とする補正」を止め、目的地到着時の最後の減速区間Fでも可能ならば蓄冷/蓄熱を行い、成り行きで溜まった冷温熱は残すようにしている。
【0058】
また、図6のフローチャートでは、ステップS45として、加速区間a〜f毎で算出された放冷/放熱量を、外気温センサ9で検出される外気温に応じて補正を加えるようにしている。図8は、外気温に対する放冷/放熱量の補正の概略を示すグラフである。放冷する冷房状態では、外気温が低いときには放冷量を抑え、外気温が高くなるほど放冷量を増やすようにしている。
【0059】
また、放熱する暖房状態では、外気温が高いときには放熱量を抑え、外気温が低くなるほど放熱量を増やすようにしている。このように、車室内の冷暖房に適用して、外気温が高いほど放冷量を大きくしたり、外気温が低いほど放熱量を大きくしたりすることで、乗員の感覚に合った空調が可能となる。
【0060】
また、冷凍制御装置10は、道路交通情報などにより渋滞と想定される区間(図7中IXで示す区間)を、小刻みに加減速を繰り返す所定の渋滞運転パターン(図9参照)を用いて蓄放パターンを生成するようにしている。図9は、その渋滞運転パターン例を示すグラフである。これによれば、渋滞と想定される区間においても蓄冷/蓄熱と放冷/放熱とを小刻みに実行することにより、車両の省燃費効果を向上させることができる。この補正は、ナビゲーション装置20と冷凍制御装置10とのどちらで行っても良い。
【0061】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の実施形態では、本冷凍サイクル装置を車室内の冷房/暖房に用いているが、例えば、車内の一部として荷物室内を冷却/加熱する冷凍車、冷蔵車、温蔵車などに適用しても良い。また、上述の実施形態では、速度差の大きい加速区間順に優先付けを行っているが、高い加速度が必要な加速区間順に優先付けを行っても良い。
【0062】
また、実際に作成した経路データとは別に、ナビゲーション装置20に予めデモンストレーションパターンやシミュレーションパターンなどとしての加減速パターンと蓄放パターンを登録しておき、そのパターンを使用しても良い。例えば、サーキットでの加減速パターンを登録しておけば、サーキット走行時に使用することが可能となるし、道路が無くてもパターンのみを用いることで、シャシーダイナモ上での走行シミュレーションなどにも使用でき、実燃費の計測に役立てることができる。
【0063】
また、天気予報や時刻などによって外気温が変化すると予測される場合、加速区間毎で算出された放冷/放熱量に補正を加えても良い。また、走行パターンから推定される熱費に応じて、熱費の高いときに放冷/放熱、低いときに蓄冷/蓄熱するパターンとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態における蓄冷熱式の車両用空調装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1中のナビゲーション装置20の概略構成を示すブロック図である。
【図3】ナビゲーション装置20の概略処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態における空調制御装置10の概略処理を示すフローチャートである。
【図5】図3の処理による加減速パターン例と、図4の処理による蓄放パターン例を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態における空調制御装置10の概略処理を示すフローチャートである。
【図7】図3の処理による加減速パターン例と、図6の処理による蓄放パターン例を示すタイムチャートである。
【図8】外気温に対する放冷/放熱量の補正の概略を示すグラフである。
【図9】渋滞運転パターン例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
6…蓄冷熱器(蓄冷熱手段)
8…蓄冷熱温センサ(蓄冷熱温検出手段)
9…外気温センサ(外気温検出手段)
10…空調制御装置(冷凍制御手段)
20…ナビゲーション装置
29…VICS受信機(受信手段)
a〜f…加速区間
A〜F…減速区間
P1〜P6…加速終了ポイント(加速が終了した時点)
R…冷凍サイクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源によって駆動されて車内の一部を冷却/加熱する冷凍サイクル(R)と、
前記冷凍サイクル(R)中にあって冷媒を循環させることにより蓄冷/蓄熱する蓄冷熱手段(6)と、
地図データを用いて出発地から目的地に至る経路を探索するナビゲーション装置(20)と、
前記ナビゲーション装置(20)から取得した経路データを用いて前記冷凍サイクル(R)を制御する冷凍制御手段(10)とを備える車両用冷凍サイクル装置において、
前記経路データから加速区間(a〜f)、減速区間(A〜F)、および各加減速によって生じる速度差を含む加減速パターンを生成し、その加減速パターンに基づき、前記減速区間(A〜F)では前記蓄冷熱手段(6)に冷媒の冷温熱を蓄積し、前記加速区間(a〜f)では前記蓄冷熱手段(6)に蓄積した冷温熱を冷媒に放出する蓄放パターンを生成し、その蓄放パターンに基づいて前記冷凍サイクル(R)を制御することを特徴とする車両用冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記冷凍制御手段(10)は、前記加速区間(a〜f)毎で必要な放冷/放熱量と、前記減速区間(A〜F)毎で蓄積可能な蓄冷/蓄熱量とを算出し、各前記加速区間で必要な放冷/放熱を行いつつ加速が終了した時点(P1〜P6)で前記蓄冷熱手段(6)に残留する冷温熱量がほぼ無くなるように、その前記加速区間(a〜f)より前の前記減速区間(A〜F)毎での蓄冷/蓄熱量を決定することを特徴とする請求項1に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記蓄冷熱手段(6)内の温度を検出する蓄冷熱温検出手段(8)を備え、前記冷凍制御手段(10)は、前記蓄冷熱温検出手段(8)で検出される温度から前記蓄冷熱手段(6)内の使用可能な冷温熱量を算出し、その残存冷温熱量を含めて前記減速区間(A〜F)毎での蓄冷/蓄熱量が決定することを特徴とした請求項1または2に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記冷凍制御手段(10)は、前記加速区間(a〜f)毎で必要な放冷/放熱量に対応する蓄冷/蓄熱量は、その前記加速区間(a〜f)に近い前記減速区間(A〜F)から優先的に割り当てることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項5】
外気の温度を検出する外気温検出手段(9)を備え、前記冷凍制御手段(10)は、前記加速区間(a〜f)毎で算出された放冷/放熱量を、前記外気温検出手段(9)で検出される外気温に応じて補正を加えることを特徴とした請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記冷凍制御手段(10)は、前記蓄放パターンにおいて、目的地に到着する時点で前記蓄冷熱手段(6)に残留する冷温熱量がほぼ無くなるように補正を加えることを特徴とした請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記ナビゲーション装置(20)は、道路交通情報を受信する受信手段(29)を備えており、前記経路データはその道路交通情報を加味して生成されることを特徴とした請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記冷凍制御手段(10)は、前記道路交通情報により渋滞と想定される区間を、小刻みに加減速を繰り返す所定の渋滞運転パターンを用いて前記蓄放パターンを生成することを特徴とした請求項7に記載の車両用冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−280016(P2009−280016A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132345(P2008−132345)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】