説明

車両用駆動装置

【課題】回転状態切替機構の動力伝達状態を制御する係合装置で所期の性能を得易くなる車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】第1の駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に電気的変速機および回転状態切替機構が設けられており、第1のモータ・ジェネレータの出力を制御することにより、電気的変速機の変速比を無段階に制御可能に構成され、回転状態切替機構は、動力伝達状態を制御し、かつ、係合・解放される複数の係合装置を有しているハイブリッド車用駆動装置の制御装置において、複数の係合装置には、回転状態切替機構の変速比が最も小さくする場合に係合される高速用係合装置C1が含まれており、高速用係合装置C1は、電気的変速機の出力要素と、回転状態切替機構の入力回転部材とを係合・解放する構成を有し、高速用係合装置C1用の油圧室62,63が、回転状態切替機構の入力回転部材66に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車輪に動力を伝達するために複数の駆動力源を有するハイブリッド車用の駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の駆動力源としてエンジンおよびモータ・ジェネレータを搭載したハイブリッド車が知られており、このようなハイブリッド車においては、エンジンおよびモータ・ジェネレータの持つ特性を生かしつつ、燃費を向上し、かつ、排気ガスの低減を図ることが可能である。このように、駆動力源としてエンジンおよびモータ・ジェネレータを有するハイブリッド車の一例が、特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載されているハイブリッド車は、駆動力源としてエンジンおよびアシストモータを有しており、このアシストモータの他にモータが設けられている。まず、エンジンの動力が駆動軸および車軸を経由して駆動輪に伝達されるように構成されている。そして、エンジンから駆動軸に至る経路にプラネタリギヤが設けられている。プラネタリギヤは、サンギヤおよびリングギヤと、サンギヤおよびリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持するキャリヤとを3つの回転要素として有しており、キャリヤがエンジン側に連結され、サンギヤがモータのロータに連結されている。プラネタリギヤのリングギヤにはリングギヤ軸が連結されているとともに、リングギヤ軸には、アシストモータのロータが連結されている。さらに、リングギヤ軸から駆動軸に至る経路には変速機構が設けられている。この変速機構は、サンギヤおよびリングギヤと、サンギヤおよびリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持するキャリヤとを3つの回転要素としており、変速機構のキャリヤが前記リングギヤ軸に連結され、変速機構のリングギヤが前記駆動軸に連結されている。また、変速機構のキャリヤと変速機構のリングギヤとを選択的に係合・解放させるクラッチと、変速機構のサンギヤの回転を防止するブレーキとが設けられている。
【0004】
そして、エンジントルクをプラネタリギヤのキャリヤに入力するとともに、モータを反力要素として機能させることで、リングギヤから出力されたトルクがリングギヤ軸に伝達される。ここで、反力要素となるモータにより回生制御(発電制御)がおこなわれ、発生した電力がバッテリに充電されるとともに、そのモータの回転速度を制御することにより、プラネタリギヤの回転速度と、プラネタリギヤのリングギヤの回転速度との比である変速比を、無段階に制御することが可能である。また、車両における要求駆動力に応じて、エンジン出力を制御し、目標エンジントルクに対する実エンジントルクの不足分のトルクを補うように、アシストモータを駆動することが可能である。そして、前記変速機構においては、エンジンの動力を駆動軸に伝達させるための結合状態としては、クラッチをオフにし、かつ、ブレーキをオンにした増速結合状態と、クラッチをオンにしてブレーキをオフにした直結状態とを選択的に切換可能である。なお、第1の駆動力源およびモータ・ジェネレータを駆動力源として備えたハイブリッド車は、特許文献2にも記載されている。
【特許文献1】特開2000−346187号公報
【特許文献2】特開2005−112019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されているハイブリッド車においては、リングギヤ軸と駆動軸との間に設けられているプラネタリギヤのキャリヤとリングギヤとを選択的に係合・解放するクラッチが設けられているが、そのクラッチの係合・解放を制御する油圧室およびドラムおよびピストンなどの機構が、キャリヤ側に設けられているとすれば、クランクシャフトとリングギヤ軸との間に設けられているプラネタリギヤの変速比が小さくなると、リングギヤ軸が高速回転状態となり、遠心力により油圧室の油圧が高くなり、クラッチで所期の性能を得ることが難しくなる恐れがあった。
【0006】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、回転状態切替機構の動力伝達状態を制御する係合装置で所期の性能を得易くなる車両用駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、原動機から車輪に至る動力伝達経路に電気的変速機が設けられており、動力伝達経路における電気的変速機よりも下流側に、機械的に構成された回転状態切替機構が設けられており、前記回転状態切替機構は、動力伝達状態を制御し、かつ、係合・解放される係合装置を有している車両用駆動装置において、前記複数の係合装置には、高速時に係合される高速用係合装置が含まれており、この高速用係合装置は、前記電気的変速機の出力要素と、前記回転状態切替機構の入力回転部材とを係合・解放する構成を有しているとともに、この高速用係合装置の係合・解放を制御する油圧室が前記入力回転部材に設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記回転状態切替機構は、入力回転部材と出力回転部材との間の変速比を変更可能な変速機を含み、前記係合装置の係合・解放を切り替えることにより、その変速比が制御される構成を有していることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の構成に加えて、前記電気的変速機は、第1の遊星歯車機構を備えており、この第1の遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1のサンギヤおよび第1のリングギヤと、第1のサンギヤおよび第1のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第1のキャリヤとを有しており、この第1のキャリヤが前記入力要素に相当し、前記第1のリングギヤが前記出力要素に相当し、前記第1のサンギヤが前記反力要素に相当するとともに、前記変速機は、同軸上に配置された第2の遊星歯車機構および第3の遊星歯車機構を備えており、前記第2の遊星歯車機構は、第2のサンギヤおよび第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤおよび第2のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第2のキャリヤとを有しており、前記第3の遊星歯車機構は、第3のサンギヤおよび第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤおよび第3のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第3のキャリヤとを有しており、前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが連結され、前記第2のリングギヤと第3のキャリヤとが連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のリングギヤとが連結されており、前記第3のキャリヤが前記変速機の出力回転部材に相当し、前記係合装置は、前記第1のリングギヤおよび前記第3のサンギヤを、前記第2のキャリヤに対して選択的に係合・解放させるクラッチと、前記第2のキャリヤおよび前記第3のリングギヤの回転・停止を選択的に切り換える第1のブレーキと、前記第2のサンギヤの回転・停止を選択的に切り換える第2のブレーキとを含み、前記クラッチが前記高速用係合装置であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1の構成に加えて、前記回転状態切替機構は、前記係合装置の係合・解放を制御することにより、動力伝達状態が異なる複数のモードを選択的に切替可能なモード切替機構を含むことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の構成に加えて、前記電気的変速機は、第1の遊星歯車機構を備えており、この第1の遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1のサンギヤおよび第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤおよび第1のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第1のキャリヤとを有しており、この第1のキャリヤが前記入力要素に相当し、前記第1のリングギヤが前記出力要素に相当し、前記第1のサンギヤが前記反力要素に相当するとともに、前記モード切替機構は、同軸上に配置されたダブルピニオン型遊星歯車機構およびシングルピニオン型遊星歯車機構を備えており、前記ダブルピニオン型遊星歯車機構は、第2のサンギヤおよび第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤに噛合された第1のピニオンギヤと、前記第2のリングギヤおよび第1のピニオンギヤに噛合された第2のピニオンギヤと、前記第1のピニオンギヤおよび第2のピニオンギヤを保持する第2のキャリヤとを有しており、前記シングルピニオン型遊星歯車機構は、第3のサンギヤおよび第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤおよび第3のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第3のキャリヤとを有しており、この第3のリングギヤに前記車輪が動力伝達可能に連結されるとともに、前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが連結され、前記第2のリングギヤと第3のリングギヤとが連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のキャリヤとが連結されており、前記係合装置は、前記第1のキャリヤを前記第3のキャリヤに対して選択的に係合・解放させる第1のクラッチと、前記第1のリングギヤおよび前記第3のサンギヤを、前記第2のサンギヤに対して選択的に係合・解放させる第2のクラッチと、前記第2のサンギヤの回転・固定を選択的に切り換える第1のブレーキと、前記第2のキャリヤおよび第3のキャリヤの回転・固定を選択的に切り換えるリバースブレーキとを含み、前記第2のクラッチが、前記高速用係合装置であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの構成に加えて、前記回転状態切替機構に動力伝達可能に連結された電動機が設けられており、この電動機および前記回転状態切替機構が同軸上に配置されており、軸線方向で前記電動機と前記回転状態切替機構との間に隔壁が設けられており、前記係合装置には、前記回転状態制御機構を構成する回転部材の回転・停止を制御するブレーキが含まれており、このブレーキは軸線方向に動作するピストンを有しており、このピストンが前記隔壁に取り付けられており、このピストンは、前記軸線方向に直交する半径方向で、前記高速用係合装置の外側を覆うように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの構成に加えて、前記係合装置には、前記回転状態切替機構の変速比が最も小さくなるような動力伝達状態を形成する場合に係合される高速用係合装置が含まれていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの構成に加えて、前記電気的変速機は、相互に差動回転可能な入力要素と反力要素と出力要素とを有しており、前記入力要素が前記原動機に連結され、前記反力要素が反力発生装置に連結され、前記出力要素が前記電動機および前記回転状態切替機構に連結されているとともに、前記反力発生装置の出力を制御することにより、前記電気的変速機における入力要素と出力要素との間の変速比を無段階に制御可能に構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、原動機のトルクが電気的変速機に伝達されて、電気的変速機から出力されたトルクが、回転状態切替機構を経由して車輪に伝達される。また、高速用係合装置の係合・解放を制御することにより、電気的変速機の出力要素と、回転状態切替機構の入力回転部材との間における動力伝達がおこなわれ、または動力伝達が遮断される。さらに、最高車速の制限により回転状態切替機構の入力回転部材の回転数は所定値以上には上昇せず、油圧室の油圧が遠心力で高くなることを抑制でき、高速用係合装置で所期の性能を得やすくなる。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、原動機のトルクが電気的変速機に入力されるとともに、電気的変速機から出力されたトルクが、変速機を経由して車輪に伝達される。また、係合装置の係合・解放状態を変更することにより、変速機の変速比が変更される。また、請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる。
【0017】
請求項4の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、係合装置の係合・解放を制御することにより、動力伝達状態が異なる複数のモードを選択的に切替可能である。また、請求項5の発明においても、請求項4の発明と同様の効果を得られる。
【0018】
請求項6の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、高速用係合装置およびブレーキを半径方向に配置することができ、軸線方向における配置スペースを狭めることができ、駆動装置がコンパクト化される。
【0019】
請求項7の発明によれば、請求項1ないし6のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、係合装置の係合により、回転状態切替機構の変速比が最も小さくなるような動力伝達状態を形成することができる。
【0020】
請求項8の発明によれば、請求項1ないし7のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、反力発生装置の出力を制御することにより、電気的変速機における入力要素と出力要素との間の変速比を無段階に制御可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
つぎに、この発明を図面を参照しながら具体的に説明する。図2は、この発明を用いることの可能な車両のパワートレーンの構成例を示す。図2に示された車両Veは、F・R(フロントエンジン・リヤドライブ;エンジン前置き後輪駆動)形式のハイブリッド車(以下、「車両」と略記する)である。図2に示された車両Veは、2種類の駆動力源を有している。2種類の駆動力源は、動力の発生原理が異なり、この実施例では、エンジン1およびモータ・ジェネレータ(MG2)2が駆動力源として搭載されているとともに、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2から出力された動力が、共に同じ車輪(後輪)3に伝達されるように動力伝達経路が構成されている。車両Veの駆動力源であるエンジン1は、燃料を燃焼させて、その熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置である。このエンジン1としては、内燃機関または外燃機関を用いることが可能であるが、この実施例では、エンジン1として内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いる場合について説明する。このエンジン1は、電子スロットルバルブ(図示せず)などの制御により、出力トルクを電気的に制御することが可能に構成されている。
【0022】
一方、他の駆動力源であるモータ・ジェネレータ2はケーシング4の内部に収納されており、モータ・ジェネレータ2は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼備している。このモータ・ジェネレータ2は、ロータ5およびステータ6を有しており、ステータ6はケーシング4に固定されている。また、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2から車輪3に至る動力伝達経路には変速機7が設けられているとともに、エンジン1から変速機7に至る動力伝達経路には、動力分配装置8が設けられている。図2に示された動力分配装置8は、シングルピニオン形式の遊星歯車機構を主体として構成されている。すなわち、動力分配装置8は、入力軸9と同軸上に配置されたサンギヤ10と、サンギヤ10と同軸上に配置されたリングギヤ11と、サンギヤ10およびリングギヤ11に噛合する複数のピニオンギヤ12を、自転かつ公転自在に保持したキャリヤ13とを有している。そして、キャリヤ13と入力軸9とが動力伝達可能に連結、具体的には一体回転するように連結されている。さらに、入力軸9とエンジン1のクランクシャフト1Aとが同軸上に配置されているとともに、クランクシャフト1Aと入力軸9とが、ダンパ機構、具体的にはトーショナルダンパ1Bを介して動力伝達可能に連結されている。トーショナルダンパ1Bはトルク変動を吸収し、かつ、振動を減衰する緩衝装置である。
【0023】
また、入力軸9の軸線方向において、エンジン1と動力分配装置8との間には、モータ・ジェネレータ14が配置されている。モータ・ジェネレータ14は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼備している。つまり、エンジン1とモータ・ジェネレータ2,14とでは、動力の発生原理が異なる。このモータ・ジェネレータ14は、ロータ15およびステータ16を有しており、ステータ16はケーシング4に固定されている。そして、ロータ15とサンギヤ10とが動力伝達可能に連結、具体的には一体回転するように連結されている。
【0024】
一方、前記変速機7は、入力回転数を出力回転数で除した値である変速比を変更可能に構成されており、変速機7は、同軸上に配置された2組のシングルピニオン型遊の星歯車機構17,18を有している。まず、遊星歯車機構17は、同軸上に配置されたサンギヤ19およびリングギヤ20と、サンギヤ19およびリングギヤ20に噛合されたピニオンギヤ21を、自転かつ公転可能に保持するキャリヤ22とを有している。一方、遊星歯車機構18は、同軸上に配置されたサンギヤ23およびリングギヤ24と、サンギヤ23およびリングギヤ24に噛合されたピニオンギヤ25を、自転かつ公転可能に保持するキャリヤ26とを有している。そして、遊星歯車機構17のキャリヤ22と、遊星歯車機構18のリングギヤ24とが一体回転するように連結され、遊星歯車機構18のキャリヤ26と、遊星歯車機構17のリングギヤ20とが一体回転するように連結されている。すなわち、変速機7は、いわゆるC−R・C−R結合式の変速機である。さらに、モータ・ジェネレータ2のロータ5が、リングギヤ11およびサンギヤ23に連結されている。具体的には、モータ・ジェネレータ2のロータ5およびリングギヤ11およびサンギヤ23が、インターミデエイトシャフト50を介して一体回転するように連結されている。そして、キャリヤ26には出力回転部材27が連結、具体的には一体回転するように連結され、その出力回転部材27から車輪3に至る動力伝達経路には、デファレンシャル28が設けられている。
【0025】
つぎに、変速機7の変速比を制御するための機構について説明すると、前記キャリヤ22を、モータ・ジェネレータ2のロータ5およびリングギヤ11およびサンギヤ23に対して選択的に連結・解放させるクラッチC1が設けられている。また、キャリヤ22およびリングギヤ24の回転・停止を制御するブレーキB1が設けられており、サンギヤ19の回転・停止を制御するブレーキB2が設けられている。これらのクラッチC1およびブレーキB1,B2などの係合装置としては、摩擦式係合装置または噛み合い式係合装置のいずれを用いてもよいが、この実施例では、摩擦式係合装置を用いているものとする。この摩擦式の係合装置は、そのトルク容量もしくは伝達トルクが油圧により制御されるように構成されている。
【0026】
一方、モータ・ジェネレータ2との間で電力の授受をおこなうことの可能な蓄電装置29が設けられているとともに、モータ・ジェネレータ2と蓄電装置29との間の回路にはインバータ30が設けられている。また、モータ・ジェネレータ14との間で電力の授受をおこなうことの可能な蓄電装置31が設けられているとともに、モータ・ジェネレータ14と蓄電装置31との間の回路にはインバータ32が設けられている。これらの蓄電装置29,31としては、二次電池、具体的にはバッテリ、キャパシタなどを用いることが可能である。また、モータ・ジェネレータ2とモータ・ジェネレータ14との間で、蓄電装置29,31を経由することなく、直接電力の授受をおこなうことが可能となるように、電気回路が構成されている。さらにまた、クラッチC1およびブレーキB1,B2を制御するアクチュエータとして、油圧制御装置33が設けられている。この油圧制御装置33は、油圧回路およびソレノイドバルブなどを有する公知の構造を有している。
【0027】
つぎに、前述したクラッチC1およびブレーキB2の具体的な構成を、図1に基づいて説明する。前記ケーシング4に連続する隔壁51が設けられており、隔壁51はインターミディエイトシャフト50の軸線A1方向で、モータ・ジェネレータ2と遊星歯車機構17との間に配置されている。隔壁51には軸孔52が貫通形成されており、軸孔52内にインターミディエイトシャフト50が配置されている。隔壁51の内周端には軸線方向に延ばされた円筒部53が設けられており、円筒部53の外周には円筒形状のホルダー54が回転可能に取り付けられている。また、ホルダー54と一体回転するクラッチドラム55が設けられている。クラッチドラム55は環状に構成されており、クラッチドラム55であって、ホルダー54に接続された側とは反対側の端部には、環状のコネクティングドラム56が接続されている。このコネクティングドラム56は、インターミディエイトシャフト50の外側に相対回転可能に取り付けられている。そして、このコネクティングドラム56は、キャリヤ22と一体回転するように連結されている。
【0028】
また、クラッチドラム55の内周には軸線方向に沿って複数のディスク57がスプライン嵌合されている。これらのディスク57は環状に構成されている。一方、インターミディエイトシャフト50の外周にはクラッチハブ58がスプライン嵌合されており、クラッチハブ58には複数のプレート59が取り付けられている。そして、複数のディスク57と複数のプレート59とが、軸線方向で交互に配置されている。また、軸線A1を中心とする半径方向で、クラッチドラム55とホルダー54との間には、ピストン60およびストッパ61が設けられている。ピストン60,61は軸線方向に動作可能に構成されている。そして、クラッチドラム55とピストン60との間には油圧室62が形成され、ピストン60とストッパ61との間には油圧室63が形成されている。さらに、油圧室63には圧縮コイルばね(リターンスプリング)64が配置されており、ピストン60がクラッチドラム55に向けて軸線方向に押圧されている。
【0029】
一方、隔壁51には油路65が設けられており、ホルダー54にも油路54Aが設けられており、油路65と油路54Aとが接続されている。このようにして、油路65および油路54Aを経由して、圧油が油圧室62に供給・排出されるように構成されている。また、油圧室63にも圧油が供給・排出されるように構成されている。上記のように構成されたコネクティングドラム56およびクラッチドラム55およびプレート59およびディスク57などにより、クラッチC1が構成されている。また、油圧室62,63およびピストン60,61により、油圧サーボ機構66が構成されている。
【0030】
つぎに、ブレーキB2の構成について説明すると、前記サンギヤ19と一体回転するコネクティングドラム67が設けられており、このコネクティングドラム67は環状に構成されている。コネクティングドラム67の外周には、複数のプレート68が軸線方向に沿って取り付けられている。一方、ケーシング4の内周面には複数のディスク69が、軸線方向にスプライン嵌合されている。ここで、クラッチC1を構成する複数のプレート59および複数のディスク67は、ブレーキB2を構成する複数のプレート68および複数のディスク69よりも、軸線方向で隔壁51に近い位置に配置されている。さらに、ケーシング4の内部であって、軸線方向で隔壁51と遊星歯車機構17との間には、ブレーキピストン70が配置されている。ブレーキピストン70は軸線方向で動作可能となるように、前記隔壁51の円筒部53に取り付けられている。また、ブレーキピストン70は、軸線方向に延ばされた円筒部71と、円筒部71の軸線方向の一端に連続された内向きフランジ部72とを有している。
【0031】
このように構成されたブレーキピストン70の円筒部71が、軸線A1を中心とする半径方向で、クラッチC1および油圧サーボ機構66の外側を取り囲むように配置されている。さらに、ブレーキピストン70と隔壁51との間には油圧室73が形成され、ブレーキピストン70とクラッチドラム55との間には、ストッパ75が設けられており、ストッパ75とブレーキピストン70との間には、リターンスプリング74が介在させられている。このように、ブレーキB2およびクラッチC1は、いわゆる湿式多板クラッチ(ブレーキ)によって構成されている。なお、ブレーキB1も、湿式多板ブレーキによって構成されている。
【0032】
一方、車両Veの全体を制御するコントローラとして電子制御装置34が設けられており、電子制御装置34には、シフトポジションセンサの信号、車速センサの信号、加速要求検知センサの信号、制動要求検知センサの信号、エンジン回転数センサの信号、蓄電装置29,31の充電量を検知するセンサの信号、モータ・ジェネレータ2,14の回転数を検知するセンサの信号、変速機7の入力回転数および出力回転数を検知するセンサの信号などが入力される。これに対して、電子制御装置34からは、エンジン1を制御する信号、インバータ30,32を介してモータ・ジェネレータ2,14を制御する信号、油圧制御装置33を制御する信号などが出力される。この油圧制御装置33により、クラッチC1およびブレーキB1,B2の係合・解放を制御する油圧が制御されるように構成されている。
【0033】
図2に示す車両Veにおいて、エンジン1が運転されて、エンジントルクが動力分配装置8のキャリヤ13に伝達されると、モータ・ジェネレータ14により反力トルクが受け持たれて、エンジントルクがリングギヤ11に伝達される。そのリングギヤ11に伝達されたトルクが、変速機7およびデファレンシャル28を経由して車輪3に伝達されて、駆動力が発生する。前記動力分配装置8においては、サンギヤ10とキャリヤ13とリングギヤ11との差動作用により、入力要素であるキャリヤ13と、出力要素であるリングギヤ11との間における変速比を制御することが可能である。具体的には、反力トルクを受け持つモータ・ジェネレータ14の出力を制御することにより、エンジン回転数を無段階に(連続的に)制御することが可能である。つまり、動力分配装置8は無段変速機としての機能を有している。ここで、モータ・ジェネレータ14の回転方向は正逆に切り換え可能であり、モータ・ジェネレータ14は力行制御または回生制御が実行される。なお、モータ・ジェネレータ14の回転数を零に制御する(停止させる)ことも可能である。
【0034】
さらに、動力分配装置8の変速比を制御する概念について説明すると、エンジン1の燃費を向上させることを目的として、エンジン1の運転状態と、動力分配装置8の変速比とを協調制御するものである。例えば、加速要求(アクセル開度)および車速に基づいて、車両Veにおける要求駆動力が求められる。これは、例えば予め用意したマップから求められる。その要求駆動力と車速とからエンジン1の要求出力が算出され、その要求出力を最小の燃費で出力する目標エンジン回転数が、マップを使用して求められる。そして、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、モータ・ジェネレータ14の出力(トルク×回転数)が制御される。この制御と並行して、実エンジン出力を目標エンジン出力に近づけるように、エンジン1の電子スロットルバルブの開度などが制御される。
【0035】
また、蓄電装置29の電力をモータ・ジェネレータ2に供給してモータ・ジェネレータ2を電動機として駆動させ、モータ・ジェネレータ2のトルクを、変速機7を経由させて車輪3に伝達する制御を実行可能である。つまり、車輪3にトルクを伝達して駆動力を発生させる場合、エンジン1またはモータ・ジェネレータ2の少なくとも一方のトルクを車輪3に伝達可能であり、いずれの動力源のトルクまたは両方の動力源のトルクを伝達するかが、電子制御装置34に入力される信号およびデータに基づいて判断される。これに対して、車両Veが惰力走行する場合は、車両Veの運動エネルギが変速機7および動力分配装置8を経由してエンジン1に伝達され、エンジンブレーキ力が発生する。また、車両Veの惰力走行時に発生する運動エネルギの一部をモータ・ジェネレータ2に伝達し、このモータ・ジェネレータ2で回生制動力を発生させ、発生した電力を蓄電装置29に充電することも可能である。
【0036】
また、変速機7の変速比は、マニュアル変速操作または自動変速制御により切替可能であり、この変速機7においては、第1速ないし第3速の変速段を選択的に切替可能である。この変速機7における変速比の切り替えを、図3の図表および図4の共線図に基づいて説明する。図3において、「○」印は係合装置が係合されることを示し、「×」印は係合装置が解放されることを示す。まず、第1速(1st)が選択された場合は、ブレーキB1が係合され、ブレーキB2およびクラッチC1が解放される。具体的には、油圧室62の油圧が低下させられて、圧縮コイルばね64の押圧力でクラッチピストン55が、図1で左方向に動作して、クラッチC1が解放される。これと並行して、油圧室73の油圧が低下され、リターンスプリング74の押圧力でブレーキピストン71が図1で左方向に動作し、ブレーキB2が解放される。すると、インターミディエイトシャフト50のトルクが、変速機7のサンギヤ23に伝達されるとともに、キャリヤ22が停止されてリングギヤ24が反力要素となり、キャリヤ26が出力要素となる。つまり、第1速が選択された場合は、図4の共線図に示すように、サンギヤ23の回転数よりもキャリヤ26の回転数の方が低回転数となり、変速機7がいわゆる減速機として機能し、変速比が「1」よりも大きくなる。
【0037】
また、第2速(2nd)が選択された場合は、ブレーキB2が係合され、ブレーキB1およびクラッチC1が解放される。つまり、油圧室73の油圧が高められてブレーキピストン55が図1で右方向に動作し、ブレーキB2が係合される。すると、インターミディエイトシャフト50のトルクがサンギヤ23に伝達されるとともに、サンギヤ19が反力要素となり、キャリヤ26が出力要素となる。つまり、第2速が選択された場合は、サンギヤ23の回転数よりもキャリヤ26の回転数の方が低回転数となり、変速機7がいわゆる減速機として機能し、変速比が「1」よりも大きくなる。なお、第2速が選択された場合の変速比は、第1速が選択された場合の変速比よりも小さい。
【0038】
さらに、第3速(3rd)が選択された場合は、クラッチC1が係合され、ブレーキB1,B2が解放される。具体的には、油圧室62の油圧が高められて、クラッチピストン60が図1で右方向に動作し、クラッチC1が係合される。なお、第3速が選択された場合は、遠心力で油圧室63の油圧も高められて、その油圧によりクラッチピストン60が図1で左側に向けて押圧される。このようにして、油圧室62の油圧に応じた押圧力の一部が、油圧室63の油圧に応じた押圧力で打ち消され、その押圧力同士の差に応じた押圧力でクラッチC1が係合される。これは、油圧室62の油圧が遠心力により高まり、クラッチC1の係合力が高まりすぎることを抑制するためである。このようにして、第3速が選択されつと、インターミディエイトシャフト50から変速機7にトルクが伝達され、遊星歯車機構17,18を構成する回転要素が一体的に回転し、変速機7の入力回転数と出力回転数との比が「1」となる。つまり、変速機7の入力回転部材として機能するキャリヤ22と、出力回転部材として機能するキャリヤ26が直結状態となる。図2に示された変速機7においては、第3速が最高速段である。
【0039】
この実施例において、図4の共線図に示すエンジン回転数よりも、リングギヤ11およびモータ・ジェネレータ2の回転数の方が高くなった場合、つまり、動力分配装置8が増速機構として機能すると、変速機7における入力回転数が高回転数となる。これに対して、図2に示す変速機7においては、クラッチC1は、第1速または第2速では係合されず、第3速で係合される。この第3速では変速機7の入力回転数と、クラッチC1の係合により回転するキャリヤ22の回転数とが同じであるとともに、最高車速の制限(エンジン回転数が所定回転数以上になることが制限されている)により、変速機7の入力回転数が所定回転数以上になることはない。したがって、キャリヤ22と一体回転するクラッチドラム55に設けられている油圧サーボ機構66の油圧室62,63の油圧が、遠心力により高まることを可及的に抑制することができる。
【0040】
したがって、クラッチドラム55およびピストン60,61が変形したり、油圧室62,63を液密にシールする密封装置のシール性が低下することを抑制できる。また、クラッチドラム55が半径方向に膨脹(変形)することを抑制できるため、半径方向におけるディスク57とクラッチドラム55との接触量(半径方向の噛み合い幅)が減少することを抑制できる。このように、クラッチC1で所期の性能を得られ易くなる。なお、第1速または第2速においては、クラッチC1が解放されており、かつ、キャリヤ22の回転数は変速機7の入力回転数未満となるため、油圧室62,63の油圧が遠心力で高まることはない。さらに、第3速が選択された場合は、変速機7を構成する回転要素が一体回転し、ギヤ同士の相対回転は生じない。したがって、ギヤ同士の相対回転による噛み合い損失の増加を抑制できる。
【0041】
また、油圧室62に圧油を供給する油路65が隔壁51に設けられ、油路54Aがホルダー54に設けられており、インターミディエイトシャフト50には、油圧室62に圧油を給排する油路は形成されていない。このため、密封装置(Oリングなど)を、隔壁51とホルダー54との間には設けるが、インターミディエイトシャフト50と隔壁51との間に密封装置を設けずに済み、部品点数の増加を抑制できる。また、インターミディエイトシャフト50に、このような密封装置を設けると、動力分配装置8が増速機構として機能して、インターミディエイトシャフト50が高速回転した場合に、密封装置部分で油漏れが生じたり、引き摺り損失が生じたりする可能性があるが、この実施例では、このような不都合を未然に回避できる。さらに、ブレーキピストン70が、半径方向でクラッチC1の外側を覆うように配置されているため、軸線方向における部品の配置スペースを狭めることができ、駆動装置のコンパクト化、および全長の短縮、および大重量化を回避することができ、車載性が向上する。また、全長が短縮されるため、パワートレーンにおける共振が発生することも抑制できる。
【0042】
ここで、図1および図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン1が、この発明の原動機に相当し、車輪3が、この発明の車輪に相当し、動力分配装置6が、この発明の電気的変速機および第1の遊星歯車機構に相当し、変速機7およびクラッチC1およびブレーキB1,B2が、この発明の回転状態切替機構に相当し、クラッチC1およびブレーキB1,B2が、この発明における複数の係合装置に相当し、キャリヤ13が、この発明の入力要素に相当し、サンギヤ10が、この発明の反力要素に相当し、リングギヤ11が、この発明の出力要素に相当し、変速機7が、この発明の変速機に相当し、サンギヤ23およびキャリヤ22が、この発明の入力回転部材として機能し、キャリヤ26が、この発明の出力回転部材として機能する。また、モータ・ジェネレータ14が、この発明における反力発生装置に相当し、モータ・ジェネレータ2が、この発明の電動機に相当する。
【0043】
さらに、サンギヤ10が、この発明の第1のサンギヤに相当し、リングギヤ11が、この発明の第1のリングギヤに相当し、キャリヤ13が、この発明の第1のキャリヤに相当し、遊星歯車機構17が、この発明の第2の遊星歯車機構に相当し、遊星歯車機構18が、この発明の第3の遊星歯車機構に相当し、サンギヤ19が、この発明の第2のサンギヤに相当し、リングギヤ20が、この発明の第2のリングギヤに相当し、キャリヤ22が、この発明の第2のキャリヤに相当し、サンギヤ23が、この発明の第3のサンギヤに相当し、リングギヤ24が、この発明の第3のリングギヤに相当し、キャリヤ26が、この発明の第3のキャリヤに相当し、クラッチC1が、この発明のクラッチおよび高速用係合装置に相当し、ブレーキB1が、この発明の第1のブレーキに相当し、ブレーキB2が、この発明のブレーキ及び第2のブレーキに相当する。また、油圧室62,63が、この発明の油圧室に相当し、隔壁51が、この発明の隔壁に相当し、ブレーキピストン70が、この発明のピストンに相当する。
【0044】
つぎに、ハイブリッド車の他の構成例を、図5に基づいて説明する。図5に示された構成において、図2に示された構成と同じ構成については、図2と同じ符号を付してある。図5に示された車両Veにおいては、エンジン1から車輪3に至る動力伝達経路に変速機35が設けられている。この変速機35は、同軸上に配置されたダブルピニオン型の遊星歯車機構36およびシングルピニオン型の遊星歯車機構37を有している。遊星歯車機構36は、サンギヤ38およびリングギヤ39と、サンギヤ38に噛合されたピニオンギヤ40と、リングギヤ39およびピニオンギヤ40に噛合されたピニオンギヤ41と、ピニオンギヤ40,41を自転、かつ、公転可能に保持するキャリヤ42とを有している。一方、遊星歯車機構37は、サンギヤ43およびリングギヤ44と、サンギヤ43およびリングギヤ44に噛合されたピニオンギヤ45を自転、かつ、公転可能に保持するキャリヤ42とを有している。つまり、キャリヤ42は、遊星歯車機構37,38で共用化されている。そして、リングギヤ44が出力回転部材27に連結、具体的には一体回転するように連結されている。
【0045】
さらに、動力分配装置8のリングギヤ11と、サンギヤ43とが一体回転するように連結され、リングギヤ39とリングギヤ44とが一体回転するように連結されている。また、回転要素同士の連結関係、および回転要素の回転・停止を制御する係合装置が設けられている。この係合装置として、動力分配装置8のキャリヤ13および入力軸9を、キャリヤ42に対して選択的に係合・解放させるクラッチC1と、リングギヤ11およびサンギヤ43を、サンギヤ38に対して選択的に係合・解放させるクラッチC2と、サンギヤ38の回転・停止を制御するブレーキB1と、キャリヤ42の回転・停止を制御するリバースブレーキBRとが設けられている。これらの係合装置としては、摩擦式係合装置または噛み合い式係合装置のいずれを用いてもよいが、この実施例では摩擦式係合装置を用いる場合について説明する。また、これらの係合装置は、油圧制御装置33により、トルク容量が制御されるように構成されている。
【0046】
つぎに、前述したクラッチC1およびブレーキB1の具体的な構成を、図6に基づいて説明する。図6の実施例では、インターミディエイトシャフト50が中空に構成されており、インターミディエイトシャフト50の内部にインプットシャフト9が相対回転可能に配置されている。前記隔壁51の円筒部53には、環状のホルダー76が回転可能に取り付けられている。このホルダー76と一体回転するクラッチドラム77が設けられている。クラッチドラム77は環状に構成されており、クラッチドラム77の内周には軸線方向に沿って複数のディスク78がスプライン嵌合されている。これらのディスク78は環状に構成されている。一方、インターミディエイトシャフト50の外周には、インターミディエイトシャフト50と一体回転するスリーブ79が取り付けられており、スリーブ79の外周に前記サンギヤ43が形成されている。また、スリーブ79には、環状のクラッチハブ80が一体的に連結されており、そのクラッチハブ80が半径方向に延ばされている。このクラッチハブ80の外周には複数のプレート81が取り付けられている。そして、複数のディスク78と複数のプレート81とが軸線方向に交互に配置されている。
【0047】
また、軸線A1を中心とする半径方向で、クラッチドラム77とホルダー76との間には、ピストン82およびストッパ83が設けられている。ピストン82,83は軸線方向に動作可能に構成されている。そして、クラッチドラム77とピストン82との間には油圧室84が形成され、ピストン82とストッパ83との間には油圧室85が形成されている。さらに、油圧室85には圧縮コイルばね(リターンスプリング)86が配置されており、ピストン82がクラッチドラム77に向けて軸線方向に押圧されている。一方、隔壁51には油路87が設けられており、ホルダー76にも油路88が設けられており、油路87と油路88とが接続されている。このようにして、油路87および油路88を経由して、圧油が油圧室84に供給・排出されるように構成されている。また、油圧室85にも圧油が供給・排出されるように構成されている。上記のように構成されたクラッチドラム77およびクラッチハブ80およびプレート81およびディスク78などにより、クラッチC2が構成されている。また、油圧室84,85およびピストン82,83により、油圧サーボ機構89が構成されている。
【0048】
つぎに、ブレーキB1の構成について説明すると、前記サンギヤ38と一体回転するブレーキハブ90が設けられており、このブレーキハブ90は環状に構成されている。ブレーキハブ90の外周には、複数のプレート91が軸線方向に沿って取り付けられている。一方、ケーシング4の内周面には複数のディスク92が、軸線方向にスプライン嵌合されている。そして、プレート91とディスク92とが軸線方向で交互に配置されている。また、軸線方向で、クラッチハブ77とブレーキハブ90との間に、前記クラッチC2が配置されている。さらに、ケーシング4の内部であって、軸線方向で隔壁51と遊星歯車機構36との間には、ブレーキピストン93が配置されている。ブレーキピストン93は軸線方向で動作可能となるように、前記隔壁51の円筒部53に取り付けられている。また、ブレーキピストン93は、軸線方向に延ばされた円筒部94と、円筒部94の軸線方向の一端に連続された内向きフランジ部95とを有している。このように構成されたブレーキピストン93の円筒部94が、軸線A1を中心とする半径方向で、クラッチC2および油圧サーボ機構89の外側を取り囲むように配置されている。さらに、ブレーキピストン93と隔壁51との間には油圧室96が形成され、ブレーキピストン93とクラッチドラム77との間には、ストッパ97が設けられており、ストッパ97とブレーキピストン93との間には、リターンスプリング98が介在させられている。このように、ブレーキB1およびクラッチC2は、いわゆる湿式多板クラッチ(ブレーキ)によって構成されている。なお、ブレーキBRおよびクラッチC1も、湿式多板ブレーキによって構成されている。
【0049】
上記のように構成された動力分配装置8と変速機35との関係を、図7の共線図に基づいて説明する。モータ・ジェネレータ2とモータ・ジェネレータ14との間にエンジン1が配置されており、エンジン1とモータ・ジェネレータ14との間に、変速機35のサンギヤ38およびリングギヤ39,44が配置されている。また、エンジン1とサンギヤ38との間に、リングギヤ39,44が配置されている。さらに、キャリヤ42はエンジン1と同じ位置に配置されており、モータ・ジェネレータ2と一体回転するサンギヤ43が同じ位置に配置されている。
【0050】
そして、変速機35においては、動力伝達状態を制御するために、前進ポジションおよび後進ポジション(Rev)を選択的に切替可能であるとともに、前進ポジションでは、低速モード(Lo)、中速モード(Mid)、高速モード(Hi)を選択的に切替可能である。ここで、低速モード、中速モード、高速モードが選択された場合、および後進ポジションが選択された場合における係合装置の状態を、図8に基づいて説明する。図8において、「○」印は係合装置が係合されることを示し、「×」印は係合装置が解放されることを示す。この図8に示すように、低速モードが選択された場合は、ブレーキB1が係合され、その他の係合装置は全て解放される。具体的には、油圧室96の油圧が高められてブレーキピストン93が図6で右方向に動作し、ブレーキB1が係合される。また、油圧室84の油圧が低下されて、リターンスプリング86の押圧力でピストン82が、図6で左方向に動作し、クラッチC2が解放される。この低速モードが選択された場合に、エンジントルクが動力分配装置8を経由して変速機35のサンギヤ43に伝達されると、図7の共線図に示すように、停止されているサンギヤ38が反力要素となり、リングギヤ44が出力要素となる。このように、低速モードが選択された場合は、サンギヤ43の回転速度に対してリングギヤ44の回転速度が減速される。すなわち、変速機35の変速比が「1」よりも大きくなる。
【0051】
また、中速モードが選択された場合は、クラッチC1が係合され、その他の係合装置は全て解放される。すなわち、油圧室96の油圧が低下されて、リターンスプリング98の押圧力でブレーキピストン93が図6で左方向に動作し、ブレーキB1が解放される。そして、エンジントルクが動力分配装置8を経由して変速機35のキャリヤ42に入力され、かつ、サンギヤ43が反力要素となり、リングギヤ48が出力要素となる。このように、中速モードが選択された場合は、図7に示す共線図上で、動力分配装置8の回転状態を示すを示す線分と、変速機35の回転状態を示す線分とが重なる。このように、中速モードが選択された場合は、変速機35に対して、サンギヤ43およびクラッチC1の2系統を経由して動力が伝達される。なお、低速モードが選択された場合は、変速機35の変速比はモータ・ジェネレータ2の回転数に応じて決定される。また、中速モードが選択された場合は、モータ・ジェネレータ2,14の回転数およびエンジン回転数に基づいて、変速機35の変速比が決定される。そして、中速モードが選択された場合は、変速機35の変速比は「1」よりも大きい値、「1」以下の値など、任意に調整可能である。
【0052】
さらに、高速モードが選択された場合は、クラッチC2が係合され、その他の係合装置は全て解放されて、変速機35を構成する回転要素が一体回転する状態となる。具体的には、油圧室84の油圧が高められて、ピストン82が図6で右方向に動作し、クラッチC2が係合される。この場合、油圧室82の油圧が遠心力で高められるが、油圧室85の油圧が同様にして高められて、ピストン82に対して図6で左方向の力を与えるため、クラッチC2の係合圧が過剰となることを抑制できる。このようにして、高速モードが選択された場合は、変速機35の変速比が「1」に固定される。一方、後進ポジションが選択された場合は、リバースブレーキBRが係合されてキャリヤ42が停止し、その他の係合装置は全て解放される。そして、エンジントルクが動力分配装置8を経由して変速機35のサンギヤ43に入力されると、キャリヤ42が反力要素となり、リングギヤ48が、前進ポジションとは逆方向に回転する。なお、図7の共線図においては、全てのモードおよび後進ポジションで、モータ・ジェネレータ2およびサンギヤ43の回転数が同一である場合を示してある。
【0053】
この実施例において、図7の共線図に示すエンジン回転数よりも、サンギヤ43およびモータ・ジェネレータ2の回転数の方が高くなった場合、つまり、動力分配装置8が増速機構として機能すると、変速機35における入力回転数が高回転数となる。これに対して、図5に示す変速機7においては、クラッチC2は、低速モードおよび中速モードでは係合されず、高速モードで係合される。この高速モードでは変速機35の入力回転数と、クラッチC2の係合により回転するサンギヤ38の回転数とが同じであるとともに、最高車速の制限(エンジン回転数が所定回転数以上になることが制限されている)により、変速機35の入力回転数が所定回転数以上になることはない。したがって、サンギヤ38と一体回転するクラッチドラム77に設けられている油圧サーボ機構89の油圧室84,85の油圧が、遠心力により高まることを可及的に抑制することができる。したがって、クラッチドラム77およびピストン82,83が変形したり、油圧室84,85を液密にシールする密封装置のシール性が低下することを抑制できる。
【0054】
た、クラッチドラム77が半径方向に膨脹(変形)することを抑制できるため、半径方向におけるディスク78とクラッチドラム77との接触幅(半径方向の噛み合い幅)が減少することを抑制できる。このように、クラッチC2で所期の性能を得られ易くなる。なお、低速モードまたは中速モードにおいては、クラッチC2が解放され、クラッチドラム77の回転数は変速機35の入力回転数未満となるため、油圧室84,85の油圧が高まることはない。さらに、高速モードが選択された場合は、変速機35を構成する回転要素が一体回転し、ギヤ同士の相対回転は生じない。したがって、ギヤ同士の相対回転による噛み合い損失の増加を抑制できる。
【0055】
また、油圧室84に圧油を供給する油路87が隔壁51に設けられ、油路88がホルダー76に設けられており、インターミディエイトシャフト50には、油圧室84に圧油を給排する油路は形成されていない。このため、密封装置(シールリングなど)を、隔壁51とホルダー76との間には設けるが、インターミディエイトシャフト50と隔壁51との間に密封装置を設けずに済み、部品点数の増加を抑制できる。また、インターミディエイトシャフト50に、このような密封装置を設けると、動力分配装置8が増速機構として機能して、インターミディエイトシャフト50が高速回転した場合に、密封装置部分で油漏れが生じたり、引き摺り損失が生じたりする可能性があるが、この実施例では、このような不都合を未然に回避できる。さらに、ブレーキピストン93が、半径方向でクラッチC2の外側を覆うように配置されているため、軸線方向における部品の配置スペースを狭めることができ、駆動装置のコンパクト化、および全長の短縮、および大重量化を回避することができ、車載性が向上する。また、全長が短縮されるため、パワートレーンにおける共振が発生することも抑制できる。
【0056】
図5および図6に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、変速機35およびクラッチC1,C2およびブレーキB1,BRが、この発明の回転状態切替機構に相当し、クラッチC1,C2およびブレーキB1,BRが、この発明の複数の係合装置に相当し、低速モードおよび中速モードおよび高速モードが、この発明における複数のモードに相当する。また、遊星歯車機構36が、この発明のダブルピニオン型遊星歯車機構に相当し、遊星歯車機構37が、この発明のシングルピニオン型遊星歯車機構に相当し、サンギヤ38が、この発明の第2のサンギヤに相当し、リングギヤ39が、この発明の第2のリングギヤに相当し、ピニオンギヤ40が、この発明の第1のピニオンギヤに相当し、ピニオンギヤ41が、この発明の第2のピニオンギヤに相当し、キャリヤ42が、この発明の第2のキャリヤおよび第3のキャリヤに相当し、サンギヤ43が、この発明の第3のサンギヤに相当し、リングギヤ44が、この発明の第3のリングギヤに相当し、クラッチC1が、この発明の第1のクラッチに相当し、クラッチC2が、この発明の第2のクラッチに相当し、ブレーキB1が、この発明の第1のブレーキに相当し、リバースブレーキBRが、この発明のリバースブレーキに相当する。また、油圧室84,85が、この発明の油圧室に相当し、隔壁51が、この発明の隔壁に相当し、ブレーキB1が、この発明のブレーキに相当し、ブレーキピストン93が、この発明のピストンに相当する。
【0057】
なお、図2に基づいて説明した回転状態切替機構(変速機7および各係合装置)と、図5に示された回転状態切替機構としてのモード切替機構(変速機35および各係合装置)との相違点を説明すると、図2に示された例では、エンジントルクを変速機7に伝達する場合、動力分配装置8の入力要素および出力要素を、動力が必ず(直接)経由するが、図5の例では、エンジントルクを動力分配装置8の入力要素および出力要素を直接経由させることなく、動力分配装置8と組み合わせて動力循環させ、変速機35に伝達できる中速モードを選択できる点が異なる。また、図2に示す動力分配装置8および変速機7は、図4に示すように、変速機7の回転要素が、動力分配装置8の回転要素同士の間に位置していないとともに、動力分配装置8の回転要素が、変速機7の回転要素同士の間に位置していない。これに対して、図5に示す動力分配装置8および変速機35の場合、図7に示すように、変速機35の回転要素が、中速モードで動力分配装置8の回転要素同士の間に位置している点が異なる。また、原動機としては、エンジンに替えて、電動機、油圧モータなどを用いることも可能である。また、電動機として、油圧モータなどを用いることも可能である。更に反力発生装置として油圧モータなどを用いることも可能である。更に、電気的変速機とは、電動機の出力を制御することにより、変速比が制御される変速機である。
【0058】
なお、この発明において、「高速用係合装置の係合・解放を制御する油圧室が入力回転部材に設けられている」とは、入力回転部材自体、または入力回転部材と一体回転する部材に、油圧サーボ機構および油圧室が設けられていることを意味する。また、この発明において、各種の回転要素及び回転部材は、動力を伝達する部材または固定させる部材であり、ギヤ、キャリヤ、回転メンバ、軸、ハブ、コネクティングドラムなどの機械部品が含まれる。さらに、この発明において、「異なる動力伝達状態」とは、動力の伝達経路が異なること、変速比が異なること、変速比の制御範囲が異なること、複数の係合装置の係合・解放状態が異なることなどの意味が含まれる。さらにまた、この発明の係合装置では、湿式多板ブレーキの代えてバンド式のブレーキを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の車両用駆動装置の要部を示す断面図である。
【図2】この発明の車両用駆動装置の全体構成を示す概念図である。
【図3】図2に示す変速機の変速段と、係合装置の係合・解放制御との関係を示す図表である。
【図4】図2に示された動力分配装置および変速機を構成する回転要素の状態を示す共線図である。
【図5】この発明の車両用駆動装置の他の構成を示す概念図である。
【図6】図5に示された車両用駆動装置の要部を示す断面図である。
【図7】図5に示された動力分配装置および変速機を構成する回転要素の状態を示す共線図である。
【図8】図5に示す変速機の変速段と、係合装置の係合・解放制御との関係を示す図表である。
【符号の説明】
【0060】
1…エンジン、 3…車輪、 6…動力分配装置、 7,35…変速機、 10,19,23,38…サンギヤ、 11,20,24,39…リングギヤ、 13,22,26,42…キャリヤ、 17,18,36,37…遊星歯車機構、 40,41…ピニオンギヤ、 51…隔壁、 62,63,84,85…油圧室、 70,93…ブレーキピストン、 C1,C2…クラッチ、 B1,B2,BR…ブレーキ、 Ve…車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機から車輪に至る動力伝達経路に電気的変速機が設けられており、動力伝達経路における電気的変速機よりも下流側に、機械的に構成された回転状態切替機構が設けられており、前記回転状態切替機構は、動力伝達状態を制御し、かつ、係合・解放される係合装置を有している車両用駆動装置において、
前記複数の係合装置には、高速時に係合される高速用係合装置が含まれており、この高速用係合装置は、前記電気的変速機の出力要素と、前記回転状態切替機構の入力回転部材とを係合・解放する構成を有しているとともに、この高速用係合装置の係合・解放を制御する油圧室が前記入力回転部材に設けられていることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記回転状態切替機構は、入力回転部材と出力回転部材との間の変速比を変更可能な変速機を含み、前記係合装置の係合・解放を切り替えることにより、その変速比が制御される構成を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記電気的変速機は、第1の遊星歯車機構を備えており、この第1の遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1のサンギヤおよび第1のリングギヤと、第1のサンギヤおよび第1のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第1のキャリヤとを有しており、この第1のキャリヤが前記入力要素に相当し、前記第1のリングギヤが前記出力要素に相当し、前記第1のサンギヤが前記反力要素に相当するとともに、
前記変速機は、同軸上に配置された第2の遊星歯車機構および第3の遊星歯車機構を備えており、前記第2の遊星歯車機構は、第2のサンギヤおよび第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤおよび第2のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第2のキャリヤとを有しており、前記第3の遊星歯車機構は、第3のサンギヤおよび第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤおよび第3のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第3のキャリヤとを有しており、前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが連結され、前記第2のリングギヤと第3のキャリヤとが連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のリングギヤとが連結されており、前記第3のキャリヤが前記変速機の出力回転部材に相当し、
前記係合装置は、前記第1のリングギヤおよび前記第3のサンギヤを、前記第2のキャリヤに対して選択的に係合・解放させるクラッチと、前記第2のキャリヤおよび前記第3のリングギヤの回転・停止を選択的に切り換える第1のブレーキと、前記第2のサンギヤの回転・停止を選択的に切り換える第2のブレーキとを含み、前記クラッチが前記高速用係合装置であることを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記回転状態切替機構は、前記係合装置の係合・解放を制御することにより、動力伝達状態が異なる複数のモードを選択的に切替可能なモード切替機構を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記電気的変速機は、第1の遊星歯車機構を備えており、この第1の遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1のサンギヤおよび第1のリングギヤと、前記第1のサンギヤおよび第1のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第1のキャリヤとを有しており、この第1のキャリヤが前記入力要素に相当し、前記第1のリングギヤが前記出力要素に相当し、前記第1のサンギヤが前記反力要素に相当するとともに、
前記モード切替機構は、同軸上に配置されたダブルピニオン型遊星歯車機構およびシングルピニオン型遊星歯車機構を備えており、前記ダブルピニオン型遊星歯車機構は、第2のサンギヤおよび第2のリングギヤと、前記第2のサンギヤに噛合された第1のピニオンギヤと、前記第2のリングギヤおよび第1のピニオンギヤに噛合された第2のピニオンギヤと、前記第1のピニオンギヤおよび第2のピニオンギヤを保持する第2のキャリヤとを有しており、前記シングルピニオン型遊星歯車機構は、第3のサンギヤおよび第3のリングギヤと、前記第3のサンギヤおよび第3のリングギヤに噛合されたピニオンギヤを保持する第3のキャリヤとを有しており、この第3のリングギヤに前記車輪が動力伝達可能に連結されるとともに、
前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが連結され、前記第2のリングギヤと第3のリングギヤとが連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のキャリヤとが連結されており、
前記係合装置は、前記第1のキャリヤを前記第3のキャリヤに対して選択的に係合・解放させる第1のクラッチと、前記第1のリングギヤおよび前記第3のサンギヤを、前記第2のサンギヤに対して選択的に係合・解放させる第2のクラッチと、前記第2のサンギヤの回転・停止を選択的に切り換える第1のブレーキと、前記第2のキャリヤおよび第3のキャリヤの回転・停止を選択的に切り換えるリバースブレーキとを含み、前記第2のクラッチが、前記高速用係合装置であることを特徴とする請求項4に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記回転状態切替機構に動力伝達可能に連結された電動機が設けられており、この電動機および前記回転状態切替機構が同軸上に配置されており、軸線方向で前記電動機と前記回転状態切替機構との間に隔壁が設けられており、前記係合装置には、前記回転状態制御機構を構成する回転部材の回転・停止を制御するブレーキが含まれており、このブレーキは軸線方向に動作するピストンを有しており、このピストンが前記隔壁に取り付けられており、このピストンは、前記軸線方向に直交する半径方向で、前記高速用係合装置の外側を覆うように構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記係合装置には、前記回転状態切替機構の変速比が最も小さくなるような動力伝達状態を形成する場合に係合される高速用係合装置が含まれていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記電気的変速機は、相互に差動回転可能な入力要素と反力要素と出力要素とを有しており、前記入力要素が前記原動機に連結され、前記反力要素が反力発生装置に連結され、前記出力要素が前記電動機および前記回転状態切替機構に連結されているとともに、前記反力発生装置の出力を制御することにより、前記電気的変速機における入力要素と出力要素との間の変速比を無段階に制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−118717(P2007−118717A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312055(P2005−312055)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】