説明

車両走行情報記録装置

【課題】 その目的は、車両事故等が発生した場合に、運転者がどのような運転を行っていたのかをより詳細に把握することができる車両走行情報記録装置を提供する。
【解決手段】 画像認識装置22は、運転者顔監視カメラ21が撮像した運転者の眼の画像より視線方向を判定し、カーナビゲーション装置1の制御回路2は、車速センサ14等により検出された走行データ、位置検出器4により取得された位置データ、周囲状況監視カメラ20により撮像された周辺画像データ、及び上記視線方向データを、時刻と共にメモリ23に周期的に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行している状態で得られる各種の情報を記録するための車両走行情報記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両事故が発生した場合に、その事故が発生する直前まで運転者がどのような運転を行っていたのかが分かれば、事故原因の特定や責任の追及を正確且つ迅速に行うことができる。例えば、特許文献1には、そのような目的で、車両の状況データや位置データ、また車両に搭載した撮像装置によって撮像される周辺画像のデータを記録するドライブレコーダが開示されている。
【特許文献1】特開平8−235491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている技術は、事故の解析を車両の挙動を中心として行なうものであるため、その車両の挙動から、運転者がどのような運転を行っていたのかを間接的に把握することはできる。しかしながら、例えば事故の補償や自動車保険の支払いに関するような、事故原因の特定をより厳密に行なう必要があるものについては、運転者が行っていた運転の状態をより直接的に把握することが望ましい。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両事故等が発生した場合に、運転者がどのような運転を行っていたのかをより詳細に把握することができる車両走行情報記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の車両走行情報記録装置によれば、視線方向判定手段は、運転者の眼の画像を撮像するとその眼画像より前記運転者の視線方向を判定し、データ記録手段は、走行データ検出手段により検出された走行データ、位置取得手段により取得された位置データ、周辺画像撮像手段により撮像された周辺画像データ、及び視線方向判定手段によって判定された視線方向データを、時刻と共に周期的に記録する。従って、車両に事故が発生した場合は、その事故発生時点より遡ってデータ記録手段によって記録されているデータを解析すれば、運転者がどの方向に視線を向けて運転していたのかが判明するので、運転者がどのような運転を行っていたのかをより詳細に、具体的に把握することができる。
【0005】
請求項2記載の車両走行情報記録装置によれば、運転者画像撮像手段は、運転者の眼の画像を撮像し、データ記録手段は、走行データ検出手段により検出された走行データ、位置取得手段により取得された位置データ、周辺画像撮像手段により撮像された周辺画像データ、及び運転者画像撮像手段により撮像された眼画像データを時刻と共に周期的に記録する。そして、視線方向判定手段は、データ記録手段によって記録された眼画像データに基づいて運転者の視線方向を判定する。
従って、車両に事故が発生した場合は、その事故発生時点より遡ってデータ記録手段に記録されているデータを解析すれば、視線方向判定手段の作用により運転者がどの方向に視線を向けて運転していたのかが判明するので、請求項1と同様に、運転者がどのような運転を行っていたのかをより詳細に、具体的に把握することができる。
【0006】
請求項3記載の車両走行情報記録装置によれば、視線方向判定手段は、運転者の顔全体の画像も撮像し、その顔画像に基づいて前記運転者の顔方向を判定すると、その判定結果も加えて当該運転者の視線方向を判定する。即ち、実際の運転者の視線方向は、その基準となる顔が向いている方向に応じて変化する。従って、運転者の顔方向を考慮することで、運転者の視線方向をより高い精度で判定することができる。
【0007】
請求項4記載の車両走行情報記録装置によれば、運転者画像撮像手段は、運転者の顔全体の画像も撮像し、データ記録手段は、その顔画像データも併せて記録する。そして、視線方向判定手段は、データ記録手段によって記録された顔画像データに基づいて運転者の顔方向を判定し、その判定結果も加えて当該運転者の視線方向を判定する。従って、請求項2の構成を前提とする場合においても、請求項3と同様に、運転者の視線方向をより高い精度で判定することができる。
【0008】
請求項5記載の車両走行情報記録装置によれば、表示制御手段は、データ記録手段によって記録された周辺画像データを読み出して表示手段に表示させる際に、その周辺画像データに、視線方向判定手段によって判定された運転者の視線方向が示す位置を重畳して表示させる。従って、データ記録手段によって記録されたデータを解析する場合は、表示手段に表示される画像を参照することで、運転者の視線がどこを捉えていたのかを容易に把握することができる。
【0009】
請求項6記載の車両走行情報記録装置によれば、視線方向判定手段は、眼画像より黒目部分と白目部分とを認識し、黒目部分,白目部分の画像分布状態に応じて運転者の視線方向を判定する。例えば、視線が正面方向を向いており瞳(黒目)が眼の中心に位置する場合は、その両側にある白目部分の面積は略同じであるが、視線が左右どちらかに向いた場合は瞳の位置が左右のどちらかにずれるため、その両側の白目部分の面積が大きく異なる。従って、その面積差の大きさが一定値以上となった場合は、視線が左右のどちらかを向いていると判定することが可能である。
また、視線が上方向を向いている場合は瞳の下部に白目部分が顕著に現れ、逆に視線が下方向を向いている場合は瞳の上部に白目部分が顕著に現れるため、その状態に応じて視線が上下の何れを向いているかを判定できる。即ち、眼の外形を示す枠の内部において、黒目の周囲にある白目がどのように分布しているかを参照することで、運転者の視線が向いている方向を簡単に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例について図1乃至図6を参照して説明する。図1は、本発明の車両走行情報記録装置を、車両用ナビゲーション装置を利用して構成した場合の機能ブロック図を示すものである。この図1に示すように、カーナビゲーション装置(車両走行情報記録装置)1は、制御回路(データ記録手段,表示制御手段)2に対して、表示装置(表示手段)3、位置取得手段としての位置検出器4、地図データ取得手段としての地図データ入力器5、操作手段としての操作スイッチ群6、音声出力/音声認識装置7、リモコン8からの信号を検出するリモコンセンサ9、外部記憶装置10、移動電話機(通信手段)11などを接続して構成されている。
【0011】
制御回路2は、マイクロコンピュータとして構成されたもので、CPU、ROM、RAM、I/Oインタフェース(いずれも図示せず)を備えている。これらのうち、ROMには、ナビゲーション用のプログラムなどが格納され、RAMにはプログラム実行時の処理データや地図データ入力器5から取得した地図データなどが一時的に格納される。
【0012】
位置検出器4は、角速度センサ(走行データ検出手段)12、ヨー角速度(ヨーレート)を検出するためのジャイロスコープ(走行データ検出手段)13、車両の走行距離を検出するための車速センサ(走行データ検出手段)14およびGPS用人工衛星からの信号を受信するGPS受信機15から構成されており、車両の現在位置情報(経度・緯度情報)や進行方向を算出する部分である。この位置検出器4は、各構成要素が性質の異なる検出誤差を有するため、互いに検出誤差を補間しながら精度の高い位置検出を行うようになっているが、要求される検出精度で現在位置を算出可能であれば全部の構成要素を備える必要はない。
【0013】
地図データ入力器5は、記憶手段としての例えばCD−ROMやDVD−ROMのような大容量の情報記録媒体から地図データを読み取るためのものである。なお、情報記録媒体としては、ハードディスク、光磁気ディスク、大容量メモリカードなどを用いることもできる。情報記録媒体が記憶している地図データには、地図データの他に、道路や建物の詳細データや、施設の名称やその位置を示した施設データなどが含まれている。
【0014】
表示装置3は、地図を表示するための例えばカラー液晶ディスプレイからなる表示画面16(図6参照)を含んで構成されている。操作スイッチ群6は、表示装置3において、表示画面16の周辺に配置されたメカニカルスイッチ17や表示画面16上に設けられたタッチパネル18などから成り、各種のデータや設定事項などの操作入力を制御回路2に与えるための操作手段として機能する。リモコンセンサ9はリモコン8からの操作入力を受信して制御回路2に与えるようになっている。
【0015】
音声出力/音声認識装置7は、音声合成回路、アンプ、スピーカ、マイク、音声認識回路などを含んで構成され、制御回路2からの音声情報に応じた任意の音声出力を発生できるようになっている。また、この音声出力/音声認識装置7は、人の音声を認識し、その音声の内容に応じた処理を実行するように制御回路2に音声認識情報を入力する。
移動電話機11は、基地局を介して移動電話網やインターネットなどに接続可能で、インターネットを通じて地図情報センターに接続できるようになっている。このため、移動電話機11を地図データ取得手段として利用して、現在位置情報を地図情報センターに送信し、地図情報センターから現在位置周辺の地図データを受信するように構成することも可能である。
【0016】
制御回路2は、現在位置を地図上に位置付けるマップマッチング処理を実行するという基本的な機能の他に、経路探索機能および経路案内機能を備えている。そのうち、経路探索機能は、操作スイッチ群6やリモコン8により出発地と目的地、場合によっては経由地点などの地点データが入力されたときに、その地点データに基づいて出発地から目的地までの経路探索動作を例えばダイクストラ法によって行う機能である。また、経路案内機能は、経路探索結果に応じた案内経路を表示装置3の表示画面16の地図上に表示し、且つ交差点や分岐点などで音声出力/音声認識装置7から音声を出力したり、表示画面16へ拡大図を表示したりして車両の進行方向を案内する機能である。
【0017】
また、ナビゲーション装置1には、車両に配置され、衝突事故等の発生時に図示しないエアバッグ装置を作動させるためのG(加速度)センサ19の出力信号や、車両の少なくとも前方を含む周囲状況を撮像するための周囲状況監視カメラ(周辺画像撮像手段)20の映像信号が与えられている。更に、運転者顔監視カメラ(視線方向判定手段)21は車室内の例えばサンバイザ付近などに配置されており、運転者の顔を正面方向から撮像する。そして、その画像信号は、画像認識装置(視線方向判定手段)22を介してナビゲーション装置1に与えられている。画像認識装置22は、上記画像信号に基づいて後述するように運転者の視線方向を判定し、その判定結果のデータを制御回路2に出力するようになっている。
【0018】
制御回路2は、上記視線方向データと共に、周囲状況監視カメラ20の映像信号(周辺画像データ)や位置検出器4より与えられる車両の位置情報や走行データ、また、受信したGPS信号をデコードすることで得られる正確な時刻データなどを、メモリ(データ記録手段)23に書き込んで記憶させるようになっている。尚、制御回路2に内蔵されている上記のRAMが十分な容量を有している場合には、メモリ23に記憶させるデータを当該RAMに記憶させても良い。
【0019】
次に、本実施例の作用について図2乃至図6も参照して説明する。図2は、車両が走行中である場合に制御回路2によって実行されるデータ記録処理の内容を示すフローチャートである。制御回路2は、所定時間が経過すると(ステップS1,「YES」)、上記の時刻データ,位置データ,走行データ,周辺画像データ,視線方向データをメモリ23に書き込んで記録させる(ステップS2〜S6)。そして、これらデータの記録は、車両に衝突事故等が発生することでGセンサ19が大きな衝撃を検出してセンサ信号(衝撃検出信号)を出力するまでは(ステップS7,「NO」)、ステップS1に戻り所定時間毎に繰り返し行なわれる。
尚、メモリ23の記憶容量には限りがあるため、上記データの記録は順次オーバーライトされ、例えば最新時点から遡って数分までに取得されたものが記録されるようになっている。また、動画像データについては、必要に応じてMPEG(Moving Picture Expert Group)コーディングを行い圧縮した状態で記録させても良い。
【0020】
即ち、事故等の発生によりGセンサ19がセンサ信号を出力すると(ステップS7,「YES」)、その時点でメモリ23に対するデータの記録は終了するため、事故等の発生時点から遡る例えば数分前までに記録されたデータがメモリ23に保持される。また、データの記録は、Gセンサ19がセンサ信号を出力した時点から数秒〜数10秒が経過するまで継続するようにしても良い。
【0021】
次に、画像処理装置22によって行なわれる運転者の視線方向判定処理について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、視線方向を判定するための原理を説明するものである。運転者顔監視カメラ21が撮像した画像には運転者の眼の画像も含まれているが、その眼の画像には、瞳である黒目の部分と白目の部分とがある(図3(a))。そして、運転者が車両前方を正面として右方向を見ている場合は(図3(b))、黒目の両脇に分布する白目部分の面積に差が生じる。また、運転者が上方向を見ている場合は(図3(c))、黒目の上下に分布する白目部分の面積に差が生じる。これらの状態を、運転者の眼を撮像した画像を処理して判別することで、視線方向を判定する。
【0022】
図4は、画像処理装置22による視線方向判定処理を示すフローチャートである。先ず、画像処理装置22は、運転者顔監視カメラ21が撮像した画像を取得すると(ステップS11)、運転者の眼の白目面積AL,ARの差がしきい値K未満であるか否かを判断する(ステップS12)。白目面積AL,ARは、図4に示すように、運転者側から見て左側の白目面積がAL,右側の白目面積がARと定義されている。
【0023】
ステップS12において、(AR−AL)の値が±Kの範囲よりも小さい場合は(「YES」)、続いて、瞳の上下端から眼の淵までの距離WU,WLの差がしきい値M未満であるか否かを判断する(ステップS13)。距離WU,WLは、図4に示すように、瞳の上端から眼の淵までが距離WU,瞳の下端から眼の淵までが距離WLと定義されている。そして、(WU−WL)の値が±Mの範囲よりも小さい場合は(「YES」)、視線方向を「真正面」であると判定する(ステップS14)。
【0024】
一方、ステップS12において、(AR−AL)の値が大きく±Kの範囲以上となる場合は(「NO」)、白目面積AL,ARの大小を比較する(ステップS15)。AR<ALであれば(「YES」)、その時点で視線方向が「右方向」であると決定され(ステップS16)、AR≧ALであれば(「NO」)視線方向が「左方向」であると決定される(ステップS17)。
また、ステップS13において(WU−WL)の値が大きく±Mの範囲以上となる場合は(「NO」)、距離WU,WLの大小を比較する(ステップS18)。WU<WLであれば(「YES」)、その時点で視線方向が「真上」であると決定され(ステップS19)、WU≧WLであれば(「NO」)視線方向が「真下」であると決定される(ステップS20)。
【0025】
更に、視線方向が「右方向」である場合(ステップS16)、その時点でステップS13と同様に距離WU,WLの差がしきい値M未満であるか否かを判断し(ステップS21)、(WU−WL)の値が±Mの範囲よりも小さい場合は(「YES」)、視線方向が「真右」であると判定する(ステップS22)。また、ステップS21において(WU−WL)の値が±Mの範囲以上となる場合は(「NO」)、ステップS18と同様に距離WU,WLの大小を比較し(ステップS23)、WU<WLであれば(「YES」)、その時点で視線方向が「右上」であると決定され(ステップS24)、WU≧WLであれば(「NO」)視線方向が「右下」であると決定される(ステップS25)。
【0026】
同様に、視線方向が「左方向」である場合も(ステップS17)距離WU,WLの差がしきい値M未満であるか否かを判断し(ステップS26)、(WU−WL)の値が±Mの範囲よりも小さい場合は(「YES」)視線方向が「真左」であると判定し(ステップS27)、ステップS26において(WU−WL)の値が±Mの範囲以上となる場合は(「NO」)、距離WU,WLの大小を比較し(ステップS28)、WU<WLであれば(「YES」)その時点で視線方向が「左上」であると決定され(ステップS29)、WU≧WLであれば(「NO」)視線方向が「左下」であると決定される(ステップS30)。
即ち、図4のフローチャートに従うことで、視線方向は、「左上」、「真上」、「右上」、「真左」、「真正面」、「真右」、「左下」、「真下」、「右下」の9種類に判定されるようになり、図2に示すステップS6ではその判定結果が記録される。
【0027】
次に、図5は、図2に示す処理によってメモリ23に記録されたデータを読み出して再生する、即ち、表示装置3の画面に動画像として表示させる場合の処理を示すフローチャートであり、制御回路2によって実行されるものである。また、図6は、その場合の表示装置3の画面イメージの一例を示すものである。
【0028】
制御回路2は、周辺画像データを読み出して表示装置3に表示させる(ステップS31)。ここで、周辺画像は、上述したように運転者側から車両のフロントウインドウ越しに見た車両前方を中心とする画像として撮像されており、それが図6(a)に示すように表示される(尚、画面の下端側に映り込んでいるのは、車両のフロント部分である)。
それから、制御回路2は、視線方向データを読み出すと、その視線方向が周辺画像上で示す位置を、例えば星型のマーカなどで表示させる。即ち、画像処理装置22は、図4に示す処理によって運転者の視線方向を9種類に分類しているので、表示装置3の画面を図6(b)に示すように9個のセルに分割して、9種類のセルをそれらに対応させる。そして、対応するセルの中心に視線方向を示すマーカを重畳して表示させる(図6(c)参照)。図6(c)に示す場合、視線方向は「左上」となっている。
【0029】
また、制御回路2は、上記画像にデータが記録された時刻と、並行して記録された車両の走行データも、例えば画面の右上隅側に表示させる(ステップS33)。更に、制御回路には、メモリ23に記録された緯度,経度から、その位置に対応して地図データ入力器5より得られる地図データ上の具体的な地点名(場所)を検索し、その地点名を位置情報として画面に表示させる(ステップS34)。そして、メモリ23に記録された全てのデータを表示するまでは(ステップS35,「NO」)上記の処理を繰り返す。
図6(c)に示す表示例では、時刻情報として「21時12分25秒」,車両の走行データとして走行速度「60km/h」,及び「オイル漏れ」の発生検知(車両側にオイル漏れ検知センサが設けられている場合),位置情報として「刈谷市栄町交差点」が表示されている。
【0030】
以上のように本実施例によれば、画像認識装置22は、運転者顔監視カメラ21が撮像した運転者の眼の画像より視線方向を判定し、カーナビゲーション装置1の制御回路2は、車速センサ14等により検出された走行データ、位置検出器4により取得された位置データ、周囲状況監視カメラ20により撮像された周辺画像データ、及び上記視線方向データを時刻と共にメモリ23に周期的に記録するようにした。
従って、車両に事故が発生した場合は、その事故発生時点より遡ってメモリ23に記録されているデータを解析すれば、運転者がどの方向に視線を向けて運転していたのかが判明するので、運転者がどのような運転を行っていたのかをより詳細に、具体的に把握することができる。故に、その解析結果を、事故の発生に対する過失責任の有無或いはその割合などを確定させるために、有効な証拠として使用することができる。
【0031】
また、制御回路2は、メモリ23に記録された周辺画像データを読み出して表示装置3に表示させる際に、その周辺画像データに運転者の視線方向が示す位置を重畳して表示させるので、記録されたデータを解析する場合は、表示装置3に表示される画像を参照することで、運転者の視線がどこを捉えていたのかを容易に把握することができる。
そして、画像認識装置22は、眼画像より黒目部分と白目部分とを認識し、黒目部分,白目部分の画像分布状態に応じて運転者の視線方向を判定するので、運転者の視線が向いている方向を簡単に判定することができる。
【0032】
(第2実施例)
図7及び図8は本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。第2実施例の構成は基本的に第1実施例と同様であり、画像認識装置22による視線方向判定処理の内容が異なっている。第2実施例では、画像認識装置22は、運転者顔監視カメラ21が撮像している運転者の顔全体の画像に基づいて、運転者の顔の正面が向いている方向(顔方向)を判定し、その判定結果も加えて運転者の視線方向を判定するようにしている。
画像認識装置22は、顔方向を例えば視線方向の判定と同様の9種類に分類するため、図8に示すように、予め9通りの顔方向の標準パターン画像を内部の図示しないメモリに記憶している。
【0033】
図7は、顔方向判定と視線方向判定とを組み合わせて行なう処理の内容を示すフローチャートである。画像認識装置22は、撮像された運転者の顔全体の画像をパターン化すると(ステップS41)、その画像パターンを図8に示す9通りの標準パターンと照合する(ステップS42)。そして、前者が後者の何れに最も近似しているかによって顔方向を決定する(ステップS43)。
続いて、画像認識装置22は、決定した顔方向が「真正面」であるか否かを判断する(ステップS44)。「真正面」である場合は(「YES」)、第1実施例と同様に図4に示す視線判定処理を行ない(ステップS45)、「真正面」以外の方向である場合は(「NO」)視線判定処理を行なわず、ステップS43で決定した顔方向をそのまま視線方向とする(ステップS46)。
【0034】
以上のように第2実施例によれば、画像認識装置22は、運転者顔監視カメラ21が撮像している運転者の顔全体の画像に基づいて運転者の顔方向を判定すると、その判定結果も加えて当該運転者の視線方向を判定するようにした。即ち、実際の運転者の視線方向は、その基準となる顔が向いている方向に応じて変化するので、運転者の顔方向を考慮することで、運転者の視線方向をより高い精度で判定することができる。
【0035】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形が可能である。
視線方向等の判定は、必ずしも9種類とする必要は無く、例えば16種類や25種類などに判別しても良い。
運転者の顔方向を判定する必要がない場合は、カメラによって運転者の眼の画像だけを撮像すれば良い。
上記実施例では、車両の走行中に、運転者の視線方向を判定して記録するようにしたが、例えば、走行中は運転者の眼の画像を撮像して(運転者画像撮像手段)その画像データをそのまま記録させておき、視線方向の判定は、記録された画像データに基づいて後程行うようにしても良い。例えば、記録された画像を再生する時点で判定を行っても良い。第2実施例における顔方向の判定についても同様である。
第2実施例のように顔方向も加味して視線方向を判定する場合は、その他、例えば顔方向が「右」であり、視線方向が「上」であるとすれば、両者を合成して「右上」と判定するようにしても良い。
【0036】
記録されたデータを表示装置3に表示させる場合、並行して記録されている車両の走行データや時刻、位置情報などを同時に表示させる処理は、必要に応じて行えば良い。
視線方向を判定する手法については、上記実施例に限ることなく、例えば特開平7−69139号公報に開示されているものや、その他の公知の手法を用いても良い。
制御回路2の処理能力が十分である場合は、画像処理装置22の機能を制御回路2に持たせても良い。
記録されたデータを解析する場合は、必ずしも画像として表示する必要は無く、例えば、データを数値として出力させたものを解析しても良い。
カーナビゲーション装置を利用して構成するものに限ることなく、車両走行情報記録装置としての機能だけを備えた専用の装置として構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を車両用ナビゲーション装置に適用した場合の第1実施例であり、車両用ナビゲーション装置の電気的構成を示す機能ブロック図
【図2】車両が走行中である場合に、ナビゲーション装置の制御回路によって実行されるデータ記録処理の内容を示すフローチャート
【図3】視線方向を判定するための原理を説明する図
【図4】画像処理装置による視線方向判定処理を示すフローチャート
【図5】メモリに記録されたデータを読み出して表示装置の画面に動画像として表示させる場合の処理を示すフローチャート
【図6】図5のフローチャートを実行した場合、表示装置の画面イメージを示す図
【図7】本発明の第2実施例であり、顔方向判定と視線方向判定とを組み合わせて行なう処理の内容を示すフローチャート
【図8】顔方向の標準パターン画像を示す図
【符号の説明】
【0038】
図面中、1はカーナビゲーション装置(車両走行情報記録装置)、2は制御回路(データ記録手段,表示制御手段)、3は表示装置(表示手段)、4は位置検出器(位置取得手段)、12は角速度センサ(走行データ検出手段)、13はジャイロスコープ(走行データ検出手段)、14は車速センサ(走行データ検出手段)、20は周囲状況監視カメラ(周辺画像撮像手段)、21は運転者顔監視カメラ(視線方向判定手段)、22は画像認識装置(視線方向判定手段)、23はメモリ(データ記録手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態を表す走行データを検出する走行データ検出手段と、
車両の現在位置を取得する位置取得手段と、
少なくとも車両の進行方向側を含む当該車両周辺の画像を撮像する周辺画像撮像手段と、
運転者の眼の画像を撮像し、その眼画像より前記運転者の視線方向を判定する視線方向判定手段と、
前記走行データ検出手段により検出された走行データ、前記位置取得手段により取得された位置データ、前記周辺画像撮像手段により撮像された周辺画像データ、及び前記視線方向判定手段によって判定された視線方向データを、時刻と共に周期的に記録するデータ記録手段とで構成される車両走行情報記録装置。
【請求項2】
車両の走行状態を表す走行データを検出する走行データ検出手段と、
車両の現在位置を取得する位置取得手段と、
少なくとも車両の進行方向側を含む当該車両周辺の画像を撮像する周辺画像撮像手段と、
運転者の眼の画像を撮像する運転者画像撮像手段と、
前記走行データ検出手段により検出された走行データ、前記位置取得手段により取得された位置データ、前記周辺画像撮像手段により撮像された周辺画像データ、及び前記運転者画像撮像手段により撮像された眼画像データを、時刻と共に周期的に記録するデータ記録手段と、
前記データ記録手段によって記録された眼画像データに基づいて、前記運転者の視線方向を判定する視線方向判定手段とを備えることを特徴とする車両走行情報記録装置。
【請求項3】
前記視線方向判定手段は、前記運転者の顔全体の画像も撮像し、その顔画像に基づいて前記運転者の顔の正面が向いている方向(顔方向)を判定し、その判定結果も加えて当該運転者の視線方向を判定することを特徴とする請求項1記載の車両走行情報記録装置。
【請求項4】
前記運転者画像撮像手段は、前記運転者の顔全体の画像も撮像し、
前記データ記録手段は、前記顔画像データも併せて記録し、
前記視線方向判定手段は、前記データ記録手段によって記録された顔画像データに基づいて、前記運転者の顔の正面が向いている方向(顔方向)を判定し、その判定結果も加えて当該運転者の視線方向を判定することを特徴とする請求項2記載の車両走行情報記録装置。
【請求項5】
前記データ記録手段によって記録された周辺画像データを読み出して、表示手段に表示させる表示制御手段を備え、
前記表示制御手段は、前記周辺画像データに、前記視線方向判定手段によって判定された前記運転者の視線方向が示す位置を重畳して表示させることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の車両走行情報記録装置。
【請求項6】
前記視線方向判定手段は、前記眼画像より黒目部分と白目部分とを認識し、前記黒目部分,白目部分の画像分布状態に応じて、前記運転者の視線方向を判定することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の車両走行情報記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−72567(P2007−72567A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256296(P2005−256296)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】