説明

車両退避装置

【課題】意識低下した運転者の状態に応じた適切な車両誘導を行う車両退避装置を提供すること。
【解決手段】車両の運転者が意識低下した状態であるか否かを判断し(S10)、車両の運転者が意識低下した状態であると判断された場合に眠気により意識低下しているか否かを判断し(S12)、運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合に意識回復動作を行わずに車両誘導を行い(S14)、運転者が眠気によって意識低下していると判断された場合に意識回復動作を行いながら車両誘導を行う(S24)。これにより、運転者が眠気によって意識低下している場合には眠気を解消させることができ、運転者が病気などにより意識低下している場合には意識回復動作を行わず、安静にして運転者の状態の悪化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の退避誘導させる車両退避装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の退避誘導させる装置として、例えば特許第3862192号公報に記載されるように、車両の運転者の健康状態を判定し、その健康状態が正常でない場合に車両の外部へ無線で通報し、車両を退避させるものが知られている。
【特許文献1】特許第3862192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような装置において、運転者の意識が低下した場合に車両を退避させる際、運転者に振動などを与えて意識の回復を図ることが考えられる。この場合、眠気などによって運転者の意識が低下している場合には問題ないが、病気などにより運転者の意識が低下している場合には、振動などの刺激を与えない状態に保つことが望ましい。
【0004】
そこで本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、意識低下した運転者の状態に応じて適切な車両誘導を行う車両退避装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明に係る車両退避装置は、車両の運転者が意識低下した状態であるか否かを判断する意識低下判断手段と、前記意識低下判断手段により車両の運転者が意識低下した状態であると判断された場合、前記車両を退避位置まで誘導する車両誘導手段と、前記意識低下判断手段により車両の運転者が意識低下した状態であると判断された場合、眠気により意識低下しているか否かを判断する眠気判断手段と、前記眠気判断手段により運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合に意識回復動作を行わず、前記眠気判断手段により運転者が眠気によって意識低下していると判断された場合に意識回復動作を行う意識回復手段とを備えて構成されている。
【0006】
この発明によれば、車両の運転者が意識低下した状態であるときに車両を退避位置まで誘導する際に、運転者が眠気以外によって意識低下している場合に意識回復動作を行わず、運転者が眠気によって意識低下している場合に意識回復動作を行う。このため、運転者が眠気によって意識低下している場合には眠気を解消させることができ、運転者が病気などにより意識低下している場合には意識回復動作を行わず、安静にして運転者の状態の悪化を抑制することができる。
【0007】
また本発明に係る車両退避装置において、前記意識回復手段は、前記眠気判断手段により運転者が眠気によって意識低下していると判断された場合に、前記眠気判断手段により運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合と比べて車両誘導時において急峻な発進動作、急峻な制動動作又は急峻な操舵動作を行うことが好ましい。
【0008】
この発明によれば、運転者が眠気によって意識低下していると判断された場合に、運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合と比べて車両誘導時において急峻な発進動作、急峻な制動動作又は急峻な操舵動作を行うことにより、運転者を眠気状態から覚醒させて意識を回復させることができる。
【0009】
また本発明に係る車両退避装置において、前記意識回復手段は、前記眠気判断手段により運転者が眠気によって意識低下していると判断された場合であって、その眠気が所定以上深いものでない場合には意識回復動作を行い、その眠気が所定以上深いものである場合には意識回復動作を行わず睡眠誘導動作を行うことが好ましい。
【0010】
この発明によれば、運転者が眠気によって意識低下していると判断された場合であって、その眠気が所定以上深いものでない場合には意識回復動作を行い、その眠気が所定以上深いものである場合には意識回復動作を行わず睡眠誘導動作を行うことにより、眠気が浅い場合には運転者を覚醒することができ、眠気が深い場合には運転者を仮眠させることができ、眠気の状態に応じて適切な対応が可能となる。
【0011】
また本発明に係る車両退避装置において、前記眠気判断手段により運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合、前記車両が退避位置まで誘導された後に車両のドアロックを解除するドアロック解除手段を備えることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、運転者が眠気以外によって意識低下している場合、車両が退避位置まで誘導された後に車両のドアロックを解除することにより、病気などとなっている運転者を車外へ容易に搬出することができる。
【0013】
また本発明に係る車両退避装置において、前記眠気判断手段により運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合、前記車両が退避位置まで誘導された後に運転者の座席シートをリクライニング状態とする座席調整手段を備えることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、運転者が眠気以外によって意識低下している場合、車両が退避位置まで誘導された後に運転者の座席シートをリクライニング状態とすることにより、病気などとなっている運転者を楽な姿勢とすることができ、病状の悪化を抑制できる。
【0015】
また本発明に係る車両退避装置において、前記眠気判断手段により運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合、前記車両が退避位置まで誘導された後にウインドウを閉めて車内温度調整を行う車内温度調整手段を備えることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、運転者が眠気以外によって意識低下している場合、車両が退避位置まで誘導された後にウインドウを閉めて車内温度調整を行うことにより、車両を快適な温度に調整することができ、運転者の病状の悪化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、意識低下した運転者の状態に応じて意識回復動作を行うことにより、運転者の状態に応じた適切な車両誘導を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1に本発明の実施形態に係る車両退避装置の構成概要図を示す。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る車両退避装置1は、車両に搭載される装置であってその車両の運転者の意識が低下している場合に車両を安全な退避位置に誘導する装置である。この車両退避装置1は、ECU(Electronic Control Unit)2、ナビゲーションシステム3、カメラ4、駆動制御部5、操舵制御部6、制動制御部7、座席調整アクチュエータ8、ウインドウアクチュエータ9、エアコン制御部10、ドアロック制御部11を備えている。
【0021】
ECU2は、車両退避装置1全体の制御を行う電子制御ユニットであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。このECU2は、車両の運転者が意識低下した状態であるか否かを判断する意識低下判断手段として機能する。例えばカメラ4により撮像された運転者の画像に基づいて運転者の意識が所定値より低下した状態であるか否かが判断される。
【0022】
また、ECU2は、車両の運転者が意識低下した状態であると判断した場合、駆動制御部5、操舵制御部6、制動制御部7に制御信号を与えて車両を退避位置まで誘導するように制御する車両誘導制御手段として機能する。また、ECU2は、車両の運転者が意識低下した状態であると判断された場合、眠気により意識低下しているか否かを判断する眠気判断手段として機能する。例えば、意識が低下する状態が所定値より急でない場合には眠気により意識低下していると判断される。一方、意識が低下する状態が所定値より急である場合には眠気以外の原因、例えば病気(心臓疾患、てんかん、脳梗塞など)により意識低下していると判断される。
【0023】
また、ECU2は、運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合に意識回復動作を行わず、運転者が眠気によって意識低下していると判断された場合に意識回復動作を行う意識回復手段として機能する。例えば、意識回復動作としては、急峻な制動動作、操舵動作、発進動作が用いられる。ECU2からこのような動作になるように駆動制御部5、操舵制御部6、制動制御部7に制御信号を出力すればよい。
【0024】
ナビゲーションシステム3は、車両の位置を検出し、車両の退避場所を探索するための地図データを提供するものであり、例えばGPS(Global Positioning System)を備えたものが用いられる。
【0025】
カメラ4は、車両の運転者の状態を検知する検知手段として機能するものであり、運転者を撮像した画像に基づいて運転者の状態を検知することができる。このカメラ4は、運転者を撮影できるように設置され、例えば運転者の顔を正面側から撮像できるように設置される。このようにカメラ4を設置することにより、カメラ4の撮像画像に基づいて運転者の意識が所定以上に低下しているか否かを判定することができる。
【0026】
なお、車両退避装置1における検知手段としては、運転者の意識が低下しているか否かを検知できるものであれば、カメラ4のように運転者の画像により運転者の状態を検知するもの以外のものであってもよく、例えば運転者の体温、脈拍などによって運転者の状態を検知するものであってもよい。
【0027】
駆動制御部5、操舵制御部6及び制動制御部7は、車両を退避位置まで誘導する車両誘導手段として機能するものである。駆動制御部5は、車両の走行駆動の制御を行うものであり、例えばエンジン駆動ECUにより構成される。操舵制御部6は、車両の操舵制御を行うものであり、例えば操舵ECUにより構成される。制動制御部7は、車両の制動制御を行うものであり、例えばブレーキECUにより構成される。
【0028】
駆動制御部5、操舵制御部6及び制動制御部7は、ECU2から出力される制御信号に従って作動し、運転者の意識が低下していると判断された場合に車両を退避位置まで誘導する。
【0029】
座席調整アクチュエータ8は、ECU2の制御信号に応じて運転者の座席シートをリクライニング状態とする座席調整手段として機能するものであり、例えば座席の角度を調整するモータなどが用いられる。ウインドウアクチュエータ9は、ECU2の制御信号に応じてウインドウを開閉するアクチュエータであり、例えばウインドウを開閉動作させるモータなどが用いられる。
【0030】
エアコン制御部10は、車内温度調整を行う車内温度調整手段として機能するものであり、ECU2の制御信号に応じて目標温度を設定し、その目標温度になるようにエアコンを作動させる。ドアロック制御部11は、ECU2の制御信号に応じて車両のドアのロックを解除するドアロック解除手段として機能するものである。
【0031】
次に、本実施形態に係る車両退避装置の動作について説明する。
【0032】
図2は、本実施形態に係る車両退避装置1の動作を示すフローチャートである。この図2の制御処理は、例えば車両走行中にECU2によって所定の周期で繰り返して実行される。
【0033】
まず、図2のS10に示すように、車両の運転者の意識が低下した状態であるか否かが判断される。例えば、運転者の意識が所定値以上に低下している状態であるか否かが判断される。この判断は、カメラ4の撮像画像に基づいて行われ、例えば目を閉じている時間が所定時間以上である場合、または所定時間以上目を閉じている回数が所定の頻度以上である場合などに車両の運転者の意識が低下していると判断され、そうでない場合に車両の運転者の意識が低下していないと判断される。
【0034】
S10にて車両の運転者の意識が低下していないと判断された場合には、制御処理を終了する。一方、S10にて車両の運転者の意識が低下していると判断された場合には、眠気により運転者の意識が低下しているか否かが判断される(S12)。この判断処理は、例えば意識が低下する状態が所定値より急であるか否かに応じて、眠気により運転者の意識が低下しているか否かが判断される。すなわち、意識が低下する状態が所定値より急でない場合には眠気により意識低下していると判断される。一方、意識が低下する状態が所定値より急である場合には眠気以外の原因、例えば病気により意識低下していると判断される。
【0035】
S12にて眠気以外の原因により運転者の意識が低下していると判断された場合には、病気などによって運転者の意識が低下していると判断され、車両誘導処理が行われる(S14)。この車両誘導処理は、車両を道路の路肩などの退避位置に誘導させる処理である。この車両誘導処理は、急峻でない滑らかな発進動作、操舵動作、制動動作により車両を誘導することが好ましい。これにより、運転者の病状の悪化を防止することができる。
【0036】
この車両誘導処理では、例えばECU2から駆動制御部5、操舵制御部6、制動制御部7に制御信号を出力し、エンジン、電動パワーステアリングシステム及びブレーキアクチュエータを適宜作動させて、車両を退避位置まで走行させる。このとき、ECU2では、車両の現在位置から誘導する退避位置までの経路を設定し、その経路における速度パターンを設定して、予め経路計画を生成しておく。そして、この経路計画に応じた制御信号を駆動制御部5、操舵制御部6、制動制御部7に出力すればよい。これにより、車両が経路計画に応じて誘導されることとなる。その際、車両の速度変化量などが所定値よりも低くなるように車両誘導が行われる。
【0037】
そして、S16に移行し、車両が退避位置に到達して停車したか否かが判断される。このS16にて車両が退避位置に到達していないと判断された場合には、S14の車両誘導処理が継続して実行される。一方、S16にて車両が退避位置に到達して停車したと判断された場合には、座席リクライニング処理が行われる。座席リクライニング処理は、運転者の座席シートをリクライニング状態とする処理であり、例えばECU2から作動信号を座席調整アクチュエータに出力し作動させることにより行われる。この座席リクライニング処理により、病気により意識低下している運転者に楽な姿勢をとらせることができ、病状の悪化を防止することができる。
【0038】
そして、S20に移行し、車内温度調整処理が行われる。車内温度調整処理は、車両のウインドウを閉めてエアコンを作動させて車内の温度を適温に調整する処理である。例えば、ECU2からウインドウアクチュエータ9に作動信号を出力してウインドウを閉めるように動作させ、ECU2からエアコン制御部10に制御信号を出力してエアコンを作動させて車内を快適な温度に調整する。この車内温度調整処理により、車内が快適な温度に調整されるため、運転者の病状の悪化を防止することができる。
【0039】
そして、S22に移行し、ドアロック解除処理が行われる。ドアロック解除処理は、車両のドアのロックを解除する処理であり、例えばECU2からドアロック制御部11に制御信号を出力し、ドアのロックを解除させる。このドアロック解除処理により、車両が退避位置まで誘導された後に車両のドアロックが解除されるため、病気などの状態となっている運転者を車外へ容易に搬出することができる。S22の処理を終えたら、一連の制御処理を終了する。
【0040】
ところで、S12にて眠気により運転者の意識が低下していると判断された場合には、病気などによって運転者の意識が低下していると判断され、急峻な動作による車両誘導処理が行われる(S24)。この急峻な動作による車両誘導処理は、急峻な発進動作、操舵動作、制動動作により、車両を道路の路肩などの退避位置に誘導させる処理である。この車両誘導処理は、S14の車両誘導処理と比べて急峻な発進動作、操舵動作、制動動作によって車両誘導が行われる。これにより、運転者を眠気状態から覚醒させて意識回復を図ることができる。
【0041】
この車両誘導処理では、例えばECU2から駆動制御部5、操舵制御部6、制動制御部7に制御信号を出力し、エンジン、電動パワーステアリングシステム及びブレーキアクチュエータを適宜作動させて、車両を退避位置まで走行させる。このとき、ECU2では、車両の現在位置から誘導する退避位置までの経路を設定し、その経路における速度パターンを設定して、予め経路計画を生成しておく。そして、この経路計画に応じた制御信号を駆動制御部5、操舵制御部6、制動制御部7に出力すればよい。これにより、車両が経路計画に応じて誘導されることとなる。その際、S14の車両誘導処理よりも急峻な発進動作、操舵動作、制動動作になるように、速度パターンの変化率を大きくし、車両の旋回半径を小さくするなどして経路計画を設定すればよい。また、断続的にブレーキ動作を行うなどして運転者に刺激を与えてもよい。そして、S24の処理を終えたら、一連の制御処理を終了する。
【0042】
以上のように本実施形態に係る車両退避装置によれば、車両の運転者が意識低下した状態であるときに車両を退避位置まで誘導する際に、運転者が眠気以外によって意識低下している場合に意識回復動作を行わず、運転者が眠気によって意識低下している場合に意識回復動作を行う。このため、運転者が眠気によって意識低下している場合には眠気を解消させることができ、運転者が病気などにより意識低下している場合には意識回復動作を行わず、安静にして運転者の状態の悪化を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る車両退避装置において、運転者が眠気によって意識低下していると判断された場合に、運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合と比べて急峻な発進動作、急峻な制動動作又は急峻な操舵制御を行うことにより、運転者を眠気状態から覚醒させて意識を回復させることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る車両退避装置において、運転者が眠気以外によって意識低下している場合、車両が退避位置まで誘導された後に車両のドアロックを解除することにより、病気などの状態となっている運転者を車外へ容易に搬出することができる。
【0045】
また、運転者が眠気以外によって意識低下している場合、車両が退避位置まで誘導された後に運転者の座席シートをリクライニング状態とすることにより、病気などの状態となっている運転者を楽な姿勢とすることができ、病状の悪化を抑制できる。
【0046】
さらに、運転者が眠気以外によって意識低下している場合、車両が退避位置まで誘導された後にウインドウを閉めて車内温度調整を行うことにより、車両を快適な温度に調整することができ、運転者の病状の悪化を抑制することができる。
【0047】
なお、上述した実施形態では、眠気により意識低下している場合には必ず意識回復動作を行う場合について説明したが、眠りの深さに応じて意識回復動作を行うものであってもよい。
【0048】
図3は、眠りの深さに応じて意識回復動作を行う場合の車両退避装置1の動作の一例を示すフローチャートである。この図3の制御処理は、例えば車両走行中にECU2によって所定の周期で繰り返して実行されるものである。図3のS10〜S22の処理は、図2のものと同様に行われるため、その説明を省略する。
【0049】
図3のS12において、眠気により運転者の意識が低下していると判断された場合、その眠気が所定以上に深いものであるか否かが判断される(S26)。この判断は、例えば運転者の脈拍数、呼吸数、体動の全部又は一部を検知し、その検知結果に基づいて眠気の深さを検出し、眠気の深さが予め設定される設定値より深いものであるかどうかを判断して行われる。このとき、脈拍数、呼吸数、体動は、図示しないセンサ又はカメラ4により検知すればよい。
【0050】
S26にて眠気が所定以上に深いものであると判断された場合には、誘眠による車両誘導処理が行われる(S28)。誘眠による車両誘導処理は、運転者の睡眠状態を維持して車両を道路の路肩などの退避位置に誘導させる処理である。例えば、車両の急峻な発進動作、操舵動作、制動動作をできるだけ避けて車両誘導が行われる。このとき、車内に音楽を流したり、電動シートによりマッサージなどを行うことが好ましい。これにより、運転者の眠気状態を維持して車両誘導が行われる。
【0051】
なお、S26にて眠気が所定以上に深いものであると判断された場合には、車両誘導処理を行って車両を退避させた後に、音楽を流したりマッサージをするなどの誘眠動作を行ってもよい。
【0052】
一方、S26にて眠気が所定以上に深いものでないと判断された場合には、覚醒による車両誘導処理が行われる(S30)。覚醒による車両誘導処理は、運転者を睡眠状態から覚醒させるようにして、車両を道路の路肩などの退避位置に誘導させる処理である。例えば、S14の車両誘導処理と比べて急峻な発進動作、操舵動作、制動動作を行うことにより運転者を覚醒させるように車両誘導が行われる。このとき、警報を鳴らしたり、不快な刺激を与えるなどしてもよい。これにより、運転者を眠気状態から覚醒させて意識回復を図ることができる。
【0053】
このような図3の制御処理を行うことにより、運転者が眠気によって意識低下していると判断された場合であって、その眠気が所定以上深いものでない場合には意識回復動作が行われ、その眠気が所定以上深いものである場合には意識回復動作を行わず睡眠誘導動作が行われる。このため、眠気が浅い場合には運転者を覚醒することができ、眠気が深い場合には運転者を仮眠させることができ、眠気の状態に応じた適切な車両誘導が行える。
【0054】
なお、上述した実施形態は本発明に係る車両退避装置の一例を示すものである。本発明に係る車両退避装置は、この実施形態に係る車両退避装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る車両退避装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る車両退避装置の構成概要図である。
【図2】図1の車両退避装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1の車両退避装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1…車両退避装置、2…ECU、3…ナビゲーションシステム、4…カメラ、5…駆動制御部、6…操舵制御部、7…制動制御部、8…座席調整アクチュエータ、9…ウインドウアクチュエータ、10…エアコン制御部、11…ドアロック制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者が意識低下した状態であるか否かを判断する意識低下判断手段と、
前記意識低下判断手段により車両の運転者が意識低下した状態であると判断された場合、前記車両を退避位置まで誘導する車両誘導手段と、
前記意識低下判断手段により車両の運転者が意識低下した状態であると判断された場合、眠気により意識低下しているか否かを判断する眠気判断手段と、
前記眠気判断手段により運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合に意識回復動作を行わず、前記眠気判断手段により運転者が眠気によって意識低下していると判断された場合に意識回復動作を行う意識回復手段と、
を備えた車両退避装置。
【請求項2】
前記意識回復手段は、前記眠気判断手段により運転者が眠気によって意識低下していると判断された場合に、前記眠気判断手段により運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合と比べて車両誘導時において急峻な発進動作、急峻な制動動作又は急峻な操舵動作を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の車両退避装置。
【請求項3】
前記意識回復手段は、前記眠気判断手段により運転者が眠気によって意識低下していると判断された場合であって、その眠気が所定以上に深いものでない場合には意識回復動作を行い、その眠気が所定以上に深いものである場合には意識回復動作を行わず睡眠誘導動作を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の車両退避装置。
【請求項4】
前記眠気判断手段により運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合、前記車両が退避位置まで誘導された後に車両のドアロックを解除するドアロック解除手段を備えること、
を特徴とする請求項1に記載の車両退避装置。
【請求項5】
前記眠気判断手段により運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合、前記車両が退避位置まで誘導された後に運転者の座席シートをリクライニング状態とする座席調整手段を備えること、
を特徴とする請求項1に記載の車両退避装置。
【請求項6】
前記眠気判断手段により運転者が眠気以外によって意識低下していると判断された場合、前記車両が退避位置まで誘導された後にウインドウを閉めて車内温度調整を行う車内温度調整手段を備えること、
を特徴とする請求項1に記載の車両退避装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−39633(P2010−39633A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199880(P2008−199880)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】