説明

車載ナビゲーション装置

【課題】オーディオ情報を再生するとともに、それを圧縮して録音とが可能な車載ナビゲーション装置において、従来よりもコストを低く抑えること。
【解決手段】音楽CDの再生(ステップS102)とともに、そのCDデータを一旦そのままメモリに記憶しておく(ステップS103)。その後、CPUの負荷が大きいと考えられる処理(ステップS104〜S107)のいずれも行っていないときに、メモリに記憶したCDデータを圧縮する(ステップS108)。換言すれば、CPUの負荷が大きいと考えられる処理(ステップS104〜S107)のいずれかを行っているときには、圧縮処理を停止する。これにより、圧縮処理用にDSPなどのハードウェアを用いることなく、一つのCPUでオーディオ情報の再生、圧縮、ナビゲーション処理とを併用することができる。これにより、コストダウンを図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽CDなどのオーディオ情報を再生するとともに、当該オーディオ情報を圧縮して録音可能な車載ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の多くの車載ナビゲーション装置は、ナビゲーション機能の他に音楽CDなどのオーディオ情報も再生可能なオーディオ機能が付与されている。さらに、特許文献1のように再生したオーディオ情報を車載ナビゲーション装置に設けられたハードディスクなどの大容量記憶装置に録音させておくことができるものもある。これによって、以降走行の際はいつでも記憶したオーディオ情報を再生することができる。
【0003】
また、特許文献1に記載の車載ナビゲーション装置では、オーディオ情報を車載ナビゲーション装置に録音する際に、圧縮して録音することができるようになっている。これによって、多くのオーディオ情報を録音することができる。
【特許文献1】特開2001−143369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常上述の特許文献1のようにオーディオ情報を圧縮して録音するために、ナビゲーション機能を処理するCPUとは別にDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェアを設けてこの圧縮処理を行っている。なぜなら、圧縮処理は負荷が大きい処理のため、同一のCPUでナビゲーション機能の処理、オーディオ情報の再生と同時にはこの圧縮処理をすることができないためである。したがって、圧縮して録音する機能を付与するとその分コストが高くなり、また圧縮処理するDSPなどのハードウェアの実装面においてもデメリットがある。この問題点を防ぐためにCPUの性能を上げて一つのCPUで圧縮処理も行うという方法も考えられるが、CPUの性能を上げるということは結局CPU自体のコストが高くなるので、コスト面ではそれ程メリットがない。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、オーディオ情報を再生するとともに、そのオーディオ情報の圧縮して録音可能な車載ナビゲーション装置において、従来よりもコストを低く抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の車載ナビゲーション装置は、オーディオ情報を外部から取得する取得手段と、前記取得手段が取得したオーディオ情報を圧縮する圧縮手段と、前記圧縮手段が圧縮した圧縮オーディオ情報を記憶する圧縮オーディオ情報記憶手段と、前記圧縮オーディオ情報記憶手段が記憶した圧縮オーディオ情報の再生指示があった場合に、当該圧縮オーディオ情報を伸張する伸張手段と、前記伸張手段が伸張したオーディオ情報、又は直接前記取得手段が取得したオーディオ情報を再生する再生手段と、車両の走行をナビゲートする処理をするナビゲート制御手段とを備える車載ナビゲーション装置において、前記ナビゲート制御手段と前記圧縮手段と前記再生手段は、共通のCPUによって実現され、前記圧縮手段が前記オーディオ情報の圧縮をした場合に、前記ナビゲート制御手段が行う処理及び/又は前記再生手段が行う処理が正常に行われるか否かを基準として、前記CPUの現在の負荷状況が、小さいか大きいかを判定する判定手段を備え、前記圧縮手段は、前記判定手段が前記CPUの現在の負荷状況が小さいと判定したときにのみ前記オーディオ情報の圧縮を行うことを特徴とする。
【0007】
このように、CPUの負荷状況が小さいときに圧縮処理を行うので、圧縮処理用のハードウェアを別に設ける必要もなく、またCPUの性能を上げる必要もない。これにより、コストを抑えることができる。
【0008】
請求項2の車載ナビゲーション装置は、前記取得手段が取得したオーディオ情報をそのまま記憶するオーディオ情報記憶手段を備え、前記圧縮手段は、前記オーディオ情報記憶手段に記憶されているオーディオ情報を圧縮することを特徴とする。これによって、ナビゲート制御手段の負荷が大きいときにも、一端オーディオ情報をそのまま記憶しておき、その後ナビゲート制御手段の負荷が小さくなったときに当該オーディオ情報を圧縮することができる。
【0009】
請求項3の車載ナビゲーション装置は、前記圧縮手段は、前記オーディオ情報を圧縮している最中に前記判定手段により前記CPUの現在の負荷状況が大きいと判定されたときには当該圧縮を中止し、その後、前記CPUの現在の負荷状況が小さいと判定されたときには、前記圧縮を中止したところから圧縮を再開することを特徴とする。これにより、圧縮の最中にCPUの負荷状況が変動しても、最終的にはオーディオ情報をすべて圧縮することができる。
【0010】
請求項4の車載ナビゲーション装置は、前記判定手段は、前記オーディオ情報の再生と前記車両の走行をナビゲートする処理のうち特定処理の少なくとも一方を行っているときに、前記CPUの負荷状況が大きいと判定することを特徴とする。例えば、CPUの性能によってはオーディオ情報の再生又は車両の走行をナビゲートする処理のうち特定処理を行うと、高負荷状態となりこのときに圧縮処理するとこれらの処理に不都合が生じる可能性がある。請求項4はこのような場合を想定したものである。
【0011】
請求項5の車載ナビゲーション装置は、前記判定手段は、前記オーディオ情報の再生、かつ前記車両の走行をナビゲートする処理のうち特定処理を行っているときに、前記CPUの現在の負荷状況が大きいと判定することを特徴とする。
【0012】
これは、現在の車載ナビゲーション装置で一般的に用いられているCPUにおいて、オーディオ情報の再生を行っているときは、これによりある程度CPUの負荷が大きくなっていると考えられる。これに加えてさらに特定のナビゲート処理を行っているときには、全体としてCPUの負荷状況が大きいと考えられる。この場合、圧縮処理を行わない。無理に圧縮処理を行うと、ナビゲーションの案内音声の発生タイミングが遅れる等のナビゲーションの基本機能が正常にできない可能性があるからである。
【0013】
反対に、現在の車載ナビゲーション装置で一般的に用いられているCPUからみて、オーディオ情報の再生と車両の走行をナビゲートする処理のうち特定処理の一方しか行っていないときには、CPUの負荷が小さいとして、この場合オーディオ情報の圧縮をすることができる。
【0014】
請求項6の車載ナビゲーション装置は、出発地及び目的地を設定する設定手段と、地図データを記憶する地図データ記憶手段と、前記車両の現在地を検出する位置検出手段と、表示部と、前記車両の車速を検出する車速検出手段とを備え、前記ナビゲート制御手段は、少なくとも前記地図データを用いて前記設定手段が設定した出発地から目的地までの最適経路を探索する処理と、当該最適経路に沿って前記車両を案内するための案内用データを作成する処理と、前記車両の現在地周辺の地図データを前記表示部に表示する処理と、前記表部部の画面をスクロールする処理とを行い、前記車両の走行をナビゲートする処理のうちの特定処理には、前記最適経路を探索する処理、前記案内用データを作成する処理、前記車両が基準速度よりも速い速度で移動する場合における前記車両の現在地周辺の地図データを前記表示部に表示する処理、前記表部部の画面をスクロールする処理の少なくともいずれか一つは含まれていることを特徴とする。これは、これらの処理は、一般的にナビゲーション処理の中でも負荷が大きい処理と考えられることによる。
【0015】
請求項7の車載ナビゲーション装置は、前記CPUは、前記オーディオ情報を圧縮する処理を含む自身が行う処理に対して、あらかじめ決められた優先度の高い処理を優先して行い、前記CPUが前記オーディオ情報の圧縮処理を行う時間間隔を監視する監視手段を備え、前記判定手段は、前記監視手段が監視した前記オーディオ情報の圧縮処理を行う時間間隔の閾値判定することにより、前記CPUの現在の負荷状況が小さいか大きいかを判定することを特徴とする。
【0016】
上記請求項4〜6の車載ナビゲーション装置では、CPUがあらかじめ決められた処理(オーディオ情報の再生、車両の走行をナビゲートする処理のうち特定処理)を行っているときに、CPUの負荷状況が大きいと判定していたが、請求項8のようにCPUが圧縮処理に費やす時間間隔から、CPUの負荷状況を判定してもよい。つまり、その時間間隔が大きいときには他の処理を頻繁に行っているということになるので、CPUの負荷状況は大きいと判定でき、反対にその時間間隔が小さいときには他の処理はそれほど頻繁には行われていないことになる。したがって、このような方法でCPUの現在の負荷状況が大きいと判定したときには、圧縮処理のタスクに廻ってきたとしてもそのタスクを行わないことになる。これにより、一端、圧縮処理のタスクを行うとある程度のその処理に時間を費やすことになることから、他の優先度の高い処理に支障をきたすということを防ぐことができる。
【0017】
請求項8の車載ナビゲーション装置は、前記あらかじめ決められた優先度は、前記オーディオ情報の再生、前記車両の走行をナビゲートする処理、前記オーディオ情報の圧縮の順で低くなることを特徴とする。これは、これらの順でリアルタイムによる処理の要求度が低くなると考えられるためである。したがって、圧縮処理のタスクに廻ってくる時間間隔が大きいということは、CPUはオーディオ情報の再生か車両の走行をナビゲートする処理を頻繁に行っていることになる。この場合は、圧縮処理を行わず、優先的にオーディオ情報の再生や車両の走行をナビゲートする処理を行うことになる。これによって、オーディオ情報の再生処理、車両の走行をナビゲートする処理とオーディオ情報の圧縮処理とをいずれも支障をきたすことなく、一つのCPUで実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下本発明に係る車載ナビゲーション装置の第1の実施形態について説明する。本発明の車載ナビゲーション装置では、一つのCPUでナビゲーション処理と音楽CDなどのオーディオ情報の再生と圧縮録音とを行い、この際にそのCPUの負荷が小さいときにオーディオ情報の圧縮を行うことを特徴としている。この第1実施形態では、そのCPUの負荷が小さいか否かを、負荷が大きいと考えられる所定の処理を行っているか否かで判定している。
【0019】
図1は、本実施形態の車載ナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。同図に示すように車載ナビゲーション装置100は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、外部メモリ9、表示装置10、音声出力装置11、リモコンセンサ12、リモコン13、CDドライブ14及びこれらと接続する制御回路8から構成される。以下各構成部品について説明する。
【0020】
位置検出器1は、いずれも周知の地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、距離センサ4、及び衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機5を有している。これらは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、各センサの精度によっては位置検出器1を上述した一部で構成してもよく、更に、図示しないステアリングの回転センサ、各転動輪の車速センサ等を用いてもよい。この位置検出器1により、車両の現在地が検出され、制御回路8は、例えば、経路案内を行う際には、車両が探索経路のどの位置を走行しているのかを認識でき、また車両がその経路に沿って走行しているか否かを判定することができる。
【0021】
地図データ入力器6は、道路の接続構造を示す道路地図データ、この道路地図データを用いた道路地図を表示する際に、地形や施設に関する背景を表示するための背景データ、地名等を表示するための文字データなどの各種の地図データを制御回路8に入力するためのものである。この地図データ入力器6は、上述した地図データを記憶する記憶媒体を備え、記憶媒体としては、そのデータ量からDVD−ROMやハードディスクを用いるのが一般的であるが、メモリカード等の他の記憶媒体を用いてもよい。
【0022】
ここで、地図データ入力機6の記憶媒体に記憶されている地図データについて、簡単に説明する。まず、道路地図データは、複数の道路が交差、合流、分岐する地点に関するノードデータと、その地点間を結ぶ道路に関するリンクデータを有する。ノードデータは、ノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続する全てのリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、及び交差点種類などの各データから構成される。また、リンクデータは、道路毎に固有の番号を付したリンクID、リンク長、始点及び終点座標、高速道路や一般道路などの道路種別、道路幅員、リンク旅行時間などの各データから構成されている。
【0023】
背景データは、地図上の各施設や地形等と、それに対応する地図上の座標を関連付けたデータとして構成している。なお、施設に関しては、その施設に関連付けて電話番号や、住所等のデータも記憶されている。また、文字データは、地名、施設名、道路名等を地図上に表示するものであって、その表示すべき位置に対応する座標データと関連付けて記憶されている。
【0024】
従って、この道路地図データに背景データ及び文字データを組み合わせることにより、道路を含む地図を表示することができる。また、道路地図データは、地図を表示する以外に、マップマッチング処理を行う際の道路の形状を与えるために用いられたり、目的地までの案内経路を検索する際に用いられる。
【0025】
操作スイッチ群7は、例えば、後述する表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられ、例えば、経路探索の際の出発地及び目的地の設定をしたり、CDドライブ14に挿入されている音楽CDの再生や、後述する外部メモリ9に録音した圧縮オーディオ情報の再生を指示したりするのに用いられる。
【0026】
外部メモリ9は、例えば、メモリカードやハードディスク等の記憶媒体からなる。この外部メモリ9には、ユーザによって記憶されたテキストデータ、画像データ、音声データ等の各種データが記憶される。また、後述するようにCDドライブ14から入力されたオーディオ情報を再生とともに一時的に記憶し、その後圧縮されたときにもこの外部メモリ9に記憶される。
【0027】
表示装置10は、例えば、液晶ディスプレイによって構成され、表示装置10の画面には、通常、車両の現在位置に対応する自車位置マーク、及び、地図データ入力器6より入力された地図データによって生成される自車両周辺の道路地図が表示される。また、操作スイッチ群7の操作によって、表示装置10には、メニュー画面や設定画面等の各種の画面が表示される。
【0028】
音声出力装置11は、スピーカやオーディオアンプ等から構成されるもので、音声案内等を行う際に用いられる。また、後述するCDドライブ14された音楽CDのオーディオ情報やそれを圧縮して録音したオーディオ情報の再生にも用いられる。
【0029】
また、本実施形態の車載ナビゲーション装置100は、リモートコントロール端末(以下、リモコンと称する)13及びリモコンセンサ12を備えており、このリモコン13によっても、上述した操作スイッチ群7とほぼ同様に、各種のナビゲーション操作を行うことが可能である。
【0030】
CDドライブ14は、音楽CDに記憶されているオーディオ情報を制御回路に入力する。ここで入力されたオーディオ情報が再生されたり、また圧縮して録音されたりする。なお、CDドライブ14のほかに、オーディオ情報を入力できるものであれば何でもよく、例えばDVDドライブと兼用のものや、MDに記憶されているオーディオ情報も入力できるものを用いてもよい。
【0031】
制御回路8は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。ROMには、制御回路8が実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPUが上記各部を利用した各種演算処理を行う。具体的には、例えば出発地から目的地までの最適経路の探索を行う。これは、上述した道路地図データを構成する各リンク及びノードごとに通過しやすさを示す通過コストが算出する。この通過コストは、各リンクの特性(リンク長、道路種、道路幅等)及び各ノードにおける直進、右左折の種別に応じて算出する。そして、出発地から目的地までの任意の経路に対して、各経路を構成する各リンク及び各ノードの通過コストの加算値が最小となる経路がダイクストラ法などの経路探索手法などを用いて探索する。その後、車両をこの探索経路に沿って案内するための案内データを作成する。具体的には、案内すべき地点と案内用データ(例えば「この先の交差点を右折してください」)とを対応つけたデータを作成する。
【0032】
また、制御回路8は一定時間間隔ごとに位置検出器1が検出する車両の推定現在地を、道路上にマップマッチングして車両の現在地を決定している。そして、地図データ入力器6から現在地周辺の地図データを読み出して、現在地が表示装置10の中心にくるように、現在地を示すマークとともにその地図データを表示する。すなわち、車両が走行している間は、制御装置8は現在地を中心とした地図を表示する。さらに、ユーザーから画面のスクロール指示があった場合には、スクロールすべき方向の地図データを地図データ入力器6から読み出しつつスクロール表示を行う。
【0033】
また、制御回路8は自身の負荷状況が小さいときに、外部メモリ9に記憶された非圧縮のオーディオ情報の圧縮処理を行う。圧縮方式としては、例えばMP3などが挙げられる。このときの処理の詳細についてはフローチャートを用いて後述する。
【0034】
また、制御回路8はユーザーからの音楽の再生指示があった場合は、CDドライブ14に挿入されている音楽CDに記録されているオーディオ情報を直接読み出して再生したり、外部メモリ9に記憶した圧縮オーディオ情報を伸張して再生したりする。なお、本実施形態では、CDドライブ14に音楽CDの挿入があった場合は自動的にその音楽CDを再生するようにしている。
【0035】
次に、本発明の特徴である、制御回路8のCPUの処理状況に応じて、オーディオ情報の圧縮処理を実行したり中止したりする処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
CDドライブ14に音楽CDの挿入があったときに処理を開始する。先ずステップS101においてその音楽CDに記憶されているCDデータ(オーディオ情報)を読み込む。そして、ステップS102においてそのCDデータを再生して音声出力装置11に音声として出力する。また、この再生処理に伴い、ステップS103において再生したCDデータをそのまま外部メモリ9に記憶していく。
【0037】
一方、ステップS110において自身のCPUの処理状況が小さいか大きいかを判定する。負荷状況が小さいと判定したときにはステップS108において、外部メモリ9に記憶したオーディオ情報を読み出し、圧縮処理を実行して再び外部メモリ9に記憶する。一方、負荷状況が大きいと判定したときにはステップS109において圧縮処理の実行を停止する。なお、圧縮している途中で停止する場合は、その停止したデータの箇所を記憶しておき、再度圧縮処理を実行するときには、停止したところから圧縮を再開する。これによって効率よく圧縮をすることができる。
【0038】
ここで、制御回路8のCPUの負荷状況が小さいか大きいかは、ステップS104〜S107によって判定する。ステップS104〜S107に記載の処理はCPUの負荷が大きいと考えられるものであり、これらの処理の一つでも行っているときにはCPUの負荷状況が大きいと判定する。反対に、これらの処理のいずれも行っていないときにはCPUの負荷状況が小さいと判定する。
【0039】
具体的には、ステップS104において車速が基準値以上か否かを判定する。車速が大きければ現在地の変化度合いが大きくなり、これに伴い頻繁に地図データ入力器6から地図データを読み出して、表示装置10に表示する地図を変えなければならない。したがって、車速が基準値以上の場合は、CPUの負荷状況が大きいと考えられる。
【0040】
また、ステップS105において地図スクロール中であるか否かを判定する。地図をスクロール表示すると、普段よりも地図データ入力器6から地図データを読み出すスピードが速くなり、それを表示装置10で表示するための処理も速くしなければならない。したがって、地図をスクロール中である場合は、CPUの負荷状況が大きいと考えられる。
【0041】
また、ステップS106において経路探索中か否かを判定する。上述したように、ユーザーから出発地と目的地の設定があった場合には、その出発地から目的地までの最適経路を探索する。この探索のためには、道路地図データを構成するそれぞれのリンク、ノードにコストを付与するとともに、ダイクストラ法などの手法によって出発地から目的地までの複数の経路に対して最小コストの経路を探索する必要がある。したがって、経路探索中の場合は、CPUの負荷状況が大きいと考えられる。
【0042】
また、ステップS107において案内データを作成中か否かを判定する。上述したように、案内データを作成するためには、探索経路のどこで案内が必要かを判断し、さらに案内必要と判断したときにはどのような案内をするのかを決定する必要がある。したがって、案内データを作成中の場合は、CPUの負荷状況が大きいと考えられる。
【0043】
ステップS111において、音楽CDの全トラックの圧縮が完了したか否かを判定する。未だ完了していないときには、再びステップS101に戻り上述した処理を繰り返す。一方、全てのトラックの圧縮が完了したときは処理を終了する。
【0044】
以上、本実施形態の車載ナビゲーション装置100では、音楽CDの再生とともにそのオーディオ情報をそのまま一時的に記憶する。このオーディオ情報は、負荷が大きいと考えられる処理(ステップS104〜S107)をCPUが行っていないときにかぎり、圧縮して再度記憶する。すなわち、一つのCPUでナビゲーション処理とオーディオ情報の再生処理及び、オーディオ情報の圧縮録音処理とに用いることができる。これにより、圧縮処理を行うために別にDSPなどのハードウェアを用いることもないので、コストダウンを図ることができる。
【0045】
なお、本実施形態ではステップS103において、音楽CDを再生した際には、そのデータをそのまま記憶するとともに、ステップS110を満たした場合には即座に圧縮処理を行っていた。しかし、これに限定されるわけではなく、例えばステップS103にて記憶を開始してから一定時間経過後にステップS104以下の処理を行ったり、ステップS103にて音楽CDの1トラック分のデータを記憶した後にS104以下の処理を行っても良い。また、音楽CDの全トラック分のデータを一端そのまま記憶し、その後ステップS104以下にて圧縮処理を行っても良い。
【0046】
また、本実施形態で示したCPUの負荷が大きいと考えられる処理(ステップS104〜S107)以外にもCPUの負荷が大きいと考えられる処理があれば、その処理を考慮して圧縮処理の実行・停止を切り替えるようにしてもよい。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る車載ナビゲーション装置の第2の実施形態について説明する。上記第1実施形態では、制御回路8のCPUの負荷が大きいと考えられる処理をあらかじめ想定し、その処理を行っているかいないかによって、CPUの負荷状況が小さいか大きいかを判定していた。この第2実施形態では、CPUが行う処理にあらかじめ優先順位を付けておき、CPUは優先度が高い処理(タスク)を優先的に行うようにする。ここで、優先順位の付け方としては、リアルタイム性が要求されるタスクの優先度を大きくするようにする。したがって、例えば車両の現在地周辺の地図を表示するなどのナビゲーション処理、オーディオ情報の再生処理、オーディオ情報の圧縮処理を考えた場合、ナビゲーション処理の種類にもよるが、オーディオ情報の再生処理、ナビゲーション処理、オーディオ情報の圧縮処理の順で優先順位を大から小に設定する。これらの順でリアルタイム性が低くなると考えられるからである。したがって、オーディオ情報の再生処理やナビゲーション処理でCPUが頻繁に使用されているときには、オーディオ情報の圧縮処理のタスクになかなか廻ってこないことになる。反対に、オーディオ情報の再生処理やナビゲーション処理でCPUがあまり使用されているときには、それよりも優先順位が低いオーディオ情報の圧縮処理のタスクに廻ってくる回数が増えることになる。
【0048】
そこで、この第2の実施形態ではオーディオ情報の圧縮処理のタスクに廻ってくる時間間隔をモニタし、その時間間隔によってCPUの負荷状況が小さいか大きいかを判定する。そして、CPUの負荷状況が大きいと判定したときには、オーディオ情報の圧縮処理のタスクに廻ってきたとしても、CPUは圧縮処理を行わないようにする。一旦タスクを実行すると、ある程度それに時間が費やされて、オーディオ情報の再生処理やナビゲーション処理などに支障をきたすことがあるからである。以下、本実施形態の詳細を第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0049】
本実施形態の車載ナビゲーション装置としては、第1実施形態と同様で、図1に示す構成の車載ナビゲーション装置100が用いられる。同図に示す各部の働きについても基本的には第1実施形態と同じなので説明を省略するが、上述したように制御回路8が行う自身のCPUの負荷状況が小さいか大きいかの判定方法が異なる。以下、この判定処理について図3、図4のフローチャートを用いて説明する。なお、図3、図4に示す処理は、図2のステップS110(ステップS104〜S107)及びステップS108、S109に相当する処理である。したがって、その他の処理(ステップS101〜S103、S111)については第1実施形態と同じである。すなわち、先ずステップS101においてCDドライブ14に挿入されているCDデータを読み出して、ステップS102においてそれを再生する。それと同時にステップS103において、逐次CDデータを非圧縮の状態で記憶していく。その後、図3、図4の処理に従って非圧縮のオーディオ情報の圧縮処理をする。
【0050】
先ず、オーディオ情報の再生処理及びナビゲーション処理が空いた時には、制御回路8のCPUは圧縮処理のタスクをしようとする。ここで、先ずステップS201において、後述するモニタタスクを呼び出す。ここで、モニタタスクとはCPUが圧縮処理のタスクに費やした時間間隔をモニタするタスクであり、具体的には図4のフローチャートに従って行う。
【0051】
ステップS301において監視タイマが所定時間Tmsより大きいか否かを判定する。この監視タイマとは、CPUが前回圧縮処理のタスクを行ったときからの時間を計測するタイマである。ここで、監視タイマが所定時間Tmsより小さいときは、処理をステップS303に進む。監視タイマが所定時間Tmsより小さいということは、CPUは比較的頻繁に圧縮処理のタスクに費やすことができる負荷状態、つまり負荷状態が小さいということを意味している。この場合、ステップS303において、圧縮処理のタスクを実行するか否かの判断となる停止フラグをリセット(=0)にする。一方、監視タイマが所定時間Tmsより大きいときは、処理をステップS302に進む。ここで、監視タイマが所定時間Tmsより大きいということは、CPUは圧縮処理以外の処理に費やす時間が長い、つまり負荷状態が大きいということを意味している。この場合、ステップS304において、停止フラグをセット(=1)にする。その後、ステップS304において監視タイマをリセットして、このモニタタスク処理を終了する。
【0052】
再び、図3に示す処理に説明を戻り、ステップS202において上述したモニタタスクによって、停止フラグがセット(=1)されているか否かを判定する。ここでセットされていないときには、CPUの負荷状況が小さいとして、ステップS203において圧縮処理を実行する。一方、停止フラグがセットされているときには、CPUの負荷状況が大きいとして、圧縮処理を実行せずにこのタスクを終了する。これは、優先度の高い処理を優先的にするといっても、一旦圧縮処理を実行するとある程度時間を費やされ、その優先度の高い処理に支障をきたすことがあるからである。
【0053】
以上の処理を音楽CDのすべてのトラックについての圧縮が完了するまで行う(図2ステップS111)。
【0054】
以上本実施形態では、CPUが圧縮処理のタスクに費やす時間間隔をモニタすることによって、CPUの負荷状況が小さいか大きいかを判定している。そして、CPUの負荷状況が小さいときに、オーディオ情報の圧縮処理を実行するようにしている。これにより、一つのCPUで他の処理と併用して、オーディオ情報の圧縮処理を行うことができる。つまり、オーディオ情報の圧縮処理のために、DSPなどの別のハードウェアを用いる必要がないのでコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施形態、第2実施形態に係る車載ナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の車載ナビゲーション装置100が行う、制御回路8のCPUの処理状況に応じて、オーディオ情報の圧縮処理を実行したり中止したりする処理を示すフローチャートである。
【図3】第2実施形態の制御回路8のCPUが行う、オーディオ情報の圧縮処理のタスクを示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態の制御回路8のCPUが行う、自身が圧縮処理のタスクに費やした時間間隔をモニタするタスクを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
100 車載ナビゲーション装置
1 位置検出器
2 地磁気センサ
3 ジャイロスコープ
4 距離センサ
5 GPS受信機
6 地図データ入力器
7 操作スイッチ群
8 制御回路
9 外部メモリ
10 表示装置
11 音声出力装置
12 リモコン
13 リモコンセンサ
14 CDドライブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ情報を外部から取得する取得手段と、
前記取得手段が取得したオーディオ情報を圧縮する圧縮手段と、
前記圧縮手段が圧縮した圧縮オーディオ情報を記憶する圧縮オーディオ情報記憶手段と、
前記圧縮オーディオ情報記憶手段が記憶した圧縮オーディオ情報の再生指示があった場合に、当該圧縮オーディオ情報を伸張する伸張手段と、
前記伸張手段が伸張したオーディオ情報、又は直接前記取得手段が取得したオーディオ情報を再生する再生手段と、
車両の走行をナビゲートする処理をするナビゲート制御手段とを備える車載ナビゲーション装置において、
前記ナビゲート制御手段と前記圧縮手段と前記再生手段は、共通のCPUによって実現され、
前記圧縮手段が前記オーディオ情報の圧縮をした場合に、前記ナビゲート制御手段が行う処理及び/又は前記再生手段が行う処理が正常に行われるか否かを基準として、前記CPUの現在の負荷状況が、小さいか大きいかを判定する判定手段を備え、
前記圧縮手段は、前記判定手段が前記CPUの現在の負荷状況が小さいと判定したときにのみ前記オーディオ情報の圧縮を行うことを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記取得手段が取得したオーディオ情報をそのまま記憶するオーディオ情報記憶手段を備え、
前記圧縮手段は、前記オーディオ情報記憶手段に記憶されているオーディオ情報を圧縮することを特徴とする請求項1に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記圧縮手段は、前記オーディオ情報を圧縮している最中に前記判定手段により前記CPUの現在の負荷状況が大きいと判定されたときには当該圧縮を中止し、その後、前記CPUの現在の負荷状況が小さいと判定されたときには、前記圧縮を中止したところから圧縮を再開することを特徴とする請求項1又は2に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記オーディオ情報の再生と前記車両の走行をナビゲートする処理のうち特定処理の少なくとも一方を行っているときに、前記CPUの負荷状況が大きいと判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記オーディオ情報の再生、かつ前記車両の走行をナビゲートする処理のうち特定処理を行っているときに、前記CPUの現在の負荷状況が大きいと判定することを特徴とする請求項4に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項6】
出発地及び目的地を設定する設定手段と、
地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記車両の現在地を検出する位置検出手段と、
表示部と、
前記車両の車速を検出する車速検出手段とを備え、
前記ナビゲート制御手段は、少なくとも前記地図データを用いて前記設定手段が設定した出発地から目的地までの最適経路を探索する処理と、当該最適経路に沿って前記車両を案内するための案内用データを作成する処理と、前記車両の現在地周辺の地図データを前記表示部に表示する処理と、前記表部部の画面をスクロールする処理とを行い、
前記車両の走行をナビゲートする処理のうちの特定処理には、前記最適経路を探索する処理、前記案内用データを作成する処理、前記車両が基準速度よりも速い速度で移動する場合における前記車両の現在地周辺の地図データを前記表示部に表示する処理、前記表部部の画面をスクロールする処理の少なくともいずれか一つは含まれていることを特徴とする請求項4又は5に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項7】
前記CPUは、前記オーディオ情報を圧縮する処理を含む自身が行う処理に対して、あらかじめ決められた優先度の高い処理を優先して行い、
前記CPUが前記オーディオ情報の圧縮処理を行う時間間隔を監視する監視手段を備え、
前記判定手段は、前記監視手段が監視した前記オーディオ情報の圧縮処理を行う時間間隔の閾値判定することにより、前記CPUの現在の負荷状況が小さいか大きいかを判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項8】
前記あらかじめ決められた優先度は、前記オーディオ情報の再生、前記車両の走行をナビゲートする処理、前記オーディオ情報の圧縮の順で低くなることを特徴とする請求項7に記載の車載ナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−17715(P2007−17715A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199304(P2005−199304)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】