説明

車載用移動体検出装置

【課題】車載カメラの画像から移動体の重要な情報を高速に効率よく検出する。
【解決手段】カメラ5によって撮像された画像はアナログ信号として画像信号入力部6に入力され、デジタル信号に変換されて第一画像記憶部7と第二画像記憶部8に記憶される。記憶された画像信号は変化領域抽出部9に入力され、差分検出により変化領域が抽出される。距離情報変換部13は、路面距離マップを参照して、各変化領域の距離情報を得る。移動体検出部14は、各変化領域中の最も自車両に近い座標点を移動体として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用移動体検出装置に係り、特に、自車両周辺を撮像するように車両に設置された車載カメラ等の撮像手段によって撮像された画像から移動体を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点の進入時や車両の後退時に運転者の視界を補う装置として、車載カメラとディスプレイを用いた運転支援システムが多数提案されている。例えば、見通しの悪い交差点では、交差点に完全に進入する前に、車両の前方に取り付けられた側方を撮像するカメラにより交差点の状況をあらかじめディスプレイに表示し、側方道路からの接近車両などを把握できるようにしたものが知られている。
【0003】
また、車両の側方を監視する側方監視装置として、車両の側方を撮像する車載カメラから得た所定時間前後の2画像に基づいて、自車両へ接近する物体(移動体)を検出し、その接近度合から危険度を判定するものがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−213254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記に示されるような従来の側方監視装置においては、第1の課題として、2画像中の同一物の移動量を算出するには画像間の詳細なマッチングが必要となり、計算量が膨大となることが挙げられる。このため、処理中に接近物体がさらに移動してしまい、危険度の判定が間に合わなくなるという欠点がある。
【0006】
第2の課題としては、2画像を記録する所定時間の間に自車両が移動した場合には、画像全体が変化するため、画像全体を接近する物体と誤検出してしまうという欠点がある。
【0007】
第3の課題としては、夜間に接近物体が発光するヘッドライト等をカメラで撮像した場合、カメラの受光素子の許容限度を超えてしまい、その周辺の素子まで明るく変化する現象が発生する。このため、接近物体を実際よりも大きい物体であると誤検出するという欠点がある。
【0008】
第4の課題としては、カメラの撮像画面に地平線より上方が含まれていると、例えば飛行機なども接近物体と検出してしまう。また、そのために計算処理の時間も増大するという欠点がある。
【0009】
第5の課題としては、接近物体の接近度合を危険度として通報する際に、カメラで撮像した画面との関連がわからないと、運転者が状況を把握しづらいという欠点がある。
【0010】
第6の課題としては、自車両の周辺地形が水平でなく傾きを持っているときは、周辺地形を水平とみなしてカメラで撮像した画像を単純に座標変換すると、接近物体までの距離や方向の接近度合に誤差を生じるという欠点がある。
【0011】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、撮像画像を記録する条件を適切に設定して誤検出を防ぎ、接近物体の検出を最も重要な部分に着目して行うことによって計算量を削減し、移動体の重要な情報を高速に効率よく検出する移動体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明による車載用移動体検出装置は、自車両周辺を撮像するように車両に設置された撮像手段によって撮像された画像から移動体を検出する車載用移動体検出装置であって、前記撮像手段によって撮像された複数の画像の差分を用いて1つ以上の変化領域を抽出する変化領域抽出手段と、前記変化領域抽出手段によって抽出された変化領域中の最も自車両に近い座標点を移動体として検出する移動体検出手段とを有する。
【0013】
本発明による車載用移動体検出装置は、更に、自車両がおおよそ停止状態かどうかであるか否かを判定する停止状態判定手段を有し、前記変化領域抽出手段は、前記停止状態判定手段によって自車両がおおよそ停止状態と判定された場合にのみ、前記撮像手段によって撮像された複数の画像の差分を用いて1つ以上の変化領域を抽出する。
【0014】
本発明による車載用移動体検出装置は、更に、前記撮像手段によって撮像された画像中の輝度を検出する画像輝度検出手段と、前記画像輝度検出手段によって所定値以上の輝度が検出された場合に前記撮像手段の受光量を低減する受光量低減手段を有する。
【0015】
本発明による車載用移動体検出装置は、更に、前記変化領域抽出手段に用いる前記画像の地平線上方の領域を除外する領域除外手段を有する。
【0016】
本発明による車載用移動体検出装置は、更に、前記移動体検出手段によって検出した移動体を前記画像中にマーキングして表示する移動体表示手段を有する。
【0017】
本発明による車載用移動体検出装置は、更に、前記移動体検出手段によって検出した移動体と自車両との距離を通知する距離通知手段を有する。
【0018】
本発明による車載用移動体検出装置は、更に、前記移動体検出手段によって検出した移動体の座標点を座標変換し、自車両との相対位置を算出する相対位置算出手段と、前記相対位置算出手段によって算出された相対位置を表示する相対位置表示手段とを有する。
【0019】
本発明による車載用移動体検出装置は、更に、自車両周辺の地形情報を用いて前記相対位置算出手段によって算出された相対位置の補正を行う地形対応位置補正手段を有する。
【0020】
本発明による車載用移動体検出装置は、更に、自車両の傾斜状態を測定する傾斜状態測定手段と、前記傾斜状態測定手段によって測定された傾斜状態に基づいて前記相対位置算出手段によって算出された相対位置の補正を行う傾斜対応位置補正手段とを有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明による車載用移動体検出装置によれば、画像の差分から得た各変化領域中の最も自車両に近い座標点のものを移動体として検出することにより、計算量を削減することができる。これは従来、変化領域内のすべての点について画像間のマッチングを行い、さらに移動距離や接近速度を計算する必要があったために計算量が膨大となっていたが、それを最も自車両に近い座標点のみに限定することにより画像間のマッチングが不要となり、移動距離や接近速度の計算量を大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施形態1)
本発明による車載用移動体検出装置の実施形態1を、図1〜図7を参照して説明する。
【0023】
本実施形態の車載用移動体検出装置は、図1に示されているように、カメラ5と、画像信号入力部6と、第一画像記憶部7と、第二画像記憶部8と、変化領域抽出部9と、車速センサ10と、車速信号入力部11と、車両停止判定部12と、距離情報変換部13と、移動体検出部14とを有する。
【0024】
カメラ5は、本実施形態では、図2に示されているように、車両側方を撮像するように車両前方側面に設置されており、符号15により示されている撮像方向の撮影を行う。なお、カメラ5は車両周辺を撮像するように設置されていればよく、設置場所は、前方、後方などどこであってもよい。また、撮像方向も車両側方に限らず、車両前方、車両後方などであってもよい。
【0025】
カメラ5によって撮像された画像は、アナログ信号となって画像信号入力部6に入力される。ここでデジタル信号に変換された画像信号は、第一画像記憶部7と第二画像記憶部8に記憶される。第一画像記憶部7と第二画像記憶部8への入力は、画像信号入力部6により所定の時間差をもって振り分けられる。第一画像記憶部7と第二画像記憶部8に記憶された画像信号は、変化領域抽出部9に入力される。
【0026】
車速センサ10によって取得された車速情報は、パルス信号となって車速信号入力部11に入力される。車速情報は車速信号入力部11においてデジタル信号に変換され、停止判定部12に入力される。
【0027】
車両停止判定部12は、車速信号入力部11よりの車速情報に基づいて、おおよそ停止状態であるか否かを判定する。車両停止判定部12がおおよそ停止状態と判定した場合には、変化領域抽出部9に処理許可信号が入力される。
【0028】
変化領域抽出部9に処理許可信号が入力された場合には、第一画像記憶部7と第二画像記憶部8に格納された画像信号が変化領域抽出部9に入力される。
【0029】
これにより、変化領域抽出部9は、自車両がおおよそ停止状態にある時のみ、第一画像記憶部7に格納された画像信号と第二画像記憶部8に格納された画像信号とを参照し、2次元画像として両画像(第一画像記憶部7に格納された画像信号による2次元画像と第二画像記憶部8に格納された画像信号による2次元画像)の差分成分を抽出する。
【0030】
この差分成分が画像中の変化領域を表しており、例えば、移動している他の車両、歩行者などの移動体である。
【0031】
次に、距離情報変換部13は、カメラ5が設置されている方向や画角によってあらかじめ算出された路面距離マップを備えており、撮像された2次元画像の各座標点を自車両からの距離情報に変換する機能を有している。
【0032】
これにより、距離情報変換部13は、路面距離マップを参照して、変化領域抽出部9によって抽出された変化領域の各座標点を、自車両からの距離情報に変換する。
【0033】
移動体検出部14は、距離情報変換部13によって変換された距離情報のうち、最も距離値の小さいもの、すなわち自車両に最も近い座標点を抽出する。これが、距離情報変換部13によって抽出された変化領域のうち、自車両に最も近い座標点にある移動体であり、これを移動体として検出する。
【0034】
次に、画像信号(画像データ)を用いた変化領域抽出の原理について、図3、図4を参照して説明する。
【0035】
図3(a)、(b)は、撮像された画像の例を示している。図3(a)は、第一画像記憶部7に記憶された画像データによる画像を、図3(b)は第二画像記憶部8に記憶された画像データによる画像を各々示している。
【0036】
図4(a)、(b)は、変化領域抽出部9の動作を模式的に示している。図4(a)は、説明のために、第一画像記憶部7に記憶された画像データによる画像(図3(a)の画像)と第二画像記憶部8に記憶された画像データによる画像(図3(b)の画像)とを合成した画像を示している。図4(b)は、第一画像記憶部7に記憶された画像データによる画像(図3(a)の画像)と第二画像記憶部8に記憶された画像データによる画像(図3(b)の画像)の差分成分を抽出した画像を示している。
【0037】
変化領域抽出部9は、第一画像記憶部7と第二画像記憶部8に記憶された画像データ中の各画素について、一般的にRGBで表される色情報の差分を計算する。これを、第一画像記憶部7に記憶された画像データによる画像(図3(a)の画像)と第二画像記憶部8に記憶された画像データによる画像(図3(b)の画像)に適用した結果を示したのが、図4(b)に示されている画像である。図4(b)において、抽出された差分成分は、符号20により示されている。図3(a)の画像と図3(b)の画像中における移動物体の画素のみが差分(差分成分20)として抽出され、静止している背景、路面を表す画素は抽出されない。
【0038】
次に、距離情報への変換の原理について、図5〜図7を参照して説明する。
【0039】
図5は、自車両周辺の位置情報を平面格子によって模式的に表している。ここで、符号21は自車両を表し、図5の平面格子は自車両21を上方から俯瞰して得られる。符号A〜Gは、平面格子の格子点を表している。
【0040】
図6は、距離情報変換部13が備えている路面距離マップを示している。路面距離マップは、カメラ5を通して図5に示されている平面格子を見た形となっており、図5の格子点A〜Gが、図6の格子点A〜Gに対応しており、各々、同一位置を表している。
【0041】
図5に示されている平面格子において、各格子点A〜Gの自車両21からの距離を算出できる。符号Cdは、格子点Cと自車両21との距離を表しており、この図では3mである。同様に、図6の格子点Cと自車両21との距離も3mである。この距離情報を、各格子点だけでなく、画素の各点において、あらかじめ算出しておき、路面距離マップとする。例えば、図6の格子点Cに対応する画素は、3mという距離情報を保持する。
【0042】
図7は、この路面距離マップを、変化領域抽出部9によって得た差分成分20に適用する様子を示している。差分成分20の領域中において、格子点Cに対応する画素は、路面距離マップによって3mという距離情報を得ることができる。これを差分成分20の領域の各画素について適用し、各画素の距離情報が得られる。ここで、差分成分20の領域の各画素についての適用は、必ずしも画面上方や下方からに限らず、例えば、路面距離マップにおいて、距離の近い画素の順に行ってもよい。
【0043】
このようにして得られた距離情報のうち最も値の小さい点、すなわち、自車両に近い距離にある点を移動体検出部14によって抽出し、移動体として検出する。図7における符号20pが、差分成分20の各画素に属する距離情報のうち、最も値の小さい座標点を示し、この例では、自車両21からの距離は2.8mである。
【0044】
移動体検出部14は、距離情報変換部13によって変換された距離情報のうち、座標点20pを自車両に最も近い座標点にある移動体として検出する。
【0045】
このように移動体の検出を、最も自車両に近い座標点のみに限定することにより、画像間のマッチングが不要となり、その後の移動距離や接近速度の計算量を大幅に削減することができる。
【0046】
また、変化領域抽出部9は、自車両がおおよそ停止状態にある時のみ変化領域抽出を行うから、2画像を記録する所定時間の間に自車両が移動し、画像全体が変化したことにより、画像全体を接近する物体と誤検出してしまうことを未然に排除できる。
【0047】
(実施形態2)
本発明による車載用移動体検出装置の実施形態2を、図8を参照して説明する。なお、図8において、図1に対応する部分は、図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0048】
本実施形態では、実施形態1の車載用移動体検出装置に、画像輝度検出部22と、受光量低減部23とが追加されている。
【0049】
画像輝度検出部22は、画像信号入力部6によってデジタル信号に変換された画像信号のRGBの色情報から、その輝度成分を検出する。この輝度成分が所定値以上であると判定された場合には、受光量低減部23に、その輝度成分の値に応じて算出された受光量低減信号が送られる。
【0050】
受光量低減部23は、画像輝度検出部22よりの受光量低減信号に応じて、カメラ5のシャッタスピード、絞りなどを操作し、露出補正制御を行う。
従って、カメラ5が強い光源からの光を受光した場合でも、適切な画像が得られ、接近物体を誤検出することが避けられる。
【0051】
(実施形態3)
本発明による車載用移動体検出装置の実施形態3を、図9、図10を参照して説明する。なお、図9においても、図1に対応する部分は、図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0052】
第3の実施例を図面を用いて説明する。図9はこの発明の実施の形態3を示した構成図であり、図において24は領域除外部である。5から14については図2と同様である。本発明の第1の実施例と異なる点を以下説明する。
【0053】
本実施形態では、実施形態1の車載用移動体検出装置に、領域除外部24が追加されている。
領域除外部24は、画像信号入力部6によってデジタル信号に変換された画像信号のうち、地平線上方部分の情報を除外する。領域除外部24によって地平線上方部分を除外された画像信号が第一画像記憶部7と第二画像記憶部8に記憶される。
【0054】
図10は、地平線上方部分が除外された画像の例を示している。符号25は、除外領域(除外地平線上方部分)であり、除外された領域を分かり易くするために、ハッチングで示している。
【0055】
このように、有効領域を地平線以下に限定することにより、地平線上方の飛行物体などを除外することができ、併せて画像を記憶する第一画像記憶部7と第二画像記憶部8の記憶容量も少なくて済む。さらにその後の変化領域抽出部9において、地平線下方のみの処理で済むため、計算量を削減することができる。
【0056】
(実施形態4)
本発明による車載用移動体検出装置の実施形態4を、図11、図12を参照して説明する。なお、図11においても、図1に対応する部分は、図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0057】
本実施形態では、実施形態1の車載用移動体検出装置に、移動体表示部26が追加されている。
移動体表示部26は、液晶ディスプレイ等により構成されて運転席前方に設置されており、画像信号入力部6によってデジタル信号に変換された画像信号を入力し、それを画像として表示する。
【0058】
移動体表示部26は、移動体検出部14より座標点20pに関する情報を入力することにより、移動体検出部14によって検出された移動体を表す点も、画像中にマーキングして表示する。
【0059】
図13は、移動体表示部26によって表示される画像例を示したものである。符号27は移動体として検出された最も自車両に近い座標点20pの表示画像であり、この例では、星印としてマーキングしている。
【0060】
従って、運転者は、運転席前方に設置された移動体表示部26を目視することにより、画像中の移動体がどれであるかを、即座に、的確に把握することができる。
【0061】
(実施形態5)
本発明による車載用移動体検出装置の実施形態5を、図13、図14を参照して説明する。なお、図13においても、図1に対応する部分は、図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0062】
本実施形態では、実施形態1の車載用移動体検出装置に、距離通知部28が追加されている。
移動体検出部14によって検出された移動体を表す座標点20pのデータは、距離情報変換部13によって得られた距離情報を保持している。
距離通知部28は、運転席の前方に設置される表示器等により構成され、移動体検出部14より座標点20pに関する情報を入力し、座標点20pの距離情報を通知する。
【0063】
図14は、距離通知部28によって通知される座標点20pの距離情報の表示例を示している。この例では、距離情報が、「接近物体との距離」として、デジタル数値情報として表示されている。
従って、カメラの撮像した画像では分かり難いような移動体までの距離を、運転者は、容易に、的確に把握することができる。
【0064】
(実施形態6)
本発明による車載用移動体検出装置の実施形態6を、図15〜図18を参照して説明する。なお、図15においても、図1に対応する部分は、図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、実施形態1の車載用移動体検出装置に、相対位置算出部29と、相対位置表示部30とが追加されている。
相対位置算出部29は、距離情報変換部13が備える路面距離マップと同様の相対位置マップを備えている。
【0066】
図16は、自車両周辺の位置情報を平面格子によって模式的に表している。図16においても、符号21は自車両を表し、図16の平面格子は、図5と同様に、自車両21を上方から俯瞰して得られる。符号A〜Gは、図5と同様に、平面格子の格子点を表している。
【0067】
図17は、相対位置算出部29が備える相対位置マップを示している。相対位置マップは、距離情報変換部13が備える路面距離マップと同様に、カメラ5を通して図17の格子を見た形となっている。
路面距離マップでは各格子点は距離情報を保持していたが、相対位置マップでは相対位置情報を保持する。
【0068】
図16の格子点Cは、この例では任意の位置を基準点とした(x,y)=(3,2)という相対位置である。これに対応する図17の格子点Cは(x,y)=(3,2)という相対位置情報を保持する。この相対位置情報を、各格子点だけでなく画素の各点においてあらかじめ算出しておき、相対位置マップとする。これを変化領域抽出部9によって得た差分成分20の領域の各画素について適用し、各画素の相対位置が得られる。
【0069】
相対位置算出部29は、移動体検出部14によって検出された移動体の画素情報を照合し、移動体を表す座標点20pの自車両に対する相対位置情報を相対位置表示部30に出力する。
【0070】
相対位置表示部30は、液晶ディスプレイ等により構成されて運転席前方に設置されており、相対位置表示部30より自車両に対する移動体を表す座標点20pの相対位置情報を入力し、図18に示されているように、自車両21を上方から俯瞰した表示と共に、移動体を、自車両21の表示に対して相対位置算出部29によって算出された相対位置をもって、表示する。この表示例では、移動体は星印32によって表示されている。
【0071】
従って、運転者は、運転席前方に設置された相対位置表示部30を目視することにより、カメラ5が撮像した画像では分かり難いような移動体までの距離や自車両との相対位置を、容易に、的確に把握することができる。
【0072】
(実施形態7)
本発明による車載用移動体検出装置の実施形態7を、図19〜図21を参照して説明する。なお、図19において、図1、図15に対応する部分は、図1、図15に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0073】
本実施形態では、実施形態6の車載用移動体検出装置に、地形対応相対位置補正部33が追加されている。
地形対応相対位置補正部33は、ナビゲーションシステムからの地図情報やGPSなどによる車両現在位置情報により、車両周辺の地形情報に基づいた相対位置補正を行う。
【0074】
図20は、図5と同様に、自車両周辺の位置情報を平面格子によって模式的に表している。図21は地形対応相対位置補正部33が行う相対位置補正を説明する図である。図21はカメラ5を通して図20の格子を見た形となっている。
【0075】
ここでは、格子点C周辺が丘陵地として盛り上がっている地形の例を示している。図20の格子点Cに対応する点は図21の格子点Cであるが、地形が平坦な場合には、図21の格子点C’である。
【0076】
このように地形の違いにより、俯瞰図では同一の位置であっても、カメラ5を通して撮像される画像が変化する。この例では、格子点Cの相対位置は(x,y)=(3,2)であり、格子点C’の相対位置は(x,y)=(2.5,1.9)である。これは、車両周辺の地形の標高情報とカメラの方向および画角から算出される。
【0077】
地形対応相対位置補正部33は、相対位置算出部29によって算出された相対位置情報を、この原理によって補正する。
従って、自車両周辺の地形が、一様な水平でなく、傾きを含んでいる場合も、その地形情報を用いて自車両21と移動体の相対位置の補正を行うことで、正確な相対位置の算出を行うことができる。
【0078】
(実施形態8)
本発明による車載用移動体検出装置の実施形態8を、図22〜図24を参照して説明する。なお、図22においても、図1、図15に対応する部分は、図1、図15に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0079】
本実施形態では、実施形態6の車載用移動体検出装置に、傾斜対応相対位置補正部35が追加されている。
本実施形態では、実施形態6の車載用移動体検出装置に、傾斜状態測定部34と、傾斜対応相対位置補正部35とが追加されている。
【0080】
傾斜状態測定部34は、車両に搭載されたジャイロセンサあるいはハイトセンサ、サスペンションアクチュエータなどにより、自車両21の傾斜状態を測定し、傾斜情報を傾斜対応相対位置補正部35に出力する。
【0081】
図23は、図5と同様に、自車両周辺の位置情報を平面格子によって模式的に表している。図24は傾斜対応相対位置補正部35が行う相対位置補正を説明する図である。図24はカメラ5を通して図23の格子を見た形となっている。
【0082】
ここでは、自車両21が傾斜して地平線35が傾いて撮像されている例を示している。図23の格子点Cに対応する点は図24の格子点Cであるが、自車両21が水平の場合には、図24の格子点C’である。
【0083】
このように、自車両21の傾斜状態の違いにより、俯瞰図では同一の位置であっても、カメラ5を通して撮像される画像が変化する。この例では、格子点Cの相対位置は(x,y)=(3,2)であり、格子点C’の相対位置は(x,y)=(2.9,1.8)である。これは自車両21の傾斜情報とカメラ5の方向および画角から算出される。
【0084】
傾斜対応相対位置補正部35は、相対位置算出部29によって算出された相対位置情報を、この原理によって補正する。
従って、自車両周辺の地形が、一様な水平でなく、傾きを含んでいる場合も、自車両21の傾斜状態を測定してこの傾斜状態に基づいて自車両21と移動体の相対位置の補正を行うことで、正確な相対位置の算出を行うことができる。
【0085】
以下に、本発明による車載用移動体検出装置の効果を要約して説明する。
【0086】
(1)従来は、変化領域内のすべての点について画像間のマッチングを行い、さらに移動距離や接近速度を計算する必要があったため、計算量が膨大となっていた検出プロセスを、移動体検出手段は、画像の差分から得た各変化領域中の最も自車両に近い座標点を座標点のみに限定して移動体として検出するので、画像間のマッチングが不要となり、移動距離や接近速度の計算量を大幅に削減できる。
【0087】
(2)車両停止判定部が、自車両がおおよそ停止状態と判定した場合にのみ、撮像された複数の画像の差分を用いるため、移動体以外の背景の部分が一致し、適切に消去することができる。これにより移動体の誤検出を防ぐことができる。
【0088】
(3)画像輝度検出手段が、撮像手段によって撮像された画像中の輝度を検出し、受光量低減手段が、画像輝度検出手段によって所定値以上の輝度が検出された場合に撮像手段の受光量を低減するので、強い光源からの光を受光した場合でも適切な画像が得られ、接近物体を誤検出を防ぐことができる。
【0089】
(4)領域除外手段が、変化領域抽出手段に用いる画像の地平線上方の領域を除外するので、地平線上方の飛行物体などの誤検出を防ぐという効果を持つ。また地平線下方の処理のみで済むため計算量を削減でき、さらに、画像を一時的に記憶するメモリ容量なども少なくて済む。
【0090】
(5)移動体表示手段が、移動体検出手段によって検出した移動体を画像中にマーキングして表示するため、運転者は画像中の移動体がどれであるかを即座に把握することができる。
【0091】
(6)距離通知手段が、移動体検出手段によって検出した移動体と自車両との距離を通知するので、カメラの撮像した画像では分かり難いような移動体までの距離を運転者が容易に把握できる。
【0092】
(7)相対位置算出手段が、移動体検出手段によって検出した移動体の座標点を座標変換し、自車両との相対位置を算出し、相対位置表示手段がこの相対位置を表示するので、カメラの撮像した画像では分かり難いような移動体までの距離や自車両との相対位置を運転者が容易に把握できる。
【0093】
(8)地形対応相対位置補正手段が、自車両周辺の地形情報を用いて相対位置の補正を行うので、自車両周辺の地形が一様な水平でなく傾きを含んでいる場合も、正確な相対位置の算出を行うことができる。
【0094】
(9)傾斜状態測定手段が自車両の傾斜状態を測定し、傾斜対応相対位置補正手段が、この傾斜状態に基づいて相対位置の補正を行うので、自車両周辺の地形が一様な水平でなく傾きを含んでいる場合も、正確な相対位置の算出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明による車載用移動体検出装置の実施形態1を示す構成図。
【図2】図1のカメラの設置例および撮像方向例を示す図。
【図3】(a)、(b)は、図1の第一画像記憶部、第二画像記憶部に記憶する画像例を示す図。
【図4】(a)、(b)は、変化領域抽出部の動作例を示す図。
【図5】自車両周辺の位置情報例を示す図。
【図6】距離情報変換部が備える路面距離マップ例を示す図。
【図7】路面距離マップの適用例を示す図。
【図8】本発明による車載用移動体検出装置の実施形態2を示す構成図。
【図9】本発明による車載用移動体検出装置の実施形態3を示す構成図。
【図10】実施形態3による車載用移動体検出装置において地平線上方部分が除外された画像例を示す図。
【図11】本発明による車載用移動体検出装置の実施形態4を示す構成図。
【図12】実施形態4による車載用移動体検出装置における移動体表示部によって表示された画像例を示す図。
【図13】本発明による車載用移動体検出装置の実施形態5を示す構成図。
【図14】実施形態5による車載用移動体検出装置における距離通知部によって通知された表示例を示す図。
【図15】本発明による車載用移動体検出装置の実施形態6を示す構成図。
【図16】実施形態6による自車両周辺の位置情報例を示す図。
【図17】実施形態6による相対位置算出部が備える相対位置マップ例を示す図。
【図18】実施形態6による車載用移動体検出装置における相対位置表示部による表示例を示す図。
【図19】本発明による車載用移動体検出装置の実施形態7を示す構成図。
【図20】実施形態7による自車両周辺の位置情報例を示す図。
【図21】実施形態7による相対位置補正部による相対位置補正例を示す図。
【図22】本発明による車載用移動体検出装置の実施形態8を示す構成図。
【図23】実施形態8による自車両周辺の位置情報例を示す図。
【図24】実施形態8による相対位置補正部による相対位置補正例を示す図。
【符号の説明】
【0096】
5 カメラ
6 画像信号入力部
7 第一画像記憶部
8 第二画像記憶部
9 変化領域抽出部
10 車速センサ
11 車速信号入力部
12 車両停止判定部
13 距離情報変換部
14 移動体検出部
15 撮像方向
20 抽出された差分成分
20p 移動体として検出された最も自車両に近い座標点
21 自車両
22 画像輝度検出部
23 受光量低減部
24 領域除外部
25 除外された領域
26 移動体表示部
27 検出された移動体
28 距離通知部
29 相対位置算出部
30 相対位置表示部
32 星印によってマーキングされた移動体
33 地形対応相対位置補正部
34 傾斜状態測定部
35 傾斜対応相対位置補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺を撮像するように車両に設置された撮像手段によって撮像された画像から移動体を検出する車載用移動体検出装置であって、
前記撮像手段によって撮像された複数の画像の差分を用いて1つ以上の変化領域を抽出する変化領域抽出手段と、
前記変化領域抽出手段によって抽出された変化領域中の最も自車両に近い座標点を移動体として検出する移動体検出手段と、
を有することを特徴とする車載用移動体検出装置。
【請求項2】
自車両がおおよそ停止状態かどうかであるか否かを判定する停止状態判定手段を有し、
前記変化領域抽出手段は、前記停止状態判定手段によって自車両がおおよそ停止状態と判定された場合にのみ、前記撮像手段によって撮像された複数の画像の差分を用いて1つ以上の変化領域を抽出することを特徴とする請求項1に記載の車載用移動体検出装置。
【請求項3】
前記撮像手段によって撮像された画像中の輝度を検出する画像輝度検出手段と、
前記画像輝度検出手段によって所定値以上の輝度が検出された場合に前記撮像手段の受光量を低減する受光量低減手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車載用移動体検出装置。
【請求項4】
前記変化領域抽出手段に用いる前記画像の地平線上方の領域を除外する領域除外手段を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車載用移動体検出装置。
【請求項5】
前記移動体検出手段によって検出した移動体を前記画像中にマーキングして表示する移動体表示手段を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車載用移動体検出装置。
【請求項6】
前記移動体検出手段によって検出した移動体と自車両との距離を通知する距離通知手段を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車載用移動体検出装置。
【請求項7】
前記移動体検出手段によって検出した移動体の座標点を座標変換し、自車両との相対位置を算出する相対位置算出手段と、
前記相対位置算出手段によって算出された相対位置を表示する相対位置表示手段と、
を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の車載用移動体検出装置。
【請求項8】
自車両周辺の地形情報を用いて前記相対位置算出手段によって算出された相対位置の補正を行う地形対応位置補正手段を有することを特徴とする請求項7に記載の車載用移動体検出装置。
【請求項9】
自車両の傾斜状態を測定する傾斜状態測定手段と、
前記傾斜状態測定手段によって測定された傾斜状態に基づいて前記相対位置算出手段によって算出された相対位置の補正を行う傾斜対応位置補正手段と、
を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の車載用移動体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−181129(P2007−181129A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379995(P2005−379995)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】