説明

送風装置の冷却構造

【課題】ファンを回転させるモータ及びそのモータを駆動するための駆動回路基板を備え、該基板上の回路素子を冷却するための放熱部材にファンの回転により発生した風を当てて冷却するようにした送風装置の冷却構造であって、コストを抑えながら、駆動回路基板への水分の付着を防止すること。
【解決手段】送風装置1は、モータ3にてファン16を回転させて送風動作を行うとともに、そのファン16の回転により発生した風の一部を冷却風としてモータ3内部に導入してモータ3内部を冷却し、モータ3外部に排出する空気流路(分流ダクト19b、送風路18a等)を備えている。そして、モータ3を駆動するための駆動回路基板は、空気流路以外の所定位置に配設され、その基板の回路素子を冷却すべく該素子に当接させた放熱板24は、空気流路内に露出する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モータを駆動するための駆動回路基板を搭載した送風装置の冷却構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両用空調装置の送風装置において、モータと該モータを駆動するための駆動回路基板とを一体化したものがある。しかしながら、駆動回路基板はトランジスタ等、発熱する素子を多数搭載しているため、例えば該基板をハウジング内に収容する構成とした場合、ハウジング内の温度が上昇し、駆動回路が誤動作する虞がある。
【0003】そこで、このような送風装置には、ファンで発生した風の一部を冷却風としてハウジング内に導くためのダクトが設けられている。そして、従来では、トランジスタ等の発熱の多い回路素子を効率よく冷却するため、該回路素子を放熱板に密着させ、その放熱板をハウジングに設けた貫通孔からファン側に直接露出させ、放熱板に対してファンの回転により発生した風を直接当てて該放熱板を冷却するようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、車両用空調装置の送風装置は、車室外の空気を吸い込む場合があって、外気に含まれる湿気や水滴(雪)等を一緒に吸い込むことがある。この場合、このような水分はファンの周囲に飛散するため、ファン側に直接露出させた放熱板には水分が付着し、その水分が放熱板と該放熱板を露出させるための貫通孔との間の隙間からハウジング内部に浸入する。そして、その浸入してきた水分が例えば駆動回路基板に付着すると、該駆動回路をショートさせ故障させる原因となる。
【0005】そこで、従来では、その隙間を全周に亘ってシールするシール材を塗布する等して対応していたが、そのシール材の材料費がかかり、コストが高くなるという問題があった。
【0006】本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ファンを回転させるモータ及びそのモータを駆動するための駆動回路基板を備え、該基板上の回路素子を冷却するための放熱部材にファンの回転により発生した風を当てて冷却するようにした送風装置の冷却構造であって、コストを抑えながら、駆動回路基板への水分の付着を防止することができる送風装置の冷却構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するため、請求項1に記載の発明は、複数の回路素子からなる駆動回路を構成した駆動回路基板を有し、その駆動回路により駆動されるモータにてファンを回転させて送風動作を行うとともに、そのファンの回転により発生した風の一部を冷却風としてモータ内部に導入してモータ内部を冷却し、モータ外部に排出する空気流路を備えた送風装置の冷却構造であって、前記駆動回路基板を、前記空気流路以外の所定位置に配設するとともに、その駆動回路基板の回路素子を冷却すべく該素子に当接させた放熱部材を、前記空気流路内に露出させた。
【0008】請求項2に記載の発明は、複数の回路素子からなる駆動回路を構成した駆動回路基板を有し、その駆動回路により駆動されるモータにてファンを回転させて送風動作を行うとともに、そのファンの回転により発生した風の一部を冷却風としてモータ内部に導入してモータ内部を冷却し、モータ外部に排出する空気流路を備えた送風装置の冷却構造であって、前記駆動回路基板を、前記空気流路以外の所定位置に配設するとともに、その駆動回路基板の回路素子を冷却すべく該素子に当接させた放熱部材を、前記空気流路の壁部の一部とした。
【0009】請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の送風装置の冷却構造において、前記放熱部材は、前記空気流路における前記モータよりも上流側に配置されている。
【0010】請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の送風装置の冷却構造において、前記放熱部材は、前記冷却風の空気流の多い場所に配置されている。
【0011】請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の送風装置の冷却構造において、前記放熱部材は、複数のフィンを有するものであり、そのフィンは、前記冷却風の流れに略平行に設けられている。
【0012】請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の送風装置の冷却構造において、前記駆動回路基板は、前記放熱部材よりも上方に配置されている。
【0013】請求項7に記載の発明は、複数の回路素子からなる駆動回路を構成した駆動回路基板を有し、その駆動回路により駆動されるモータにてファンを回転させて送風動作を行うとともに、そのファンの回転により発生した風の一部を冷却風としてモータ内部に導入してモータ内部を冷却し、モータ外部に排出する空気流路を備えた送風装置の冷却構造であって、前記駆動回路基板を、前記空気流路以外の所定位置に配設するとともに、その駆動回路基板の回路素子を冷却すべく該素子に当接させた放熱部材を、前記空気流路内及び前記ファン側に露出させた。
【0014】請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の送風装置の冷却構造において、前記放熱部材の前記ファン側に露出させる部位は、前記ファンよりも径方向内側に配置されている。
【0015】(作用)請求項1に記載の発明によれば、送風装置は、モータにてファンを回転させて送風動作を行うとともに、そのファンの回転により発生した風の一部を冷却風としてモータ内部に導入してモータ内部を冷却し、モータ外部に排出する空気流路を備えている。そして、モータを駆動するための駆動回路基板は、空気流路以外の所定位置に配設され、その駆動回路基板の回路素子を冷却すべく該素子に当接させた放熱部材は、空気流路内に露出する。そのため、放熱部材にはファンで発生した風が直接当たるのではなく、その風の一部が空気流路を介して間接的に当たるので、ファンが水分を含んだ空気を吸い込んだ場合であっても、その水分が放熱部材に到達することが極めて少なくなる。しかも、駆動回路基板は空気流路以外の位置に配設されるので、該基板に水分が付着することが防止される。その結果、放熱部材と該放熱部材を空気流路内に露出させたるための孔(開口)との隙間をシールするシール材が特に必要なく、そのシール材にかかる材料費を低減でき、コスト低減を図ることができる。
【0016】請求項2に記載の発明によれば、送風装置は、モータにてファンを回転させて送風動作を行うとともに、そのファンの回転により発生した風の一部を冷却風としてモータ内部に導入してモータ内部を冷却し、モータ外部に排出する空気流路を備えている。そして、モータを駆動するための駆動回路基板は、空気流路以外の所定位置に配設され、その駆動回路基板の回路素子を冷却すべく該素子に当接させた放熱部材は、空気流路の壁部の一部を構成し、該空気流路内に露出する。そのため、放熱部材にはファンで発生した風が直接当たるのではなく、その風の一部が空気流路を介して間接的に当たるので、ファンが水分を含んだ空気を吸い込んだ場合であっても、その水分が放熱部材に到達することが極めて少なくなる。しかも、駆動回路基板は空気流路以外の位置に配設されるので、該基板に水分が付着することが防止される。その結果、放熱部材と該放熱部材を空気流路内に露出させたるための孔(開口)との隙間をシールするシール材が特に必要なく、そのシール材にかかる材料費を低減でき、コスト低減を図ることができる。
【0017】請求項3に記載の発明によれば、放熱部材は空気流路におけるモータよりも上流側に配置されるので、より冷たい冷却風が放熱部材に当たり、放熱部材の放熱効果が高いものになる。そのため、モータより熱に弱い回路素子が確実に冷却される。
【0018】請求項4に記載の発明によれば、放熱部材は冷却風の空気流の多い場所に配置されるので、放熱部材の放熱効果が高くなる。請求項5に記載の発明によれば、放熱部材に設けた複数のフィンは冷却風の流れに略平行に設けられるので、冷却風に対する抵抗が小さく、モータの内部に十分な冷却風を供給できる。
【0019】請求項6に記載の発明によれば、駆動回路基板は放熱部材よりも上方に配置されるので、万一、放熱部材に水分が付着しても、その水分が放熱部材を伝って回路基板に到達することが確実に防止される。
【0020】請求項7に記載の発明によれば、送風装置は、モータにてファンを回転させて送風動作を行うとともに、そのファンの回転により発生した風の一部を冷却風としてモータ内部に導入してモータ内部を冷却し、モータ外部に排出する空気流路を備えている。そして、モータを駆動するための駆動回路基板は、空気流路以外の所定位置に配設され、その駆動回路基板の回路素子を冷却すべく該素子に当接させた放熱部材は、空気流路内及びファン側に露出する。そのため、放熱部材の空気流路内に露出する部位にはファンで発生した風が直接当たるのではなく、その風の一部が空気流路を介して間接的に当たるので、ファンが水分を含んだ空気を吸い込んだ場合であっても、その水分が該部位に到達することが極めて少なくなる。しかも、駆動回路基板は空気流路以外の位置に配設されるので、該基板に水分が付着することが防止される。又、この場合、放熱部材の空気流路内に露出する部位と該部位を空気流路内に露出させたるための孔(開口)との隙間をシールするシール材が特に必要ない。しかも、この放熱部材は、空気流路内及びファン側との2箇所で露出するので、放熱部材に冷却風が当たる面積が増大し、放熱部材の放熱性は高い。そのため、放熱部材をファン側にのみ露出させる従来と比べて、放熱部材をファン側に露出させるための孔(開口)を小さくすることが可能となる。その結果、放熱部材と開口との隙間をシールするシール材が少なくてすみ、材料費を低減でき、コスト低減を図ることができる。
【0021】請求項8に記載の発明によれば、放熱部材のファン側に露出させる部位がファンよりも径方向内側に配置されるので、送風装置の径方向外側への突出を防止でき、該装置の小型化を図ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。図1は、車両用空調装置の送風装置1を示す。空調装置に取り付けるためのモータホルダ2には、その中央部に略有底円筒状の収容部2aが形成され、該収容部2aの外周に円盤状のフランジ部2bが形成されている。この収容部2aには、送風装置1の駆動源であるモータ3が収容保持されている。
【0023】モータ3は、略有底円筒状のヨークハウジング4を備えている。ヨークハウジング4は、その底部が前記モータホルダ2に対してネジ5等で固定されている。ヨークハウジング4の内周面には、マグネット6が固定されている。マグネット6の内側には、アーマチャ7が回転可能に収容されている。アーマチャ7の回転軸8の下端部は、ヨークハウジング4の底部に設けた軸受9により回転可能に支持されている。
【0024】ヨークハウジング4の上部開口部には、カバー10が装着されている。尚、このカバー10とヨークハウジング4の上部開口部との間には、開口11を有している。カバー10には、回転軸8の上部側を回転可能に支持する軸受12が備えられている。又、このカバー10にはブラシホルダ13が備えられており、該ブラシホルダ13には、アーマチャ7のコンミテータ14に摺接するブラシ15が保持されている。ブラシ15は、外部駆動電源(図示略)に接続されており、コンミテータ14を介してアーマチャ7に電源を供給するようになっている。そして、回転軸8のカバー10から突出した上端部にはファン16が固定されている。
【0025】前記ヨークハウジング4の底部には、該ハウジング4の内外を貫通する貫通孔4aが形成されている。又、ヨークハウジング4の底部及びモータホルダ2の収容部2aの底部との間には、その貫通孔4aと連通する連通通路17が形成されている。
【0026】前記モータホルダ2には、送風路部材18が収容部2aの外側面及び前記フランジ部2bの下面と密着するように装着されている。この送風路部材18は、フランジ部2bの外縁部に設けた連通孔2cと前記連通通路17とを接続する送風路18aを有している。ここで、連通孔2cは上下方向に延び、送風路18aはその連通孔2cから斜め下方に略直線状に延びている。又、送風路18aの底部18bの中央部には、後述する放熱板24を挿入するための挿入孔18cが形成されている。
【0027】前記フランジ部2bの上面2dには、前記ファン16の周囲を覆うブロワケース19が装着される。このブロワケース19の上部には車室内又は車室外の空気を導入する導入ダクト(図示略)に連設される空気取込口19aが形成され、その側面には送風ダクト(図示略)に連設される送風口(図示略)が形成されている。そして、ファン16が回転すると、空気取込口19aから取り込まれた空気が送風口に導かれ、送風ダクト、空調装置を介して車室内に送られるようになっている。
【0028】又、ブロワケース19には、その空気取込口19aから導入された空気の一部をモータ3内部及び後述する放熱板24を冷却するための冷却風として分流させる分流ダクト19bが形成されている。分流ダクト19bは、ファン16の上部側に設けられる上流側開口19cから上下方向に直線状に延び、下流側開口19dが前記フランジ部2bの連通孔2cに接続されている。
【0029】そして、分流ダクト19b内に導入された冷却風は、連通孔2c、送風路18a、連通通路17及びヨークハウジング4の貫通孔4aを介してモータ3内部に供給される。尚、モータ3内部に流れ込んだ冷却風は、モータ3内部を冷却し、ファン16の回転により負圧になるモータ3の上部の開口11から放出される。
【0030】図2に示すように、前記フランジ部2bの下面2eには、所定形状の駆動回路基板20が固定されている。このフランジ部2bの下面2eは、ファン16の送風路とは独立しているため、ファン16の回転により湿気や水滴(雪)等を吸い込んでも、その水分が付着しない場所である。駆動回路基板20には、コイル21、コンデンサ22、2個のトランジスタ23等、種々の回路素子が所定の位置にそれぞれ搭載され、モータ3を駆動するための駆動回路が構成されている。ここで、このトランジスタ23は、他の素子と比べて発熱の多い回路素子である。トランジスタ23は、熱伝導性の高い金属材料よりなる放熱板24に密着するようにネジ25にて固定されている。従って、トランジスタ23から発生した熱は、放熱板24に伝導する。
【0031】図1〜図3に示すように、放熱板24は、前記駆動回路基板20の搭載面20aに対して下方に垂直に延び前記トランジスタ23を固定するための固定部24aと、該固定部24aから略直交する方向に延び該固定部24aから伝わってきた熱を放熱する放熱部24bとを備えている。放熱部24bは、前記送風路18aに設けた挿入孔18cに嵌挿され底部18bの一部を構成し、該送風路18a内に露出している。
【0032】放熱部24bの送風路18a内に露出する部分には、複数の板状のフィン24cが上方に向けて立設されている。又、各フィン24cは、送風路18aの延びる方向、即ち冷却風の進む方向に平行に延びるように形成されている。そして、送風路18aを流れる冷却風が各フィン24cに当たることにより放熱板24が冷却され、前記トランジスタ23を冷却するようになっている。又、この場合、各フィン24cを冷却風の進む方向と平行に形成したので、送風路18aを流れる冷却風の抵抗が大きく増大しないようになっている。
【0033】このように構成された送風装置1では、駆動回路の動作に基づいてモータ3が回転するとファン16が回転し、送風動作が行われる。このとき、ファン16により発生した風の一部は、冷却風として分流ダクト19b内に流れ込み、送風路18a、連通通路17及びヨークハウジング4の貫通孔4aを介してモータ3内部に供給され、その後、ファン16の回転により負圧になるモータ3の上部の開口11から放出される。このような冷却風(図1に矢印にて示す)は、送風路18aを通過する際に、放熱板24(フィン24c)を冷却してトランジスタ23を冷却し、モータ3内部を通過する際に、モータ3内部、具体的にはアーマチャ7のコイルやブラシ15、コンミテータ14等、各種モータ構成部品を冷却する。
【0034】ここで、ファン16の回転により外気に含まれる湿気や水滴(雪)等を一緒に吸い込んだ場合、その水分はファン16の周囲に飛散する。しかしながら、本実施形態の放熱板24は、ファン16側に直接露出せず送風路18a内で露出させてファン16で発生した風が間接的に当たるようにしたので、飛散した水分が該放熱板24に到達することが極めて少なくなる。しかも、万一、分流ダクト19b内に水分が飛散し該ダクト19b及び送風路18aを伝って放熱板24に到達しても、駆動回路基板20は放熱板24より上方に位置しているので、その水分が放熱板24を伝って回路基板20まで到達することを確実に防止できる。従って、駆動回路基板20に水分が付着することを確実に防止でき、駆動回路のショート故障を防止することができる。
【0035】又、図1に示すように、送風路18a内の冷却風の流れを矢印A1及び矢印A2で示すと、送風路18aの底部18b側の冷却風(矢印A1)は、該送風路18aの上部側の冷却風(矢印A2)と比べて空気流が多い。これは、送風路18aが分流ダクト19bに対して屈曲しているために、冷却風が送風路18aの底部18b沿いに主に流れるためである。従って、送風路18aの底部18bに位置する放熱板24の放熱効果は高い。しかも、この放熱板24はモータ3よりも上流側に位置しているので、より冷たい冷却風が放熱板24に当たり、放熱板24の放熱効果は高い。従って、モータ3より熱に弱い回路素子(トランジスタ23)を確実に冷却することができる。更に、この放熱板24に設けたフィン24cは冷却風の進む方向と平行に設けたので、冷却風に対する抵抗を小さくでき、モータ3の内部に十分な冷却風を供給することができる。
【0036】上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態では、駆動回路基板20を、モータホルダ2のフランジ部2bの下面2e、即ちファン16で発生した冷却風の空気流路以外の場所に配設するとともに、その駆動回路基板20上のトランジスタ23を冷却すべく該トランジスタ23に当接させた放熱板24を、その空気流路を構成する送風路18aの壁部の一部とし、該送風路18a内に露出させた。そのため、放熱板24にはファン16で発生した風が直接当たるのではなく、その風の一部が分流ダクト19b及び送風路18aを介して間接的に当たるので、ファン16が水分を含んだ空気を吸い込んだ場合であっても、その水分が放熱板24に到達することが極めて少なくなる。しかも、駆動回路基板20は空気流路以外の位置に配設されるので、該基板20に水分が付着することを防止でき、駆動回路のショート故障を防止することができる。又、この場合、放熱板24と該放熱板24を挿入する挿入孔18cとの隙間をシールするシール材が特に必要なく、そのシール材にかかる材料費を低減でき、コスト低減を図ることができる。
【0037】(2)本実施形態では、放熱板24を空気流路におけるモータ3よりも上流側に配置した。そのため、より冷たい冷却風を放熱板24に当てることができるので、放熱板24の放熱効果を高くすることができる。従って、モータ3より熱に弱い回路素子(トランジスタ23)を確実に冷却することができる。
【0038】(3)本実施形態では、放熱板24を冷却風の空気流の多い送風路18aの底部18bに配置した。そのため、放熱板24の放熱効果を高くすることができる。
【0039】(4)本実施形態では、放熱板24に設けた複数のフィン24cを冷却風の流れに略平行に設けた。そのため、冷却風に対する抵抗を小さくでき、モータ3の内部に十分な冷却風を供給することができる。
【0040】(5)本実施形態では、駆動回路基板20を放熱板24よりも上方に配置した。そのため、万一、放熱板24に水分が付着しても、その水分が放熱板24を伝って回路基板20に到達することを確実に防止することができる。
【0041】尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
○上記実施形態では、放熱板24を送風路部材18の底部18bに設けた挿入孔18cに嵌挿して該底部18bの一部となるように構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、図4及び図5に示すように変更してもよい。
【0042】図4及び図5に示すように、放熱板26は、駆動回路基板20の搭載面20aに対して下方に垂直に延びトランジスタ23を固定するための固定部26aと、該固定部26aから送風路部材18の側壁を挟むように上方に屈曲された放熱部26bとを備えている。又、この放熱部26bには、複数の板状のフィン26cが送風路18aの延びる方向、即ち冷却風の進む方向に平行に延びるように該放熱部26bに対して垂直に立設されている。そして、送風路部材18の底部18bに設けた挿入孔18dに放熱部26bが嵌挿され、放熱部26bは送風路18a内に露出される。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】又、放熱板24は送風路18a内に露出させたが、放熱板24を送風路18a以外の冷却風が流れる空気流路内に露出するようにしてもよい。又、放熱板24をモータ3よりも上流側に配置したが、モータ3よりも下流側に空気流路を設け、その空気流路に放熱板を配置してもよい。
【0044】又、放熱板24の形状はこれに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。例えば、フィン24cを板状とし冷却風の進む方向に平行に形成したが、平行でなくてもよく、波状、棒状に形成してもよい。
【0045】又、図6及び図7に示すように変更してもよい。図6及び図7に示すように、モータホルダ2の円筒状の収容部2aには、上記実施形態と同様、ファン16を回転させるモータ3が収容されている。モータホルダ2のフランジ部2bの下面2e側には、駆動回路基板30が取り付けられている。回路基板30には図示しないがトランジスタ31が備えられており、該トランジスタ31は放熱板32に固定されている。放熱板32は、フランジ部2bの外周側に位置する送風路部材33の冷却風取り入れ口33aの近傍位置に配置され、送風路部材33の内側壁に設けた挿入孔33bとフランジ部2bの上面2dに設けた開口2fからそれぞれ所定部位32a,32bが露出されている。尚、放熱板32の挿入孔33bから送風路33c内に露出する部位32aは、送風路部材33の取り入れ口33aの近傍位置で露出している。又、放熱板32の開口2fからファン16側に露出する部位32bは、ファン16の外周側下面に対向している。そして、放熱板32と開口2fと隙間には、該隙間を全周に亘ってシールするためのシール材34が塗布されている。
【0046】このように放熱板32と開口2fとの隙間にシール材34を塗布することにより、該隙間から回路基板30側に水分が浸入することを防止できる。又、放熱板32の送風路33c内に露出する部位32aには、ファン16で発生した風が直接当たるのではなく、その風の一部が分流ダクト19b及び送風路33cを介して間接的に当たるので、上記実施形態と同様、水分が到達することが極めて少ない。そのため、この部位32aには、シール材34を省略することができる。更に、回路基板30がファン16の送風路とは独立したフランジ部2bの下面2eに取り付けられているので、該回路基板30には水分が到達しない。これにより、回路基板30に水分が付着することによる駆動回路のショート故障を防止することができる。又、この場合、放熱板32の該部位32aと挿入孔33cとの隙間をシールするシール材が特に必要ない。
【0047】しかも、本形態では、放熱板32のファン16側に露出する部位32bがファン16の回転により発生する風が直接当たって冷却され、送風路33c内に露出する部位32aが送風路部材33を通過する冷却風が当たって冷却される。つまり、放熱板32に冷却風が当たる面積が増大するので、放熱板32の放熱性は高く、トランジスタ31を確実に冷却することができる。又、送風路33c内に露出する部位32aが送風路部材33の取り入れ口33aの近傍位置で露出されるので、この取り入れ口33a近傍は送風路33c内で空気流が多く、放熱板32の放熱性が高い。
【0048】そのため、放熱板をファン側にのみ露出させる従来と比べて、本形態では、放熱板32をファン16側に露出させるための開口2fを小さくすることが可能となる。その結果、開口2fが小さくてすむので、放熱板32と開口2fとの隙間をシールするシール材34が少なくてすみ、材料費を低減でき、コスト低減を図ることができる。
【0049】又、本形態では、上記したように放熱板32の放熱性が向上するので、発熱が大きい安価なトランジスタを使用することが可能となる。そのため、コスト低減を図ることができる。
【0050】又、放熱板32のファン16側に露出する部位32bは、ファン16の外周側下面に対向している。つまり、放熱板32の該部位32bをファン16の径方向内側に配置しているので、モータホルダ2(フランジ部2b)の径方向外側に突出させる必要がなく、径方向外側への大型化を防止できる。しかも、回路基板30及び放熱板32を用いない送風装置のモータホルダと共通化できるので、コストの上昇を抑えることができる。
【0051】更に、図8の模式図に示すように、ブロワケース19は、放熱板32が配置される近傍からその径が反時計回り方向に次第に大きくなっていき、放熱板32の手前で送風口19eが設けられている。そのため、送風装置1の駆動により発生するブロワケース19内の風は、図中矢印で示すように反時計回り方向に流れ、送風口19eに導かれる。そして、このようなブロワケース19内の風速を、放熱板32が配置される位置D1、該位置D1から反時計回り方向にそれぞれ90°間隔ずらした位置D2〜D4の4箇所で計測してみた。すると、放熱板32が配置される位置D1の風速が、他の位置D2〜D4と比べて最も速かった。これは、位置D1におけるブロワケース19の径が小さいためである。つまり、本形態では、風速がより速い位置D1に放熱板32を配置したため、該放熱板32の冷却効果が高い。
【0052】○上記実施形態では、トランジスタ23を放熱板24により冷却するようにしたが、その他の回路素子であってもよい。
○上記実施形態では、送風路部材18を別体としたが、モータホルダ2に一体に形成してもよい。
【0053】○上記実施形態では、ブラシ15を有するモータ3であったが、ブラシ15を備えていないブラシレスモータであってもよい。
○上記実施形態では、送風装置1を車両用空調装置に用いたが、該送風装置1を車両用空調装置以外の装置に用いてもよい。
【0054】上記各実施形態から把握できる請求項以外の技術的思想を以下に記載する。
(イ) 請求項1〜8のいずれか1項に記載の送風装置を備えたことを特徴とする車両用空調装置。
【0055】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、ファンを回転させるモータ及びそのモータを駆動するための駆動回路基板を備え、該基板上の回路素子を冷却するための放熱部材にファンの回転により発生した風を当てて冷却するようにした送風装置の冷却構造であって、コストを抑えながら、駆動回路基板への水分の付着を防止することができる送風装置の冷却構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態の送風装置の断面図である。
【図2】 送風装置の底面図である。
【図3】 図2のB−B断面図である。
【図4】 別例の送風装置の底面図である。
【図5】 図4のC−C断面図である。
【図6】 別例の送風装置の一部破断断面図である。
【図7】 送風装置の底面図である。
【図8】 送風装置の模式図である。
【符号の説明】
1…送風装置、3…モータ、16…ファン、17…空気流路を構成する連通通路、18a,33c…空気流路を構成する送風路、18b…壁部としての底部、19b…空気流路を構成する分流ダクト、20,30…駆動回路基板、23…回路素子としてのトランジスタ、24,26,32…放熱部材としての放熱板、24c,26c…フィン、32b…部位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の回路素子からなる駆動回路を構成した駆動回路基板を有し、その駆動回路により駆動されるモータにてファンを回転させて送風動作を行うとともに、そのファンの回転により発生した風の一部を冷却風としてモータ内部に導入してモータ内部を冷却し、モータ外部に排出する空気流路を備えた送風装置の冷却構造であって、前記駆動回路基板を、前記空気流路以外の所定位置に配設するとともに、その駆動回路基板の回路素子を冷却すべく該素子に当接させた放熱部材を、前記空気流路内に露出させたことを特徴とする送風装置の冷却構造。
【請求項2】 複数の回路素子からなる駆動回路を構成した駆動回路基板を有し、その駆動回路により駆動されるモータにてファンを回転させて送風動作を行うとともに、そのファンの回転により発生した風の一部を冷却風としてモータ内部に導入してモータ内部を冷却し、モータ外部に排出する空気流路を備えた送風装置の冷却構造であって、前記駆動回路基板を、前記空気流路以外の所定位置に配設するとともに、その駆動回路基板の回路素子を冷却すべく該素子に当接させた放熱部材を、前記空気流路の壁部の一部としたことを特徴とする送風装置の冷却構造。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の送風装置の冷却構造において、前記放熱部材は、前記空気流路における前記モータよりも上流側に配置されていることを特徴とする送風装置の冷却構造。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の送風装置の冷却構造において、前記放熱部材は、前記冷却風の空気流の多い場所に配置されていることを特徴とする送風装置の冷却構造。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の送風装置の冷却構造において、前記放熱部材は、複数のフィンを有するものであり、そのフィンは、前記冷却風の流れに略平行に設けられていることを特徴とする送風装置の冷却構造。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の送風装置の冷却構造において、前記駆動回路基板は、前記放熱部材よりも上方に配置されていることを特徴とする送風装置の冷却構造。
【請求項7】 複数の回路素子からなる駆動回路を構成した駆動回路基板を有し、その駆動回路により駆動されるモータにてファンを回転させて送風動作を行うとともに、そのファンの回転により発生した風の一部を冷却風としてモータ内部に導入してモータ内部を冷却し、モータ外部に排出する空気流路を備えた送風装置の冷却構造であって、前記駆動回路基板を、前記空気流路以外の所定位置に配設するとともに、その駆動回路基板の回路素子を冷却すべく該素子に当接させた放熱部材を、前記空気流路内及び前記ファン側に露出させたことを特徴とする送風装置の冷却構造。
【請求項8】 請求項7に記載の送風装置の冷却構造において、前記放熱部材の前記ファン側に露出させる部位は、前記ファンよりも径方向内側に配置されていることを特徴とする送風装置の冷却構造。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2002−335647(P2002−335647A)
【公開日】平成14年11月22日(2002.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−44801(P2002−44801)
【出願日】平成14年2月21日(2002.2.21)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】