説明

遊星差動式動力装置

【課題】サンシャフトに作用する軸方向の荷重の影響によってロータが回転駆動されサンシャフトが軸方向に変位することを抑制することのできる遊星差動式動力装置を提供する。
【解決手段】遊星差動式動力装置は、ロータ10とサンシャフト20との間に複数のプラネタリシャフト30を介装し、プラネタリシャフト30の外周面に設けられた螺子31をロータ10の内周面に設けられた螺子11とサンシャフト20の外周面に設けられた螺子21との双方に螺合させて各部材を噛合させた遊星差動式運動変換機構100を具備している。この遊星差動式動力装置にあっては、ハウジング1とロータ10との間にロータ10の外周面に摺動可能に当接し、ロータ10の回転抵抗を増大させる摩擦リップ40aを備えるオイルシール40が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円環状のロータと、このロータに内挿されるサンシャフトと、これらロータ及びサンシャフトの間に介装されるプラネタリシャフトとを備え、これらの各部材に形成されて互いに噛合する螺子の作用を利用してロータの回転運動をサンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構を具備する遊星差動式動力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの回転力を利用して制御軸をその軸方向に変位させる動力装置には、モータの回転運動を制御軸の直線運動に変換する運動変換機構が搭載されている。例えば、こうした運動変換機構として、特許文献1には、モータによって回転駆動される円環状のロータにサンシャフトを内挿し、これらロータとサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装させるとともに、各部材にそれぞれ設けられた螺子を互いに噛合させた遊星差動式の運動変換機構が記載されている。
【0003】
この遊星差動式運動変換機構は、いわゆる差動螺子を有しており、プラネタリシャフトに形成された螺子とサンシャフトに形成された螺子とのリード角が異なっている。これにより、ロータの回転運動に伴ってプラネタリシャフトがサンシャフトの外周面上を転動すると、このリード角の違いの分だけサンシャフトが軸方向に変位するようになる。
【0004】
このように差動螺子を利用してロータの回転運動をサンシャフトの直線運動に変換する運動変換機構を具備する遊星差動式動力装置によれば、逆効率を低くすることができ、サンシャフトに軸方向の荷重が作用する場合であっても、その荷重の影響でプラネタリシャフト及びロータが回転駆動されることを抑制することができる。すなわち、サンシャフトに軸方向の荷重が作用している場合であっても、モータの駆動量に対応して高い精度でサンシャフトの位置を制御することができるようになる。
【特許文献1】特開2007‐139164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような遊星差動式動力装置にあっても、サンシャフトに作用する荷重の影響を完全になくすことはできない。そのため、特にモータへの通電が停止されているとき等にあっては、サンシャフトに作用する荷重の影響によってプラネタリシャフト及びロータが回転駆動されてサンシャフトが変位するおそれがある。
【0006】
また、潤滑油の粘性が低くなる機関高温時には、潤滑油の粘性による抵抗力や各部のフリクションが小さくなるため、サンシャフトの位置を保持する作用が特に小さくなり、こうした課題がより顕著になる。
【0007】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的はサンシャフトに作用する軸方向の荷重の影響によってロータが回転駆動されサンシャフトが軸方向に変位することを抑制することのできる遊星差動式動力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、同プラネタリシャフトの外周面に設けられた螺子を前記ロータの内周面に設けられた螺子と前記サンシャフトの外周面に設けられた螺子との双方に螺合させて各部材を噛合させ、前記プラネタリシャフトの螺子のリード角とこれに噛合する前記サンシャフトの螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構を具備し、モータの駆動力によって前記ロータを回転させることにより前記サンシャフトを軸方向に変位させる遊星差動式動力装置であって、前記ロータの外周面及び前記ロータを回動可能に支持するハウジングの内周面のいずれか一方に固定されて他方に摺動可能に当接し、前記ロータの回転抵抗を増大させる摩擦部材を備えることをその要旨とする。
【0009】
上記構成にあっては、ロータの外周面とハウジングの内周面との間に摩擦部材が設けられている。そして、この摩擦部材がロータの外周面及びハウジングの内周面のいずれか一方に固定されて、他方に摺動可能に当接している。そのため、上記構成によれば、ロータの外周面又はハウジングの内周面と、この摩擦部材とが当接している部分に生じる摩擦力によってロータの回転抵抗が増大されることとなる。これにより、サンシャフトに軸方向の荷重が作用してもロータが回転しにくくなり、サンシャフトに作用する軸方向の荷重の影響によってロータが回転駆動されサンシャフトが軸方向に変位することを抑制することができるようになる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遊星差動式動力装置において、前記摩擦部材は、前記ロータと前記ハウジングとの間に設けられたオイルシールから延びる摩擦リップとして同オイルシールと一体に形成されてなることをその要旨とする。
【0011】
摩擦部材の具体的な構成としては、上記請求項2に記載の発明によるように、同摩擦部材をロータとハウジングとの間に設けられたオイルシールと一体に形成し、オイルシールから延びる摩擦リップとして形成する構成を採用することができる。こうした構成を採用すれば、オイルシールとは別に、各別の部材として摩擦部材を設けることなく、オイルシールの形状を一部変更することによってロータの回転抵抗を増大させることができる。すなわち、部品点数の増加を抑制しつつ、サンシャフトに作用する軸方向の荷重の影響によってロータが回転駆動されサンシャフトが軸方向に変位することを抑制することができるようになる。
【0012】
また、この摩擦リップが設けられていることによってオイルシールにおける潤滑油のシール性が更に向上することとなる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の遊星差動式動力装置において、前記摩擦部材は、前記ロータの外周面に固定されて前記ハウジングの内周面に摺動可能に当接するように形成されてなることをその要旨とする。
【0013】
また、摩擦部材は、上記請求項3に記載されているようにハウジングの内周面に当接するようにロータの外周面に固定することが望ましい。これは、ハウジングの内周面に摺動可能に当接するように摩擦部材を設けることにより、ロータの外周面に摺動可能に当接するように摩擦部材を設けた場合と比較して摩擦部材の当接により摩擦力が発生する部分の面積をより大きくすることができるためである。すなわち、上記請求項3に記載の構成によれば、ロータの外周面に摺動可能に当接するように摩擦部材を設けた場合と比較してロータの回転抵抗をより大きくすることができるようになり、サンシャフトに作用する軸方向の荷重の影響によるロータの回転駆動をより効果的に抑制することができるようになる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、同プラネタリシャフトの外周面に設けられた螺子を前記ロータの内周面に設けられた螺子と前記サンシャフトの外周面に設けられた螺子との双方に螺合させて各部材を噛合させ、前記プラネタリシャフトの螺子のリード角とこれと噛合する前記サンシャフトの螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構を具備し、モータの駆動力によって前記ロータを回転させることにより前記サンシャフトを軸方向に変位させる遊星差動式動力装置であって、前記ロータには同ロータの回転角を検出する回転角センサを取り付ける鍔状のセンサプレートが固定されており、前記ロータを回動可能に支持するハウジングには同センサプレートに当接し、前記ロータの回転抵抗を増大させるブレーキ機構が設けられていることをその要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、ハウジングに設けられたブレーキ機構が、ロータに固定されたセンサプレートに当接することにより、ブレーキ機構とセンサプレートとの間に摩擦が生じるようになり、ロータの回転抵抗が増大されることとなる。これにより、サンシャフトに軸方向の荷重が作用してもロータが回転しにくくなり、サンシャフトに作用する軸方向の荷重の影響によってロータが回転駆動されサンシャフトが軸方向に変位することを抑制することができるようになる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の遊星差動式動力装置において、前記ブレーキ機構は、温度が高いときに前記センサプレートに当接する一方、温度が低いときには前記センサプレートから離間するように温度に応じて変形する当接部材を備えてなり、温度が高いときには同当接部材が前記センサプレートに当接して前記ロータの回転抵抗を増大させる一方、温度が低いときには前記当接部材が前記センサプレートから離間して前記ロータの回転抵抗を減少させることをその要旨とする。
【0017】
遊星差動式動力装置にあっては、潤滑油の粘性が低くなる高温時には潤滑油の粘性による抵抗力や各部のフリクションが小さくなり、サンシャフトの位置を保持する作用が小さくなる。これに対して上記構成によれば、このようにサンシャフトの位置を保持する作用が特に小さくなる高温時に当接部材がセンサプレートに当接してロータの回転抵抗が増大するようになる。そのため、サンシャフトの位置を保持する作用を増大させることができ、潤滑油の粘性の低下に起因するサンシャフトの位置を保持する作用の低下を補ってサンシャフトに作用する軸方向の荷重の影響によるロータの回転駆動を好適に抑制することができる。
【0018】
また、潤滑油の粘性が高く、サンシャフトの位置を保持する作用が十分に大きい低温時には当接部材がセンサプレートから離間するようになるため、ロータの回転抵抗が必要以上に増大されることが抑制され、モータの駆動力によってサンシャフトを変位させる際のロータの駆動負荷が増大してしまうことを極力抑制することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の遊星差動式動力装置において、前記ブレーキ機構は、非通電状態のときに前記センサプレートに当接する一方、通電状態のときに前記センサプレートから離間するように電気的に制御されることをその要旨とする。
【0020】
また、モータへの通電が停止されている機関停止時等にあっては、サンシャフトに作用する荷重の影響によってプラネタリシャフト及びロータが回転駆動されやすく、サンシャフトが特に変位しやすい。これに対して上記請求項6に記載の構成のように、ブレーキ機構を電気的に制御可能とし、非通電状態のときに前記センサプレートに当接する一方、通電状態のときに前記センサプレートから離間するようにこれを制御する構成を採用すれば、機関停止時等のような非通電状態のときにブレーキ機構をセンサプレートに当接させてロータの回転抵抗を増大させ、サンシャフトに作用する軸方向の荷重の影響によるロータの回転駆動を好適に抑制することができる。
【0021】
また、モータへの通電が実行されてサンシャフトを変位させる通電状態のときには、同ブレーキ機構がセンサプレートから離間する。そのため、このときにはロータの回転抵抗を減少させることができ、モータの駆動力によってサンシャフトを変位させるときには、その駆動負荷を低減することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、同プラネタリシャフトの外周面に設けられた螺子を前記ロータの内周面に設けられた螺子と前記サンシャフトの外周面に設けられた螺子との双方に螺合させて各部材を噛合させ、前記プラネタリシャフトの螺子のリード角とこれと噛合する前記サンシャフトの螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構を具備し、モータの駆動力によって前記ロータを回転させることにより前記サンシャフトを軸方向に変位させる遊星差動式動力装置であって、前記ロータを回動可能に支持するハウジングの内周面に、前記ロータの外周面に当接して同ロータの回転抵抗を増大させる状態と、前記ロータの外周面から離間して同ロータの回転抵抗を減少させる状態とを切り替え可能なブレーキ機構が設けられていることをその要旨とする。
【0023】
また、上記請求項7に記載の発明のように、ロータの外周面に当接するブレーキ機構をハウジングの内周面に設ける構成を採用することもできる。こうした構成を採用した場合にも、ブレーキ機構をロータに当接させてロータの回転抵抗を増大させることによってサンシャフトの変位を抑制する一方、モータの駆動力によってサンシャフトを変位させる際にはブレーキ機構をロータから離間させてその駆動負荷を低減することができるようになる。
【0024】
尚、ブレーキ機構の具体的な構成は上記請求項5又は請求項6に記載されている構成と同様に温度に応じて変形する当接部材を設ける構成や、電気的に制御されるブレーキ機構を設ける構成を採用することができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、同プラネタリシャフトの外周面に設けられた螺子を前記ロータの内周面に設けられた螺子と前記サンシャフトの外周面に設けられた螺子との双方に螺合させて各部材を噛合させ、前記プラネタリシャフトの螺子のリード角とこれと噛合する前記サンシャフトの螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構を具備し、モータの駆動力によって前記ロータを回転させることにより前記サンシャフトを軸方向に変位させる遊星差動式動力装置であって、電気的に制御されて非通電状態のときに前記ロータに当接し、前記サンシャフトの軸線の延伸方向に対して前記ロータを傾けるように同ロータを押圧する一方、通電状態のときに前記ロータから離間するように変位する押圧機構を備えることをその要旨とする。
【0026】
上記構成によれば、非通電状態のときには押圧機構がロータに当接し、ロータを傾けるように同ロータを押圧する。
遊星差動式動力装置にあっては、ロータとプラネタリシャフトとサンシャフトとがそれぞれに形成された螺子によって互いに噛合されている。そのため、ロータが傾くと、これらの螺子が傾いた状態で噛合することとなり、ロータが回転しにくくなる。すなわち、上記請求項8に記載の構成によれば、非通電状態のときに押圧機構がロータを傾けるように同ロータを押圧するため、非通電状態のときにはロータが回転しにくくなり、サンシャフトに作用する軸方向の荷重の影響による同ロータの回転が抑制されるようになる。
【0027】
また一方で、通電状態にあり、モータによってロータを回転駆動してサンシャフトを変位させるときには、押圧機構がロータから離間するようになる。そのため、モータの駆動力によってサンシャフトを変位させる際にはロータを押圧せずにその駆動負荷を低減させることができる。
【0028】
請求項9に記載の発明は、円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、同プラネタリシャフトの外周面に設けられた螺子を前記ロータの内周面に設けられた螺子と前記サンシャフトの外周面に設けられた螺子との双方に螺合させて各部材を噛合させ、前記プラネタリシャフトの螺子のリード角とこれと噛合する前記サンシャフトの螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構を具備し、モータの駆動力によって前記ロータを回転させることにより前記サンシャフトを軸方向に変位させる遊星差動式動力装置であって、電気的に制御されて非通電状態のときに前記プラネタリシャフトに当接し、前記サンシャフトの軸線の延伸方向に対して前記プラネタリシャフトを傾けるように同プラネタリシャフトを押圧する一方、通電状態のときに前記プラネタリシャフトから離間するように変位する押圧機構を備えることをその要旨とする。
【0029】
上記構成によれば、非通電状態のときには押圧機構がプラネタリシャフトに当接し、プラネタリシャフトを傾けるように同プラネタリシャフトを押圧する。遊星差動式動力装置にあっては、ロータとプラネタリシャフトとサンシャフトとがそれぞれに形成された螺子によって互いに噛合されている。そのため、プラネタリシャフトが傾くと、これらの螺子が傾いた状態で噛合することとなり、ロータが回転しにくくなる。すなわち、上記請求項9に記載の構成によれば、非通電状態のときに押圧機構がプラネタリシャフトを傾けるように同プラネタリシャフトを押圧するため、非通電状態のときにはロータが回転しにくくなり、サンシャフトに作用する軸方向の荷重の影響による同ロータの回転が抑制されるようになる。
【0030】
また一方で、通電状態にあり、モータによってロータを回転駆動してサンシャフトを変位させるときには、押圧機構がプラネタリシャフトから離間するようになる。そのため、モータの駆動力によってサンシャフトを変位させる際にはロータを押圧せずにその駆動負荷を低減させることができる。
【0031】
請求項10に記載の発明は、制御軸の軸方向の変位に伴って機関バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更する内燃機関のバルブ特性変更機構と組み合わされ、前記サンシャフトを前記制御軸に連結することにより、同制御軸を軸方向に変位させる動力装置として適用される請求項1〜9のいずれか一項に記載の遊星差動式動力装置である。
【0032】
機関バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更する内燃機関のバルブ特性変更機構の制御軸には、バルブスプリングの反力によって機関バルブの最大リフト量及びリフト期間を小さくする方向に制御軸を変位させる荷重が常に作用する。そのため、こうしたバルブ特性変更機構の制御軸を駆動する遊星差動式動力装置にあっては、制御軸と連結されるサンシャフトに一方向の荷重が常に作用するようになり、この荷重の作用に起因するサンシャフトの変位が特に顕著なものとなる。そのため、上記請求項10に記載の発明のように、こうしたバルブ特性変更機構の動力装置として、上記請求項1〜9に記載の遊星差動式動力装置を適用することが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(第1の実施形態)
以下、この発明にかかる遊星差動式動力装置を、内燃機関のバルブ特性変更機構を駆動する動力装置に具体化した第1の実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。尚、以下の説明では、図1における右方向を遊星差動式動力装置におけるフロント側、図1における左方向を遊星差動式動力装置におけるリア側として説明を行う。
【0034】
図1は本実施形態にかかる遊星差動式動力装置の断面構造を示している。本実施形態にかかる遊星差動式動力装置は、図1に二点鎖線で示されるように内燃機関のシリンダヘッド200に取り付けられ、サンシャフト20の先端部がシリンダヘッド200の内部に搭載されたバルブ特性変更機構の制御軸に連結される。尚、バルブ特性変更機構は、制御軸の軸方向の変位に伴って内燃機関の吸気バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更するものである。
【0035】
本実施形態の遊星差動式動力装置は、図1に示されるようにその内部に遊星差動式運動変換機構100を備えている。ハウジング1の内部にはベアリング2が設けられており、このベアリング2を介して遊星差動式運動変換機構100のロータ10がハウジング1に対して回動可能に支持されている。
【0036】
図1に示されるように遊星差動式運動変換機構100は、円筒状のロータ10にサンシャフト20を内挿するとともに、サンシャフト20とロータ10との間に複数のプラネタリシャフト30を介装させることにより構成されている。尚、遊星差動式運動変換機構100にあっては、サンシャフト20を取り囲むように9本のプラネタリシャフト30を等角度間隔で配設している。
【0037】
図1に示されるようにロータ10の内周面には、その中央部分にフロント側からリア側に向かって左回りに進行する5条の左螺子からなる螺子11が形成されている。一方、このロータ10に内挿されたサンシャフト20の外周面には、ロータ10に形成された螺子11と対向する位置に、フロント側からリア側に向かって右回りに進行する4条の右螺子からなる螺子21が形成されている。
【0038】
そして、これらロータ10とサンシャフト20との間に介装された各プラネタリシャフト30の外周面には、図1に示されるようにロータ10の内周面に形成された螺子11とサンシャフト20の外周面に形成された螺子21との双方に噛合する螺子31が形成されている。尚、この螺子31はフロント側からリア側に向かって左回りに進行する1条の左螺子である。
【0039】
上記のように構成された遊星差動式運動変換機構100にあっては、ロータ10、サンシャフト20及びプラネタリシャフト30のそれぞれが各部材に形成された螺子及を介して互いに噛合している。そのため、ロータ10をサンシャフト20に対して相対回動させることにより、ロータ10の回転力が螺子11及び螺子31を介してプラネタリシャフト30に伝達され、プラネタリシャフト30がロータ10の内周面とサンシャフト20の外周面とに沿って転動するようになる。
【0040】
ここで、ロータ10の螺子11とプラネタリシャフト30の螺子31にあっては、そのピッチ円径の比と螺子条数の比とがどちらも「5:1」に設定されている。これにより、ロータ10の螺子11とプラネタリシャフト30の螺子31にあっては、そのリード角がともに等しくなっている。そのため、プラネタリシャフト30がロータ10の内周面に沿って転動するとき、ロータ10とプラネタリシャフト30との間では軸方向の相対的な変位は生じない。
【0041】
一方、プラネタリシャフト30の螺子31とサンシャフト20の螺子21にあっては、ピッチ円径の比と螺子条数の比とが異なっている。具体的にはピッチ円径の比が「1:3」に設定されているのに対して、上述したようにプラネタリシャフト30の螺子31の螺子条数が1条であり、サンシャフト20の螺子21の螺子条数は4条であるため、螺子条数の比は「1:4」に設定されている。これにより、サンシャフト20の螺子21とプラネタリシャフト30の螺子31にあっては、そのリード角が異なっている。そのため、プラネタリシャフト30が、サンシャフト20の外周面に沿って転動するときにはこのリード角の差の分だけサンシャフト20とプラネタリシャフト30とが軸方向にずれて、その相対的な位置が変化するようになる。
【0042】
要するに、遊星差動式運動変換機構100にあっては、ロータ10をサンシャフト20に対して相対回動させることにより、プラネタリシャフト30がロータ10の内周面とサンシャフト20の外周面とに沿って転動し、上記リード角の差の分だけサンシャフト20が軸方向に変位する。そのため、ロータ10に入力される回転運動を遊星差動式運動変換機構100を通じてサンシャフト20の直線運動に変換して出力することができる。
【0043】
尚、図1に示されるようにロータ10の外周面にはマグネット13が取り付けられている。そして、ハウジング1の内周面におけるこのマグネット13と対向可能な位置には、コイルを備えたステータ3が固定されている。これにより、このステータ3を励磁することにより、ロータ10のマグネット13とこのステータ3との間に生じる電磁力によってロータ10が回転するようになる。すなわち、本実施形態の遊星差動式動力装置にあっては、ロータ10のマグネット13と、ステータ3とによってロータ10を回転駆動するモータ4が形成されている。
【0044】
また、ロータ10のリア側端部には、図1に示されるように鍔状に広がるセンサプレート14が固定されている。このセンサプレート14には、48極の多極マグネット15が取り付けられており、ハウジング1におけるセンサプレート14と対向する部分にはこの多極マグネット15と対向するようにホール素子16が設けられている。
【0045】
このように本実施形態の遊星差動式動力装置にあっては、ロータ10と一体に回転するセンサプレート14に取り付けられた多極マグネット15と、ハウジング1に設けられたホール素子16とによってロータ10の回転角を検出する回転角センサ5が構成されている。
【0046】
この回転角センサ5によって検出された回転角に対応する回転角信号は、ハウジング1のリア側端部に設けられた制御部6に入力される。この制御部6には、遊星差動式動力装置を駆動するための各種演算処理を実行するCPU、各種演算処理にかかるプログラムが記憶されたROM、演算結果を一時的に記憶するRAM等が納められている。制御部6は内燃機関の電子制御装置からの制御指令に基づいて各種演算を行い、モータ4を駆動してバルブ特性変更機構を制御する。
【0047】
また、図1に示されるようにハウジング1の内周面と、遊星差動式運動変換機構100のロータ10の外周面との間には潤滑油の漏出を抑制するオイルシール40が設けられている。
【0048】
図2は、本実施形態にかかる遊星差動式動力装置におけるオイルシール40近傍を拡大して示す拡大断面図である。図2に示されるようにロータ10の外周面には凸部10aが設けられており、この凸部10aとベアリング2のリア側端部が当接するように位置決めされて、ロータ10がハウジング1内に回動可能に支持されている。
【0049】
また、ロータ10の外周面には、ロータ10を正確に位置決めするためのスペーサストッパ42が設けられている。このスペーサストッパ42は、図2に示されるようにロータ10の外周面に嵌合されたスナップリング41とベアリング2のフロント側端部との間に挟み込まれるように配設されている。スペーサストッパ42には図2に示されるように板ばね43が設けられており、この板ばね43の付勢力によってベアリング2がリア側に向かって付勢され、ベアリング2のリア側端部がロータ10の凸部10aに確実に当接することにより、ロータ10が正確に位置決めされるようになっている。
【0050】
また、図2に示されるようにロータ10の外周面におけるフロント側端部には、オイルシール40が設けられている。オイルシール40は、ゴムによってリング状に形成されており、ハウジング1の内周面とロータ10の外周面との間に挟み込まれて遊星差動式運動変換機構100の内部の潤滑に供された潤滑油がロータ10の外周側へ漏出するのを抑制している。
【0051】
ところで、吸気バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更する内燃機関のバルブ特性変更機構の制御軸には、バルブスプリングの反力によって機関バルブの最大リフト量及びリフト期間を小さくする方向に制御軸を変位させる荷重が常に作用する。そのため、制御軸と連結されるサンシャフト20には軸方向の一方へ向かう荷重が作用することになる。サンシャフト20に軸方向の荷重が作用することにより、プラネタリシャフト30及びロータ10が回転駆動され、サンシャフト20が軸方向に変位してしまうおそれがある。
【0052】
また、こうした軸方向の荷重はモータ4への通電が停止されている機関停止中であっても常に作用し続ける。モータ4への通電が停止されているときには特にサンシャフト20に作用する荷重によってプラネタリシャフト30及びロータ10が回転駆動されやすいため、こうした荷重の作用によるサンシャフト20の変位も起こりやすくなってしまう。
【0053】
そこで、本実施形態の遊星差動式動力装置にあっては、このオイルシール40にロータ10の外周面に当接してロータ10の回転抵抗を増大させる摩擦リップ40aを設けるようにしている。
【0054】
図2に示されるように摩擦リップ40aは、オイルシール40の外周側部分からロータ10の外周面に向かって延び、ロータ10の外周面に摺動可能に当接するようになっている。このように摩擦リップ40aがロータ10の外周面に摺動可能に当接していることにより、ロータ10が回転する際に摩擦リップ40aの先端部とロータ10の外周面との間に摩擦が生じるようになり、摩擦リップ40aの設けられていない従来のオイルシールを備える場合と比較して、ロータ10の回転抵抗が増大するようになる。
【0055】
以上説明した第1の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)ロータ10の外周面とハウジング1の内周面との間に摩擦部材として摩擦リップ40aを備えるオイルシール40が設けられている。そして、この摩擦リップ40aがロータ10の外周面に摺動可能に当接しているため、ロータ10の外周面と、この摩擦リップ40aとが当接している部分に発生する摩擦力によってロータ10の回転抵抗が増大されることとなる。これにより、サンシャフト20に軸方向の荷重が作用してもロータ10が回転しにくくなり、サンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響によってロータ10が回転駆動されサンシャフト20が軸方向に変位することを抑制することができるようになる。
【0056】
(2)摩擦部材をロータ10とハウジング1との間に設けられたオイルシール40から延びる摩擦リップ40aとしてオイルシール40と一体に形成するようにしている。これにより、オイルシール40とは別に、各別の部材として摩擦部材を設けることなく、ロータ10の回転抵抗を増大させることができる。すなわち、部品点数の増加を抑制しつつ、サンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響によってロータ10が回転駆動されサンシャフト20が軸方向に変位することを抑制することができるようになる。
【0057】
また、この摩擦リップ40aが設けられていることによってオイルシール40における潤滑油のシール性が更に向上することとなる。
尚、上記第1の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
【0058】
・上記実施形態では、オイルシール40に摩擦部材として摩擦リップ40aを設ける構成を示したが、スペーサストッパ42に摩擦部材を設けることもできる。
具体的には図3に示されるようにスペーサストッパ42の先端部にゴム等によって形成された摩擦部材44を固定し、この摩擦部材44をハウジング1の内周面に摺動可能に当接させるようにすればよい。こうした構成を採用すれば、ロータ10の回転に伴ってハウジング1の内周面と摩擦部材44とが当接する部分に生じる摩擦力によってロータ10の回転抵抗を増大させることができる。これにより、上記第1の実施形態と同様にサンシャフト20に軸方向の荷重が作用してもロータ10が回転しにくくなり、サンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響によってロータ10が回転駆動されサンシャフト20が軸方向に変位することを抑制することができるようになる。
【0059】
・オイルシール40やスペーサストッパ42に摩擦部材を設ける構成以外にも、図4に示されるように別途摩擦部材を設ける構成を採用することもできる。
具体的には、ロータ10の外周面に金属によって形成された芯材46とゴムによって形成された当接部材47とから構成される摩擦部材45を図4に示されるように当接部材47がハウジング1の内周面に摺動可能に当接するように固定する。
【0060】
こうした構成によれば、ロータ10の回転に伴ってハウジング1の内周面と当接部材47とが当接する部分に生じる摩擦力によってロータ10の回転抵抗を増大させることができる。これにより、上記第1の実施形態と同様にサンシャフト20に軸方向の荷重が作用してもロータ10が回転しにくくなり、サンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響によってロータ10が回転駆動されサンシャフト20が軸方向に変位することを抑制することができるようになる。
【0061】
・尚、ロータ10の外周面とハウジング1の内周面との間に摩擦部材を設ける際には、ハウジング1の内周面に摺動可能に当接するように設けることが望ましい。これは、ハウジング1の内周面に摺動可能に当接するように摩擦部材を設けることにより、ロータ10の外周面に摺動可能に当接するように摩擦部材を設ける場合と比較して摩擦部材の当接により摩擦力が発生する部分の面積をより大きくすることができるためである。すなわち、より外周側に位置するハウジング1の内周面に摺動可能に当接するように摩擦部材を設けることにより、ロータ10の外周面に摺動可能に当接するように摩擦部材を設けた場合と比較してロータ10の回転抵抗をより大きくすることができるようになる。そのため、サンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響によるロータ10の回転駆動をより効果的に抑制することができるようになる。
【0062】
・また、ロータ10の外周面とハウジング1との間に摩擦部材を設ける構成に替えて、ロータ10に固定されたセンサプレート14に摩擦部材を設ける構成を採用することもできる。具体的には、図5に示されるようにセンサプレート14の周縁部分にゴム等によって形成された摩擦部材48を固定し、これをハウジング1の内周面に摺動可能に当接させる。
【0063】
こうした構成によれば、ロータ10の回転に伴ってハウジング1の内周面とセンサプレート14の周縁部分に固定された摩擦部材48とが当接する部分に生じる摩擦力によってロータ10の回転抵抗を増大させることができる。これにより、上記第1の実施形態と同様にサンシャフト20に軸方向の荷重が作用してもロータ10が回転しにくくなり、サンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響によってロータ10が回転駆動されサンシャフト20が軸方向に変位することを抑制することができるようになる。また、ロータ10から鍔状に広がるように形成されているセンサプレート14の周縁部分に摩擦部材を固定してハウジング1の内周面と当接させることにより、摩擦部材とハウジング1の内周面とが当接する部分の面積をより大きくすることができ、ロータ10の回転抵抗をより大きくすることができるようになる。
(第2の実施形態)
以下、この発明にかかる遊星差動式動力装置を、内燃機関のバルブ特性変更機構を駆動する動力装置に具体化した第2の実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。尚、第2の実施形態は、その基本的な構成は第1の実施形態と同様であり、その一部のみを変更したものであるため、以下では同様の構成については同一の符号を付すのみとしてその説明を割愛し、第1の実施形態と異なる構成を中心に説明する。尚、図6は本実施形態にかかる遊星差動式動力装置の断面図である。
【0064】
第1の実施形態にあっては、オイルシール40に摩擦リップ40aを設けてロータ10の回転抵抗を増大させる構成を示したが、本実施形態にあっては、こうした構成に替えて図6に示されるようにハウジング1の内周面におけるセンサプレート14と対向する位置に、センサプレート14に当接してロータ10の回転抵抗を増大させるブレーキ機構を構成する当接部材として円環状のウェーブワッシャ50を設けるようにしている。
【0065】
このウェーブワッシャ50は形状記憶合金によって形成されており、図7(a)に示されるようにセンサプレート14側に向かって突出する屈曲凸部50aと伸展凸部50bとが周方向に等角度間隔で交互に配設されている。尚、伸展凸部50bは、ウェーブワッシャ50の温度が所定温度(例えば50℃)以上になると屈曲部分が展開し、その高さが低くなるように変形する。一方で、屈曲凸部50aにあっては、ウェーブワッシャ50の温度が所定温度(例えば50℃)以上になると屈曲部分が更に鋭角に屈曲し、その高さが高くなるように変形する。
【0066】
そのため、ウェーブワッシャ50はその温度が所定温度未満のときには図7(a)に示されるように屈曲凸部50a及び伸展凸部50bの高さが略等しくなっている。これにより、機関温度が低く、ウェーブワッシャ50の温度が所定温度未満であるときには、図6に示されるようにウェーブワッシャ50はハウジング1のセンサプレート14と対向する位置に嵌合された状態においてセンサプレート14から離間した状態となっている。
【0067】
一方で、ウェーブワッシャ50はその温度が所定温度以上になると図7(b)に矢印で示されるように伸展凸部50bが展開するとともに、屈曲凸部50aがより屈曲して破線矢印で示されるようにその高さが高くなる。このため、機関温度が高く、ウェーブワッシャ50の温度が所定温度以上になるとハウジング1の内周面にセンサプレート14と対向するように嵌合されているウェーブワッシャ50の屈曲凸部50aがセンサプレート14側に突出し、センサプレート14に当接するようになる。
【0068】
以上説明した第2の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)ブレーキ機構としてハウジング1に設けられたウェーブワッシャ50が、ロータ10に固定されたセンサプレート14に当接することにより、ウェーブワッシャ50とセンサプレート14との間に摩擦が生じるようになり、ロータ10の回転抵抗が増大されることとなる。これにより、サンシャフト20に軸方向の荷重が作用してもロータ10が回転しにくくなり、サンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響によってロータ10が回転駆動されサンシャフト20が軸方向に変位することを抑制することができるようになる。
【0069】
(2)遊星差動式動力装置にあっては、潤滑油の粘性が低くなる高温時には潤滑油の粘性による抵抗力や各部のフリクションが小さくなり、サンシャフト20の位置を保持する作用が小さくなる。これに対して上記第2の実施形態の遊星差動式動力装置によれば、このようにサンシャフト20の位置を保持する作用が特に小さくなる高温時にウェーブワッシャ50がセンサプレート14に当接してロータ10の回転抵抗が増大するようになる。そのため、サンシャフト20の位置を保持する作用を増大させることができ、潤滑油の粘性の低下に起因するサンシャフト20の位置を保持する作用の低下を補ってサンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響によるロータ10の回転駆動を好適に抑制することができる。
【0070】
また、潤滑油の粘性が高く、サンシャフト20の位置を保持する作用が十分に大きい低温時にはウェーブワッシャ50がセンサプレート14から離間するようになる。そのため、ロータ10の回転抵抗が必要以上に増大されることが抑制され、モータ4の駆動力によってサンシャフト20を変位させる際のロータ10の駆動負荷が増大してしまうことを極力抑制することができる。
【0071】
尚、上記第2の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・温度に応じて変形し、センサプレート14に当接する当接部材として形状記憶合金によって形成されて屈曲凸部50aと伸展凸部50bとを有するウェーブワッシャ50を例示したが、これは当接部材の構成の一例であり、温度が高いときにセンサプレート14に当接するようにその形状が変化するものであればその構成は適宜変更することができる。
(第3の実施形態)
以下、この発明にかかる遊星差動式動力装置を、内燃機関のバルブ特性変更機構を駆動する動力装置に具体化した第3の実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。尚、第3の実施形態は、その基本的な構成は第1の実施形態と同様であり、その一部のみを変更したものであるため、以下では同様の構成については同一の符号を付すのみとしてその説明を割愛し、第1の実施形態と異なる構成を中心に説明する。尚、図8は本実施形態にかかる遊星差動式動力装置の断面図である。
【0072】
第1の実施形態にあっては、オイルシール40に摩擦リップ40aを設けてロータ10の回転抵抗を増大させる構成を示したが、本実施形態にあっては、こうした構成に替えて図8に示されるようにハウジング1の内周面におけるセンサプレート14の周縁部と対向する位置に、センサプレート14に当接してロータ10の回転抵抗を増大させるブレーキ機構を構成する当接部材として円環状のウェーブリング51を設けるようにしている。
【0073】
このウェーブリング51は形状記憶合金によって形成されており、図9(a)に示されるようにセンサプレート14側に向かって突出する屈曲凸部51aと伸展凸部51bとが周方向に等角度間隔で交互に配設されている。尚、伸展凸部51bは、ウェーブワッシャ50の温度が所定温度(例えば50℃)以上になると屈曲部分が展開し、その高さが低くなるように変形する。一方で、屈曲凸部51aにあっては、ウェーブワッシャ50の温度が所定温度(例えば50℃)以上になると屈曲部分が更に鋭角に屈曲し、その高さが高くなるように変形する。
【0074】
そのため、ウェーブリング51はその温度が所定温度未満のときには図9(a)に示されるように屈曲凸部51a及び伸展凸部51bの高さが略等しくなっている。これにより、機関温度が低く、ウェーブリング51の温度が所定温度未満であるときには、図8及び図9(a)に示されるようにウェーブリング51はセンサプレート14の周縁部と対向する位置に嵌合された状態においてセンサプレート14から離間した状態となっている。
【0075】
一方で、ウェーブリング51はその温度が所定温度以上になると図9(b)に矢印で示されるように伸展凸部51bが展開するとともに、屈曲凸部51aがより屈曲して破線矢印で示されるようにその高さが高くなる。このため、機関温度が高く、ウェーブリング51の温度が所定温度以上になるとセンサプレート14の周縁部と対向するようにハウジング1に嵌合されているウェーブリング51の屈曲凸部51aがセンサプレート14側に突出し、センサプレート14の周縁部に当接するようになる。
【0076】
以上説明した第3の実施形態によれば、上記第2の実施形態と同様の以下の効果が得られるようになる。
(1)ブレーキ機構としてハウジング1に設けられたウェーブリング51が、ロータ10に固定されたセンサプレート14の周縁部に当接することにより、ウェーブリング51とセンサプレート14との間に摩擦が生じるようになり、ロータ10の回転抵抗が増大されることとなる。これにより、サンシャフト20に軸方向の荷重が作用してもロータ10が回転しにくくなり、サンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響によってロータ10が回転駆動されサンシャフト20が軸方向に変位することを抑制することができるようになる。
【0077】
(2)遊星差動式動力装置にあっては、潤滑油の粘性が低くなる高温時には潤滑油の粘性による抵抗力や各部のフリクションが小さくなり、サンシャフト20の位置を保持する作用が小さくなる。これに対して上記第3の実施形態の遊星差動式動力装置によれば、このようにサンシャフト20の位置を保持する作用が特に小さくなる高温時にウェーブリング51がセンサプレート14に当接してロータ10の回転抵抗が増大するようになる。そのため、サンシャフト20の位置を保持する作用を増大させることができ、潤滑油の粘性の低下に起因するサンシャフト20の位置を保持する作用の低下を補ってサンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響によるロータ10の回転駆動を好適に抑制することができる。
【0078】
また、潤滑油の粘性が高く、サンシャフト20の位置を保持する作用が十分に大きい低温時にはウェーブリング51がセンサプレート14から離間するようになる。そのため、ロータ10の回転抵抗が必要以上に増大されることが抑制され、モータ4の駆動力によってサンシャフト20を変位させる際のロータ10の駆動負荷が増大してしまうことを極力抑制することができる。
【0079】
尚、上記第3の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・図10(a)及び図10(b)に示されるようにセンサプレート14に凹部14aを設ける構成を採用することもできる。こうした構成によれば、機関温度が高く、ウェーブリング51の温度が所定温度以上となり、図10(b)に示されるように屈曲凸部51aが突出したときに同屈曲凸部51aの先端がセンサプレート14に形成された凹部14aに嵌合するようになる。そのため、こうした構成を採用すれば、ウェーブリング51がセンサプレート14に当接したときにロータ10の回転がより効果的に規制されるようになる。
【0080】
尚、図10(a)は機関温度が低く、ウェーブリング51の温度が所定温度未満の状態を示している。
・図11に示されるようにウェーブリング51の屈曲凸部51aの先端に摩擦を増大させるようにゴム等によるコーティングを施し、被覆膜52を形成することもできる。こうした構成によれば、屈曲凸部51aがセンサプレート14に当接したときにこれらの当接部分に生じる摩擦力を更に増大させることができる。
【0081】
・また、温度に応じて変形し、センサプレート14に当接する当接部材として形状記憶合金によって形成されて屈曲凸部51aと伸展凸部51bとを有するウェーブリング51を例示したが、これは当接部材の構成の一例であり、温度が高いときにセンサプレート14に当接するようにその形状が変化するものであれば、その構成は適宜変更することができる。
(第4の実施形態)
以下、この発明にかかる遊星差動式動力装置を、内燃機関のバルブ特性変更機構を駆動する動力装置に具体化した第4の実施形態について、図12及び図13を参照して説明する。尚、第4の実施形態は、その基本的な構成は第1の実施形態と同様であり、その一部のみを変更したものであるため、以下では同様の構成については同一の符号を付すのみとしてその説明を割愛し、第1の実施形態と異なる構成を中心に説明する。尚、図12は本実施形態にかかる遊星差動式動力装置の断面図である。
【0082】
第1の実施形態にあっては、オイルシール40に摩擦リップ40aを設けてロータ10の回転抵抗を増大させる構成を示したが、本実施形態にあっては、こうした構成に替えて図12に示されるようにハウジング1の内部に、センサプレート14に当接してロータ10の回転抵抗を増大させるブレーキ機構60を設けるようにしている。
【0083】
以下、図13(a)及び図13(b)を参照してブレーキ機構60の構成を説明する。尚、図13(a)及び図13(b)は本実施形態の遊星差動式動力装置におけるブレーキ機構60近傍を拡大して示す断面図である。
【0084】
図13(a)及び図13(b)に示されるように、ブレーキ機構60は、摩擦部材63が取り付けられたレバー62とこのレバー62を駆動する電磁石65とを備えて構成されている。レバー62は、その中央部分がハウジング1の内周面に固定された支持部61によって軸支されており、そのセンサプレート14側の端部には摩擦係数の大きな材料によって形成された摩擦部材63が固定されている。また、レバー62における摩擦部材63が固定された端部とは反対側の端部はスプリング64によって常に付勢されており、このスプリング64の付勢力によって摩擦部材63がセンサプレート14に当接するようにレバー62が傾き、摩擦部材63とセンサプレート14との間に生じる摩擦力によってロータ10の回転抵抗を増大させる。
【0085】
また、スプリング64の内側には電磁石65が設けられており、この電磁石65に通電し、これを励磁することにより、図13(a)に示されるようにレバー62がスプリング64の付勢力に抗して電磁石65に当接するようになり、摩擦部材63がセンサプレート14から離間するようになる。
【0086】
このように本実施形態の遊星差動式動力装置によれば、電磁石65に通電しているときには、図13(a)に示されるようにブレーキ機構60のレバー62が電磁石65に当接して摩擦部材63がセンサプレート14から離間した状態となる。一方で、電磁石65への通電が停止されているときには、図13(b)に矢印で示されるようにブレーキ機構60のレバー62がスプリング64の付勢力によって傾き、摩擦部材63がセンサプレート14に当接した状態となる。
【0087】
尚、本実施形態の遊星差動式動力装置にあっては、機関運転中に常に電磁石65への通電を実行し、機関停止中にこの通電が停止されるようになっている。
以上説明した第4の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0088】
(1)モータ4への通電が停止されている機関停止時にあっては、サンシャフト20に作用する荷重の影響によってプラネタリシャフト30及びロータ10が回転駆動されやすく、サンシャフト20が特に変位しやすい。これに対して上記第4の実施形態の遊星差動式動力装置によれば、電気的に制御可能なブレーキ機構60を設け、非通電状態のときにセンサプレート14に摩擦部材63が当接する一方、通電状態のときに摩擦部材63がセンサプレート14から離間するようにこれを制御するようにしている。これにより、機関停止時のような非通電状態のときにブレーキ機構60の摩擦部材63をセンサプレート14に当接させてロータ10の回転抵抗を増大させ、サンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響によるロータ10の回転駆動を好適に抑制することができる。
【0089】
また、モータ4への通電が実行されてサンシャフト20を変位させる通電状態のときには、同ブレーキ機構60の摩擦部材63がセンサプレート14から離間する。そのためこのときにはロータ10の回転抵抗を減少させることができ、モータ4の駆動力によってサンシャフト20を変位させるときには、その駆動負荷を低減することができる。
【0090】
尚、上記第4の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第4の実施形態にあっては、ロータ10に固定されたセンサプレート14に摩擦部材63を当接させるブレーキ機構60を例示したが、ロータ10の外周面に摩擦部材を当接させるブレーキ機構をハウジング1の内部に設ける構成を採用することもできる。
【0091】
こうした構成を採用した場合にも、ブレーキ機構をロータ10に当接させてロータ10の回転抵抗を増大させることによってサンシャフト20の変位を抑制する一方、モータ4の駆動力によってサンシャフト20を変位させる際にはブレーキ機構をロータ10から離間させてその駆動負荷を低減することができるようになる。
(第5の実施形態)
以下、この発明にかかる遊星差動式動力装置を、内燃機関のバルブ特性変更機構を駆動する動力装置に具体化した第5の実施形態について、図14及び図15を参照して説明する。尚、第5の実施形態は、その基本的な構成は第1の実施形態と同様であり、その一部のみを変更したものであるため、以下では同様の構成については同一の符号を付すのみとしてその説明を割愛し、第1の実施形態と異なる構成を中心に説明する。尚、図14は本実施形態にかかる遊星差動式動力装置の断面図である。
【0092】
第1の実施形態にあっては、オイルシール40に摩擦リップ40aを設けてロータ10の回転抵抗を増大させる構成を示したが、本実施形態にあっては、こうした構成に替えて図14に示されるようにハウジング1の内部に、ロータ10のリア側端部に当接してロータ10を傾けるように押圧する押圧機構70を設けるようにしている。
【0093】
この押圧機構70は、図15(a)及び図15(b)に示されるように、ロータ10のリア側端部に対向するようにハウジング1の内周面に固定されている。尚、図15(a)及び図15(b)は本実施形態の遊星差動式動力装置における押圧機構70近傍を拡大して示す断面図である。
【0094】
図15(a)及び図15(b)に示されるように、押圧機構70は、ロータ10に当接する当接部材71と、この当接部材71を駆動する電磁石73とを備えて構成されている。当接部材71は、ハウジング1に固定された台座74の収容孔75に収容されている。収容孔75の底面と当接部材71との間には当接部材71をロータ10側へ付勢するスプリング72が設けられており、当接部材71はこのスプリング72の付勢力によって常にロータ10側へ突出する方向に付勢されている。
【0095】
また、収容孔75の底面には、電磁石73が設けられている。そのため、この電磁石73に通電し、これを励磁することにより、図15(a)に示されるように当接部材71がスプリング72の付勢力に抗して電磁石73に当接するようになり、当接部材71がロータ10から離間するようになる。
【0096】
このように本実施形態の遊星差動式動力装置によれば、電磁石73に通電しているときには、図15(a)に示されるように押圧機構70の当接部材71が電磁石73に当接してロータ10から離間した状態となる。一方で、電磁石73への通電が停止されているときには、図15(b)に矢印で示されるように押圧機構70の当接部材71がスプリング72の付勢力によってロータ10側へ突出し、同当接部材71がロータ10に当接した状態となる。このように当接部材71がロータ10のリア側端部に当接することにより、スプリング72の付勢力によってロータ10が押圧され、図15(b)に破線矢印で示されるようにロータ10がハウジング1内で傾けられることとなる。
【0097】
尚、本実施形態の遊星差動式動力装置にあっては、機関運転中には常に電磁石73への通電を実行し、機関停止中にこの通電が停止されるようになっている。
以上説明した第5の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0098】
(1)モータ4への通電が停止されている機関停止時にあっては、押圧機構70の当接部材71がロータ10に当接し、ロータ10を傾けるように同ロータ10を押圧する。遊星差動式動力装置にあっては、ロータ10とプラネタリシャフト30とサンシャフト20とがそれぞれに形成された螺子11,21,31によって互いに噛合されている。そのため、ロータ10が傾くと、これらの螺子11,21,31が傾いた状態で噛合することとなり、ロータ10が回転しにくくなる。すなわち、上記第5の実施形態の遊星差動式動力装置によれば、非通電状態のときに押圧機構70の当接部材71がロータ10を傾けるように同ロータ10を押圧するため、機関停止時のような非通電状態のときにはロータ10が回転しにくくなり、サンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響による同ロータ10の回転が抑制されるようになる。
【0099】
また一方で、通電状態にあり、モータ4によってロータ10を回転駆動してサンシャフト20を変位させるときには、押圧機構70の当接部材71がロータ10から離間するようになる。そのため、モータ4の駆動力によってサンシャフト20を変位させる際にはその駆動負荷を低減させることができる。
【0100】
尚、上記第5の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・押圧機構70をハウジング1におけるロータ10のリア側端部に対向する位置に設け、ロータ10のリア側端部を付勢する構成を示したが、その他、ロータ10のフロント側端部を付勢するようにハウジング1におけるフロント側の部分に押圧機構70を設ける構成を採用することもできる。尚、ロータ10を回動可能に支持しているベアリング2からより遠い位置においてロータ10を付勢する構成を採用するほどロータ10を傾けるために必要とされる力が小さくてすむため、上記第5の実施形態のようにベアリング2から極力離間した位置に押圧機構70を設けることが望ましい。
(第6の実施形態)
以下、この発明にかかる遊星差動式動力装置を、内燃機関のバルブ特性変更機構を駆動する動力装置に具体化した第6の実施形態について、図16及び図17を参照して説明する。尚、第6の実施形態は、その基本的な構成は第1の実施形態と同様であり、その一部のみを変更したものであるため、以下では同様の構成については同一の符号を付すのみとしてその説明を割愛し、第1の実施形態と異なる構成を中心に説明する。尚、図16は本実施形態にかかる遊星差動式動力装置の断面図である。
【0101】
第1の実施形態にあっては、オイルシール40に摩擦リップ40aを設けてロータ10の回転抵抗を増大させる構成を示したが、本実施形態にあっては、こうした構成に替えて図16に示されるようにハウジング1の内部に、プラネタリシャフト30のフロント側先端部に当接してプラネタリシャフト30を傾けるように押圧する押圧機構80を設けるようにしている。
【0102】
この押圧機構80は、図17(a)及び図17(b)に示されるように、遊星差動式運動変換機構100と対向するようにハウジング1におけるフロント側の部分に設けられている。尚、図17(a)及び図17(b)は本実施形態の遊星差動式動力装置における押圧機構80近傍を拡大して示す断面図である。
【0103】
図17(a)及び図17(b)に示されるように、押圧機構80は、プラネタリシャフト30に当接する当接部材81と、この当接部材81を駆動する電磁石83とを備えて構成されている。円筒状に形成された当接部材81は、サンシャフト20に外挿されており、当接部材81とサンシャフト20との間には当接部材81をプラネタリシャフト30側へ付勢するスプリング82が設けられている。これにより、当接部材81はこのスプリング82の付勢力によって常にプラネタリシャフト30側へ向かって付勢されている。尚、当接部材81のリア側の端部はプラネタリシャフト30側に近づくほどその外径が小さくなるようにテーパ状になっている。
【0104】
また、図17(a)及び図17(b)に示されるようにハウジング1におけるフロント側の部分には、電磁石83が設けられている。そのため、この電磁石83に通電し、これを励磁することにより、図17(a)に示されるように当接部材81がスプリング82の付勢力に抗して電磁石83に当接するようになり、当接部材81がプラネタリシャフト30から離間するようになる。
【0105】
このように本実施形態の遊星差動式動力装置によれば、電磁石83に通電しているときには、図17(a)に示されるように押圧機構80の当接部材81が電磁石83に当接してプラネタリシャフト30から離間した状態となる。一方で、電磁石83への通電が停止されているときには、図17(b)に矢印で示されるように押圧機構80の当接部材81がスプリング82の付勢力によってプラネタリシャフト30側へ変位し、同当接部材81がプラネタリシャフト30に当接した状態となる。このとき当接部材81の先端部は上述したようにテーパ状になっているため、図17(b)に示されるように当接部材81がプラネタリシャフト30に当接することにより、スプリング82の付勢力によってプラネタリシャフト30が図17(b)に破線矢印で示されるように遊星差動式運動変換機構100の外周側へ向かって傾けられることとなる。
【0106】
尚、本実施形態の遊星差動式動力装置にあっては、機関運転中には常に電磁石83への通電を実行し、機関停止中にこの通電が停止されるようになっている。
以上説明した第6の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0107】
(1)モータ4への通電が停止されている機関停止時にあっては、押圧機構80の当接部材81がプラネタリシャフト30に当接し、プラネタリシャフト30を傾けるように同プラネタリシャフト30を押圧する。遊星差動式動力装置にあっては、ロータ10とプラネタリシャフト30とサンシャフト20とがそれぞれに形成された螺子11,21,31によって互いに噛合されている。そのため、プラネタリシャフト30が傾くと、これらの螺子11,21,31が傾いた状態で噛合することとなり、ロータ10が回転しにくくなる。すなわち、上記第6の実施形態の遊星差動式動力装置によれば、非通電状態のときに押圧機構80の当接部材81がプラネタリシャフト30を傾けるように同プラネタリシャフト30を押圧するようになる。そのため、機関停止時のような非通電状態のときにはロータ10が回転しにくくなり、サンシャフト20に作用する軸方向の荷重の影響による同ロータ10の回転が抑制されるようになる。
【0108】
また一方で、通電状態にあり、モータ4によってロータ10を回転駆動してサンシャフト20を変位させるときには、押圧機構80の当接部材81がプラネタリシャフト30から離間するようになる。そのため、モータ4の駆動力によってサンシャフト20を変位させる際にはその駆動負荷を低減させることができる。
【0109】
尚、上記第6の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・押圧機構80の当接部材81をプラネタリシャフト30の先端部における内周側の部分に当接させて、この部分を外周側に向かって付勢する構成を示したが、プラネタリシャフト30の先端部における外周側の部分に当接部材を当接させてこの部分を内周側に向かって付勢する押圧機構を設ける構成を採用することもできる。
【0110】
その他、上記各実施形態に共通して変更可能は要素としては次のようなものがある。
・吸気バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更するバルブ特性変更機構を駆動する動力装置として本願発明にかかる遊星差動式動力装置を適用する構成を例示した。これに対して本願発明の遊星差動式動力装置を排気バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更するバルブ特性変更機構の動力装置として適用することもできる。
【0111】
・また、本願発明にかかる遊星差動式動力装置によれば、サンシャフト20に軸方向の荷重が作用することに起因するロータ10の回転を抑制することができる。そのため、本願発明は、上記のように制御軸から一方向の荷重を受けるバルブ特性変更機構の動力装置として適用される遊星差動式動力装置に限らず、軸方向に荷重を受ける制御軸を駆動する動力装置に適用される遊星差動式動力装置構全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】この発明の第1の実施形態にかかる遊星差動式動力装置の断面図。
【図2】同実施形態にかかる遊星差動式動力装置のオイルシール近傍を拡大して示す断面図。
【図3】同実施形態の変更例としての遊星差動式動力装置のオイルシール近傍を拡大して示す断面図。
【図4】同実施形態の変更例としての遊星差動式動力装置のオイルシール近傍を拡大して示す断面図。
【図5】同実施形態の変更例としての遊星差動式動力装置の断面図。
【図6】この発明の第2の実施形態にかかる遊星差動式動力装置の断面図。
【図7】(a)及び(b)は同実施形態にかかる遊星差動式動力装置のフリクションワッシャの変形態様を示す斜視図。
【図8】この発明の第3の実施形態にかかる遊星差動式動力装置の断面図。
【図9】(a)及び(b)は同実施形態にかかる遊星差動式動力装置のフリクションリングの変形態様を示す模式図。
【図10】(a)及び(b)は同実施形態の変更例にかかる遊星差動式動力装置におけるセンサプレートの形状と、フリクションリングの変形態様とを示す模式図。
【図11】同実施形態の変更例にかかる遊星差動式動力装置におけるフリクションリングの屈曲凸部近傍の拡大図。
【図12】本実施形態の第4の実施形態にかかる遊星差動式動力装置の断面図。
【図13】(a)及び(b)は同実施形態にかかる遊星差動式動力装置におけるブレーキ機構の作動態様を示す拡大断面図。
【図14】本実施形態の第5の実施形態にかかる遊星差動式動力装置の断面図。
【図15】(a)及び(b)は同実施形態にかかる遊星差動式動力装置における押圧機構の作動態様を示す拡大断面図。
【図16】本実施形態の第6の実施形態にかかる遊星差動式動力装置の断面図。
【図17】(a)及び(b)は同実施形態にかかる遊星差動式動力装置における押圧機構の作動態様を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0113】
1…ハウジング、2…ベアリング、3…ステータ、4…モータ、5…回転角センサ、6…制御部、10…ロータ、11…螺子、13…マグネット、14…センサプレート、14a…凹部、15…多極マグネット、16…ホール素子、20…サンシャフト、21…螺子、30…プラネタリシャフト、31…螺子、40…オイルシール、40a…摩擦リップ、41…スナップリング、42…スペーサストッパ、43…板ばね、44…、摩擦部材、45…摩擦部材、46…芯材、47…当接部材、48…摩擦部材、50…ウェーブワッシャ、50a…屈曲凸部、50b…伸展凸部、51…ウェーブリング、51a…屈曲凸部、51b…伸展凸部、52…被覆膜、60…ブレーキ機構、61…支持部、62…レバー、63…摩擦部材、64…スプリング、65…電磁石、70…押圧機構、71…当接部材、72…スプリング、73…電磁石、74…台座、75…収容孔、80…押圧機構、81…当接部材、82…スプリング、83…電磁石、100…遊星差動式運動変換機構、200…シリンダヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、同プラネタリシャフトの外周面に設けられた螺子を前記ロータの内周面に設けられた螺子と前記サンシャフトの外周面に設けられた螺子との双方に螺合させて各部材を噛合させ、前記プラネタリシャフトの螺子のリード角とこれに噛合する前記サンシャフトの螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構を具備し、モータの駆動力によって前記ロータを回転させることにより前記サンシャフトを軸方向に変位させる遊星差動式動力装置であって、
前記ロータの外周面及び前記ロータを回動可能に支持するハウジングの内周面のいずれか一方に固定されて他方に摺動可能に当接し、前記ロータの回転抵抗を増大させる摩擦部材を備える
ことを特徴とする遊星差動式動力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星差動式動力装置において、
前記摩擦部材は、前記ロータと前記ハウジングとの間に設けられたオイルシールから延びる摩擦リップとして同オイルシールと一体に形成されてなる
ことを特徴とする遊星差動式動力装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の遊星差動式動力装置において、
前記摩擦部材は、前記ロータの外周面に固定されて前記ハウジングの内周面に摺動可能に当接するように形成されてなる
ことを特徴とする遊星差動式動力装置。
【請求項4】
円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、同プラネタリシャフトの外周面に設けられた螺子を前記ロータの内周面に設けられた螺子と前記サンシャフトの外周面に設けられた螺子との双方に螺合させて各部材を噛合させ、前記プラネタリシャフトの螺子のリード角とこれと噛合する前記サンシャフトの螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構を具備し、モータの駆動力によって前記ロータを回転させることにより前記サンシャフトを軸方向に変位させる遊星差動式動力装置であって、
前記ロータには同ロータの回転角を検出する回転角センサを取り付ける鍔状のセンサプレートが固定されており、前記ロータを回動可能に支持するハウジングには同センサプレートに当接し、前記ロータの回転抵抗を増大させるブレーキ機構が設けられている
ことを特徴とする遊星差動式動力装置。
【請求項5】
請求項4に記載の遊星差動式動力装置において、
前記ブレーキ機構は、温度が高いときに前記センサプレートに当接する一方、温度が低いときには前記センサプレートから離間するように温度に応じて変形する当接部材を備えてなり、
温度が高いときには同当接部材が前記センサプレートに当接して前記ロータの回転抵抗を増大させる一方、温度が低いときには前記当接部材が前記センサプレートから離間して前記ロータの回転抵抗を減少させる
ことを特徴とする遊星差動式動力装置。
【請求項6】
請求項4に記載の遊星差動式動力装置において、
前記ブレーキ機構は、非通電状態のときに前記センサプレートに当接する一方、通電状態のときに前記センサプレートから離間するように電気的に制御される
ことを特徴とする遊星差動式動力装置。
【請求項7】
円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、同プラネタリシャフトの外周面に設けられた螺子を前記ロータの内周面に設けられた螺子と前記サンシャフトの外周面に設けられた螺子との双方に螺合させて各部材を噛合させ、前記プラネタリシャフトの螺子のリード角とこれと噛合する前記サンシャフトの螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構を具備し、モータの駆動力によって前記ロータを回転させることにより前記サンシャフトを軸方向に変位させる遊星差動式動力装置であって、
前記ロータを回動可能に支持するハウジングの内周面に、前記ロータの外周面に当接して同ロータの回転抵抗を増大させる状態と、前記ロータの外周面から離間して同ロータの回転抵抗を減少させる状態とを切り替え可能なブレーキ機構が設けられている
ことを特徴とする遊星差動式動力装置。
【請求項8】
円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、同プラネタリシャフトの外周面に設けられた螺子を前記ロータの内周面に設けられた螺子と前記サンシャフトの外周面に設けられた螺子との双方に螺合させて各部材を噛合させ、前記プラネタリシャフトの螺子のリード角とこれと噛合する前記サンシャフトの螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構を具備し、モータの駆動力によって前記ロータを回転させることにより前記サンシャフトを軸方向に変位させる遊星差動式動力装置であって、
電気的に制御されて非通電状態のときに前記ロータに当接し、前記サンシャフトの軸線の延伸方向に対して前記ロータを傾けるように同ロータを押圧する一方、
通電状態のときに前記ロータから離間するように変位する押圧機構を備える
ことを特徴とする遊星差動式動力装置。
【請求項9】
円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、同プラネタリシャフトの外周面に設けられた螺子を前記ロータの内周面に設けられた螺子と前記サンシャフトの外周面に設けられた螺子との双方に螺合させて各部材を噛合させ、前記プラネタリシャフトの螺子のリード角とこれと噛合する前記サンシャフトの螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構を具備し、モータの駆動力によって前記ロータを回転させることにより前記サンシャフトを軸方向に変位させる遊星差動式動力装置であって、
電気的に制御されて非通電状態のときに前記プラネタリシャフトに当接し、前記サンシャフトの軸線の延伸方向に対して前記プラネタリシャフトを傾けるように同プラネタリシャフトを押圧する一方、
通電状態のときに前記プラネタリシャフトから離間するように変位する押圧機構を備える
ことを特徴とする遊星差動式動力装置。
【請求項10】
制御軸の軸方向の変位に伴って機関バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更する内燃機関のバルブ特性変更機構と組み合わされ、前記サンシャフトを前記制御軸に連結することにより、同制御軸を軸方向に変位させる動力装置として適用される
請求項1〜9のいずれか一項に記載の遊星差動式動力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−121654(P2010−121654A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293515(P2008−293515)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】