説明

運転支援装置

【課題】自車両周辺の移動体が規定されている交通ルールを違反した場合でも自車両に対して適切な運転支援を行うことができる運転支援装置を提供することを課題とする。
【解決手段】移動体の交通ルールに基づいて運転支援を行う運転支援装置1であって、任意の領域において移動体が遵守する可能性の高い交通ルールを取得する交通ルール取得手段11,12,13を備え、交通ルール取得手段で取得した交通ルールに基づいて運転支援を行うことを特徴とし、特に、任意の領域において規定されている交通ルールと交通ルール取得手段で取得した交通ルールとが整合しない交通ルール逸脱領域を取得する領域取得手段13、あるいは、任意の領域において規定されている交通ルールと交通ルール取得手段で取得した交通ルールとが整合しない場合には交通ルール取得手段で取得した交通ルールに修正する交通ルール修正手段を備える構成とするとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の最適な走行進路を生成し、その走行進路に基づいて自動運転制御や各種運転支援制御などを行う技術が開発されている。これらの制御を行う場合、安全に走行するために、信号機、制限速度、一旦停止などの道路で決められている交通ルールを自車両が遵守するように走行制御を行う(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−131055号公報
【特許文献2】特開2006−500664号公報
【特許文献3】特開2002−213970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、上記のような走行制御を行う場合、自車両周辺の他車両などの移動体も交通ルールを遵守していることを前提として制御を行っている。しかし、自車両が交通ルールを遵守したとしても、自車両周辺の移動体が交通ルールを違反する場合がある。自車両周辺の移動体が交通ルールを違反した場合、その移動体と自車両との関係で安全性が低下し、自車両にとって適切な走行制御とならない。
【0004】
そこで、本発明は、自車両周辺の移動体が規定されている交通ルールを違反した場合でも自車両に対して適切な運転支援を行うことができる運転支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る運転支援装置は、移動体の交通ルールに基づいて運転支援を行う運転支援装置であって、任意の領域において移動体が遵守する可能性の高い交通ルールを取得する交通ルール取得手段を備え、交通ルール取得手段で取得した交通ルールに基づいて運転支援を行うことを特徴とする。
【0006】
車両などの移動体が行き交う各道路領域(例えば、交差点)では、その領域の特有の道路事情や道路構造などが要因となって、その領域に対して予め規定されている交通ルールと異なる交通ルールが適用されている場合(つまり、定常的に、規定されている交通ルールが違反されている場合)がある。例えば、優先道路と非優先道路とが交差する信号機の無い交差点において、優先道路より非優先道路の道路幅が広い場合、優先道路を走行中の車両が一旦停止することが日常化しているようなところがある。このような交差点では、非優先道路を走行中の車両が一旦停止するよりは優先道路を走行中の車両が一旦停止する方が、安全性が高くなる。そこで、この運転支援装置では、交通ルール取得手段により任意の領域において移動体が遵守する可能性が高い交通ルール(つまり、その領域で実際に遵守されている交通ルールであり、予め規定されている交通ルールの場合もあれば、予め規定されている交通ルールに違反した交通ルールの場合もある)を取得する。そして、運転支援装置では、各領域において移動体が遵守する可能性の高い交通ルールに基づいて運転支援を行う。このように、運転支援装置では、各領域において実際に遵守される可能性の高い交通ルールを優先して運転支援を行うことにより、自車両周辺の移動体が予め規定されている交通ルールを違反した場合でも自車両に対して適切な運転支援を行うことができ、安全性が向上する。
【0007】
なお、移動体は、例えば、車両、自動二輪車、自転車、歩行者である。交通ルールは、交通の各種法規の他に交通のマナーも包括する概念である。また、交通ルールは、車両に対するルールだけでなく、歩行者や自転車などの他の移動体に対するルールも含むものとする。運転支援は、例えば、情報提供、警報、走行制御、自動運転制御などがある。
【0008】
本発明の上記運転支援装置では、任意の領域において規定されている交通ルールと交通ルール取得手段で取得した交通ルールとが整合しない交通ルール逸脱領域を取得する領域取得手段を備える構成としてもよい。
【0009】
この運転支援装置では、領域取得手段により任意の領域において予め規定されている交通ルールとその領域において実際に遵守される可能性の高い交通ルールとが整合しない交通ルール逸脱領域を取得する。そして、運転支援装置では、この交通ルール逸脱領域を利用して自車両に対して適切な運転支援を行うことにより、より安全性を高めることができる。このような交通ルール逸脱領域では、自車両周辺の移動体が予め規定されている交通ルールを遵守しない可能性が高いので、自車両の運転者にその情報を知らせたりあるいは実際に遵守される可能性の高い交通ルール(規定されている交通ルールに違反した交通ルール)に従って走行制御や自動運転制御などを行う必要がある。
【0010】
本発明の上記運転支援装置では、任意の領域において規定されている交通ルールと交通ルール取得手段で取得した交通ルールとが整合しない場合には交通ルール取得手段で取得した交通ルールに修正する交通ルール修正手段を備える構成としてもよい。
【0011】
この運転支援装置では、交通ルール修正手段により任意の領域において予め規定されている交通ルールとその領域において実際に遵守される可能性の高い交通ルールとが整合しない場合にはその領域については実際に遵守される可能性の高い交通ルールに応じて交通ルールを修正する。そして、運転支援装置では、その修正した交通ルールに従って自車両に対して適切な運転支援を行うことにより、より安全性を高めることができる。自車両周辺の移動体もこの修正した交通ルールを遵守する可能性が高いので、移動体の動きを高精度に予測でき、移動体との関係で安全性を向上させることができる。
【0012】
本発明の上記運転支援装置では、自車両の複数の走行進路を取得する自車両走行進路取得手段を備え、交通ルール取得手段で取得した交通ルールに基づいて自車両の複数の走行進路から自車両の走行進路を選択し、当該選択した自車両の走行進路に基づいて自車両を運転支援する。
【0013】
この運転支援装置では、自車両走行進路取得手段により自動運転制御や走行制御などを行うための自車両の複数の走行進路を取得する。そして、運転支援装置では、その自車両の複数の走行進路の中から実際に遵守される可能性の高い交通ルールを遵守するような走行進路を選択し、その選択した走行進路に基づいて自車両に対して自動運転制御や走行制御などを行う。このように、運転支援装置では、各領域において実際に遵守される可能性の高い交通ルールを遵守するような走行進路に従って自車両を運転支援することにより、自車両周辺の移動体との関係で安全性を確保した上で自車両が目的地に向かって進む効率も向上し、安全と効率の両立を図ることができる。
【0014】
本発明の上記運転支援装置では、移動体の複数の走行進路を取得する移動体走行進路取得手段を備え、交通ルール取得手段で取得した交通ルールに基づいて移動体の複数の走行進路から移動体の走行進路を選択し、当該選択した移動体の走行進路に応じて自車両を運転支援する構成としてもよい。
【0015】
この運転支援装置では、移動体走行進路取得手段により自車両周辺の移動体の複数の走行進路を取得する。そして、運転支援装置では、その移動体の複数の走行進路の中から実際に遵守される可能性の高い交通ルールを遵守するような走行進路を選択し、その選択した移動体の走行進路に基づいて自車両に対して自動運転制御や走行制御などを行う。このように、運転支援装置では、各領域において実際に遵守される可能性の高い交通ルールを遵守するような移動体の走行進路を用いて自車両を運転支援することにより、移動体の動きを高精度に予測でき、移動体との関係で安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、各領域において実際に遵守される可能性の高い交通ルールを優先して運転支援を行うことにより、自車両周辺の移動体が規定されている交通ルールを違反した場合でも自車両に対して適切な運転支援を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る運転支援装置の実施の形態を説明する。
【0018】
本実施の形態では、本発明に係る運転支援装置を、車両に搭載される危険領域判定装置、ルール補正装置、運転支援装置、自動運転装置に適用する。本実施の形態に係る危険領域判定装置は、各領域(交差点、合流点など)において予め規定されている交通ルールが違反される可能性の高い危険領域を判定し、その危険領域の情報を各種運転支援装置あるいは自動運転装置などに提供する。本実施の形態に係るルール補正装置は、各領域において交通ルールを実際に遵守される可能性が高い交通ルールに修正し、その修正した交通ルールを各種運転支援装置あるいは自動運転装置などに提供する。本実施の形態に係る運転支援装置は、各領域において自車両が交通ルールを違反する可能性の高い場合には運転者に対して警報を行う。本実施の形態に係る自動運転装置は、各領域において実際に遵守される可能性の高い交通ルールに基づいて自車両の目標進路を生成し、目標進路に従って走行するように自動運転制御する。
【0019】
なお、本実施の形態に係る危険領域判定装置とルール補正装置には、2つの形態があり、第1の実施の形態が各領域における道路構造に基づく交通ルールを遵守される可能性の高い交通ルールとする形態であり、各領域における交通のノウハウ(実際の交通実態)に基づく交通ルールを遵守される可能性の高い交通ルールとする形態である。本実施の形態に係る運転支援装置と自動運転装置では、第1の実施の形態に係るルール補正装置と第2の実施の形態に係るルール補正装置のいずれか一方のルール補正装置を用いる。
【0020】
また、本実施の形態では、主に、道路間の優先と非優先との関係を示す交通ルールを対象として説明する。特に、第2の実施の形態では、絶対的な優先を示す一方通行なども道路間の優先と非優先との関係に含めることとする。また、本実施の形態では、交通ルールの適用対象として、道路上を移動する車両、自動二輪車、自転車、歩行者などの移動体とする。
【0021】
図1及び図2を参照して、第1の実施の形態に係る危険領域判定装置1について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る危険領域判定装置の構成図である。図2は、道路構造地図データベースに格納されている道路構造パラメータの説明図である。
【0022】
危険領域判定装置1は、各領域において予め規定されている交通ルールが遵守される可能性が高いか否かを判定し、遵守される可能性が低い場合には危険領域とする。特に、危険領域判定装置1は、道路構造に基づいて遵守される可能性の高い交通ルールと予め規定されている交通ルールとの整合性で判定する。そのために、危険領域判定装置1は、位置センサ10、道路構造地図データベース11、地図データベース12、危険領域判定部13を備えている。道路構造地図データベース11、地図データベース12、危険領域判定部13は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[ReadOnly Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなるECU[Electronic Control Unit]内に構成される。
【0023】
なお、第1の実施の形態に係る危険領域判定装置1では、道路構造地図データベース11、地図データベース12及び危険領域判定部13が特許請求の範囲に記載する交通ルール取得手段に相当し、危険領域判定部13が特許請求の範囲に記載する領域取得手段に相当する。
【0024】
位置センサ10は、自車両の現在位置を検出するセンサである。位置センサ10は、例えば、GPS受信装置などで構成される。なお、自車両にカーナビゲーション装置が搭載されている場合、位置センサとしてカーナビゲーション装置から現在位置を取得するようにするとよい。
【0025】
道路構造地図データベース11は、道路領域(例えば、交差点、合流点)毎に道路構造を示す各パラメータの値を格納するデータベースである。道路構造を示すパラメータとしては、例えば、各道路の車線数、道路幅(車線幅)、制限速度、道路勾配、遮蔽物の情報(大きさなど)がある。遮蔽物は、車両の運転者あるいは障害物検出センサなどから走行中の道路に交差(合流)する道路側を見た場合に視界を妨げる建物や壁などである。
【0026】
図2に示す例の場合、片側二車線(両側で四車線)の道路Nと片側一車線(両側で二車線)との道路Pとが交差する信号機が無い交差点Cである。片側二車線の道路Nは、各車線の車線幅が3m(道路全体の道路幅が12m)である。片側一車線の道路Pは、各車線の車線幅が3m(道路全体の道路幅が6m)である。いずれの道路も、道路勾配はない。また、交差点Cの一箇所には、遮蔽物Sが存在する。この交差点Cでは、片側二車線の道路Nに停止線L,Lがあることからも判るように、予め規定されている交通ルール上、片側二車線の道路Nが非優先道路であり、片側一車線の道路Pが優先道路である。
【0027】
地図データベース12は、道路地図情報を格納するデータベースである。特に、この道路地図情報には、標識などで予め規定されている交通ルールも含まれている。基本的には、この予め規定されている交通ルールを遵守しなければならない。
【0028】
危険領域判定部13は、道路構造地図データベース11に格納される道路構造パラメータと地図データベース12に格納される交通ルールに基づいて、各領域において予め規定されている交通ルールが違反される可能性の高い危険領域か否かを判定する処理部である。特に、優先道路と非優先道路とが交差するような信号機の無い交差点、合流点などを含む所定領域に入った場合に、この処理を行うとよい。
【0029】
具体的には、危険領域判定部13では、位置センサ10から現在位置を取得すると、道路構造地図データベース11から現在位置周辺領域の道路構造パラメータの各値を取得するとともに、地図データベース12から現在位置周辺領域の予め規定されている交通ルール(優先道路と非優先道路との関係を示す交通ルール)を取得する。
【0030】
そして、危険領域判定部13では、道路構造パラメータの各パラメータの各値に基づいて各道路に対して優先順位付けをするとともに、予め規定されている交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けをする。この優先順位付けでは、優先して走行可能な道路ほど優先順位を高くする。
【0031】
予め規定されている交通ルールの場合、優先道路の優先順位が高く、非優先道路の優先順位が低い。しかし、道路構造上、優先道路より非優先道路の道路幅が広い場合、非優先道路を走行中の車両が優先され、優先道路を走行中の車両が交差点などで一旦停止する傾向がある。また、優先道路より非優先道路の道路幅が狭くても、非優先道路に道路勾配がある場合、非優先道路を下って走行する車両が一旦停止せずに交差点などを通過する傾向があるので、優先道路を走行中の車両が一旦停止あるいは徐行するほうが安全である。また、優先道路を走行中の車両から非優先道路を見たときに視界を阻害する遮蔽物がある場合、優先道路を走行中の車両から非優先道路での車両の一旦停止を確認し難いので、その優先道路を走行中の車両が一旦停止あるいは徐行するほうが安全である。
【0032】
そこで、予め規定されている交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けをする場合、優先道路に対して高い優先順位を付与し、非優先道路に対して低い優先順位を付与する。一方、道路構造パラメータの各パラメータの各値に基づいて各道路に対して優先順位付けをする場合、基本的には、道路幅のパラメータを利用し、優先道路と非優先道路との道路幅を比較し、道路幅が広い方の道路に対して高い優先順位を付与し、狭い方の道路に対して低い優先順位を付与する。ここでは、単純に、道路幅を大小比較するのではなく、非優先道路が広い場合でも所定量以上広いときだけ高い優先順位付けを付与するとよい。あるいは、道路幅で比較するのではなく、車線数で比較し、車線数の多い方の道路に対して高い優先順位を付与してもよい。さらに、道路勾配のパラメータを利用し、道路勾配がある否かを判定し、道路勾配がある場合、下る側の道路に対して高い優先順位を付与する。また、遮蔽物のパラメータを利用し、遮蔽物がある否かを判定し、遮蔽物がある場合、その遮蔽物がある側の道路に対する優先順位を下げる。なお、ここでは、道路構造のパラメータによる優先順位付けの一例を示しただけであり、道路構造の他のパラメータを利用して優先順位付けを行ってもよい。
【0033】
さらに、危険領域判定部13では、道路構造パラメータによる優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとを比較し、整合しているか否かを判定する。整合している場合、危険領域判定部13では、危険領域でない(予め規定されている交通ルールが遵守される可能性が高い領域である)と判断する。一方、不整合の場合、危険領域判定部13では、危険領域(予め規定されている交通ルールが違反される可能性が高い領域である)と判断する。
【0034】
図3には、優先道路Pと非優先道路Nとが交差する信号機の無い交差点Cであり、非優先道路Nの道路幅が優先道路Pの道路幅より広い場合の一例を示している。この交差点Cの場合、予め規定されている交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けをした場合、優先道路Pに対して高い優先順位が付与され、非優先道路Nに対して低い優先順位が付与される。一方、道路幅のパラメータに基づいて各道路に対して優先順位付けをした場合、道路幅が広い方の道路Nに対して高い優先順位が付与され、狭い方の道路Pに対して低い優先順位が付与される。したがって、この交差点Cでは、道路構造パラメータによる優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとが整合しないので、危険領域と判断される。
【0035】
図4には、優先道路Pと非優先道路Nとが交差する信号機の無い交差点Cであり、交差点Cに進入する一方側の優先道路P1の両側に遮蔽物S,Sが存在する場合の一例を示している。この交差点Cの場合、予め規定されている交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けをした場合、優先道路Pに対して高い優先順位が付与され、非優先道路Nに対して低い優先順位が付与される。一方、道路幅のパラメータに基づいて各道路に対して優先順位付けをした場合、同程度の道路幅なので、優先道路Pに対して高い優先順位が付与され、非優先道路Nに対して低い優先順位が付与される。さらに、遮蔽物のパラメータに基づいて各道路に対して優先順位付けをした場合、一方側の優先道路P1の両側に遮蔽物S,Sが存在するので、その一方側の優先道路P1に対して最も低い優先順位が付与される。つまり、他方側の優先道路P2の優先順位が最も高く、次に非優先道路Nの優先順位が高く、一方側の優先道路P1の優先順位が最も低い。したがって、この交差点Cでは、道路構造パラメータによる優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとが整合しないので、危険領域と判断される。
【0036】
図5には、優先道路Pと非優先道路Nとが交差する信号機の無い交差点Cであり、非優先道路Nに道路勾配が存在する場合の一例を示している。この交差点Cの場合、予め規定されている交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けをした場合、優先道路Pに対して高い優先順位が付与され、非優先道路Nに対して低い優先順位が付与される。一方、道路幅のパラメータに基づいて各道路に対して優先順位付けをした場合、道路幅が広い方の道路Pに対して高い優先順位が付与され、狭い方の道路Nに対して低い優先順位が付与される。さらに、道路勾配のパラメータに基づいて各道路に対して優先順付けをした場合、交差点Cに進入する非優先道路N1が道路を下る側なので、その下る側の非優先道路N1に対して最も高い優先順位が付与される。つまり、下る側の非優先道路N1の優先順位が最も高く、次に優先道路Pの優先順位が高く、上る側の非優先道路N2の優先順位が最も低い。したがって、この交差点Cでは、道路構造パラメータによる優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとが整合しないので、危険領域と判断される。
【0037】
図1及び図2を参照して、危険領域判定装置1における動作について説明する。特に、危険領域判定部13における処理については図6のフローチャートに沿って説明する。図6は、図1の危険領域判定部における処理の流れを示すフローチャートである。
【0038】
位置センサ10では、一定時間毎に、自車両の現在位置を検出している。危険領域判定部13では、位置センサ10から現在位置を取得する(S10)。
【0039】
そして、危険領域判定部13では、道路構造地図データベース11から現在位置周辺の各種道路構造パラメータを取得する(S11)。そして、危険領域判定部13では、各種道路構造パラメータに基づいて各道路に対して優先順位付けを行う(S12)。また、危険領域判定部13では、地図データベース12から現在位置周辺の交通ルールを取得し、その交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けを行う(S13)。
【0040】
危険領域判定部13では、道路構造パラメータによる優先順位付けと地図データベース12の交通ルールによる優先順位付けとが不整合か否かを判定する(S14)。S14にて不整合と判定した場合、危険領域判定部13では、その整合しなかった道路領域を危険領域と判定し(S15)、今回の処理を終了する。一方、S14にて整合と判定した場合、危険領域判定部13では、今回の処理を終了する。
【0041】
そして、危険領域判定装置1では、その危険領域に関する情報を各種運転支援装置あるいは自動運転装置に出力する。
【0042】
この危険領域判定装置1によれば、各領域において移動体が規定されている交通ルールを違反する可能性の高い危険領域を判定することにより、自車両周辺の移動体が規定されている交通ルールを違反した場合でも危険領域に基づいて自車両に対して適切な運転支援を行うことができ、安全性が向上する。特に、危険領域判定装置1によれば、道路構造に基づいて規定されている交通ルールが遵守/違反される可能性を判定することにより、既存の情報を利用して簡単に判定できる。
【0043】
図7及び図8を参照して、第2の実施の形態に係る危険領域判定装置2について説明する。図7は、第2の実施の形態に係る危険領域判定装置の構成図である。図8は、ノウハウ地図データベースに格納されている車両の動き情報の説明図である。
【0044】
危険領域判定装置2は、各領域において予め規定されている交通ルールが遵守される可能性が高いか否かを判定し、遵守される可能性が低い場合には危険領域とする。特に、危険領域判定装置2は、実際の交通実態に基づく遵守される可能性の高い交通ルールと予め規定されている交通ルールとの整合性で判定する。そのために、危険領域判定装置2は、位置センサ20、ノウハウ地図データベース21、地図データベース22、危険領域判定部23を備えている。ノウハウ地図データベース21、地図データベース22、危険領域判定部23は、CPU、ROM、RAMなどからなるECU内に構成される。なお、危険領域判定装置2における位置センサ20、地図データベース22は、第1の実施の形態に係る危険領域判定装置1における位置センサ10、地図データベース12と同様のものなので、その説明を省略する。
【0045】
なお、第2の実施の形態に係る危険領域判定装置2では、ノウハウ地図データベース21、地図データベース22及び危険領域判定部23が特許請求の範囲に記載する交通ルール取得手段に相当し、危険領域判定部23が特許請求の範囲に記載する領域取得手段に相当する。
【0046】
ノウハウ地図データベース21は、道路領域毎に車両(自動二輪車も含むものとする)の実際の動き情報を格納するデータベースである。動き情報としては、例えば、道路を走行する平均車速、交差する道路へ進入する手前での一旦停止率、違反情報(一方通行の逆走など)がある。これらの動き情報は、各領域における多数の走行中の車両に対する調査結果に基づいて生成される。したがって、このノウハウ地図データベース21には、各領域における実際の交通実態に応じた情報が格納されることになる。さらに、より交通実態に合った情報とするために、各時間帯、各曜日などでそれぞれ調査を行い、時間帯、曜日などの情報に対応付けて車両の動き情報を格納するとよい。
【0047】
この車両の動きの調査は、各交差点に設置されたセンサによって読み取ってデータベース化したものであってもよいし、人手による調査をデータベース化したものであってもよい。人手による調査にあっては、事故事例から交通ルールを逸脱した動き情報をデータベース化することが好ましい。また、車両に搭載したセンサによって取得した動き情報を自車両のECUに蓄積する構成をとってもよく、センサを搭載した車両が取得した動き情報をネットワークを介して共有するように構成してもよい。さらに、これらの手法を組み合わせてデータベース化してもよい。このデータベースの更新情報の提供は、CDなどのメディアによる配布、駐車場などに設置された有線通信網、路車間通信に代表される無線通信によって逐次行ってもよいし、放送によってブロードキャストすることもできる。
【0048】
図8に示す例の場合、優先道路Pと非優先道路Nとが交差する信号機が無い交差点Cである。優先道路Pの場合、一方側の走行車線における平均車速V1が40km/hで、一旦停止率R1が10%であり、他方側の走行車線における平均車速V2が38km/hで、一旦停止率R2が20%である。非優先道路Nの場合、一方側の走行車線における平均車速V3が20km/hで、一旦停止率R3が80%であり、他方側の走行車線における平均車速V4が15km/hで、一旦停止率R4が95%である。
【0049】
危険領域判定部23は、ノウハウ地図データベース21に格納される車両の動き情報と地図データベース22に格納される予め規定されている交通ルールに基づいて、各領域において予め規定されている交通ルールが違反される可能性が高い危険領域か否かを判定する処理部である。特に、優先道路と非優先道路とが交差するような信号機の無い交差点、合流点などを含む所定領域に入った場合に、この処理を行うとよい。
【0050】
具体的には、危険領域判定部23では、位置センサ20から現在位置を取得すると、ノウハウ地図データベース21から現在位置周辺領域の車両の動き情報を取得するとともに、地図データベース22から現在位置周辺領域の予め規定されている交通ルール(優先道路と非優先道路との関係(一方通行情報も含む)を示す交通ルール)を取得する。
【0051】
そして、危険領域判定部23では、車両の動き情報に基づいて各道路に対して優先順位付けをするとともに、予め規定されている交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けをする。
【0052】
例えば、実際の交通状況において、車両の平均車速が高い道路の方が、交差点などで車両が車速を低下させることが少ないと予測できるので、他の道路よりも優先して走行可能な道路である。また、一旦停止率が低い道路の方が、交差点などで一旦停止することが少ないので、他の道路よりも優先して走行可能な道路である。また、時間帯などによって一方通行を逆走する車両(違反車両)が多い場合、その一方走行に従って進入すると安全性が低下するので、その時間帯では進入可能な一方通行であるが進入禁止にするほうがよい。
【0053】
予め規定されている交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けをする場合、第1の実施の形態と同様の方法により優先順位を付与する。一方、車両の動き情報に基づいて各道路に対して優先順位付けをする場合、基本的に、平均車速を利用し、平均車速が高い方の道路に対して高い優先順位を付与し、低い方の道路に対して低い優先順位を付与するとともに、一旦停止率を利用し、一旦停止率が低い方の道路に対して高い優先順位を付与し、高い方の道路に対して低い優先順位を付与する。ここでは、平均車速と一旦停止率とにそれぞれ重みを付けて1つのパラメータとして判定してもよい。あるいは、平均車速と一旦停止率のいずれか一方のパラメータだけを利用して判定してもよい。さらに、一方通行道路における逆走情報を利用し、一方通行道路での逆走車両が多いか否かを判定し、逆走車両が多い場合、その道路に対する進入禁止を付与する。なお、ここでは、車両の動き情報による優先順位付けの一例を示しただけであり、車両の他の動き情報を利用して優先順位付けを行ってもよい。
【0054】
さらに、危険領域判定部23では、車両の動き情報による優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとを比較し、整合しているか否かを判定する。整合している場合、危険領域判定部23では、危険領域でないと判断する。一方、不整合の場合、危険領域判定部13では、危険領域と判断する。
【0055】
図9には、優先道路Pと非優先道路Nとが交差する信号機の無い交差点Cであり、非優先道路Nが一方通行の場合の一例を示している。この交差点Cの場合、予め規定されている交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けをした場合、優先道路Pに対して高い優先順位が付与され、非優先道路Nに対して低い優先順位が付与される。一方、平均車速や一旦停止率に基づいて各道路に対して優先順位付けをした場合、平均車速が高くかつ一旦停止率が低い優先道路Pに対して高い優先順位が付与され、非優先道路Nに対して低い優先順位が付与される。さらに、一方通行についての違反情報に基づいて各道路に対して優先順位付けした場合、通勤時間帯において一方通行道路N1(優先道路Pから進入可であり、優先道路Pへの進入が禁止の道路)を逆走して、優先道路Pに進入する車両が多い違反情報により、その時間帯においては優先道路Pから一方通行道路N1への進入を禁止(最低レベルの優先順位)する。
【0056】
図7及び図8を参照して、危険領域判定装置2における動作について説明する。特に、危険領域判定部23における処理については図10のフローチャートに沿って説明する。図10は、図7の危険領域判定部における処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
位置センサ20では、一定時間毎に、自車両の現在位置を検出している。危険領域判定部23では、位置センサ20から現在位置を取得する(S20)。
【0058】
そして、危険領域判定部23では、ノウハウ地図データベース21から現在位置周辺の車両の動き情報を取得する(S21)。そして、危険領域判定部23では、車両の動き情報に基づいて各道路に対して優先順位付けを行う(S22)。また、危険領域判定部23では、地図データベース22から現在位置周辺の交通ルールを取得し、その交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けを行う(S23)。
【0059】
危険領域判定部23では、車両の動き情報による優先順位付けと地図データベース22による優先順位付けとが不整合か否かを判定する(S24)。S24にて不整合と判定した場合、危険領域判定部23では、整合しなかった道路領域を危険領域と判定し(S25)、今回の処理を終了する。一方、S24にて整合と判定した場合、危険領域判定部23では、今回の処理を終了する。
【0060】
そして、危険領域判定装置2では、その危険領域に関する情報を各種運転支援装置あるいは自動運転装置に出力する。
【0061】
この危険領域判定装置2によれば、各領域において移動体が規定されている交通ルールを違反する可能性の高い危険領域を判定することにより、自車両周辺の移動体が規定されている交通ルールを違反した場合でも危険領域に基づいて自車両に対して適切な運転支援を行うことができ、安全性が向上する。特に、危険領域判定装置2によれば、各領域における実際の車両の動き情報に基づいて規定されている交通ルールが遵守/違反される可能性を判定することにより、実際の交通実態に応じた高精度な判定ができる。
【0062】
図11及び図2を参照して、第1の実施の形態に係るルール補正装置3について説明する。図11は、第1の実施の形態に係るルール補正装置の構成図である。
【0063】
ルール補正装置3は、各領域において予め規定されている交通ルールが遵守される可能性が高いか否かを判定し、遵守される可能性が低い場合には交通ルールを補正する。特に、ルール補正装置3は、道路構造に基づく遵守される可能性の高い交通ルールに従って交通ルールを補正する。そのために、ルール補正装置3は、位置センサ30、道路構造地図データベース31、地図データベース32、ルール整合性判定部33、ルール補正部34を備えている。道路構造地図データベース31、地図データベース32、ルール整合性判定部33、ルール補正部34は、CPU、ROM、RAMなどからなるECU内に構成される。なお、ルール補正装置3における位置センサ30、道路構造地図データベース31、地図データベース32は、第1の実施の形態に係る危険領域判定装置1における位置センサ10、道路構造地図データベース11、地図データベース12と同様のものなので、その説明を省略する。
【0064】
なお、第1の実施の形態に係るルール補正装置3では、道路構造地図データベース31、地図データベース32、ルール整合性判定部33及びルール補正部34が特許請求の範囲に記載する交通ルール取得手段に相当し、ルール補正部34が特許請求の範囲に記載する交通ルール修正手段に相当する。
【0065】
ルール整合性判定部33は、道路構造地図データベース31に格納される道路構造パラメータと地図データベース32に格納される交通ルールに基づいて、各領域において道路構造上で予測される交通ルールと予め規定されている交通ルールとの整合性を判定する処理部である。特に、優先道路と非優先道路とが交差するような信号機の無い交差点、合流点などを含む所定領域に入った場合に、この処理を行うとよい。
【0066】
具体的には、ルール整合性判定部33では、第1の実施の形態に係る危険領域判定装置1の危険領域判定部13と同様の処理により、道路構造パラメータの各パラメータの各値に基づいて各道路に対して優先順位付けをするとともに、予め規定されている交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けをする。そして、ルール整合性判定部33では、道路構造パラメータによる優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとを比較し、整合しているか否かを判定する。
【0067】
ルール補正部34は、ルール整合性判定部33で道路構造パラメータによる優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとが整合していないと判定した場合、道路構造パラメータに基づく交通ルールに補正する処理部である。
【0068】
具体的には、整合していない場合、ルール補正部34では、地図データベース32の交通ルールに従った優先順位付けが道路構造パラメータによる優先順位付けになるようにルールを補正(追加)する。つまり、地図データベース32に格納されている交通ルールで優先順位付けを行った場合に道路構造パラメータによる優先順位付けとなるように、地図データベース32に格納されている交通ルールを修正あるいは新たな交通ルールを追加する。例えば、道路構造パラメータによる優先順位付けで優先道路より非優先道路の優先順位が高い場合、優先道路側で一旦停止するという交通ルールを追加するかあるいは非優先道路と優先道路との関係を逆転させた交通ルールに修正する。
【0069】
なお、自車両の走行予定経路上での交通ルールだけを補正してもよい。この場合、自車両の走行予定経路上において予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けが道路構造パラメータによる優先順位付けより低いか否かを判定し、予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けが道路構造パラメータによる優先順位付けより低い場合には自車両の走行予定経路上での地図データベース32の交通ルールに従った優先順位付けが道路構造パラメータによる優先順位付けより以下になるように交通ルールを補正(追加)する。
【0070】
図3に示す例の場合、上記したように、交差点Cでは、道路構造パラメータによる優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとが整合しない。そこで、非優先道路Nよりも道路幅の狭い優先道路Pでは一旦停止あるいは徐行する交通ルールを追加する。
【0071】
図4に示す例の場合、上記したように、交差点Cでは、道路構造パラメータによる優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとが整合しない。そこで、遮蔽物S,Sが両側に存在する優先道路P1では一旦停止あるいは徐行する交通ルールを追加する。
【0072】
図5に示す例の場合、上記したように、交差点Cでは、道路構造パラメータによる優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとが整合しない。そこで、下り側の非優先道路N1と交差する優先道路Pでは一旦停止あるいは徐行する交通ルールを追加する。
【0073】
図11及び図2を参照して、ルール補正装置3における動作について説明する。特に、ルール整合性判定部33及びルール補正部34における処理については図12のフローチャートに沿って説明する。図12は、図11のルール整合性判定部及びルール補正部における処理の流れを示すフローチャートである。
【0074】
位置センサ30では、一定時間毎に、自車両の現在位置を検出している。ルール整合性判定部33では、位置センサ30から現在位置を取得する(S30)。
【0075】
そして、ルール整合性判定部33では、道路構造地図データベース31から現在位置周辺の各種道路構造パラメータを取得する(S31)。そして、ルール整合性判定部33では、各種道路構造パラメータに基づいて各道路に対して優先順位付けを行う(S32)。また、ルール整合性判定部33では、地図データベース32から現在位置周辺の交通ルールを取得し、その交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けを行う(S33)。
【0076】
ルール整合性判定部33では、道路構造パラメータによる優先順位付けと地図データベース32による優先順位付けとが不整合か否かを判定する(S34)。S34にて不整合と判定した場合、ルール補正部34では、地図データベース32による優先順位付けが道路構造パラメータによる優先順位付けとなるように地図データベース32におけるルールを補正し(S35)、今回の処理を終了する。一方、S34にて整合と判定した場合、ルール補正部34では、ルール補正せずに、今回の処理を終了する。
【0077】
そして、各種運転支援装置あるいは自動運転装置では、その地図データベース32を利用して各種処理を行う。
【0078】
このルール補正装置3によれば、各領域において移動体が規定されている交通ルールを遵守する可能性の低い場合には交通ルールを補正することにより、自車両周辺の移動体が規定されている交通ルールを違反した場合でもその補正した交通ルールに基づいて自車両に対して適切な運転支援を行うことができ、安全性が向上する。特に、ルール補正装置3によれば、道路構造に基づいて規定されている交通ルールが遵守/違反される可能性を判定するとともにルール補正することにより、既存の情報を利用して簡単に判定及びルール補正できる。
【0079】
なお、ルール補正は、道路構造に基づいて自車両の走行する車線が一旦停止である場合に一旦停止を解除するように補正することも可能である。しかしながら、補正の結果の自車両の走行状態が本来の交通ルールに反する場合には、交通ルールを補正しないことが好ましい。
【0080】
図13及び図8を参照して、第2の実施の形態に係るルール補正装置4について説明する。図13は、第2の実施の形態に係るルール補正装置の構成図である。
【0081】
ルール補正装置4は、各領域において予め規定されている交通ルールが遵守される可能性が高いか否かを判定し、遵守される可能性が低い場合には交通ルールを補正する。特に、ルール補正装置4は、実際の交通実態に基づく遵守される可能性の高い交通ルールに従って交通ルールを補正する。そのために、ルール補正装置4は、位置センサ40、ノウハウ地図データベース41、地図データベース42、ルール整合性判定部43、ルール補正部44を備えている。ノウハウ地図データベース41、地図データベース42、ルール整合性判定部43、ルール補正部44は、CPU、ROM、RAMなどからなるECU内に構成される。なお、ルール補正装置4における位置センサ40、ノウハウ地図データベース41、地図データベース42は、第2の実施の形態に係る危険領域判定装置2における位置センサ20、ノウハウ地図データベース21、地図データベース22と同様のものなので、その説明を省略する。
【0082】
なお、第2の実施の形態に係るルール補正装置4では、ノウハウ地図データベース41、地図データベース42、ルール整合性判定部43及びルール補正部44が特許請求の範囲に記載する交通ルール取得手段に相当し、ルール補正部44が特許請求の範囲に記載する交通ルール修正手段に相当する。
【0083】
ルール整合性判定部43は、ノウハウ地図データベース41に格納される車両の動き情報と地図データベース42に格納される予め規定されている交通ルールに基づいて、各領域において予め規定されている交通ルールが遵守される可能性が高いか否かを判定する処理部である。特に、優先道路と非優先道路とが交差するような信号機の無い交差点、合流点などを含む所定領域に入った場合に、この処理を行うとよい。
【0084】
具体的には、ルール整合性判定部43では、第2の実施の形態に係る危険領域判定装置2の危険領域判定部23と同様の処理により、車両の動き情報に基づいて各道路に対して優先順位付けをするとともに、予め規定されている交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けをする。そして、ルール整合性判定部43では、車両の動き情報による優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとを比較し、整合しているか否かを判定する。
【0085】
ルール補正部44は、ルール整合性判定部43で車両の動き情報による優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとが整合していないと判定した場合、車両の動き情報に基づく交通ルールに補正する処理部である。
【0086】
具体的には、整合していない場合、ルール補正部44では、地図データベース42の交通ルールに従った優先順位付けが車両の動き情報による優先順位付けになるようにルールを補正(追加)する。つまり、地図データベース42に格納されている交通ルールで優先順位付けを行った場合に車両の動き情報による優先順位付けとなるように、地図データベース42に格納されている交通ルールを修正あるいは新たな交通ルールを追加する。例えば、車両の動き情報によって特定時間帯において多数の逆走車両が存在するので、進入禁止にするために、一方通行道路に対して最も低い優先順位の場合、特定時間帯のみ一方通行道路への進入を禁止する交通ルールを追加する。
【0087】
なお、第1の実施の形態に係るルール補正装置3でも記載したように、自車両の走行予定経路上での交通ルールだけを補正してもよい。
【0088】
図9に示す例の場合、上記したように、交差点Cでは、車両の動き情報による優先順位付けと予め規定されている交通ルールに従った優先順位付けとが整合しない。そこで、特定時間帯(通勤時間帯)に限定して一方通行道路N1への進入を禁止する交通ルールを追加する。
【0089】
図13及び図8を参照して、ルール補正装置4における動作について説明する。特に、ルール整合性判定部43及びルール補正部44における処理については図14のフローチャートに沿って説明する。図14は、図13のルール整合性判定部及びルール補正部における処理の流れを示すフローチャートである。
【0090】
位置センサ40では、一定時間毎に、自車両の現在位置を検出している。ルール整合性判定部43では、位置センサ40から現在位置を取得する(S40)。
【0091】
そして、ルール整合性判定部43では、ノウハウ地図データベース41から現在位置周辺の車両の動き情報を取得する(S41)。そして、ルール整合性判定部43では、車両の動き情報に基づいて各道路に対して優先順位付けを行う(S42)。また、ルール整合性判定部43では、地図データベース42から現在位置周辺の交通ルールを取得し、その交通ルールに従って各道路に対して優先順位付けを行う(S43)。
【0092】
ルール整合性判定部43では、車両の動き情報による優先順位付けと地図データベース42による優先順位付けとが不整合か否かを判定する(S44)。S44にて不整合と判定した場合、ルール補正部44では、地図データベース42による優先順位付けが車両の動き情報による優先順位付けとなるように地図データベース42におけるルールを補正し(S45)、今回の処理を終了する。一方、S44にて整合と判定した場合、ルール補正部44では、ルール補正せずに、今回の処理を終了する。
【0093】
そして、各種運転支援装置あるいは自動運転装置では、その地図データベース42を利用して各種処理を行う。
【0094】
このルール補正装置4によれば、各領域において移動体が規定されている交通ルールを遵守する可能性の低い場合には交通ルールを補正することにより、自車両周辺の移動体が規定されている交通ルールを違反した場合でもその補正した交通ルールに基づいて自車両に対して適切な運転支援を行うことができ、安全性が向上する。特に、ルール補正装置4によれば、各領域における実際の車両の動き情報に基づいて規定されている交通ルールが遵守/違反される可能性を判定するとともにルール補正することにより、実際の交通実態に応じて高精度な判定及びルール補正ができる。
【0095】
図15を参照して、本実施の形態に係る運転支援装置5について説明する。図15は、本実施の形態に係る運転支援装置の構成図である。
【0096】
運転支援装置5は、各領域において自車両が実際に遵守される可能性の高い交通ルールを違反する可能性の高い場合には運転者に対して警報を行う。特に、運転支援装置5は、ルール補正装置で補正された(補正されていない場合もある)地図データベースに格納される交通ルールに違反するか否かを判定する。運転支援装置5は、ルール補正装置50(地図データベース50a)、自車センサ51、警報装置52、ルール遵守判定部53を備えている。ルール補正装置50の一部、ルール遵守判定部53は、CPU、ROM、RAMなどからなるECU内に構成される。
【0097】
なお、本実施の形態に係る運転支援装置5では、ルール補正装置50が特許請求の範囲に記載する交通ルール取得手段及び交通ルール修正手段に相当する。
【0098】
ルール補正装置50は、第1の実施の形態に係るルール補正装置3と第2の実施の形態に係るルール補正装置4のいずれか一方のルール補正装置が適用される。ルール補正装置50では、上記で説明したルール補正装置3又はルール補正装置4と同様の処理を行い、補正処理を施した地図データベース50a(地図データベース32又は地図データベース42に相当)を提供する。
【0099】
地図データベース32に相当する地図データベース50aの場合、領域毎に道路構造に基づく優先順位付けとなるような補正(追加)が施された交通ルールが格納されている。また、地図データベース42に相当する地図データベース50aの場合、領域毎に実際の交通実態に基づく優先順位付けとなるような補正(追加)が施された交通ルールが格納されている。道路構造に基づく優先順位付け又は実際の交通実態に基づく優先順位付けが予め規定されている交通ルールに基づく優先順位付けと整合している場合、補正が施されておらず、予め規定されている交通ルールのままである。したがって、この地図データベース50aに格納されている領域毎の交通ルールは、各領域において最も遵守される可能性の高い交通ルールである。
【0100】
自車センサ51は、自車両の各種走行状態を検出するセンサである。走行状態としては、例えば、現在位置、車速、舵角、アクセル操作、ブレーキ操作、ステアリング操作、ウインカ操作などである。
【0101】
警報装置52は、現状の走行状態では自車両が交通ルールを遵守できないことを知らせる警報を出力する装置である。警報装置52では、ルール遵守判定部53からルール遵守不可信号を受信すると警報音を出力し、ルール遵守可能信号を受信すると警報音を出力しない。なお、警報音の変わり、「一旦停止して下さい。」、「左折を中止して下さい。」などの警報音声でもよい。
【0102】
ルール遵守判定部53は、各領域において地図データベース50aに格納されている交通ルールを自車両が遵守可能か否かを判定し、その判定結果に基づいて警報装置52を出力制御する処理部である。特に、優先道路と非優先道路とが交差するような信号機の無い交差点、合流点などを含む所定領域に入った場合に、この処理を行うとよい。
【0103】
具体的には、ルール遵守判定部53では、自車センサ51から自車両の各種走行状態を取得するともに、地図データベース50aから現在位置周辺の交通ルール(最も遵守される可能性の高い交通ルール)を取得する。
【0104】
そして、ルール遵守判定部53では、自車両の現状での走行状態において通常操作範囲内で運転操作が行われた場合に、自車両の走行予定経路上(あるいは、走行予定経路がない場合には走行中の道路)の交通ルールを遵守できるか否かを判定する。通常操作範囲は、例えば、加減速が0.2G以下になるよう運転操作である。例えば、ある交差点において自車両が走行中の道路では交差点に進入する前に一旦停止という交通ルールがある場合、交差点から所定距離離れた位置を所定車速で走行中の自車両が、0.2G程度の減速を発生する減速操作が行われた場合に交差点の手前で停止できるか否かを判定する。
【0105】
交通ルールを遵守できる場合、ルール遵守判定部53では、警報音を出力しないために、警報装置52にルール遵守可能信号を送信する。一方、交通ルールを遵守できない場合、ルール遵守判定部53では、警報音を出力するために、警報装置52にルール遵守不可信号を送信する。
【0106】
図3に示す例の場合に、自車両MVが優先道路Pを走行していたとする。この例の場合、優先道路Pより非優先道路Nの優先順位が高くなるようにルール補正され、優先道路Pでは一旦停止あるいは徐行という交通ルールが追加されている。したがって、自車両MVが優先道路Pを走行しているにもかかわらず、自車両MVが交差点Cに近づき、一旦停止できないような走行状態であると警報音が出力される。
【0107】
図4に示す例の場合に、自車両MVが両側に遮蔽物S,Sが存在する優先道路P1を走行していたとする。この例の場合、優先道路P1の優先順位が最も低くなるようにルール補正され、優先道路P1では一旦停止あるいは徐行という交通ルールが追加されている。したがって、自車両MVが優先道路P1を走行しているにもかかわらず、自車両MVが交差点Cに近づき、一旦停止できないような走行状態であると警報音が出力される。
【0108】
図5に示す例の場合に、自車両MVが優先道路Pを走行していたとする。この例の場合、優先道路Pよりも下る側の非優先道路N1の優先順位が最も高くなるようにルール補正され、優先道路Pでは一旦停止あるいは徐行という交通ルールが追加されている。したがって、自車両MVが優先道路Pを走行しているにもかかわらず、自車両MVが交差点Cに近づき、一旦停止できないような走行状態であると警報音が出力される。
【0109】
図9に示す例の場合に、自車両MVが優先道路Pを走行していたとする。この例の場合、通勤時間帯においては一方通行道路N1への進入を禁止するようにルール補正され、通勤時間帯においては一方通行道路N1への進入禁止という交通ルールが追加されている。したがって、自車両MVが左折して進入可能な一方通行道路N1にもかかわらず、自車両MVが左ウインカ操作などして左折の意志を示すと、警報音が出力される。
【0110】
図15を参照して、運転支援装置5における動作について説明する。特に、ルール遵守判定部53における処理については図16のフローチャートに沿って説明する。図16は、図15のルール遵守判定部における処理の流れを示すフローチャートである。
【0111】
ルール補正装置50では、上記した第1の実施の形態に係るルール補正装置3又は第2の実施の形態に係るルール補正装置4のいずれかの動作を行い、必要に応じて地図データベース50aの交通ルールを補正している。
【0112】
自車センサ51では、一定時間毎に、自車両の各種走行状態を検出している。ルール遵守判定部53では、自車両の走行状態を取得する(S50)。また、ルール遵守判定部53では、地図データベース50aから現在位置周辺の交通ルールを取得する(S51)。
【0113】
ルール遵守判定部53では、自車両の現在の走行状態から通常操作範囲で自車両の走行予定経路上の交通ルールを遵守できるかを判定し(S52)、その判定結果から交通ルールを遵守可能か否かを判別する(S53)。
【0114】
S53にて交通ルールを遵守可能の場合、ルール遵守判定部53では、ルール遵守可能信号を警報装置52に送信する。このルール遵守可能信号を受信すると、警報装置52では、警報音を出力しない。S53にて交通ルールを遵守不能の場合、ルール遵守判定部53では、ルール遵守不可信号を警報装置52に送信する。このルール遵守不可信号を受信すると、警報装置52では、警報音を出力する。この警報音によって、運転者は、一旦停止などの必要性を認識する。
【0115】
この運転支援装置5によれば、自車両が各領域において最も遵守される可能性が高い交通ルールを遵守できないような状況の場合には警報を行うことにより、自車両周辺の移動体が規定されている交通ルールを違反した場合でも安全性を確保できる。特に、運転支援装置5によれば、道路構造に基づいて補正された交通ルール又は実際の交通実態に基づいて補正された交通ルールを用いることにより、各領域の状況に適した交通ルールで判定することができる。
【0116】
図17を参照して、本実施の形態に係る自動運転装置6について説明する。図17は、本実施の形態に係る自動運転装置の構成図である。
【0117】
自動運転装置6は、複数の進路候補から各領域において実際に遵守される可能性の高い交通ルールに基づいて進路候補(目標進路)を選択し、目標進路に従って走行するように自動運転制御する。特に、自動運転装置6は、各進路候補がルール補正装置で補正された(補正されていない場合もある)地図データベースに格納される交通ルールを遵守できるか否かを判定する。自動運転装置6は、ルール補正装置60(道路構造地図データベース60a、地図データベース60b)、自車センサ61、操舵アクチュエータ62、スロットルアクチュエータ63、ブレーキアクチュエータ64、進路計画部65を備えている。ルール補正装置60の一部、進路計画部65は、CPU、ROM、RAMなどからなるECU内に構成される。なお、自動運転装置6における自車センサ61は本実施の形態に係る運転支援装置5における自車センサ51と同様のものであり、その説明を省略する。
【0118】
なお、本実施の形態に係る自動運転装置6では、ルール補正装置60が特許請求の範囲に記載する交通ルール取得手段及び交通ルール修正手段に相当し、進路計画部65が特許請求の範囲に記載する自車両走行進路取得手段に相当する。
【0119】
ルール補正装置60は、本実施の形態に係る運転支援装置5のルール補正装置50と同様に、第1の実施の形態に係るルール補正装置3と第2の実施の形態に係るルール補正装置4のいずれか一方のルール補正装置が適用される。
【0120】
操舵アクチュエータ62は、モータによる回転駆動力を減速機構を介してステアリング機構(ラック、ピニオン、コラムなど)に伝達し、ステアリング機構に操舵トルクを付与するためのアクチュエータである。操舵アクチュエータ62では、進路計画部65から操舵制御信号を受信すると、操舵制御信号に応じてモータが回転駆動して操舵トルクを発生させる。
【0121】
スロットルアクチュエータ63は、エンジンのスロットルバルブの開度を調整するアクチュエータである。スロットルアクチュエータ63では、進路計画部65からのエンジン制御信号を受信すると、エンジン制御信号に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。
【0122】
ブレーキアクチュエータ64は、各車輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ64では、進路計画部65からのブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。
【0123】
進路計画部65は、複数の進路候補を生成し、複数の進路候補の中から地図データベース60bに格納されている交通ルールを遵守可能な最適な進路候補(目標進路)を選択し、目標進路に従って走行するように各アクチュエータ62,63,64を制御する処理部である。
【0124】
具体的には、進路計画部65では、自車センサ61から自車両の各種走行状態を取得する。また、進路計画部65では、道路構造地図データベース60aから現在位置周辺の道路構造を取得するともに、地図データベース60bから現在位置周辺の地図情報を取得する。そして、進路計画部65では、自車両の現在の走行状態及び道路構造や地図情報に基づいて目的地に向かって進行するための複数の進路候補を生成する。この生成方法としては、例えば、自車両が取り得る進路を網羅的に算出する。網羅的な算出方法としては、自車両の運転者が全ての操作を一様に操作ものとして進路をそれぞれ算出する。
【0125】
進路計画部65では、地図データベース60bから現在位置周辺の交通ルール(最も遵守される可能性の高い交通ルール)を取得する。そして、進路計画部65では、生成した複数の進路の中から自車両の走行予定進路上の交通ルールを遵守可能な最適な進路候補(目標進路)を選択する。
【0126】
なお、最適な進路候補を選択する処理として以下の処理も行うとよい。複数の進路候補の中から交通ルールを遵守可能な進路候補(複数)を絞る。また、自車両周辺の移動体毎に、複数の進路候補を生成し(移動体走行進路取得手段に相当)、その複数の進路候補の中から交通ルールを遵守可能な進路候補を絞る。そして、自車両の絞った進路候補と移動体毎の絞った進路候補との衝突確率をそれぞれ算出し、自車両の絞った進路候補の中から障害物との衝突確率が最も低くなるような進路候補を選択する。最適な進路候補を選択する方法としては、この他にも様々な方法が適用可能である。
【0127】
目標進路を選択すると、進路計画部65では、現在の自車両の走行状態などに基づいて目標進路に従って走行するために必要な操舵制御量、スロットル制御量、ブレーキ制御量をそれぞれ算出する。そして、進路計画部65では、操舵制御量を示す操舵制御信号を操舵アクチュエータ62に送信し、スロットル制御量を示すエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ63に送信し、ブレーキ制御量を示すブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ64に送信する。
【0128】
図3に示す例の場合に、自車両MVが優先道路Pを走行していたとする。この場合、交差点Cに近づいた自車両MVに対して複数の進路候補が生成される。また、優先道路Pより非優先道路Nの優先順位が高くなるようにルール補正され、優先道路Pでは一旦停止あるいは徐行という交通ルールが追加されている。したがって、自車両MVが優先道路Pを走行しているにもかかわらず、その複数の進路候補の中から交差点Cの手前で一旦停止あるいは減速するような進路候補が選択される。
【0129】
図4に示す例の場合に、自車両MVが両側に遮蔽物S,Sが存在する優先道路P1を走行していたとする。この場合、交差点Cに近づいた自車両MVに対して複数の進路候補が生成される。また、優先道路P1の優先順位が最も低くなるようにルール補正され、優先道路P1では一旦停止あるいは徐行という交通ルールが追加されている。したがって、自車両MVが優先道路P1を走行しているにもかかわらず、その複数の進路候補の中から交差点Cの手前で一旦停止あるいは減速するような進路候補が選択される。
【0130】
図5に示す例の場合に、自車両MVが優先道路Pを走行していたとする。この場合、交差点Cに近づいた自車両MVに対して複数の進路候補が生成される。また、下る側の非優先道路N1の優先順位が最も高くなるようにルール補正され、優先道路Pでは一旦停止あるいは徐行という交通ルールが追加されている。したがって、自車両MVが優先道路Pを走行しているにもかかわらず、その複数の進路候補の中から交差点Cの手前で一旦停止あるいは減速するような進路候補が選択される。
【0131】
図9に示す例の場合に、自車両MVが優先道路Pを走行していたとする。この場合、交差点Cに近づいた自車両MVに対して複数の進路候補が生成される。また、通勤時間帯においては一方通行道路N1への進入を禁止するようにルール補正され、通勤時間帯においては一方通行道路N1への進入禁止という交通ルールが追加されている。したがって、自車両MVが左折した方が効率のよい進路候補があるにもかかわらず、その複数の進路候補の中から交差点Cを直進するような進路候補が選択される。
【0132】
図17を参照して、自動運転装置6における動作について説明する。特に、進路計画部65における処理については図18のフローチャートに沿って説明する。図18は、図17の進路計画部における処理の流れを示すフローチャートである。
【0133】
ルール補正装置60では、上記した第1の実施の形態に係るルール補正装置3又は第2の実施の形態に係るルール補正装置4のいずれかの動作を行い、必要に応じて地図データベース60bの交通ルールを補正している。
【0134】
自車センサ61では、一定時間毎に、自車両の各種走行状態を検出している。進路計画部65では、自車両の走行状態を取得する(S60)。また、進路計画部65では、道路構造地図データベース60aから現在位置周辺の道路構造を取得する(S61)。また、進路計画部65では、地図データベース60bから現在位置周辺の地図情報を取得する(S62)。そして、進路計画部65では、自車両の走行状態及び道路構造や地図情報に基づいて複数の進路候補を生成する(S63)。
【0135】
進路計画部65では、地図データベース60bから現在位置周辺の交通ルールを取得する(S64)。そして、進路計画部65では、複数の進路候補の中から走行予定経路上の交通ルールを遵守可能な最適な進路候補(目標進路)を選択する(S65)。
【0136】
進路計画部65では、目標進路に従って走行するために必要な各アクチュエータ62,63,63の制御量をそれぞれ算出する(S66)。そして、進路計画部65では、操舵制御信号を操舵アクチュエータ62に送信し、エンジン制御信号をスロットルアクチュエータ63に送信し、ブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ64に送信する。操舵制御信号を受信すると、操舵アクチュエータ62では、操舵制御信号に応じて操舵トルクを発生させ、ステアリング機構に所定の操舵力を付加する。エンジン制御信号を受信すると、スロットルアクチュエータ63では、エンジン制御信号に応じてスロットルバルブの開度を調整し、所定のエンジン出力を発生させる。ブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキアクチュエータ64では、ブレーキ制御信号に応じてホイールシリンダのブレーキ油圧を調整し、所定のブレーキ力を発生させる。これによって、自車両は、目標進路に沿って走行する。
【0137】
この自動運転装置6によれば、各領域において最も遵守される可能性が高い交通ルールを遵守するような最適な進路候補を目標進路として自動運転を行うことにより、自車両周辺の移動体との関係で安全性を確保した上で自車両が目的地に向かって進む効率も向上し、安全と効率の両立を図ることができる。特に、自動運転装置6によれば、道路構造に基づいて補正された交通ルール又は実際の交通実態に基づいて補正された交通ルールを用いることにより、各領域の状況に適した交通ルールで判定することができる。
【0138】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0139】
例えば、本実施の形態では危険領域判定装置、ルール補正装置、運転支援装置(警報出力)、自動運転装置に適用したが、各領域(交差点など)において移動体が遵守する可能性の高い交通ルールや危険領域の情報を必要とするような他の運転支援装置に適用してもよい。
【0140】
また、本実施の形態では実際に遵守される可能性の高い交通ルールと予め規定されている交通ルールとが整合しない場合に交通ルールを補正する構成としたが、実際に遵守される可能性の高い交通ルールに従った新たな交通ルールを生成するようにしてもよい。
【0141】
また、本実施の形態では主に道路間の優先と非優先との関係を示す交通ルールを対象としたが、他の様々な交通ルールに適用できる。
【0142】
また、第1の実施の形態に係る危険領域判定方法(道路構造に基づく方法)と第2の実施の形態に係る危険領域判定方法(実際の交通実態に基づく方法)を組み合わせた方法で危険領域判定を行ってもよい。また、第1の実施の形態に係るルール補正方法(道路構造に基づく方法)と第2の実施の形態に係るルール補正方法(実際の交通実態に基づく方法)を組み合わせた方法で交通ルールの補正を行ってもよい。
【0143】
また、本実施の形態に係る運転支援装置では自車両が交通ルールを遵守できないと判定した場合には警報を出力する構成としたが、自動ブレーキなどの他の運転支援を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】第1の実施の形態に係る危険領域判定装置の構成図である。
【図2】道路構造地図データベースに格納されている道路構造パラメータの説明図である。
【図3】優先道路の道路幅が非優先道路の道路幅よりも狭い交差点の例である。
【図4】優先道路の出口付近に遮蔽物がある交差点の例である。
【図5】非優先道路に勾配がある交差点の例である。
【図6】図1の危険領域判定部における処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態に係る危険領域判定装置の構成図である。
【図8】ノウハウ地図データベースに格納されている車両の動き情報の説明図である。
【図9】逆走車両が多発する一方通行道路が交差する交差点の例である。
【図10】図7の危険領域判定部における処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】第1の実施の形態に係るルール補正装置の構成図である。
【図12】図11のルール整合性判定部及びルール補正部における処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】第2の実施の形態に係るルール補正装置の構成図である。
【図14】図13のルール整合性判定部及びルール補正部における処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】本実施の形態に係る運転支援装置の構成図である。
【図16】図15のルール遵守判定部における処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】本実施の形態に係る自動運転装置の構成図である。
【図18】図17の進路計画部における処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0145】
1,2…危険領域判定装置、3,4,50,60…ルール補正装置、5…運転支援装置、7…自動運転装置、10,20,30,40…位置センサ、11,31,60a…道路構造地図データベース、12,22,32,42,50a,60b…地図データベース、13,23…危険領域判定部、21,41…ノウハウ地図データベース、33,43…ルール整合性判定部、34,44…ルール補正部、51,61…自車センサ、52…警報装置、53…ルール遵守判定部、62…操舵アクチュエータ、63…スロットルアクチュエータ、64…ブレーキアクチュエータ、65…進路計画部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の交通ルールに基づいて運転支援を行う運転支援装置であって、
任意の領域において移動体が遵守する可能性の高い交通ルールを取得する交通ルール取得手段を備え、
前記交通ルール取得手段で取得した交通ルールに基づいて運転支援を行うことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
任意の領域において規定されている交通ルールと前記交通ルール取得手段で取得した交通ルールとが整合しない交通ルール逸脱領域を取得する領域取得手段を備えることを特徴とする請求項1に記載する運転支援装置。
【請求項3】
任意の領域において規定されている交通ルールと前記交通ルール取得手段で取得した交通ルールとが整合しない場合には前記交通ルール取得手段で取得した交通ルールに修正する交通ルール修正手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載する運転支援装置。
【請求項4】
自車両の複数の走行進路を取得する自車両走行進路取得手段を備え、
前記交通ルール取得手段で取得した交通ルールに基づいて自車両の複数の走行進路から自車両の走行進路を選択し、当該選択した自車両の走行進路に基づいて自車両を運転支援することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載する運転支援装置。
【請求項5】
移動体の複数の走行進路を取得する移動体走行進路取得手段を備え、
前記交通ルール取得手段で取得した交通ルールに基づいて移動体の複数の走行進路から移動体の走行進路を選択し、当該選択した移動体の走行進路に応じて自車両を運転支援することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載する運転支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2009−301406(P2009−301406A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156682(P2008−156682)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】