説明

金属樹脂複合構造体及びその製造方法、並びにバスバ、モジュールケース及び樹脂製コネクタ部品

【課題】優れた接着強度を有する金属樹脂複合構造体及びその製造方法、並びにバスバ、モジュールケース及び樹脂製コネクタ部品を提供する。
【解決手段】融点が500℃以上の高融点金属を含む金属部材1と樹脂部材2とを一体化した金属樹脂複合構造体10において、金属部材1と樹脂部材2との間に、500℃未満の融点を有する低融点金属を含んでなる合金層3が設けられ、合金層3と樹脂部材2との接合面において、合金層3の平均表面粗さが5nm以上1μm未満であり、合金層3の接合面に形成される凹凸の凹凸周期が5nm以上1μm未満であることを特徴とする、金属樹脂複合構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属樹脂複合構造体及びその製造方法、並びにバスバ、モジュールケース及び樹脂製コネクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車分野で使用される機構部品や電子部品として、軽量化や過酷な使用環境から部品を保護するという観点から、樹脂を用いたものが多く使用されている。このような部品は、通常は金属部材と樹脂部材とが一体化された構造となっているが、長期使用に耐えうる高い信頼性が要求されており、特に高温高湿環境における金属部材と樹脂部材との接着強度の維持、即ち金属部材と樹脂部材との高接着化が重要な課題となっている。
【0003】
このような高接着化の方法として、めっきやエッチングによって金属部材表面を粗化し、アンカー効果によって高接着化を図る方法が知られている。例えば特許文献1には、鉄−ニッケル製リードフレームの樹脂封止部分に、スズ−ニッケル合金を厚さが10〜15μm、表面粗さが2〜5μmの範囲に入るように電気めっきしたリードフレームが記載されている。さらに、特許文献2には、リードフレーム本体の全面に、特定の金属イオンを含む電解液中で限界電流密度を超える電流密度で電解処理して粗化層を設け、さらにその上に特定の金属イオンを含む電解液中で限界電流密度以下の電流密度で電解処理して被覆層を設けることが記載されている。
【0004】
また、エッチングにより表面粗化を行うことによる高接着化方法としては、銅やアルミニウムに対して、塩化鉄(II)やヒドラジン等の水溶性還元剤を含む水溶液中でエッチング処理して表面を粗化し、アンカー効果により樹脂部材を高強度に接着させる方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−160367号公報
【特許文献2】特開平9−148508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の技術においては、以下のような課題がある。即ち、特許文献1に記載の技術においては、リードフレームにおける表面粗さが数μm程度と粗いため10μm以上の厚さのめっき膜が必要となることがある。それゆえ、めっき時間が長くなって生産性が低下したり、めっき液の補充が頻繁となって製造コストが増加したりすることがあるという課題がある。特に、特許文献1に記載されているリードフレームは鉄を含むものであり、このような鉄系材料にめっきする場合、めっきする前に金属部材表面の脱脂や酸化膜除去の前処理を行わなければならないことがある。即ち、このような処理を行わない場合やこのような処理が不十分な場合、或いは処理後に大気に晒された場合、めっき後に形成されるめっき膜の金属部材への密着性が低下して、めっき膜が剥離する可能性がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術においては、例えば金属部材が複数の金属を含む場合、金属の種類によって粗化層及び被覆層を形成するための最適な前処理液が異なるため、金属部材表面を均一に処理することが困難になる可能性がある。従って、金属部材表面の箇所によっては接着強度が低下する可能性がある。また、特許文献2に記載の技術においても、上記特許文献1に記載の技術が有する課題と同様、前処理の有無によって処理後の粗化層や被覆層が剥離する可能性がある。
【0008】
さらに、エッチングにより表面粗化を行うことによる高接着化方法においても、金属部材表面がエッチングにより削り取られるため、金属部材表面の寸法精度を向上させることが困難であるという課題がある。また、エッチングによって、めっき膜が除去される可能性もある。また、エッチング液は金属の種類によって異なるため、金属部材が複数の金属を含む場合、上記特許文献2に記載の技術と同様に表面を均一に処理することが困難になり、接着強度が低下する箇所が発生する可能性がある。さらに、エッチング後に得られる部材の表面は下地である金属部材そのものになるため、金属部材と樹脂部材との化学的相互作用を用いることによって接着性を向上させることが可能な金属種を十分に活用できないことがあるという課題もある。
【0009】
本発明は上記の課題を解決するべくなされたものであり、その目的は、優れた接着強度を有する金属樹脂複合構造体及びその製造方法、並びにバスバ、モジュールケース及び樹脂製コネクタ部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、金属部材表面を特定範囲の表面粗さ及び凹凸周期とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0011】
本発明に拠れば、優れた接着強度を有する金属樹脂複合構造体及びその製造方法、並びにバスバ、モジュールケース及び樹脂製コネクタ部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る金属樹脂複合構造体の断面を模式的に示す図である。
【図2】図1におけるA部を拡大した図である。
【図3】本実施形態に係る金属樹脂複合構造体における平均表面粗さと凹凸周期とを説明する図である。
【図4】金属樹脂複合構造体における、平均表面粗さ及び接着剪断強度の関係を示すグラフである。
【図5】(a)は図2におけるB部を拡大した図であり、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体におけるオーバーハング形状を説明する図、(b)は本実施形態に係る金属樹脂複合構造体におけるオーバーハング形状の密度を説明する図である。
【図6】金属樹脂複合構造体における、オーバーハング密度及び接着剪断強度の関係を示すグラフである。
【図7】本実施形態に係る金属樹脂複合構造体の製造工程を示す図である。
【図8】(a)は金属樹脂複合構造体における膜厚及びオーバーハング密度の関係、(b)は金属樹脂複合構造体における膜厚及び平均表面荒さの関係を示すグラフである。
【図9】本実施形態に係るバスバの構造を模式的に示す図である。
【図10】本実施形態に係るモジュールケースの構造を模式的に示す図である。
【図11】本実施形態に係るIGBTモジュールの構造を模式的に示す図である。
【図12】本実施形態に係る樹脂製コネクタ部品の構造を模式的に示す図である。
【図13】(a)及び(b)とも図面代用写真であり、(a)は実施例1におけるニッケルめっきを施した金属樹脂複合構造体の断面を撮影した走査型電子顕微鏡写真、(b)は(a)における樹脂部材と合金層との界面近傍を拡大した走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】図13(a)に示す写真の縦方向元素濃度分布を示すグラフである。
【図15】(a)は剪断強度試験方法を説明する図、(b)は製造例2における金属部材と樹脂部材との剪断強度試験結果を示すグラフである。
【図16】(a)及び(b)とも図面代用写真であり、(a)は製造例2におけるニッケルめっきを施した金属樹脂複合構造体の断面を撮影した走査型電子顕微鏡写真、(b)は加熱後の金属樹脂複合構造体の断面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。
【図17】製造例3における金属樹脂複合構造体の断面を撮影した走査型電子顕微鏡による図面代用写真である。
【図18】図17に示す写真の縦方向元素濃度分布を示すグラフである。
【図19】製造例4における金属樹脂複合構造体の断面を撮影した走査型電子顕微鏡による図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、適宜「本実施形態」と言う。)を詳細に説明するが、本実施形態は以下の内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0014】
[1.金属樹脂複合構造体]
図1は、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10の断面を模式的に示す図である。即ち、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10は、融点が500℃以上の高融点金属を含む金属部材1と樹脂部材2とが一体化され、金属部材1と樹脂部材2との間には、500℃未満の融点を有する低融点金属を含んでなる合金層3が設けられている。そして、合金層3の平均表面粗さが5nm以上1μm未満であり、合金層3の接合面に形成される凹凸の凹凸周期が5nm以上1μm未満となっている。
【0015】
[1−1.金属部材1]
本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10における金属部材1に含まれる金属は、その融点が500℃以上のもの(このような金属のことを、本発明においては「高融点金属」と呼称するものとする。)である。金属部材1に含まれる高融点金属の量は特に制限されないが、金属部材1に含まれる金属の全てが高融点金属であることが好ましい。
【0016】
高融点金属としては、その融点が500℃以上のものであれば任意のものを用いることができるが、中でもアルミニウム、銅、ニッケル及び鉄が好ましく用いられる。なお、高融点金属は1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。
【0017】
[1−2.樹脂部材2]
本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10における樹脂部材2は、後述する合金層3表面に設けられるものである。樹脂部材2を構成する樹脂(即ちポリマー樹脂)に特に制限は無く、例えば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。より具体的には、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂等の汎用プラスチック、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラステック、ポリフェニレンスルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン等のスーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。中でも、樹脂部材2を構成する樹脂としては上記のものが好ましく、上記の樹脂を用いることにより、樹脂部材2と合金層3との接着信頼性が特に高い金属樹脂複合構造体とすることができる。なお、樹脂部材2を構成する樹脂は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。
【0018】
ただし、樹脂部材2として熱可塑性樹脂を用いる場合、例えば樹脂部材2の形成には射出成形を行うことができる。しかし、このような場合、金型の温度が低い場合には熱硬化性樹脂と比べて粘度が高くなり、金属部材1の表面に存在する微細な凹み部に樹脂が侵入せず、接着強度が低下することがある。従って、このような場合には、例えば金型温度を160℃以上、射出圧力を90MPa以上とすることにより、接着強度の低下を招くことなく樹脂部材2を形成することができる。
【0019】
[1−3.合金層3]
本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10における合金層3は、金属部材1と樹脂部材2との間に設けられるものであり、500℃未満の融点を有する金属(このような金属を、本発明においては「低融点金属」と呼称するものとする。)を含んでなるものである。合金層3に含まれる低融点金属としては特に制限されないが、人体への影響が特に小さく、金属部材1を構成する高融点金属と特に合金化し易いという観点から、亜鉛、スズ、インジウム、ビスマスが好ましい。なお、低融点金属は、1種が単独で含まれてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで含まれていてもよい。
【0020】
本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10において、金属部材1に含まれる高融点金属の融点は500℃以上である一方で、合金層3に含まれる低融点金属の融点は500℃未満としている。その理由は、金属樹脂複合構造体10を例えば自動車用部品として用いる場合、金属樹脂複合構造体10は最高でおよそ300℃程度の環境に晒されることになるからである。即ち、300℃程度の温度で金属部材1が破壊(即ち溶融)されると、金属樹脂複合構造体10の信頼性(即ち樹脂部材2の接着性)が損なわれることになる。従って、このような環境下においても高い信頼性を確保するために、融点が500℃以上の金属を高融点金属部材として用いている。なお、上記の場合において、低融点金属の融点が300℃よりも低い場合、合金層3が破壊されることも考えられるが、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10の製造時(後述する。)に金属部材1に含まれる高融点金属と合金層3に含まれる低融点金属とが合金化し、合金層3全体の融点は大幅に上昇したものとなる。従って、上記のような環境下に金属樹脂複合構造体10を晒したとしても、低融点金属の溶融は無視できるものとなり、金属樹脂複合構造体10の信頼性に影響は及ぼすことはない。
【0021】
合金層3に含まれる低融点金属の含有量は特に制限されないが、通常5原子%以上、好ましくは10原子%以上、また、好ましくは90原子%以下である。含有量が少なすぎる場合、製造時の熱処理時間が長くなりすぎたり、樹脂部材2との化学的な相互作用が低下し密着性が低下したりする可能性がある。また、含有量が多すぎる場合、金属樹脂複合構造体10の耐熱性や耐腐蝕性が低下し、高温高湿環境下での信頼性が低下する可能性がある。
【0022】
合金層3の厚さも特に制限されないが、好ましくは0.1μm以上、また、通常20μm以下、好ましくは10μm以下である。合金層3が薄すぎる場合、樹脂部材2の接着が不十分となる可能性があり、厚すぎる場合、製造時の熱処理時間が長くなりすぎる可能性がある。
【0023】
また、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10においては、合金層3を樹脂部材2と合金層3との接合面に対して平行な方向に二分した時に、樹脂部材2との接合面側に含まれる低融点金属量が、金属部材1との接合面側に含まれる低融点金属量よりも多く、金属部材1との接合面側に含まれる前記低融点金属の濃度が連続的に変化している。このような現象は、金属樹脂複合構造体10の製造時、金属部材1に含まれる高融点金属が合金層3の中に拡散していくが、金属部材1からの距離が遠くなればなるほど、その拡散の度合いが低下することを表している。そして、合金層3がこのような構成を有していることにより、樹脂部材2のより確実な接着性を確保することができる。
【0024】
図2は、図1のA部を拡大した図であり、樹脂部材2と合金層3との接合面近傍を模式的に表した図である。図2に示すように、樹脂部材2と合金層3との接合面における合金層3の形状は粗い(即ち凹凸を有する)ものとなっている。具体的には、樹脂部材2と合金層3との接合面において、合金層3の平均表面粗さが5nm以上1μm未満であり、合金層3の接合面に形成される凹凸の凹凸周期が5nm以上1μm未満である。
【0025】
ここで、本発明における「平均表面粗さ」及び「凹凸周期」について、図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10における平均表面粗さと凹凸周期とを説明する図である。図3に示すように、「平均表面粗さ」とは、金属部材1の表面を基準面として、隣接する上凸部(nH)のピーク高さと、下凸部のピーク高さ(nL)との高低差を求め、その平均値を平均表面粗さとして定義する。その場合、高低差が2nm(ナノメートル)以下の場合はカウントしないこととする。即ち、本発明の平均表面粗さは、下記式(1)で定義されるものである。ただし、下記式(1)においてxは任意の整数である。また、各ピークの高さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて金属樹脂複合構造体10の断面を撮影し、得られた写真に対して画像解析ソフトを用いて測定することができる。
【数1】

【0026】
一方、「凹凸周期」に関しては、上記の上凸部から隣の上凸部までの距離の平均を凹凸周期と定義する。本発明者らの検討によると、平均表面粗さと凹凸周期とは強い相関性があり、通常、凹凸周期は平均表面粗さの1/2〜2倍の範囲となることがわかっている。
【0027】
従って、上記の定義に基づいて測定した平均表面粗さ及び凹凸周期について、上記のように、合金層3の平均表面粗さが5nm以上1μm未満であり、合金層3の接合面に形成される凹凸の凹凸周期が5nm以上1μm未満となっている。平均表面粗さが5nmよりも短い場合、樹脂部材3を構成する樹脂が合金層3の表面に存在する凹凸の内部に侵入しにくくなり、接着強度が低下する可能性がある。従って、平均表面粗さ及び凹凸周期が上記の範囲内にあることにより、機械的なアンカー効果が得られ信頼性の高い(即ち接着強度の高い)金属樹脂複合構造体が得られる。
【0028】
ここで、本発明者らの検討により、図4に示す、平均表面粗さと接着剪断強度との関係を表すグラフを得た。図4に示すように、平均表面粗さが5nm未満の領域では、合金層3に存在する凹部が小さすぎて樹脂の浸入が不十分となったり、オーバーハング形状のオーバーハングの程度が小さいため、アンカー効果の引っかかり作用が弱くなったりして、接着強度が不十分となることがわかった。また、平均表面粗さが1μm以上である場合、凹凸は形成できるもののオーバーハング形状が得難くなり、このため十分なアンカー効果が得られず強度不足となることがわかった。この結果から、本実施形態においては、平均表面粗さを5nm以上1μm未満とした。
【0029】
従って、上記のように、平均表面粗さが5nm未満である場合、オーバーハングする度合いが小さくなるため樹脂部材2の引っかかり作用が小さくなり、接着強度が低下する可能性がある。また、上記のように、平均表面粗さが1μm以上である場合、凹凸は形成できるものの、凹凸の形状として好適なオーバーハング形状を得難くなり、その結果、アンカー効果が得難くなるため、やはり接着強度が低下する可能性がある。
【0030】
次に、図5を参照しながら、上記の「オーバーハング形状」について説明する。図5(a)は図2におけるB部を拡大した図であり、本実施形態に係る金属樹脂構造複合体10におけるオーバーハング形状を説明する図、(b)は本実施形態に係る金属樹脂構造複合体10におけるオーバーハング形状の密度を説明する図である。
【0031】
図5(a)に示すように、「オーバーハング形状」とは、金属部材1の表面に垂線を立てたときに、上部の突き出し部aに対して、下部に窪み部bが存在する構造を言う。そして、突き出し部aを通る垂線及び窪み部bを通る垂線の長さの差(図5(a)における矢印で示した横方向の幅)が長いほど樹脂部材2が引っかかり易くなるため、接着強度がより増すことになる。
【0032】
また、「オーバーハング密度」とは、金属部材1と合金層3との接合面に平行な方向1μmあたりに存在するオーバーハング形状を有する上凸部の数を表す。ちなみに、例えば図5(b)に示す合金層3の横方向の長さが1μmであるとすると、オーバーハング密度は5個/1μmとなる。
【0033】
上記のように、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10の樹脂部材2と合金層3との接合面において形成される凹凸の形状としては、オーバーハング形状が好適である。従って、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10においては、上記の凹凸のうちの少なくとも一部の形状がオーバーハング形状を有し、このようなオーバーハング形状が、接合面に平行な方向1μmあたり、1個以上形成されていることが好ましい。このような構成を有することでアンカー効果が大きくなり、より確実に接着強度を向上させることができる。
【0034】
本発明者らの検討により、図6に示す、オーバーハング密度と接着剪断強度との関係を見出した。図6に示すように、オーバーハング密度が大きくなればなるほど接着剪断強度が大きくなり、樹脂部材2内で破断する所謂樹脂内破断が生じる場合には、接着剪断強度が飽和する傾向を示す。そこで、高融点金属としてニッケルを用いて、樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合を例として、エポキシ樹脂は14MPa以上で樹脂内破断率が80%以上となることを考慮し、接着剪断強度が14MPa以上である、オーバーハング密度が1個/μmを、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体における好適な最低値とした。
【0035】
[1−4.作用効果]
本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10は、金属部材1と樹脂部材2とが、平均表面粗さ及び凹凸周期が特定の範囲内にある合金層3を介して接着するようになっている。このような合金層3を設けることにより、金属部材1が複数の金属を含む場合であっても、含まれる金属種に依らず樹脂部材2との接着力を向上させることができる。このような効果は、主に、合金層3に含まれる合金と樹脂部材2との結合において、化学的相互作用によって濡れ易くなることにより、接着強度を向上させることができるからである。この強度は、物理吸着よりも強固なものである。
【0036】
さらに、合金層3の表面に特定の平均表面粗さ及び凹凸周期となるように凹凸を設けることにより、合金層3に含まれる合金と樹脂部材2との接触面積増加による接着効果、さらには、金属部材1の材質によらず樹脂部材2との初期の接着強度が樹脂内破断を呈する強さ以上を有し、機械的なアンカー効果により、合金層3と金属部材2との接着強度を大幅に向上させることができる。そのため、金属樹脂複合構造体10が強い外力が加わるような部位に使われる場合や、高温高湿環境下等の厳しい環境で使われる場合でも、金属部材1から樹脂部材2が剥離することが無い、高い信頼性を確保できる金属樹脂複合構造体となる。さらに、上記のアンカー効果による接着は化学的相互作用による接着部と異なり、水分の侵入によって接着強度が影響を受けることが無く、高い信頼性を保つことができる。
【0037】
[2.金属樹脂複合構造体の製造方法]
次に、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体の製造方法(以下、適宜「本実施形態に係る製造方法」と言う。)について説明する。本実施形態に係る製造方法は、融点が500℃以上の高融点金属を含む金属部材1と樹脂部材2とを一体化した金属樹脂複合構造体10の製造方法において、500℃未満の融点を有する低融点金属を含み、厚さが30nm以上5μm以下の薄膜を金属部材1の表面に形成する薄膜形成工程と、非酸化雰囲気若しくは還元雰囲気下、薄膜を溶融させない加熱条件にて、薄膜が形成された金属部材1に対して熱処理を行い、高融点金属と前記低融点金属とが相互拡散した合金層3を形成する合金層形成工程と、合金層3の表面に樹脂部材2を形成する樹脂形成工程と、を含むものである。以下、図7を参照しながら、本実施形態に係る製造方法を説明する。
【0038】
図7は、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10の製造工程を示す図である。図7(a)に示すように、例えばニッケル、銅、アルミニウム、鉄等の高融点金属を含む金属部材1は、通常は大気中に晒された状態にあるため、その表面に酸化膜が形成された状態になっている。従って、より確実に樹脂部材2を接着させる観点から、形成された酸化膜を除去することが好ましい。形成されている酸化膜を除去する場合、必ずしも全ての酸化膜を除去する必要は無い。また、酸化膜以外にも、例えば油脂等の汚れも除去することが好ましい。即ち、後述する薄膜を形成する前に、金属部材1の表面を清浄化する清浄化工程を行うことが好ましい。清浄化工程の具体的な方法としては特に制限されるものではないが、例えばエッチング等により行うことができる。図7(b)には、金属部材1の表面に形成された酸化膜の一部(図示においては約半分)を除去した後の金属部材1を示している。
【0039】
次に、図7(b)に示す酸化膜等の一部を除去した後の金属部材1に対して、例えば亜鉛、スズ、インジウム、ビスマス等の低融点金属を含む薄膜を、その表面に形成する(薄膜形成工程)。形成後の様子を示したものが図7(c)である。薄膜を形成する際、その厚さが30nm以上5μm以下となるように薄膜形成工程を行う。薄膜を形成する際の具体的な手法は特に制限されないが、電気めっき、物理蒸着若しくは化学蒸着の少なくとも何れかの方法により行われることが好ましい。また、薄膜形成時の具体的な条件も、任意に設定できる。
【0040】
ここで、本発明者らの検討により、図8に示すグラフを得た。図8は、ニッケル表面に亜鉛からなる薄膜を形成したものに対して、400℃で10分の熱処理を行った後に得られる合金層3における、膜厚と、オーバーハング密度(図8(a))、及び平均表面粗さ(図8(b))との関係を表すグラフである。それぞれの曲線は、最小二乗法により求めた近似曲線である。
【0041】
合金層3の膜厚が30nmより薄い場合には、平均表面粗さが5nmより小さくなって接着強度が低下し、また、合金層3の膜厚が5μmより厚い場合にはオーバーハング密度が1個/μm未満となるため、引張方向の力に対するアンカー効果が小さくなり、やはり接着強度が低下することがわかった。従って、本実施形態に係る製造方法において形成する薄膜の厚さは、30nm以上5μm以下とすることがよいことが分かった。このため、本実施形態に係る製造方法において、金属樹脂複合構造体10において特に好適に用いられる低融点金属としての亜鉛を例にして、形成する合金層3の膜厚を30nm以上5μm以下とした。
【0042】
また、上記[1−3.合金層3]において記載したように、合金層3の好適な厚さは0.1μm以上20μm以下である。その理由は、形成する膜厚に関係する。即ち、本実施形態に係る製造方法において、厚さ30nmの薄膜を形成し、さらに合金化を行って5nm以上の凹凸を形成する場合に、合金層3の厚さが最も薄くなる。即ち、この場合、合金層3の膜厚の好適な最低値は約0.1μmである。一方、薄膜厚が5μmであり、平均表面粗さが5nm以上1μm以下の凹凸が維持されるような加熱処理(即ち合金化処理)を行い、かつ、現実的な加熱時間を考慮すると、合金層3の厚さとしては最大でも20μm程度が好適である。従って、合金層3の厚さの好適な範囲として、上記のように0.1μm以上20μm以下とした。
【0043】
なお、低融点金属がスズ、インジウム又はビスマスの場合でも、拡散による凹凸の形成は、場所による拡散速度の差が主な要因となるため、材質が変わっても成膜時の膜厚や合金化したときの適正合金層厚さに大きな差は無く、亜鉛の場合と同程度となる。
【0044】
そして、低融点金属を含む合金層3の薄膜が表面に形成された金属部材1に対して、非酸化雰囲気若しくは還元雰囲気下、前記薄膜を溶融させない加熱条件にて、前記薄膜が形成された前記金属部材に対して熱処理を行い、前記高融点金属と前記低融点金属とが相互拡散した合金層を形成する(合金層形成工程)。ここで、「非酸化雰囲気若しくは還元雰囲気」とは、薄膜及び金属部材1に含まれる金属が酸化されない雰囲気、即ち例えば窒素ガス雰囲気やアルゴンガス雰囲気、水素ガス雰囲気、一酸化炭素ガス雰囲気等を表す。
【0045】
また、「薄膜を溶融させない加熱条件」とは、例えば薄膜に含まれる低融点金属の融点以下の温度での加熱等も含まれる。一方で、上記のように熱処理により低融点金属と金属部材1に含まれる高融点金属とが合金化し、合金層3全体の融点は上昇する。従って、緩やかな速度で昇温した場合、低融点金属の融点に温度が達した時には低融点金属が全て合金化し、もはや低融点金属が溶融しないこともある。従って、「薄膜を溶融させない加熱条件」とは、通常は「低融点金属の融点以下の温度での加熱」となるが、薄膜が溶融しない限り、低融点金属の融点以上の温度で加熱することもできる。そして、このような熱処理を行うことで、金属部材1に含まれる高融点金属と薄膜に含まれる低融点金属とが相互拡散した合金層3を形成することができる(図7(d)参照。)。
【0046】
上記の加熱条件を、具体例を挙げて更に説明する。例えば低融点金属として亜鉛を用いる場合には400℃以下の温度で加熱することができる。また、低融点金属として、例えばスズを用いる場合には200〜230℃の温度で所定の時間加熱後、さらに250〜350℃の温度で加熱する二段階加熱処理を行うことができる。さらに、低融点金属として例えばインジウムを用いる場合には、130〜150℃の温度で所定の時間加熱後、さらに200〜250℃の温度で加熱する二段階加熱処理を行うことができる。そして、例えば低融点金属としてビスマスを用いる場合、260℃以下の温度で加熱処理を行うことができ、さらに必要に応じて350℃以下の温度で加熱する二段階加熱処理を行うこともできる。
【0047】
なお、金属部材1の表面に当初存在した酸化膜等は、上記の熱処理によって合金層3の一部(即ち、低融点金属が酸化したものとなる。)となったり、系外に排出されたりするが、一部は残存することがある。従って、樹脂部材2をより確実に接着するために、このような酸化物等を樹脂部材2形成前に完全に除去することが好ましい。また、合金化しなかった低融点金属が残存することもあるため、このような残存低融点金属も併せて除去することが好ましい。即ち、上記の合金層形成工程後、後述する樹脂形成工程前に、残存する低融点金属及びその酸化物を除去する低融点金属除去工程を行うことが好ましい。
【0048】
上記のような熱処理を行うことにより、金属部材1の表面に合金層3を形成することができる。そして、形成された合金層3の表面に、樹脂部材2を形成することにより、図7(e)に示す金属樹脂複合構造体10を製造することができる(樹脂形成工程)。樹脂部材2の具体的な形成方法としては特に制限されるものではないが、樹脂部材2が例えば熱硬化性樹脂である場合、トランスファー成形若しくはポッティング成形により、また、樹脂部材2が例えば熱可塑性樹脂である場合、射出成形により行われることが好ましい。
【0049】
このように、本実施形態に係る製造方法に拠れば、薄膜の密着の程度に拠らず樹脂部材2を強固に接着することができるため、清浄化処理工程の有無に関らず高い歩留まりで金属樹脂複合構造体を製造することができる。また、複数種の金属元素を含む金属部材1であっても本実施形態に係る製造方法を同様に適用することができ、しかも、どのような金属部材1であっても高い接着強度を有する樹脂部材2が形成可能となる。換言すれば、樹脂部材2を接着可能な金属部材1の種類が拡がることになる。また、低融点金属を含む薄膜の形成に高電流密度の高速めっき方法を利用することができ、短時間で成膜することができ、製造時間の短縮化を図ることができる。また、薄膜形成時の処理液の補充回数を減少させることもでき、処理コスト削減にもなる。
【0050】
本発明者らの検討によると、薄膜を金属部材1の表面に対して高い電流密度で高速電気めっきする場合、金属部材1の表面における薄膜の析出開始点が、ナノレベルでは全面均一ではなく、局所的に分散した状態で析出していることがわかった。また、金属部材1と低融点金属との密着度合いは、析出時期の違いによる有意差が存在し、このため薄膜を溶融させない条件で熱処理を施すと、相互拡散により合金層3を形成する箇所が全面一様ではなく局所的に進行し、その結果、合金化した後の表面にはナノレベルの凹凸が形成されることを見出した。
【0051】
金属部材1に含まれる高融点金属は、めっきした薄膜内への拡散流入口から拡がるように合金層3を形成する一方、薄膜に含まれる低融点金属は拡散流入口から金属部材1側に拡がってこの領域を盛り上げるように合金層3を成長させていく。このとき、拡散流入口から遠い位置は凹むようになっている。また、低融点金属及び高融点金属の拡散速度に違いがあると、拡散速度の速い金属元素側でカーケンダルボイドが発生し、その一部が表面に露出すると開口部が形成されて、内側で凹んだオーバーハング形状が形成されるのである。
【0052】
このような形状を有する凹凸は、成膜及び拡散処理のプロセス特有のものであり、合金層3と金属部材1の界面が存在せず、結晶粒及び組成ともに金属部材1から連続した組織となっている点に特徴がある。従って、表面の合金層3は金属部材1と一体化しているためこの層が剥離することはない。さらに、合金層3と樹脂部材2とは表面の微細でオーバーハング形状を有する凹凸面、及び強固なアンカー効果によって結合するため、この界面でこれらが剥離することもない。
【0053】
このように、金属部材1に含まれる高融点金属の種類が異なっても相互拡散現象は同様であるため、金属部材1に含まれる高融点金属がニッケルや銅,アルミニウム,鉄等と異なる場合でも、同様の処理プロセスで樹脂部材2との高接着化が可能な製造方法を提供できる。また、形成する薄膜の厚さは数十〜数百nm程度の厚さで必要な凹凸を形成できるため、成膜のためのめっき時間が短く、まためっき液の消耗もわずかなため、表面の処理費用が安価で済むという利点がる。
【0054】
[3.金属樹脂複合構造体の用途]
本実施形態に係る金属樹脂複合構造体は、例えば電子装置分野、自動車部品等の幅広い分野で用いることができる。以下、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体を適用したものとして、3つの実施形態を挙げて図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下に記載する金属樹脂複合構造体の具体例はあくまでも例示物であり、本発明の要旨を損なわない範囲で任意に変更して実施できる。
【0055】
[3−1.バスバ]
本実施形態に係るバスバは、図9に示すように、少なくとも2つの金属リード導電体21,21が絶縁性の樹脂24により封止されているものである。そして、金属リード導電体21,21と樹脂24との間に、亜鉛、スズ、インジウム及びビスマスからなる群より選ばれる1種以上の金属と、金属リード導電体に含まれる金属と、からなる合金層(図9においては図示していない。)が形成されている。また、合金層と樹脂24との接合面において、合金層の平均表面粗さが5nm以上1μm未満であり、合金層の接合面に形成される凹凸のうちの少なくとも一部の形状がオーバーハング形状を有し、前記オーバーハング形状が接合面に平行な方向1μmあたり、1個以上形成されている。なお、合金層の説明については、上記の金属樹脂複合構造体10において説明した合金層と同様であるためその説明を省略し、以下の記載においてはバスバ20の全体構成についてのみ説明している。
【0056】
バスバ20が備える金属リード導電体21,21は、電気的信号の入出力を行うものであり、上記の金属部材1と同様のものを用いることができる。また、金属リード導電体21,21は、予めめっきされたものであってもよい。また、バスバ20が備える樹脂24としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。特に、金属リード導電体21,21表面に形成される合金層において、平均表面粗さを50nm以上とすることで、樹脂24としてポリフェニレンスルフィド(PPS)等の熱可塑性樹脂を用いた場合にも、特に高い接着強度を維持することができる。
【0057】
バスバのように金属リード導電体が近接している場合(例えば図9に示すバスバ20においては、インダクタンス成分を小さくするために、金属リード導電体21,21間の隙間23を0.3mmとしている。)、封止されている樹脂から金属リード導電体が剥離すると、金属リード導電体間に印加される電圧によって生じる高電界の影響によって剥離空間に部分放電が発生することがある。そして、長期間の繰り返し放電によって樹脂の炭化が進み、バスバの絶縁破壊を引き起こす原因となることがある。従って、絶縁耐圧信頼性を確保したバスバを製造するためには、金属リード導電体と樹脂との密着性を向上させて、金属リード導電体の樹脂からの剥離を抑制することが極めて重要である。本実施形態に係るバスバ20は金属リード導電体と樹脂との接着強度に優れるものであるため、このような課題が生じることが無く、絶縁耐圧信頼性の高いバスバとすることができる。
【0058】
このようなバスバの製造方法は特に制限されないが、例えば以下の方法によって製造することができる。金属リード導電体21,21としては、ニッケルでめっきされた銅を用いることができる。そして、めっきされたニッケル上に亜鉛を500nmの厚さで電気めっきし、水素ガス雰囲気(還元雰囲気)下、350℃で5分間の加熱処理を行うことにより、ニッケル−亜鉛合金層を700nmの厚さで形成することができる。また、合金層の平均表面粗さは20nm程度であり、また、その表面にはオーバーハング密度が6ヶ/μm以上の凹凸を形成することができる。
【0059】
また、金属リード導電体21,21として亜鉛でめっきしたアルミニウム等を用いることもできる。このような材料を用いることで、その表面に5〜数百nmとなる平均表面粗さの凹凸を形成することができる。
【0060】
[3−2.モジュールケース]
本実施形態に係るモジュールケース40は、図10に示すように、金属を含む放熱板42上に樹脂43の側壁が形成され、側壁内に金属リード導電体41が封止されたものである。そして、放熱板としてのベース基板42と樹脂43との間、及び/又は、金属リード導電体41と樹脂43との間に、亜鉛、スズ、ビスマス及びインジウムからなる群より選ばれる1種以上の金属と、ベース基板42に含まれる金属、若しくは金属リード導電体41に含まれる金属と、からなる合金層(図10においては図示していない。)が形成されている。また、合金層と樹脂43との接合面において、合金層の平均表面粗さが5nm以上1μm未満であり、合金層の接合面に形成される凹凸のうちの少なくとも一部の形状がオーバーハング形状を有し、オーバーハング形状が、接合面に平行な方向1μmあたり、1個以上形成されている。なお、合金層の説明については、上記の金属樹脂複合構造体10において説明した合金層と同様であるためその説明を省略し、以下の記載においてはモジュールケース40の全体構成についてのみ説明している。
【0061】
モジュールケース40においては、金属リード導電体41として、例えばニッケルによりめっきされた銅等を用いることができる。また、樹脂43とベース基板42との接合面におけるベース基板42の材料としては、例えばニッケルによりめっきされた銅を用いることができる。さらに、樹脂43としては、良好な生産性という観点から、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を用いることができる。そして、金属リード導電体41と樹脂43との間、並びにベース基板42と樹脂43との間には上記の合金層が設けられている。
【0062】
図11は、図10に示すモジュールケース40を用いたIGBTモジュール50の断面構造を示す図であり、図10と同じ符号にて示す部材は図10にて示した部材と同じものを表すため、その説明を省略する。IGBTモジュール50は、ベース基板42上に、はんだ44を介して、表面に金属パターン45aが形成されたセラミック配線基板45が搭載されている。そして、セラミック配線基板45の上には、さらにはんだ44を介して、IGBTチップ48が搭載されている。
【0063】
IGBTチップ48上の電極と各金属リード導電体41,41,41とは、アルミニウムワイヤ41aで電気的に接続されている。また、IGBTチップ48上の電極と各金属リード導電体41,41,41との接合は、例えば超音波接合により行うことができる。そして、これらの部材を封止するようにモジュールケース40内部はシリコーンゲル47にて充填され、上部の空間を形成して、樹脂からなる蓋46で気密封止されたものとなっている。
【0064】
このように、本実施形態に係るモジュールケースを用いてIGBTモジュールを製造することにより、使用時の熱応力や湿度環境下においても樹脂43と金属リード導電体41,41,41やベース基板42との界面での剥がれが発生することがなく、長期に渡ってモジュール内を気密に保ち、水分の浸入を防ぐことができる。従って、電子回路の動作を長期に渡って安定して動作可能な、高信頼性を有するIGBTモジュールを提供できる。
【0065】
[3−3.樹脂製コネクタ部品]
本実施形態に係る樹脂性コネクタ部品30は、図12に示すように、樹脂34内に金属リード導電体31が封止されているものである。そして、金属リード導電体31と樹脂34との間に、亜鉛、スズ、ビスマス及びインジウムからなる群より選ばれる1種以上の金属と、金属リード導電体31に含まれる金属と、からなる合金層(図12においては図示していない。)が形成されている。さらに、合金層と樹脂との接合面において、合金層の平均表面粗さが5nm以上1μm未満であり、合金層の接合面に形成される凹凸のうちの少なくとも一部の形状がオーバーハング形状を有し、オーバーハング形状が、接合面に平行な方向1μmあたり、1個以上形成されている。なお、合金層の説明については、上記の金属樹脂複合構造体10において説明した合金層と同様であるためその説明を省略し、以下の記載においては樹脂製コネクタ部品30の全体構成についてのみ説明している。
【0066】
金属リード導電体31は、例えば上記の金属リード導電体21や金属リード導電体41と同様の材料により構成することができる。また、樹脂34についても、上記の樹脂24や樹脂43と同様の材料により構成することができる。
【0067】
樹脂製コネクタ部品30においては、外気空間32とモジュール内部空間33とを電気的に接続するように、金属リード導電体31が設けられている。このように金属リード導電体31が樹脂34内に設けられていることにより、電気機器等と接続される側のモジュール内部空間33に水分等が侵入することなく、電気機器等と接続することができる。従って、このような構造を有する樹脂製コネクタ部品30に拠れば、高温高湿環境下で外力が加わっても金属リード導電体31が樹脂34から剥離することが無いため、気密信頼性に優れた樹脂製コネクタ部品30を提供することができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0069】
(製造例1)
金属部材1に含まれる高融点金属としてニッケルを、合金層3に含まれる低融点金属として亜鉛を、樹脂部材2としてエポキシ樹脂を選択し、金属樹脂複合構造体を製造した。
【0070】
はじめに、ニッケル表面に対して3A/dm2の電流密度で500nm厚の電気亜鉛めっきを施し、亜鉛からなる薄膜をニッケル表面に形成した。そして、亜鉛からなる薄膜が形成されたニッケルを、水素ガスを含む還元雰囲気下で、400℃5分間加熱処理を行って亜鉛−ニッケル合金を含む合金層3を形成した。
【0071】
その後、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を、トランスファー圧力2.5MPa、金型温度175℃、成形時間90秒のモールド条件にてトランスファー成形し、さらに、175℃6時間熱処理を行い、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10を製造した。
【0072】
図13(a)は得られた金属樹脂複合構造体の断面を撮影した走査型電子顕微鏡写真、(b)は(a)における樹脂部材と合金層との界面近傍を拡大した走査型電子顕微鏡写真である。
図13(a)に示すように、金属部材1の表面には合金層3が形成され、合金層3の表面には樹脂部材2が形成されている。また、図13(b)に示すように、合金層3と樹脂部材2との接合面において、合金層3の表面には数十〜数百nmの凹凸が形成され、その凹凸の一部がオーバーハング形状を有している。そして、このようなオーバーハング形状は、樹脂部材2と合金層3との接合面に平行な方向1μmあたり、1個以上形成されていることがわかる。
【0073】
また、樹脂部材2を構成するエポキシ樹脂は、上記凹凸が有する数十nmサイズの窪み部まで侵入し、欠陥無く密着している。また、合金層3の内部にはサブミクロンサイズのボイド欠陥が形成され、樹脂部材2側近傍、即ち表面近傍には数nmサイズのボイド欠陥が形成されている。
【0074】
図14は、図13(a)に示す写真の縦方向元素濃度分布を示すグラフである。図14に示すグラフにおいて、横軸は樹脂部材2表面に対して垂直に向かう方向の当該表面からの距離、縦軸は当該方向の元素濃度を表している。なお、グラフ中の二本の縦方向の点線は、合金層3とそれぞれの部材との界面を表している。図14に示すように、合金層3における亜鉛(即ち低融点金属)の量は、合金層3の樹脂部材2側の方が、金属部材1側よりも多いことが分かる。さらに、合金層3における亜鉛の濃度分布は連続的に変化していることもわかった。即ち、合金層3は、樹脂部材2側の亜鉛リッチ層と金属部材1側のニッケルリッチ層との略二層からなっていた。しかし、図13(a)に示すように、これらの二層の界面は明確には識別できなかった。
【0075】
(製造例2)
0.5mm厚のニッケルめっきを施した銅板(金属部材)に対して、50nm、200nm及び900nmの亜鉛めっきを施した。その後、上記製造例1と同様の熱処理を行ってエポキシ樹脂(Cognis社製RM370)を樹脂部材として形成し、金属樹脂複合構造体を得た。得られた金属樹脂複合構造体について剪断試験を行った。剪断試験の方法を図15(a)に、試験結果を図15(b)に示す。剪断試験は、図15(a)に示すように、形成された樹脂部材2に対して側面から押圧し、樹脂部材2が剥離した時の圧力を図15(b)に示している。
なお、図15(b)においては、参考として、上記の熱処理を行わず、エポキシ樹脂を接着させた場合(未処理)も示している。
【0076】
図15(b)に示すグラフにおいて、それぞれのめっき厚において、左側の棒グラフが金属樹脂複合体製造直後(劣化処理前)、右側の棒グラフが、製造後、86℃/85%(相対湿度)−168時間の吸湿処理を行い、さらに260℃−60秒×3回のリフロー処理で劣化させた劣化処理後の強度である。
図15(b)に示すように、めっき厚50nmの場合で劣化処理前の場合のみ15MPa以上の強度が得られているが、熱処理を行わないそれ以外の場合には10MPa程度以下の低い強度しか得られなかった。また、熱処理を行わず、めっき厚が200nm、900nmの場合における劣化処理後は、エポキシ樹脂が剥離してしまい、測定が不可能であった。一方で、熱処理を行った場合、いずれの膜厚であっても、劣化処理後であっても15MPa程度の良好な強度を示した。なお、エポキシ樹脂は14MPa〜15MPa程度で樹脂内破断を起こすため、熱処理を行った場合には、樹脂内破断が起きる剪断強度である15MPa程度となった。一方で、熱処理を行わない場合には、エポキシ樹脂と金属部材との界面近傍にて破断が起きた。
【0077】
図16は、膜厚が200nmの場合の金属部材1の表面近傍を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。図16(a)は熱処理を行っていない場合、(b)は400℃で5分間熱処理を行った場合である。図16(a)に示すように、薄膜と金属部材1との間に欠陥が多く存在し、その結果界面強度が低くなっていることが予想される。一方で、熱処理を行うと、図16(b)に示すように欠陥が消失し、さらに表面にナノメートルオーダーの微細な凹凸が形成される。その結果、合金層3と金属部材1とが強固に結合し、界面強度が向上すると考えられる。
【0078】
以上のように、高融点金属としてニッケルを用いた本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10においては、樹脂部材2との化学的相互作用が少ないニッケル表面に、化学的相互作用が強い亜鉛を含む強固な合金層3が形成され、かつ、その表面にオーバーハング構造を有する数nm〜数百nmサイズの凹凸が形成されて樹脂と一体化した構造となっている。その結果、剪断方向並びに引張方向の剪断強度が格段に向上し、高湿高温環境下で劣化処理を行った後でも金属樹脂複合構造体10を得ることができる。
【0079】
(製造例3)
金属部材1に含まれる高融点金属として銅を、合金層3に含まれる低融点金属として亜鉛を、樹脂部材2としてエポキシ樹脂を選択し、金属樹脂複合構造体10を製造した。
【0080】
はじめに、銅表面に対して3A/dm2の電流密度で900nm厚の電気亜鉛めっきを施し、亜鉛からなる薄膜をニッケル表面に形成した。そして、亜鉛からなる薄膜が形成された銅を、水素ガスを含む還元雰囲気下で、350℃5分間加熱処理を行って亜鉛−ニッケル合金を含む合金層3を形成した。
【0081】
その後、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を、トランスファー圧力2.5MPa、金型温度175℃、成形時間90秒のモールド条件にてトランスファー成形し、さらに、175℃6時間熱処理を行い、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10を製造した。
【0082】
得られた金属樹脂複合構造体10における、合金層3と樹脂部材2との断面近傍を走査型電子顕微鏡で撮影した写真を図17に示す。
図17に示すように、銅−亜鉛合金層が形成され、合金層における樹脂部材2側には数百nmの凹凸が形成され、凸部がオーバーハング形状を有している。その結果、エポキシ樹脂は数十百nmサイズの窪み部まで充填され、欠陥無く密着している。
【0083】
図18は、図17に示す写真の縦方向元素濃度分布を示すグラフである。図18に示すグラフにおいて、横軸は樹脂部材3表面に対して垂直に向かう方向の当該表面からの距離、縦軸は当該方向の元素濃度を表している。なお、グラフ中の二本の縦方向の点線は、合金層3とそれぞれの部材との界面を表している。図18に示すように、図17に示す写真における樹脂部材2の表面から600nm程度の深さまで、エポキシ樹脂が合金層に侵入していることがわかる。また、亜鉛及び銅の濃度比から、樹脂部材側では亜鉛濃度が高く、上記表面から200〜600nmの領域で銅及び亜鉛の濃度比が急激に変化し、600nmよりも深い金属部材1側では亜鉛濃度が十数%から徐々に減少したものとなっている。
【0084】
以上のように、高融点金属として銅を用いた本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10においては、合金層3の表面にオーバーハング形状を有する数百nmサイズの凹凸が形成されて樹脂と一体化した構造となっている。その結果、剪断方向並びに引張方向の剪断強度が格段に向上し、高湿高温環境下で劣化処理を行った後でも金属樹脂複合構造体10を得ることができる。
【0085】
なお、高融点金属としてアルミニウムを用いて、本実施形態に係る金属樹脂複合構造体10を製造し、上記(製造例2)にて示した剪断試験を行った場合、剪断強度は14MPa以上となり、さらに、劣化処理後であっても剪断処理前の強度の90%以上の剪断強度を有していた。従って、高融点金属としてアルミニウムを用いた場合でも、高接着性の金属樹脂複合構造体10が得られることがわかった。
【0086】
(製造例4)
図19は、ニッケルめっき面に900nm厚の亜鉛めっき膜を形成し、400℃10分の熱処理を行った後の金属部材及び形成された合金層界面の透過型電子顕微鏡写真により撮影された図面代用写真である。図19では、微細な凹凸が形成されたニッケル−亜鉛合金層の上部に薄い皮膜状の酸化亜鉛が残存していることがわかる。比較的厚い亜鉛めっきを施した場合は、図19に示される酸化膜が残存して、樹脂部材2と合金層3との密着を阻害したり、残存物が移動して電子回路の特性に悪影響を及ぼしたりすることがある。そこで、図7に示す製造工程において、金属部材1の合金化処理後に部材表面を酸あるいはアルカリ液で洗浄する工程を追加することが特に好ましいことがわかる。酸化亜鉛はアルカリ液によって溶解するが、ニッケル−亜鉛合金はアルカリ液に溶解しないため、酸化亜鉛からなる皮膜のみを容易に除去できる。
【0087】
このように、本実施形態に係る製造方法において、清浄化工程を行うことにより、樹脂部材と金属部材との密着性がより確実なものとなり、製造歩留まりの高い金属樹脂複合構造体を提供できる。
【符号の説明】
【0088】
1 金属部材
2 樹脂部材
3 合金層
10 金属樹脂複合構造体
20 バスバ
21 金属リード導電体
23 隙間
24 樹脂
30 樹脂製コネクタ部品
31 金属リード導電体
32 外気空間
33 モジュール内部空間
34 樹脂
40 モジュールケース
41 金属リード導電体
42 ベース基板(放熱板)
43 樹脂
44 はんだ
45 セラミック配線基板
45a 金属パターン
46 蓋
47 シリコーンゲル
48 IGBTチップ
50 IGBTモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が500℃以上の高融点金属を含む金属部材と樹脂部材とを一体化した金属樹脂複合構造体において、
前記金属部材と前記樹脂部材との間に、500℃未満の融点を有する低融点金属を含んでなる合金層が設けられ、
該合金層と前記樹脂部材との接合面において、前記合金層の平均表面粗さが5nm以上1μm未満であり、前記合金層の接合面に形成される凹凸の凹凸周期が5nm以上1μm未満である
ことを特徴とする、金属樹脂複合構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の金属樹脂複合構造体において、
前記高融点金属が、アルミニウム、銅、ニッケル又は鉄である
ことを特徴とする、金属樹脂複合体構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属樹脂複合構造体において、
前記低融点金属が、亜鉛、スズ、インジウム又はビスマスである
ことを特徴とする、金属樹脂複合構造体。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の金属樹脂複合構造体において、
前記合金層を前記接合面に対して平行な方向に二分した時に、前記樹脂部材との接合面側に含まれる前記低融点金属量が、前記金属部材との接合面側に含まれる前記低融点金属量よりも多く、
前記金属部材との接合面側に含まれる前記低融点金属の濃度が連続的に変化している
ことを特徴とする、金属樹脂複合構造体。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の金属樹脂複合構造体において、
前記凹凸のうちの少なくとも一部の形状がオーバーハング形状を有し、
前記オーバーハング形状が、前記接合面に平行な方向1μmあたり、1個以上形成されている
ことを特徴とする、金属樹脂複合構造体。
【請求項6】
融点が500℃以上の高融点金属を含む金属部材と樹脂部材とを一体化した金属樹脂複合構造体の製造方法において、
500℃未満の融点を有する低融点金属を含み、厚さが30nm以上5μm以下の薄膜を前記金属部材の表面に形成する薄膜形成工程と、
非酸化雰囲気若しくは還元雰囲気下、前記薄膜を溶融させない加熱条件にて、前記薄膜が形成された前記金属部材に対して熱処理を行い、前記高融点金属と前記低融点金属とが相互拡散した合金層を形成する合金層形成工程と、
該合金層の表面に樹脂部材を形成する樹脂形成工程と、
を含む
ことを特徴とする、金属樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の金属樹脂複合構造体の製造方法において、
前記薄膜形成工程の前に、前記金属部材表面を清浄化する清浄化工程と、
前記合金層形成工程後、前記樹脂形成工程前に、残存する前記低融点金属及び前記低融点金属の酸化物を除去する低融点金属除去工程と、
を含む
ことを特徴とする、金属樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の金属樹脂複合構造体の製造方法において、
前記薄膜形成工程が、電気めっき、物理蒸着若しくは化学蒸着の少なくとも何れかの方法により行われる
ことを特徴とする、金属樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項9】
請求項6〜8の何れか1項に記載の金属樹脂複合構造体の製造方法において、
前記樹脂形成工程が、熱硬化性樹脂のトランスファー成形若しくはポッティング成形、又は、熱可塑性樹脂の射出成形により行われる
ことを特徴とする、金属樹脂複合構造体の製造方法。
【請求項10】
少なくとも2つの金属リード導電体が絶縁性の樹脂により封止されているバスバであって、
前記金属リード導電体と前記樹脂との間に、亜鉛、スズ、インジウム及びビスマスからなる群より選ばれる1種以上の金属と、前記金属リード導電体に含まれる金属と、からなる合金層が形成され、
該合金層と前記樹脂部材との接合面において、前記合金層の平均表面粗さが5nm以上1μm未満であり、
前記合金層の接合面に形成される凹凸のうちの少なくとも一部の形状がオーバーハング形状を有し、
前記オーバーハング形状が、前記接合面に平行な方向1μmあたり、1個以上形成されている
ことを特徴とする、バスバ。
【請求項11】
金属を含む放熱板上に樹脂の側壁が形成され、該側壁内に金属リード導電体が封止されたモジュールケースであって、
前記放熱板と前記樹脂との間、及び/又は、前記金属リード導電体と前記樹脂との間に、亜鉛、スズ、ビスマス及びインジウムからなる群より選ばれる1種以上の金属と、前記放熱板に含まれる金属、若しくは前記金属リード導電体に含まれる金属と、からなる合金層が形成され、
該合金層と前記樹脂との接合面において、前記合金層の平均表面粗さが5nm以上1μm未満であり、
前記合金層の接合面に形成される凹凸のうちの少なくとも一部の形状がオーバーハング形状を有し、
前記オーバーハング形状が、前記接合面に平行な方向1μmあたり、1個以上形成されている
ことを特徴とする、モジュールケース。
【請求項12】
樹脂内に金属リード導電体が封止されている樹脂製コネクタ部品であって、
前記金属リード導電体と前記樹脂との間に、亜鉛、スズ、ビスマス及びインジウムからなる群より選ばれる1種以上の金属と、前記金属リード導電体に含まれる金属と、からなる合金層が形成され、
該合金層と前記樹脂との接合面において、前記合金層の平均表面粗さが5nm以上1μm未満であり、
前記合金層の接合面に形成される凹凸のうちの少なくとも一部の形状がオーバーハング形状を有し、
前記オーバーハング形状が、前記接合面に平行な方向1μmあたり、1個以上形成されている
ことを特徴とする、樹脂製コネクタ部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−116126(P2012−116126A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268582(P2010−268582)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】