説明

集積回路の製造方法、及びそれを用いた集積回路

【課題】シリコン酸化膜上に高温アルミニウムスパッタ法により形成されるAl膜に白濁が生じる。
【解決手段】シリコン酸化膜44へ向けてアルゴンイオンによるスパッタエッチングを行い、先行するエッチバック処理等で生じたシリコン酸化膜44の表面の微小な凹凸を平滑化する。しかる後、シリコン酸化膜44の表面に高温アルミニウムスパッタ法によりアルミニウム膜を堆積する。これによりAl膜の白濁が抑制され、これを用いて形成されるアライメントマークの反射率が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路の製造方法、及びそれを用いて製造される集積回路に関し、特に、シリコン酸化膜上に高温アルミニウムスパッタ法によりアルミニウム膜を堆積する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板等を用いて形成される集積回路においては、集積度の向上に伴い、配線やコンタクトの寸法の微細化が必要となっている。この微細化に有効な構造として、コンタクトホールにコンタクト材としてタングステン(W)を埋め込むタングステンプラグが知られている。
【0003】
図5は、タングステンプラグを有する集積回路の従来の製造方法の主要な工程での断面図である。シリコン基板2上に積層したシリコン酸化膜4にコンタクトホール6を形成した後、シリコン酸化膜4の上面及びコンタクトホール6にタングステン膜8を堆積する(図5(a))。シリコン酸化膜4上面に堆積したタングステン膜8は、エッチバック処理により除去され、コンタクトホール6に選択的にタングステン膜8が残される。これにより、コンタクトホール6に埋設されたタングステンプラグ10が形成される(図5(b))。
【0004】
その後、シリコン酸化膜4上面及びタングステンプラグ10上にアルミニウム(Al)膜12が堆積され(図5(c))、このAl膜12をパターニングして、タングステンプラグ10に接続される配線14や、後続の製造工程で必要となるアライメントマーク16などが形成される(図5(d))。Al膜で形成されるアライメントマーク16は、光に対し高反射率を有し、アライメントを行う装置は当該アライメントマーク16の反射光像に基づいて、その形状や位置を認識しアライメントを行う。
【0005】
ここで、コンタクトホール等でのアルミニウム配線のカバレッジを向上させるために、高温アルミニウムスパッタ法が用いられる。この高温アルミニウムスパッタ法では、最下層のAl膜を堆積するスパッタリングを行う際に、基板温度が500℃以上の高温とされ、これにより、スパッタされたAl粒子の基板上での移動が促されカバレッジの向上が図られる。
【特許文献1】特開平6−252024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高温アルミニウムスパッタ法によりシリコン酸化膜の表面にAl膜を堆積させると、Al膜表面の光沢が低下し白濁するという不具合が生じることがあった。この白濁は、Al膜の表面が荒れ、光を散乱反射する状態であり、Al膜がその下地のシリコン酸化膜表面の微小な荒れ(凹凸)を引き継ぐために生じると考えられる。また、高温アルミニウムスパッタ法では、比較的低い基板温度で行われる通常のアルミニウムスパッタに比べて、アルミニウムのグレインサイズが大きくなる。そのため、高温アルミニウムスパッタ法で形成されたAl膜は、下地のシリコン酸化膜の凹凸を平坦化しにくく、その表面にシリコン酸化膜の凹凸の影響を受けやすいと考えられる。
【0007】
ちなみに、シリコン酸化膜表面の荒れは、例えば、タングステン膜8をシリコン酸化膜4上面から除去するエッチバック処理にて生じ得る。特に、ウェハ内のタングステン膜8の膜厚にばらつきがある場合、当該膜厚が薄い部分のシリコン酸化膜4ほどエッチバック処理にさらされて荒れやすく、ウェハ内でAl膜の反射率のばらつきが生じ得る。
【0008】
このAl膜の白濁によるアライメントマーク16の反射率の低下は、アライメントマーク16とその周囲とのコントラストを低下させ、アライメントマーク16の検出が困難となりアライメント不能となったり、アライメント精度が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、高温アルミニウムスパッタ法によるAl膜の白濁を抑制し、ウェハ内にて一様に良好な光沢が実現される集積回路の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る集積回路の製造方法は、基板の上に形成されたシリコン酸化膜へ向けてガスイオンを照射して、前記シリコン酸化膜の表面荒れを平滑化する平滑化工程と、前記平滑化工程後、前記シリコン酸化膜の表面に高温アルミニウムスパッタ法によりアルミニウム膜を堆積する工程と、を備える方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シリコン酸化膜表面の荒れが、ガスイオンの照射により平滑化される。ガスイオンの照射により平滑化された表面に高温アルミニウムスパッタ法によるAl膜を堆積することで、当該Al膜の白濁が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。本実施形態は、半導体基板上に形成される集積回路に関し、その構成の中で特に、高温アルミニウムスパッタ法により形成される第1層のAl膜を用いた配線及びアライメントマークの形成について説明する。
【0013】
図1は、本集積回路の模式的な断面図であり、半導体基板に垂直な断面を示している。半導体基板40に不純物拡散層42が形成される。半導体基板40の表面に積層されたシリコン酸化膜44には、不純物拡散層42に対応する位置にコンタクトホール46が形成され、当該コンタクトホール46にはタングステンプラグ48が埋め込まれる。また、シリコン酸化膜44の表面には、第1層のAl膜が堆積され、当該Al膜を用いて、タングステンプラグ48に接続されるAl配線50と、アライメントマーク52とが形成される。アライメントマーク52は例えば、本集積回路が形成されたチップをパッケージ等に取り付ける組立工程にて、チップマウンタが目印として利用するものであり、チップマウンタは、アライメントマーク52に基づいてチップの位置を把握し、チップをピックアップする。なお、Al配線50やアライメントマーク52の上にはさらに積層構造が形成されるが、ここでは図示を省略している。
【0014】
図2から図4は、本集積回路の製造方法の主要な工程での模式的な断面図である。半導体基板40表面にシリコン酸化膜44が積層される。シリコン酸化膜44の表面にフォトレジスト(不図示)を塗布し、これをパターニングして、コンタクトホール46を形成する位置に開口を有するエッチングマスクを形成する。このエッチングマスクを用いてエッチング処理を行い、シリコン酸化膜44にコンタクトホール46が形成される(図2(a))。コンタクトホール46はシリコン酸化膜44を貫通し、その底面には不純物拡散層42が露出する。
【0015】
コンタクトホール46内及びシリコン酸化膜44上面に、バリア層として窒化チタン(TiN)膜等(不図示)を形成した後、CVD(Chemical Vapor Deposition)によりタングステン膜60を堆積する。タングステン膜60はシリコン酸化膜44の上面に堆積されると共にコンタクトホール46内にも堆積され、コンタクトホール46内はタングステン膜60で充填される(図2(b))。
【0016】
しかる後、エッチバック処理により、シリコン酸化膜44上面に堆積したタングステン膜60等を除去する。これにより、コンタクトホール46に埋設されたタングステンプラグ48が形成される(図2(c))。
【0017】
ここで、タングステン膜60及びバリア層のエッチバック処理は、シリコン酸化膜44に対する選択比を有する方法で行われる。このエッチバック処理では、シリコン酸化膜44の上面に存在するタングステン膜60等が好適に除去されるように、ウェハ内でのタングステン膜60の膜厚やエッチングレートのばらつきに応じた量のオーバーエッチングが行われる。すなわち、タングステン膜60の膜厚が薄かった部分などは、シリコン酸化膜44が露出した後もエッチング処理にさらされることになる。そして、エッチングにさらされたシリコン酸化膜44の表面には微小な凹凸が生じ得る。この凹凸は図2には表すことができないほど微小なものである。図3は、この微小な凹凸を模式的に表した断面図であり、図3(a)がタングステン膜60のエッチバック処理後のシリコン酸化膜44の表面の凹凸70の様子を表したものである。
【0018】
本発明の製造方法では、このシリコン酸化膜44の表面へ向けて、アルゴンイオンを照射してスパッタエッチングを行う(図2(d)、図3(b))。図3(c)はスパッタエッチング後のシリコン酸化膜44の表面の凹凸72の様子を表したものである。スパッタエッチング処理による平滑化により、処理後の凹凸72は処理前の凹凸70に比べて緩和される。すなわち、凹凸72は凹凸70に比べて角がとれて丸みを増し、また起伏の高低差の縮小が図られる。
【0019】
凹凸が緩和されたシリコン酸化膜44の表面に、第1層のAl膜62が高温アルミニウムスパッタ法により蒸着される(図4(a))。シリコン酸化膜44の凹凸が緩和されたことに対応して、Al膜62の表面における凹凸も緩和され、白濁の発生を抑制することができる。
【0020】
Al膜62をフォトリソグラフィ技術によりパターニングして、タングステンプラグ48に接続される第1Al配線50及び、アライメントマーク52が形成される(図4(b))。上述のように白濁が抑制されたAl膜62を用いて形成されるアライメントマーク52は高い反射率を有し、その周囲とのコントラストが確保されるので、検出が容易であり、高精度でのアライメントが可能となる。
【0021】
ちなみに、タングステン膜60に対する上述のオーバーエッチングにより、コンタクトホール46の外側のシリコン酸化膜44と内側のタングステンプラグ48の上面との間に段差30が生じ得る。上述のアルゴンイオンのスパッタエッチングは、タングステンよりシリコン酸化膜に対し大きなエッチングレートを有し、また、角を削る作用を有する。よって、段差30を平滑化して、コンタクトホール46の内外の表面の平坦性を向上させ、その上に積層されるAl配線50のカバレッジを向上させる効果も有する。
【0022】
なお、スパッタエッチングは、シリコン酸化膜44の表面の微小な凹凸を平滑化可能な他のガスイオンを用いて行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る集積回路の模式的な垂直断面図である。
【図2】図1に示す集積回路についての本発明の実施形態である製造方法の主要な工程での模式的な断面図である。
【図3】本発明の実施形態の製造方法におけるシリコン酸化膜の表面処理に関する工程での模式的な断面図である。
【図4】図1に示す集積回路についての本発明の実施形態である製造方法の主要な工程での模式的な断面図である。
【図5】従来の製造方法の主要な工程での断面図である。
【符号の説明】
【0024】
40 半導体基板、42 不純物拡散層、44 シリコン酸化膜、46 コンタクトホール、48 タングステンプラグ、50 Al配線、52 アライメントマーク、60 タングステン膜、62 Al膜、70,72 凹凸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成されたシリコン酸化膜へ向けてガスイオンを照射して、前記シリコン酸化膜の表面荒れを平滑化する平滑化工程と、
前記平滑化工程後、前記シリコン酸化膜の表面に高温アルミニウムスパッタ法によりアルミニウム膜を堆積する工程と、
を備えることを特徴とする集積回路の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の集積回路の製造方法において、
前記平滑化工程は、アルゴンイオンによるスパッタエッチングを行うこと、を特徴とする集積回路の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法を用いて製造される集積回路であって、
前記アルミニウム膜をパターニングして形成された、光の反射に基づき認識されるアライメントマークを有すること、を特徴とする集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−54878(P2009−54878A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221588(P2007−221588)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】