説明

電力変換装置

【課題】円筒状パイプの変形を防ぐと共に、フレームに対して冷却器が安定して固定された電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置1は、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュール2と、内部の冷媒流路に冷却媒体を導入又は排出する一対の円筒状パイプ31を備えた冷却器3と、冷却器3を保持するフレーム4と、円筒状パイプ31をフレーム4に固定するクランプ5とを有する。クランプ5は、フレーム4に締結される締結部51と、円筒状パイプ31をフレーム4側へ向かって押圧する押さえ部52とを有する。円筒状パイプ31は、フレーム4に設けた凹状支承部と、クランプ5とによって挟持されている。円筒状パイプ31の突出方向から見たとき、円筒状パイプ31は、凹状支承部における2つの支承面と、クランプ5の押さえ部52とによって、3つの支持点において支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールとこれを冷却する冷却器とを、フレームに保持させてなる電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置として、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールとこれを冷却する冷却器とを有するものがある。そして、半導体モジュール及び冷却器を内側に保持する枠体としてのフレームに、冷却器を保持させるにあたっては、クランプを用いて固定する手段が考えられる。すなわち、冷却器における冷却媒体を導入又は排出する円筒状パイプを、上記クランプによってフレームに固定することにより、冷却器をフレームに固定することができる。
【0003】
上記クランプは、例えば特許文献1に開示されているように、通常は、円筒状パイプの外形に沿うような円弧状の押さえ部を有する。一方、クランプをフレームに締結する締結部は平板状となる。
それゆえ、締結部と押さえ部との境界部分には、円筒状パイプ側へ突出した内側突出部が形成されることとなる(後述する比較例、図12参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭56−125511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記クランプに上記内側突出部が形成されていると、クランプによる円筒状パイプの保持状態によっては、内側突出部が円筒状パイプに食い込むような状態となり、円筒状パイプに局部的な潰れが生じるおそれがある。
【0006】
また、クランプがその円弧状の押さえ部において、円筒状パイプの外周面に対して曲面同士で面接触した状態にあると、クランプからの押圧力が、フレームに向かって真っすぐにかからない場合も生じうる。すなわち、クランプと円筒状パイプとの接触面が円弧状となると、その押圧方向を一定に保ちにくく、フレームに向かう方向に対して斜めの方向に力が加わることもありうる。この場合、円筒状パイプがフレームから浮く方向に力が加わることも考えられ、安定した固定状態を得ることが困難となるおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、円筒状パイプの変形を防ぐと共に、フレームに対して冷却器が安定して固定された電力変換装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールと、
該半導体モジュールを冷却すると共に、内部の冷媒流路に冷却媒体を導入又は排出する一対の円筒状パイプを備えた冷却器と、
該冷却器を保持するフレームと、
上記円筒状パイプを上記フレームに固定するクランプとを有し、
該クランプは、上記フレームに締結される締結部と、上記円筒状パイプを上記フレーム側へ向かって押圧する押さえ部とを有し、
上記円筒状パイプは、上記フレームに設けた凹状支承部と、上記クランプとによって挟持されており、
上記円筒状パイプの突出方向から見たとき、上記円筒状パイプは、上記凹状支承部における2つの支承面と、上記クランプの上記押さえ部とによって、3つの支持点において支持されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
上記電力変換装置においては、上記円筒状パイプの突出方向から見たとき、上記円筒状パイプが、上記凹状支承部における2つの支承面と、上記クランプの上記押さえ部とによって、3つの支持点において支持されている。それゆえ、上記フレームに対して上記円筒状パイプを安定して固定することができる。
【0010】
また、上記突出方向から見たとき、上記円筒状パイプは上記3つの支持点において支持されるよう構成してあり、上記クランプの押さえ部は1点にて円筒状パイプを支持することとなる。それゆえ、クランプと円筒状パイプとの相対的な位置が、上記突出方向と押さえ方向との双方に直交する方向へ若干ずれるような外力が作用しても、押さえ部による円筒状パイプの押圧状態が変化することがない。
【0011】
つまり、上述したように、仮に円筒状パイプの外形に沿うような円弧状の押さえ部によって円筒状パイプの外周面を押さえる構成とした場合には、円弧状の押さえ部の一端には円筒状パイプ側へ突出した形状(内側突出部)が形成されることとなる。この場合、上記のような外力が作用したとき、内側突出部が円筒状パイプに食い込むような状態となり、円筒状パイプに局部的な潰れが生じるおそれがある。しかし、このような円弧状の押さえ部による面接触ではなく、円筒状パイプに対して押さえ部が略線接触の状態となるようにすれば、押さえ部に隣接して内側突出部が設けられることはなく、円筒状パイプの局所的な潰れを引き起こすおそれがない。
【0012】
また、上述のごとく、押さえ部は、円筒状パイプに対して、フレームと反対側から略線接触の状態で接触するため、円筒状パイプを、フレーム側へ向かって一定の方向に押圧することができる。それゆえ、フレームに向かう方向に対して斜めの方向に力が加わることがなく、円筒状パイプがフレームから浮く方向に力が加わることを防ぐことができる。その結果、冷却器のフレームへの安定した固定状態を得ることができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、円筒状パイプの変形を防ぐと共に、フレームに対して冷却器が安定して固定された電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における、電力変換装置の平面図。
【図2】実施例1における、クランプによる円筒状パイプの固定構造の斜視図。
【図3】実施例1における、クランプによる円筒状パイプの固定構造の平面図。
【図4】図3のA−A線矢視断面図。
【図5】実施例1における、クランプの正面図。
【図6】実施例1における、クランプの平面図。
【図7】実施例2における、クランプによる円筒状パイプの固定構造の断面図。
【図8】実施例3における、クランプによる円筒状パイプの固定構造の断面図。
【図9】実施例4における、クランプによる円筒状パイプの固定構造の断面図。
【図10】実施例5における、クランプによる円筒状パイプの固定構造の断面図。
【図11】実施例6における、クランプによる円筒状パイプの固定構造の断面図。
【図12】比較例における、クランプによる円筒状パイプの固定構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、上記凹状支承部は、開口方向に対して傾斜した一対の傾斜面を上記支承面として備えており、上記円筒状パイプは、上記凹状支承部の上記一対の傾斜面と、上記クランプの上記押さえ部とによって、3つの支持点において支持されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記円筒状パイプがフレームとクランプとによって三点支持されるため、その固定状態をより安定させることができる。
【0016】
また、上記3つの支持点は、正三角形の頂点となる位置に形成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記3つの支持点において上記円筒状パイプがバランスよく支持されることとなり、フレームに対する円筒状パイプの固定状態を一層安定化させることができる。
【0017】
また、上記クランプは、上記押さえ部を挟んで上記締結部と反対側に形成された係合部を有し、該係合部は、上記フレームに係合していることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記クランプの位置ずれを防ぎ、クランプによる上記円筒状パイプの固定状態を、より確実なものにすることができる。特に、上記クランプをボルト等によってフレームに締結する場合、ボルト締めの際にクランプがボルトと共に回転しようとすることがある。かかる場合に、上記係合部がフレームに係合していれば、クランプの回転を防ぐことができ、クランプの位置ずれを防ぐことができる。
また、フレームへのクランプの締結前においても、クランプをフレームに仮置きしやすくなり、その組み付け作業が容易となるという利点もある。
【0018】
また、上記円筒状パイプの突出方向から見た形状において、上記締結部と上記押さえ部とが互いに一直線上に形成されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記締結部と上記押さえ部との間において、上記円筒状パイプ側へ突出する形状が形成され得ない。それゆえ、上記押さえ部によって上記円筒状パイプを上記フレーム側へ向かって押圧しても、局部的に大きな力が円筒状パイプに加わることを防ぐことができる。その結果、円筒状パイプの変形を防ぐことができる。
また、上記押さえ部が上記締結部と共に一直線上に形成されているため、押さえ部は平板状となっている。そのため、押さえ部は、円筒状パイプに対して、フレームと反対側から略線接触の状態で接触するため、円筒状パイプを、フレーム側へ向かって一定の方向に押圧することができる。それゆえ、フレームに向かう方向に対して斜めの方向に力が加わることがなく、円筒状パイプがフレームから浮く方向に力が加わることを防ぐことができる。その結果、冷却器のフレームへの安定した固定状態を得ることができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
本発明の実施例に係る電力変換装置につき、図1〜図6を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図4に示すごとく、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュール2と、半導体モジュール2を冷却すると共に、内部の冷媒流路に冷却媒体を導入又は排出する一対の円筒状パイプ31を備えた冷却器3と、冷却器3を保持するフレーム4と、円筒状パイプ31をフレーム4に固定するクランプ5とを有する。
【0020】
クランプ5は、図2〜図6に示すごとく、フレーム4に締結される締結部51と、円筒状パイプ31をフレーム4側へ向かって押圧する押さえ部52とを有する。そして、図4、図5に示すごとく、円筒状パイプ31の突出方向から見た形状において、締結部51と押さえ部52とが互いに一直線上に形成されている。
【0021】
図4に示すごとく、円筒状パイプ31は、フレーム4に設けた凹状支承部41と、クランプ5とによって挟持されている。
凹状支承部41は、開口方向に対して傾斜した一対の傾斜面411を備えている。これらの支承面411が、円筒状パイプ31をフレーム4側から支承する支承面となる。円筒状パイプ31は、凹状支承部41の一対の傾斜面411と、クランプ5の押さえ部52とによって、3つの支持点Pにおいて支持されている。3つの支持点Pは、正三角形の頂点となる位置に形成されている。
【0022】
図5、図6に示すごとく、クランプ5は、押さえ部52を挟んで締結部51と反対側に形成された係合部53を有する。係合部53は、図2〜図4に示すごとく、フレーム4に係合している。すなわち、フレーム4には、上記係合部53を挿入することができる係合穴42が設けてある。この係合穴42に、クランプ5の係合部53が挿入されている。これにより、係合部53は、円筒状パイプ31と平行な方向への移動が規制される。
【0023】
図1に示すごとく、冷却器3は、内部に冷却媒体を流通させる冷媒流路を有する複数の冷却管32を、所定の間隔を設けて積層配置すると共に、隣り合う冷却管32同士を、その長手方向の両端部において連結部33によって連結してなる。そして、積層方向の一端(前端)に配置された冷却管32における長手方向の両端部に、冷却媒体を冷却器3に導入又は排出するための一対の円筒状パイプ31が接続してある。
【0024】
一対の円筒状パイプ31のうちの一方が、冷却媒体を冷却器3に導入するための冷媒導入管311であり、他方が冷却媒体を冷却器3から排出するための冷媒排出管312である。
隣り合う冷却管32の間には、半導体モジュール2が配置されており、半導体モジュール2は、その両主面から一対の冷却管32によって挟持されている。すなわち、複数の冷却管32と複数の半導体モジュール2とは交互に積層されている。
【0025】
これにより、一方の円筒状パイプ31(冷媒導入管311)から導入された冷却媒体は、連結部33を適宜通り、各冷却管32に分配されると共にその長手方向に流通する。そして、各冷却管32を流れる間に、冷却媒体は半導体モジュール2との間で熱交換を行う。熱交換により温度上昇した冷却媒体は、下流側の連結部33を適宜通り、他方の円筒状パイプ31(冷媒排出管312)に導かれ、冷却器3から排出される。
【0026】
また、複数の冷却管32と複数の半導体モジュール2との積層体は、フレーム4内に配置されている。そして、上記積層体は、積層方向の他端(後端)からバネ部材11によって積層方向に押圧されている。すなわち、フレーム4における前方壁部43に積層体の前端に配された冷却管32が接触し、フレーム4における後方壁部44と積層体の後端に配された冷却管32との間に、積層方向に広がる方向に付勢されたバネ部材11が配置されている。バネ部材11と冷却管3との間には、冷却管32の変形を防止するための当接板12が配置されている。
【0027】
フレーム4の前端壁部43には、一対の凹状支承部41(図4)が形成されている。この一対の凹状支承部41にそれぞれ一対の円筒状パイプ31が支承されている。そして、前端壁部43における凹状支承部41に隣接する部分に、ボルト13を螺合するための雌ネジ部432が形成されている。また、前端壁部43における、凹状支承部41を挟んで雌ネジ部432と反対側の位置に、上記係合穴42が形成されている。
【0028】
また、図5、図6に示すごとく、クランプ5は、一直線上に形成された締結部51及び押さえ部52と、これらに対して直交する方向に延びる係合部53とを有する。押さえ部52と係合部53との間は曲線的に連続している。締結部51にはボルト13を挿通するための挿通孔511が形成されている。また、押さえ部52及びその周辺には、開口部521が形成されている。また、締結部51の途中から、押さえ部52と係合部53との間の部分辺りまでにわたって、幅方向の両端にリブ54が形成されている。
【0029】
図1〜図4に示すごとく、クランプ5によって、円筒状パイプ31をフレーム4に締結するにあたっては、まず、フレーム4に冷却器3を配置する。このとき、一対の円筒状パイプ31を、フレーム4における前端壁部43に設けた一対の凹状支承部41にそれぞれ配置する。
次いで、クランプ5の係合部53を、前端壁部43に設けた係合穴42に挿入配置した状態で、クランプ5を円筒状パイプ31に被せるように配置する。
【0030】
次いで、ボルト13をクランプ5における締結部51に設けた挿通孔511に挿通すると共に、フレーム4における前端壁部43に設けた雌ネジ部432に螺合する。これにより、クランプ5をフレーム4に締結すると共に、押さえ部52を円筒状パイプ31に当接させる。このとき、クランプ5の係合部53がフレーム4の係合穴42に係合していることにより、クランプ5がボルト13と共に回転することが規制され、正確な位置でクランプ5の押さえ部52が円筒状パイプ31をフレーム4に向かって押圧した状態が得られる。
以上により、円筒状パイプ31は、凹状支承部41に支承されつつ、クランプ5によってフレーム4に固定される。
【0031】
なお、円筒状パイプ31を含めた冷却器3、及びフレーム4は、例えばアルミニウム等の金属からなる。また、クランプ5は、例えばSECC(電気亜鉛メッキ鋼板)等の金属からなる。
【0032】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記電力変換装置1におけるクランプ5は、円筒状パイプ31の突出方向から見た形状において、締結部51と押さえ部52とが互いに一直線上に形成されている。そのため、図4に示すごとく、締結部51と押さえ部52との間において、円筒状パイプ31側へ突出する形状(後述する比較例及び図12参照)が形成されない。それゆえ、押さえ部52によって円筒状パイプ31をフレーム4側へ向かって押圧しても、局部的に大きな力が円筒状パイプ31に加わることを防ぐことができる。その結果、円筒状パイプ31の変形を防ぐことができる。
【0033】
また、押さえ部52が、締結部51と共に一直線上に形成されている。すなわち、押さえ部52は平板状となっている。そのため、押さえ部52は、円筒状パイプ31に対して、フレーム4と反対側から略線接触の状態で接触するため、円筒状パイプ31を、フレーム4側へ向かって一定の方向に押圧することができる。それゆえ、フレーム4に向かう方向に対して斜めの方向に力が加わることがなく、円筒状パイプ31がフレーム4から浮く方向に力が加わることを防ぐことができる。その結果、冷却器3のフレーム4への安定した固定状態を得ることができる。
【0034】
また、凹状支承部41は一対の傾斜面411を備えており、円筒状パイプ31は、一対の傾斜面411とクランプ5の押さえ部52とによって、3つの支持点Pにおいて支持されている。これにより、円筒状パイプ31がフレーム4とクランプ5とによって三点支持されるため、その固定状態をより安定させることができる。
上記3つの支持点Pは、正三角形の頂点となる位置に形成されているため、3つの支持点Pにおいて円筒状パイプ31がバランスよく支持されることとなり、フレーム4に対する円筒状パイプ31の固定状態を一層安定化させることができる。
【0035】
また、クランプ5は係合部53を有し、該係合部53はフレーム4に係合している。これにより、クランプ5の位置ずれを防ぎ、クランプ5による円筒状パイプ31の固定状態を、より確実なものにすることができる。特に、クランプ5をボルト13によってフレーム4に締結する際、クランプ5がボルト13と共に回転することを防ぐことができ、クランプ5の位置ずれを防ぐことができる。また、フレーム4へのクランプ5の締結前においても、クランプ5をフレーム4に仮置きしやすくなり、その組み付け作業が容易となるという利点もある。
【0036】
以上のごとく、本例によれば、円筒状パイプの変形を防ぐと共に、フレームに対して冷却器が安定して固定された電力変換装置を提供することができる。
【0037】
(実施例2)
本例は、図7に示すごとく、締結部51と押さえ部52との間に段差部55を設けたクランプ5を用いた例である。
すなわち、本例においては、クランプ5における締結部51と押さえ部52とは、互いに一直線上に配置されておらず、クランプ5による円筒状パイプ31の押さえ方向において、締結部51が押さえ52よりも円筒状パイプ31から離れた位置にある。そして、段差部55は、締結部51と押さえ部52とを繋ぐように両者に対して略直角に屈曲して形成されている。
【0038】
また、本例の場合、フレーム4の前端壁部43における締結部51を固定する固定面533が凹状支承部41に支承された円筒状パイプ31の上端よりも上方に形成されている。なお、ここで、上端とは、図7における上端であり、電力変換装置1の配置姿勢によっては必ずしも鉛直方向の上端に配置されるとは限らない。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合にも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0039】
なお、上記実施例2の構成とは逆に、前端壁部43における固定面433が凹状支承部41に支承された円筒状パイプ31の上端よりも下方に形成され、クランプ5における押さえ部52が締結部51よりも上方に配置されるように段差部を設けた形状とすることもできる。
【0040】
(実施例3)
本例は、図8に示すごとく、押さえ部52が押さえ方向に凸の弧状に湾曲したクランプ5を用いた例である。
また、押さえ部52の円弧形状は円筒状パイプ31の外形よりも曲率が小さい(曲率半径が大きい)。
また、締結部51と押さえ部52との間には、円筒状パイプ31と反対側へ凸となる屈曲部56が形成されている。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合にも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0041】
(実施例4)
本例は、図9に示すごとく、係合部53(図4参照)を設けないクランプ5を用いた例である。
本例においては、円筒状パイプ31の突出方向から見た形状において、クランプ5が一直線状に形成されている。
その他は、実施例1と同様である。
【0042】
本例の場合には、クランプ5の形状を簡素化することができる。
また、フレーム4には係合孔42を設ける必要がないため、フレーム4の形状も簡素化できる。その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
なお、クランプ5の回り止めは、係合部53と係合孔42との係合以外の手段によって、適宜実現することができる。
【0043】
(実施例5)
本例は、図10に示すごとく、凹状支承部41の形状を変更した例である。
本例においては、凹状支承部41を2本の立設部412によって構成し、各立設部412に、互いに向き合う側へ傾斜した傾斜面411を形成してある。この2つの傾斜面411とクランプ5の押さえ部52とによって、円筒状パイプ31は、その突出方向からみたときに3つの支持点Pにおいて支持されている。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合にも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0044】
(実施例6)
本例は、図11に示すごとく、凹状支承部41の形状を変更した他の例である。
本例においては、円筒状パイプ31を支承する凹状支承部41の支承面のうちの一方を傾斜面411とし、他方を垂直面413としている。すなわち、支承面の一方である傾斜面411は、フレーム4の前方壁部43における固定面433に対して傾斜した面であるが、支承面の他方である垂直面413は、固定面433に対して直角の面である。
その他は、実施例1と同様である。
【0045】
本例の場合には、凹状支承部41の形状を簡素化することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0046】
(比較例)
本例は、図12に示すごとく、押さえ部92が円筒状パイプ31の外形に沿うような円弧状に形成されたクランプ9を用いて、円筒状パイプ31をフレーム4に固定した固定構造の例である。
そして、平板状に形成された締結部91と押さえ部92との境界部分には、円筒状パイプ31側へ突出した内側突出部99が形成される。
また、本例の固定構造においては、フレーム4における凹状支承部41も、円筒状パイプ31の外形に沿った円弧状に形成されている。
その他は、実施例1と同様である。
【0047】
本例のように、クランプ9に内側突出部99が形成されていると、クランプ9による円筒状パイプ31の保持状態によっては、内側突出部99が円筒状パイプ31に食い込むような状態となり、円筒状パイプ31に局部的な潰れが生じるおそれがある。
【0048】
また、クランプ9がその円弧状の押さえ部92において、円筒状パイプ31の外周面に対して曲面同士で面接触した状態にあると、クランプ9からの押圧力が、フレーム94に向かって真っすぐにかからない場合も生じうる。すなわち、クランプ9と円筒状パイプ31との接触面が円弧状となると、その押圧方向を一定に保ちにくく、フレーム94に向かう方向に対して斜めの方向に力が加わることもありうる。この場合、円筒状パイプ31がフレーム94から浮く方向に力が加わることも考えられ、安定した固定状態を得ることが困難となるおそれがある。
【0049】
また、フレーム94における凹状支承部941が、円筒状パイプ31の外形に沿った円弧状に形成されているため、凹状支承部941においても、円筒状パイプ31とフレーム94とが面接触することになる。あるいは、クランプ9の押さえ部92及びフレーム94の凹状支承部941の曲率半径が円筒状パイプ31の曲率半径よりも大きいと、円筒状パイプ31は押さえ部92と凹状支承部941とによって二点支持の状態となる。
したがって、実施例1に示した固定構造のような三点支持を実現できず、安定な固定構造が得られにくい。
【0050】
上述した実施例1によれば、上記比較例のような不具合は生じ得ず、円筒状パイプの変形を防ぐと共に、フレームに対して冷却器が安定して固定された電力変換装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 電力変換装置
2 半導体モジュール
3 冷却器
31 円筒状パイプ
32 冷却管
33 連結部
4 フレーム
41 凹状支承部
5 クランプ
51 締結部
52 押さえ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールと、
該半導体モジュールを冷却すると共に、内部の冷媒流路に冷却媒体を導入又は排出する一対の円筒状パイプを備えた冷却器と、
該冷却器を保持するフレームと、
上記円筒状パイプを上記フレームに固定するクランプとを有し、
該クランプは、上記フレームに締結される締結部と、上記円筒状パイプを上記フレーム側へ向かって押圧する押さえ部とを有し、
上記円筒状パイプは、上記フレームに設けた凹状支承部と、上記クランプとによって挟持されており、
上記円筒状パイプの突出方向から見たとき、上記円筒状パイプは、上記凹状支承部における2つの支承面と、上記クランプの上記押さえ部とによって、3つの支持点において支持されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記凹状支承部は、開口方向に対して傾斜した一対の傾斜面を上記支承面として備えており、上記円筒状パイプは、上記凹状支承部の上記一対の傾斜面と、上記クランプの上記押さえ部とによって、3つの支持点において支持されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、上記3つの支持点は、正三角形の頂点となる位置に形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記クランプは、上記押さえ部を挟んで上記締結部と反対側に形成された係合部を有し、該係合部は、上記フレームに係合していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記円筒状パイプの突出方向から見た形状において、上記締結部と上記押さえ部とが互いに一直線上に形成されていることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−16264(P2012−16264A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95809(P2011−95809)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】