説明

電動パーキングブレーキ装置

【課題】製造コストの低廉化を実現するとともに、小型化が可能な電動パーキングブレーキ装置を提供する。
【解決手段】電動モータ(1)が正転駆動されることによりインナワイヤ(3a、4a)が引張り方向に引張られてパーキングブレーキ(5、6)が制動状態とされ、電動モータ(1)が逆転駆動されることによりインナワイヤ(3a、4a)が戻し方向に戻されてパーキングブレーキ(5、6)が解除状態とされる電動パーキングブレーキ装置である。変換機構(10)には、インナワイヤ(3a、4a)に加わる張力によりハウジング(9)に対して戻し方向に移動可能なねじ軸(11)と、ねじ軸(11)を支承する板ばね(14)とが備えられている。ねじ軸(11)の移動により、ねじ軸(11)の先端部に配設されたスイッチ群(40)を開閉させ、スイッチ群(40)の開閉信号に基づきインナワイヤ(3a、4a)に加わる張力を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルのインナワイヤに加わる張力を検知可能な電動パーキングブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された電動パーキングブレーキ装置が知られている。この電動パーキングブレーキ装置は、電動モータと、電動モータの回転駆動力を直線駆動力に変換する変換機構と、変換機構による直線駆動力を各パーキングブレーキに伝達する一対のケーブルとを備え、変換機構とケーブルとの間にはイコライザ機構が設けられている。そして、イコライザ機構と一方のケーブルとの間、又はシャフトとハウジングとの間には、コイルスプリングの圧縮変形変位をホール素子によって電気的に検知することでケーブルのインナワイヤに加わる張力を検知する張力センサが設けられている。
【0003】
この電動パーキングブレーキ装置によれば、イコライザ機構と一方のケーブルのインナワイヤとの相対移動、又はシャフトとハウジングとの相対移動に応じてホール素子近辺の磁界が変化し、これによりホール素子からの出力電圧が変化する。そのため、この張力センサによれば、ホール素子からの出力電圧により、ケーブルのインナワイヤに加わる張力を検知することができる。
【特許文献1】特開平2006−17158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の電動パーキングブレーキ装置では、ホール素子からの出力電圧の検出回路の構成が複雑なものとなるため、製造コストが高騰化する。また、この電動パーキングブレーキ装置では、強度を得つつ磁気が影響しないようにするため、ホール素子近傍の部品を高強度アルミニウムや非磁性ステンレス等の材料で構成しなければならず、これによっても製造コストが高騰化する。さらに、この電動パーキングブレーキ装置では、コイルスプリングの圧縮変形変位を利用するため、コイルスプリングの軸方向の長さがある程度必要となり、大型化してしまう。
【0005】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストの低廉化を実現するとともに、小型化が可能な電動パーキングブレーキ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る電動パーキングブレーキ装置の特徴は、電動モータと、ハウジング内に設けられ、該電動モータの回転駆動力を直線駆動力に変換する変換機構と、該変換機構による直線駆動力をパーキングブレーキに伝達するケーブルとを備え、前記電動モータが正転駆動されることにより前記ケーブルのインナワイヤが引張り方向に引張られて前記パーキングブレーキが制動状態とされ、前記電動モータが逆転駆動されることにより前記インナワイヤが戻し方向に戻されて前記パーキングブレーキが解除状態とされる電動パーキングブレーキ装置において、前記変換機構には、前記電動モータにより回転されるとともに、前記インナワイヤに加わる張力によりハウジングに対して戻し方向に移動可能なねじ軸と、前記ハウジングと該ねじ軸間にあって、該ねじ軸を支承する弾性体と、が備えられ、前記ねじ軸の移動により、該ねじ軸の先端部に配設されたスイッチ群を開閉させ、該スイッチ群の開閉信号に基づき前記インナワイヤに加わる張力を検知することである。
【0007】
請求項2に係る電動パーキングブレーキ装置の特徴は、請求項1において、前記弾性体は前記ハウジングに装着された板ばねであることである。
【0008】
請求項3に係る電動パーキングブレーキ装置の特徴は、請求項1又は2において、前記スイッチ群は2個のスイッチからなり、前記ねじ軸の一方向の移動に伴って少なくとも1個のスイッチが開閉信号を2回切り替え可能な切替装置を備え、前記ねじ軸の一方向の最大移動により、前記インナワイヤに加わる3種類以上の張力の大きさを検知することができることである。
【0009】
請求項4に係る電動パーキングブレーキ装置の特徴は、請求項3において、前記切替装置は、前記インナワイヤに加わる張力が第1張力であるとき、1個のスイッチの開閉信号を反転させ、前記インナワイヤに加わる張力が第1張力より大きな第2張力であるとき、1個のスイッチの開閉信号を再度反転させることである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る電動パーキングブレーキ装置においては、ねじ軸の移動により、ねじ軸の先端部に配設されたスイッチ群を開閉させ、スイッチ群の開閉信号に基づいてケーブルのインナワイヤに加わる張力を検知している。そのため、スイッチ群の開閉信号を処理するだけでケーブルのインナワイヤに加わる張力を検知でき、回路構成が簡単になる。また、この電動パーキングブレーキ装置では、スイッチ群近傍の部品について磁気の影響を配慮する必要がないため、材料選択の幅が広い。さらに、この電動パーキングブレーキ装置では、ねじ軸を支承する弾性体を選択することにより、弾性体自体の軸方向の長さを短くすることができる。したがって、この電動パーキングブレーキ装置によれば、製造コストの低廉化を実現するとともに、小型化が可能である。
【0011】
請求項2に係る電動パーキングブレーキ装置においては、弾性体として板ばねを採用しているため、弾性体自体の軸方向の長さを短くすることができる。また、板ばねがハウジングに装着されているため、ハウジングの強度を高めることとができる。
【0012】
請求項3に係る電動パーキングブレーキ装置においては、スイッチ群は2個のスイッチからなり、ねじ軸の一方向の移動に伴って少なくとも1個のスイッチが開閉信号を2回切り替え可能な切替装置を備え、ねじ軸の一方向の最大移動により、ケーブルのインナワイヤに加わる3種類以上の張力の大きさを検知することができるため、安価でかつ、簡単な回路構成にできる。
【0013】
請求項4に係る電動パーキングブレーキ装置においては、切替装置がケーブルのインナワイヤに加わる張力が第1張力であるとき、1個のスイッチの開閉信号を反転させ、ケーブルのインナワイヤに加わる張力が第1張力より大きな第2張力であるとき、1個のスイッチの開閉信号を再度反転させるため、2個のスイッチでケーブルのインナワイヤに加わる3種類の張力の大きさを検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る電動パーキングブレーキ装置を具体化した実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は実施形態1の自動車用電動パーキングブレーキ装置の一部破断正面図である。この電動パーキングブレーキ装置は、電動モータ1と、電動モータ1の回転駆動力を直線駆動力に変換する変換機構10と、変換機構10による直線駆動力をパーキングブレーキ5、6に伝達するケーブル3、4とを備えている。また、電動モータ1と変換機構10との間には減速ギヤ7が設けられ、変換機構10とケーブル3、4との間にはイコライザ8が設けられている。さらに、変換機構10の先端部であって、ハウジング9外にはセンサ部20が配置されている。変換機構10、減速ギヤ7及びイコライザ8はハウジング9内に収納されている。なお、本実施形態においては、図示しないECU(電気制御装置)がハウジング9外に配置されているが、このECU(電気制御装置)はハウジング9内に収納されていてもよい。
【0015】
電動モータ1は、ECU(電気制御装置)によって制御され、運転者が制動スイッチ(図示省略)を操作することにより正転駆動され、運転者が解除スイッチ(図示省略)を操作することにより逆転駆動されるようになっている。そして、電動モータ1が正転駆動されることによりケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aが引張り方向(図面左方向)に引張られてパーキングブレーキ5、6が制動状態とされ、電動モータ1が逆転駆動されることによりケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aが戻し方向(図面右方向)に戻されてパーキングブレーキ5、6が解除状態とされる。
【0016】
減速ギヤ7は、電動モータ1の回転を減速して変換機構10に伝達するものであり、変換機構10は、減速ギヤ7を介して伝達される電動モータ1の回転駆動力を直線駆動力に変換するものである。変換機構10は、ねじ軸11、ナット12、ニードルベアリング13、板ばね14及びコイルばね15を備えている。ねじ軸11は、一対の軸受16、17を介して、ハウジング9に回転自在かつ軸方向にわずかに移動可能に組付けられ、ねじ軸11の外周には、ねじ11aが形成されている。ナット12は、このねじ11aに螺合して組付けられている。ニードルベアリング13は、ねじ軸11の回転を吸収しつつ、軸方向の移動をセンサ部20に伝達するものである。板ばね14はハウジング取付部9aに遊嵌され、コイルばね15は板ばね14とハウジング9との間に装着されている。板ばね14は、コイルばね15により、ハウジング取付部9aで引張り方向(図面左方向)に付勢され、板ばね14とハウジング9との間には隙間Gが形成されている。ケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aが戻し方向(図面右方向)に戻されてパーキングブレーキ5、6が解除状態とされている場合には、ニードルベアリング13の右端と板ばね14の左側面は初期状態で当接している。ただし、板ばね14のばね定数の方がコイルばね15のばね定数より大きくなっている。ここで、板ばね14が「弾性体」である。
【0017】
イコライザ8は、ナット12に作用する直線駆動力を二つの出力に等分に分配するものであり、ナット12に揺動可能に取付けられている。イコライザ8の出力部であるアーム部8a、8bには、ケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aが回動可能に連結されている。
【0018】
図2はセンサ部20の拡大断面図である。センサ部20は、樹脂製のケース50と、ケース50内に収納された切替装置30及びスイッチ群40とを備えている。ケース50の後端側(図面左側)には軸孔50dが貫設された突出部50aが突設され、先端側(図面右側)にはゴム製のグロメット51が装着される取付孔50bが設けられている。ケース50の突出部50aはハウジング9内に挿入され、突出部50aに形成されたねじ50cに螺合するナット54によりケース50がハウジング9に固着されている。また、ケース50にはカバー(図示省略)が被せられ、ケース50、カバー及びグロメット51はゴム製の保護カバー52で覆われている。このグロメット51及び保護カバー52により、ハウジング9内の水密性が確保されている。
【0019】
ケース50内には、軸孔50dを貫通して先端側に延びるシャフト21が軸方向に摺動可能に収納されている。シャフト21の後端側はニードルベアリング13を介してねじ軸11に接続されており、シャフト21の先端側はケース50内に固着された軸受22に摺動可能に軸支されている。
【0020】
シャフト21には、本体31、押圧ピン32、33、板ばね34、レバー35及びコイルばね36を有する切替装置30が設けられている。本体31には、シャフト21の径方向外側であって、互いに反対方向に突出する突出板31a、31bが一体として形成されている。本体31にはシャフト21が貫通しており、本体31と軸受22との間には、本体31を後端側に付勢するコイルばね24が装着されている。突出板31a、31bには、図4から図6に示すように、貫通孔31c、31dが貫設され、この貫通孔31c、31dには押圧ピン32、33が遊嵌されている。図2に示すように、本体31の後端側のシャフト21には、板ばね34が装着されており、この板ばね34により押圧ピン32、33が先端側に付勢されている。また、本体31には、突出板31a、31bと略平行に延在するレバー35が設けられている。レバー35の突出板31a側は押圧ピン32よりも長くなっているのに対し、突出板31b側は短くなっており、後端側に屈曲された屈曲部35aが形成されている。レバー35は、本体31との間に装着されたコイルばね36により先端側に付勢されるとともに、ケース50内に固着された支持部材23を中心に回動可能にされている。
【0021】
スイッチ群40は、ケース50内に配設された2個のマイクロスイッチ41、42からなっている。マイクロスイッチ41、42は、シャフト21の摺動に伴って移動する切替装置30により切り替え可能な位置に固着され、マイクロスイッチ41、42の端子に接続されたリード線45がグロメット51を挿通して外部に延出されている。ここで、マイクロスイッチ41、42が「スイッチ」である。
【0022】
次に、上記の構成をした電動パーキングブレーキ装置の作動について、図3乃至図6を用いて説明する。図3(A)は、シャフト21の軸方向ストロークと、ケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aに加わる張力(シャフト21に加わる反力の1/2)との関係を表している。また、図3(B)は、シャフト21の軸方向ストロークと、マイクロスイッチ41、42の切り替りとの関係表している。
【0023】
図1及び図2に示す状態においては、ケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aが戻されており、パーキングブレーキ5、6は解除状態となっている。この際、インナワイヤ3a、4aには張力が加わっておらず、インナワイヤ3a、4aからイコライザ8及びナット12を介してねじ軸11に加わる反力も0である。そのため、板ばね14及びコイルばね15の付勢力により、ねじ軸11が初期状態に戻され、板ばね14とハウジング9との間には隙間Gが形成されている。この状態においては、図3(A)に示すように、シャフト21の軸方向ストロークは0であり、ケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aに加わる張力は0である。また、図3(B)に示すように、マイクロスイッチ41、42はOFF状態である。
【0024】
運転者が制動スイッチを操作すると、電動モータ1がECU(電気制御装置)により正方向に回転駆動される。電動モータ1の回転は、減速ギヤ7により減速されて、ねじ軸11に伝達される。これにより、ねじ軸11が正方向に回転駆動され、ナット12及びナット12に取付けられているイコライザ8が引張り方向(図1左方向)に向けて移動する。イコライザ8が移動すると、イコライザ8のアーム部8a、8bに連結されたインナワイヤ3a、4bが引張り方向(図1左方向)に引張られ、インナワイヤ3a、4aに張力が加わる。これにより、シャフト21には、インナワイヤ3a、4aに加わる合計張力と等しい反力がナット12から戻し方向(図1右方向)に加わる。この反力はイコライザ8の移動に伴って次第に大きくなっていく。そのため、シャフト21は、板ばね14及びコイルばね15を戻し方向(図1右方向)に移動し始める。この際、インナワイヤ3a、4aに加わる張力が小さい間は、コイルばね15が圧縮されて隙間Gが埋められる。そして、インナワイヤ3a、4aに加わる張力がさらに増してくると、板ばね14がハウジング9で支えられて高い張力を支える構造としてある。
【0025】
インナワイヤ3a、4aに加わる張力が増加し、シャフト21が戻し方向(図1右方向)に移動し始めると、まずコイルばね15が圧縮される。そして、図4に示すように、シャフト21の移動に伴って本体31、押圧ピン32、33、板ばね34も戻し方向(図1右方向)に移動し、押圧ピン32がレバー35を押圧することによりマイクロスイッチ41がON状態になる。これは、図3(A)、(B)において、インナワイヤ3a、4aに加わる張力がF1になって、シャフト21のストロークがL1になっている状態である。ここで、張力F1が「第1張力」である。ここで、張力F1は小さい値であり、システムとしては実質的に初期状態として使用される。
【0026】
さらに、電動モータ1がECU(電気制御装置)により正方向に回転駆動され、インナワイヤ3a、4aに加わる張力がF2になって、シャフト21のストロークがL2になると、板ばね14とハウジング9との隙間Gが0になる。そして、インナワイヤ3a、4aに加わる張力がF2より大きくなりストロークがL2を越えると、シャフト21は板ばね14を弾性変形させて移動することになる。このように、コイルばね15のばね定数が板ばね14のばね定数よりも小さく設定されているのは、単位張力当たりのストロークを大きくして、マイクロスイッチ41がON状態になる位置調整を容易にするためである。
【0027】
さらに、インナワイヤ3a、4aに加わる張力が増加してシャフト21が戻し方向(図1右方向)に移動すると、図5に示すように、押圧ピン33によりマイクロスイッチ42がON状態になる。これは、図3(A)、(B)において、インナワイヤ3a、4aに加わる張力がF3になって、シャフト21のストロークがL3になっている状態である。この際、板ばね34が撓むことにより押圧ピン32が引張り方向(図5左方向)に摺動し、マイクロスイッチ41の破損を防止している。また、レバー35の屈曲部35aが本体31の突出板31bに当接する。ECU(電気制御装置)は、この状態を検知すると、図示しないインジケータランプを点灯するとともに電動モータ1の回転を停止する。こうして、パーキングブレーキ5、6が制動状態とされる。
【0028】
ただし、急な坂道の途中で駐車させる場合には、パーキングブレーキ5、6を確実に制動状態とするため、インナワイヤ3a、4aをさらに引っ張る必要がある。そのため、この場合には、ECU(電気制御装置)は、インナワイヤ3a、4aに加わる張力がF3になっても電動モータ1の回転を停止することなく、電動モータ1をさらに正方向に回転駆動させる。これにより、インナワイヤ3a、4aに加わる張力がさらに増加してシャフト21が戻し方向(図1右方向)に移動すると、図6に示すように、レバー35の屈曲部35aが本体31の突出板31bに押圧され、レバー35は支持部材23を中心に回転する。ここで、支持部材23から押圧ピン32までのレバー35の長さは、支持部材23から屈曲部35aまでのレバー35の長さよりも長いため、レバー35の屈曲部35aが戻し方向(図6右方向)に僅かに移動すると、押圧ピン32に当接しているレバー35の部分は引張り方向(図6左方向)に大きく移動することになる。これにより、マイクロスイッチ41が再度、切り替えられ、マイクロスイッチ41はOFF状態となる。これは、図3(A)、(B)において、インナワイヤ3a、4aに加わる張力がF4になって、シャフト21のストロークがL4になっている状態である。ECU(電気制御装置)は、この状態を検知すると、図示しないインジケータランプを点灯するとともに電動モータ1の回転を停止する。こうして、急な坂道の途中であっても、パーキングブレーキ5、6が確実に制動状態とされる。ここで、張力F4が「第2張力」である。
【0029】
また、パーキングブレーキ5、6が制動状態とされている場合に、運転者が解除スイッチを操作すると、電動モータ1のモータ軸1aがECU(電気制御装置)により逆方向に回転駆動される。これにより、ねじ軸11が逆方向に回転駆動され、ナット12及びナット12に取付けられているイコライザ8が、戻し方向(図1右方向)に向けて移動する。イコライザ8が移動すると、イコライザ8のアーム部8a、8bに連結されたインナワイヤ3a、4bが戻し方向(図1右方向)に戻されるとともに、ケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aに加わる張力が次第に小さくなっていき、シャフト21に加わる反力も次第に小さくなっていく。そのため、シャフト21は、板ばね14及びコイルばね15の付勢力により、引張り方向(図1左方向)に移動し始める。こうして、前述の電動パーキングブレーキ装置の作動の場合と逆に、インナワイヤ3a、4aに加わる張力はF4、F3、F2F1の順に小さくなり、それに伴ってシャフト21のストロークはL4、L3、L2、L1の順に小さくなっていく。そして、ECU(電気制御装置)は、インナワイヤ3a、4aに加わる張力がF1、すなわち、シャフト21のストロークがL1(リミットスイッチ41ON、リミットスイッチ42OFF)になったことを検知すると、インジケータランプを消灯するとともに電動モータ1の回転を停止する。こうして、パーキングブレーキ5、6が解除状態とされる。
【0030】
実施形態に係る電動パーキングブレーキ装置においては、ねじ軸11の移動により、ねじ軸11の先端部に配設されたスイッチ群40を開閉させ、スイッチ群40の開閉信号に基づきケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aに加わる張力を検知している。そのため、スイッチ群40の開閉信号を処理するだけでケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aに加わる張力を検知でき、回路構成が簡単になる。また、この電動パーキングブレーキ装置では、スイッチ群40近傍の部品について磁気の影響を配慮する必要がないため、材料選択の幅が広い。さらに、この電動パーキングブレーキ装置では、ねじ軸11を引張り方向に付勢する弾性体を選択することにより、弾性体自体の軸方向の長さを短くすることができる。したがって、この電動パーキングブレーキ装置によれば、製造コストの低廉化を実現するとともに、小型化が可能である。
【0031】
また、この電動パーキングブレーキ装置においては、弾性体として板ばね14を採用しているため、弾性体自体の軸方向の長さを短くすることができる。また、板ばね14がハウジング9に装着されているため、ハウジング9の強度を高めることができる。
【0032】
さらに、この電動パーキングブレーキ装置においては、スイッチ群40は2個のリミットスイッチ41、42からなり、ねじ軸11の一方向の移動に伴って少なくとも1個のリミットスイッチ41が開閉信号を2回切り替え可能な切替装置30を備え、ねじ軸11の一方向の最大移動により、ケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aに加わる3種類以上の張力の大きさを検知することができるため、安価でかつ、簡単な回路構成にできる。
【0033】
また、この電動パーキングブレーキ装置においては、切替装置30がケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aに加わる張力が第1張力であるとき、1個のリミットスイッチ41の開閉信号を反転させ、ケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aに加わる張力が第1張力より大きな第2張力であるとき、1個のリミットスイッチ41の開閉信号を再度反転させるため、2個のリミットスイッチ41、42でケーブル3、4のインナワイヤ3a、4aに加わる3種類の張力の大きさを検知することができる。
【0034】
以上、本発明の電動パーキングブレーキ装置を実施形態に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係り、自動車用電動パーキングブレーキの一部破断平面図。
【図2】実施形態に係り、図1のII−II矢視断面図。
【図3】実施形態に係り、シャフトのストロークと、ケーブルのインナワイヤに加わる張力又はマイクロスイッチの切り替りとの関係を表すグラフ。
【図4】実施形態に係り、インナワイヤに加わる張力がF1の場合のセンサ部の拡大図。
【図5】実施形態に係り、インナワイヤに加わる張力がF3の場合のセンサ部の拡大図。
【図6】実施形態に係り、インナワイヤに加わる張力がF4の場合のセンサ部の拡大図。
【符号の説明】
【0036】
1…電動モータ、3、4…ケーブル、3a、4a…インナワイヤ、5、6…パーキングブレーキ、9…ハウジング、10…変換機構、11…ねじ軸、14…弾性体(板ばね)、30…切替装置、40…スイッチ群、41、42…スイッチ(リミットスイッチ)、F1…第1張力、F4…第2張力。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ(1)と、ハウジング(9)内に設けられ、該電動モータ(1)の回転駆動力を直線駆動力に変換する変換機構(10)と、該変換機構(10)による直線駆動力をパーキングブレーキ(5、6)に伝達するケーブル(3、4)とを備え、前記電動モータ(1)が正転駆動されることにより前記ケーブル(3、4)のインナワイヤ(3a、4a)が引張り方向に引張られて前記パーキングブレーキ(5、6)が制動状態とされ、前記電動モータ(1)が逆転駆動されることにより前記インナワイヤ(3a、4a)が戻し方向に戻されて前記パーキングブレーキ(5、6)が解除状態とされる電動パーキングブレーキ装置において、
前記変換機構(10)には、前記電動モータ(1)により回転されるとともに、前記インナワイヤ(3a、4a)に加わる張力によりハウジング(9)に対して戻し方向に移動可能なねじ軸(11)と、前記ハウジング(9)と該ねじ軸(11)間にあって、該ねじ軸(11)を支承する弾性体(14)と、が備えられ、
前記ねじ軸(11)の移動により、該ねじ軸(11)の先端部に配設されたスイッチ群(40)を開閉させ、該スイッチ群(40)の開閉信号に基づき前記インナワイヤ(3a、4a)に加わる張力を検知することを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記弾性体(14)は前記ハウジング(9)に装着された板ばねであることを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記スイッチ群(40)は2個のスイッチ(41、42)からなり、
前記ねじ軸(11)の一方向の移動に伴って少なくとも1個のスイッチ(41、42)が開閉信号を2回切り替え可能な切替装置(30)を備え、
前記ねじ軸(11)の一方向の最大移動により、前記インナワイヤ(3a、4a)に加わる3種類以上の張力の大きさを検知することができることを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。
【請求項4】
請求項3において、前記切替装置(30)は、前記インナワイヤ(3a、4a)に加わる張力が第1張力であるとき、1個のスイッチ(41)の開閉信号を反転させ、前記インナワイヤ(3a、4a)に加わる張力が第1張力より大きな第2張力であるとき、1個のスイッチ(41)の開閉信号を再度反転させることを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−12576(P2009−12576A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175476(P2007−175476)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】