説明

電子部品立体成形装置

【課題】容易に電子部品の成形を行うことができる立体成形装置を提供する。
【解決手段】ステージ33と、導電性インク10をインクジェット機構によりステージ33に向けて射出する第1の射出手段31と、絶縁性インク11をインクジェット機構によりステージ33に向けて射出する第2の射出手段32と、第1の射出手段31および第2の射出手段32とステージ33とを相対的に移動させる移動手段34と、移動手段34を制御しつつ、第1の射出手段31および第2の射出手段32から導電性インク10および絶縁性インク11をそれぞれステージ33の所定位置に向けて射出させるように制御し、導電部分と絶縁部分とを有する電子部品をステージ33上で立体成形する制御手段38とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品をインクジェット機構により成形する成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ等に用いるコイルを製造する際には、導線をボビン等に巻き付ける巻線装置が用いられており、複雑なコイルであっても人手によらずに自動的に製造できるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
また、コンデンサにおいて、電極板を巻き取って成形される形状のものについても、電極板を自動的に巻き取って成形するコンデンサ製造装置が従来より知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
なお、回路基板の導体パターン成形において、インクジェット機構を採用し、射出装置から射出されたコロイド液を基板上に付着させて配線パターンを成形する技術がすでに知られている(例えば、特許文献3参照)。
このような従来の技術においては、回路基板をXYステージに配置し、XYステージをXY平面内で移動させて導体パターン成形を行っていた。
【0004】
【特許文献1】特開2005−176531号公報
【特許文献2】特開平5−90109号公報
【特許文献3】特許第3713506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイルやコンデンサ等の電子部品の製造においては、自動的に導線を巻き付けたり電極板を巻き取ったりする装置は存在していたが、精度よく行うことは困難であり、その特性の誤差も大きいものとなっていた。
また、特にコイルの製造では、導線の巻き付け方も複雑なものも多く、その都度専用の巻線装置を使用せざるをえず、製造コストが高くなっているという課題があった。
【0006】
なお、従来のインクジェット機構を用いた成形装置では、導体パターンなどの平面的なものしか成形することができないという課題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、容易に電子部品の成形を行うことができる立体成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成すべく、以下の構成を備える。
すなわち、本発明にかかる電子部品立体成形装置によれば、ステージと、導電性インクをインクジェット機構によりステージに向けて射出する第1の射出手段と、絶縁性インクをインクジェット機構によりステージに向けて射出する第2の射出手段と、第1の射出手段および第2の射出手段とステージとを相対的に移動させる移動手段と、該移動手段を制御しつつ、第1の射出手段および第2の射出手段から導電性インクおよび絶縁性インクをそれぞれステージに向けて射出させるように制御し、導電部分と絶縁部分とを有する電子部品をステージ上で立体成形する制御手段とを具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、インクジェット機構を用いて電子部品を成形することができるので、特殊な製造装置を用いる必要がなく、また複雑な構造においても容易に成形することが可能となる。
【0009】
導電性および絶縁性以外の性質を有するインクをインクジェット機構により射出する第3の射出手段を具備することを特徴としている。
この構成によれば、例えば強磁性物質インクをコイル成形時のコアの部分に射出したり、誘電体物質インクをコンデンサ成形時の電極間に射出したりすることができ、成形対象の電子部品の特性を良好にすることができる。
【0010】
また、ステージに向けて紫外線を照射する紫外線照射手段が設けられ、前記導電性インクおよび前記絶縁性インクは、紫外線によって硬化する紫外線硬化剤が混入されており、前記制御手段は、導電性インクの射出終了または絶縁性インクの射出終了の都度、紫外線照射手段から紫外線を照射させ、射出された導電性インクおよび絶縁性インクを硬化させることを特徴としてもよい。
この構成によれば、次の導電性インクまたは絶縁性インクを射出する前に、先に射出したインクを硬化させておくことができるので、先に射出したインクと後に射出したインクとが混ざり合ったりせずに、確実な成形が行える。
【0011】
また、前記導電性および絶縁性以外の性質を有するインクは、紫外線によって硬化する紫外線硬化剤が混入されており、前記制御手段は、前記導電性および絶縁性以外の性質を有するインクの射出終了の都度、前記紫外線照射手段から紫外線を照射させ、射出された前記導電性および絶縁性以外の性質を有するインクを硬化させることを特徴としてもよい。
この構成によれば、導電性および絶縁性以外の性質を有するインクも硬化させることができ、先に射出したインクと後に射出したインクとが混ざり合ったりせずに、確実な成形が行える。
【0012】
また、前記電子部品はコイルであり、前記導電性インクの部分はコイルの巻線部分となり、前記絶縁性インクの部分はコイルの巻線の周囲に設けられた絶縁被膜部分となることを特徴としてもよい。
この構成によれば、コイルの成形を、実際に導線を巻き付けずに行うことができる。このため、蝋付け等の必要がなく、製造時の手間がかからないと言う利点があり、さらに線間密度を小さくできるという利点もある。
【0013】
また、前記電子部品はコンデンサであり、前記導電性インクの部分はコンデンサの電極部分となり、前記絶縁性インクの部分はコンデンサの電極間の誘電体部分となることを特徴としてもよい。
この構成によれば、コンデンサの成形を、実際に電極板を巻き取らずに行うので、電極板の間隔を精度よく狭くすることができ、小型で静電容量の大きいコンデンサを製造することができる。
【0014】
なお、成形終了時における電子部品の有すべき電気的特性の目標値が記憶されている目標値記憶手段と、電子部品の成形途中において、電子部品の電気的特性の測定値を測定する測定手段と、目標値記憶手段に記憶された成形終了時の目標値に基づいて、成形途中の目標値を算出する算出手段とを具備し、前記制御手段は、電子部品の成形途中において、前記第1の射出手段および第2の射出手段からの導電性インクおよび絶縁性インクの射出を中断し、測定手段によって成形途中の電子部品の電気特性の測定値を測定させ、測定手段によって測定された測定値と、算出手段によって算出された成形途中の目標値とを比較し、成形終了時の測定値が目標値記憶手段に記憶されている成形終了時の目標値に近づくように前記移動手段を制御することを特徴としてもよい。
この構成によれば、製造中に特性を測定しつつ作り込むことができるので、電気的特性の誤差の少ない電子部品の製造ができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる電子部品立体成形装置によれば、専用の製造装置を用いなくとも電子部品の製造が可能となる。また、所定の粒径のインクを積み重ねていくことにより成形するので、複雑な構造であっても成形が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1には、本実施形態の基本的な構成のブロック図を示す。
本発明の電子部品立体成形装置30は、導電部分と絶縁部分とを有する電子部品を、導電性インク10と絶縁性インク11とを微少量射出させ、微少量の導電性インクと微少量の絶縁性インクとを少しずつ積み重ねて成形するものである。
導電性インクおよび絶縁性インクは、それぞれインクジェット機構を採用した第1の射出装置31および第2の射出装置32により射出される。インクジェット機構としては、ピエゾ方式やサーマル方式を採用することができる。
第1の射出装置31および第2の射出装置32の下方には、ステージ33が配置されている。各射出装置31,32はステージ33上に導電性インク10および絶縁性インク11を射出し、ステージ33上で電子部品が成形される。
【0017】
第1の射出装置31および第2の射出装置32それぞれは、インクを貯留しておくタンク(図示せず)と、タンク内のインクを微少量射出させるヘッド部(図示せず)とを有している。ヘッド部の先端には微少な径の射出穴(図示せず)が形成されており、射出穴から所定量のインクの液滴が射出される。
【0018】
第1の射出装置31と第2の射出装置32は、移動手段34によって三次元的に移動可能に設けられている。本実施形態では、後述するような多関節型のロボットアーム66を用いて第1の射出装置31と第2の射出装置32を移動させるようにしている。
第1の射出装置31と第2の射出装置32は、一体となるように固定して構成することで1つの移動手段34によって同時に移動するようにすることができる。ただし、第1の射出装置31と第2の射出装置32とは、個別に移動可能となるように設けてもよい。
【0019】
また、第1の射出装置31および第2の射出装置32のステージ33に対する移動は、特にロボットアームによる移動に限定することはなく、x軸、y軸、z軸を有する直交座標系において、第1の射出装置31および第2の射出装置32を各軸上でスライド移動可能なスライド部材上に設け、各軸上で第1および第2の射出装置31,32をスライド移動させるためのサーボモータを設けるようにしてもよい。
【0020】
導電性インク10としては、樹脂等からなるバインダーに金属粒子を含ませた導電性ペーストを用いることができる。また金属粒子をナノオーダーの径とした金属ナノ粒子を含ませた金属ナノペーストを用いてもよい。金属粒子としては、Au、Ag、Cu、Pd、Ni、ITOなどを採用することができる。
絶縁性インク11としては、エポキシ樹脂等を用いることができる。
また、導電性インク10および絶縁性インク11の双方には、紫外線によって硬化する紫外線硬化剤が混入されている。
【0021】
射出した導電性インク10または絶縁性インク11を硬化させるために、紫外線照射装置36が設けられている。紫外線照射装置36は紫外線の照射方向がステージ33を向くように配置されている。
本実施形態では、紫外線照射装置36は、後述するロボットアーム66に、第1の射出装置31および第2の射出装置32と共に取り付けられており、ロボットアーム66の動作に伴って移動可能となっている。
【0022】
紫外線照射装置36は、導電性インク10および絶縁性インク11が射出された後に、紫外線を照射することによって射出された導電性インクおよび絶縁性インクを硬化させる。そして、硬化した導電性インク10または絶縁性インク11の上に、次の導電性インク10や絶縁性インク11を射出して積み重ねていくことができる。
【0023】
電子部品立体成形装置30には、全体動作を制御する制御手段38が設けられている。
制御手段38は、移動手段34による第1の射出装置31および第2の射出装置32の移動、各射出装置31,32の移動後の所定位置における導電性インク10と絶縁性インク11の射出タイミング、紫外線照射装置36の照射タイミングなどを制御することができる。
【0024】
また、本実施形態では、第1の射出装置31と第2の射出装置32の現在位置を特定するために撮像手段である少なくとも2台以上のカメラ40,49が設けられている。各カメラ40,49は、CCDカメラ等のデジタルカメラを用いるとよく、撮像された画像データは位置特定手段37に取り込まれる。
【0025】
第1のカメラ40は、ロボットアーム66に第1の射出装置31、第2の射出装置32と共に取り付けられており、撮像方向が両射出装置31,32のインクの射出方向と同じ方向に向くように配置されている。
また、第2のカメラ49は、ロボットアーム66およびステージ33の双方が撮像範囲に入るような位置に設けられており、ステージ33上に設定された基準位置Aに対して第1の射出装置31および第2の射出装置32の位置を撮像することができる。
【0026】
第1のカメラ40および第2のカメラ49で撮像された画像データは、位置特定手段37内に取り込まれる。
位置特定手段37は、第1のカメラ40および第2のカメラ49によって撮像された画像データに基づいて、第1の射出装置31および第2の射出装置32の位置を特定する。
具体的には、ステージ33の所定位置に設定された基準位置Aを基準とした両射出装置31,32の相対位置を算出するようにしている。
【0027】
制御手段38は、位置特定手段37によって特定された各射出装置31,32の現在位置に基づいて移動手段34を制御し、各射出装置31,32を次の射出位置まで移動させる。
制御手段38は、移動手段34を制御して各射出装置31,32を次の射出位置まで移動させた後、各射出装置31,32のいずれかを制御して所定位置に導電性インク10または絶縁性インク11のいずれかを射出させる。
【0028】
さらに制御手段38は、各射出装置31,32のいずれかから導電性インク10または絶縁性インク11を射出させた後、紫外線照射装置36を制御して射出されたインクに向けて紫外線を照射させる。
これにより、射出されたインクは紫外線によって硬化し、次に射出されるインクと混ざらないようにすることができる。
【0029】
図2に、上述した制御系をさらに具体的に示したブロック図を示し、図3にロボットアームの外観構造を示す。
位置特定手段37・制御手段38は、カメラ40,49からの画像データを取り込んで画像処理する画像処理エンジン42と、CPU44と、ROM45と、RAM46とを有している。
【0030】
ROM45には、成形する電子部品を導電性インクと絶縁性インクの微少な液滴で構成する場合に、各インクの液滴の配置位置を基準位置Aに基づく位置データとして予め記憶されている。
【0031】
また、移動手段34としてのロボットアーム66は、自由度5のロボットアーム66として設けられており、5つのサーボモータ50〜54がそれぞれの関節に設けられている。各サーボモータ50〜54は、モータ駆動回路55〜59に接続されており、モータ駆動回路55〜59から出力される駆動信号に基づいて回転駆動する。また、各サーボモータ50〜54には、エンコーダ60〜64が設けられており、エンコーダ60〜64で検出した回転位置信号がモータ駆動回路55〜59に入力される。モータ駆動回路55〜59は、エンコーダ60〜64からの回転位置信号に基づいて駆動信号を出力し、各サーボモータ50〜54の各回転角度を制御することができる。
【0032】
ロボットアーム66は、基台(図示せず)に軸線方向に回動可能に設けられた第1のアーム部68と、第1のアーム部68に対して鉛直面内で回動可能に連結された第2のアーム部69と、第2のアーム部69に対して鉛直面内で回動可能に連結された第3のアーム部70と、第3のアーム部70に対して鉛直面内で回動可能に連結された第4のアーム部72と、第4のアーム部72に対して鉛直面内で回動可能に設けられたヘッド部74とを有している。
【0033】
基台には、第1のサーボモータ50が設けられており、第1のサーボモータ50の回転軸は基台に垂直な方向に突出している。この第1のサーボモータ50の回転軸に第1のアーム部68の基台側端部が連結されている。第1のサーボモータ50の回転駆動によって、第1のアーム部68は第1のアーム部68の軸線方向に回動可能となる。
【0034】
第1のアーム部68と第2のアーム部69の連結部分には、第2のサーボモータ51が取り付けられており、第2のサーボモータ51の回転軸が、連結部分の関節の回動軸として機能する。
第2のアーム部69と第3のアーム部70の連結部分には、第3のサーボモータ52が取り付けられており、第3のサーボモータ52の回転軸が、連結部分の関節の回動軸として機能する。
第3のアーム部70と第4のアーム部72の連結部分には、第4のサーボモータ53が取り付けられており、第4のサーボモータ53の回転軸が、連結部分の関節の回動軸として機能する。
【0035】
第5のサーボモータ54は、第4のアーム部72の先端部かヘッド部74のいずれかに設けられている。
第5のサーボモータ54の回転駆動によって、ヘッド部74は鉛直面内で回動可能となる。
【0036】
ヘッド部74には、撮像手段である2台のカメラのうち各射出装置31,32の射出方向と撮像方向が同一方向に向くカメラ40と、第1の射出装置31と、第2の射出装置32と、紫外線を照射する紫外線照射装置36とが設けられている。
したがって、ロボットアーム66を駆動させることによって、カメラ40、両射出装置31,32、紫外線照射装置36はロボットアーム66によって一体に移動する。
【0037】
次に、ロボットアーム66の制御方法について説明する。
カメラ49で撮像された画像データには、基準位置Aとロボットアーム66のヘッド部74が同一の画像内に取り込まれている。この画像データは、画像処理エンジン42に取り込まれて画像処理される。
ROM45内には予めステージ33上の基準位置Aの画像データが記憶されており、CPU44ではカメラ49で撮像した画像データと、ROM45内の基準位置Aの画像データとを比較し、基準位置Aを基準としてヘッド部74の位置を算出する。
【0038】
また、カメラ40で撮像された画像データには、ロボットアーム66のヘッド部74から見た基準位置Aが撮像されている。この画像データは、画像処理エンジン42に取り込まれて画像処理される。
ROM45内には予め基準位置Aの大きさが記憶されており、CPU44ではカメラ40で撮像した画像データにおける基準位置Aの大きさに基づいて、基準位置Aとヘッド部74との間の距離を正確に算出する。
【0039】
CPU44は、ROM45内に記憶されている各インクを配置する位置データおよび、各射出装置31,32の位置からの各インクの配置位置までの各インクの適正な射出距離を考慮し、次のヘッド部74の位置を算出する。
CPU44は、算出した位置へヘッド部74が移動するように、ロボットアーム66の各サーボモータ50〜54の回転角度を計算する。そして、CPU44は、各サーボモータ50〜54のモータ駆動回路55〜59へ、各サーボモータ50〜54が算出した角度だけ回転するように制御する制御信号を出力する。
【0040】
上述した構成を有する電子部品立体成形装置の概略の動作を図4および図5に基づいて説明する。
まず、図4(a)には、すでに所定量の導電性インクおよび絶縁性インクが積み重なっている状態から新たに絶縁性インク11を第2の射出装置32から射出させているところを図示している。
制御手段38は、所定のインクを射出させた後、紫外線照射装置36に対して紫外線を照射するように制御信号を出力する。そして、図4(b)に示すように、制御信号を受けた紫外線照射装置36は、所定時間紫外線を照射し、射出されたインクを硬化させる。なお、このときに、制御手段38は、移動手段34を制御して次に射出すべきインクの位置まで第1の射出装置31および第2の射出装置32を移動させる。
【0041】
次に、図4(c)に示すように、所定のインク(ここでは導電性インク)を第1の射出装置31が射出する。
そして図4(d)に示すように、制御手段38の制御によって、紫外線照射装置36が所定時間紫外線を照射し、射出されたインクを硬化させる。なお、このときに、制御手段38は、移動手段34を制御して次に射出すべきインクの位置まで第1または第2の射出装置31,32を移動させる。
次に、図4(e)に示すように、所定のインク(ここでは絶縁性インク)を第2の射出装置32が射出する。
【0042】
なお、インクの射出位置としては、先に射出したインクに隣接するように連続した位置に射出することに限定するものではない。
例えば、図5(a)〜(e)に示すように、導電性インク10を射出する前に絶縁性インク11を先に射出させ、絶縁性インク11を硬化させてから、硬化した絶縁性インク11の間に導電性インク10を射出させるようにしてもよい。
このようにすることにより、例えば導電性インクが硬化しにくい場合などにおいて、好適に成形が可能となる。
【0043】
図6〜図13に、電子部品立体成形装置30が、電子部品の例としてコイルを成形する過程について示す。黒い四角形が導電性インク10を示し、白い四角形が絶縁性インク11を示している。
図6では、絶縁性インク11を正面から見て横方向に1列、平面視して長さ方向に複数列射出されたところを示している。
次いで、図7においては、図6で射出した絶縁性インク11の上に正面から見て横方向に3列、長さ方向には図6と同じ長さだけ絶縁性インク11を射出したところを示している。
【0044】
続く図8〜図11においては、図7で射出した絶縁性インク11の上に横方向にさらに幅広となるように絶縁性インク11と導電性インク10とを、それぞれ所定箇所に射出している。
図12〜図13においては、コイル断面が円形となるように、正面から見て徐々に横方向が幅狭となるように各インクを所定の位置に射出している。このように、絶縁性インク11の間に導電性インク10がコイル状に配置するように各インクを射出することにより、複雑な形状のコイルであっても、容易に製造できる。
【0045】
次に、図14に本発明の他の実施形態の基本的な構成のブロック図を示す。
なお、上述した実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する場合もある。
本実施形態では、成形中の電子部品の電気的特性を測定する測定手段80が設けられている。さらに、成形する電子部品の電気的特性の最終的な目標値が記憶されている目標値記憶手段82が設けられている。測定手段80には、電子部品の端子に接続させるための2つの端子部81,81が設けられている。
【0046】
なお、成形する電子部品がコイルである場合、測定すべき電気的特性として重要なものにはインダクタンスがある。したがって、コイルのインダクタンスを測定するために、測定手段80には所定の周波数を有する交流電圧をコイルに印加可能に設けたマクスウェルブリッジが設けられているとよい。
また、成形する電子部品がコンデンサである場合、測定すべき電気的特性として重要なものにはキャパシタンス(静電容量)がある。したがって、コンデンサのキャパシタンスを測定するために、測定手段80には所定の周波数を有する交流電圧をコンデンサに印加可能に設けたキャパシタンスブリッジが設けられているとよい。
【0047】
また、目標値記憶手段82から抽出した電気的特性の目標値に基づいて、成形途中の電気的特性の目標値を算出する算出手段83が設けられている。
算出手段83は、測定手段80が成形途中の電子部品のインダクタンスやキャパシタンスを測定した後かまたは測定する前に、記憶手段45に記憶されているインダクタンスやキャパシタンスの目標値を抽出する。
算出手段83は、抽出した目標値から成形途中である現在の電気的特性の目標値を算出する。現在の目標値の算出は、測定した時点における電子部品の成形が最終的な状態と比較して何%成形したかによって算出することができる。このような成形段階の判断は、現在まで射出した各インクの位置データが、位置データ全体からどの程度の段階にあるかで判断可能である。
【0048】
制御手段38は、算出手段83によって算出された電気的特性の現在の目標値と、測定手段80によって測定された電気的特性の測定値を比較する。
制御手段38は、比較した結果、測定された電気的特性の値が現在の目標値と一致している場合には、そのまま成形動作を続行するように制御する。なお、現在の目標値には、所定幅の許容範囲をもたせておき、制御手段38は測定された値が許容範囲内に入るか否かを判断するようにしてもよい。
【0049】
制御手段38は、比較した結果、測定された電気的特性の値が現在の目標値と一致していない場合(または、許容範囲に入っていない場合)には、引き続き行う各インクの射出作業を、最終的に完成した電子部品の電気的特性が、最終的な目標値に一致するように自動的に制御する。
【0050】
具体的には、例えば電子部品がコイルである場合において、成形途中でのインダクタンス値が目標値よりも下回っているような場合、巻線間隔をさらに狭める必要がある。このため、制御手段38は、ROM45に記憶されている位置データよりも巻線間隔が狭まるような位置に各インクを射出させるように移動手段34を制御する。
また、成形途中でのインダクタンス値が目標値よりも上回っているような場合、巻線間隔をさらに広げる必要がある。このため、制御手段38は、ROM45に記憶されている位置データよりも巻線間隔が広がるような位置に各インクを射出させるように移動手段34を制御する。
【0051】
電子部品がコンデンサである場合において、成形途中のキャパシタンス値が目標値よりも下回っている場合、電極の間隔をさらに狭める必要がある。このため、制御手段38は、ROM45に記憶されている位置データよりも電極の間隔が狭まるような位置に各インクを射出させるように移動手段34を制御する。
また、成形途中でのキャパシタンス値が目標値よりも上回っているような場合、電極間隔をさらに広げる必要がある。このため、制御手段38は、ROM45に記憶されている位置データよりも電極間隔が広がるような位置に各インクを射出させるように移動手段34を制御する。
【0052】
上述してきたような、電子部品の成形の途中において、成形動作を一旦中断して電気的特性を測定する工程は、最終的に成形が終了するまでの間、複数回実行するようにするとよい。
【0053】
なお、上述した実施形態で説明してきたインクは、導電性物質と絶縁性物質の2種類のみであるが、射出するインクとしてはこの2種類のみに限定されることはなく、他の種類のインクと組み合わせることにより、さらに多様な効果が得られる。
例えば、コイルを成形する場合には、コア部に強磁性物質インクを射出して紫外線硬化させることによりインダクタンスの高いコイルを成形することができる。この場合、強磁性物質インクをインクジェット機構により射出する第3の射出装置を、第1の射出装置および第2の射出装置とは別個に設け、制御手段によって第3の射出装置の射出タイミングや射出位置を制御する。
【0054】
また、コンデンサを成形する場合には、電極間に誘電体物質インクを射出して紫外線硬化させることによりキャパシタンスの高いコンデンサを成形することができる。この場合も、第1の射出装置および第2の射出装置とは別個に第3の射出装置として、誘電体物質インクをインクジェット機構により射出可能に設け、制御手段によって第3の射出装置の射出タイミングや射出位置を制御する。
【0055】
ただし、1つの電子部品を成形する際に導電性インクおよび絶縁性インク以外に射出すべきインクとしては1種類に限られることはなく、導電性インクおよび絶縁性インクの他に複数種類のインクを射出可能に設けてもよい。
かかる場合は、第1の射出装置および第2の射出装置の他に第3の射出装置および第4の射出装置等の複数の射出装置を設け、これらすべての射出装置における射出タイミングや射出位置の制御を制御手段で実行する。
【0056】
さらに、上述してきた実施形態においては、ステージに対して第1の射出装置と第2の射出装置が移動手段によって移動する構成を説明した。
しかし、本発明としてはこのような構成に限定することはなく、第1の射出装置および第2の射出装置が固定され、ステージを3次元的に移動するように設けてもよい。
さらに、ステージに対して第1の射出装置と第2の射出装置が移動手段によって移動する構成に加えて、ステージも微調整できるように移動可能に設けるようにしてもよい。
【0057】
なお、上述してきた実施形態においては、カメラは2台設けるようにしたが、さらに多くのカメラを設けることによって、各射出装置のより正確な位置を測定することができる。
【0058】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の全体構成を示すブロック図である。
【図2】制御系のブロック図である。
【図3】ロボットアームの外観構造を示す説明図である。
【図4】電子部品を成形する際の動作方法について説明する説明図である。
【図5】他の動作方法について示す説明図である。
【図6】コイルを成形する際の説明図である。
【図7】図6の続きのコイルを成形する際の説明図である。
【図8】図7の続きのコイルを成形する際の説明図である。
【図9】図8の続きのコイルを成形する際の説明図である。
【図10】図9の続きのコイルを成形する際の説明図である。
【図11】図10の続きのコイルを成形する際の説明図である。
【図12】図11の続きのコイルを成形する際の説明図である。
【図13】図12の続きのコイルを成形する際の説明図である。
【図14】他の実施形態の制御系のブロック図を示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
10 導電性インク
11 絶縁性インク
30 電子部品立体成形装置
31 第1の射出装置
32 第2の射出装置
33 ステージ
34 移動手段
36 紫外線照射装置
37 位置特定手段
38 制御手段
40,49 カメラ
42 画像処理エンジン
44 CPU
45 ROM(記憶手段)
46 RAM
50,51,52,53,54 サーボモータ
55,56,57,58,59 モータ駆動回路
60,61,62,63,64 エンコーダ
66 ロボットアーム
68 第1のアーム部
69 第2のアーム部
70 第3のアーム部
72 第4のアーム部
74 ヘッド部
80 測定手段
81 端子部
82 目標値記憶手段
83 算出手段
A 基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージと、
導電性インクをインクジェット機構によりステージに向けて射出する第1の射出手段と、
絶縁性インクをインクジェット機構によりステージに向けて射出する第2の射出手段と、
第1の射出手段および第2の射出手段とステージとを相対的に移動させる移動手段と、
該移動手段を制御しつつ、第1の射出手段および第2の射出手段から導電性インクおよび絶縁性インクをそれぞれステージの所定位置に向けて射出させるように制御し、導電部分と絶縁部分とを有する電子部品をステージ上で立体成形する制御手段とを具備することを特徴とする電子部品立体成形装置。
【請求項2】
導電性および絶縁性以外の性質を有するインクをインクジェット機構により射出する第3の射出手段を具備することを特徴とする請求項1記載の電子部品立体成形装置。
【請求項3】
ステージに向けて紫外線を照射する紫外線照射手段が設けられ、
前記導電性インクおよび前記絶縁性インクは、紫外線によって硬化する紫外線硬化剤が混入されており、
前記制御手段は、導電性インクの射出終了または絶縁性インクの射出終了の都度、紫外線照射手段から紫外線を照射させ、射出された導電性インクおよび絶縁性インクを硬化させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電子部品立体成形装置。
【請求項4】
前記導電性および絶縁性以外の性質を有するインクは、紫外線によって硬化する紫外線硬化剤が混入されており、
前記制御手段は、前記導電性および絶縁性以外の性質を有するインクの射出終了の都度、前記紫外線照射手段から紫外線を照射させ、射出された前記導電性および絶縁性以外の性質を有するインクを硬化させることを特徴とする請求項3記載の電子部品立体成形装置。
【請求項5】
前記電子部品はコイルであり、
前記導電性インクの部分はコイルの巻線部分となり、前記絶縁性インクの部分はコイルの巻線の周囲に設けられた絶縁被膜部分となることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項記載の電子部品立体成形装置。
【請求項6】
前記電子部品はコンデンサであり、
前記導電性インクの部分はコンデンサの電極部分となり、前記絶縁性インクの部分はコンデンサの電極間の誘電体部分となることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項記載の電子部品立体成形装置。
【請求項7】
成形終了時における電子部品の有すべき電気的特性の目標値が記憶されている目標値記憶手段と、
電子部品の成形途中において、電子部品の電気的特性の測定値を測定する測定手段と、
目標値記憶手段に記憶された成形終了時の目標値に基づいて、成形途中の目標値を算出する算出手段とを具備し、
前記制御手段は、
電子部品の成形途中において、前記第1の射出手段および第2の射出手段からの導電性インクおよび絶縁性インクの射出を中断し、測定手段によって成形途中の電子部品の電気特性の測定値を測定させ、
測定手段によって測定された測定値と、算出手段によって算出された成形途中の目標値とを比較し、成形終了時の測定値が目標値記憶手段に記憶されている成形終了時の目標値に近づくように前記移動手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項6のうちのいずれか1項記載の電子部品立体成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−98280(P2008−98280A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276358(P2006−276358)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】