説明

電界効果トランジスタ、電界効果トランジスタの製造方法、および電子装置

【課題】 ミリ波以上の周波数において、安定して、高い利得および動作周波数が得られる電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】 基板11上の動作層13の上に、ソース電極14、ドレイン電極15、ゲート電極18、絶縁膜17が形成され、
ゲート電極18は、ソース電極14とドレイン電極15の間に配置され、
絶縁膜17は、ゲート電極18とドレイン電極15の間に配置され、
フィールドプレート電極19は、絶縁膜17上に形成され、かつ、ソース電極14と電気的に接続され、
ゲート電極18上部は、ソース電極14側およびドレイン電極15側に突出し、
フィールドプレート電極19下端は、ゲート電極18下端よりも下方に配置され、
フィールドプレート電極19上端は、ゲート電極19上部においてドレイン電極15側に最も突出した部分よりも下方に配置されている電界効果トランジスタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果トランジスタ、電界効果トランジスタの製造方法、および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術の発展に伴い、利得および動作周波数の高い電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)が実用化されている。例えば、特許文献1の図1に記載されている電界効果トランジスタは、ソース電極に電気的に接続されたフィールドプレート電極の一部または全部が、T字型を有したゲート電極下に位置している。
【0003】
特許文献1に記載された前記電界効果トランジスタ(FET)の構造の概略は、例えば、図9の断面図のように表すことができる。図示のとおり、このFETは、T字型の頂部を備えるゲート電極1と、ソース電極2と、ドレイン電極3と、動作層4上に接触した絶縁膜5と、前記絶縁膜5上に接触したフィールドプレート電極6と、前記フィールドプレート電極6を覆う絶縁膜7とを有する。前記フィールドプレート電極6は、前記ソース電極2と電気的に接続されており、前記フィールドプレート電極6は、前記ゲート電極1のT字型頂部の下に位置しており、前記絶縁膜7は、前記ゲート電極1のT字型頂部と接触していない。
【0004】
図9のFETの構造によれば、フィールドプレート電極とゲート電極との間の容量を増加させずに、ソース電極に電気的に接続されたフィールドプレート電極が、ゲート電極とドレイン電極の間の電界を遮ることで、ゲートドレイン間容量を低減することが可能になる。これにより、半導体装置の利得、および、動作周波数を高くすることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−124440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のFETをミリ波以上の周波数に適用した場合、いくつかの問題が生じる。
【0007】
第1の問題点は、フィールドプレート電極を設けることで、フィールドプレート電極が無い構造よりも、低い周波数での利得は向上するが、ミリ波以上の高い周波数では、実際には利得および動作周波数が低下することである。その理由は、フィールドプレート電極下方の絶縁膜を介してフィールドプレート電極と動作層との間に形成された容量がミリ波以上の周波数で高周波的にショートすることで、このフィールドプレート電極がゲート電極として機能し、利得を下げるためである。
【0008】
第2の問題点は、高周波動作化のためにフィールドプレート電極と動作層との間に形成された容量を下げようとすると、ゲート電極とフィールドプレート電極との間の容量が増加することである。その理由は、フィールドプレート電極と動作層との間に形成された容量を下げるためにフィールドプレート電極下方の絶縁膜を厚くすると、フィールドプレート電極上の絶縁膜とゲート電極のT字型頂部とが近接または接触するためである。
【0009】
そこで、本発明は、ミリ波以上の周波数において、安定して、高い利得および動作周波数が得られる電界効果トランジスタ、電界効果トランジスタの製造方法、および、電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の電界効果トランジスタは、
基板、動作層、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、フィールドプレート電極、および絶縁膜を有し、
前記動作層は、前記基板上に形成され、
前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記ゲート電極、および前記絶縁膜は、前記動作層上に形成され、
前記ゲート電極は、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に配置され、
前記絶縁膜は、前記ゲート電極および前記ドレイン電極の間に配置され、
前記フィールドプレート電極は、前記絶縁膜上に形成され、かつ、前記ソース電極と電気的に接続され、
前記ゲート電極上部は、前記ソース電極側および前記ドレイン電極側に突出した突出部を有し、
前記フィールドプレート電極下端は、前記ゲート電極下端よりも下方に配置され、
前記フィールドプレート電極上端は、前記ゲート電極上部における前記ドレイン電極側の突出部よりも下方に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の電界効果トランジスタの製造方法は、
基板上に動作層を形成する動作層形成工程と、
前記動作層上に、前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記ゲート電極、および前記絶縁膜を形成する電極形成工程と、
前記絶縁膜上に、フィールドプレート電極を、前記ソース電極と電気的に接続されるように形成するフィールドプレート電極形成工程とを有し、
前記電極形成工程において、前記ゲート電極を、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に配置し、電気ゲート電極上部に、前記ソース電極側および前記ドレイン電極側に突出した突出部を形成し、かつ、前記絶縁膜を、前記ゲート電極および前記ドレイン電極の間に配置し、
前記フィールドプレート電極形成工程において、前記フィールドプレート電極下端を、前記ゲート電極下端よりも下方に配置し、かつ、前記フィールドプレート電極上端を、前記ゲート電極上部における前記ドレイン電極側の突出部よりも下方に配置することを特徴とする。
【0012】
本発明の電子装置は、本発明の電界効果トランジスタを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ミリ波以上の周波数において、安定して、高い利得および動作周波数が得られる電界効果トランジスタ、電界効果トランジスタの製造方法、および、電子装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電界効果トランジスタの第1の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の電界効果トランジスタの第2の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の効果を例示するグラフである。
【図4】本発明の電界効果トランジスタの第3の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の電界効果トランジスタの第4の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の電界効果トランジスタの第5の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図7】ゲート電極の形状を模式的に例示する断面図である。
【図8】本発明の効果を例示するグラフである。
【図9】特許文献1の電界効果トランジスタの構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において「オーミック接触」または「ショットキー接触」という場合は、直接接触した状態でも良いし、他の構成要素を介してつなぎ合わされた状態でも良い。例えば、電極と半導体層とがオーミック接触またはショットキー接触している状態とは、前記電極と前記半導体層とが、直接接触した状態でも良いし、他の半導体層等を介してつなぎ合わされた状態でも良い。また、本発明において「電気的に接続」とは、電気的に何らかの相互作用が可能な状態であれば良い。より具体的には、「電気的に接続」は、直接接触した状態でも良いし、他の構成要素を介してつなぎ合わされた状態でも良く、通電可能な状態でも良いし、絶縁膜等を介して電気的な相互作用が可能な状態でも良い。例えば、フィールドプレート電極およびソース電極が電気的に接続されている状態とは、フィールドプレート電極およびソース電極が、絶縁膜および動作層を介してつなぎ合わされた状態でも良いし、他の任意の接続状態でも良い。
【0016】
また、本発明において、「上に」または「上方に」は、特に断らない限り、上面に直接接触している状態でも良いし、間に他の構成要素等が存在していても良い。同様に、「下に」または「下方に」も同様とする。また、「上面に」は、上面に直接接触している状態を指す。「下面に」も同様とする。本発明の電界効果トランジスタにおいて、「上」「上方」とは、特に断らない限り、前記動作層において、前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記ゲート電極、前記フィールドプレート電極、および前記絶縁膜が形成された面側を指す。本発明の半導体装置の各構成要素において、「上面」は、特に断らない限り、前記「上」または「上方」側の面を指す。
【0017】
また、本発明において、「組成」および「組成比」とは、例えば、AlGa1−xNの組成で表される半導体層において、xの数値を「Al組成比」というものとする。また、本発明において、一つの半導体層と他の半導体層との組成を比較する場合、導電性を発現させるための不純物(ドーパント)は、半導体層を構成する元素として考慮しないものとする。例えば、p型GaN層とn型GaN層とは、不純物(ドーパント)が異なるが、組成は同一であるものとする。また、例えば、n型GaN層と、不純物濃度がさらに高いnGaN層とがあった場合、それらの組成は同一であるものとする。また、本発明において、「距離」は、特に断らない限り、最短距離をいう。
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。また、説明の便宜上、図面およびその説明等は、適宜、誇張・簡略化等する場合がある。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1の断面図に、本実施形態のFETの構造を模式的に示す。図示のとおり、このFETは、基板11、動作層13、ソース電極14、ドレイン電極15、絶縁膜17、ゲート電極18、およびフィールドプレート電極19を有する。本実施形態のFETは、さらに、バッファ層12を有し、基板11上に、バッファ層12および動作層13が、前記順序で積層されている。ソース電極14、ドレイン電極15、絶縁膜17およびゲート電極18は、動作層13上に形成されている。ソース電極14およびドレイン電極15は、動作層13にオーム性接触している。ゲート電極18は、ソース電極14およびドレイン電極15の間に配置されている。ソース電極14およびドレイン電極15の間の動作層上部には、フィールドプレートリセス(開口部)16が形成されている。絶縁膜17は、ソース電極14およびドレイン電極15の間に配置され、動作層13上に堆積されるとともに、フィールドプレートリセス16上にも堆積されている。また、図1では、絶縁膜17は、ゲート絶縁膜を兼ねており、ソース電極14およびドレイン電極15の間に配置されるとともに、ゲート電極18の下にも配置されている。すなわち、本実施形態では、ゲート電極18は、絶縁膜(ゲート絶縁膜)17上に配置されている。フィールドプレート電極19は、絶縁膜17上に形成され、かつ、ソース電極14と電気的に接続されている。また、フィールドプレート電極19は、絶縁膜17を介して、フィールドプレートリセス(開口部)16を埋め込むように配置されている。ゲート電極18上部は、ソース電極14側およびドレイン電極15側に突出した突出部を有する。同図では、ゲート電極18上部は、ひさしのような形状を有している。フィールドプレート電極19下端は、ゲート電極18下端よりも下方に配置されている。フィールドプレート電極19上端は、ゲート電極18上部におけるドレイン電極15側の突出部よりも下方に配置されている。図1のFETでは、フィールドプレート電極19の少なくとも一部が、ゲート電極18上部(ひさし)に対し、基板11平面と垂直方向に重なり合うように(ひさしの直下に)形成されている。また、図1のFETは、さらに、保護膜20を有する。保護膜20は、絶縁膜(ゲート絶縁膜17)、ゲート電極18、およびフィールドプレート電極19の表面を覆うように形成されている。
【0020】
図8のグラフに、本実施形態のFETにおける周波数と利得との関係のシミュレーション結果を例示する。同図において、横軸は、周波数(Hz)であり、縦軸は、利得(dB)である。同図中、実線で示した「実施形態」は、本実施形態のFETのシミュレーション結果を示す。破線で示した「参考例(フィールドプレート電極有り)」は、図9に示した構造のFETのシミュレーション結果を示す。一点鎖線で示した「参考例(フィールドプレート電極無し)」は、図9に示した構造のFETからフィールドプレート電極を除いたFETのシミュレーション結果を示す。図8に示すように、図9の構造のFETでは、で示すように、フィールドプレート電極を設けることで、フィールドプレート電極が無い構造よりも、低い周波数での利得は向上するが、ミリ波以上の高い周波数では、実際には利得および動作周波数が低下する。これに対し、本実施形態のFETによれば、高周波数でも高い利得が得られる。ただし、図8は、理論計算によるシミュレーション結果の一例であり、本発明を何ら限定しない。
【0021】
なお、本発明においては、前記バッファ層はなくても良いが、例えば図1のように、動作層と基板との間にバッファ層が配置されていることが好ましい。
【0022】
基板11の材質は特に限定されないが、シリコン基板、SiC基板、サファイア基板、GaN基板のいずれかであることが望ましい。また、基板11は、半導体基板であることが好ましい。
【0023】
動作層13の形成材料は、特に限定されないが、窒化物半導体であることが好ましく、III族窒化物半導体であることがより好ましい。
【0024】
動作層13は、一層のみでも、複数の層からなっていても良い。例えば、動作層13は、電子走行層となるGaN層、および電子障壁層となるAlGaN層が、前記順序で積層されて形成されていることが好ましい。
【0025】
別の一例として、動作層13は、電子走行層となるGaN層、電子障壁層となるAlGaN層、およびコンタクト層または保護膜となるGaN層が、前記順序で積層されて形成されていることが好ましい。
【0026】
絶縁膜17は、特に限定されないが、窒化シリコン膜または酸化アルミ膜が好ましい。
【0027】
フィールドプレート電極19は、図では矩形形状であるが、これに限定されず、例えば、上辺が底辺よりも短い台形形状、または、上辺が底辺よりも長い台形形状でもよい。
【0028】
本発明のFETでは、フィールドプレートリセス(開口埋め込み部)は、なくても良いが、例えば図1のように、フィールドプレートリセスが形成され、前記フィールドプレート電極が、前記絶縁膜を介して前記フィールドプレートリセスを埋め込むように配置されていることが好ましい。これにより、前記フィールドプレート電極を、低い位置に配置しやすいためである。
【0029】
本実施形態のFETでは、図1のように、フィールドプレート電極19の下端がゲート電極18の下端よりも下方に配置されている。このため、フィールドプレート電極19がゲートとして機能したとしても、ミリ波以上の周波数においても高い利得が得られる。このように、本発明のFETは、フィールドプレート電極の下端がゲート電極の下端よりも下方に配置されているため、フィールドプレート電極がゲートとして機能したとしても、ミリ波以上の周波数での利得の低下を引き起こさない。
【0030】
また、本発明のFETは、例えば図1のように、フィールドプレート電極19をフィールドプレートリセス16内に形成することで、ゲート電極18の上部(ひさし)と接触しにくくなる。これにより、フィールドプレート電極19とゲート電極18との間の容量をさらに低く抑えることが可能になり、さらに高い利得が得られる。
【0031】
本発明のFETにおいては、ゲート絶縁膜はなくても良い。例えば、前記ゲート電極が、前記動作層上面に直接ショットキー接触していても良い。しかしながら、本発明のFETがゲート絶縁膜を有し、前記ゲート電極が、前記ゲート絶縁膜を介して前記動作層上方に形成されていることが好ましい。また、前記ゲート絶縁膜は、前記フィールドプレート電極下の絶縁膜と別体でも良いし、別の材質により形成されていても良いが、例えば図1のように、前記両絶縁膜が一体の絶縁膜17として形成されていることが好ましい。また、本発明では、前記両絶縁膜を同一の材料(同一の組成)により形成することで、絶縁膜の組成比等のばらつきの影響を受けずに、安定して高い利得を得やすい。特に、図1のように、フィールドプレート電極19の下の絶縁膜17とゲート電極18の下の絶縁膜17の材料(組成)と膜厚を同じにすれば、絶縁膜の膜厚および組成比のばらつきの影響を受けずに、ミリ波以上の周波数においても安定して高い利得が得られやすい。
【0032】
本発明のFETの製造方法および動作方法は、特に制限されず、例えば、一般的なFETまたは半導体装置の製造方法、動作方法等を参考にして適宜実施することができる。例えば、前記動作層は、気相成長法によるエピタキシャル成長等により形成しても良い。前記フィールドプレートリセス等のリセス(開口部)は、例えば、パターニングおよびエッチングを用いて形成しても良い。各電極は、例えば、スパッタ法等により形成しても良い。本実施形態および以下の各実施形態において同様である。
【0033】
(第2の実施の形態)
前記第1の実施の形態において、フィールドプレート電極がゲート電極の上部(ひさし)直下に無い構成においても、同様な効果を得ることができる。本実施形態においては、そのような構造のFETについて示す。
【0034】
図2の断面図に、本実施形態のFETの構造を模式的に示す。図示のとおり、このFETは、基板11に代えて基板21を、バッファ層12に代えてバッファ層22を、動作層13に代えて動作層23を、ソース電極14に代えてソース電極24を、ドレイン電極15に代えてドレイン電極25を、フィールドプレートリセス16に代えてフィールドプレートリセス26を、絶縁膜17に代えて絶縁膜27を、ゲート電極18に代えてゲート電極28を、フィールドプレート電極19に代えてフィールドプレート電極29を、保護膜20に代えて保護膜30を、それぞれ有する。同図のFETの構造は、フィールドプレート電極29が、ゲート電極18の上部(ひさし)に対し、基板平面と垂直方向に重なり合っていない。すなわち、フィールドプレート電極29は、ゲート電極18の上部(ひさし)の直下よりも外側(図において右側)に配置されている。これ以外は、同図のFETの構造は、第1の実施の形態(図1)のFETと同様である。
【0035】
ゲート電極28の上部(ひさし)の末端からフィールドプレート電極29の末端までの、基板平面に平行方向の距離LGFは、図示のように、0〜0.3μmの範囲であることが好ましい。これにより、例えば図3のように、利得低下要因となる、容量と抵抗の増加を抑えることが可能になる。なお、図3は、前記LGFと、ドレイン抵抗またはゲートソース間容量との関係のシミュレーション結果を例示するグラフである。ただし、同図は一例であって、本発明はこれに限定されない。
【0036】
本実施形態のFETでは、ゲート電極28のひさし下にフィールドプレート電極29がないため、ゲート電極とフィールドプレート電極との間の容量をより低く抑えることが可能になる。
【0037】
(第3の実施の形態)
上記実施の形態において、ゲートリセスを有する構成においても、同様な効果を得ることができる。図4の断面図に、そのようなFETの構造を模式的に示す。図示のとおり、このFETは、基板11に代えて基板31を、バッファ層12に代えてバッファ層32を、動作層13に代えて動作層33を、ソース電極14に代えてソース電極34を、ドレイン電極15に代えてドレイン電極35を、フィールドプレートリセス16に代えてフィールドプレートリセス37を、絶縁膜17に代えて絶縁膜38を、ゲート電極18に代えてゲート電極39を、フィールドプレート電極19に代えてフィールドプレート電極40を、保護膜20に代えて保護膜41を、それぞれ有する。同図のFETは、動作層33上部の、ゲート電極39が配置される位置に、さらに、ゲートリセス(開口埋め込み部)36が形成されている。ゲート電極39は、絶縁膜38を介して、ゲートリセス36を埋め込むように形成されている。これ以外は、同図のFETの構造は、第1の実施の形態(図1)のFETと同様である。
【0038】
本実施形態では、ゲート電極39をゲートリセス内36に形成することで、相互コンダクタンスを向上させることが可能になり、さらなる利得向上が図れる。なお、ゲートリセスおよびフィールドプレートリセスの深さは特に制限されないが、例えば図4のように、フィールドプレートリセス37を、ゲートリセス36よりも深く形成することが好ましい。また、図4では、ゲート電極39上部(ひさし)の形状を、図1とは異なる形状(末端に行くにしたがって細くなる形状)に表しているが、これは単なる例示であり、本発明において、前記ゲート電極上部(ひさし)の形状は、何ら限定されない。図7に、本発明のFETにおけるゲート電極の形状を例示する。同図は、本発明のFETにおけるゲート電極部分のみを示した断面図である。図示のとおり、本発明のFETにおける前記ゲート電極は、例えば、断面がほぼ逆三角形の形状でも良いし、上部の形状が、下方ほど幅が広い傘のような形状でも良い。また、前記ゲート電極の形状は、図7に示した以外の任意の形状でも良い。本実施形態以外の各実施形態においても同様である。
【0039】
(第4の実施の形態)
上記実施の形態において、フィールドプレート電極の上端がゲート電極の下端と同一高さ、または、フィールドプレート電極の上端がゲート電極の下端よりも低い構造においても、同様な効果を得ることができる。図5の断面図に、そのようなFETの構造を、模式的に示す。図示のとおり、このFETは、基板11に代えて基板51を、バッファ層12に代えてバッファ層52を、動作層13に代えて動作層53を、ソース電極14に代えてソース電極54を、ドレイン電極15に代えてドレイン電極55を、フィールドプレートリセス16に代えてフィールドプレートリセス56を、絶縁膜17に代えて絶縁膜57を、ゲート電極18に代えてゲート電極58を、フィールドプレート電極19に代えてフィールドプレート電極59を、保護膜20に代えて保護膜60を、それぞれ有する。同図において、動作層53は、電子走行層61および電子障壁層62が、前記順序で積層されて形成されている。フィールドプレートリセス56は、電子障壁層62の部分にのみ形成され、電子走行層61までは達していない。これら以外は、同図のFETの構造は、第1の実施の形態(図1)のFETと同様である。
【0040】
電子走行層61および電子障壁層62の形成材料は、特に制限されない。例えば、電子走行層61はGaNで形成され、電子障壁層62はAlGaNで形成されることが好ましい。
【0041】
別の一例として、電子走行層61はGaNで形成され、電子障壁層62はAlGaN層およびGaN層がこの順序で積層された二層構造であっても良い。
【0042】
さらに別の一例として、電子走行層61は、AlGaN層およびGaN層がこの順序で積層された二層構造であり、電子障壁層62は、AlGaN層およびGaN層がこの順序で積層された二層構造であっても良い。
【0043】
本実施形態では、フィールドプレート電極を、電子障壁層のフィールドプレートリセス内に形成したことで、相互コンダクタンスの向上が可能になり、さらなる利得向上がはかれる。
【0044】
なお、図5において、フィールドプレート電極59は、その全体が絶縁膜57の中に埋め込まれている。すなわち、フィールドプレート電極59は、その全面が絶縁膜57で覆われている。ただし、これは例示であって、この構造には限定されない。
【0045】
(第5の実施の形態)
上記実施の形態において、ゲートリセス、もしくは、フィールドプレートリセスが台形形状な構造においても、同様な効果を得ることができる。図6の断面図に、そのようなFETの構造の一例を模式的に示す。図示のとおり、このFETは、基板31に代えて基板71を、バッファ層32に代えてバッファ層72を、動作層33に代えて動作層73を、ソース電極34に代えてソース電極74を、ドレイン電極35に代えてドレイン電極75を、ゲートリセス36に代えてゲートリセス76を、フィールドプレートリセス37に代えてフィールドプレートリセス77を、絶縁膜38に代えて絶縁膜78を、ゲート電極39に代えてゲート電極79を、フィールドプレート電極40に代えてフィールドプレート電極80を、保護膜41に代えて保護膜81を、それぞれ有する。同図において、動作層73は、電子走行層82および電子障壁層83が、前記順序で積層されて形成されている。フィールドプレートリセス77は、電子障壁層83の部分にのみ形成され、電子走行層82までは達していない。ゲートリセス76は、底辺が短い台形形状を有し、フィールドプレートリセス77は、底辺が短い台形形状を有する。これ以外は、同図のFETの構造は、第3の実施の形態(図4)のFETと同様である。
【0046】
ゲートリセスおよびフィールドプレートリセスの深さは特に制限されないが、例えば図6のように、フィールドプレートリセス77を、ゲートリセス76よりも深く形成することが好ましい。
【0047】
ゲートリセス76は、底辺が長い台形構造でもよい。また、ゲートリセス76は、なくても良いが、実施の形態3で述べた理由により、ゲートリセスを形成することが好ましい。
【0048】
また、フィールドプレートリセス77は、底辺が長い台形構造でもよい。
【0049】
本実施形態では、ゲートリセスおよびフィールドプレートリセスの一方または両方を台形構造にすることで、電子障壁層の電界を緩和することが可能になり、耐圧を維持したまま、利得向上がはかれる。
【0050】
なお、図6において、電子走行層82および電子障壁層83は特に制限されず、例えば、第4の実施の形態(図5)における電子走行層61および電子障壁層62と同様で良い。
【0051】
また、図6において、フィールドプレート電極80は、その全体が絶縁膜78の中に埋め込まれている。すなわち、フィールドプレート電極80は、その全面が絶縁膜78で覆われている。ただし、これは例示であって、この構造には限定されない。
【0052】
また、図6では、ゲート電極79上部(ひさし)の形状を、末端に行くにしたがって細くなる形状に表しているが、これは単なる例示であり、前記ゲート電極上部(ひさし)の形状は、何ら限定されない。
【0053】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されず、本発明の範囲内であれば、種々の変更が可能である。
【0054】
本発明の電界効果トランジスタの用途は特に制限されず、例えば、電力制御用、通信用等の各種用途に広く用いることができる。また、前述の通り、本発明の電子装置は、本発明の電界効果トランジスタを含むことが特徴である。本発明の電子装置の用途は特に限定されず、例えば、電力制御装置、モーター制御装置(例えば電気自動車用、エアコン用等)、電源装置(例えばコンピュータ用等)、インバータ照明、高周波電力発生装置(例えば電子レンジ用、電磁調理器用等)、画像表示装置、情報記録再生装置、通信装置、演算装置(例えば、本発明の電界効果トランジスタを演算素子として含む)、等に広く用いることができる。
【0055】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載しうるが、以下には限定されない。
【0056】
(付記1)
基板、動作層、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、フィールドプレート電極、および絶縁膜を有し、
前記動作層は、前記基板上に形成され、
前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記ゲート電極、および前記絶縁膜は、前記動作層上に形成され、
前記ゲート電極は、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に配置され、
前記絶縁膜は、前記ゲート電極および前記ドレイン電極の間に配置され、
前記フィールドプレート電極は、前記絶縁膜上に形成され、かつ、前記ソース電極と電気的に接続され、
前記ゲート電極上部は、前記ソース電極側および前記ドレイン電極側に突出した突出部を有し、
前記フィールドプレート電極下端は、前記ゲート電極下端よりも下方に配置され、
前記フィールドプレート電極上端は、前記ゲート電極上部における前記ドレイン電極側の突出部よりも下方に配置されていることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【0057】
(付記2)
前記動作層が、GaN層、AlGaN層、InGaN層、およびAlN層からなる群から選択される少なくとも一つの層であることを特徴とする付記1に記載の電界効果トランジスタ。
【0058】
(付記3)
前記動作層上部に、フィールドプレートリセスが形成され、
前記フィールドプレート電極は、前記絶縁膜を介して前記フィールドプレートリセスを埋め込むように配置されていることを特徴とする付記1または2に記載の電界効果トランジスタ。
【0059】
(付記4)
さらに、ゲート絶縁膜を有し、
前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜を介して前記動作層上方に配置されていることを特徴とする付記1から3のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
【0060】
(付記5)
前記ゲート絶縁膜と、前記フィールドプレート電極下方の前記絶縁膜とが、同一の材料により形成されていることを特徴とする付記4記載の電界効果トランジスタ。
【0061】
(付記6)
前記絶縁膜が、窒化シリコン膜および酸化アルミ膜の少なくとも一方であることを特徴とする付記1から5のいずれかに記載の電界効果トランジスタ。
【0062】
(付記7)
基板上に動作層を形成する動作層形成工程と、
前記動作層上に、前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記ゲート電極、および前記絶縁膜を形成する電極形成工程と、
前記絶縁膜上に、フィールドプレート電極を、前記ソース電極と電気的に接続されるように形成するフィールドプレート電極形成工程とを有し、
前記電極形成工程において、前記ゲート電極を、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に配置し、電気ゲート電極上部に、前記ソース電極側および前記ドレイン電極側に突出した突出部を形成し、かつ、前記絶縁膜を、前記ゲート電極および前記ドレイン電極の間に配置し、
前記フィールドプレート電極形成工程において、前記フィールドプレート電極下端を、前記ゲート電極下端よりも下方に配置し、かつ、前記フィールドプレート電極上端を、前記ゲート電極上部における前記ドレイン電極側の突出部よりも下方に配置することを特徴とする電界効果トランジスタの製造方法。
【0063】
(付記8)
付記1から6のいずれかに記載の電界効果トランジスタを含むことを特徴とする電子装置。
【符号の説明】
【0064】
1、18、28、39、58、79 ゲート電極
2、14、24、34、54、74 ソース電極
3、15、25、35、55、75 ドレイン電極
4、13、23、33、53、73 動作層
5、7、17、27、38、57、78 絶縁膜
6、19、29、40、59、80 フィールドプレート電極
11、21、31、51、71 半導体基板
12、22、32、52、72 バッファ層
16、26、37、56、77 フィールドプレートリセス
20、30、41、60、81 保護膜
36、76 ゲートリセス
61、82 電子走行層
62、83 電子障壁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、動作層、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、フィールドプレート電極、および絶縁膜を有し、
前記動作層は、前記基板上に形成され、
前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記ゲート電極、および前記絶縁膜は、前記動作層上に形成され、
前記ゲート電極は、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に配置され、
前記絶縁膜は、前記ゲート電極および前記ドレイン電極の間に配置され、
前記フィールドプレート電極は、前記絶縁膜上に形成され、かつ、前記ソース電極と電気的に接続され、
前記ゲート電極上部は、前記ソース電極側および前記ドレイン電極側に突出した突出部を有し、
前記フィールドプレート電極下端は、前記ゲート電極下端よりも下方に配置され、
前記フィールドプレート電極上端は、前記ゲート電極上部における前記ドレイン電極側の突出部よりも下方に配置されていることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記動作層が、GaN層、AlGaN層、InGaN層、およびAlN層からなる群から選択される少なくとも一つの層であることを特徴とする請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記動作層上部に、フィールドプレートリセスが形成され、
前記フィールドプレート電極は、前記絶縁膜を介して前記フィールドプレートリセスを埋め込むように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項4】
さらに、ゲート絶縁膜を有し、
前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜を介して前記動作層上方に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記ゲート絶縁膜と、前記フィールドプレート電極下方の前記絶縁膜とが、同一の材料により形成されていることを特徴とする請求項4記載の電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記絶縁膜が、窒化シリコン膜および酸化アルミ膜の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項7】
基板上に動作層を形成する動作層形成工程と、
前記動作層上に、前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記ゲート電極、および前記絶縁膜を形成する電極形成工程と、
前記絶縁膜上に、フィールドプレート電極を、前記ソース電極と電気的に接続されるように形成するフィールドプレート電極形成工程とを有し、
前記電極形成工程において、前記ゲート電極を、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に配置し、電気ゲート電極上部に、前記ソース電極側および前記ドレイン電極側に突出した突出部を形成し、かつ、前記絶縁膜を、前記ゲート電極および前記ドレイン電極の間に配置し、
前記フィールドプレート電極形成工程において、前記フィールドプレート電極下端を、前記ゲート電極下端よりも下方に配置し、かつ、前記フィールドプレート電極上端を、前記ゲート電極上部における前記ドレイン電極側の突出部よりも下方に配置することを特徴とする電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタを含むことを特徴とする電子装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−210754(P2011−210754A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73942(P2010−73942)
【出願日】平成22年3月27日(2010.3.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】