説明

静電チャックを備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法

【課題】200〜500℃の温度範囲で、高速かつ高精度に基板温度を制御可能な基板温度制御を提供する。
【解決手段】本発明の基板ホルダを用いた基板温度制御方法は、
(1)基板のプロセス開始前に、静電チャック3上の基板10を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)基板10のプロセス開始時に、静電チャック3上の基板10を第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第2の行程と、
(3)基板10のプロセス中に、第2の設定温度まで加熱された基板10を第1の設定温度まで降温させる第3の行程と、
(4)基板10のプロセス終了まで、基板10を第1の設定温度に維持する第4の行程と、
を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置の真空容器内で静電チャックを備えた基板ホルダーにより基板を保持し、基板温度の制御を行う基板温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング装置やエッチング装置等のプラズマ処理装置の真空容器内には、基板(ウエハ)を保持する基板ホルダ(基板支持装置)が設けられており、一般に基板温度が制御されている。
【0003】
例えば、加熱器または冷却器を内蔵したベース部材と、その上部に伝熱用シートを介してウエハを吸着保持する静電チャックと、を備えた基板支持装置が提案されている(特許文献1参照)。ベース部材には、伝熱用ガスを導入するガス導入路が設けられ、その上面部には、このガス導入路と連通されて伝熱用ガスを停滞させるガス停滞用溝が形成されている。ガス停滞用溝に伝熱用ガスが供給されると、ベース部材と静電チャックとの間の非接触部分に伝熱用ガスによる熱結合が発生する(特許文献1参照)。
【0004】
また、ヒータ機能と静電チャック機能を有する基板ホルダを備え、弾性を有する熱伝導部材を介して、基板ホルダ上のウエハへの入熱を水冷ジャケットに伝達するウエハ処理処置が提案されている(特許文献2および3参照)。
【0005】
さらに、基板ホルダに加熱機構および冷却機構を備えたエッチング装置が提案されている(特許文献4参照)。このエッチング装置では、エッチング開始前に基板温度がプロセス温度になるように予め基板ホルダを加熱し、エッチング開始時またはその後に動作を停止してプラズマによる加熱に切り替え、プラズマによる加熱と冷却との双方により熱平衡温度がプロセス温度になるよう制御している。
【0006】
そして、静電吸着力発生可能な載置台の内側にヒータを内蔵し、載置台の裏面に下部冷却ジャケットと熱伝導性シート部材を押し付けた状態で、高周波電圧を給電可能なプラズマ処理装置が提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−110883号公報
【特許文献2】特開2004−088063号公報
【特許文献3】特開2004−087869号公報
【特許文献4】特開平10−303185号公報
【特許文献5】特開2000−299288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の技術では、ベース部材と静電チャック間と、静電チャックとウエハ間とが連通しており、供給源(供給系)を共通にする伝熱ガスが導入されている。したがって、伝熱ガスを独立に制御することができず、ウエハの温度は温度制御条件に基づいて一義的に決まる。例えば、200〜500℃の高温下でウエハ温度を制御する場合は、プラズマによる入熱エネルギーの変化や、ベース部材の加熱器または冷却器による加熱または排熱により、総括エネルギーの制御が困難でウエハの温度が安定しない。したがって、この温度範囲で使用する場合は、伝熱ガスを使用していない。
【0009】
さらに、ベース部材と静電チャック間及び静電チャックとウエハ間のガス停滞用溝については、冷却ガスの圧力が1〜30Torrであることしか規定されていない。したがって、プロセス条件の変更によるプラズマ入熱エネルギーの変化に対して、伝熱ガスの圧力調整により熱伝達率を制御するのは困難であり、ウエハ温度の制御性に劣る。
【0010】
特許文献2の技術では、設定温度に制御するため、基板ホルダと冷却ジャケット間の熱伝導部材として、0.3〜1W/Kの熱コンダクタンスを有する部材を用いている。例えば、冷却ジャケット温度が50℃で、基板ホルダの温度が200〜500℃の場合において、307W〜1168Wの入熱量を制御可能であることが開示されている。この制御方法によれば、定常状態では上記入熱量を制御可能であるが、プラズマ等による入熱が過渡的に生じる環境では、熱伝達部材の熱コンダクタンスが0.3〜1W/Kと小さいため、基板が一時的に設定温度の2倍近くまで上昇してしまう。さらには、設定温度に定常的に制御するまでに10秒以上の時間を要する。
【0011】
また、この温度制御方法では、プロセス処理過程で基板温度が変動し、所望のプロセス性能が得られないという問題がある。この温度制御性能は、冷却ジャケットを介して基板ホルダへの入熱を排熱する能力である、基板ホルダと冷却ジャケットの熱コンダクタンスで規定される。したがって、熱伝導部材の熱コンダクタンス0.3〜1W/Kが排熱能力を律速するので、入熱が定常な状態では、設定温度の制御応答性が良い。しかし、入熱が過渡的な環境では、熱コンダクタンスが小さいため制御応答性が悪く、プロセス処理開始時の入熱の過渡的状態では基板温度が変動する。
【0012】
したがって、基板ホルダがプラズマ等の入熱のない状態、またプラズマ等からの入熱が過渡的に生じる状態、入熱が定常的に生じている状態のいずれにおいても、基板温度を設定温度・10℃に10秒以内に制御し、水冷ジャケットの循環水温度を100℃以下で使用するためには、基板ホルダから水冷ジャケット間の熱コンダクタンスを可変する機能を有する必要がある。
【0013】
特許文献3の技術は、200℃以下のプロセス温度において用いられており、200〜500℃の温度条件での基板温度の制御を想定していない。これに対し、特許文献4および5の技術では、200〜500℃の設定温度に制御され、熱交換用の循環媒体を介して熱交換を行うことができる機構を有する基板ホルダが用いられている。この種の基板ホルダは、循環用媒体が油性であるためメンテナンス時に漏洩や付着等による汚染が生じ易く、クリーンルームでの取り扱いに不都合が生じていた。この冷却媒体(循環媒体)は発火性を有する特性のものが多く、クリーンルームの安全上のリスクを伴った使用がなされている。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑み、プラズマ等による入熱に対する排熱機能を発火性のない冷却媒体にもたせながらも、200〜500℃の温度範囲で高速かつ高精度に基板温度を制御可能な基板温度制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0016】
即ち、ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを封止して形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、前記静電チャックと前記基板との隙間に伝熱ガスを封止して形成され、伝熱ガス供給系に接続されたガス封止手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間へ伝熱ガスの供給を供給せずに、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と
(2)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段による基板の加熱を停止し、プラズマからの入熱のみにより、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第2の行程と、
(3)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持し、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させる第3の行程と、
(4)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第1の圧力で一定になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーより高い第2の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第4の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法である。
【0017】
また、ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを封止して形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、前記静電チャックと前記基板との隙間に伝熱ガスを封止して形成され、伝熱ガス供給系に接続されたガス封止手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間へ伝熱ガスの供給を供給せずに、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段による基板の加熱を停止し、プラズマからの入熱のみにより、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第2の行程と、
(3)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持し、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させ、前記基板が第1の設定温度になった時点で、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力より低い第2の圧力まで下げる第3の行程と、
(4)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第2の圧力になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーより高い第2の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第4の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法である。
【0018】
また、ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを封止して形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、前記静電チャックと前記基板との隙間に伝熱ガスを封止して形成され、伝熱ガス供給系に接続されたガス封止手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)前記基板が第1の設定温度になった時点で、基板のプロセスの開始まで、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第2の行程と、
(3)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーより低い第2の加熱パワーまで下げると共に、プラズマからの入熱により、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第3の行程と、
(4)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを第2の加熱パワーより高い第1の加熱パワーまで上げて、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させる第4の行程と、
(5)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第1の圧力になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第5の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法である。
【0019】
また、ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを封止して形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、前記静電チャックと前記基板との隙間に伝熱ガスを封止して形成され、伝熱ガス供給系に接続されたガス封止手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)前記基板が第1の設定温度になった時点で、基板のプロセスの開始まで、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第2の行程と、
(3)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーより低い第2の加熱パワーまで下げると共に前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力より高い第2の圧力になるように調整しながら、プラズマからの入熱により、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第3の行程と、
(4)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第2の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーより高い第3の加熱パワーまで上げて、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させる第4の行程と、
(5)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第2の圧力から第1の圧力になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第5の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法である。
【0020】
また、ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、前記基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体の内部における前記循環媒体流通経路の上部に伝熱ガスの封止空間として区画形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間へ伝熱ガスの供給を供給せずに、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段による基板の加熱を停止し、プラズマからの入熱のみにより、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第2の行程と、
(3)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持し、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させる第3の行程と、
(4)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第1の圧力で一定になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーより高い第2の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第4の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法である。
【0021】
また、ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、前記基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体の内部における前記循環媒体流通経路の上部に伝熱ガスの封止空間として区画形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間へ伝熱ガスの供給を供給せずに、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段による基板の加熱を停止し、プラズマからの入熱のみにより、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第2の行程と、
(3)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持し、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させ、前記基板が第1の設定温度になった時点で、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力より低い第2の圧力まで下げる第3の行程と、
(4)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第2の圧力になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーより高い第2の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第4の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法である。
【0022】
また、ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、前記基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体の内部における前記循環媒体流通経路の上部に伝熱ガスの封止空間として区画形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)前記基板が第1の設定温度になった時点で、基板のプロセスの開始まで、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第2の行程と、
(3)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーより低い第2の加熱パワーまで下げると共に、プラズマからの入熱により、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第3の行程と、
(4)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを第2の加熱パワーより高い第1の加熱パワーまで上げて、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させる第4の行程と、
(5)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第1の圧力になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第5の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法である。
【0023】
また、ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、前記基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体の内部における前記循環媒体流通経路の上部に伝熱ガスの封止空間として区画形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)前記基板が第1の設定温度になった時点で、基板のプロセスの開始まで、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第2の行程と、
(3)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーより低い第2の加熱パワーまで下げると共に前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力より高い第2の圧力になるように調整しながら、プラズマからの入熱により、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第3の行程
(4)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第2の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーより高い第3の加熱パワーまで上げて、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させる第4の行程と、
(5)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第2の圧力から第1の圧力になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第5の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、熱伝達能可変手段を備え、この熱伝達能可変手段は伝熱ガスの圧力調整を行うことにより熱伝達率を制御可能である。したがって、200〜500℃の温度範囲で、高速かつ高精度に基板温度を制御可能である。
【0025】
また、熱伝達能可変手段はガス封止による熱伝達能力が可変であるので、冷却媒体を略200℃以下で使用可能である。したがって、プラズマ等による入熱に対する排熱機能を発火性のない冷却媒体にもたせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係わる基板温度制御方法の第1の制御方法を示す図である。
【図2】本発明に係わる基板温度制御方法の第2の制御方法を示す図である。
【図3】本発明に係わる基板温度制御方法の第3の制御方法を示す図である。
【図4】本発明に係わる基板温度制御方法の第4の制御方法を示す図である。
【図5】本発明に係る基板温度制御方法に使用する基板ホルダの第1の例を示す模式図である。
【図6】本発明に係る基板温度制御方法に使用する第1の例から第4の例の基板ホルダの温度変化を従来の温度変化との関係において示す説明図である。
【図7】基板温度制御方法に使用する第2の例の基板ホルダを示す模式図である。
【図8】基板温度制御方法に使用する第2の例における熱伝達能可変手段の横断面構造を示す断面図である。
【図9】本発明に係る基板温度制御方法に使用する基板ホルダの第3の例を示す模式図である。
【図10】第4の例の基板ホルダを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1を参照して、本発明の基板温度制御方法の第1の実施形態について説明する前に、本発明の基板温度制御方法に使用する基板ホルダーの第1の例を説明する。
【0028】
図5は、本発明の基板温度制御方法に使用する基板ホルダの第1の例を示す模式図である。図6は、本例の基板ホルダの温度変化を従来の温度変化との関係において示す説明図である。
【0029】
図5に示すように、第1の例の基板ホルダ1は、スパッタリング装置に代表されるプラズマ処理装置の真空容器(図示せず)内に設けられる。この基板ホルダ1は、ホルダ本体1Aの基板保持側(上部)に配された静電チャック3上に静電吸着により基板10を保持する。
【0030】
ホルダ本体1Aは、例えば、基板10として半導体ウエハを支持する円板状もしくは円柱状の支持部材である。ホルダ本体1Aの内部には、循環媒体(冷却媒体)101を流すための循環媒体流通経路100が区画形成されている。この循環媒体流通経路100には、循環媒体101を循環供給する循環媒体供給手段2が接続され、循環媒体循環経路100内へ循環媒体101を循環させることにより、ホルダ本体1Aに熱交換機能及び排熱機能をもたせている。本例では、循環媒体供給手段2として温度制御センサ2A付きの循環チラーを採用しており、循環チラー2は略200℃以下の温度(具体的には、100〜250℃の温度)に制御可能となっている。循環媒体101としては、例えば、フッ素系媒体もしくはエチレングリコールを混合した冷却水や純水を用いることができる。
【0031】
静電チャック3は静電吸着電極を内蔵し、基板10を静電吸着して保持する。静電チャック3には、基板10を加熱するための加熱手段4が内蔵されている。本例では、加熱手段4として、例えば、200〜500℃に昇温可能な温度制御センサ4A付きのヒータを採用している。
【0032】
ホルダ本体1Aと静電チャック3との隙間には伝熱ガス(封止ガス)103が封止され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系110に接続された熱伝達能可変手段6が形成されている。ホルダ本体1Aと静電チャック3との隙間に区画された熱伝達能可変手段6の周囲には、リング状の断熱部材7が配置されている。断熱部材7としては、例えば、アルミナやステンレス等の熱伝達率が25W/m2・K以下の材料が挙げられるが、ジルコニアや石英等の熱伝達率10W/m2・K未満の材料で形成することがより好ましい。この断熱部材7は、ホルダ本体1Aと静電チャック3を断熱し、ガス封止圧の調整による熱伝達率の制御を可能にする。
【0033】
熱伝達能可変手段6は、ガス圧力の調整により熱伝達率が可変となるように、使用するガスの平均自由行程をもとに、クヌーセン数(Ku=λ/L λ(m):分子の平均自由行程L(m):代表長さ)が1より大きな値が得られる隙間寸法とする。クヌーセン数を1より十分に大きい値とするのは、この場合に分子間衝突を無視することができ、流体を連続体として取り扱うことができるからである。
【0034】
伝熱ガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、または窒素(N2)等の不活性ガスが使用できる。基板設定温度450℃で、Ar、Heを用いる場合は、ホルダ本体1Aと静電チャック3との隙間を0.15〜0.5mmに設定し、封止圧を100Pa、1000Paとすることで、下記表1のように熱伝達率が可変となる。プラズマ11等による入熱12がない場合等、ホルダ本体1Aの循環媒体101による排熱エネルギーを小さくしたい場合には、封止圧を0Paとして熱伝達率を最小にする。
【0035】
【表1】

【0036】
また、静電チャック3と基板10との隙間にも伝熱ガス(基板裏面ガス)102が封止され、伝熱ガス供給系120に接続されたガス封止手段8が形成される。ガス封止手段8は、基板10の裏面をガス封止すると共に、基板10と静電チャック3との熱伝達を行う。伝熱ガスとしては、上記と同様に、例えば、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、または窒素(N2)等の不活性ガスが使用できる。
【0037】
本例では、熱伝達能可変手段6に伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給系110と、ガス封止手段8に伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給系120は別系統に形成され、それぞれ別個に圧力制御が可能となっている。例えば、熱伝達能可変手段6にArを封止し、ガス封止手段8にHeを封止するなど、双方の伝熱ガス供給系に異なる伝熱ガスを使用してもよいし、同一の伝熱ガスを使用しても構わない。
【0038】
このような構成により、基板10への入熱エネルギーは、ガス封止手段8、静電チャック3及び熱伝達能可変手段6を通してホルダ本体1Aに伝わる。ホルダ本体1A内では、循環媒体101へ入熱エネルギーを伝熱し、循環チラー2を通して排熱する。
【0039】
このように、熱伝達能可変手段6の封止ガスの圧力制御により、熱伝達率を可変できる。したがって、静電チャック3とホルダ本体1Aとの間の部材の変更や機構的な調整を行うことなく、循環媒体101を略200℃以下とし、静電チャック3を200〜500℃の範囲において温度制御が可能である。
【0040】
第1の例の基板ホルダによれば、図6に示すように200〜500℃の温度設定において、熱伝達能可変手段6の封止ガスの圧力調整による熱伝達率の制御のみで、高速(10秒以内)かつ高精度(・10℃以内)に基板温度の制御を実現できる。その際、プラズマ等による入熱に対する排熱機能を油性ではなく、発火性のない循環媒体101を用いることができ、静電チャック3からホルダ本体1Aまで部材の変更や、機構的な調整等を行う必要はない。
【0041】
また、熱伝達能可変手段6となる静電チャック3とホルダ本体1Aとの隙間は、静電チャック3とホルダ本体1Aの各材質の熱特性差による反りなどの熱変形が生じた場合でも、変形を吸収しガス伝達により安定した熱伝達率を確保できる。
【0042】
さらに本例では、熱伝達能可変手段6の周囲は断熱部材7のみで封止されているので、使用温度条件により静電チャック3を取り替える場合やメンテナンスで交換する場合も、インジウム等の熱伝達材料を使用する場合に比べて、作業が容易に行える。
【0043】
(1)第1の基板温度制御方法
次に、上記第1の例の基板ホルダーを用いて基板温度制御方法について説明する。図1は、図5記載の基板ホルダーを用いた第1の基板温度制御方法を示す図である。
【0044】
<プロセス開始前>
基板10のプロセス開始前は、、ホルダ本体1Aと静電チャック3との隙間へ伝熱ガス102,103の供給を供給せずに、加熱手段(ヒータ)4を第1の加熱パワー(30%のパワー)に調整しながら、加熱手段(ヒータ)4のみにより静電チャック上の基板10を第1の設定温度(約400度)まで昇温させる(第1の行程)。
【0045】
<プロセス開始後>
基板のプロセス開始時には、加熱手段(ヒータ)4による基板10の加熱を停止し、プラズマからの入熱のみにより、静電チャック3上の基板10を第1の設定温度(約400度)より高い第2の設定温度(約405度)まで昇温させる(第2の行程)。
【0046】
次に、基板のプロセス中には、ホルダ本体1Aと静電チャック3との隙間に伝熱ガス102,103を供給し、熱伝達能可変手段6により伝熱ガス102,103の封止圧力を第1の圧力(約1000Pa)に維持し、第2の設定温度(約405度)まで加熱された基板を第1の設定温度(約400度)まで降温させる(第3の行程)。
【0047】
基板10のプロセス終了まで、伝熱ガス102,103の封止圧力が第1の圧力(約1000Pa)で一定になるように、熱伝達能可変手段6を調整すると共に、加熱手段(ヒータ)4を第1の加熱パワー(30%のパワー)より高い第2の加熱パワー(50%のパワー)に調整しながら、基板を第1の設定温度(約400度)に維持する(第4の行程)。
【0048】
上記第1の基板温度制御方法によれば、基板3の温度制御が比較的単純にでき、また、エネルギーの無駄が比較的少なくできる。
【0049】
(2)第2の基板温度制御方法
次に、上記第2の例の基板ホルダーを用いて基板温度制御方法について説明する。図2は、図5記載の基板ホルダーを用いた第2の基板温度制御方法を示す図である。
【0050】
<プロセス開始前>
基板10のプロセス開始前には、ホルダ本体1Aと静電チャック3との隙間へ伝熱ガス102,103の供給を供給せずに、加熱手段(ヒータ)4を第1の加熱パワー(約30%のパワー)に調整しながら、加熱手段(ヒータ)4のみにより静電チャック3上の基板10を第1の設定温度(約400度)まで昇温させる(第1の行程)。
【0051】
<プロセス開始後>
基板のプロセス開始時には、加熱手段(ヒータ)4による基板10の加熱を停止し、プラズマからの入熱のみにより、静電チャック3上の基板10を第1の設定温度(約400度)より高い第2の設定温度(約405度)まで昇温させる(第2の行程)。
【0052】
基板のプロセス中には、ホルダ本体1Aと静電チャック3との隙間に伝熱ガス102,103を供給し、熱伝達能可変手段6により伝熱ガス102,103の封止圧力を第1の圧力(1000Pa)に維持し、第2の設定温度(約405度)まで加熱された基板3を第1の設定温度(400度)まで降温させ、基板10が第1の設定温度(400度)になった時点で、熱伝達能可変手段6により伝熱ガス102,103の封止圧力を第1の圧力(1000Pa)より低い第2の圧力(600Pa)まで下げる(第3の行程)。
【0053】
基板のプロセス終了まで、伝熱ガス102,103の封止圧力が第2の圧力(600Pa)になるように、熱伝達能可変手段6を調整すると共に、加熱手段(ヒータ)4を第1の加熱パワー(30%のパワー)より高い第2の加熱パワー(40%から50%のパワー)に調整しながら、基板10を第1の設定温度(約400度)に維持する(第4の行程)。
【0054】
上記第2の基板温度制御方法によれば、エネルギーの無駄が比較的少なくできる。
【0055】
(3)第3の基板温度制御方法
次に、上記第3の例の基板ホルダーを用いて基板温度制御方法について説明する。図3は、図5記載の基板ホルダーを用いた第3の基板温度制御方法を示す図である。
【0056】
<プロセス開始前>
基板10のプロセス開始前には、加熱手段(ヒータ)4を第1の加熱パワー(約50%のパワー)に調整しながら、加熱手段(ヒータ)4のみにより静電チャック3上の基板10を第1の設定温度(400度)まで昇温させる(第1の行程)。
【0057】
基板10が第1の設定温度(400度)になった時点で、基板10のプロセスの開始まで、ホルダ本体1Aと静電チャック3との隙間に伝熱ガス102,103を供給し、熱伝達能可変手段6により伝熱ガス102,103の封止圧力を第1の圧力(1000Pa)に維持すると共に加熱手段(ヒータ)4の加熱パワーを第1の加熱パワー(約50%のパワー)に調整しながら、基板10を第1の設定温度(400度)に維持する(第2の行程)。
【0058】
<プロセス開始後>
基板10のプロセス開始時には、加熱手段(ヒータ)4の加熱パワーを第1の加熱パワー(約50%のパワー)より低い第2の加熱パワー(約10%のパワー)まで下げると共に、プラズマからの入熱により、静電チャック3上の基板10を第1の設定温度(400度)より高い第2の設定温度(405度)まで昇温させる(第3の行程)。
【0059】
基板10のプロセス中には、ホルダ本体1Aと静電チャック3との隙間に伝熱ガス102,103を供給し、熱伝達能可変手段6により伝熱ガス102,103の封止圧力を第1の圧力(1000Pa)に維持すると共に加熱手段(ヒータ)4の加熱パワーを第2の加熱パワー(約10%のパワー)より高い第1の加熱パワー(約50%のパワー)まで上げて、第2の設定温度(405度)まで加熱された基板を第1の設定温度(400度)まで降温させる(第4の行程)。
【0060】
基板10のプロセス終了まで、伝熱ガス102、103の封止圧力が第1の圧力(1000Pa)になるように、熱伝達能可変手段6を調整すると共に、加熱手段(ヒータ)4を第1の加熱パワー(約50%のパワー)に調整しながら、基板10を第1の設定温度(400度)に維持する(第5の行程)。
【0061】
上記第3の基板温度制御方法によれば、基板の温度制御が単純にでき、エネルギーの無駄が比較でき少なくでき、静電チャックの温度の追従性が良くなる。
【0062】
(4)第4の基板温度制御方法
次に、上記第4の例の基板ホルダーを用いて基板温度制御方法について説明する。図4は、図5記載の基板ホルダーを用いた第4の基板温度制御方法を示す図である。
【0063】
<プロセス開始前>
基板10のプロセス開始前には、加熱手段(ヒータ)4を第1の加熱パワー(40%のパワー)に調整しながら、加熱手段(ヒータ)4のみにより静電チャック3上の基板10を第1の設定温度(400度)まで昇温させる(第1の行程)。
【0064】
基板10が第1の設定温度(400度)になった時点で、基板10のプロセスの開始まで、ホルダ本体1Aと静電チャック3との隙間に伝熱ガス102,103を供給し、熱伝達能可変手段6により伝熱ガス102,103の封止圧力を第1の圧力(600Pa)に維持すると共に加熱手段(ヒータ)4の加熱パワーを調整しながら、基板10を第1の設定温度(400度)に維持する(第2の行程)。
【0065】
<プロセス開始後>
基板10のプロセス開始時には、加熱手段(ヒータ)4の加熱パワーを第1の加熱パワー(40%のパワー)より低い第2の加熱パワー(20%のパワー)まで下げると共に熱伝達能可変手段6により伝熱ガス102,103の封止圧力を第1の圧力(600Pa)より高い第2の圧力(1000Pa)になるように調整しながら、プラズマからの入熱により、静電チャック3上の基板10を第1の設定温度(400度)より高い第2の設定温度(405度)まで昇温させる(第3の行程)。
【0066】
基板10のプロセス中には、ホルダ本体1Aと静電チャック3との隙間に伝熱ガス103を供給し、熱伝達能可変手段6により伝熱ガス102,103の封止圧力を第2の圧力(1000Pa)に維持すると共に加熱手段(ヒータ)4の加熱パワーを第1の加熱パワー(40%のパワー)より高い第3の加熱パワー(50%のパワー)まで上げて、第2の設定温度(405度)まで加熱された基板10を第1の設定温度(400度)まで降温させる(第4の行程)。
【0067】
基板10のプロセス終了まで、伝熱ガス102,103の封止圧力が第2の圧力(1000Pa)から第1の圧力(600Pa)になるように、熱伝達能可変手段6を調整すると共に、加熱手段(ヒータ)4を第1の加熱パワー(40%のパワー)に調整しながら、基板10を第1の設定温度(400度)に維持する(第5の行程)。
【0068】
上記第4の基板温度制御方法によれば、静電チャックの温度の追従性が良くなる。
【0069】
〔第2の例〕
図7は、上記第1から第4の基板温度制御方法に使用する第2の例の基板ホルダを示す模式図である。図8は、熱伝達能可変手段の横断面構造を示す断面図である。第1の例と同一の部材については、同一の符号を付して説明する。
【0070】
第2の例の基板ホルダ21は、第1の例と同様の仕様の基板ホルダにおいて、ホルダ本体1Aと静電チャック3との隙間に区画形成した熱伝達能可変手段6の構造を変更したものである。
【0071】
即ち、第2の例における熱伝達能可変手段6は、対向面に起立した円弧状のフィン16A、17Aをそれぞれ有する第1の板状体16と第2の板状体17とを対向配置して区画形成されている。これら第1の板状体16のフィン16Aと第2の板状体17のフィン17Aとは対向配置された状態で互い違いに隣り合って配置され、空間の縦断面形状が波型形状を呈している。
【0072】
第2の例は、基本的に第1の例と同様の作用効果を奏するが、特に第2の例によれば、熱伝達能可変手段6の内部構造をフィン16A、17Aにより波型の空間構造としている。したがって、伝熱面積を増やすことができ、ホルダ本体と封止ガス間の熱移動速度を上げ、封止圧力の調整による熱伝達の制御性をより高めることができるという特有の効果を奏する。
【0073】
〔第3の例〕
図9は、上記第1から第4の基板温度制御方法に使用する基板ホルダの第3の例を示す模式図である。図6は、本例の基板ホルダの温度変化を従来の温度変化との関係において示す説明図である。
【0074】
図9に示すように、第3の例の基板ホルダ1は、スパッタリング装置に代表されるプラズマ処理装置の真空容器(図示せず)内に設けられる。この基板ホルダ1は、ホルダ本体1Aの基板保持側(上部)に配された静電チャック3上に静電吸着により基板10を保持する。
【0075】
ホルダ本体1Aは、例えば、基板10として半導体ウエハを支持する円板状もしくは円柱状の支持部材である。ホルダ本体1A内には、循環媒体(冷却媒体)101を流すための循環媒体流通経路100が区画形成されている。この冷却媒体循環経路100には、冷却媒体101を循環供給する循環媒体供給手段2が接続され、循環媒体流通経路100内へ循環媒体101を循環させることにより、ホルダ本体1Aに熱交換機能及び排熱機能をもたせている。本例では、循環媒体供給手段2として温度制御センサ2A付きの循環チラーを採用しており、循環チラー2は略200℃以下の温度(具体的には、100〜250℃の温度)に制御可能となっている。循環媒体101としては、例えば、フッ素系媒体もしくはエチレングリコールを混合した冷却水や純水を用いることができる。
【0076】
ホルダ本体1Aの内部における循環媒体流通経路100の上部には、伝熱ガス(封止ガス)103の封止空間として熱伝達能可変手段6が区画形成され、熱伝達能可変手段6は封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系110に接続されている。この熱伝達能可変手段6の周囲は、リング状の断熱部材7で区画されている。断熱部材7としては、例えば、アルミナやステンレス等の熱伝達率が25W/m2・K以下の材料が挙げられるが、ジルコニアや石英等の熱伝達率10W/m2・K未満の材料で形成することがより好ましい。この断熱部材7は、ホルダ本体1Aの上部と下部を熱断熱し、ガス封止圧の調整による熱伝達率の制御を可能にする。
【0077】
熱伝達能可変手段6は、伝熱ガスの封止圧力の調整により熱伝達率が可変となるように、使用するガスの平均自由行程をもとに、クヌーセン数(Ku=λ/L、λ(m):分子の平均自由行程、L(m):代表長さ)が1より大きな値が得られる隙間寸法とする。クヌーセン数を1より十分に大きい値とするのは、この場合に分子間衝突を無視することができ、流体を連続体として取り扱うことができるからである。
【0078】
伝熱ガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、または窒素(N2)等の不活性ガスが使用できる。基板設定温度450℃で、Ar、Heを用いる場合は、熱伝達能可変手段6の隙間(間隔)を0.15〜0.5mmに設定し、封止圧を100Pa、1000Paとすることで、下記表2のように熱伝達率が可変となる。プラズマ11等による入熱12がない場合等、ホルダ本体1Aの循環媒体101による排熱エネルギーを小さくしたい場合には、封止圧を0Paとして熱伝達率を最小にする。
【0079】
【表2】

【0080】
静電チャック3は静電吸着電極を内蔵し、基板10を静電吸着して保持する。静電チャック3には、基板10を加熱するための加熱手段4が内蔵されている。本例では、加熱手段4として、例えば、200〜500℃に昇温可能な温度制御センサ4A付きのヒータを採用している。
【0081】
ホルダ本体1Aと静電チャック3との間には、シート状の熱伝達部材5が介設されている。熱伝達部材5は、10〜200W/m2・Kの範囲内の熱伝達率を有する材料で形成され、例えば、カーボンシートまたは窒化アルミニウムシート等から構成されている。
【0082】
静電チャック3と基板10との隙間にも伝熱ガス(基板裏面ガス)102のガス封止手段8が形成され、このガス封止手段8は伝熱ガス供給系120に接続されている。このガス封止手段8は、基板10の裏面をガス封止すると共に、基板10と静電チャック3との熱伝達を行う。伝熱ガスとしては、上記と同様に、例えば、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、または窒素(N2)等の不活性ガスが使用できる。
【0083】
本例では、熱伝達能可変手段6に伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給系110と、ガス封止手段8に伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給系120は別系統に形成され、それぞれ別個に圧力制御が可能となっている。例えば、熱伝達能可変手段6にArを封止し、ガス封止手段8にHeを封止するなど、双方の伝熱ガス供給系に異なる伝熱ガスを使用してもよいし、同一の伝熱ガスを使用しても構わない。
【0084】
このような構成により、基板10への入熱エネルギーは、ガス封止手段8、静電チャック3及び熱伝達部材5を通してホルダ本体1Aに伝わる。ホルダ本体1A内では、熱伝達能可変手段6により伝熱ガスの封止圧力を制御し、ホルダ本体1Aの下部を流通する循環媒体流通経路100の循環媒体101へ入熱エネルギーを伝熱し、循環チラー2を通して排熱する。
【0085】
具体的には、300mm径の基板10を用いるスパッタリング装置やエッチング装置では、プロセス処理時の基板10への入熱は1000W程度である。この入熱量の場合、450℃に制御された静電チャック3は、基板裏面ガス(ArまたはHe)102を100〜1kPa程度に封止する。このときの基板10と静電チャック3の熱伝達率は100〜500W/m2・Kに制御される。静電チャック3とホルダ本体1Aとの間は、熱伝達率が10〜200W/m2・Kの熱伝達部材5として窒化アルミニウムシートやカーボンシート等を用いて伝熱する。ホルダ本体1A内では、熱伝達能可変手段6により封止ガス(HeまたはAr)103の圧力を制御し、熱伝達率を10〜8000W/m2・Kに可変して、ホルダ本体1Aに流通する循環媒体101に伝熱して排熱が行われる。
【0086】
即ち、ガス封止による熱伝達構造を採用して、プラズマ等により入熱が過渡的に加わる状態において、封止圧力の調整により熱伝達率を10〜8000W/m2・Kに制御する。これにより、200〜500℃の設定温度の変動を10秒以内に設定温度・10℃以内に制御することができる。また、定常的に入熱が生じる状況下においても、上記熱伝達率の範囲で制御することで、設定温度・10℃以内に制御することができる。
【0087】
熱伝達能可変手段6を設けることにより、基板10は静電チャック3のヒータ4により効率よく昇温されながらも、ホルダ本体1Aの下部を流通する循環媒体101へ効率よく伝熱される。また、熱伝達能可変手段6はガス封止による熱伝達能力が可変であるので、循環媒体101を略200℃以下で使用可能なように制御することができる。したがって、循環媒体101として、従来より用いられている発火性を有しない媒体、例えば、フロリナートやガルデン等のフッ素系媒体を使用することができる。
【0088】
このように、熱伝達能可変手段6の封止ガスの圧力制御により、熱伝達率を可変できる。したがって、静電チャック3とホルダ本体1Aとの間の部材の変更や機構的な調整を行うことなく、循環媒体101を略200℃以下とし、静電チャック3を200〜500℃の範囲において温度制御が可能である。
【0089】
第3の例の基板ホルダ1によれば、図6に示すように200〜500℃の温度設定において、熱伝達能可変手段6の封止ガスの圧力調整による熱伝達率の制御のみで、高速(10秒以内)かつ高精度(・10℃以内)に基板温度の制御を実現できる。その際、プラズマ等による入熱に対する排熱機能を油性ではなく、発火性のない循環媒体101を用いることができ、静電チャック3からホルダ本体1Aまで部材の変更や、機構的な調整等を行う必要はない。
【0090】
また、熱伝達能可変手段6となる静電チャック3とホルダ本体1Aとの隙間は、静電チャック3とホルダ本体1Aの各材質の熱特性差による反りなどの熱変形が生じた場合でも、変形を吸収しガス伝達により安定した熱伝達率を確保できる。
【0091】
さらに本例では、熱伝達能可変手段6の周囲は断熱部材7のみで封止されているので、使用温度条件により静電チャック3を取り替える場合やメンテナンスで交換する場合も、インジウム等の熱伝達材料を使用する場合に比べて、作業が容易に行える。
【0092】
〔第4の例〕
図10は、上記第1から第4の基板温度制御方法に使用する第4の例の基板ホルダを示す模式図である。図8は、熱伝達能可変手段の横断面構造を示す断面図である。第3の例と同一の部材については、同一の符号を付して説明する。
【0093】
第4の例の基板ホルダ21は、第3の例と同様の仕様の基板ホルダにおいて、ホルダ本体1Aの内部の循環媒体流通経路100の上部に区画形成した熱伝達能可変手段6の構造を変更したものである。
【0094】
即ち、第4の例における熱伝達能可変手段6は、対向面に起立した円弧状のフィン16A、17Aをそれぞれ有する第1の板状体16と第2の板状体17とを対向配置して区画形成されている。これら第1の板状体16のフィン16Aと第2の板状体17のフィン17Aとは対向配置された状態で互い違いに隣り合って配置され、空間の縦断面形状が波型形状を呈している。
【0095】
第4の例は、基本的に第3の例と同様の作用効果を奏するが、特に第4の例によれば、熱伝達能可変手段6の内部構造をフィン16A、17Aにより波型の空間構造としている。したがって、伝熱面積を増やすことができ、ホルダ本体と封止ガス間の熱移動速度を上げ、封止圧力の調整による熱伝達の制御性をより高めることができるという特有の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係る基板ホルダを用いた基板温度制御方法は、スパッタリング装置やドライエッチング装置のみならず、プラズマアッシャ装置、CVD装置および液晶ディスプレイ製造装置等の真空容器を備えた処理装置の基板ホルダを用いた基板温度制御方法として適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1、21 基板ホルダ
1A ホルダ本体
2 循環媒体供給手段
3 静電チャック
4 ヒータ
5 熱伝達部材
6 熱伝達能可変手段
7 断熱部材
8 ガス封止手段
10 基板
16 第1の板状体
16A、17A フィン
17 第2の板状体
100 循環媒体流通経路
101 循環媒体
102、103 伝熱ガス
110、120 伝熱ガス供給系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを封止して形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、前記静電チャックと前記基板との隙間に伝熱ガスを封止して形成され、伝熱ガス供給系に接続されたガス封止手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間へ伝熱ガスの供給を供給せずに、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と
(2)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段による基板の加熱を停止し、プラズマからの入熱のみにより、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第2の行程と、
(3)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持し、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させる第3の行程と、
(4)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第1の圧力で一定になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーより高い第2の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第4の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法。
【請求項2】
ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを封止して形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、前記静電チャックと前記基板との隙間に伝熱ガスを封止して形成され、伝熱ガス供給系に接続されたガス封止手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間へ伝熱ガスの供給を供給せずに、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段による基板の加熱を停止し、プラズマからの入熱のみにより、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第2の行程と、
(3)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持し、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させ、前記基板が第1の設定温度になった時点で、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力より低い第2の圧力まで下げる第3の行程と、
(4)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第2の圧力になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーより高い第2の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第4の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法。
【請求項3】
ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを封止して形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、前記静電チャックと前記基板との隙間に伝熱ガスを封止して形成され、伝熱ガス供給系に接続されたガス封止手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)前記基板が第1の設定温度になった時点で、基板のプロセスの開始まで、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第2の行程と、
(3)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーより低い第2の加熱パワーまで下げると共に、プラズマからの入熱により、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第3の行程と、
(4)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを第2の加熱パワーより高い第1の加熱パワーまで上げて、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させる第4の行程と、
(5)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第1の圧力になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第5の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法。
【請求項4】
ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを封止して形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、前記静電チャックと前記基板との隙間に伝熱ガスを封止して形成され、伝熱ガス供給系に接続されたガス封止手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)前記基板が第1の設定温度になった時点で、基板のプロセスの開始まで、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第2の行程と、
(3)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーより低い第2の加熱パワーまで下げると共に前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力より高い第2の圧力になるように調整しながら、プラズマからの入熱により、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第3の行程と、
(4)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第2の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーより高い第3の加熱パワーまで上げて、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させる第4の行程と、
(5)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第2の圧力から第1の圧力になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第5の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法。
【請求項5】
ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、前記基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体の内部における前記循環媒体流通経路の上部に伝熱ガスの封止空間として区画形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間へ伝熱ガスの供給を供給せずに、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段による基板の加熱を停止し、プラズマからの入熱のみにより、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第2の行程と、
(3)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持し、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させる第3の行程と、
(4)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第1の圧力で一定になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーより高い第2の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第4の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法。
【請求項6】
ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、前記基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体の内部における前記循環媒体流通経路の上部に伝熱ガスの封止空間として区画形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間へ伝熱ガスの供給を供給せずに、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段による基板の加熱を停止し、プラズマからの入熱のみにより、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第2の行程と、
(3)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持し、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させ、前記基板が第1の設定温度になった時点で、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力より低い第2の圧力まで下げる第3の行程と、
(4)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第2の圧力になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーより高い第2の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第4の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法。
【請求項7】
ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、前記基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体の内部における前記循環媒体流通経路の上部に伝熱ガスの封止空間として区画形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)前記基板が第1の設定温度になった時点で、基板のプロセスの開始まで、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第2の行程と、
(3)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーより低い第2の加熱パワーまで下げると共に、プラズマからの入熱により、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第3の行程と、
(4)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを第2の加熱パワーより高い第1の加熱パワーまで上げて、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させる第4の行程と、
(5)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第1の圧力になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第5の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法。
【請求項8】
ホルダ本体の基板保持側に設けられ、基板を静電吸着する静電チャックと、
前記静電チャックに内蔵され、前記基板を加熱する加熱手段と、
前記ホルダ本体の内部に形成され、循環媒体を循環供給する循環媒体供給手段に接続された循環媒体流通経路と、
前記ホルダ本体の内部における前記循環媒体流通経路の上部に伝熱ガスの封止空間として区画形成され、封止圧力を調整可能な伝熱ガス供給系に接続された熱伝達能可変手段と、
を備えた基板ホルダを用いた基板温度制御方法であって、
(1)基板のプロセス開始前に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記加熱手段のみにより前記静電チャック上の基板を第1の設定温度まで昇温させる第1の行程と、
(2)前記基板が第1の設定温度になった時点で、基板のプロセスの開始まで、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第2の行程と、
(3)基板のプロセス開始時に、前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーより低い第2の加熱パワーまで下げると共に前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第1の圧力より高い第2の圧力になるように調整しながら、プラズマからの入熱により、静電チャック上の基板を前記第1の設定温度より高い第2の設定温度まで昇温させる第3の行程と、
(4)基板のプロセス中に、前記ホルダ本体と前記静電チャックとの隙間に伝熱ガスを供給し、前記熱伝達能可変手段により前記伝熱ガスの封止圧力を第2の圧力に維持すると共に前記加熱手段の加熱パワーを第1の加熱パワーより高い第3の加熱パワーまで上げて、前記第2の設定温度まで加熱された基板を第1の設定温度まで降温させる第4の行程と、
(5)基板のプロセス終了まで、前記伝熱ガスの封止圧力が第2の圧力から第1の圧力になるように、前記熱伝達能可変手段を調整すると共に、前記加熱手段を第1の加熱パワーに調整しながら、前記基板を第1の設定温度に維持する第5の行程と、
を含むことを特徴とした基板ホルダを用いた基板温度制御方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−84770(P2011−84770A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238032(P2009−238032)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】