説明

高周波用半導体装置

【課題】MIMキャパシタを有するMMICにおいて、表面開口バイアホールおよび裏面開口バイアホールを利用しながら回路規模の増大を抑制した高周波用半導体装置を提供する。
【解決手段】2種類の表面開口バイアホール100および110を利用して、基板10の深さ方向に電極を有するMIMキャパシタ200を形成する。一方の電極13Aは配線電極の一部を構成し、他方の電極13Bは表面開口バイアホール110から裏面開口バイアホール101に形成された裏面電極14に接続されて接地される。また、半絶縁性物質GaAsから成る基板10の一部を電極13Aおよび13B間の誘電体に利用する。これらにより、MIMキャパシタ200の基板10上での占有面積を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バイアホールおよびMIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシタを有する高周波用半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の移動端末を利用した無線通信等の分野においては、取り扱う情報量の増加に伴い、通信速度および容量の増大が要求されている。これを実現するには通信周波数の高周波化が必要であり、そのために高周波数で安定した動作をすることが可能な半導体装置の実現が望まれている。このような半導体装置として、例えばMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuits:モノリシックマイクロ波集積回路)が挙げられる。
【0003】
半導体装置において回路が高周波で動作するときには、回路を構成する各素子等を結合する配線の長さに起因するインダクタンス成分の影響が無視できなくなる。
【0004】
MMICでは、DC成分のカットを目的として、接地されたキャパシタが設けられるが、キャパシタとしては一般にMIM(Metal-Insulator-Metal:金属−絶縁物−金属)構造のものが利用される。また、MMICではマイクロストリップ線路を利用するため、接地に際しては、裏面の電極面を接地しておき、キャパシタを構成する電極の一方をバイアホールを介して裏面電極に接続するのが一般的である。
【0005】
このとき、上述したように配線長さに起因する影響が無視できなくなると、キャパシタからバイアホールに至る接続配線のインダクタンス成分とバイアホールのインダクタンス成分とを吸収できる容量のMIMキャパシタが必要となる。また、キャパシタからバイアホールに至る配線が長くなるほど、その配線長さに起因するインダクタンス成分が増大し、キャパシタ容量の増大を招く。
【0006】
しかし、MMIC等の半導体装置では、これらが利用される携帯電話等の機器に対する要求と同様に小型化、高性能化が望まれている。そのため、回路規模の増大につながるMIMキャパシタの大容量化を回避する必要がある。
【0007】
このような問題を回避するための技術として、例えば、特許文献1がある。特許文献1では、基板表面側に構成したMIMキャパシタに対して、その直下に基板裏面側から開口する裏面開口バイアホールを設けることでMIMキャパシタからバイアホールに至る配線長さの影響を回避している。
【0008】
しかし、裏面開口バイアホールを利用して基板表面側に設けたMIMキャパシタを接地する場合、例えば、裏面開口バイアホールを形成するためのエッチング工程でオーバーエッチングが発生し、接地のために裏面開口バイアホール内にスパッタまたはメッキされた金属層が基板表面にはみ出してしまうことがある。その他、裏面開口バイアホールに関する問題点については特許文献2に詳しい。
【0009】
そのため、特許文献2では、基板表面側から開口した表面開口バイアホールと、その直下に基板裏面側から開口する裏面開口バイアホールとを形成することで、これらの問題を解決している。
【0010】
【特許文献1】特開平3−102865号公報
【特許文献2】特許第2746483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、基板表側に設けたMIMキャパシタを、表面開口バイアホールおよび裏面開口バイアホールを介して接地する場合、MIMキャパシタから表面開口バイアホールに至る配線が必要となるため、上述したように、配線長さに起因するインダクタンス成分が無視できないという問題があった。
【0012】
また、上述したように、配線長さに起因するインダクタンス成分の影響を吸収するため大容量のMIMキャパシタが必要になると、これに伴って回路規模が増大してしまうという問題もあった。
【0013】
そこで、この発明の課題は、MIMキャパシタを有するMMICにおいて、表面開口バイアホールおよび裏面開口バイアホールを利用しながら回路規模の増大を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決すべく、請求項1の発明は、半絶縁性の基板と、前記基板表面から開口した第1の表面開口バイアホールと、前記第1の表面開口バイアホールの内壁上に形成された第1の電極と、前記基板表面から開口した前記第1の表面開口バイアホールより浅い第2の表面開口バイアホールと、前記第2の表面開口バイアホールの内壁上に形成され、前記第1の電極とは絶縁された第2の電極と、前記第1の表面開口バイアホールの直下に前記基板の裏面から開口した裏面開口バイアホールと、前記裏面開口バイアホールの内壁上に前記第1の電極と電気的に接続して形成された裏面電極とを備え、前記第1の電極と前記第2の電極とが前記基板を誘電体とするMIMキャパシタを構成することを特徴とする。
【0015】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る高周波用半導体装置であって、前記第1の表面開口バイアホールの開口部は、前記第2の表面開口バイアホールの開口部よりも開口面積が大きいことを特徴とする。
【0016】
また、請求項3の発明は、基板上に形成されたMIMキャパシタと、前記MIMキャパシタの表面側電極を前記基板の裏面電極に接続するために前記基板に形成されたバイアホールとを備え、前記MIMキャパシタは、前記バイアホールの周囲に延在して形成されることを特徴とする。
【0017】
また、請求項4の発明は、基板上に形成されたMIMキャパシタと、前記MIMキャパシタの表面側電極を前記基板の裏面電極に接続するために前記基板に形成されたバイアホールとを備え、前記バイアホールは、前記MIMキャパシタの周囲に延在して形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
半絶縁性物質から成る基板の一部を誘電体に利用すると共に、基板に設けた2種類の表面開口バイアホールの内壁面に基板の深さ方向に形成した電極面を利用してMIMキャパシタを形成することで、MIMキャパシタの基板に対する占有面積が小さくなるため、高周波用半導体装置の回路規模の増大を抑制することができる。また、MIMキャパシタを構成する電極面から表面開口バイアホールに至る配線が不要で、配線長さに起因するインダクタンス成分がない分だけMIMキャパシタの静電容量が小さくなるため、MIMキャパシタの基板に対する占有面積を小さくできるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
{実施の形態1}
図1は、この発明の実施の形態1に係る高周波用半導体装置MMICの構造を示す断面図である。MMICは、図1の如く、半絶縁性GaAs基板10と、下層配線電極15と、上層配線電極13Aおよび13Bと、裏面電極14と、下層絶縁膜21と、上層絶縁膜22と、第1の表面開口バイアホール110と、2つの第2の表面開口バイアホール100と、裏面開口バイアホール101とから構成される。
【0020】
ここで、第1の表面開口バイアホール110は、第2の表面開口バイアホール100に比べ、基板表面における開口面積が大きく、バイアホールの深さも深い。開口面積は、バイアホールの深さに応じて決定するが、その方法については後述する。
【0021】
また、裏面電極14を介して接地される上層配線電極13A(第1の電極)と、上層配線電極(第2の電極)13Bとは電気的に絶縁され、各々を電極としその間に基板10の一部である半絶縁性物質GaAsを誘電体として有するMIMキャパシタ200を構成する。
【0022】
また、本実施の形態では、基板10上、矩形の開口部を有する第1の表面開口バイアホール110の両側に、同じく矩形の開口部を有する第2の表面開口バイアホール100が2つ存在して、図1のような断面構造を成すものとして説明するが、本発明はこれに限るものではない。例えば、円形の開口部を有する第1の表面開口バイアホールの周囲を囲うように第2の表面開口バイアホール100が形成されて図1のような断面構造を成す態様であっても構わない。
【0023】
このように、基板10を構成する半絶縁性物質であるGaAsを誘電体として利用することで、従来のMMIC上でMIMキャパシタを得るために行っていた、誘電体として利用するSiN等の絶縁膜を成膜する工程が必要ない。そのため、製造に係る時間やコストを削減することが可能である。
【0024】
図1に示すMMICの製造方法は以下の通りである。
【0025】
まず、半絶縁性GaAs基板10上に、プラズマCVDによって下層絶縁膜21となる厚さ50nmのSiON膜を形成する。次に、写真製版技術を応用したエッチングによって先に成膜した下層絶縁膜21上にパターン形成を行う。次に、同様に写真製版技術を応用した蒸着によって下層配線電極15となる厚さ約2μmのTiとAuの2層から成るTi/Au膜を形成する.次に、プラズマCVDによって上層絶縁膜22となる厚さ約50nmのSiON膜を形成し、写真製版技術を応用したエッチングによって上層絶縁膜22上にパターン形成を行う。次に、同様に写真製版技術を応用したエッチングによって、深さ約40nmの第1の表面開口バイアホール110と、深さ約30nmの第2の表面開口バイアホール100とを形成する。
【0026】
ここで、深さの異なる2種類のバイアホール100および110は、開口面積によりエッチレートが異なるエッチング特性を利用することで同時に形成することができる。図3は、所定のエッチング時間におけるバイアホールの深さと開口寸法の関係を示している。縦軸がバイアホールの深さ、横軸がバイアホールの開口部の長さを示している。例えば、第1の表面開口バイアホール110の開口部を幅14μm×長さ80μm、第2の表面開口バイアホール100の開口部を幅10μm×長さ20μmとし、所定時間のエッチングを行えば、図3に示したように、第1の表面開口バイアホール110の深さは約41μmとなり、第2の表面開口バイアホール100の深さは約31μmとなる。
【0027】
このように、バイアホールの開口部の幅および長さをエッチング特性に基づく適当な大きさにすることで、所望の深さを有する複数種類のバイアホールを同時に形成することができる。そのため、製造に係る時間やコストを削減することが可能である。
【0028】
次に、写真製版技術を応用したメッキ加工によって厚さ約4μmの上層配線電極13Aおよび13Bを形成する。このとき、第1の表面開口バイアホール110の内壁上に形成された上層配線電極13Aと、第2の表面開口バイアホール100の内壁上に形成された上層配線電極13Bとは、電気的に絶縁された状態で形成される。
【0029】
次に、研削加工によって半絶縁性GaAs基板10を裏面から研削して厚さ約100μmまで薄板化する。
【0030】
次に、写真製版技術を応用したエッチングによって、第1の表面開口バイアホール110の底部に形成された部分でのみ基板10を貫通して上層配線電極13Aの一部が露出し、第2の表面開口バイアホール100底部に形成された上層配線13Bは露出しない深さまで、裏面開口バイアホール101を形成する。
【0031】
このとき、基板10面内における表面開口バイアホール110および100の深さのバラツキ、裏面開口バイアホール101形成時のエッチング深さのバラツキ、加工の制御性等を考慮すると、第1の表面開口バイアホール110の深さと、第2の表面開口バイアホール100の深さとの差は5〜10μm必要である。
【0032】
最後に、メッキ加工によって厚さ約3μmの裏面電極14を形成し、裏面開口バイアホール101底部に露出した上層配線電極13Aの一部と裏面電極14とを電気的に接続する。これにより、上層配線電極13Bと、使用時に接地される裏面電極14に接続された上層配線電極13Aとが、電極として機能し、その間にある半絶縁性物質GaAsが誘電体として機能することで、MIMキャパシタ200を構成することができる。
【0033】
ここで、比較のために、表面開口バイアホール100および裏面開口バイアホール101と、MIMキャパシタ200とを有する比較対照としてのMMICの一例を図6に示す。図6は、図1と同様、MMICの断面を示しており、図1と対応する構成要素には図1と同じ符号を付している。本発明に係る図1とは、表面開口バイアホール100が一種類のみである点、MIMキャパシタ200が下層絶縁膜21上に面方向に形成された下地電極11および上地電極12の間に誘電体としての絶縁膜20を有する構造である点が異なる。
【0034】
図6に示すMMICの製造方法は以下の通りである。
【0035】
まず、半絶縁性GaAs基板10上にプラズマCVDによって下層絶縁膜21となる厚さ50nmのSiON膜を形成し、写真製版技術を応用したエッチングによってパターン形成を行う。次に、写真製版技術を応用した蒸着によってMIMキャパシタ下地電極11となる厚さ約500nmのTi/Au膜を形成する。次に、プラズマCVDによってMIMキャパシタ絶縁膜20となる厚さ約200nmのSiN膜を形成し、写真製版技術を応用したエッチングによってパターン形成を行う。次に、写真製版技術を応用した蒸着によってMIMキャパシタ上地電極12となる厚さ約2μmのTi/Au膜を形成する。次に、プラズマCVDによって上層絶縁膜22となる厚さ約50nmのSiON膜を形成し、写真製版技術を応用したエッチングによってパターン形成を行う。次に、写真製版技術を応用したエッチングによって深さ約30μmの表面開口バイアホール100を形成する。次に、写真製版技術を応用したメッキによって厚さ約4μmの配線電極13を形成する。
【0036】
次に、研削加工により半絶縁性GaAs基板10を裏面から研削して厚さ約100μmまで薄板化する。ここで、写真製版技術を応用したエッチングによって、表面開口バイアホール100の底部に形成された配線電極13の一部が露出する深さまで裏面開口バイアホール101を形成する。
【0037】
最後に、メッキ加工によって厚さ約3μmの裏面電極14を形成し、裏面開口バイアホール101底部に露出した配線電極13の一部と、裏面電極14とを電気的に接続する。
【0038】
即ち、MIMキャパシタ200の上地電極12を、配線電極13を介して、基板10裏面に形成された裏面電極14に接続するために、表面開口バイアホール100および裏面開口バイアホール101が形成される。
【0039】
そして、使用時には裏面電極14が接地されることにより配線電極13も接地される。これにより、配線電極13を介して接地された上地電極12と下地電極11が電極として機能し、その間にある絶縁膜SiNが誘電体として機能することで、MIMキャパシタ200を形成する。
【0040】
以上のMMICの構成および製造工程を、図1を用いて上述した本発明に係るMMICと比較すると、本発明に係るMMICでは、上層配線電極13Aおよび13Bと基板を構成するGaAsを利用してMIMキャパシタ200を構成するため、同様の機能を実現しながらも全体の構成が簡単なものとなっている。また、本発明に係るMMICでは、図1に示したように表面開口バイアホールが2種類となるが、上述したようにこれら2種類のバイアホールが1回の加工で同時に形成されるため、製造工程が増すことはない。本発明に係るMMICでは、従来のMMICのようにMIMキャパシタ200を構成する上地電極12、下地電極11および絶縁膜20が不要となるため、製造工程を簡略化することが可能である。
【0041】
また、図6のMMICでは、MIMキャパシタ200が、図6に示すように基板10の表面上に面方向に形成した電極11,12によって構成される。これに対して、本発明に係るMMICでは、図1に示すように2種類の表面開口バイアホール110および100を利用して基板10の深さ方向に形成した電極13A,13BがMIMキャパシタ200を構成する。これにより、図1に示す本発明に係るMMICでは、図6に示すMMICに比べ、同じ静電容量を実現する場合に、MIMキャパシタ200の占有する基板10上の面積を縮小することができる。
【0042】
図1や図6に示すような2枚の平板状の電極によって構成されるキャパシタにおいて、電極の面積S,電極間の距離をd,電極間の誘電体の誘電率をεとすると、その静電容量Cは一般的にC=ε×(S/d)で表すことができる。
【0043】
ここで、図6に示すMMICにおけるMIMキャパシタ200のように誘電体にSiN等の絶縁膜を利用する場合に比べ、図1のように誘電体にGaAs等の半絶縁性物質を利用すれば誘電率εの値は大きくなる。例えばGaAsの誘電率はSiNの誘電率の約2倍となることが知られている。その結果、同じ静電容量Cであれば図6に比べて図1に示すMIMキャパシタ200の方が電極面積Sを小さくすることができる。
【0044】
また、図6に示すMMICでは、基板10面上に電極面積Sに応じた大きさの上地電極12および下地電極11が必要となる。これに対し図1に示すMMICでは、電極面の一辺が基板10の深さ方向にあるため、同じ電極面積Sを実現する場合でも、基板10に対するMIMキャパシタ200の占有面積を図6に比べて小さくすることができる。具体的には、図1に示すMMICでは、上述したように第2の表面開口バイアホール100の開口部の大きさが幅10μm×長さ20μmの場合でも、深さが30μmであれば電極面積Sは長さ20μm×深さ30μm=600μm2となる。これと同じ電極面積を図6に示すMMICで実現するには、例えば幅30μm×長さ20μmが必要となり、図1の場合に比べ基板10に対するMIMキャパシタ200の占有面積が大きくなる。
【0045】
尚、図1の場合には、MIMキャパシタ200を実現するために第1の表面開口バイアホール110が必要となる。第1の表面開口バイアホール110を含めると、MIMキャパシタ200の基板10に対する占有面積は拡大する。例えば、図1では、上述したように、幅14μm×長さ80μm,深さ40μmの開口部を有する第1の表面開口バイアホール110と、幅10μm×長さ20μm,深さ30μmの開口部を有する2つの第2の表面開口バイアホール100により2つのMIMキャパシタ200が構成される。このとき電極面積Sは長さ20μm×深さ30μm×2個=1200μm2となる。そして、基板上の全ての表面開口バイアホールの占有面積は、第1の表面開口バイアホール110の開口部の面積である幅14μm×長さ80μm=1120μm2と、2つの第2の表面開口バイアホール100の開口部の面積である幅10μm×長さ20μm×2個=400μm2を合わせた1520μm2となる。これに対し、上述したように図1の場合は図6の場合に比べ誘電率εが約2倍であることを考慮すると、図1における電極面積S=1200μm2のMIMキャパシタ200の静電容量を図6で実現するには電極面積S=2400μm2が必要となる。そして、図6の場合には、この電極面積を基板10上に基板面に平行に形成する必要があるため、2種類の表面開口バイアホール110および100が必要であることを考慮しても、図1の場合の方が、図6の場合に比べ、基板10に対するMIMキャパシタ200の占有面積を小さくできる。
【0046】
また、図6に示すMMICでは、誘電体として利用する絶縁膜20を形成するための材料を別途用意する必要がある。これに対し、図1に示すMMICでは、基板10の一部を誘電体に利用するため、別途誘電体に利用する材料を用意する必要がない。
【0047】
このように、従来のMMICにおいて、基板10上に基板面に平行に絶縁層を積層してMIMキャパシタ200を構成する場合に比べ、本発明におけるMIMキャパシタ200では、誘電体に利用する材料が不要である上に、基板に対する占有面積を小さくすることができる。
【0048】
図1に示す本発明に係るMMICの等価回路を図2に示す。図中、C1およびC1’はMIMキャパシタ200を、L1は第1の表面開口バイアホール110および裏面開口バイアホール101のインダクタンス成分を、L3およびL3’はMMICを構成する他の構成要素から第2の表面開口バイアホール100に至る配線長さに起因するインダクタンス成分を示している。
【0049】
図6に示すMMICの等価回路を図7に示す。図中、C1はMIMキャパシタ200を、L1は表面開口バイアホール100および裏面開口バイアホール101のインダクタンス成分を、L2はMIMキャパシタ200の上地電極12から表面開口バイアホール100に至る配線長さに起因するインダクタンス成分を、L3はMMICを構成する他の構成要素からMIMキャパシタ200の下地電極11に至る配線長さに起因するインダクタンス成分を示している。
【0050】
図6に示すMMICの場合は、MIMキャパシタ200が基板面上に積層されるためMIMキャパシタ200を構成する電極11および12から表面開口バイアホール100やMMICの他の構成要素に至る配線長さが長くなる傾向がある。そのため、L2のインダクタンス成分の値は大きくなる。
【0051】
これに対し図1に示すMMICでは、MIMキャパシタ200を構成する一方の電極13Bが第1の表面開口バイアホール110の被覆電極と同一である。そのため、図2の等価回路に示すように、図7の等価回路のL2に相当するインダクタンス成分が存在しない。
【0052】
また、図1の場合は上述したようにMIMキャパシタ200の電極面13Aが第2の表面開口バイアホール100により基板10の深さ方向に形成され、MMICを構成する他の構成要素から第2の表面開口バイアホール100に至る配線長さを短くすることができるため、L3およびL3’のインダクタンス成分の値も小さくなる。
【0053】
これにより、図1に示したMMICでは、図6に示すMMICに比べて、全体のインダクタンス成分が小さく、よってMIMキャパシタ200の静電容量も小さくて構わない。そのため、基板10におけるMIMキャパシタ200の占有面積を抑えることが可能である。
【0054】
このように、図6に示すMMICを、図1に示す構成とすることで、MIMキャパシタ200を容易に製造することが可能である。また、電極面を基板10の深さ方向に形成するため基板10に対するMIMキャパシタ200の基板上の占有面積を抑制することができる。さらに、構造上MIMキャパシタの電極面に至る配線長さに起因するインダクタンス成分も小さくなるため、MIMキャパシタ200に必要な静電容量も小さくなる。これらの効果により、表面開口バイアホールおよび裏面開口バイアホールを利用したMIMキャパシタを有しながら、MMICの回路規模を抑制することができる。
【0055】
{実施の形態2}
実施の形態1では、図1に示すように2種類の表面開口バイアホール110および100と基板10を構成する半絶縁性物質GaAsを利用したMIMキャパシタ200を形成することで、図6に示す場合に比べて、MIMキャパシタ200の基板10に対する占有面積を抑え、その結果MMICの回路規模を抑制した。
【0056】
これに対し、本実施の形態では、図6に示すMIMキャパシタ200と同様に、基板10上に基板面に平行に積層した電極11,12および誘電膜20を有するMIMキャパシタ200を利用しながら、MIMキャパシタ200の形成方法を変更することで、MMICの回路規模を抑制する点が、実施の形態1と異なる。
【0057】
実施の形態1で図6に示したMMICの上面図を図8に示す。図8は、図6で断面図で示したMMICを基板10の上面から見た図であって、対応する符号は同じ構成要素を示している。このように、図6のMMICでは、MIMキャパシタ200と、表面開口バイアホール100とは基板上の離れた位置に別個に形成され、MIMキャパシタ200の上地電極12と表面開口バイアホール100とは、その両方の上に形成される配線電極13によって電気的に接続されている。
【0058】
これに対し、この発明の実施の形態2に係る高周波用半導体装置MMICの構造を示す上面図を図4に示す。図中、図8と対応する構成要素には同じ符号を付している。
【0059】
図4に示す本実施の形態におけるMMICは、上面から見たMIMキャパシタ200等の形状は異なるものの、その基本断面構造は図6のMMICと同様であるため、その製造方法も実施の形態1で図6を用いて上述したのと同様である。
【0060】
図4と図8を比較すれば分かるように、本実施の形態では、MIMキャパシタ200が表面開口バイアホール100の周囲に延在するように、即ちMIMキャパシタ200が表面開口バイアホール100の開口部の一部を囲うように形成されている点が、図6のMMICとは異なっている。
【0061】
MIMキャパシタ200をこのような構造とすることで、MIMキャパシタ200と表面開口バイアホール100の間の電気的な接続領域を増やすことができる。その結果、MIMキャパシタ200を構成する上地電極12から表面開口バイアホール100に至る配線長さに起因するインダクタンス成分を抑制することができる。
【0062】
即ち、図4に示すMMICの等価回路は、図6に示すMMICの等価回路を示す図7と同様であるものの、図中L2で示されるインダクタンス成分が小さくなる。その結果、MIMキャパシタ200に必要な静電容量C1が小さくなり、MIMキャパシタ200の基板100に対する占有面積を小さくすることができる。
【0063】
このように、図6に示すMMICを図4に示す平面レイアウトとすることで、MIMキャパシタ200から表面開口バイアホール100に至る配線長さに起因するインダクタンス成分L2が小さくなるため、必要とされるMIMキャパシタ200の静電容量C1が小さくなり、MIMキャパシタ200の基板上の占有面積を抑制することができる。その結果、表面開口バイアホールおよび裏面開口バイアホールを利用するMIMキャパシタを有しながらMMICの回路規模を抑制することができる。
【0064】
{実施の形態3}
本実施の形態でも、実施の形態2と同様に、図6に示すMIMキャパシタ200と同様に基板10上に基板面に平行に積層した電極を有するMIMキャパシタ200を利用しながら、MMICの回路規模を抑制する。
【0065】
ただし、実施の形態2ではMIMキャパシタ200の形成方法を変更したのに対し、本実施の形態では表面開口バイアホール100の形成方法を変更する点が実施の形態2と異なる。
【0066】
この発明の実施の形態3に係る高周波用半導体装置MMICの構造を示す上面図を図5に示す。図中、図6のMMICの上面図を示す図8と対応する構成要素には同じ符号を付している。
【0067】
図5に示す本実施の形態におけるMMICは、上面から見た表面開口バイアホール100等の形状は異なるものの、その基本断面構造は図6のMMICと同様であるため、その製造方法も、実施の形態1で図6を用いて上述したのと同様である。
【0068】
図5と図8を比較すれば分かるように、本実施の形態では、表面開口バイアホール100がMIMキャパシタ200の周囲に延在するように、即ち表面開口バイアホール100がMIMキャパシタ200の一部を囲うように形成されている点が、図6のMMICとは異なっている。
【0069】
表面開口バイアホール100をこのような構造とすることで、MIMキャパシタ200と表面開口バイアホール100の間の電気的な接続領域を増やすことができる。その結果、MIMキャパシタ200を構成する上地電極12から表面開口バイアホール100に至る配線長さに起因するインダクタンス成分を抑制することができる。
【0070】
即ち、図5に示すMMICの等価回路は、図6に示すMMICの等価回路を示す図7と同様であるものの、図中L2で示されるインダクタンス成分が小さくなる。その結果、MIMキャパシタ200に必要な静電容量C1が小さくなり、MIMキャパシタ200の基板100に対する占有面積を小さくすることができる。
【0071】
このように、図6に示すMMICを図5に示す平面レイアウトとすることで、MIMキャパシタ200から表面開口バイアホール100に至る配線長さに起因するインダクタンス成分L2が小さくなるため、必要とされるMIMキャパシタ200の静電容量C1が小さくなり、MIMキャパシタ200の基板上の占有面積を抑制することができる。その結果、表面開口バイアホールおよび裏面開口バイアホールを利用するMIMキャパシタを有しながらMMICの回路規模を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明の実施の形態1に係る高周波用半導体装置MMICの構成を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るMMICの等価回路を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るバイアホールのエッチング深さと開口寸法との関係を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る高周波用半導体装置MMICの構成を示す上面図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る高周波用半導体装置MMICの構成を示す上面図である。
【図6】比較例としての高周波用半導体装置MMICの構成を示す断面図である。
【図7】図6のMMICの等価回路を示す図である。
【図8】図6の高周波用半導体装置MMICの構成を示す上面図である。
【符号の説明】
【0073】
10 基板、11 MIMキャパシタ下地電極、12 MIMキャパシタ上地電極、13 配線電極、14 裏面電極、20 MIMキャパシタ絶縁層、22 上層絶縁膜、100 第2の表面開口バイアホール、101 裏面開口バイアホール、110 第1の表面開口バイアホール、200 MIMキャパシタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半絶縁性の基板と、
前記基板表面から開口した第1の表面開口バイアホールと、
前記第1の表面開口バイアホールの内壁上に形成された第1の電極と、
前記基板表面から開口した前記第1の表面開口バイアホールより浅い第2の表面開口バイアホールと、
前記第2の表面開口バイアホールの内壁上に形成され、前記第1の電極とは絶縁された第2の電極と、
前記第1の表面開口バイアホールの直下に前記基板の裏面から開口した裏面開口バイアホールと、
前記裏面開口バイアホールの内壁上に前記第1の電極と電気的に接続して形成された裏面電極と、
を備え、
前記第1の電極と前記第2の電極とが前記基板を誘電体とするMIMキャパシタを構成することを特徴とする高周波用半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波用半導体装置であって、
前記第1の表面開口バイアホールの開口部は、前記第2の表面開口バイアホールの開口部よりも開口面積が大きいことを特徴とする高周波用半導体装置。
【請求項3】
基板上に形成されたMIMキャパシタと、
前記MIMキャパシタの表面側電極を前記基板の裏面電極に接続するために前記基板に形成されたバイアホールと、
を備え、
前記MIMキャパシタは、前記バイアホールの周囲に延在して形成されることを特徴とする高周波用半導体装置。
【請求項4】
基板上に形成されたMIMキャパシタと、
前記MIMキャパシタの表面側電極を前記基板の裏面電極に接続するために前記基板に形成されたバイアホールと、
を備え、
前記バイアホールは、前記MIMキャパシタの周囲に延在して形成されることを特徴とする高周波用半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−216877(P2006−216877A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30051(P2005−30051)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】