説明

6極同期モータ

【課題】 ステータコアの狭い取付けスペースに設けられるボビンに巻き付けられるモータコイルの占積率を向上させた6極同期モータを提供する。
【解決手段】 ステータ2は出力軸7を囲むコア14にロータ1と対向する複数の磁極部17、16が形成されており、該コア14にボビン22の軸線M2が出力軸7を中心とする放射状の軸線M1に対して周方向に所定角度傾いて組み付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は6極同期モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばOA機器には、冷却用のDC或いはACファンモータが装備されており、特に高回転数を要する機器には出力5W〜10W程度の2極或いは4極のACファンモータが好適に用いられる。
【0003】
このACファンモータの構成について説明すると、マイクロコンピュータによる通電制御により、起動運転回路のAコイル及びBコイルに流れる整流電流の電流方向を交互に切換えて起動運転し、或いは起動運転回路の電機子コイルに交互に流れる整流電流が反転する範囲内でスイッチング制御して非反転側に対して反転側の入力を抑えて起動運転し、光センサにより検出された永久磁石ロータの回転数が同期回転数付近に到達したときに、運転切換えスイッチを同期運転回路に切り換えて同期運転に移行するよう制御する同期モータが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−125580号公報
【特許文献2】特開2000−83390号公報
【0004】
これらの同期モータにおいて、ステータコア(積層コア)の溝部には絶縁樹脂製のボビンが嵌め込まれ、該ボビンにはコイル巻線が巻き回されている。このモータコイルは、自動機などを用いてモータの回転方向に合わせて所定の巻き方向に所定の巻数でボビンに巻き付けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した同期モータにおいて、出力が20W以上の高出力モータにおいては、6極以上の多極にしなければモータの回転数が実用に耐え得る程度の回転数にできない。6極以上の多極同期モータを形成する場合、ステータコアの磁極数が増えるため、モータコイルを巻き付けるボビンの組付空間が狭くなる。また、ステータコア固定用のねじ孔を設けるため、磁極部を通過する磁束通路が狭くなる。したがって、モータ効率を向上するためには、モータコイルの占積率を上げることが重要である。
また、小型のステータコアにボビンを装着し、該ボビンにコイル巻線を巻き回す一連の作業を自動化するのは難しく、モータの組立工数が多く生産性が低いという課題もあった。
【0006】
本発明の第1の目的は、ステータコアの狭い取付けスペースに設けられるボビンに巻き付けられるモータコイルの占積率を向上すること、第2の目的はモータの組立工程を簡略化して生産性向上を図ることが可能な6極同期モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は次の構成を有する。
ケース内に出力軸を中心に回転可能に支持されたロータと、該ロータに囲まれた空間内に配置され、ステータコアにボビンを通じてモータコイルが巻き回されたステータとを備えた6極同期モータにおいて、前記ステータは出力軸を囲むコアにロータと対向する複数の磁極部が形成されており、該コアにボビンの軸線が出力軸を中心とする放射状の軸線に対して周方向に所定角度傾いて組み付けられることを特徴とする。
具体的には、前記ボビンは出力軸の周囲に等角度範囲で形成されたコアの突当て面に突き当てられて組み付けられることを特徴とする。
また、ステータコアは出力軸を囲む主コアと該主コアに対して分離可能な分割コアを具備し、主コアに複数箇所に設けられる突当て面に突設された挿入部に巻芯部芯孔を嵌め込ませてボビンが組み付けられ、該ボビンの外側より巻芯部芯孔に挿入して挿入部へ突き当てることにより分割コアが組み付けられることを特徴とする。
また、コイル外結線を行なう結線基板がコアの突当て面に各々突き当てられ、各結線基板にボビンを重ね合わせ、各ボビンの巻芯部芯孔へ分割コアが挿入されて組み付けられることを特徴とする。
また、ステータコアのロータに対向する磁極部は、磁束作用面部の形状が磁極中心に対して磁気的に非対称となるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る6極同期モータを用いると、ステータは出力軸を囲むコアにロータと対向する複数の磁極部が形成されており、該コアにボビンの軸線が出力軸を中心とする放射状の軸線に対して周方向に所定角度傾いて組み付けられるので、コアの磁極部の磁路を必要以上に狭めることなく、ボビンの配置領域を広く確保することができる。したがって、ボビンに巻き回されるコイル巻線の占積率が向上し、設計の自由度が広がり6極同期モータにおいて実用的な回転数(周波数50Hz用で1000rpm、周波数60Hz用で1200rpm)が得られる。
また、ボビンは出力軸の周囲に等角度範囲で形成されたコアの突当て面に突き当てられて組み付けられるボビンの軸線が出力軸を中心とする放射状の軸線に対して周方向に所定角度傾いて組み付けられるので、ボビンをコアの周囲にバランスよく配置して組み付けることができる。
また、ステータコアは出力軸を囲む主コアと該主コアに対して分離可能な分割コアを具備し、主コアに複数箇所に設けられる突当て面に突設された挿入部を巻芯部芯孔へ嵌め込ませてボビンが組み付けられるので、ボビンのステータコアへの組付性が良い。また、ボビンの外側より巻芯部芯孔に挿入して挿入部へ突き当てることにより分割コアが組み付けられるので、ステータの組立性も良い。
また、コイル外結線を行なう結線基板がコアの突当て面に各々突き当てられ、各結線基板にボビンを重ね合わせて組み付けられるので、コイル外の配線長を短縮できる。
また、ステータコアのロータに対向する磁極部は、磁束作用面部の形状が磁極中心に対して磁気的に非対称となるように形成されているため、起動時の回転方向が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る6極同期モータは、ケース内に出力軸を中心に回転可能に支持されたロータと、該ロータに囲まれた空間内に配置され、ステータコアにモータコイルが巻き回されたステータとを備えたアウターロータ型の6極交流同期モータに広く適用される。
【0010】
先ず、図1乃至図7を参照してアウターロータ型の6極同期モータの全体構成について説明する。図1及び図2Aにおいて、回転子(ロータ)1及び固定子(ステータ)2は上蓋3及びケース本体4が上下に重ね合わされ、ねじ5により複数箇所でねじ止めされるモータケース6内に収容されている。モータケース6には出力軸7が嵌め込まれている。ロータ1は出力軸7を中心に回転し、該出力軸7は上蓋3及びケース本体4に回転可能に軸支されている。出力軸7は、上蓋3に嵌め込まれた上部ベアリング8及びケース本体4に嵌め込まれた下部ベアリング9より回転可能に軸支されている。本実施例では、出力軸7はステータ2を貫通して設けられ上蓋3側がケース外へ突設されているが、ケース本体4側がケース外へ突設されていても良く、或いは両側へ突設されていても良い。
【0011】
先ず、ロータ1の構成について説明する。図1及び図3Aにおいて、出力軸7の上蓋3側に嵌め込まれたボス部10はロータケース11にかしめられている。このロータケース11はボス部10を介して出力軸7に一体的に連繋している。ロータケース11は下端側が開放されたカップ状に形成されており、内周面には円筒状の永久磁石12が固着されている。永久磁石12は周方向に略60度ずつN・S交互に6極に着磁されている。この永久磁石12としては、例えば、フェライト、ゴムマグネット、プラスチックマグネット、サマリュウムコバルト、希土類のマグネット、ネオジ鉄ボロンなどを原材料として安価に製造することができる。ロータ1は通電によりステータ2側に形成される磁極との反発により出力軸7を中心に起動回転するようになっている。上部ベアリング8及び下部ベアリング9としては、モータコイルに形成される磁界の乱れを考慮して、非磁性の材料、例えばステンレスなどが好適に用いられる。また、上部ベアリング8の軸方向上端と上蓋3との間には予圧バネ13が介装されており、上部ベアリング8を軸方向下側に向けて付勢してロータ1の浮き上がりを抑えている(図1参照)。
【0012】
ステータ2の構成について説明する。図2A、Bにおいて、ステータ2はロータケース11に囲まれた空間部に設けられている。ステータ2は、出力軸7を囲むステータコア14からロータ1と対向する複数(6箇所)の磁極部が形成されている。
【0013】
図4において、ステータコア14は、主コア15と分割コア16とが分離可能に組付けられる。主コア15と分割コア16としては、例えば珪素鋼鈑などからなる積層コアが好適に用いられる。主コア15のコア中心部には、出力軸7を挿通する軸孔15aが穿孔されている。主コア15の中心部からロータ1と対向する第1の磁極部17が3箇所に延設されている。また、第1の磁極部17間には、一方の第1の磁極部17の側面部を構成し、後述するボビン22の装着面となる突当て面18が軸孔15aの周囲に等角度範囲、即ち突当て面18どうしのなす角度が60度になるように形成されている。この突当て面18には、後述するように結線基板24に接続する配線や温度ヒューズ38を設けるための凹溝29が設けられている。また、各突当て面18には直交する向きに挿入部19が各々突設されている。挿入部19には第2の磁極部を形成する分割コア16が端面どうしを突き当てることにより組付けられる。挿入部19と分割コア16とが突き当てられる端面形状は、テーパー面に形成されているがその他凹凸面、段差面など他の形状であっても良い。尚、ボビン22が突当て面18に位置決めされるのであれば、挿入部19を省略して分割コア16をボビン22の巻芯部芯孔より挿入して突当て面18に突き当てるようにしてもよい。主コア15(第1の磁極部17)と分割コア16(第2の磁極部)とは、磁束作用面の中心M3が出力軸7の周囲に60度ずつ位相をずらせて設けられている。主コア15及び分割コア16には貫通孔20が設けられており、ねじ21が嵌め込まれてケース本体4に固定される(図1、図2A参照)。
【0014】
図2A、Bにおいて、ステータコア14の周囲に形成された各突当て面18に突設された挿入部19にボビン22の巻芯部芯孔を嵌め込ませてボビン22が各々装着される。また、ボビン22の外側から分割コア16を各々巻芯部芯孔に挿入して挿入部19に突き当ててステータコア14に組み付けられる。このとき、出力軸7とねじ21を結ぶ放射状の軸線(出力軸7を中心として等角配置される軸線)M1に対して各ボビン22の軸線M2が周方向に所定角度(反時計回り方向にθ;0<θ≦15°より好ましくは10°)傾けて組み付けられる。これにより、図5において各ボビン22が出力軸7を中心とする放射状の軸線M1に沿って配置される場合に比べて、例えば傾斜角θが10°の場合、モータコイル23を収容する断面積Sが図2Aの場合おおよそ20パーセント程度拡張(断面積1.2S)することができることが判明した。
【0015】
尚、ボビン22の傾斜角θは、ステータコア14の磁路や、ロータ1との干渉を防ぐ範囲で最適な範囲に調整される。また、図2Aにおいて、ステータコア14に各ボビン22が装着される前に、モータコイル23どうしのコイル外結線を行なう結線基板24が突当て面18に突き当てられ、当該結線基板24にボビン22が重ね合わされて、分割コア16がボビン22の巻芯部芯孔へ挿入されて固定される。結線基板24には、挿入部19を挿入する挿入孔24aが穿孔されている(図6参照)。
【0016】
また、図4において、主コア15及び分割コア16のロータ1に対向する第1、第2の磁極部17、16は、磁束作用面部の形状が磁極中心M3に対して磁気的に非対称となるように形成されている。即ち、第1、第2の磁極部17、16の外周面(磁束作用面)には、凹面部17a、16aが外周長の半分程度まで形成されている。これにより、永久磁石12に対向する磁束作用面の磁束密度が偏る、即ち磁気抵抗が少ない(空隙部の小さい)図2Aの時計回り方向側の磁束作用面へ磁束が偏って作用するようになっている。
【0017】
図6において、主コア15及び分割コア16には、非磁性材料(例えば、ステンレス、アルミ合金など)からなる連結プレート25が積層されて一体に組み付けられる。連結プレート25は主コア15の平面形状と略同形状をしており、主コア15に組み付けられる分割コア16が傾倒するのを防ぐために設けられる。連結プレート25には、主コア15及び分割コア16の貫通孔20に連通する貫通孔26が形成されている。
【0018】
また、図6において、コイル外結線を行なう結線基板24の両面には絶縁カバー28が積層される。絶縁カバー28には、基板挿入孔24aに対応する挿入孔28aが設けられている。絶縁カバー28に覆われた結線基板24は、挿入部19を挿入孔28a、24aへ挿入させることによりステータコア14の突当て面18に突き当てられる。各結線基板24にボビン22が重ね合わせ、ボビン22の巻芯部22aの芯孔へ分割コア16が挿入されて結線基板24及びボビン22がステータコア14へ組み付けられる。
【0019】
図6において、ボビン22は筒状の巻芯部22aを囲む起立壁が架橋部を介して一体に成形された断面コ字状の溝部27に、予めリング状に巻き回されたモータコイル23が嵌め込まれる。ボビン22はモータコイル23とステータコア14とを絶縁する絶縁樹脂材で形成されている。巻芯部22aの芯孔にはステータコア14の挿入部19及び分割コア16が芯孔の両側から挿入されて先端部どうしが突き当てられる。溝部27には、コイル巻線が例えばAコイル及びBコイル(図7参照)が直列に巻回されたモータコイル23が嵌め込まれる。
【0020】
図4にモータコイル23の巻線方向の一例を示す。23aが巻き始端、23bが中間タップ、23cが巻き終端である。モータコイル23は、予め図示しない巻線治具にて自動機によりリング状に巻かれている。コイル巻線としては例えば自己融着線が好適に用いられる。自己融着線は、予め巻線治具にコイル状に巻き回された状態で加熱することにより融着してコイル状に形成されるか或いは自己融着線にアルコールを塗付しながらコイル状に巻き回して融着剤が溶け出すことによりコイル状に形成される。このように予め成形されたモータコイル23がボビン22の溝部27に嵌め込まれる。次いで、ボビン22の巻芯部22aに絶縁カバー28に覆われた結線基板24が嵌め込まれ、モータコイル23の巻線端部が結線基板24と電気的に接続される(図6参照)。或いは、モータコイル23が結線基板24に接着され、電気的に接続された後に、該結線基板24をモールド金型(図示せず)に搬入してモータコイル23が結線基板24上でモールド樹脂に覆われて一体成形される熱放散性の高いボビン22を用いても良い。
【0021】
また、図2Aにおいて、ステータコア14の突当て面18には、ボビン22と共に結線基板24が3箇所に突き当てられる。各結線基板24どうしは互いには基板間結線により接続されている。コイル巻線の巻き始端23a、中間タップ23b、巻き終端23cが接続する基板端子部よりステータコア14に形成された凹溝29を通じて(図4参照)、引出し線36がケース本体4の底部に設けられる配線ガイド(樹脂筒、グロメットなど)37を通じて外方へ引き出される(図3A、図3C参照)。また、結線基板24には過流電流を検出して通電を遮断するため例えば温度ヒューズ38が設けられる。この温度ヒューズ38もステータコア14に形成された凹溝29を利用して設けられる(図2A、図4参照)。
【0022】
また、図2B及び図3Aにおいて、ケース本体4の底部内には、ステータ載置部30が突設されており、各ステータ載置部30には貫通孔20に連通するねじ孔31が設けられている。また、ケース本体4の底部内には、センサ基板32を取り付ける基板固定部33が設けられており、センサ基板32は基板固定部33にねじ34により取付け固定される。センサ基板32には、永久磁石12の磁極位置を検出するホール素子35が設けられ、永久磁石12の内周側に対向配置される。ホール素子35はロータ1の回転数及び磁極位置を検出し、回転数に応じたパルスを発生させ、磁極位置に応じて後述する運転切換え制御部(マイクロコンピュータ等)により所定のタイミングで起動運転回路のスイッチング制御が行われる。尚、ホール素子35に代えて光透過型若しくは反射型の光センサ、磁気抵抗素子、コイルなどを用いた磁気センサ、高周波誘導による方法、キャパシタンス変化による方法など様々なセンサが利用可能である。また、センサ基板32に接続する引出し線38は、ケース本体4の底部に設けられる配線ガイド(樹脂筒、グロメットなど)37を通じて外方へ引き出される(図3A、図3C参照)。
【0023】
6極同期モータの組立工程の一例について図6を参照しながら説明する。
先ずロータ1の組立工程の一例について説明する。ロータケース11の中心部にはボス部10が嵌め込まれ、内壁面には円筒状の永久磁石12が嵌め込まれて接着される。また、ボス部10には出力軸7が一体に嵌め込まれる。上蓋3の中心部には、予圧バネ13を介して上部ベアリング8が嵌め込まれている、ロータケース11は、ボス部10が上部ベアリング8に回転可能に軸支される。
【0024】
次に図6において、ステータ2の組立工程の一例について説明する。
ケース本体4には下部ベアリング9、配線ガイド37が嵌め込まれ、センサ基板32がねじ34により基板固定部33へねじ止め固定される。引出し線36、38は配線ガイド37を通じてケース本体4外へ引き出される(図2B参照)。
【0025】
次に、各ボビン22にコイル状に巻き回されたモータコイル23が各々嵌め込まれる。また絶縁カバー28に覆われた結線基板24が巻芯部22aに各々嵌め込まれる。このようにしてボビン22の組み付けをおこなった後、該ボビン22をステータコア14の主コア15に組み付ける。即ち、主コア15に3箇所設けられた挿入部19をボビン22の巻芯部22aの芯孔へ挿入して結線基板24を突当て面18へ突き当ててボビン22が各々嵌め込まれる。そして、ボビン22の外側から分割コア16を巻芯部22aの芯孔へ挿入して、挿入部19と先端部どうしが突き当たるまで嵌め込まれて組み付けられる。結線基板24どうしは、基板間結線39により電気的に接続される(図2A参照)。
【0026】
次に、ステータコア14に連結プレート25を重ね合わせる。このとき連結プレート25の貫通孔26と、第1の磁極部17、分割コア16に形成された貫通孔20と位置合わせして積層される。そして、ステータコア14をケース本体4のステータ載置部30に、貫通孔20とねじ孔31とを位置合わせして載置し、引出し線36、38を配線ガイド37よりケース本体4の外部へ引き出しておく。最後に、ねじ21を連結プレート25、ステータコア14の貫通孔26、20を貫通して嵌め込み、ねじ孔31に螺合してケース本体4へステータコア14が一体に組み付けられる(図6参照)。
【0027】
最後に、図6において、出力軸7を主コア15の軸孔15aに挿入し、ロータケース11がステータコア14を囲むようにケース本体4に収納し、上蓋3とケース本体4を位置合わせしてねじ5をねじ嵌合させることにより6極同期モータが組み立てられる(図1参照)。尚、ねじ5は上蓋3とケース本体4の固定用のみならずモータ取付け面へのねじと兼用することも可能である。
【0028】
次に、6極同期モータの運転回路の一例について図7の回路図に基づいて説明する。
起動運転回路40は、単相交流電源41の交流電流を整流ブリッジ回路42により全波整流し、ロータ1の回転角度に応じてスイッチング手段(トランジスタTr1〜Tr4)を切り換えて整流電流の向き(図7の矢印(1)(2)参照)を変えるようにモータコイル23のうちAコイルのみへ通電してロータ1を直流ブラシレスモータとして起動運転する。或いは起動運転回路は図示しないが、モータコイル(Aコイル及びBコイル)23に交互に流れる整流電流が反転する範囲内でスイッチング制御して非反転側に対して反転側の入力を抑えて起動運転しても良い。
【0029】
運転切換制御部(マイクロコンピュータなど)43による通電制御により、起動運転回路40のAコイル及びBコイルに流れる整流電流の電流方向を交互に切換えて起動運転し、ホール素子35により検出されたロータ1の回転数が電源周波数検出部44により検出される周波数と同期する回転数付近に到達したときに、運転切換えスイッチSW1、SW2を同期運転回路45に切り換えてモータコイル(Aコイル及びBコイル)29による同期運転に移行するよう制御する(図7の矢印(3)参照)。
また、同期モータが負荷の変動などにより脱調した場合には、運転切換制御部43は一旦ロータ1の回転数が同期回転移行時より所定値まで落ち込んだ後起動運転に移行し、再度同期運転に移行するよう繰り返し制御を行うようになっている。
【0030】
また、本実施例に示す6極同期モータは、起動運転から同期運転への移行動作をコンピュータ制御により行われるため、電源周波数が50Hz、60Hz、100Hz等に変化しても細かい機械設計を変更することなく同一の6極同期モータを用いることができるので、極めて汎用性の高い6極同期モータを提供することができる。
【0031】
本発明に係る6極同期モータは、上述した形態に限定されるものではなくモータを駆動制御するマイクロコンピュータを当該モータと一体に装備している場合であっても、或いはモータが用いられる電機機器の装置本体に内蔵した制御回路の一部(交流電源、起動運転回路、同期運転回路などを含む)を用いてモータを駆動制御するタイプのいずれであっても良い。
また、複数台の同期モータで起動運転回路40を併用して並列運転回路を組むことも可能である。また、並列運転をしないかわりに、同期運転回路45を用いた同期運転動作の切換制御を行うようにすることも可能である。具体的には、例えば冷蔵庫などの冷凍機などにおいては、急速に冷凍しなければならない場合には、高出力運転でファンを回転させて庫内を冷却し、所定温度まで冷えるとその後は消費電力を抑えた省エネ運転を行ないたいというニーズがある。このため、一旦同期運転に移行すると、単相交流電源41によるAコイル及びBコイルを用いた高速運転動作と、運転切換制御部43によるAコイル及びBコイルを用いたPWM制御により低速省エネ運転動作とを切換制御するようにしても良い。
また、結線基板24を含む運転回路には、過負荷時の安全を保証するために、温度ヒューズ38の他に、運転動作中に常時通電する回路部分にバイメタル式の高温検出スイッチを組み込むこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】6極同期モータの軸方向断面図である。
【図2】6極同期モータを内視した部分断面図である。
【図3】6極同期モータの軸方向断面図、平面図及び底面図である。
【図4】図1のステータコアのX方向矢視図である。
【図5】ボビンの傾きを説明するための内視対比図である。
【図6】6極同期モータのロータの分解斜視図である。
【図7】6極同期モータの運転回路の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ロータ
2 ステータ
3 上蓋
4 ケース本体
5、21、34 ねじ
6 モータケース
7 出力軸
8 上部ベアリング
9 下部ベアリング
10 ボス部
11 ロータケース
12 永久磁石
13 予圧バネ
14 ステータコア
15 主コア
16分割コア
17 第1の磁極部
18 突当て面
19 挿入部
20、26 貫通孔
22 ボビン
22a 巻芯部
23 モータコイル
24 結線基板
24a、28a 挿入孔
25 連結プレート
27 溝部
28 絶縁カバー
29 凹溝
30 ステータ載置部
31 ねじ孔
32 センサ基板
33 基板固定部
35 ホール素子
36、38 引出し線
37 配線ガイド
38 温度ヒューズ
39 基板間結線
40 起動運転回路
41 単相交流電源
42 整流ブリッジ回路
43 運転切換制御部
44 電源周波数検出部
45 同期運転回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に出力軸を中心に回転可能に支持されたロータと、該ロータに囲まれた空間内に配置され、ステータコアにボビンを通じてモータコイルが巻き回されたステータとを備えた6極同期モータにおいて、
前記ステータは出力軸を囲むコアにロータと対向する複数の磁極部が形成されており、該コアにボビンの軸線が出力軸を中心とする放射状の軸線に対して周方向に所定角度傾いて組み付けられることを特徴とする6極同期モータ。
【請求項2】
前記ボビンは出力軸を中心として等角度範囲に形成されたコアの突当て面に突き当てられて組み付けられることを特徴とする請求項1記載の6極同期モータ。
【請求項3】
ステータコアは出力軸を囲む主コアと該主コアに対して分離可能な分割コアを具備し、主コアに複数箇所に設けられる突当て面に突設された挿入部に巻芯部芯孔を嵌め込ませてボビンが組み付けられ、該ボビンの外側より巻芯部芯孔に挿入して挿入部へ突き当てることにより分割コアが組み付けられることを特徴とする請求項1記載の6極同期モータ。
【請求項4】
コイル外結線を行なう結線基板がコアの突当て面に各々突き当てられ、各結線基板にボビンを重ね合わせ、各ボビンの巻芯部芯孔へ分割コアが挿入されて組み付けられることを特徴とする請求項1記載の6極同期モータ。
【請求項5】
ステータコアのロータに対向する磁極部は、磁束作用面部の形状が磁極中心に対して磁気的に非対称となるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の6極同期モータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−37234(P2007−37234A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214161(P2005−214161)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(504272408)有限会社ケイ・アールアンドデイ (9)
【Fターム(参考)】