説明

CVD装置、半導体装置、及び光電変換装置

【課題】メンテナンス性を向上させたCVD装置と、該CVD装置を用いて製造して生産性を向上させた半導体装置及び光電変換装置を提供する。
【解決手段】チャンバ本体21は、底部本体21A、第一筒体21B、第二筒体21C、及び蓋体21Dを有し、これらが取外し可能に積重ねられる。チャンバ本体21は、その空間Sに、基板Bを載置するステージ22と、基板Bに対向する複数の触媒体Wと、各触媒体Wに接続される複数の接続端子32とを有し、また、その蓋体21Dに、各接続端子32に対応する複数の押圧端子Tを有する。そして、蓋体21Dは、第二筒体21Cに積重ねられる状態で、対応する接続端子32を押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVD装置、半導体装置、及び光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や光電変換装置の製造工程においては、原料物質の化学反応を利用して薄膜を形成する化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition )法が用いられている。CVD法には、例えば、反応系にプラズマ空間を利用するプラズマCVD法や、加熱反応を利用する熱CVD法が知られている。
【0003】
プラズマCVD法や熱CVD法は、基板をプラズマの下に曝したり、基板を高温に加熱したりするため、基板や薄膜に対して、電気的、熱的ダメージを与え易い。また、プラズマCVD法や熱CVD法は、プラズマの密度や基板の温度に高い均一性を要求するため、基板の大面積化に対応し難い。
【0004】
そこで、CVD法においては、従来から、上記問題を解決するため、加熱したタングステンなどの触媒体に原料ガスを接触させて原料ガスを反応種に分解する、いわゆる触媒CVD法が注目されている(例えば、特許文献1)。触媒CVD法は、触媒体の表面が化学反応の進行を担うため、プラズマCVD法や熱CVD法に比べて、基板や薄膜の電気的、熱的ダメージを抑制できる。また、触媒CVD法は、触媒体の数量を増加させるだけで、成膜領域を大きくできるため、基板の大面積化に対して比較的容易に対応できる。
【特許文献1】特許第3780364号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のCVD装置は、処理容器内の空間に、接続端子を保持するための接続端子ホルダを有する。この接続端子ホルダには、複数の接続端子が保持されて、各接続端子の入力側には、それぞれ電力供給線がネジ止め固定されて、各接続端子の出力側には、それぞれ触媒体が接続されている。
【0006】
特許文献1のCVD装置では、1つの触媒体を交換するとき、対応する接続端子ホルダを処理容器内の空間から取り出すため、該接続端子ホルダに保持される全ての接続端子と全ての触媒体を、処理容器内の空間から同時に取り出さなければならない。また、複数の触媒体を同時に取り出すためには、接続端子と電力供給線との接続を全て解除させなければならない。
【0007】
この結果、特許文献1のCVD装置では、触媒体の交換作業に多大な時間を要し、触媒CVD法を用いて製造する半導体装置や光電変換装置の生産性を大きく損なう問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、メンテナンス性を向上させたCVD装置と、該CVD装置を用いて製造する半導体装置及び光電変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のCVD装置は、有底筒状の筐体と、前記筐体に取外し可能に積重ねられる蓋体と、前記筐体内の空間に配置されて基板を載置するステージと、前記筐体内の空間に配置されて前記基板と対向する複数の触媒体と、前記筐
体内の空間に配置されて前記各触媒体に接続される複数の接続端子と、前記蓋体に取付けられて前記蓋体の積重によって前記各接続端子をそれぞれ押圧し、前記蓋体の離脱によって前記各接続端子から離間する複数の押圧端子と、前記各押圧端子に接続されて前記各押圧端子にそれぞれ所定の電源を供給する複数の電源配線と、を備えたことを要旨とする。
【0010】
請求項1に記載のCVD装置によれば、蓋体を筐体から取外すだけで、各押圧端子と、対応する接続端子との間の接続を同時に解除させることができる。したがって、筐体内の空間を短時間で露出させることができ、各接続端子、各触媒体、ステージ等の交換作業に要する時間を、大幅に短縮させることができる。この結果、CVD装置のメンテナンス性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載のCVD装置は、請求項1に記載のCVD装置であって、前記筐体が、有底筒状の第一筐体と、前記第一筐体に取外し可能に積重ねられる筒状の第二筐体と、前記第一筐体と前記第二筐体との間に配設されて、前記筐体内の空間を、前記第一筐体内の空間と前記第二筐体内の空間とに区画する板状の隔壁と、を備え、前記第一筐体内の空間が、前記ステージと前記各触媒体とを収容し、前記隔壁が、前記第一筐体内の空間と前記第二筐体内の空間とを連通する複数の連通孔を有して前記各触媒体の端部をそれぞれ前記第二筐体内の空間に導出し、前記第二筐体内の空間が、前記各接続端子と、前記各接続端子に接続される前記各触媒体の端部とを収容することを要旨とする。
【0012】
請求項2に記載のCVD装置によれば、蓋体を筐体から取外すだけで、第二筐体内の空間を露出させることができ、かつ、第一筐体内の空間の露出を抑えることができる。すなわち、蓋体を筐体から取外すだけで、各接続端子や各触媒体の端部を露出させることができ、かつ、ステージや各触媒体の露出を抑えることができる。したがって、各接続端子の交換作業に要する時間を、大幅に短縮させることができ、かつ、成膜空間と大気との接触を抑制させることができる。この結果、接続端子の交換作業時において、筐体内の成膜環境を、より短時間で回復させることができ、CVD装置のメンテナンス性を、さらに向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載のCVD装置は、請求項2に記載のCVD装置であって、前記各接続端子ホルダを支持する複数の接続端子ホルダを備え、前記各接続端子ホルダは、それぞれ対応する前記連通孔に取外し可能に嵌合して、前記各連通孔の領域で前記第一筐体内の空間と前記第二筐体内の空間とを区画し、前記各連通孔の領域に、それぞれ前記触媒体を前記第一筐体内の空間から前記第二筐体内の空間に案内する複数の案内孔を有することを要旨とする。
【0014】
請求項3に記載のCVD装置によれば、接続端子ホルダを連通孔から取外すだけで、対応する接続端子と、対応する触媒体とを、同時に隔壁から取外すことができる。したがって、接続端子ホルダを連通孔から取外すだけで、所定の接続端子と所定の触媒体とを選択的に取外すことができる。また、接続端子あるいは触媒体を交換するとき、第一筐体内の露出を連通孔の領域に抑えることができる。この結果、接続端子や触媒体の交換作業に要する時間を、大幅に短縮させることができ、かつ、成膜空間と大気との接触を、さらに抑制させることができる。
【0015】
請求項4に記載のCVD装置は、請求項2又は3に記載のCVD装置であって、前記隔壁が、前記第一筐体内の空間に原料ガスを分散して放出するシャワープレートであることを要旨とする。
【0016】
請求項4に記載のCVD装置によれば、隔壁がシャワープレートによって構成されるため、別途隔壁を設ける場合に比べて、CVD装置の部材点数を低減させることができる。
ひいては、CVD装置のメンテナンス性を、さらに向上させることができる。
【0017】
請求項5に記載のCVD装置は、請求項1〜4のいずれか1つに記載のCVD装置であって、前記触媒体の純度が99.99%であることを要旨とする。
請求項6に記載のCVD装置は、請求項1〜5のいずれか1つに記載のCVD装置であ
って、前記触媒体の純度が99.999%であることを要旨とする。
【0018】
請求項5、6に記載のCVD装置によれば、触媒体の燃焼に起因する真空槽内の金属汚染レベルの低減を図ることができる。
上記目的を達成するために、請求項7に記載の半導体装置は、シリコンを含む層を備えた半導体装置であって、前記シリコンを含む層が請求項1〜6のいずれか1つに記載のCVD装置を用いて形成されることを要旨とする。
【0019】
請求項7に記載の半導体装置によれば、CVD装置のメンテナンス性を向上させることができ、CVD装置の稼働率、ひいては、シリコンを含む層を有した半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0020】
上記目的を達成するために、請求項8に記載の光電変換装置は、シリコンを含む層を備えた光電変換装置であって、前記シリコンを含む層は請求項1〜6のいずれか1つに記載のCVD装置を用いて形成したことを要旨とする。
【0021】
請求項8に記載の光電変換装置によれば、CVD装置のメンテナンス性を向上させることができ、CVD装置の稼働率、ひいては、シリコンを含む層を有した光電変換装置の生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
上記のように、本発明によれば、メンテナンス性を向上させたCVD装置と、該CVD装置を用いて製造する半導体装置及び光電変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。まず、CVD装置10について説明する。図1は、CVD装置10を模式的に示す平面図である。
(CVD装置10)
図1において、CVD装置10は、クラスタ形式のシステムであって、ロードロックチャンバ11(以下単に、LLチャンバ11という。)と、LLチャンバ11に連結される搬送チャンバ12と、搬送チャンバ12に連結される複数の触媒CVDチャンバ13を有する。
【0024】
LLチャンバ11は、減圧可能な内部空間(以下単に、収容室11aという。)を有し、複数の基板Bを搬入及び搬出可能にする。LLチャンバ11は、基板Bの成膜処理を開始するとき、収容室11aを減圧して基板Bを搬送チャンバ12へ搬送可能にする。また、LLチャンバ11は、基板Bの成膜処理を終了するとき、収容室11aを大気圧にして基板BをCVD装置10の外部へ搬出可能にする。基板Bとしては、例えば、円盤状のシリコン基板や矩形板状のガラス基板など、各種の板材を用いることができる。
【0025】
搬送チャンバ12は、減圧可能な内部空間(以下単に、搬送室12aという。)を有して、LLチャンバ11内や触媒CVDチャンバ13内と連通可能な真空系を形成する。搬送チャンバ12は、搬送室12aに搬送ロボット14を搭載して、基板Bの成膜処理を開始するとき、LLチャンバ11の基板Bを搬送チャンバ12に搬入し、搬送チャンバ12の基板Bを触媒CVDチャンバ13に搬送する。また、搬送チャンバ12は、成膜処理を
終了するとき、搬送ロボット14を駆動して、触媒CVDチャンバ13の基板Bを搬送チャンバ12に搬出し、搬送チャンバ12の基板BをLLチャンバ11に搬送する。
【0026】
(触媒CVDチャンバ13)
次に、触媒CVDチャンバ13について以下に説明する。図2は、触媒CVDチャンバ13の構成を模式的に示す側断面図である。
【0027】
図2において、触媒CVDチャンバ13は、触媒CVD法を用いて基板Bに薄膜を形成する真空チャンバである。触媒CVDチャンバ13は、箱体状のチャンバ本体21を有して、そのチャンバ本体21に内部に空間Sを形成する。
【0028】
チャンバ本体21は、有底筒状の底部本体21Aと、底部本体21Aに対して取外し可能に積重ねられる第一筒体21Bと、第一筒体21Bに対して取外し可能に積重ねられる第二筒体21Cと、第二筒体21Cに対して取外し可能に積重ねられる蓋体21Dとを有する。本実施形態においては、底部本体21A及び第一筒体21Bが第一筐体を構成し、第二筒体21Cが第二筐体を構成する。
【0029】
チャンバ本体21は、マスフローコントローラMFCに接続されるガスラインLSを有し、マスフローコントローラMFCが所定の流量で原料ガスを供給するとき、ガスラインLSに沿って原料ガスを搬送させて、所定の流量の原料ガスを空間Sに導入する。原料ガスは、成膜対象の膜種に応じて適宜選択することができる。例えば、シリコン膜を形成する場合、原料ガスとしては、シラン(SiH)と水素(H)を用いることができ、シリコン窒化膜を形成する場合、シランとアンモニア(NH)を用いることができる。また、シリコン酸化窒化膜を形成する場合、原料ガスとしては、シランと亜酸化窒素(NO)を用いることができる。
【0030】
チャンバ本体21は、底部本体21A内の空間にステージ22を有する。ステージ22は、基板Bが空間Sに搬入されるとき、その上面に基板Bを載置して位置決めする。チャンバ本体21は、第一筒体21Bの内側面やステージ22の外側面に防着板23を有し、成膜処理が実行されるとき、第一筒体21Bの内側面やステージ22の外側面に対して成膜種の堆積を抑制させる。
【0031】
チャンバ本体21は、第一筒体21Bの上側に隔壁としてのシャワープレート24を有する。シャワープレート24は、基板Bの面方向(以下単に、水平方向という。)に広がる板状に形成されている。シャワープレート24は、空間Sを水平方向に沿って2つに区画し、底部本体21A、第一筒体21B、及びシャワープレート24によって囲まれる第一室S1と、シャワープレート24、第二筒体21C、及び蓋体21Dによって囲まれる第二室S2とを形成する。
【0032】
シャワープレート24は、アルミニウムやステンレス等の耐食性の高い金属からなる上下一対の第一プレート24aと第二プレート24bを有している。シャワープレート24は、マスフローコントローラMFCが原料ガスを供給するとき、第二プレート24bの中心に導入される原料ガスを、第二プレート24bに内設される流路によって分散させて、さらに、第二プレート24bと第一プレート24aとの間の流路によって原料ガスを分散させて放出させる。
【0033】
第一室S1は、第一ポートP1を介して排気システム25に連結されて、第一ポートP1と排気システム25との間に、第一センサPS1と、第一調整バルブVc1と、第一排気バルブVd1とを有する。排気システム25としては、ドライポンプ又はターボ分子ポンプ等の各種のポンプを用いることができる。この第一室S1は、排気システム25が排
気動作を開始するとき、第一調整バルブVc1の駆動量に応じて減圧されて、所定の圧力に維持される。
【0034】
第二室S2は、第二ポートP2を介して排気システム25に連結されて、第二ポートP2と排気システム25との間に、第二センサPS2と、第二調整バルブVc2と、第二排気バルブVd2とを有する。この第二室S2は、排気システム25が排気動作を開始するとき、第二調整バルブVc2の駆動量に応じて減圧されて、第一室S1の圧力よりも低い圧力に維持される。
【0035】
本実施形態においては、成膜処理を実行するための第一室S1の圧力を、「第一目標圧力」とし、成膜処理を実行するための第二室S2の圧力を、「第二目標圧力」という。
シャワープレート24は、第一室S1と第二室S2との間を連通する複数の連通孔Hを有し、各連通孔Hには、それぞれ触媒体ユニット30が嵌合される。各触媒体ユニット30は、それぞれ連通孔Hに嵌合する接続端子ホルダ31と、接続端子ホルダ31に保持されて第二室S2に配置される一対の接続端子32と、一対の接続端子32の間に連結されて第二室S2から第一室S1に延出される触媒体Wとを有する。
【0036】
触媒体Wは、U字状に曲折される線材であって、例えば、タングステン、タンタル、白金、パラジウム等の金属を用いることができ、その純度が、例えば99.99%以上であり、より好ましくは、99.999%以上である。触媒体Wは、各接続端子32に接続される両端部の近傍を、それぞれ低圧の第二室S2に露出させて、各接続端子に挟まれる中間の領域を、第一室S1に露出させる。
【0037】
チャンバ本体21は、蓋体21Dに複数の押圧端子Tを有する。各押圧端子Tは、それぞれ一対の接続端子32の直上に配置されて、蓋体21Dにネジ止め固定されている。一対の接続端子32に対応する一対の押圧端子Tは、それぞれ蓋体21Dの上部から延出し、その一方が電源配線を介して外部電源GEに接続されて、他方が接地配線を介して接地電位に接続される。各押圧端子Tは、それぞれ蓋体21Dが第二筒体21Cに取付けられるとき、対応する接続端子32を下方に向けて押圧し、接続端子32を介して、触媒体Wに電気的に接続される。
【0038】
触媒体Wは、外部電源GEが所定の電力を出力するとき、対応する押圧端子T及び接続端子32を介して、外部電源GEからの電力を受け、該電力に応じた温度(例えば、1500℃〜2000℃)に発熱する。第一室S1の触媒体Wは、原料ガスが第一室S1に供給されるとき、その発熱によって触媒作用を発現し、原料ガスを分解又は励起して、基板Bの表面に所望の薄膜を成膜する。一方、第二室S2の触媒体Wは、接続端子32が触媒体Wの熱量を吸熱するため、その触媒作用を発現することなく、低圧の空間に曝される。
【0039】
この際、第二室S2の触媒体Wは、その雰囲気が「第二目標圧力」に調整されて維持されるため、原料ガスとの衝突頻度を十分に低くさせることができ、その温度に関わらず、原料ガスとの反応を回避することができ、その劣化を抑えることができる。
【0040】
(触媒体ユニット30)
次に、上記触媒体ユニット30について以下に詳述する。図3は、触媒CVDチャンバ13を上側から見た図であって、図2のA−A線断面図である。図4は、触媒体ユニット30を示す側断面図である。
【0041】
図3において、シャワープレート24には、16個の連通孔Hが形成されている。各連通孔Hは、それぞれ基板Bの中心点を中心とする同心円上に等配されて、該同心円の接線方向に沿って延びるように形成されている。例えば、各連通孔Hは、それぞれ基板Bの中
心位置を4回回転中心とする点対称の位置に配置されている。これによって、各連通孔Hは、それぞれ基板Bの中心から見て、略等方的に触媒体ユニット30を配置させられる。
【0042】
ここで、鉛直方向から見て、各連通孔Hの長手方向(上記同心円の接線方向)を、それぞれ対応する連通孔の「配線方向」という。
図4において、接続端子ホルダ31は、耐熱性の高いセラミック材料(例えば、石英)によって直方体状に形成されている。接続端子ホルダ31の下部外周には、その配線方向の両側に、それぞれ切欠部31aが形成されている。切欠部31aは、接続端子ホルダ31が連通孔Hに嵌合するとき、連通孔Hの内壁から離間して、接続端子ホルダ31と第一プレート24aとの間に導入口Nを形成する。接続端子ホルダ31は、マスフローコントローラMFCが原料ガスを供給するとき、図4の矢印で示すように、シャワープレート24によって分散される原料ガスを、各導入口Nから第一室S1の内部に導入する。
【0043】
接続端子ホルダ31の下部には、その配線方向の両側に、それぞれ第一室S1から第二室S2までを貫通するピン挿通孔31bが形成されている。各ピン挿通孔31bは、それぞれ鉛直方向に沿って形成されて、対応するガイドピン33が挿通される。
【0044】
各ガイドピン33は、耐熱性の高いセラミック材料(例えば、石英)によって円筒状に形成されて、鉛直方向に延びる案内孔33aを有する。各ガイドピン33は、それぞれ対応するピン挿通孔31bに挿通されるとき、その頭部が接続端子ホルダ31に支持固定される。各ガイドピン33は、配線方向に延びる触媒体Wを、対応する案内孔33aに挿通させて、第一室S1から第二室S2までを鉛直方向に沿って案内する。
【0045】
接続端子ホルダ31の上部には、対応する配線方向の両側に、それぞれ一対の凹部31cと、一対の端子挿通孔31dとが形成されている。一対の端子挿通孔31dは、それぞれ対応する凹部31cから接続端子ホルダ31の上端までを貫通する貫通孔であって、対応するピン挿通孔31bの直上に形成されて、接続端子32が挿通される。
【0046】
各接続端子32は、それぞれ鍔部32aを有する棒状に形成されている。各接続端子32は、それぞれ対応する端子挿通孔31dに挿通されるとき、鍔部32aが接続端子ホルダ31の上端に固定されて、接続端子32の下端を、所定の長さだけ凹部31c内に侵入させる。
【0047】
各接続端子32の下端には、それぞれ把持部32bが形成されている。把持部32bは、その外径が下端に向かって細くなるように形成されて、触媒体Wの外径と略同じ内径からなる円形孔を有している。各接続端子32の下端には、それぞれ締付けネジ34が取付けられている。締付けネジ34は、接続端子32の下端に螺合するとき、上方に向かって拡開する傾斜面を把持部32bの下端に対応させて、その傾斜面によって把持部32bの下端を締付ける。把持部32bは、締付けネジ34が接続端子32の下端に螺合するとき、その孔内の触媒体Wを締付け固定して、接続端子32と触媒体Wとを電気的に接続する。触媒体Wは、締付けネジ34とガイドピン33が離間する分だけ、接続端子32の下端近傍で第二室S2に露出する。
【0048】
第一室S1の触媒体Wは、外部電源GEが所定の電力を出力するとき、対応する押圧端子Tと接続端子32を介して該電力を受け、所定の温度に発熱して、第一室S1内で所望の成膜処理を実行する。
【0049】
この際、第一室S1の原料ガスは、「第一目標圧力」と「第二目標圧力」の差圧に応じ、案内孔33aと触媒体Wとの間を介して第二室S2に流入する。第二室S2の触媒体Wであって、その温度が最も低くなる部分、すなわち、把持部32bの下端にある触媒体W
は、案内孔33aから十分に離間して、その周囲を解放し続ける。このため、低温の触媒体Wは、流入する原料ガスとの衝突頻度を十分に低くさせることができる。
【0050】
さらに、第一室S1の原料ガスは、案内孔33aと触媒体Wとの間に流入する前に、高温の触媒体Wに先行して衝突し、その反応を十分に進行させる。そのため、案内孔33aと触媒体Wとの間に侵入する原料ガスの殆どは、低温の触媒体Wに対して不活性な状態で第二室S2に流入する。
【0051】
この結果、触媒体Wは、その温度に関わらず、原料ガスとの反応を回避させることができ、その劣化を抑えることができる。また、第二室S2内の気体が第一室S1内に流入しないため、第一室S1のクリーン度を十分に高く維持させることができ、高い再現性の下で成膜処理を実行させることができる。
【0052】
次に、触媒CVDチャンバ13のメンテナンス方法について以下に説明する。図5〜図7は、それぞれ触媒CVDチャンバ13のメンテナンス方法を示す側断面図である。
図7において、触媒CVDチャンバ13は、蓋体21Dを上動させて、蓋体21Dを第二筒体21Cから離間させる。この際、触媒CVDチャンバ13は、電源配線と押圧端子Tとの間の結線状態や接地配線と押圧端子Tとの間の結線状態を維持させて、全ての押圧端子Tを、対応する接続端子32から同時に離間させる。
【0053】
したがって、触媒CVDチャンバ13は、蓋体21Dを上動させるだけで、第二室S2の全体をメンテナンス(例えば、洗浄や部材交換等)の対象にできる。反対に、触媒CVDチャンバ13は、蓋体21Dを下動させるだけで、全ての押圧端子Tを、対応する接続端子32に結線させることができる。
【0054】
図8において、触媒CVDチャンバ13は、選択する接続端子ホルダ31を上動させて、選択する触媒体ユニット30をシャワープレート24から離間させる。この際、触媒CVDチャンバ13は、選択されない接続端子ホルダ31の嵌合状態を維持させて、選択する触媒体ユニット30のみを、シャワープレート24から取外させる。また、触媒CVDチャンバ13は、第一室S1に対して、選択される連通孔Hの領域だけを開放させる。
【0055】
すなわち、触媒CVDチャンバ13は、接続端子ホルダ31を上動させるだけで、対応する触媒体ユニット30のみを、メンテナンス(例えば、洗浄や部材交換等)の対象にできる。また、触媒CVDチャンバ13は、触媒体ユニット30のメンテナンス時に、大気による第一室S1の状態変動を抑えることができ、第一室S1の真空度を、より迅速に回復させることができる。
【0056】
図9において、触媒CVDチャンバ13は、第二筒体21Cを上動させて、第二筒体21Cを第一筒体21Bから離間させる。この際、触媒CVDチャンバ13は、触媒体ユニット30の嵌合状態を維持させて、全ての触媒体ユニット30を、第二室S2から同時に離間させることができる。
【0057】
すなわち、触媒CVDチャンバ13は、第二筒体21Cを上動させるだけで、第一室S1の全体をメンテナンス(例えば、洗浄や部材交換等)の対象にできる。反対に、触媒CVDチャンバ13は、第二筒体21Cを下動させるだけで、全ての触媒体Wを第一室S1にセットさせることができる。
【0058】
(半導体装置40)
次に、CVD装置10を用いて製造する半導体装置40について以下に説明する。図8は、半導体装置40を示す要部断面図である。
【0059】
図8において、半導体装置40は、例えば、各種RAMや各種ROMを含むメモリデバイス、MPUや汎用ロジックを含むロジックデバイス等である。半導体装置40の基板Bには、複数の素子分離領域41が形成されて、各素子分離領域41に囲まれる領域には、それぞれ薄膜トランジスタTrが形成されている。
【0060】
複数の薄膜トランジスタTrの各々には、それぞれシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜42と、ポリシリコン膜からなるゲート電極43とが備えられている。ゲート絶縁膜42及びゲート電極43の周囲には、それぞれシリコン酸化膜からなる第一サイドウォール44と、シリコン窒化膜からなる第二サイドウォール45とが形成されている。ゲート電極43、第一サイドウォール44、及び第二サイドウォール45は、それぞれ上記CVD装置10を用いる成膜処理によって形成されている。これによって、半導体装置40は、その生産性を向上させることができる。
【0061】
(光電変換装置50)
次に、CVD装置10を用いて製造する光電変換装置50について以下に説明する。図9は、光電変換装置50を示す要部断面図である。
【0062】
図9において、光電変換装置50は、例えば、シリコン膜の光起電力効果を利用するシリコン太陽電池である。光電変換装置50は、ガラス基板等の透光性の基板Bを有し、基板Bの表面には、金属酸化物等からなる透明電極51が形成されている。透明電極51の上側には、p型の非晶質シリコン膜52、i型の非晶質シリコン膜53、n型の非晶質シリコン膜54、及び金属電極55が順に積層されて、透明電極51と金属電極55との間に、シリコン膜からなるp−i−n接合を形成する。各非晶質シリコン膜52,53,54は、それぞれ上記CVD装置10を用いる成膜処理によって形成されている。これによって、光電変換装置50は、その生産性を向上させることができる。
【0063】
上記実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)上記実施形態において、チャンバ本体21は、底部本体21A、第一筒体21B、第二筒体21C、及び蓋体21Dを有し、これらが取外し可能に積重ねられる。チャンバ本体21は、その空間Sに、基板Bを載置するステージ22と、基板Bに対向する複数の触媒体Wと、各触媒体Wに接続される複数の接続端子32とを有し、また、その蓋体21Dには、各接続端子32に対応する複数の押圧端子Tを有する。そして、蓋体21Dは、第二筒体21Cに積重ねられる状態で、対応する接続端子32を押圧する。
【0064】
したがって、CVD装置10は、蓋体21Dを第二筒体21Cから取外すだけで、各押圧端子Tと、対応する接続端子32との間の機械的接続を、同時に解除させることができる。この結果、CVD装置10は、第二室S2内を短時間で開放させることができ、第二室S2に関わるメンテナンス時間を、大幅に短縮させることができる。ひいては、CVD装置10のメンテナンス性を向上させることができる。
【0065】
(2)上記実施形態においては、チャンバ本体21の空間Sが、シャワープレート24によって、第一室S1と第二室S2とに区画される。第一室S1と第二室S2は、それぞれステージ22と接続端子32とを有する。また、触媒体Wは、シャワープレート24の連通孔Hを介して、第一室S1から第二室S2に導出されて、その端部が接続端子32に接続される。
【0066】
したがって、CVD装置10は、蓋体21Dを第二筒体21Cから取外すだけで、第二室S2を露出させることができ、かつ、第一室S1の露出を抑えることができる。すなわち、CVD装置10は、蓋体21Dを第二筒体21Cから取外すだけで、各接続端子32
や各触媒体Wの端部を露出させることができ、かつ、ステージ22や各触媒体Wの中央部の露出を抑えることができる。この結果、CVD装置10は、各接続端子32の交換作業に要する時間を、大幅に短縮させることができ、かつ、成膜空間と大気との接触を抑制させることができる。この結果、接続端子32の交換作業時において、第一室S1の真空度を、より短時間で回復させることができ、CVD装置10のメンテナンス性を、さらに向上させることができる。
【0067】
(3)上記実施形態においては、一対の接続端子32が、それぞれ1つの接続端子ホルダ31に保持される。接続端子ホルダ31は、その案内孔33aに沿って触媒体Wを第一室S1から第二室S2に案内し、連通孔Hに取外し可能に嵌合する。
【0068】
したがって、CVD装置10は、接続端子ホルダ31を連通孔Hから取外すだけで、対応する接続端子32と、対応する触媒体Wとを、シャワープレート24から取外すことができる。また、接続端子32あるいは触媒体Wを交換するとき、第一室S1の露出を、連通孔Hの領域のみに抑えることができる。この結果、接続端子32や触媒体Wの交換作業に要する時間を、大幅に短縮させることができ、かつ、成膜空間の大気との接触を、さらに抑制させることができる。
【0069】
(4)上記実施形態においては、触媒体Wの純度が99.99%以上(より好ましくは99.999%以上)であるため、触媒体Wの燃焼に起因する第一室S1の金属汚染レベルの低減を図ることができる。ひいては、薄膜の汚染レベルを低減させることによって、半導体装置40や光電変換装置50の電気的特性を向上させることができる。
【0070】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態においては、CVD装置を、クラスタ形式のシステムに具体化する。これに限らず、例えば、CVD装置を、1つの触媒CVDチャンバ13に具体化してもよい。すなわち、本発明のCVD装置は、LLチャンバ11や搬送チャンバ12など、基板を搬送するための各種の装置によって限定されるものではない。
【0071】
・上記実施形態において、シャワープレート24は、チャンバ本体21に、第一室S1と第二室S2を区画形成する。これに限らず、例えば、シャワープレート24は、空間Sを区画しない構成であって、共通する1つの空間に、ステージ22や触媒体ユニット30を配置させる構成であってもよい。
【0072】
・上記実施形態においては、チャンバ本体21が、底部本体21A、第一筒体21B、第二筒体21C、及び蓋体21Dを有する。これに限らず、例えば、底部本体21Aと第一筒体21Bとを一体形成する構成であってもよく、さらに、底部本体21A、第一筒体21B、及び第二筒体21Cを一体形成する構成であってもよい。
【0073】
・上記実施形態においては、第二室S2を第一室S1より低圧にする。これに限らず、例えば、第二室S2と第一室S1を同圧にする、あるいは、第一室S1を第二室S2より低圧にする構成であってもよい。すなわち、本発明のCVD装置は、第一室と第二室の差圧に限定されるものではない。
【0074】
・上記実施形態においては、触媒体Wを線材に具体化するが、これに限らず、例えば、触媒体Wを板状に形成してもよい。すなわち、本発明のCVD装置は、触媒体の形状によって限定されるものではなく、触媒体と接続端子の接続部領域が、第二室に配置される構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のCVD装置を模式的に示す平面図。
【図2】同じく、触媒CVDチャンバを示す側断面図。
【図3】同じく、触媒CVDチャンバを示す平面図。
【図4】同じく、接続端子ホルダを示す側断面図。
【図5】同じく、触媒CVDチャンバのメンテナンス方法を示す図。
【図6】同じく、触媒CVDチャンバのメンテナンス方法を示す図。
【図7】同じく、触媒CVDチャンバのメンテナンス方法を示す図。
【図8】同じく、半導体装置を示す側断面図。
【図9】同じく、光電変換装置を示す側断面図。
【符号の説明】
【0076】
B…基板、H…連通孔、S…空間、W…触媒体、S1…第一室、S2…第二室、T…押圧端子、10…CVD装置、21…筐体としてのチャンバ本体、21A…第一筐体を構成する底部本体、21B…第一筐体を構成する第一筒体、21C…第二筐体としての第二筒体、21D…蓋体、22…ステージ、24…シャワープレート、31…接続端子ホルダ、32…接続端子、33a…案内孔、40…半導体装置、50…光電変換装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の筐体と、
前記筐体に取外し可能に積重ねられる蓋体と、
前記筐体内の空間に配置されて基板を載置するステージと、
前記筐体内の空間に配置されて前記基板と対向する複数の触媒体と、
前記筐体内の空間に配置されて前記各触媒体に接続される複数の接続端子と、
前記蓋体に取付けられて、前記蓋体の積重によって前記各接続端子をそれぞれ押圧し、前記蓋体の離脱によって前記各接続端子から離間する複数の押圧端子と、
前記各押圧端子に接続されて前記各押圧端子にそれぞれ所定の電源を供給する複数の電源配線と、
を備えたことを特徴とするCVD装置。
【請求項2】
請求項1に記載のCVD装置であって、
前記筐体は、
有底筒状の第一筐体と、
前記第一筐体に取外し可能に積重ねられる筒状の第二筐体と、
前記第一筐体と前記第二筐体との間に配設されて、前記筐体内の空間を、前記第一筐体内の空間と前記第二筐体内の空間とに区画する板状の隔壁と、を備え、
前記第一筐体内の空間は、前記ステージと前記各触媒体とを収容し、
前記隔壁は、前記第一筐体内の空間と前記第二筐体内の空間とを連通する複数の連通孔を有して、前記各触媒体の端部をそれぞれ前記第二筐体内の空間に導出し、
前記第二筐体内の空間は、前記各接続端子と、前記各接続端子に接続される前記各触媒体の端部とを収容すること、
を特徴とするCVD装置。
【請求項3】
請求項2に記載のCVD装置であって、
前記各接続端子を支持する複数の接続端子ホルダを備え、
前記各接続端子ホルダは、
それぞれ対応する前記連通孔に取外し可能に嵌合して、前記各連通孔の領域で前記第一筐体内の空間と前記第二筐体内の空間とを区画し、前記各連通孔の領域に、それぞれ前記触媒体を前記第一筐体内の空間から前記第二筐体内の空間に案内する複数の案内孔を有すること、
を特徴とするCVD装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のCVD装置であって、
前記隔壁は、
前記第一筐体内の空間に原料ガスを分散して放出するシャワープレートであること、
を特徴とするCVD装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のCVD装置であって、前記触媒体の純度が99.99%以上であることを特徴とするCVD装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のCVD装置であって、前記触媒体の純度が99.
999%以上であることを特徴とするCVD装置。
【請求項7】
シリコンを含む層を備えた半導体装置であって、
前記シリコンを含む層は請求項1〜6のいずれか1つに記載のCVD装置を用いて形成したことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
シリコンを含む層を備えた光電変換装置であって、
前記シリコンを含む層は請求項1〜6のいずれか1つに記載のCVD装置を用いて形成したことを特徴とする光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−283147(P2008−283147A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128518(P2007−128518)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】