III族窒化物を有する装置及びIII族窒化物を有する装置の製造方法
【課題】機械的にパターン形成されたIII族窒化物の層を製造する方法を提供する。
【解決手段】本方法は結晶質基板を提供すること、および基板の平坦な表面上にIII族窒化物の第1の層を形成することを含む。第1の層は単一極性であり、また基板の一部を露出する孔または溝のパターンを有する。次いで、本方法は、第1の層と基板の露出部の上に第2のIII族窒化物の第2の層をエピタキシャル成長することを含む。第1および第2のIII族窒化物は異なる合金組成物を有する。また、本方法は第2の層を塩基の水性溶液に曝し、第2層を機械的にパターン形成することも含む。
【解決手段】本方法は結晶質基板を提供すること、および基板の平坦な表面上にIII族窒化物の第1の層を形成することを含む。第1の層は単一極性であり、また基板の一部を露出する孔または溝のパターンを有する。次いで、本方法は、第1の層と基板の露出部の上に第2のIII族窒化物の第2の層をエピタキシャル成長することを含む。第1および第2のIII族窒化物は異なる合金組成物を有する。また、本方法は第2の層を塩基の水性溶液に曝し、第2層を機械的にパターン形成することも含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶質III族窒化物を組み込んだ電子デバイスおよび光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
結晶質III族窒化物半導体は電子デバイスおよび光デバイスの両方に使用される。
電子デバイスに関しては、フィールド・エミッターを作るためにIII族窒化物が使用されてきた。フィールド・エミッターは鋭い先端を有する伝導性構造体である。鋭い先端は充電されることに応答して高い電界を発生する。高い電界によって先端から電子が放出される。この理由から、フィールド・エミッターのアレイは蛍光体画像スクリーンを駆動することができる。
【0003】
従来技術の一方法によって、III族窒化物からフィールド・エミッターのアレイが製造されてきた。III族窒化物はIII族原子−窒素結合の安定性のため、化学的および機械的に安定している。その安定性はフィールド・エミッターのアレイを使用するデバイスには非常に好ましいことである。
【0004】
従来技術の方法ではフィールド・エミッターはIII族窒化物から成長させる。成長方法は、サファイア基板上に窒化ガリウム(GaN)層をエピタキシャル成長させて、GaN層上にSiO2マスクを形成し、マスクの円形窓の中にピラミッド状のGaNのフィールド・エミッターをエピタキシャル成長させることを含む。成長方法は均一なサイズのフィールド・エミッターを生成するが、フィールド・エミッターは非常に鋭い先端はもたない。より鋭い先端は高い電子放出速度および低い始動電圧を得るために望ましい。
【0005】
光デバイスに関しては、III族窒化物は高い屈折率を有する。高屈折率の材料は光子バンドギャップ構造を製造するのに望ましい。固定光子バンドギャプでは、それらの材料は低屈折率材料で作られた場合の構造よりも大きなフィーチャー寸法を備える光子バンドギャップ構造を作ることを可能にする。
【0006】
平面光子バンドギャップ構造を作る一方法は、III族窒化物の平滑な層をドライ・エッチングすることを含む。都合の悪いことに、III族窒化物の化学的安定性によって、ドライ・エッチング剤のマスク材料に対するIII族窒化物の選択性が低下する。この理由から、ドライ・エッチングはIII族窒化物の層に深い表面浮き彫りを形成しない。その結果、ドライ・エッチング法はIII族窒化物から薄い平面光子バンドギャップ構造しか形成しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
都合の悪いことに、光は薄い平面構造には効率的に端部結合しない。このため、III族窒化物からより高い表面浮き彫りを有する光子バンドギャップ構造を製造することのできる方法をもつことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、機械的にパターン形成した表面は、その中に変形のアレイ、たとえば孔、溝、または物理的に粗い領域を有する。
さまざまな実施形態により、機械的にパターン形成した表面を備えるIII族窒化物層を製造する方法が提供される。パターン形成した表面は、得られる構造に機能性を与える。製造方法は、強塩基による化学作用に対する窒素極性(N−極性)III族窒化物層の感受性を利用する。この方法では、塩基性溶液を使用し、パターン形成された表面が形成されるようにIII族窒化物層を湿式エッチングする。パターン形成した表面の具体例は光子バンドギャップ構造およびフィールド・エミッター・アレイを提供する。
【0009】
第1の態様において、本発明は製造方法を特徴付ける。この方法は結晶質基板を提供すること、および基板の平坦な表面に第1のIII族窒化物層を形成することを含む。第1の層は単一極性であり、また基板の一部を露出する孔または溝のパターンを有する。この方法は、第1層および基板の露出部の両方の上に第2のIII族窒化物層をエピタキシャル成長させることを含む。第1および第2のIII族窒化物は異なる合金組成物を有する。この方法は、第2層を塩基の水性溶液に曝して、第2層を機械的にパターン形成することを含む。
【0010】
第2の態様において、本発明は機械的にパターン形成された表面を備える装置を特徴付ける。この装置は平坦な表面を有する結晶質基板および表面の一部に配置された複数のピラミッド状フィールド・エミッターを含む。この装置は、表面の他の部分に配置された第1のIII族窒化物層と、第1のIII族窒化物層の上に配置された第2のIII族窒化物層とを含む。第2のIII族窒化物層にはピラミッド状の表面構造はない。フィールド・エミッターは第2のIII族窒化物を含む。第1および第2のIII族窒化物は異なる合金組成物を有する。
【0011】
第3の態様において、本発明は結晶質基板および基板の平坦な表面上に配置された機械的にパターン形成された第1のIII族窒化物層を含む装置を特徴付ける。また、この装置は機械的にパターン形成された第1のIII族窒化物層上に配置された第2のIII族窒化物層を含む。第2のIII族窒化物層はその中に柱状孔または溝のパターンを有する。第1および第2のIII族窒化物は異なる合金組成物を有する。
図および文章において、同じ参照番号は同じ要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】III族窒化物のフィールド・エミッター・アレイの平面構造を示す断面図である。
【図1B】III族窒化物フィールド・エミッターのフィールド・エミッター・アレイの別の平面構造を示す断面図である。
【図1C】図1Aまたは1Bのフィールド・エミッション・アレイを組み込んだ平坦な画像ディスプレイ・パネルを示す図である。
【図2】周期的な孔または溝を機械的にパターン形成したIII族窒化物層を組み込んだ構造の断面図である。
【図2A】図2で表される構造を組み込んだ光子バンドギャップ・デバイスの一実施形態の平面図である。
【図2B】図2で表される構造を組み込んだ光子バンドギャップ・デバイスの他の実施形態の平面図である。
【図2C】図2で表される構造を組み込んだ光子バンドギャップ・デバイスの他の実施形態の平面図である。
【図3】図1A〜1B、2、2A、2Bで示されるパターン形成したIII族窒化物層を備える構造を製造する方法を示すフロー図である。
【図4】湿式エッチング時間の短い、図3の方法の実施形態によって作られた構造の走査電子顕微鏡(SEM)斜視図である。
【図5】湿式エッチング時間が中間の長さである、図3の方法の実施形態によって作られた構造のSEM平面図である。
【図6】湿式エッチング時間の長い、図3の方法の実施形態によって作られた構造の平面SEM図である。
【図7】図1A〜1B、2、2A、2Bで示されるパターン形成した層を備えるGaN構造を製造する具体的な方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
III族金属と窒素との間の結合の化学的な安定性によって、III族窒化物半導体は多くのエッチング剤に対して化学的な抵抗性を有する。それにもかかわらず、強塩基の水性溶液はIII族窒化物層の窒素極性表面をエッチングする。その湿式エッチングによって既に極性パターンが形成されたIII族窒化物層を機械的にパターン形成することができる。パターン形成した表面の具体例は、図1A〜1Bに示すフィールド・エミッター・アレイ、および図2、2A、2Bに示す光子バンドギャップ構造を形成する。
【0014】
図1Aはフィールド・エミッター・アレイ10Aを示す。フィールド・エミッター・アレイ10Aは、基板12と、横方向に内部分散した柱状の第1および第2領域14、15の規則的なパターンとを含む。第1および第2領域14、15は基板12の平坦な表面を被覆する。基板12は炭化ケイ素(SiC)または(0001)面サファイアなどの結晶質材料である。第1および第2領域14、15は、それぞれIII族窒化物の(0001)極性および
【数1】
極性形を含む。領域14、15のIII族窒化物は、基板12の平坦な表面17と大幅に格子がずれている。
【0015】
III族窒化物の
【数2】
極性および(0001)極性形はN極性および金属極性形と呼ばれる。N極性および金属極性形は反対の固有極性を有する。N極性および金属極性層の平坦な自由表面は、それぞれ窒素原子およびIII族金属原子の層と終端している。
【0016】
第1および第2柱状領域14、15は物理的に異なる表面を有し、したがって、基板12上にIII族窒化物の機械的にパターン形成された層を形成する。第1領域14は1個または複数のIII族窒化物の六辺形ピラミッド16を含む。したがって、第1領域14は非平坦な露出表面を有し、これは鋭い先端20を含む。第2領域15はIII族窒化物の平滑な層を含み、ピラミッド状構造がない。したがって、第2領域の露出表面22は平滑で平坦である。また、第2領域15の表面22は、第1領域14内の最も高い先端20よりも基板12の平坦な表面17のはるか上部にある。
【0017】
第1領域14の六辺形ピラミッド16は鋭い頂点20を有し、したがってフィールド・エミッターとして機能することができる。頂点先端20の直径は100ナノメートル(nm)未満である。III族窒化物がGaNである実施形態では、ピラミッド16は直径約20nm〜30nmの先端20を有し、平坦な表面17と約56°〜58°の角度を作る面を有する。ピラミッド16は6個の面、すなわち
【数3】
ファセットを有する。
【0018】
単一の第1領域14内で、六辺形ピラミッド16および頂点先端20の分布は不規則である。種々の第1領域14は異なる数の六辺形ピラミッド16を有することができる。内部分散の第2領域15が同じ寸法および規則的な横方向の分布を有するので、第1領域14の寸法は一定である。
【0019】
第2領域15において、第1のIII族窒化物層は第2のIII族窒化物から作られた非常に薄い層18の上に乗っている。第2のIII族窒化物は基板12の平坦な表面17と格子が大幅にずれている。さらに重要なことに、第2のIII族窒化物は基板12の表面17上に金属極性で成長する。
【0020】
図1Bはフィールド・エミッター・アレイ10Bの代替実施形態を示す。フィールド・エミッター・アレイ10Bは、基板12と、図1Aに関して既に説明した、横方向に内部分散した柱状の第1および第2領域14、15の規則的なパターンとを含む。フィールド・エミッター・アレイ10Bでは、第2領域14はフィールド・エミッター・アレイ10Aの場合のように孤立したピラミッド16ではなく、重なり合う六辺形ピラミッド16を含む。また、ピラミッド16は寸法に範囲があり、図1Aのフィールド・エミッター・アレイ10Aのように平坦な表面上に直接ではなく、N極性のIII族窒化物の厚い層19の上に乗っている。フィールド・エミッター・アレイ10Bでは、六辺形ピラミッド16はやはり鋭い頂点先端20を有しており、したがって、フィールド・エミッターとして効率的に機能することができる。頂点先端20は、第2領域15の露出頂部表面22よりもやはり低い。
【0021】
図1Cは平坦な画像ディスプレイ・パネル24の一実施形態を示す。ディスプレイ24はフィールド・エミッター・アレイ10、たとえば図1Aおよび1Bのアレイ10Aまたは10Bを組み込んでいる。また、ディスプレイ24は金属電極26と蛍光スクリーン28も含む。金属電極26はフィールド・エミッター・アレイの第2領域15の平坦な頂部表面22で支持されている。頂部表面22は、先端20自身よりも蛍光スクリーン26により近い金属電極26を面に沿って支持する。そのため、金属電極26はフィールド・エミッター・アレイからの電子の放出を制御することができる。金属電極26は、隣接する第1領域14のフィールド・エミッターの制御ゲートとして機能する。金属電極26を第2領域22上に支持することによって、都合よいことに、電極を個々の先端20上に自己配列する必要がなくなる。先端20の位置は個々の第1領域14中で不規則なので、その配列プロセスは複雑になるであろう。
【0022】
図2は機械的にパターン形成された第1のIII族窒化物層32を有する他の構造30を示す。層32は、結晶質基板12の平坦な表面、たとえばサファイア基板の(0001)面上に配置される。層32は同一の柱状孔または溝34の規則的なアレイを含む。孔または溝34は実質上矩形の断面を有し、層32全体を横断する。層32は機械的にパターン形成されたベース層18の上に乗っている。ベース層18は第1のIII族窒化物とは異なる合金を有する第2の結晶質III族窒化物である。ベース層18は、平坦な表面17上にIII族金属極性であるようにエピタキシャル成長で配列する。
【0023】
層18と32の対に関して、第2および第1のIII族窒化物半導体の具体例では、AlNとGaNの対、またはAlNとAlGaNの対である。
層32の厚さはベース層18の厚さよりも一般に100〜10,000倍厚い。GaN層32の具体例は30μm以上の厚さを有し、AlNベース層18はわずかに約20nm〜30nmの厚さである。ベース層18は、ベース層18の上に配置される他の層の極性を配列するのに十分な厚さであればよい。
【0024】
光デバイスにおいて、通常、層32は平面導波管の光コアとして機能する。導波管は入力光36を端部37を経て受け取り、出力光39を反対の端部39を経て送達する。その層32の光ファイバーおよび他の光導波管への端部結合は、層32がより厚い実施形態においてより効率的である。したがって、このようなより厚い層32によって標準的な光ファイバーおよび導波管への効率的な端部結合が可能になるので、層32を比較的厚く、すなわち30μm以上にできることは有利である。
【0025】
パターン形成した厚い層32は、たとえば厚い光子バンドギャップ構造にすることができる。厚い光子バンドギャップ構造は、ドライ・エッチングで作ることのできるより薄い光子バンドギャップ構造よりも効率的な光端部結合を提供する。
【0026】
図2Aおよび2Bは2種の平面光子バンドギャップ構造30A、30Bを示している。構造30A、30Bの断面図は図2に忠実に表されている。構造30Aおよび30Bは金属極性のIII族窒化物、すなわち(0001)面のIII族窒化物の層32を含む。層32は、図2に示された結晶質基板12の頂部表面上に配置される。層32は実質上同一の柱状形34A、34Bのアレイに機械的にパターン形成される。柱状形34A、34Bは、それぞれ構造30Aおよび30Bの孔と溝である。
【0027】
孔34Aと溝34Bは、それぞれ1個および2個の独立した対称格子を有する規則的なアレイを形成する。このため、孔34Aと溝34Bはそれぞれ層32の屈折率の2次元および1次元的な周期的変調を形成する。屈折率変調は選択された格子長の光子バンドギャップ構造をアレイ中に形成する。媒体中への入力光の有効波長の1/4の奇数倍である格子長が、光子バンドギャップ構造を形成する。
【0028】
図2Cは、孔とIII族窒化物材料層が交換されている以外は図2Aの光子バンドギャップ構造30Aに類似した光子バンドギャップ構造30Cを示している。構造30Cでは、III族窒化物層32Cは独立ピラーの2次元アレイである。III族窒化物ピラーの間は相互接続された溝34Cの2次元パターンである。溝34Cはピラーを互いに分離する。
【0029】
図3は、機械的にパターン形成されたIII族窒化物層を備える構造、たとえば図1A〜1B、2、2A、または2Bで示した構造を製造する方法40を示している。
方法40は、結晶質基板の選択された平坦な表面上に、第1のIII族窒化物の第1の金属極性層を形成することを含む(ステップ42)。層の形成は、第1のIII族窒化物のエピタキシャル成長を実施し、層をリソグラフで機械的にパターン形成することを含む。第1のIII族窒化物の組成物は、エピタキシャル成長によって金属極性が形成されるように選択される。機械的なパターン形成によって、層を貫通して基板の一部を露出する同一の孔または溝の規則的なパターンが形成される。
【0030】
次に、方法40は、第1の層と基板の露出した部分の上に第2のIII族窒化物のより厚い第2の層をエピタキシャル成長することを含む(ステップ44)。第1層の上に第2層が金属極性で成長する。基板の露出部の上に第2層がN極性で成長する。第1および第2のIII族窒化物は異なる合金組成物、たとえばAlNおよびGaNを有し、基板と大幅に格子がずれている。
【0031】
最終的に、方法40は第2層を水酸化カリウム(KOH)または水酸化ナトリウム(NaOH)などの強塩基の水性溶液に曝すことを含む(ステップ46)。水性溶液でN極性表面を選択的にエッチングすることによって第2層が機械的にパターン形成される。強塩基の水性溶液はIII族窒化物の金属極性表面を大きくはエッチングしない。機械的なパターン形成の形状は品質的にエッチング時間とエッチング剤の濃度に依存する。
【0032】
図4は、2モル濃度のKOHの水性溶液で45分間エッチングした縞状極性GaN50の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。GaN層は湿式エッチングの間約90℃の温度に保った。
【0033】
エッチングされたGaN層50はN極性のGaN縞52およびGa極性のGaN縞54を有する。比較的短いエッチングで、Ga極性のGaN縞54から多くの材料を取り去ることなく、N極性のGaN縞52から多くの材料を取り去った。エッチングは、たとえば図1Bに示したように、N極性のGaN縞52中に高密度に集積された六辺形のGaNピラミッドからなる表面を形成する。ピラミッドは種々のサイズと直径約20〜30nm以下の鋭い頂点先端を有する。
【0034】
測定によって、ピラミッドの密度ρΔがエッチング温度Tで、[ρΔ]−1=[ρΔ0]−1exp(−Ea/kBT)(kBはボルツマン定数である)のように変化することが示される。2モル濃度のKOH溶液、15分間のエッチング、温度25℃〜100℃では、測定は活性化エネルギーEaが約0.587eVであることを示す。
【0035】
本発明者等は、部分的には、エッチングされないGa極性GaN縞54のために湿式KOHエッチングによって高密度の六辺形GaNピラミッドが分布されるものと考えている。特に、N極性縞52がGa極性縞で横方向に制限されているので、エッチング剤はその側壁面よりもN極性縞52の頂部表面を攻撃する。N極性のGaN縞52が約7ミクロン(μm)の幅を有する場合、鋭い先端をもつ六辺形GaNピラミッドの高密度集積がKOH湿式エッチングによって形成される。また、六辺形ピラミッドの高密度集積はGaN表面の湿式KOHエッチングからも得られるものと考えられ、N極性のGaN縞の幅は約100μm以下である。しかし、制限のないN極性GaN表面を湿式KOHエッチングすることによって、鋭い先端をもつ六辺形GaNピラミッドの高密度な集積が形成されるとは考えられない。
【0036】
図5は、4モル濃度のKOHの水性溶液で60分間エッチングした縞状極性GaN層50の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。再び、GaN層は湿式エッチングの間約90℃の温度に保った。
【0037】
より強いエッチングによって、孤立した六辺形GaNピラミッド56以外すべての材料がN極性GaN縞52から除去された。湿式エッチングは下地の結晶質サファイア基板で停止した。この中間の長さのエッチングは、少なくとも個々のN極性GaN縞52の内部に図1Aのそれに似たパターンを形成する。これらの領域内では六辺形GaNピラミッド56は不規則に分布する。
【0038】
図6は、4モル濃度のKOH水性溶液で60分間以上エッチングした縞状極性GaN層50の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。再び、GaN層は湿式エッチングの間25℃〜125℃の温度、好ましくは約90℃に保つ。
【0039】
このより長いエッチングによって、元のN極性のGaN縞52を完全に取り除いた。結果として、実質上垂直な溝が、エッチングされないGa極性縞54を分離した。湿式エッチング剤がGa極性GaN層の側壁をゆっくり攻撃するので、Ga極性縞54の側壁は完全な垂直ではない。4モル濃度以上のより高濃度のKOH水性溶液は、Ga極性縞54の露出した側部および端部表面を腐食しやすい。得られる構造は、図2、2A、2Bの構造30、30A、30Bのように、パターン形成されたIII族窒化物のGa極性層を有する。
【0040】
図7は、図1A、1B、2、2A、2Bのように機械的にパターン形成されたGaN構造を製造する方法60を示す。方法60は、平坦なサファイア成長基板を調製すること(ステップ62)、基板上にGa極性で配列した層を成長させパターン形成すること(ステップ64)、および配列層上に極性パターン形成されたGaN層をエピタキシャル成長させること(ステップ66)とを含む。また、方法60は、GaN層を湿式エッチングして、N相領域中のGaNの選択的な除去によって機械的なパターンを形成すること(ステップ68)を含む。
【0041】
ステップ62において、サファイア成長基板の調製は結晶質サファイア基板の(0001)面の表面を洗浄することを含む。洗浄は表面を水性洗浄溶液中で1分間洗うことを含む。約96重量%のH2SO4を有する第1の水性溶液と約30重量%のH2O2を有する第2の水性溶液を混合して水性洗浄溶液が得られる。この混合では、第1溶液の約10容量部を第2溶液の1容量部と混合する。洗浄は洗った表面を脱イオン水で洗浄し、次いでサファイア成長基板をスピン乾燥することも含む。
【0042】
また、ステップ62において、成長基板の調製は、分子ビーム・エピタキシャル(MBE)装置中の緩衝チャンバー内で、約200℃でサファイア基板を脱ガスすることも含む。脱ガスはチャンバー圧力が約5×10−9トル以下になるまで続ける。脱ガスの後、サファイア基板をプラズマ援用MBE装置の成長チャンバーに移す。
【0043】
ステップ64において、Ga極性で配列した層の成長およびパターン形成は、サファイア基板上にAlN層のMBE成長を実施することを含む。MBE成長を実施するには、成長チャンバーの温度を、分当たり約8℃の速度で約720℃の最終温度まで上昇させる。サファイア基板は、基板の背面に堆積した厚さ300nmのチタン層を用いて均一な温度に保たれる。
【0044】
MBE装置はAlN層を約20nm〜30nmの厚さに成長させる。この薄いAlN層は、サファイア基板の露出した表面全体を被覆するのに十分な厚さである。133 boulevard National、Boite Postale 231,92503 Rueil Malmaison FranceのRiber Corporation製の分子ビーム・エピタキシャル成長装置モデル32Pにおいて、成長条件は、Al放出室の温度が約1050℃、窒素流速約2sccm、RF電力が約500ワット(W)である。
【0045】
ステップ64において、パターン形成したAlN層12の形成は、既に成長したAlN層上に約50nmの保護GaNのMBE成長を実施することを含む(サブステップ64b)。GaN層は、続いてMBE成長チャンバーから基板を取り出す際に、下地のAlNを酸化から保護する。GaN層の成長条件は、温度をAl放出室ではなくGa放出室で上昇させることを除き、AlN層のMBE成長のそれと類似している。この成長の間、Ga放出室は約1000℃〜約1020℃の温度である。
【0046】
サファイア基板を約200℃に冷却した後、GaN/AlN層にサファイア基板の選択した部分を露出する規則的な窓のアレイのパターンをリソグラフによって形成する(サブステップ64c)。パターン形成ステップは、GaN層上にフォトレジストのマスクを形成し、次いで従来の塩素ベースのプラズマ・エッチングを実施し、GaN/AlN層のマスクされない部分をエッチング除去することを含む。プラズマ・エッチングの条件例は、RF源電力が約300〜500ワット、電源バイアスが100ボルト〜200ボルト、塩素−アルゴン流速が約10〜25sccm(流れの20%〜50%はアルゴンである)、ガス圧力が約1ミリトル〜約10ミリトルである。プラズマ・エッチングはGaNで覆われたAlN領域の予備選択されたパターンを形成する。
【0047】
プラズマ・エッチングの後、GaNで覆われたAlN領域のパターンは水性HCl溶液で洗浄し、脱イオン水で洗い、窒素を吹き付けて乾燥する。この水性洗浄溶液は約36.5重量%〜約48重量%のHClを含む。次いで、再び上記のステップを用いてサファイア基板をMBE装置に再導入する。
【0048】
ステップ66において、GaN層のエピタキシャル成長は、GaN層のプラズマMBE成長を約2μm以上の厚さまで実施することを含む。MBE成長の間、装置の条件は、Ga放出室の温度が約1000℃〜約1020℃、窒素流速が約2sccm、RF電力が約500ワット(W)である。この成長の間、GaNで覆ったAlN領域はGa極性のGaNの成長を開始し、サファイア基板10の露出領域はN極性のGaNの成長を開始する。
【0049】
ステップ68において、異方性湿式エッチングはGaN層と基板をKOHの水性溶液に浸漬することを含む。湿式エッチングの例は、1〜4モル濃度のKOH水性溶液を使用し、エッチング時間は100℃で約15分間〜60分間である。KOHの濃度およびエッチング時間は図4〜6に示すように、得られる機械的なパターンの品質上の形を決定する。湿式エッチングはN極性を有するGaNを選択的に除去する。やはり、4モル濃度のKOHよりも強い塩基の水性溶液は、元のGaN層のGa極性部の端部面を腐食する。
開示、図面、請求項から、本発明の他の実施形態は当業者には明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶質III族窒化物を組み込んだ電子デバイスおよび光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
結晶質III族窒化物半導体は電子デバイスおよび光デバイスの両方に使用される。
電子デバイスに関しては、フィールド・エミッターを作るためにIII族窒化物が使用されてきた。フィールド・エミッターは鋭い先端を有する伝導性構造体である。鋭い先端は充電されることに応答して高い電界を発生する。高い電界によって先端から電子が放出される。この理由から、フィールド・エミッターのアレイは蛍光体画像スクリーンを駆動することができる。
【0003】
従来技術の一方法によって、III族窒化物からフィールド・エミッターのアレイが製造されてきた。III族窒化物はIII族原子−窒素結合の安定性のため、化学的および機械的に安定している。その安定性はフィールド・エミッターのアレイを使用するデバイスには非常に好ましいことである。
【0004】
従来技術の方法ではフィールド・エミッターはIII族窒化物から成長させる。成長方法は、サファイア基板上に窒化ガリウム(GaN)層をエピタキシャル成長させて、GaN層上にSiO2マスクを形成し、マスクの円形窓の中にピラミッド状のGaNのフィールド・エミッターをエピタキシャル成長させることを含む。成長方法は均一なサイズのフィールド・エミッターを生成するが、フィールド・エミッターは非常に鋭い先端はもたない。より鋭い先端は高い電子放出速度および低い始動電圧を得るために望ましい。
【0005】
光デバイスに関しては、III族窒化物は高い屈折率を有する。高屈折率の材料は光子バンドギャップ構造を製造するのに望ましい。固定光子バンドギャプでは、それらの材料は低屈折率材料で作られた場合の構造よりも大きなフィーチャー寸法を備える光子バンドギャップ構造を作ることを可能にする。
【0006】
平面光子バンドギャップ構造を作る一方法は、III族窒化物の平滑な層をドライ・エッチングすることを含む。都合の悪いことに、III族窒化物の化学的安定性によって、ドライ・エッチング剤のマスク材料に対するIII族窒化物の選択性が低下する。この理由から、ドライ・エッチングはIII族窒化物の層に深い表面浮き彫りを形成しない。その結果、ドライ・エッチング法はIII族窒化物から薄い平面光子バンドギャップ構造しか形成しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
都合の悪いことに、光は薄い平面構造には効率的に端部結合しない。このため、III族窒化物からより高い表面浮き彫りを有する光子バンドギャップ構造を製造することのできる方法をもつことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、機械的にパターン形成した表面は、その中に変形のアレイ、たとえば孔、溝、または物理的に粗い領域を有する。
さまざまな実施形態により、機械的にパターン形成した表面を備えるIII族窒化物層を製造する方法が提供される。パターン形成した表面は、得られる構造に機能性を与える。製造方法は、強塩基による化学作用に対する窒素極性(N−極性)III族窒化物層の感受性を利用する。この方法では、塩基性溶液を使用し、パターン形成された表面が形成されるようにIII族窒化物層を湿式エッチングする。パターン形成した表面の具体例は光子バンドギャップ構造およびフィールド・エミッター・アレイを提供する。
【0009】
第1の態様において、本発明は製造方法を特徴付ける。この方法は結晶質基板を提供すること、および基板の平坦な表面に第1のIII族窒化物層を形成することを含む。第1の層は単一極性であり、また基板の一部を露出する孔または溝のパターンを有する。この方法は、第1層および基板の露出部の両方の上に第2のIII族窒化物層をエピタキシャル成長させることを含む。第1および第2のIII族窒化物は異なる合金組成物を有する。この方法は、第2層を塩基の水性溶液に曝して、第2層を機械的にパターン形成することを含む。
【0010】
第2の態様において、本発明は機械的にパターン形成された表面を備える装置を特徴付ける。この装置は平坦な表面を有する結晶質基板および表面の一部に配置された複数のピラミッド状フィールド・エミッターを含む。この装置は、表面の他の部分に配置された第1のIII族窒化物層と、第1のIII族窒化物層の上に配置された第2のIII族窒化物層とを含む。第2のIII族窒化物層にはピラミッド状の表面構造はない。フィールド・エミッターは第2のIII族窒化物を含む。第1および第2のIII族窒化物は異なる合金組成物を有する。
【0011】
第3の態様において、本発明は結晶質基板および基板の平坦な表面上に配置された機械的にパターン形成された第1のIII族窒化物層を含む装置を特徴付ける。また、この装置は機械的にパターン形成された第1のIII族窒化物層上に配置された第2のIII族窒化物層を含む。第2のIII族窒化物層はその中に柱状孔または溝のパターンを有する。第1および第2のIII族窒化物は異なる合金組成物を有する。
図および文章において、同じ参照番号は同じ要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】III族窒化物のフィールド・エミッター・アレイの平面構造を示す断面図である。
【図1B】III族窒化物フィールド・エミッターのフィールド・エミッター・アレイの別の平面構造を示す断面図である。
【図1C】図1Aまたは1Bのフィールド・エミッション・アレイを組み込んだ平坦な画像ディスプレイ・パネルを示す図である。
【図2】周期的な孔または溝を機械的にパターン形成したIII族窒化物層を組み込んだ構造の断面図である。
【図2A】図2で表される構造を組み込んだ光子バンドギャップ・デバイスの一実施形態の平面図である。
【図2B】図2で表される構造を組み込んだ光子バンドギャップ・デバイスの他の実施形態の平面図である。
【図2C】図2で表される構造を組み込んだ光子バンドギャップ・デバイスの他の実施形態の平面図である。
【図3】図1A〜1B、2、2A、2Bで示されるパターン形成したIII族窒化物層を備える構造を製造する方法を示すフロー図である。
【図4】湿式エッチング時間の短い、図3の方法の実施形態によって作られた構造の走査電子顕微鏡(SEM)斜視図である。
【図5】湿式エッチング時間が中間の長さである、図3の方法の実施形態によって作られた構造のSEM平面図である。
【図6】湿式エッチング時間の長い、図3の方法の実施形態によって作られた構造の平面SEM図である。
【図7】図1A〜1B、2、2A、2Bで示されるパターン形成した層を備えるGaN構造を製造する具体的な方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
III族金属と窒素との間の結合の化学的な安定性によって、III族窒化物半導体は多くのエッチング剤に対して化学的な抵抗性を有する。それにもかかわらず、強塩基の水性溶液はIII族窒化物層の窒素極性表面をエッチングする。その湿式エッチングによって既に極性パターンが形成されたIII族窒化物層を機械的にパターン形成することができる。パターン形成した表面の具体例は、図1A〜1Bに示すフィールド・エミッター・アレイ、および図2、2A、2Bに示す光子バンドギャップ構造を形成する。
【0014】
図1Aはフィールド・エミッター・アレイ10Aを示す。フィールド・エミッター・アレイ10Aは、基板12と、横方向に内部分散した柱状の第1および第2領域14、15の規則的なパターンとを含む。第1および第2領域14、15は基板12の平坦な表面を被覆する。基板12は炭化ケイ素(SiC)または(0001)面サファイアなどの結晶質材料である。第1および第2領域14、15は、それぞれIII族窒化物の(0001)極性および
【数1】
極性形を含む。領域14、15のIII族窒化物は、基板12の平坦な表面17と大幅に格子がずれている。
【0015】
III族窒化物の
【数2】
極性および(0001)極性形はN極性および金属極性形と呼ばれる。N極性および金属極性形は反対の固有極性を有する。N極性および金属極性層の平坦な自由表面は、それぞれ窒素原子およびIII族金属原子の層と終端している。
【0016】
第1および第2柱状領域14、15は物理的に異なる表面を有し、したがって、基板12上にIII族窒化物の機械的にパターン形成された層を形成する。第1領域14は1個または複数のIII族窒化物の六辺形ピラミッド16を含む。したがって、第1領域14は非平坦な露出表面を有し、これは鋭い先端20を含む。第2領域15はIII族窒化物の平滑な層を含み、ピラミッド状構造がない。したがって、第2領域の露出表面22は平滑で平坦である。また、第2領域15の表面22は、第1領域14内の最も高い先端20よりも基板12の平坦な表面17のはるか上部にある。
【0017】
第1領域14の六辺形ピラミッド16は鋭い頂点20を有し、したがってフィールド・エミッターとして機能することができる。頂点先端20の直径は100ナノメートル(nm)未満である。III族窒化物がGaNである実施形態では、ピラミッド16は直径約20nm〜30nmの先端20を有し、平坦な表面17と約56°〜58°の角度を作る面を有する。ピラミッド16は6個の面、すなわち
【数3】
ファセットを有する。
【0018】
単一の第1領域14内で、六辺形ピラミッド16および頂点先端20の分布は不規則である。種々の第1領域14は異なる数の六辺形ピラミッド16を有することができる。内部分散の第2領域15が同じ寸法および規則的な横方向の分布を有するので、第1領域14の寸法は一定である。
【0019】
第2領域15において、第1のIII族窒化物層は第2のIII族窒化物から作られた非常に薄い層18の上に乗っている。第2のIII族窒化物は基板12の平坦な表面17と格子が大幅にずれている。さらに重要なことに、第2のIII族窒化物は基板12の表面17上に金属極性で成長する。
【0020】
図1Bはフィールド・エミッター・アレイ10Bの代替実施形態を示す。フィールド・エミッター・アレイ10Bは、基板12と、図1Aに関して既に説明した、横方向に内部分散した柱状の第1および第2領域14、15の規則的なパターンとを含む。フィールド・エミッター・アレイ10Bでは、第2領域14はフィールド・エミッター・アレイ10Aの場合のように孤立したピラミッド16ではなく、重なり合う六辺形ピラミッド16を含む。また、ピラミッド16は寸法に範囲があり、図1Aのフィールド・エミッター・アレイ10Aのように平坦な表面上に直接ではなく、N極性のIII族窒化物の厚い層19の上に乗っている。フィールド・エミッター・アレイ10Bでは、六辺形ピラミッド16はやはり鋭い頂点先端20を有しており、したがって、フィールド・エミッターとして効率的に機能することができる。頂点先端20は、第2領域15の露出頂部表面22よりもやはり低い。
【0021】
図1Cは平坦な画像ディスプレイ・パネル24の一実施形態を示す。ディスプレイ24はフィールド・エミッター・アレイ10、たとえば図1Aおよび1Bのアレイ10Aまたは10Bを組み込んでいる。また、ディスプレイ24は金属電極26と蛍光スクリーン28も含む。金属電極26はフィールド・エミッター・アレイの第2領域15の平坦な頂部表面22で支持されている。頂部表面22は、先端20自身よりも蛍光スクリーン26により近い金属電極26を面に沿って支持する。そのため、金属電極26はフィールド・エミッター・アレイからの電子の放出を制御することができる。金属電極26は、隣接する第1領域14のフィールド・エミッターの制御ゲートとして機能する。金属電極26を第2領域22上に支持することによって、都合よいことに、電極を個々の先端20上に自己配列する必要がなくなる。先端20の位置は個々の第1領域14中で不規則なので、その配列プロセスは複雑になるであろう。
【0022】
図2は機械的にパターン形成された第1のIII族窒化物層32を有する他の構造30を示す。層32は、結晶質基板12の平坦な表面、たとえばサファイア基板の(0001)面上に配置される。層32は同一の柱状孔または溝34の規則的なアレイを含む。孔または溝34は実質上矩形の断面を有し、層32全体を横断する。層32は機械的にパターン形成されたベース層18の上に乗っている。ベース層18は第1のIII族窒化物とは異なる合金を有する第2の結晶質III族窒化物である。ベース層18は、平坦な表面17上にIII族金属極性であるようにエピタキシャル成長で配列する。
【0023】
層18と32の対に関して、第2および第1のIII族窒化物半導体の具体例では、AlNとGaNの対、またはAlNとAlGaNの対である。
層32の厚さはベース層18の厚さよりも一般に100〜10,000倍厚い。GaN層32の具体例は30μm以上の厚さを有し、AlNベース層18はわずかに約20nm〜30nmの厚さである。ベース層18は、ベース層18の上に配置される他の層の極性を配列するのに十分な厚さであればよい。
【0024】
光デバイスにおいて、通常、層32は平面導波管の光コアとして機能する。導波管は入力光36を端部37を経て受け取り、出力光39を反対の端部39を経て送達する。その層32の光ファイバーおよび他の光導波管への端部結合は、層32がより厚い実施形態においてより効率的である。したがって、このようなより厚い層32によって標準的な光ファイバーおよび導波管への効率的な端部結合が可能になるので、層32を比較的厚く、すなわち30μm以上にできることは有利である。
【0025】
パターン形成した厚い層32は、たとえば厚い光子バンドギャップ構造にすることができる。厚い光子バンドギャップ構造は、ドライ・エッチングで作ることのできるより薄い光子バンドギャップ構造よりも効率的な光端部結合を提供する。
【0026】
図2Aおよび2Bは2種の平面光子バンドギャップ構造30A、30Bを示している。構造30A、30Bの断面図は図2に忠実に表されている。構造30Aおよび30Bは金属極性のIII族窒化物、すなわち(0001)面のIII族窒化物の層32を含む。層32は、図2に示された結晶質基板12の頂部表面上に配置される。層32は実質上同一の柱状形34A、34Bのアレイに機械的にパターン形成される。柱状形34A、34Bは、それぞれ構造30Aおよび30Bの孔と溝である。
【0027】
孔34Aと溝34Bは、それぞれ1個および2個の独立した対称格子を有する規則的なアレイを形成する。このため、孔34Aと溝34Bはそれぞれ層32の屈折率の2次元および1次元的な周期的変調を形成する。屈折率変調は選択された格子長の光子バンドギャップ構造をアレイ中に形成する。媒体中への入力光の有効波長の1/4の奇数倍である格子長が、光子バンドギャップ構造を形成する。
【0028】
図2Cは、孔とIII族窒化物材料層が交換されている以外は図2Aの光子バンドギャップ構造30Aに類似した光子バンドギャップ構造30Cを示している。構造30Cでは、III族窒化物層32Cは独立ピラーの2次元アレイである。III族窒化物ピラーの間は相互接続された溝34Cの2次元パターンである。溝34Cはピラーを互いに分離する。
【0029】
図3は、機械的にパターン形成されたIII族窒化物層を備える構造、たとえば図1A〜1B、2、2A、または2Bで示した構造を製造する方法40を示している。
方法40は、結晶質基板の選択された平坦な表面上に、第1のIII族窒化物の第1の金属極性層を形成することを含む(ステップ42)。層の形成は、第1のIII族窒化物のエピタキシャル成長を実施し、層をリソグラフで機械的にパターン形成することを含む。第1のIII族窒化物の組成物は、エピタキシャル成長によって金属極性が形成されるように選択される。機械的なパターン形成によって、層を貫通して基板の一部を露出する同一の孔または溝の規則的なパターンが形成される。
【0030】
次に、方法40は、第1の層と基板の露出した部分の上に第2のIII族窒化物のより厚い第2の層をエピタキシャル成長することを含む(ステップ44)。第1層の上に第2層が金属極性で成長する。基板の露出部の上に第2層がN極性で成長する。第1および第2のIII族窒化物は異なる合金組成物、たとえばAlNおよびGaNを有し、基板と大幅に格子がずれている。
【0031】
最終的に、方法40は第2層を水酸化カリウム(KOH)または水酸化ナトリウム(NaOH)などの強塩基の水性溶液に曝すことを含む(ステップ46)。水性溶液でN極性表面を選択的にエッチングすることによって第2層が機械的にパターン形成される。強塩基の水性溶液はIII族窒化物の金属極性表面を大きくはエッチングしない。機械的なパターン形成の形状は品質的にエッチング時間とエッチング剤の濃度に依存する。
【0032】
図4は、2モル濃度のKOHの水性溶液で45分間エッチングした縞状極性GaN50の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。GaN層は湿式エッチングの間約90℃の温度に保った。
【0033】
エッチングされたGaN層50はN極性のGaN縞52およびGa極性のGaN縞54を有する。比較的短いエッチングで、Ga極性のGaN縞54から多くの材料を取り去ることなく、N極性のGaN縞52から多くの材料を取り去った。エッチングは、たとえば図1Bに示したように、N極性のGaN縞52中に高密度に集積された六辺形のGaNピラミッドからなる表面を形成する。ピラミッドは種々のサイズと直径約20〜30nm以下の鋭い頂点先端を有する。
【0034】
測定によって、ピラミッドの密度ρΔがエッチング温度Tで、[ρΔ]−1=[ρΔ0]−1exp(−Ea/kBT)(kBはボルツマン定数である)のように変化することが示される。2モル濃度のKOH溶液、15分間のエッチング、温度25℃〜100℃では、測定は活性化エネルギーEaが約0.587eVであることを示す。
【0035】
本発明者等は、部分的には、エッチングされないGa極性GaN縞54のために湿式KOHエッチングによって高密度の六辺形GaNピラミッドが分布されるものと考えている。特に、N極性縞52がGa極性縞で横方向に制限されているので、エッチング剤はその側壁面よりもN極性縞52の頂部表面を攻撃する。N極性のGaN縞52が約7ミクロン(μm)の幅を有する場合、鋭い先端をもつ六辺形GaNピラミッドの高密度集積がKOH湿式エッチングによって形成される。また、六辺形ピラミッドの高密度集積はGaN表面の湿式KOHエッチングからも得られるものと考えられ、N極性のGaN縞の幅は約100μm以下である。しかし、制限のないN極性GaN表面を湿式KOHエッチングすることによって、鋭い先端をもつ六辺形GaNピラミッドの高密度な集積が形成されるとは考えられない。
【0036】
図5は、4モル濃度のKOHの水性溶液で60分間エッチングした縞状極性GaN層50の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。再び、GaN層は湿式エッチングの間約90℃の温度に保った。
【0037】
より強いエッチングによって、孤立した六辺形GaNピラミッド56以外すべての材料がN極性GaN縞52から除去された。湿式エッチングは下地の結晶質サファイア基板で停止した。この中間の長さのエッチングは、少なくとも個々のN極性GaN縞52の内部に図1Aのそれに似たパターンを形成する。これらの領域内では六辺形GaNピラミッド56は不規則に分布する。
【0038】
図6は、4モル濃度のKOH水性溶液で60分間以上エッチングした縞状極性GaN層50の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。再び、GaN層は湿式エッチングの間25℃〜125℃の温度、好ましくは約90℃に保つ。
【0039】
このより長いエッチングによって、元のN極性のGaN縞52を完全に取り除いた。結果として、実質上垂直な溝が、エッチングされないGa極性縞54を分離した。湿式エッチング剤がGa極性GaN層の側壁をゆっくり攻撃するので、Ga極性縞54の側壁は完全な垂直ではない。4モル濃度以上のより高濃度のKOH水性溶液は、Ga極性縞54の露出した側部および端部表面を腐食しやすい。得られる構造は、図2、2A、2Bの構造30、30A、30Bのように、パターン形成されたIII族窒化物のGa極性層を有する。
【0040】
図7は、図1A、1B、2、2A、2Bのように機械的にパターン形成されたGaN構造を製造する方法60を示す。方法60は、平坦なサファイア成長基板を調製すること(ステップ62)、基板上にGa極性で配列した層を成長させパターン形成すること(ステップ64)、および配列層上に極性パターン形成されたGaN層をエピタキシャル成長させること(ステップ66)とを含む。また、方法60は、GaN層を湿式エッチングして、N相領域中のGaNの選択的な除去によって機械的なパターンを形成すること(ステップ68)を含む。
【0041】
ステップ62において、サファイア成長基板の調製は結晶質サファイア基板の(0001)面の表面を洗浄することを含む。洗浄は表面を水性洗浄溶液中で1分間洗うことを含む。約96重量%のH2SO4を有する第1の水性溶液と約30重量%のH2O2を有する第2の水性溶液を混合して水性洗浄溶液が得られる。この混合では、第1溶液の約10容量部を第2溶液の1容量部と混合する。洗浄は洗った表面を脱イオン水で洗浄し、次いでサファイア成長基板をスピン乾燥することも含む。
【0042】
また、ステップ62において、成長基板の調製は、分子ビーム・エピタキシャル(MBE)装置中の緩衝チャンバー内で、約200℃でサファイア基板を脱ガスすることも含む。脱ガスはチャンバー圧力が約5×10−9トル以下になるまで続ける。脱ガスの後、サファイア基板をプラズマ援用MBE装置の成長チャンバーに移す。
【0043】
ステップ64において、Ga極性で配列した層の成長およびパターン形成は、サファイア基板上にAlN層のMBE成長を実施することを含む。MBE成長を実施するには、成長チャンバーの温度を、分当たり約8℃の速度で約720℃の最終温度まで上昇させる。サファイア基板は、基板の背面に堆積した厚さ300nmのチタン層を用いて均一な温度に保たれる。
【0044】
MBE装置はAlN層を約20nm〜30nmの厚さに成長させる。この薄いAlN層は、サファイア基板の露出した表面全体を被覆するのに十分な厚さである。133 boulevard National、Boite Postale 231,92503 Rueil Malmaison FranceのRiber Corporation製の分子ビーム・エピタキシャル成長装置モデル32Pにおいて、成長条件は、Al放出室の温度が約1050℃、窒素流速約2sccm、RF電力が約500ワット(W)である。
【0045】
ステップ64において、パターン形成したAlN層12の形成は、既に成長したAlN層上に約50nmの保護GaNのMBE成長を実施することを含む(サブステップ64b)。GaN層は、続いてMBE成長チャンバーから基板を取り出す際に、下地のAlNを酸化から保護する。GaN層の成長条件は、温度をAl放出室ではなくGa放出室で上昇させることを除き、AlN層のMBE成長のそれと類似している。この成長の間、Ga放出室は約1000℃〜約1020℃の温度である。
【0046】
サファイア基板を約200℃に冷却した後、GaN/AlN層にサファイア基板の選択した部分を露出する規則的な窓のアレイのパターンをリソグラフによって形成する(サブステップ64c)。パターン形成ステップは、GaN層上にフォトレジストのマスクを形成し、次いで従来の塩素ベースのプラズマ・エッチングを実施し、GaN/AlN層のマスクされない部分をエッチング除去することを含む。プラズマ・エッチングの条件例は、RF源電力が約300〜500ワット、電源バイアスが100ボルト〜200ボルト、塩素−アルゴン流速が約10〜25sccm(流れの20%〜50%はアルゴンである)、ガス圧力が約1ミリトル〜約10ミリトルである。プラズマ・エッチングはGaNで覆われたAlN領域の予備選択されたパターンを形成する。
【0047】
プラズマ・エッチングの後、GaNで覆われたAlN領域のパターンは水性HCl溶液で洗浄し、脱イオン水で洗い、窒素を吹き付けて乾燥する。この水性洗浄溶液は約36.5重量%〜約48重量%のHClを含む。次いで、再び上記のステップを用いてサファイア基板をMBE装置に再導入する。
【0048】
ステップ66において、GaN層のエピタキシャル成長は、GaN層のプラズマMBE成長を約2μm以上の厚さまで実施することを含む。MBE成長の間、装置の条件は、Ga放出室の温度が約1000℃〜約1020℃、窒素流速が約2sccm、RF電力が約500ワット(W)である。この成長の間、GaNで覆ったAlN領域はGa極性のGaNの成長を開始し、サファイア基板10の露出領域はN極性のGaNの成長を開始する。
【0049】
ステップ68において、異方性湿式エッチングはGaN層と基板をKOHの水性溶液に浸漬することを含む。湿式エッチングの例は、1〜4モル濃度のKOH水性溶液を使用し、エッチング時間は100℃で約15分間〜60分間である。KOHの濃度およびエッチング時間は図4〜6に示すように、得られる機械的なパターンの品質上の形を決定する。湿式エッチングはN極性を有するGaNを選択的に除去する。やはり、4モル濃度のKOHよりも強い塩基の水性溶液は、元のGaN層のGa極性部の端部面を腐食する。
開示、図面、請求項から、本発明の他の実施形態は当業者には明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造を製造する方法であって、
平坦な表面を有する結晶質基板を提供し、
前記結晶質基板の前記表面上にIII族窒化物の結晶質層を形成し、そして、
前記結晶質層の第1の側腹領域の窒素極性表面から複数のピラミッドが形成され、前記ピラミッドは前記結晶質層の隣接する第2の側腹領域には生じないように、前記結晶質層を塩基の溶液に曝して前記結晶質層をエッチングすることを含み、前記第2の側腹領域は前記第1の側腹領域の間に位置し、
製造された構造は、前記結晶質層の前記第2の側腹領域の平坦な表面上に位置する金属電極を有する、方法。
【請求項2】
前記III族窒化物はガリウムからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結晶質層の形成は前記結晶質層のエピタキシャル成長を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ピラミッドが空間的に重なり合う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
頂部表面を有するIII族窒化物の層を含み、前記頂部表面は、前記III族窒化物の複数のピラミッド構造を有し、前記ピラミッド構造が、窒素極性を有する前記頂部表面の一部に位置し、さらに、
前記ピラミッド構造を有する前記層の部分間の前記層の平坦な表面上に直接位置する金属電極を含み、前記頂部表面の前記ピラミッド構造は前記電極とは物理的に分離する、装置。
【請求項6】
前記III族窒化物はガリウムからなる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ピラミッド構造が空間的に重なり合う、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記ピラミッド構造は不規則に分布する、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記頂部表面と向かい合う蛍光スクリーンをさらに含む、請求項5に記載の装置。
【請求項1】
構造を製造する方法であって、
平坦な表面を有する結晶質基板を提供し、
前記結晶質基板の前記表面上にIII族窒化物の結晶質層を形成し、そして、
前記結晶質層の第1の側腹領域の窒素極性表面から複数のピラミッドが形成され、前記ピラミッドは前記結晶質層の隣接する第2の側腹領域には生じないように、前記結晶質層を塩基の溶液に曝して前記結晶質層をエッチングすることを含み、前記第2の側腹領域は前記第1の側腹領域の間に位置し、
製造された構造は、前記結晶質層の前記第2の側腹領域の平坦な表面上に位置する金属電極を有する、方法。
【請求項2】
前記III族窒化物はガリウムからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結晶質層の形成は前記結晶質層のエピタキシャル成長を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ピラミッドが空間的に重なり合う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
頂部表面を有するIII族窒化物の層を含み、前記頂部表面は、前記III族窒化物の複数のピラミッド構造を有し、前記ピラミッド構造が、窒素極性を有する前記頂部表面の一部に位置し、さらに、
前記ピラミッド構造を有する前記層の部分間の前記層の平坦な表面上に直接位置する金属電極を含み、前記頂部表面の前記ピラミッド構造は前記電極とは物理的に分離する、装置。
【請求項6】
前記III族窒化物はガリウムからなる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ピラミッド構造が空間的に重なり合う、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記ピラミッド構造は不規則に分布する、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記頂部表面と向かい合う蛍光スクリーンをさらに含む、請求項5に記載の装置。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図7】
【図4】
【図5】
【図6】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図7】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2011−233531(P2011−233531A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127281(P2011−127281)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【分割の表示】特願2004−92271(P2004−92271)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【分割の表示】特願2004−92271(P2004−92271)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】
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