説明

III族窒化物デバイスおよび回路

ゲート接続接地電界プレートを有するIII族窒化物ベースの高電子移動度トランジスタを説明する。ゲート接続接地電界プレートデバイスは、ミラー容量効果を最小化することができる。トランジスタは、高電圧空乏モードトランジスタとして形成し、低電圧エンハンスメントモードトランジスタと組み合わせて、単一の高電圧エンハンスメントモードトランジスタとして動作する部品を形成するために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体電子装置に関する。具体的には、電界プレートを有するIII族窒化物HEMTデバイスおよびこれを備える回路に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、パワーMOSFETや絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のようなデバイスを含む近年の電力半導体デバイスは、通常はシリコン(Si)半導体材料を用いて製造されてきた。より最近では、特性がさらに優れているため、炭化ケイ素(SiC)パワーデバイスが研究されている。III族窒化物(III−N)半導体デバイスは、大電流を伝搬させ、高電圧をサポートし、非常に低い抵抗、高電圧デバイス動作、高速スイッチング時間を提供する有望な候補として浮上している。図1に示す、一般的なIII族窒化物高電子移動度トランジスタ(HEMT)は、基板10、基板上方に配置されたGaNなどのチャネル層11、チャネル層上方に配置されたAlGa1−xNなどのバリア層12を備える。2次元電子ガス(2DEG)チャネル19は、チャネル層11内のチャネル層11とバリア層12の間の境界近傍に導入されている。ソース電極14およびドレイン電極115はそれぞれ、2DEGへの抵抗接触を形成する。ゲート電極16は、2DEGの一部を、ゲート領域、すなわちゲート電極16の直下で変調する。
【0003】
電界プレートは、III族窒化物デバイスにおいて、デバイスの高電界領域内で電界を形成するために一般に用いられる。電界プレートは、ピーク電界を減衰させ、デバイス絶縁破壊電圧を高めることにより、高電圧の動作を可能とする。電界プレートを有するIII族窒化物HEMTの例は、図2と図3に示されている。図2のデバイスは、電界プレート18、絶縁層13を備える。電界プレート18は、ゲート電極16に接続されている。すなわち、ゲート接続電界プレートである。絶縁層13は、例えばSiC層であり、電界プレートとバリア層12の間に配置されている。電界プレート18は、ゲート電極16と同じ材料を含むか、またはこれを用いて形成することができる。ゲート接続電界プレートを備えたデバイスの製造工程は、通常はその他の電界プレート構成を備えるデバイスの製造工程と比べると、比較的単純である。これは、個別の電界プレートおよびゲート電極層を形成する必要がなく、したがってゲート電極と電界プレートの積層を単一の工程で実施できるからである。しかし、図2に示すゲート接続電界プレート18は、ゲート16とドレイン電極15の間の容量を増加させ、これによりデバイスの有効動作速度が減少する。この、高周波応答の減少にともなうデバイス入出力間の容量増加は、ミラー(Miller)容量効果またはミラー効果として知られている。図2に示すIII族窒化物HEMTが用いられる用途においては、図に示すように、ソース電極14は通常は接地される。
【0004】
図3に示すデバイスにおいて、電界プレート18はソース電極14に接続されている。すなわち、電界プレート18はソース接続電界プレートである。電界プレートをソース電極に接続することにより、ミラー効果を減衰させ、または除去することができる。これは、入力信号がゲート電極に印加されたとき、電界プレートへの電圧が固定されるからである。この構成の下では、入出力間の容量はソース−ドレイン間容量であり、通常は小さいのでデバイス性能への影響は無視できる。しかし、このデバイスの製造工程は、図2のデバイスのようなゲート接続電界プレートを備えたデバイスの製造工程よりも複雑である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示では、III族窒化物高電子移動度トランジスタ(HEMT)を説明する。トランジスタは、一連のIII族窒化物層を有する。これは、2DEGチャネル、ゲート領域内の一連のIII族窒化物層の第1面上のゲート電極、ゲート電極に電気的に接続され、電気絶縁層によってIII族窒化物層から分離された電界プレート、および電界プレートとゲート電極に電気的に接続され、ゲート接続接地電界プレートを形成する接地接続を形成する。
【0006】
ここで説明するトランジスタは、トランジスタのソース電極およびトランジスタのゲート電極をバイアスすることによって動作させることができる。バイアス動作の間、トランジスタの入出力間の容量は、ゲート接続接地電界プレートを備えていない同様のトランジスタと比較して最小化される。
【0007】
回路は、低電圧エンハンスメントモードトランジスタとともに、ここで説明する空乏モードトランジスタの1つを備えることができる。空乏モードトランジスタのソースは、エンハンスメントモードトランジスタのドレインに電気的に接続されている。
【0008】
部品は、基板とともに、ここで説明する回路の1つを備えることができる。基板は、接地接続として導体層を備える。空乏モードトランジスタとエンハンスメントモードトランジスタは、基板に取り付けられる。エンハンスメントモードトランジスタのソース電極は、接地接続に電気的に接続される。
【0009】
その他の回路は、ダイオードとともに、ここで説明するトランジスタを備えることができる。トランジスタのソースは、ダイオードのカソードに電気的に接続される。
【0010】
ここで説明するトランジスタ、回路、部品の様々な実施形態は、以下で説明する特徴の1以上を備えることができる。一連のIII族窒化物層は、少なくとも3つのIII族窒化物層を備えることができる。3つのIII族窒化物層は、それぞれ異なる組成を有する。少なくとも1つの層はAlNである。2DEGチャネルは第1の2DEGチャネルとなり、一連のIII族窒化物層は第1の2DEGチャネルを一連のIII族窒化物層のチャネルIII族窒化物層内に形成することができる。第2の2DEGチャネルは、一連のIII族窒化物層内に、第1の2DEGチャネルと並行に配置することができる。絶縁層は、ゲート電極と一連のIII族窒化物層の間に配置することができる。ゲート凹部は、ゲート領域内の一連のIII族窒化物層内に配置することができる。ゲート電極の少なくとも一部は、ゲート凹部内に配置される。電界プレートは、一連のIII族窒化物層からの距離がそれぞれ異なる複数部位を備えることができる。接地接続は、トランジスタの横幅よりも大きい横幅を有する導電層で形成することができる。電界プレートは、傾斜電界プレートとして形成することができる。トランジスタは、空乏モードトランジスタとして形成することができる。エンハンスメントモードトランジスタのソースは、接地することができる。エンハンスメントモードトランジスタは垂直デバイスとして形成することができ、空乏モードトランジスタは水平デバイスとして形成することができる。絶縁層は、エンハンスメントモードトランジスタと基板の間に配置することができる。絶縁層は、エンハンスメントモードトランジスタを基板から電気的に絶縁する。エンハンスメントモードトランジスタは、一連のトランジスタ層の一面にゲート電極とドレイン電極を備え、一連の層の反対面にソース電極を備えた垂直デバイスとして形成することができる。エンハンスメントモードトランジスタのソース電極は、基板の接地接続の直上に配置することができる。部品は、基板上にソースリード、ゲートリード、ドレインリードを備えることができる。ソースリードは、基板の導体層に電気的に接続することができる。ゲートリードは、エンハンスメントモードトランジスタのゲート電極に電気的に接続し、基盤の導体層から電気的に絶縁することができる。ドレインリードは、空乏モードトランジスタのドレイン電極に電気的に接続し、基板の導体層から電気的に絶縁することができる。回路は、ダイオードを備えることができる。ダイオードのアノードは、空乏モードトランジスタのドレインに電気的に接続することができる。ダイオード、エンハンスメントモードトランジスタ、空乏モードトランジスタは、共通の基板上に配置することができる。ダイオードは、III族窒化物材料を含むことができる。ダイオードのアノードは、接地接続に電気的に接続することができる。ダイオードとトランジスタは、共通基盤上に配置することができる。ダイオードは、III族窒化物材料を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のIII族窒化物HEMTデバイスの概略断面図である。
【図2】従来のIII族窒化物HEMTデバイスの概略断面図である。
【図3】従来のIII族窒化物HEMTデバイスの概略断面図である。
【図4】接地したゲート接続電界プレートを備える半導体トランジスタの実施形態の概略断面図である。
【図5】接地したゲート接続電界プレートを備える半導体トランジスタの実施形態の概略断面図である。
【図6】接地したゲート接続電界プレートを備える半導体トランジスタの実施形態の概略断面図である。
【図7】接地したゲート接続電界プレートを備える半導体トランジスタの実施形態の概略断面図である。
【図8】接地したゲート接続電界プレートを備える半導体トランジスタの実施形態の概略断面図である。
【図9】接地したゲート接続電界プレートを備える半導体トランジスタの概略回路図である。
【図10】2つのトランジスタを備える部品の概略回路図である。
【図11】図10に示す部品の実施形態の概略平面図および断面図である。
【図12】2つのトランジスタと1つのダイオードを備える部品の概略回路図である。
【図13】1つのトランジスタと1つのダイオードを備える部品の概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面において、同様の符号は同様の構成要素を示す。
【0013】
製造が容易でミラー容量効果の影響を受けない半導体デバイスについて説明する。実施形態において、そのデバイスを備える回路を説明する。それら回路を製造する工程は、そのデバイスを備える結果として、簡略化することができる。
【0014】
図4は、III族窒化物デバイス、すなわちIII族窒化物HEMTの概略図を示す。同デバイスは、ゲート接続電界プレート28を備える。電界プレートは、グランドに電気的に接続されている。このデバイスは、「接地ゲート接続電界プレート」を備えるデバイスとして参照される。ここで用いる、III族窒化物またはIII族窒化物材料、層、デバイス等という用語は、化学量論式AlInGaN、x+y+1≒1に基づく複合半導体材料を含む材料またはデバイスのことである。ここで用いる、2以上の接触部またはその他の要素は、各接触部または構成要素の電位が常に略等しくなる程度に導電性がある材料によって接続されている場合、「電気的に接続されている」ものとする。ここで用いる、「接地端子(グランド端子)」または「接地」は、駆動電圧信号が相対的に比較される電位(電圧)を有する端子である。電界プレートは、複数の手法で接地に接続することができる。例えば電界プレートは、導電線の一端を電界プレートに取り付け、他端を接地に取り付けることにより、接地に直接接続することができる。あるいは、電界プレートは、以下の図8に示すように回路パッケージの接地部位に直接取り付けることができる。これに代えて電界プレートは、後述の図11(a)に示すように、回路動作中に接地されている回路パッケージの端子に接続することができる。その他の接地手法も同様に可能である。ゲート16と接地ゲート接続電界プレート28に加えて、図4に示すIII族窒化物HEMTは、2つのIII族窒化物層、GaNなどのチャネル層11、AlGa1−xNなどのバリア層12を備える。2DEGチャネル19は、チャネル層11とバリア層12の間の境界に隣接するソース電極14とドレイン電極15の間のチャネル層11内に配置されている。
【0015】
さらに、本デバイスはIII族窒化物HEMT構造から得られるIII族窒化物層の任意の組み合わせを備えることができる。例えば本デバイスは、図5に示すチャネル層11とバリア層12の間のAlN層のような別のIII族窒化物層20を備えることができる。あるいは本デバイスは、ソース電極14とドレイン電極15の間の2以上の並列2DEGチャネルから得られる一連のIII族窒化物層を備えることができる。2つの2DEGチャネルを備える本デバイスの例は、図6に示されている。このデバイスは、図4に示すデバイス内の層に加えて、例えばGaNとAlGa1−yNなどのような、III族窒化物層21および22を備える。図6のデバイスは、チャネル層11内に2DEGチャネル19を備え、III族窒化物層21内にもう1つの2DEGチャネル19を備える。実施形態によっては、図6のデバイスは、層21内に2DEGチャネルが1つ配置され、チャネル層11内には2DEGチャネルが配置されないように設計することができる。これは例えば、FeやCのような補償添加物またはその他の不純物をチャネル層11内に含有させることによって実現できる。あるいは、図6のデバイスは、チャネル層11内の2DEGが実質的にIII族窒化物層21内の2DEGよりも導電性が少なくなり、場合によってはIII族窒化物層21内の2DEGに対して導電性がなくなるように設計することができる。これは例えば、FeやCのような補償添加物またはその他の不純物をチャネル層11内に含有させることによって実現できる。
【0016】
電界プレートは、導電材料を備え、接地されていることに加えて、本デバイス内のピーク電界を減少させ、これにより本デバイスが高電圧で動作できるようにする、任意の構成を採用することができる。例えば、実施形態によっては、電界プレートは図4に示すような単一のゲート接続電界プレートを備えることができる。他の実施形態において、電界プレートは複数の電界プレートを備えることができる。この場合は、図7に示すような複数部分を有する電界プレートであるものとする。図7は、2つの電界プレート28と28’を備えるデバイスを示す。2つの電界プレート28と28’は、バリア層12からの距離が互いに異なる。この違いは、これらが絶縁層の凹部内に配置されているか絶縁層上に配置されているかの違い、または本デバイスの絶縁層またはIII族窒化物層から電解プレートの露出上面までの距離の違いによる。1以上の電界プレートを用いる場合、全ての電界プレートは互いに電気的に接続され、少なくとも1つの電界プレートはゲートに電気的に接続され、少なくとも1つの電界プレートは接地に電気的に接続される。図7は、電界プレート28’のみが接地に接続されている場合を示す。
【0017】
図4〜8に示すような接地ゲート接続電界プレートを備えるデバイスにおいて、電界プレートへの電圧は一定である。そのため、入力容量は電界プレートに影響されず、電界プレートはデバイス内でミラー効果に寄与しない。また、電界プレートをパッケージの接地部位に直接配置することができるので、これらデバイスを備える回路の製造工程は簡略化できる。この配置手法の例は、図8で概略的に示されている。同図において、傾斜電界プレート28’’がパッケージの接地部位30に直接配置されている。絶縁層13の凹部は1以上の傾斜壁を有する。ゲート16は、絶縁層13内の凹部の側壁から延設された部分として示されている。絶縁層13は、凹部において、下部の材料層に接触する。この材料は、図8にバリア層12として示すように、絶縁層13の材料とは異なる。ゲート16は、接地部位30まで垂直方向に延設され、傾斜電界プレート28’’はゲート16の側壁から凹部の側壁まで延設されている。実施形態によっては、傾斜電界プレート28’’は、ドレイン電極15に最も近いゲートの側部において金属部分を備える。接地部位30は、トランジスタの横幅または平面領域以上の横幅または平面領域を有する導電層で形成することができる。
【0018】
実施形態によっては、図4〜8に示すIII族窒化物デバイスは空乏モード(Dモード)デバイスであり、同デバイスは、ソース電極がゲート電極と等電位であるときはON状態にある。デバイスをスイッチOFFするためには、ゲート電極の電圧は、ソース電極の電圧よりも小さくなければならない。実施形態によっては、図4〜8に示すIII族窒化物デバイスは、少なくとも基板から最も遠いIII族窒化物層のゲート領域において、凹部を備えることができる。ゲート電極は、同凹部内に配置される(図示せず)。実施形態によっては、図4〜8に示すIII族窒化物デバイスは、絶縁材料すなわち絶縁部を、ゲート電極とIII族窒化物材料の間に備えることができる(図示せず)。
【0019】
ゲート電極における電圧が一定である少なくとも1つのトランジスタを備える回路とデバイスは、図4〜9に示すようなトランジスタを備えることができる。図9は、図4〜8に示す実施形態のデバイスの回路図である。同図において、電界プレート28はゲートと接地に接続されている。これらトランジスタを回路とデバイス内で用いると、パッケージング工程および製造工程を簡略化し、同時にミラー効果が回路とデバイスの性能を劣化させることを抑制できる。接地ゲート接続電界プレートを備える回路とデバイスの実施形態は、図10〜13に示されている。
【0020】
ここで用いる「ブロック電圧」という用語は、トランジスタに電圧が印加されたとき、過大電流がトランジスタに流れることを抑制するトランジスタの能力を示す。例えば、通常導電の間における動作電流の0.001倍超の電流である。換言すると、トランジスタが印加される電圧をブロックするとき、トランジスタに流れる総電流は、通常導電の間における動作電流の0.001倍を超えない。
【0021】
図10の回路図で表される実施形態は、高電圧DモードIII族窒化物トランジスタ40を有する部品を備える。III族窒化物トランジスタ40は、接地ゲート接続電界プレート、低電圧エンハンスメントモード(すなわち、ノーマリーOFF)トランジスタ42を備える。III族窒化物トランジスタ40のソースは、エンハンスメントモード(Eモード)トランジスタ42のドレインに電気的に接続されている。Eモードトランジスタ42のソースは、グランドに電気的に接続されている。図10の部品は、単一の高電圧Eモードトランジスタと同様に動作する。すなわち、入力電圧信号がEモードトランジスタのゲートに印加され、Eモードトランジスタのソースがグランドに接続されているとき、ノード46へ印加された入力電圧信号により、ノード44において、高電圧Eモードトランジスタのドレイン端子で生成された出力信号と同じ出力信号を生成することができる。
【0022】
図10の部品において、ノード44が正電圧に保持され、十分な正電圧(すなわち、Eモードトランジスタ42の閾値電圧より大きい電圧)がノード46に印加されているとき、電流はノード44からノード47へ流れる。Eモードトランジスタ42の閾値電圧より小さい電圧、例えば0Vがノード46に印加されているとき、実質的には電流は流れない。この高電圧Eモードデバイスの構成は、単一の高電圧Eモードデバイスにとって望ましい。高電圧Eモードトランジスタは通常は製造が難しいからである。
【0023】
高電圧(HV)がノード44に印加され、ノード46が0Vにバイアスされたとき、Eモードトランジスタ42は、|Vth|に略等しいかまたは僅かに大きい電圧をブロックする。|Vth|は、III族窒化物トランジスタ40の閾値電圧の大きさである。Vthの通常の値は、約5〜10Vである。HVの値は、特定の回路アプリケーションに依拠するが、HVは通常は|Vth|より遥かに大きい。例えば、HVは約600V、約1200V、または高電圧用途に適したその他任意の電圧になり得る。したがってノード45における電圧は、|Vth|に略等しいかわずかに大きい。そのため、III族窒化物トランジスタはOFF状態にあり、HV−|Vth|に略等しい電圧をブロックする。高電圧(HV)がノード44に印加され、ノード46がEモードトランジスタ42の閾値電圧Vth,42より大きい電圧、例えば2×Vth,42にバイアスされたたとき、電流はノード44からノード47へ流れ、Eモードトランジスタ42の両端電圧降下Vは|Vth|よりもずっと小さくなり、通常は約0.2V未満となる。これら条件の下では、ノード45における電圧はVとなり、III族窒化物トランジスタ40のゲート−ソース電圧VGS40は約−Vとなる。
【0024】
III族窒化物トランジスタ40は、例えば600Vや最小1200Vやその他の回路アプリケーションが要求する適当なブロック電圧のような大電圧をブロックすることができる。さらに、III族窒化物トランジスタ40の閾値電圧Vthは、−Vよりも十分に小さくなければならない。これは、ノード44からノード47に流れる電流が回路アプリケーションにとって十分小さい損失でIII族窒化物トランジスタ40を通過できるように、部品がON状態にあるとき、III族窒化物トランジスタ40のゲート−ソース電圧VGS40がVthよりも十分に大きくなるようにするためである。例えば、Vthは−3V、−5V、または−7Vよりも小さい場合がある。III族窒化物トランジスタ40のゲート−ソース電圧VGS40が約−Vであるとき、III族窒化物トランジスタ40は、7W未満の損失で10Aまたはこれより大きい電流を通過させることができる。
【0025】
Eモードトランジスタ42は、|Vth|より大きい電圧を少なくともブロックすることができる。|Vth|は、III族窒化物トランジスタ40の閾値電圧の大きさである。実施形態によっては、Eモードトランジスタ42は約2×|Vth|をブロックすることができる。通常の高電圧DモードIII族窒化物トランジスタの閾値電圧は約−5V〜−10Vであるので、Eモードトランジスタ42は約10〜20Vまたはそれ以上をブロックすることができる。実施形態によっては、Eモードトランジスタ42は、例えば垂直Si電界効果トランジスタ(FET)のようなシリコン(Si)ベースのトランジスタである。他の実施形態では、Eモードトランジスタ42は、例えば2007年9月17日に出願された米国特許出願第11/856,687号、2008年4月14日に出願された米国特許出願第12/102,340号、2008年11月26日に出願された米国特許出願第12/324,574号、2008年4月23日に出願された米国特許出願第12/108,449号に記載されているようなIII族窒化物ベースのトランジスタである。これら特許出願は全て参照によって本願に組み込まれる。また、図10に示す部品は、Eモードトランジスタ42のソースとIII族窒化物トランジスタ40の電界プレートがグランド(図示せず)ではなく互いに電気的に接続されている場合は、単一の高電圧Eモードトランジスタと同様に動作することもできる。
【0026】
図11(a)(b)は、図10の部品をパッケージングした後の1構成例の平面図と断面図をそれぞれ示す。パッケージの関連する構成要素のみが図内に含まれる。この構成において、Eモードトランジスタ42は垂直低電圧SiMOSデバイス(FET)であり、III族窒化物トランジスタ40は水平高電圧Dモードデバイスである。III族窒化物トランジスタ40は、パッケージの接地部位30に直接接続された接地ゲート接続電界プレート28を備える。この部位は、以後パッケージベース30と呼ぶ。実施形態によっては、Eモードトランジスタ42は、例えば2007年9月17日に出願された米国特許出願第11/856,687号、2008年4月14日に出願された米国特許出願第12/102,340号、2008年11月26日に出願された米国特許出願第12/324,574号、2008年4月23日に出願された米国特許出願第12/108,449号に記載されているようなIII族窒化物デバイスである。Eモードトランジスタ42は、ソース電極64、ゲート電極66、ドレイン電極60を備える。Eモードトランジスタ42は、キャリア61上に配置されている。キャリア61は、パッケージベース30上に配置されている。実施形態によっては、構造を配置することには、エポキシまたは半田接続で構造を接着することが含まれる。キャリア61は、少なくとも導電層91、絶縁層92を備える。導電層91は、例えば金(Au)であり、ドレイン電極60に隣接している。絶縁層92は、例えばAlNであり、パッケージベース30に隣接している。絶縁層92は、Eモードトランジスタ42をパッケージベース30から電気的に絶縁する。III族窒化物トランジスタ40は、電界プレート28に接続されたゲート電極(図示せず)とともに、ソース電極14とドレイン電極15を備える。
【0027】
この実施形態において、III族窒化物トランジスタ40の電界プレート28とEモードトランジスタ42のソース電極64は、例えばワイヤ接続またはビアホールによってパッケージベース30に接続されている。キャリア61の導電層は、例えばワイヤ接続または銅ストライプによってIII族窒化物トランジスタ40のソース電極14に接続されている。これにより、Eモードトランジスタ42のドレイン電極60は、III族窒化物トランジスタ40のソース電極14に電気的に接続される。Eモードトランジスタ42のゲート電極66は、例えばワイヤ接続によってパッケージ上のゲートリード76に接続されている。III族窒化物トランジスタ40のドレイン電極15は、例えばワイヤ接続によってパッケージのドレインリード74に接続されている。パッケージベース30は、例えばワイヤ接続または銅ストライプによってパッケージ上のソースリード77に接続されている。パッケージのソースリード77上の端子47は、グランドに接続することができる。これに代えて、パッケージベース30全体をパッケージのソースリード77に接続するのではなくグランド材料に接着することができる。さらに、図11(a)(b)に示す部品は、端子47がグランド(図示せず)に接続されていない場合、単一の高電圧Eモードトランジスタと同様に動作することもできる。
【0028】
図11のパッケージ部品のその他の構成も同様に可能である。例えば、Eモードトランジスタ42を、2DEGを形成するIII族窒化物層の同じ側にゲート電極とドレイン電極を備え反対側にソース電極を備える低電圧Eモードトランジスタと置き換えた場合、低電圧Eモードトランジスタは、低電圧Eモードトランジスタとパッケージベース30の間に絶縁層を設けることなく、パッケージベース30上に直接配置することができる。これにより、キャリア61を必要としないようにすることができる。また、ソース電極をパッケージベース30に直接接続することができる。すなわち、2つの導電部を互いに直接接続することができる。
【0029】
図12の部品は、図10の部品と同様であるが、さらにダイオード70を備える。ダイオード70のアノードは、III族窒化物トランジスタ40のドレインに電気的に接続されている。この部品は、例えば力率補正(PFC)のような回路アプリケーションにおいて用いることができる。実施形態によっては、ダイオード70はIII族窒化物材料を備える。例えばダイオード70は、III族窒化物トランジスタ40と同じIII族窒化物材料で形成することができる。ダイオード70とIII族窒化物トランジスタ40はさらに、同じチップ上に製造することができる。III族窒化物トランジスタと同じIII族窒化物材料で製造することができるIII族窒化物ダイオードは、2008年12月10日に出願された米国特許出願第12/332,284号内で説明されている。同出願は、参照により全体が本願に組み込まれる。
【0030】
図13に示す実施形態は、高電圧DモードIII族窒化物トランジスタ40を有する部品を備える。III族窒化物トランジスタ40は、接地ゲート接続電界プレートと低電圧ダイオード71を備える。III族窒化物トランジスタのソースは、ダイオードのカソードに電気的に接続されている。ダイオードのアノードは、グランドに電気的に接続されている。図13の部品は、単一の高電圧ダイオードと同様に動作する。ノード84における電圧V84が0より大きいとき、ダイオードはOFFとなり(すなわち逆バイアスされ)、電流はノード84からノード87へ流れない。V84が0より大きくIII族窒化物トランジスタ40の閾値電圧|Vth|より小さいとき、III族窒化物トランジスタチャネルはピンチオフしない。そのため全ての電圧がダイオード71によってブロックされ、ノード85における電圧V85はV84に略等しい。V84が|Vth|超に増加すると、III族窒化物トランジスタ40はOFFにバイアスされ、ノード85における電圧は約|Vth|またはこれよりわずかに高くなり、その他全ての電圧(すなわちV84−|Vth|)はIII族窒化物トランジスタ40によってブロックされる。ダイオード71がON状態において順方向バイアスされているとき、電流はノード87からノード84へ流れる。これを生じさせるためには、ノード84における電圧は約−|Von|よりも小さくなければならない。|Von|は、ダイオード71のターンオン電圧である。この部品は、単一の高電圧ダイオードにとって望ましい。低電圧ダイオードのターンオン電圧は通常、高電圧ダイオードのターンオン電圧よりも低いからである。そのため、図13の部品は単一の高電圧ダイオードよりも小さい順方向損失を有する。
【0031】
実施形態によっては、低電圧ダイオード71はSiベースダイオードである。他の実施形態において、低電圧ダイオード71はIII族窒化物材料を備える。さらに他の実施形態において、ダイオード71はIII族窒化物トランジスタ40と同じIII族窒化物材料を備え、ダイオード71とIII族窒化物トランジスタ40は同じチップ上に製造することができる。
【0032】
III族窒化物トランジスタ40は、例えば600Vや最小1200Vや回路アプリケーションが要求するその他の適当なブロック電圧のような大電圧をブロックすることができる。さらに、電流がダイオード71とIII族窒化物トランジスタ40を通過するように、部品が順方向バイアスされているとき、ノード85における電圧は約−|Von|である。これらのバイアス条件にあるIII族窒化物トランジスタ40のゲート−ソース電圧VGS40は、|Von|に略等しい。部品がON状態にあるときIII族窒化物トランジスタ40がノード87からノード84へ流れる電流を回路アプリケーションにとって十分小さい損失で通過させるようにするため、III族窒化物トランジスタ40の閾値電圧Vthは、|Von|よりも十分に小さくなければならない。例えば、|Von|は約0.2Vまたはそれ未満であり、Vthは−3V、−5V、または−7Vよりも小さく、III族窒化物トランジスタ40のゲート−ソース電圧VGS40が|Von|に略等しいとき、III族窒化物トランジスタ40は7W未満の損失で10Aまたはそれより大きい電流を通過させることができる。また、図13に示す部品は、低電圧ダイオード71のアノードとIII族窒化物トランジスタ40の電界プレートがグランド(図示せず)に電気的に接続されるのではなく互いに電気的に接続されている場合、単一の高電圧ダイオードと同様に動作することもできる。
【0033】
デバイス性能にとって有利なその他の特徴は、図4〜8内に含まれている。これらはゲート電極とIII族窒化物層の間のゲート絶縁層、保護層、III族窒化物材料のゲート領域内の凹部を含むが、これに限られるものではない。これら特徴は、独立してまたは互いに組み合わせて用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物ベースの高電子移動度トランジスタ(HEMT)であって、
2DEGチャネルを形成する一連のIII族窒化物層と、
ゲート領域内の前記III族窒化物層の第1面上のゲート電極と、
前記ゲート電極に電気的に接続され、絶縁層によって前記III族窒化物層から分離された電界プレートと、
前記電界プレートと前記ゲート電極に電気的に接続され、ゲート接続接地電界プレートを形成するグランド接続と、
を備えたことを特徴とするトランジスタ。
【請求項2】
前記一連のIII族窒化物層は、少なくとも3つのIII族窒化物層を備え、前記3つのIII族窒化物層はそれぞれ異なる組成を有する
ことを特徴とする請求項1記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記層のうち少なくとも1つはAlNであることを特徴とする請求項2記載のトランジスタ。
【請求項4】
前記2DEGチャネルは第1の2DEGチャネルであり、
前記一連のIII族窒化物層は、前記一連のIII族窒化物層のチャネルIII族窒化物層内で前記第1の2DEGチャネルを形成し、
第2の2DEGチャネルは前記一連のIII族窒化物層内にあり、前記第1の2DEGチャネルと並行である
ことを特徴とする請求項2または3記載のトランジスタ。
【請求項5】
前記一連のIII族窒化物層の前記第1面上の、前記ゲート電極と前記一連のIII族窒化物層の間に、ゲート絶縁層を備える
ことを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記ゲート領域内の前記一連のIII族窒化物層内にゲート凹部を有し、前記ゲート電極の少なくとも一部は前記ゲート凹部内にある
ことを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載のトランジスタ。
【請求項7】
前記電界プレートは、それぞれ前記一連のIII族窒化物層からの距離が異なる複数部分を有する
ことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のトランジスタ。
【請求項8】
前記グランド接続は、前記トランジスタの横幅よりもよりも大きい横幅を有する導電層である
ことを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載のトランジスタ。
【請求項9】
前記電界プレートは傾斜電界プレートであることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載のトランジスタ。
【請求項10】
前記トランジスタは空乏モードトランジスタであることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載のトランジスタ。
【請求項11】
請求項1から10いずれか1項記載のトランジスタを動作させる方法であって、
前記トランジスタのソース電極と前記トランジスタのゲート電極をバイアスさせるステップを有し、
前記バイアスさせるステップの間、前記トランジスタの入出力間の容量が、ゲート接続接地電界プレートを備えていない同様のトランジスタと比較して最小化される
ことを特徴とするトランジスタ動作方法。
【請求項12】
請求項1から10いずれか1項記載のトランジスタと、
低電圧エンハンスメントモードトランジスタと、
を備え、
前記トランジスタは空乏モードトランジスタであり、
前記空乏モードトランジスタのソースは前記エンハンスメントモードトランジスタのドレインに電気的に接続されている
ことを特徴とする回路。
【請求項13】
前記エンハンスメントモードトランジスタのソースはグランドされていることを特徴とする請求項12記載の回路。
【請求項14】
請求項12または13記載の回路と、
グランド接続として導電層を有する基板と、
を備え、
前記空乏モードトランジスタと前記エンハンスメントモードトランジスタは、前記基板に取り付けられ、前記エンハンスメントモードトランジスタのソース電極は、前記グランド接続に電気的に接続されている
ことを特徴とする部品。
【請求項15】
前記エンハンスメントモードトランジスタは垂直デバイスであり、
前記空乏モードトランジスタは水平デバイスである
ことを特徴とする請求項14記載の部品。
【請求項16】
前記エンハンスメントモードトランジスタと前記基板の間に絶縁層が配置され、前記絶縁層は前記エンハンスメントモードトランジスタを前記基板から電気的に絶縁する
ことを特徴とする請求項15記載の部品。
【請求項17】
前記エンハンスメントモードトランジスタは、ゲート電極とドレイン電極が前記一連の層の1面に配置され、ソース電極が前記一連の層の反対面に配置され、前記エンハンスメントモードトランジスタのソース電極が前記基板の前記グランド接続上に直接配置されている、垂直デバイスである
ことを特徴とする請求項14から16のいずれか1項記載の部品。
【請求項18】
前記基板上にソースリード、ゲートリード、ドレインリードを備え、
前記ソースリードは前記基板の前記導電層に電気的に接続され、
前記ゲートリードは前記エンハンスメントモードトランジスタの前記ゲート電極に電気的に接続され、前記基板の前記導電層から電気的に絶縁され、
前記ドレインリードは前記空乏モードトランジスタのドレイン電極に電気的に接続され、前記基板の前記導電層から電気的に絶縁されている
ことを特徴とする請求項14から17のいずれか1項記載の部品。
【請求項19】
ダイオードを備え、
前記ダイオードのアノードは前記空乏モードトランジスタのドレインに電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項12または13記載の部品。
【請求項20】
請求項19記載の回路を備えた部品であって、
前記ダイオード、前記エンハンスメントモードトランジスタ、前記空乏モードトランジスタは、共通の基板上に配置され、前記ダイオードはIII族窒化物材料を含む
ことを特徴とする部品。
【請求項21】
請求項1記載のトランジスタと、
ダイオードと、
を備え、
前記トランジスタのソースが前記ダイオードのカソードに電気的に接続されている
ことを特徴とする回路。
【請求項22】
前記ダイオードのアノードは前記グランド接続に電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項21記載の回路。
【請求項23】
請求項21または22記載の回路を備えた部品であって、
前記ダイオードと前記トランジスタは共通の基板上に配置され、前記ダイオードはIII族窒化物材料を含む
ことを特徴とする部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−517699(P2012−517699A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549175(P2011−549175)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/021824
【国際公開番号】WO2010/090885
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511193374)トランスフォーム インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】