説明

RF作動電極のDC電圧制御方法及び装置

【課題】
【解決手段】
プラズマ処理チャンバ内における基板処理方法が開示されている。この方法は、上方電極と下方電極とを備えたプラズマ処理チャンバ内で基板を支持し、上方電極と下方電極との間でプラズマを発生させるために少なくとも1体のRF電力源を利用し、導電通路を形成するために下方電極に結合された導電結合リングを提供する。この方法はさらに、導電結合リングの上方に設置されるプラズマ対向基板周辺(PFSP)リングを利用する。この方法はさらに、プラズマ処理パラメータを制御するために、このPFSPリングを、RFフィルターを介した直流(DC)接地、RFフィルターと可変抵抗とを介したDC接地、RFフィルターを介した正のDC電力源およびRFフィルターを介した負のDC電力源のうちの少なくとも1つに結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プラズマ処理技術の進歩は半導体産業の成長をもたらした。半導体産業は非常に競争が激しい産業である。異なる処理手法で基板を処理することができる製造業者の技術能力は競争相手に対する優位性をその製造業者に与えるであろう。よって、半導体製造業者は基板処理技術の向上のための方法及び/又は設備の開発に時間と資金を投入してきた。
【背景技術】
【0002】
基板処理の実施に利用が可能な典型的な処理システムは非対称の多重周波数の容量結合処理システムである。この処理システムは、一定の処理パラメータの範囲内で基板処理ができるように構築されている。しかし、近年になって処理対象の装置(デバイス)はますます構造が複雑化し、さらなる処理の制御を必要とするようになった。1例として、処理対象の
デバイスはますます小型化し、さらに精密な処理を必要とするようになってきた。
【0003】
半導体産業界で競争力を維持するには、容量結合プラズマ処理システムの性能の増強が非常に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はその1実施態様ではプラズマ処理チャンバ内にて基板を処理する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この方法は上方電極と下方電極とを備えて構成されたプラズマ処理チャンバ内で基板を支持するステップを含む。さらにこの方法は上方電極と下方電極との間でプラズマを発生させる少なくとも1つの高周波(RF)電力源を利用するステップを含む。さらにこの方法は導電(伝導)結合リングを利用するステップを含む。この導電結合リングは下方電極に結合されて導電通路を形成する。さらにこの方法はプラズマ対向基板周辺(PFSP)リングを含む。このPFSPリングは導電結合リングの上方に設置される。さらにこの方法はプラズマ処理パラメータを制御するために、PFSPリングを、RFフィルターを介して直流電流(DC)接地に結合、RFフィルターと可変抵抗とを介してDC接地に結合、RFフィルターを介して正のDC電力源に結合、およびRFフィルターを介して負のDC電力源に結合のうちの少なくとも1つを実行するステップを含む。
【0006】
前述の概略説明は本明細書中で説明される本発明の数多くの実施態様の1つにのみ関係しており、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は「請求の範囲」において定義されている。本発明のそれら、および他の特徴は以下記載の図面を利用して下記において詳細に解説されている。
【0007】
本発明は、本発明の限定を意図しない例示の形態にて添付の図面を活用して解説されている。図中の同一参照番号は同一部材を表している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の1実施形態による、プラズマ処理システムに対する制御を増強するように設計されている構成要素を備えた容量結合プラズマ処理システムの概略図である。
【図2】本発明の別実施形態による、プラズマ処理システムに対する制御を増強するように設計されている構成要素を備えた容量結合プラズマ処理システムの概略図である。
【図3】本発明の1実施例による、PFSPリング(例:ホットエッジリング)に作用するDCバイアスの相関要素としての測定電位を示すデータを表示するグラフである。
【図4】本発明の1実施例による、基板の半径方向に沿ったイオン飽和電流密度を示すデータを表示するグラフである。
【図5】本発明の1実施例による、基板上に作用するDCバイアスの相関要素としてイオン飽和電流密度を示すデータを表示するグラフである。
【図6】本発明の1実施例による、2MHzベースライン回路に作用するPFSPリングのDC電位の相関要素としてモデル化されたDC電位結果のデータを表示するグラフである。
【図7】本発明の1実施例による、27MHzベースライン回路に作用するPFSPのDC電位の相関要素としてモデル化されたDC電位結果のデータを表示するグラフである。
【図8】本発明の1実施例による、プラズマ処理システムに対する制御を増強するように設計されている構成要素を備えた多重周波容量結合プラズマ処理システム800を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面で示す本発明のいくつかの実施例を詳細に説明する。以下では本発明の完全な理解を可能にすべく多数の特定細部が解説されている。しかしながら、専門家であれば本発明はそれら細部の一部または全部を省略しても実施が可能であることを理解するであろう。また、本発明の曖昧化を回避すべく、周知な工程及び/又は構造は詳細には解説されていない。
【0010】
以下では方法と技術を含んで様々な実施形態が解説されている。本発明は、発明技術の実施形態を実施するためのコンピュータ読取可能な命令が記録されているコンピュータ読取可能媒体を含んだ製品にも関する。このコンピュータ読取可能媒体は、コンピュータ読取可能なコードを記録するために、例えば、半導体、磁性、光磁性、光学あるいは他の形態のコンピュータ読取可能媒体を含む。さらに本発明は本発明の実施形態を実施するための装置にも関する。このような装置は、本発明の実施形態に関わる動作を実行するための専用及び/又はプログラム可能な回路を含む。このような装置の例には、汎用コンピュータ及び/又は適切にプログラムされた専用計算装置が含まれる。さらにコンピュータ/計算装置と、本発明の実施形態に関わる様々な動作を実行するように設計されている専用/プログラム式回路との組み合わせを含むことができる。
【0011】
本発明の実施形態によれば、プラズマ処理パラメータに対する制御を増強するようにプラズマ処理システムを設計するための方法と装置とが提供される。本発明の実施例には、パラメータに対する制御を増強するようにDC制御モジュールに結合されたプラズマ対向基板周辺(PFSP)リングの採用ステップが含まれる。さらに複雑な制御を目的としてプラズマ処理システムの処理領域を拡張することが可能であり、基板処理を従来の処理パラメータ以上に拡張することができる。
【0012】
1実施形態においては、プラズマ処理システムはプラズマ対向基板周辺リングとDC制御モジュールとの間に導電通路を提供すべく導電結合リングを含むように設計できる。1実施形態では、DC制御モジュールは、スイッチ、正のDC電力源、負のDC電力源およびDC接地に接続された可変抵抗を含むことができる。導電通路を提供することでプラズマ処理パラメータ(例:平均イオンエネルギー及び/又はプラズマ密度)がDC制御モジュールによって制御できる。
【0013】
1例では、プラズマ処理パラメータはRFフィルターを介してPFSPリングを接地結合することで制御できる。別例では、プラズマ処理パラメータはRFフィルターと可変抵抗とを介してPFSPリングを接地結合することでも制御できる。さらに別例では、プラズマ処理パラメータはRFフィルターを介して正のDC電圧源にPFSPリングを結合することで制御できる。さらに別例では、プラズマ処理パラメータはRFフィルターを介して負のDC電圧源にPFSPリングを結合することで制御できる。
【0014】
別実施形態では、プラズマ処理システムは、ホットエッジリング(hot edge ring)とのRF導電結合を創出するプラズマ処理システムの性能を排除することなく、ホットエッジリングには限定されない、プラズマ対向基板周辺(PFSP)リングと、DC制御モジュールとの間にDC導電通路を提供するDC導電結合リングを含むように設計することができる。
【0015】
別実施形態では、プラズマ処理システムは、RF導電結合を創出する性能を維持しつつもDC導電通路を提供するように設計することができる。RF導電結合はRF結合リングを採用することでホットエッジリングに静電チャックを結合するように設計することができる。RF導電結合を排除せずにDC導電結合を達成するため、DC導電結合リングおよびPFSPリングのごとき追加のリングを採用してDC導電通路を提供することができる。1実施形態では、PFSPリングは基板の周辺に配置できるどのようなタイプのプラズマ対向リングであってもよい。
【0016】
本発明の特徴と利点は以下の解説と図面とによってさらに明確に理解されるであろう。
【0017】
図1は、本発明の1実施例による、プラズマ処理システムに対する制御を増強するように設計された構成要素を備えている容量結合プラズマ処理システム100を図示する。プラズマ処理システム100は、単周波、二重周波あるいは三重周波の容量放電がされるシステムでよい。1例としては、電波周波数(RF)は、限定はしないが2MHz、27MHzおよび60MHzを含むことができる。
【0018】
プラズマ処理システム100は非対称形態でよい。接地された上方電極104は基板106及び/又は静電チャック108の直径とは異なる(例:大きい)直径を有することができる。従って、プラズマ処理時には接地されている上方電極104の直流電圧(Vdc)で測定される電位は基板106の電位とは異なるであろう。1例として、接地された上方電極104の電位Vdcはゼロであり、基板106の電位Vdcは負となる。
【0019】
プラズマ処理システム100は、接地された上方電極104と、通常はアルミ製である下方体110の上方に配置された静電チャック108のごとき下方電極とを含むようにも設計できる。静電チャック108はアルミプレートの表面にセラミック誘電層を備えたアルミ製でよい。
【0020】
プラズマ処理システム100は、下方体110を介してRFバイアス電力を静電チャック108に供給するために電波周波数(RF)発生器112を含むこともできる。通常は、RF電力112は、上方電極104と静電チャック108との間でプラズマ102を発生させるためにガス(単純化のため非図示)と反応する。プラズマ102は電子装置を製造するために基板106上で物質をエッチング除去するか、物質を堆積させる。
【0021】
プラズマ処理システム100は結合リング114も含むことができる。1実施形態では、結合リング114の上方にはプラズマ対向基板周辺(PFSP)リング116が取り付けられる。このリングは基板対向プラズマ102の周辺に取り付けることができる。PFSPリング116は、限定はしないがホットエッジリングを含むことができる。PFSPリング116は、結合リング114のような下側の構成要素をプラズマ102のイオンによる損傷から保護するために採用される。PFSPリング116は、容量結合プラズマ処理システムでのプラズマ処理中に処理の均一性(process uniformity)を維持するために基板の縁部にプラズマのイオンを焦点させるステップにも利用できる。
【0022】
従来技術では、結合リングは静電チャック108とRFSPリング116との間にRF結合を提供するために石英のようなRF導電(伝導)材料で製造される。従来技術とは異なり、結合リングはPFSPリング116と下方体110との間でDC結合を提供するため、アルミのごときDC導電材料で製造できる。1例では、結合リング114は、プラズマ102と、PFSPリング116と、下方体110と、RFフィルター128とを介して上方電極104からDC制御モジュール160に電流を流す導電通路を提供することができる。DC結合を実現することで、DC電流通路は外部のDC制御モジュール160を用いて確立できる。
【0023】
1実施形態では、DC制御モジュール160はスイッチ130、正のDC電力源136、負のDC電力源134およびDC接地132を含むことができる。DC電流通路の抵抗を変更するために可変抵抗131がDC接地132に接続するように設計できる。
【0024】
前述の導電通路を通って電流を流すことは異なる手法でも可能である。
【0025】
DC制御モジュール160は複数のプラズマ処理パラメータを制御するように採用される。1実施形態では、DC接地132に接続するためにRFフィルターを介して下方体110をDC制御モジュール160のスイッチ130に結合することで電流がPFSPリングを通って前述の導電通路に沿って流れる。RFフィルター128は一般的にDC電力源に損失を招くことなく不都合な高調波RFエネルギーを減衰させるために採用される。不都合な高調波RFエネルギーは、大抵はプラズマ放電中に発生し、RFフィルター128によってDC電力源に戻ることが防止される。
【0026】
スイッチ130は一般的に様々なDC外部電力源間の選択のために採用される。1例においては、スイッチ130が開かれると、電流通路は外部DC制御モジュールに対して存在しない。従って基板DCバイアス電圧(Vdc)は前述のように非対称プレートのためにプラズマとの関係で負となる傾向が高い。しかし、スイッチ130が閉じられると回路は接地され、基板DCバイアスは負からゼロになるであろう。
【0027】
接地方向でPFSPリング116に電圧を印加するようにスイッチ130を閉じると、プラズマの電位(Vpl)と基板のDCバイアス(Vdc)は変化する。理論に拘束されることは望まないが、発明者は基板に対する平均イオンエネルギー(Emean)が式1で示すようにVplとVdcに相関すると考える。

mean=Vpl−Vdc (式I)

【0028】
一般的に、容量結合プラズマ処理システムにおいて基板に対する平均イオンエネルギーは、プラズマ処理チャンバ内で確立される電位差によって決定される。1例では、基板106に対する平均イオンエネルギーは、DC接地への通路を備えた回路を閉じることでVplとVdcとの値の特定の変化に基づいて変わる。
【0029】
さらに、スイッチ130が閉じられ、接地へのDC電流通路がPFSPリング116で確立されると、プラズマ密度は増加する。プラズマ密度の増加は、最適な方法において大域的となる。この大域的とは、プラズマ密度が基板のみならず、基板縁部を越えて均一に増加する状態を言う。従って、プラズマ密度は基板の縁部で減少することはない。一般的に、処理の均一性と垂直エッチングプロフィール(vertical etch profiles)とを維持するためにはプラズマ密度が基板の表面全体で実質的に一定であることが望ましい。
【0030】
別実施形態では、DC制御モジュール160は、DC接地132に接続するようにRFフィルター128を介して下方体110を可変抵抗131に結合することでPFSPリング116に電流を流すように採用される。スイッチ130を閉じると回路を流れる電流は、基板とプラズマの電位に影響を及ぼすように可変抵抗131の値を変更することで調整できる。従って、グラウンドから絶縁されている(フローティング)状態と接地状態との間の平均イオンエネルギーとプラズマ密度値も調節できる。すなわち微調節が可能である。
【0031】
例えば、スイッチ130が閉じられ、正のDC電圧バイアス136と接触状態である場合を考える。1実施形態では、正のDC電圧バイアス136に下方体110を、RFフィルター128を介して結合することで電流はPFSPリング116に流れる。バイアスDC電圧136の上限はプラズマ電位となる。バイアスDC電圧136を増加させることで基板とプラズマの電圧電位は増加し、プラズマ密度は増加し、平均イオンエネルギーは接地状態のときよりも減少する。
【0032】
例えば、スイッチ130が閉じられ、負DC電圧バイアス134と接触状態である場合を考える。1実施形態では、負DC電圧バイアス134と下方体110とをRFフィルターを介して結合することで電流はPFSPリング116を流れる。負DC電圧バイアス値の限界は基板のDCバイアスに基づく。負DC電圧バイアス134を制御することで基板とプラズマの電位は減少する。プラズマ電位を減少させることで閉じ込められたプラズマを維持する性能は改善される。さらに、負DC電圧バイアス134を制御することでプラズマ密度は減少し、平均イオンエネルギーは増加する。
【0033】
図1で示すように、プラズマ処理パラメータの増強された制御はDC制御モジュールの操作によって達成される。従って、非対称プレートを備えた容量結合プラズマ処理システムは従来のプラズマ処理の様式では処理できないさらに複雑な基板処理を実行することができる。さらに、これら実施形態の実施は比較的に単純で安価であるため、製造業者の必要コストは最少化できる。
【0034】
図2は、本発明の1実施例による、プラズマ処理システムに対する制御を増強するように設計された構成要素を備えた容量結合プラズマ処理システム200の概略図である。図2は図1の太線150の右側に追加要素を加えた図1のプラズマ処理システム100の形態を図示する。
【0035】
プラズマ処理システム200は、典型的には石英製である底部絶縁体218を含む。底部絶縁体218の上部には石英製の底部絶縁カバー220がセットされている。底部絶縁カバー220には底部接地延長部222が結合されている、底部接地延長部222は典型的にはアルミ製であり、接地されている。底部接地延長部222の上方には典型的には石英製であるカバーリング224がセットされている。
【0036】
多重周波数の容量結合プラズマ処理システム200は複数の閉じ込めリング(226A、226B、226Cおよび226D)をも含む。これら閉じ込めリング226Aから226Dはプラズマ処理時にプラズマチャンバー内にプラズマを閉じ込めるように機能する。
【0037】
プラズマ処理システム200は図1に関して解説した実施形態の利点を有している。DC制御モジュールへの導電通路を備えるようにプラズマ処理システム200を設計することで、容量結合プラズマ処理システムは従来のプラズマ処理形態ではできなかった複雑な基板処理をすることができる。
【0038】
上述したように、容量結合プラズマ処理システムにおける基板への平均イオンエネルギーはプラズマ処理チャンバ内で確立された電位によって決定される。限定はしないが、その電位にはプラズマ電位、グランドから絶縁されている状態での(フローティング)電位及び/又は電力供給されているか外部的にバイアスされている電極の電位が含まれる。図3は本発明の1実施例で、グラフ300は、PFSPリング(例:ホットエッジリング)における測定電位をDCバイアスの関数として示すデータである。PFSPリング(例:ホットエッジリング)のDCバイアスの相関要素としての測定電位を示すデータのグラフ300である。本発明の理解を助けるために図1と図3を相関させて解説する。
【0039】
グラフの縦軸は電圧(V)の測定電位を示し、横軸はPFSPリングの異なるDCバイアス電圧(V)セッティングを示す。横軸に沿って、PFSPリングのDCバイアスに対する4つの異なる作用条件(302、304、306、308)が示されている。
【0040】
グラフ300には3本の折れ線(310、312、314)が図示されている。折れ線310は基板DCバイアスVdcの1例を示す。折れ線312はプラズマ電位Vplの1例を示す。折れ線314は基板の平均イオンエネルギーの1例Emeanを示す。
【0041】
例えば、2MHzと27MHzのような二重周波RF電力がRF発生器112よって適用されている場合を考える。処理中にスイッチ130は開かれる。グラフ300にはスイッチ130の開いた状態が作用条件線302として示される。スイッチ130が開くと基板106は折れ線310で示すように負のDCバイアス電圧(Vdc)を有する。さらに、プラズマ102の電圧電位(Vpl)は折れ線312で示すように基板DCバイアス電圧Vdcよりも高い。容量結合プラズマ処理システムの非対象性によってプラズマ電位(Vpl)は、作用条件線302での折れ線312と310によりそれぞれ示すように、基板DCバイアス電圧(Vdc)よりも高くなる。
【0042】
スイッチ130が閉じていると、外部DC制御モジュール160への導電通路が、導電結合リング114と下方体110との間で確立されたときに、例えばPFSPリング116は接地される。グラフ300には、PFSPリング116の接地条件が作用条件線304として示される。基板106とプラズマ102とは両方とも導電電流通路に沿って存在するため、基板DCバイアス(Vdc)とプラズマ電位(Vpl)は、DC電流通路が接地されたときに増加する。1例として、基板DCバイアス(Vdc)は負電位から約0である電位にまで増加する。グラフで示すように折れ線310は、基板DCバイアス(Vdc)が負電位から約ゼロにまで増加するときに増加する。同様に、折れ線312も増加を示すが、この増加はさほど急激なものではない。なぜならプラズマ電圧電位の変化は基板DCバイアス電圧の変化よりも小さいからである。
【0043】
前述したように、容量結合プラズマ処理システムの平均イオンエネルギーは処理チャンバ内に確立された電位差により決定される。1例としてスイッチ130が開かれると、基板DCバイアス(Vdc)は負になる。しかし、スイッチ130は閉じられ、回路が接地されると、基板DCバイアスは負からゼロになる。プラズマ電位の増加分は基板DCバイアス電圧の増加分よりも少ないので、基板の平均イオンエネルギーEmeanは減少する。図示されているように折れ線314は基板106の平均イオンエネルギーの減少を示す。
【0044】
折れ線310と312により示される基板及び/又はプラズマの電位値はそれぞれ操作できる(例えば:微調整など)。1実施例においては、可変抵抗131が抵抗値の制御のために導電電流通路に沿って設置され、電位を制御する。その結果、折れ線314で示される基板の平均イオンエネルギーも制御される。
【0045】
1例として、作用条件線306と308はPFSPリング116のDCバイアスの正120ボルトと正200ボルトをそれぞれ示す。折れ線310は作用条件線304から作用条件線306への基板DCバイアスのわずかな増加を示す。ここではPFSPリング116へのDCバイアスは約120Vである。折れ線310は、DCバイアスが約200Vである作用条件線308に接近するとDCバイアス電圧がさらに増加して安定状態になり始める。PFSP116のバイアスDC電圧の上限はプラズマ電位である。
【0046】
同様に、折れ線312はプラズマ電位のわずかな増加を示し、作用条件線306と308でのプラズマ電位の値は、それぞれ継続して安定している。同様に、図3の折れ線314で示される基板の平均イオンエネルギーは値のわずかな減少を示し、継続して安定している。
【0047】
図3において示されているように、グラフ300は、DC制御モジュールの活用が、基板のDCバイアス、プラズマ電位および基板の平均イオンエネルギーのような処理環境のパラメータに対する制御を増強する。1例としてPFSPリングへのDC電圧を制御することで、基板及び/又はプラズマの電位が制御される。また、基板の平均イオンエネルギーは、電流通路に可変抵抗を設置してグラウンドから絶縁された(フローティング)状態と接地状態との間の電位を微調整することで制御できる。また、DC効果は継続し、PFSPリングの正DCバイアスが限界、すなわちプラズマ電位に近づくと安定化する。
【0048】
図4は、本発明の1実施例による、基板の半径方向に沿ったイオン飽和電流密度を示すデータのグラフ400である。縦軸はイオン飽和電流密度Jsat(mA/cm)を示す。横軸は基板中央からの距離(mm)を示す。1例として300mm径の基板では、基板の縁部は半径が約150mmのところである。
【0049】
グラフ400は折れ線402と404を含む。折れ線402はスイッチが開いた状態(すなわちDC制御モジュールへの電流通路が存在しない)の基板上のイオン束、すなわちプラズマ密度の1例を示す。折れ線404はスイッチが閉じており、DC制御モジュールへの電流通路が存在する状態である基板上のイオン束の1例を示す。
【0050】
例えば、プラズマ処理中にスイッチが閉じている状態を考える。その結果、基板のプラズマ密度は折れ線402と404で示されるように基板上で均一に増加する。前述のように、増加は、プラズマ密度が基板および基板エッジを越えて均一に増加する大域的増加状態となる。
【0051】
図5は、本発明の1実施例による、基板のDCバイアスの関数としてのイオン飽和電流密度を示すデータのグラフ500である。縦軸は飽和電流密度Jsat(mA/cm)を示す。横軸はDCバイアス(V)を示す。
【0052】
1実施例では、折れ線502は、DC制御モジュールへの電流通路がグラウンドから絶縁された(フローティング)状態から接地状態に向かうときにプラズマ密度が増加する様子を示す。グラウンドから絶縁された(フローティング)状態から接地状態へのプラズマ密度値はDC接地の電流通路にセッティングされた可変抵抗により制御される。さらに、折れ線502はイオン飽和電流が正電圧DCバイアスの増加と共に増加すること(例えば+120V、+200Vおよび+250V)並びにプラズマ電位の限界のためにその効果が徐々に安定化することを示している。
【0053】
一般的に、DCシースはDC電位がグラウンドから絶縁された(フローティング)状態の電位以上に増加するとき接地電極で形成される。このフローティング電位とは、外部的にバイアスされておらず、接地もされていない非対称容量結合プラズマ処理システム内の1表面によって得られる電位のことである。基板とは対向側のDCシースの存在は、高エネルギー二次電子を捕捉(トラップ)する。高エネルギー二次電子の捕捉は、高エネルギー電子によるイオン化の相対的に広い横断面によってプラズマ密度に増加をもたらす。よって、基板のプラズマ密度は基板へのDCバイアスを制御することで操作できる。
【0054】
図6は、本発明の1実施例による、2MHzベースライン回路のPFSPリングDCの電位の関数としてモデル化されたDC電位結果のデータを示すグラフ600である。
【0055】
縦軸はモデル化されたDC電位を電圧(V)で示す。横軸はPFSPリング上の異なるDCバイアス電圧(V)の状態を示す。3本の折れ線610、612および614は例示である。折れ線610は基板DCバイアスVdcの例を示す。折れ線612はプラズマ電位Vplの例を示す。折れ線614は基板の平均イオンエネルギーEmeanを示す。
【0056】
折れ線614は、グラウンドから絶縁された(フローティング)状態から接地状態への約200Vまでの2MHz励起周波数のDC電位による基板の平均イオンエネルギーの直接制御を予測する回路モデルの分析結果を示す。この限界を超えたところに関しては、このモデルは平均イオンエネルギーの安定化効果を予測する。平均イオンエネルギーに影響を及ぼすDC電位の限界はプラズマ電位によるものである。さらに、このモデルは基板DCバイアス、すなわち折れ線610と、プラズマ電位、すなわち折れ線612とを予測する。これらの結果は全範囲においてPFSPのDC電位に整合する。このモデル予測は図6の結果を示す。それらは図3の測定結果と実質的に整合する。
【0057】
図7は、本発明の1実施例による、27MHzベースイライン回路のPFSPのDC電位の相関要素としてモデル化されたDC電位結果のデータを表すグラフ700である。
【0058】
縦軸はモデル化されたDC電位(V)を示す。横軸はPFSPリングの異なるDCバイアス電圧(V)の状態を示す。3本の折れ線710、712および714がグラフ700に図示されている。折れ線710は基板DCバイアスVdcの例を示す。折れ線712はプラズマ電位Vplの1例を示す。折れ線714は基板の平均イオンエネルギーEmeanの例を示す。
【0059】
折れ線714は、全範囲にわたる27MHz励起周波数のDC電位による基板の平均イオンエネルギーの直接制御を行わない予測回路モデルの分析結果を示す。しかし、このモデルは基板DCバイアス、すなわち折れ線710と、プラズマ電位、すなわち折れ線712との予測は行う。結果は全範囲にわたるPFSPのDC電位と整合する。
【0060】
1実施形態では、回路モデルの予測は基板DCバイアスと、プラズマ電位結果とが低RF周波数と高RF周波数の両方に対して全範囲にわたりPFSPのDC電位と整合することを示す。しかし、PFSPのDC電位の相関要素としての基板の平均イオンエネルギーの減少は、主として低周波励起、例えば2MHzの影響によるものである。よって、二重周波RF電力、すなわち、2MHzと27MHzでの図3の平均イオンエネルギーの制御を示す測定結果は主として低周波数(例:2MHz)の影響によるものである。
【0061】
図1、図2Aおよび図2Bで解説された前述の方法と装置に加えて、ホットエッジリングには限定されずにPFSPリングが採用されている他の実施形態が提供され、上方電極からDC制御モジュールに至るDC通路の創出に採用される。図8は、本発明の1実施例による、プラズマ処理システムに対する制御を増強するように設計された構成要素を備えた多重周波容量結合プラズマ処理システム800を図示する。このプラズマ処理システム800は、接地された上方電極804、基板806、静電チャック808、下方体810、RF電力源812、石英製結合リング814、ホットエッジリング816、カバーリング820、底部絶縁体818、底部接地延長部822、カバーリング824、複数の閉じ込めリング(826A、826B、826Cおよび826D)、RFフィルター828、DC制御モジュール860、スイッチ830、可変抵抗831、外部DC接地832、外部負DCバイアス834および外部正DCバイアス836を含むように設計されている。
【0062】
例えば、ホットエッジ816や石英製結合リング814のような従来技術の容量結合プラズマ処理システムから構成要素を排除することなく、製造業者がプラズマ処理システムパラメータ(電圧電位、プラズマ密度、等)の制御の増強を望む場合を考える。1実施例では、DC導電結合リング842とPFSPリング844はDC導電通路を提供するように追加される。1例では、結合リング842は、上方電極804から、プラズマ802、PFSPリング844、下方体810およびRFフィルター828を介してDC制御モジュール860に電流を流す導電通路を提供する。1例ではDC導電結合リング842はアルミ製であり、PFSPリング844はシリコン製である。従って、導電結合リング842とPFSPリング844の追加は、基板の縁部近辺での処理の均一性を犠牲にせずに外部DC電力を利用してイオンエネルギー及び/又はプラズマ密度を制御するため、製造業者に代わりの適用法を提供する。
【0063】
前述の実施形態の解説から理解されるであろうが、プラズマ処理システムはプラズマ処理パラメータの増強された制御を提供するように変更できる。従って、製造会社は、機械的に閉じ込められ、高度に非対称である容量結合プラズマ処理システムの従来のプラズマ処理範囲を超えて自身の基板処理能力を拡張することで、激しく競合するプラズマ処理市場において確固たる地位を獲得することができる。さらに、これら新規な構成要素は構造が比較的に単純で安価であるため、製造コストが軽減される。
【0064】
本発明をいくつかの好適実施形態を利用して解説したが、本発明の範囲内でそれらの別形態、変更および均等物の利用が可能である。また、発明の名称、発明の概要および要約は便宜的に提供されているものであり、本発明の範囲の理解に使用されるべきでものではない。本発明の方法および装置を利用する多数の別形態が存在する。いくつかの例が説明されているが、それらの例は本発明の説明のみを目的としており、本発明の限定を意図するものではない。従って、本明細書の「請求の範囲」が本発明のそのような別例、変更および均等物を含んでいると解釈されるものであり、本発明の真の精神と範囲に含まれるものと解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバ内における基板処理方法であって、
上方電極と下方電極とを備えたプラズマ処理チャンバ内で基板を支持するステップと、
前記上方電極と前記下方電極との間でプラズマを発生させるために少なくとも1体のRF電力源を利用するステップと、
導電通路を形成するために前記下方電極に結合された導電結合リングを利用するステップと、
前記導電結合リングの上方に設置されるプラズマ対向基板周辺(PFSP)リングを利用するステップと、
プラズマ処理パラメータを制御するために、前記PFSPリングを、RFフィルターを介した直流(DC)接地、RFフィルターと可変抵抗とを介したDC接地、RFフィルターを介した正のDC電力源およびRFフィルターを介した負のDC電力源のうちの少なくとも1つに結合するステップと、
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項2】
PFSPリングはホットエッジリングであることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項3】
PFSPリングはホットエッジリングではなく、基板の周辺のいかなるタイプのプラズマ対向リングであっても構わないことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項4】
導電結合リングはアルミ製であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
導電結合リングはシリコン製であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項6】
RF電力源は略2MHzの周波数であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項7】
RF電力源は略27MHzの周波数であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項8】
RF電力源は略60MHzの周波数であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項9】
プラズマ処理システムは容量結合プラズマ処理システムであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項10】
プラズマ処理システムであって、
上方電極と、
下方電極と、
前記上方電極と前記下方電極との間でプラズマを発生させるために少なくとも1体のRF電力源と、
導電通路を形成するために前記下方電極に結合された導電結合リングと、
前記導電結合リングの上方に設置されるプラズマ対向基板周辺(PFSP)リングと、
を含んで成り、プラズマ処理パラメータを制御するために、前記PFSPリングは、RFフィルターを介した直流(DC)接地、RFフィルターと可変抵抗とを介したDC接地、RFフィルターを介した正のDC電力源、およびRFフィルターを介した負のDC電力源のうちの少なくとも1つに結合されていることを特徴とするプラズマ処理システム。
【請求項11】
PFSPリングはホットエッジリングであることを特徴とする請求項10記載のプラズマ処理システム。
【請求項12】
PFSPリングはホットエッジリングではなく、基板の周辺のいかなるタイプのプラズマ対向リングであっても構わないことを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項13】
導電結合リングはアルミ製であることを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項14】
導電結合リングはシリコン製であることを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項15】
RF電力源は略2MHzの周波数であることを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項16】
RF電力源は略27MHzの周波数であることを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項17】
RF電力源は略60MHzの周波数であることを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項18】
プラズマ処理システムは容量結合プラズマ処理システムであることを特徴とする請求項10記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−524157(P2010−524157A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501198(P2010−501198)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/058316
【国際公開番号】WO2008/121655
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(504401617)ラム リサーチ コーポレーション (87)
【Fターム(参考)】