説明

アクティブマトリックスアレイ及びその製造方法

【課題】印刷塗布して形成された絶縁膜の絶縁特性を良好に保持した状態で、生産性を向上することが可能なアクティブマトリックスアレイ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】下地層34上に絶縁膜インクを印刷塗布する。印刷塗布された絶縁膜インクに含まれる溶媒が所定の絶縁特性が得られるまで十分に揮発させる前に終了するように絶縁膜インクを焼成して絶縁膜32を形成する。下地層34上に形成された絶縁膜32上に1つ以上の開口部33を有する導電層31を形成する。それにより、導電層31に設けられた開口部33から絶縁膜32内に残っている溶媒を揮発させることができるので、導電層31におおわれた絶縁膜32の絶縁特性を良好にすることができる。また、絶縁膜32が十分に揮発する前に、絶縁膜32上に導電層31を形成することができるので、生産性を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビやパーソナルコンピュータのモニターとして用いられる薄型画像表示装置、あるいは医療分野や、非破壊検査、RI(Radio Isotope)検査を含む産業分野などに用いられる放射線撮像装置の放射線検出器など、特に、薄型画像表示装置および放射線撮像装置の放射線検出器に備えられるアクティブマトリックスアレイとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリックスアレイ(アクティブマトリックス基板)は、2次元マトリックス状にアクティブ素子(例えば、薄膜トランジスタ)を配列したものである。アクティブマトリックスアレイは、アクティブマトリックスアレイ上に、例えば、発光素子を備えることで有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、透過光の強度を調節する表示素子を備えることで液晶表示ディスプレイ等の薄型画像表示装置として用いたり、また、X線、γ線等を検出する受光素子を備えて放射線撮像装置の放射線検出器として用いたり、と広く使用されている。近年、これらの製造方法として、インクジェット法(例えば、特許文献1参照)、接触印刷法(例えば、特許文献2参照)等の印刷技術を用いた方法の研究が盛んに行われている。これらによる製造方法は、フォトリソグラフィ法に比べて簡便であり、製造コストを抑えられる点で有利である。なお、ここで受光素子の光とは、赤外線、可視光線、紫外線、放射線(X線、γ線等)等をいう。
【0003】
インクジェット法や接触印刷法は、導電層、半導体膜、絶縁膜等の材料物質を溶媒に溶解させたインクを用いることにより、インクジェット法では、インクジェットノズルから射出させ、また、接触印刷法では、転写型の転写面に一旦付着した後、被転写物(例えば、基板)に転写させることで、各種形状パターン層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−349583号公報
【特許文献2】特開2007−142362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法によるアクティブマトリックスアレイには、次のような問題点がある。すなわち、下地層(基板、あるいは絶縁膜、半導体膜、導電層等を基板上に積層したもの)上に絶縁膜を形成し、形成された絶縁膜上に配線等の導電層を形成する場合において、先ず、下地層上に絶縁膜インクを印刷塗布して成膜した後、加熱して、または、紫外線(UV)を照射して印刷塗布された絶縁膜インクを焼成することで絶縁膜を形成している。絶縁膜インクの焼成は、加熱する場合、例えば、200℃、1時間程で行われ、紫外線を照射する場合、例えば、500mJ/cm程度の光量で行われ、所定の絶縁特性が得られるまで絶縁膜インクに含まれる溶媒を十分に揮発させて乾燥させる。そして、形成された絶縁膜上に導電層を形成する。しかしながら、導電層の形成は、上述の絶縁膜インクの焼成を待たなくてはならない。生産性向上の目的から焼成時間を短く抑えたいが、それでは、絶縁膜内に絶縁膜インクに含まれる溶媒が残ってしまい、良好な絶縁特性を得ることができなくなってしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、印刷塗布して形成された絶縁膜の絶縁特性を良好に保持した状態で、生産性を向上することが可能なアクティブマトリックスアレイ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は鋭意研究の結果、次の知見を得ることができた。先ず、上述した通常に行われている条件で焼成した後も、絶縁膜の表面から絶縁膜内の溶剤が微弱ながら揮発し続けていること、また、絶縁膜インクの焼成は、焼成時間内の比較的早い段階である程度の硬さに固化し、その後は、絶縁膜インクに含まれる溶媒が揮発させて乾燥させるのを待つ時間であること、に着目した。そこで、所定の絶縁特性が得られるまで絶縁膜インクに含まれる溶媒を十分に揮発させる前に、すなわち、通常に行われる時間を短縮して終了するように絶縁膜インクを焼成して絶縁膜を形成し、その絶縁膜上に導電層を形成した。すると、絶縁膜が導電層でおおわれていても、幅が狭いところでは導電層に隣接し外気と接した絶縁膜の表面から絶縁膜内に残っている溶媒を揮発することができた。しかしながら、導電層の幅が広く面積が大きくなるにつれて、導電層におおわれた絶縁膜の絶縁膜インク内に含まれる溶媒が揮発されにくくなり、絶縁膜内に溶媒が残ってしまうことが判明した。
【0008】
本発明は、上記の知見に基づきなされたものであって、その目的を達成するために、次のような構成をとる。すなわち、本発明に係るアクティブマトリックスアレイは、下地層上に印刷塗布して形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成され、前記絶縁膜内の溶媒揮発を補助するための1つ以上の開口部を有するグランド層と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るアクティブマトリックスアレイによれば、印刷塗布された絶縁膜上に1つ以上の開口部を備えたグランド層を備えている。グランド層に開口部を有することで、グランド層におおわれた絶縁膜内に残っている溶媒を揮発させることができる。そのため、絶縁膜内の溶媒を十分に揮発させることができるので、絶縁膜の絶縁特性を良好にすることができる。
【0010】
また、本発明に係るアクティブマトリックスアレイは、下地層上に印刷塗布して形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成され、前記絶縁膜内の溶媒揮発を補助するための1つ以上の開口部を有する電源層と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るアクティブマトリックスアレイによれば、印刷塗布された絶縁膜上に1つ以上の開口部を備えた電源層を備えている。電源層に開口部を有することで、電源層におおわれた絶縁膜内に残っている溶媒を揮発させることができる。そのため、絶縁膜内の溶媒を十分に揮発させることができるので、絶縁膜の絶縁特性を良好にすることができる。
【0012】
また、本発明に係るアクティブマトリックスアレイの一例は、前記開口部は、複数のスリット状の開口部が並設していることである。並設しているスリット状の開口部から絶縁膜内の溶媒をムラなく十分に揮発させることができるので、絶縁膜の絶縁特性を良好にすることができる。
【0013】
また、本発明に係るアクティブマトリックスアレイの製造方法は、下地層上に絶縁膜インクを印刷塗布する絶縁膜インク印刷塗布工程と、印刷塗布された前記絶縁膜インクに含まれる溶媒が所定の絶縁特性が得られるまで十分に揮発させる前に終了するように前記絶縁膜インクを焼成する絶縁膜インク焼成工程と、前記絶縁膜インク印刷塗布工程および前記絶縁膜インク焼成工程により下地層上に形成された絶縁膜上に1つ以上の開口部を有する導電層を形成する導電層形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るアクティブマトリックスアレイの製造方法によれば、印刷塗布された絶縁膜インクに含まれる溶媒が、所定の絶縁特性が得られるまで十分に揮発させる前に終了するように絶縁膜インクを焼成し、下地層上に絶縁膜を形成する。そして、下地層上に形成された絶縁膜上に1つ以上の開口部を有する導電層を形成する。これにより、絶縁膜内に残っている溶媒を導電層の開口部から揮発させることが出来る。そのため、絶縁膜インクに含まれる溶媒を十分に揮発させなくても導電層を形成できるので、焼成する時間を短縮して生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るアクティブマトリックスアレイとその製造方法によれば、印刷塗布して形成された絶縁膜上に開口部を有する導電層を備えているので、絶縁膜内に残っている溶媒を導電層の開口部から揮発させることが出来る。そのため、絶縁膜内の溶媒を十分に揮発させることができるので、絶縁膜の絶縁特性を良好にすることができる。また、印刷塗布された絶縁膜インクを焼成して、絶縁膜インクに含まれる溶媒を十分に揮発させなくても絶縁膜上に導電層を形成できるので、焼成する時間を短縮することができる。すなわち、生印刷塗布して形成された絶縁膜の絶縁特性を良好に保持した状態で、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例に係るフラットパネル型X線検出器(FPD)に備わるアクティブマトリックスアレイの模式平面図である。
【図2】実施例に係るフラットパネル型X線検出器(FPD)に備わるアクティブマトリックスアレイの模式縦断面図である。
【図3】実施例に係る開口部を有する導電層の模式部分平面図である。
【図4】実施例に係る開口部を有する導電層の模式部分縦断面図である。
【図5】実施例に係るアクティブマトリックスアレイの製造工程を示すフローチャートである。
【実施例】
【0017】
<フラットパネル型X線検出器>
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。実施例の説明は、X線撮像装置に用いられる直接変換方式のフラットパネル型X線検出器(以下、FPDと称する)に備わるアクティブマトリックスアレイを例に行う。なお、図1は、実施例に係るFPDに備わるアクティブマトリックスアレイの模式平面図であり、図2は、実施例に係るFPDに備わるアクティブマトリックスアレイの模式縦断面図である。
【0018】
図1を参照する。FPD1は、アクティブマトリックスアレイ2と、X線変換層3と、ゲート駆動回路4、電荷‐電圧変換群5、マルチプレクサ6等の周辺回路と、を備えている。
【0019】
アクティブマトリックスアレイ2は、X線像を検出する領域であるX線検出部SCを2次元マトリックス状に区画した画素ごとに、スイッチング素子である薄膜トランジスタ11(以下、TFTと称する)とコンデンサ12を備えている。X線検出部SCは、説明の都合上、図1に示すように、縦・横3×3画素の2次元マトリックス状に配列して構成されているが、実際のX線検出部SCは、例えば、縦・横4096×4096画素で構成されている。
【0020】
図1および図2を参照する。アクティブマトリックスアレイ2上には、2次元マトリックス状に配列した画素ごとに画素電極13が形成されている。この画素電極13を介し、アクティブマトリックスアレイ2上にはX線変換層3が形成されている。このX線変換層3上には電圧印加電極14が形成されている。X線入射側の電圧印加電極14には、高電圧(例えば数100V〜数10kV程度)のバイアス電圧Vが加えられるようになっている。X線変換層3は、X線が入射されるとキャリアが生成される機能を有している。そして、画素電極13は、区画された画素ごとに生成されたキャリアを収集するためのものである。なお、X線変換層3には、アモルファスセレン(a‐Se)やテルル化カドミウム(CdTe)等が採用されている。
【0021】
アクティブマトリックスアレイ2上に2次元マトリックス状に配列したTFT11とコンデンサ12において、コンデンサ12は、画素電極13と電気的に接続して画素電極13に収集されたキャリアを電荷として一時的に蓄積する。また、TFT11は、画素電極13およびコンデンサ12と電気的に接続してコンデンサ12に蓄積された電荷を取り出すためのスイッチング素子として機能する。
【0022】
アクティブマトリックスアレイ2は、TFT11とコンデンサ12の他に、格子状に構成されたゲート線15およびデータ線16と、グランド線17と、それらを形成する土台となる基板18と、を備えている。
【0023】
アクティブマトリックスアレイ2上に、横(行)方向に並列に配置しているゲート線15の一端は、横方向に配列している各画素のTFT11のゲートGと、それぞれ電気的に接続されている。また、縦(列)方向に並列に配置しているデータ線17の一端は、縦方向に配列している各画素のTFT11のドレインDと、それぞれ電気的に接続されている。なお、TFT11のソースSは、画素電極13とコンデンサ12と電気的に接続されている。また、ゲート線15の他端は、ゲート駆動回路3と電気的に接続している。また、データ線17の他端は、電荷‐電圧変換群4と電気的に接続している。
【0024】
コンデンサ12は、上下2つの電極を備えているが、上側の容量電極19は、上述したようにTFT15のソースおよび画素電極13と電気的に接続しており、また、下側のグランド電極20は電気的に接続したグランド線17により、X線検出部SCの外側に設けられたグランド層31に電気的に接続している。例えば、図1に示すように、横方向に並列に配置されているグランド線17の一端は、横方向に配列している各画素のコンデンサ12のグランド電極20と直線的に接続され、グランド線17の他端は、X線検出部SCの外側に設けられたグランド層31に電気的に接続している。
【0025】
グランド層31は、アクティブマトリックスアレイ2の外部に接地しており、また、インピーダンス(抵抗値)を小さくするために大面積の形状のパターンが形成されている。グランド層31の大きさは、例えば、400mm×0.1mm〜10mmで形成される(ちなみに、グランド線の幅は20μm程)。また、グランド層について、図3および図4を参照して説明する。なお、図3は実施例に係る開口部を有するグランド層の模式部分平面図であり、図4は実施例に係る開口部を有する導電層の模式部分縦断面図である。である(図3のA‐A視断面図)。
【0026】
図3および図4を参照する。グランド層31は、下地層34上に印刷塗布して形成された絶縁膜32上に形成される。グランド層31におおわれた絶縁膜、すなわち、グランド層31に接している領域の絶縁膜32の、絶縁膜32内の溶媒揮発を補助するための開口部33を備えている。開口部33の形状は、絶縁膜32の溶媒揮発を効果的に補助するためであれば、どのような形状でもよい。例えば、図3で示すように、複数のスリット状の開口部33を並設するものが好ましい。ただし、開口部33によりグランド層31の導電特性を損なわないようにすることが好ましい。
【0027】
グランド層31に設けられた開口部33によれば、グランド層31でおおわれた絶縁膜32内の溶媒を、開口部33から揮発させることができる。そのため、グランド層31でおおわれている絶縁膜32内に残っている溶媒を、所定の絶縁特性が得られるまで十分に揮発させることができるので、その絶縁膜32の絶縁特性を良好にすることができる。
【0028】
なお、本実施例のFPD1によるX線検出動作は以下の通りである。すなわち、被検体にX線を照射してX線撮像を行う場合には、先ず、電圧印加電極14に高電圧のバイアス電圧Vを印加した状態で、被検体にX線を照射する。被検体を透過した放射線像は、電圧印加電極14を介してX線変換層(a‐Se膜)3上に投影されて、像の濃淡に比例したキャリアがX線変換層3内に発生する。発生したキャリアは、バイアス電圧Vが生じる電界により画素電極13に収集され、キャリアの生成した数に相応して電荷がコンデンサ12に誘起されて所定時間蓄積される。その後、ゲート駆動回路4からゲート線15を介して送られるゲート電圧により、TFT11はスイッチとして作用をし、コンデンサ12に蓄積された電荷が、TFT12を経由しデータ線10を介して、電荷‐電圧変換器群5で電圧信号に変換され、マルチプレクサ6によりX線検出信号として順に外部に読み出される。
【0029】
次に、実施例に係るアクティブマトリックスアレイ2の製造方法について説明する。なお、図5は、実施例に係るアクティブマトリックスアレイの製造工程を示すフローチャートである。製造方法の説明は、図3〜図5を参照して行う。
【0030】
(ステップS01)下地層の形成
下地層34を形成する。図3に示すように、下地層34は、基板18を含み、基板18上に、例えば、TFT11、コンデンサ12等の素子を形成したものである。すなわち、次に成膜する絶縁膜32の下地になる層のことである。下地層34のTFT11やコンデンサ12等は、導電層、半導体膜、ゲート絶縁膜、絶縁膜(層間膜)または、それらの組合せにより構成される。
【0031】
導電層の材料としては、Au(金)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Mo(モリブデン)、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、ITO(酸化インジウムスズ)等が挙げられる。また、TFTに用いられゲートチャネルが形成される半導体膜の材料としては、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)の少なくとも1つを有する酸化物半導体、例えば、ZnO(酸化亜鉛)、InGaZnO(ガリウム・インジウム酸化亜鉛)が挙げられる。また、TFTで用いられるゲート絶縁膜の材料としては、PI(ポリイミド)、アクリル系樹脂等の有機物、Al(アルミナ)、TiO(酸化チタン)、SiO(酸化シリコン)、SiN(窒化シリコン)等の無機物、または、Y(イットリウム)やHf(ハフニウム)を有する強誘電体材料、が挙げられる。また、絶縁膜の材料としては、PI、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の有機物、または、SOG(Spin on glass coating)に用いられるシリコンガラス等の無機物が挙げられる。また、基板18の材料としては、PI、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂が挙げられる。
【0032】
導電層、半導体膜、ゲート絶縁膜および絶縁膜の形成は、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法、ロール・ツー・ロール法等の印刷技術で行ってもよい。また、スピンコート法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、PECVD法等により適宜行って、フォトリソグラフィ法で所定の形状にパターンを形成して行ってもよい。
【0033】
(ステップS02)絶縁膜インクの印刷塗布
下地層34上に絶縁膜インクを塗布する。絶縁膜インクは、絶縁膜インクの材料を溶媒に溶かしたもので、例えば、ポリイミドインクが挙げられる。絶縁膜インクの材料としては、PI、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の有機物、または、SOGに用いられるシリコンガラス等の無機物が挙げられる。絶縁膜インクの塗布は、インクジェット法、インプリント法、凸版印刷法、グラビア印刷法等の印刷技術で行われる。また、印刷技術に限らず、絶縁膜インクを塗布・焼成して絶縁膜32を形成するものであればよく、例えば、スピンコート法で行ってもよい。
【0034】
(ステップS03)絶縁膜インクの焼成
下地層34上に印刷塗布された前記絶縁膜インクを焼成する。このとき、通常の絶縁膜インクの焼成方法は、絶縁膜32の所定の絶縁特性が得られるまで絶縁膜インクに含まれる溶媒を十分に揮発させて行われる。しかし本実施例では、通常の焼成方法の途中、すなわち、印刷塗布された絶縁膜インクに含まれる溶媒が所定の絶縁特性が得られるまで十分に揮発させる前に終了するように絶縁膜インクを焼成する(例えば、通常は焼成時間が1時間程のところ、焼成時間を30分程にする)。絶縁膜インクを印刷塗布して焼成することにより、下地層34上に絶縁膜32が形成される。印刷塗布された絶縁膜インクの焼成は、加熱または紫外線を照射して行われる。加熱は、オーブン、ホットプレート等で行われる。また、紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等で行われる。なお、絶縁膜インクの焼成の終了時期は、焼成時間内の比較的早い段階である程度の硬さに固化するため、所定の硬さが得られた以降に終了することが好ましい。このとき、絶縁膜インキの溶媒は十分に揮発していない状態である。
【0035】
(ステップS04)開口部を有する導電層の形成
下地層34上に形成された絶縁膜32上に、1つ以上の開口部33を有する導電層35(例えば、大面積の形状パターンであるグランド層31)を形成する。導電層35の材料としては、Au(金)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Mo(モリブデン)、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、ITO(酸化インジウムスズ)等が挙げられる。開口部33を有する導電層35の形成は、インクジェット法、凸版印刷法、グラビア印刷法、ロール・ツー・ロール法等の印刷技術で行われる。また、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、PECVD法等で、一旦、導電層35を形成した後に、フォトリソグラフィ法により所定の形状にパターニングして行われる。
【0036】
以上のようにして、アクティブマトリックスアレイ2を製造する。なお、開口部33を有する導電層35を形成した後、アクティブマトリックスアレイ2には、画素電極13をX線検出部SCの画素ごとに形成し、画素電極13を介して、アクティブマトリックスアレイ2のX線検出部SC上にはX線変換層3を形成する。なお、X線変換層3はアモルファスセレン(a‐Se)で形成する。そして、X線変換層3上に電圧印加電極14を形成する。この後、図1に示すように、ゲート駆動回路4、電荷‐電圧変換群5、マルチプレクサ6等を形成してFPD1が製造される。
【0037】
このようなアクティブマトリックスアレイ2の製造方法によれば、印刷塗布して焼成することで形成された絶縁膜32上に、開口部33を有する導電層35を形成することにより、導電層35でおおわれている絶縁膜32内の溶媒を導電層35の開口部33から揮発させることができる。そのため、絶縁膜の所定の絶縁特性が得られるまで十分に揮発する前に焼成を終了することができるので、焼成時間を短縮して生産性を向上させることができる。
【0038】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0039】
(1)上述した各実施例では、絶縁膜32の溶媒を揮発させるための開口部33を有するのは、グランド層31(導電層35)であったが、外部電源と電気的に接続される電源層であってもよい。例えば、図1に示すように、グランド層31は外部に接地されていたが、外部電源と接続してもよく、例えば、0Vであったところを1Vにしてもよい。また、アクティブマトリックスアレイ2上に流量の大きな電流を流すための大面積の電源層を設ける場合に適用してもよい。
【0040】
(2)上述した各実施例では、アクティブマトリックスアレイ2のグランド層31(導電層35)の開口部33は、スリット状の開口部33が並設したものであったが、これに限られない。例えば、開口部33の形状を、円形、楕円形、矩形、矩形の角を丸めた形状等としてもよい。また、開口部33の配列を、2次元マトリックス状、あるいは、2次元でも千鳥状のように互い違いになった形状等で配列させてもよい。また、中央の開口部33から放射状に配列させてもよい。また、S字状、H字状、O字状、E字状等に開口した1つの開口部33であってもよい。
【0041】
(3)上述した各実施例では、グランド層31(導電層35)は、アクティブマトリックスアレイ2の最上層に形成したが、これに限られない。例えば、積層して構成されるアクティブマトリックスアレイ2の層間の絶縁層上に形成してもよい。
【0042】
(4)上述した各実施例では、アクティブマトリックスアレイ2は、その上にX線に感応するX線変換層3を備えてFPD1を構成したが、これに限られない。例えば、γ線等の放射線に感応する放射線変換層を備えて放射線検出器としてもよい。また、光に感応する光変換層や、光変換層の代わりにフォトダイオードを備えイメージセンサーとしてもよい。また、フォトダイオードと、放射線を光に変換するシンチレータ層とを備えて間接変換型の放射線検出器としてもよい。
【0043】
(5)上述した各実施例では、アクティブマトリックスアレイ2は、その上にX線に感応するX線変換層3を備えて、X線像を検出するFPD1を構成したが、これに限られない。例えば、アクティブマトリックスアレイ2上に有機EL層を備えて有機ELディスプレイ、液晶層を備えて液晶ディスプレイ等の画像表示装置として構成してもよい。この場合、カラーフィルターを備えることで、カラー表示の画像表示装置としてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 …フラットパネル型X線検出器(FPD)
2 …アクティブマトリックス基板
3 …X線変換層
11 …薄膜トランジスタ(TFT)
12 …コンデンサ
13 …画素電極
14 …電圧印加電極
15 …ゲート線
16 …データ線
17 …グランド線
18 …基板
31 …グランド層
32 …絶縁膜
33 …開口部
34 …下地層
35 …導電層
SC …X線検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地層上に印刷塗布して形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成され、前記絶縁膜内の溶媒揮発を補助するための1つ以上の開口部を有するグランド層と、を備えていることを特徴とするアクティブマトリックスアレイ。
【請求項2】
下地層上に印刷塗布して形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成され、前記絶縁膜内の溶媒揮発を補助するための1つ以上の開口部を有する電源層と、を備えていることを特徴とするアクティブマトリックスアレイ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクティブマトリックスアレイにおいて、
前記開口部は、複数のスリット状の開口部が並設していることを特徴とするアクティブマトリックスアレイ。
【請求項4】
下地層上に絶縁膜インクを印刷塗布する絶縁膜インク印刷塗布工程と、
印刷塗布された前記絶縁膜インクに含まれる溶媒が所定の絶縁特性が得られるまで十分に揮発させる前に終了するように前記絶縁膜インクを焼成する絶縁膜インク焼成工程と、
前記絶縁膜インク印刷塗布工程および前記絶縁膜インク焼成工程により下地層上に形成された絶縁膜上に1つ以上の開口部を有する導電層を形成する導電層形成工程と、を備えることを特徴とするアクティブマトリックスアレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−44650(P2011−44650A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193219(P2009−193219)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】