イオンソースのイオン組成を選択的に制御するシステムおよび方法。
この方法は、プラズマドーピング、プラズマ堆積およびプラズマエッチング技術においてプラズマ組成を調整するために用いられる。開示された方法は、プラズマ中の電子エネルギー分布を改良することによりプラズマ組成を制御する。超高速電圧パルスによりプラズマ中で電子を加速することで、高エネルギー電子がプラズマ中で生成される。パルスは、電子に影響する程度には長時間だが、イオンに大きな影響を与えるには早すぎる。高エネルギー電子およびプラズマ構成物質の衝突の結果、プラズマ組成が変化する。プラズマ組成は、使用される特定目的の要求に適合するように最適化され得る。これはプラズマ中のイオン種の比率の変化を伴い、イオン化対解離の比率を変化させ、またはプラズマの励起状態集団を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラズマ生成の分野に関する。より具体的には、本発明は、準大気圧プラズマ中のイオンおよびラジカルの密度、温度および組成、および、電子の密度およびエネルギーを選択的に制御するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマは、半導体プロセスにおいて、プラズマエンハスド化学気相成長法(PECVD)および基板ドーピングのように、様々な方法により用いられる。このようなプロセスは、シリコンウエハのようなターゲット基板の表面上または表面下における、イオンの指向性堆積またはドーピングを含む。他のプロセスとして、エッチング種の指向性がエッチングされる溝の品質を決定するプラズマエッチングが含まれる。
【0003】
典型的なプラズマドーピングは、プラズマ内の荷電イオン特性を利用し、ターゲット表面上または表面下にイオンを堆積する。ここで、プラズマ堆積プロセスは、基板表面上に堆積する中性物質に依存する。中性物質は荷電していないので制御が難しく、従って、最終プロセスを妨害するように表面上に蓄積しうる。
【0004】
さらに、プラズマは典型的に異なるイオン種および中性物質種を有する。特定のプロセスを実行するために、プラズマ内で特定種を最大化し、別の特定種を最小化することが望ましい。同様に、現在用いられる方法と比較して、プラズマ組成をより十分に制御する方法を有することが有効であるだろう。
【0005】
従って、好ましいイオン種の存在を最大化し、ドーピングの利用に好ましくないイオン種および中性物質の存在を最小化するために、イオン組成およびプラズマ密度を制御する方法が必要である。中性物質が望まれる、エッチングおよび堆積等の他の利用形態のためには、その逆が望ましいかもしれない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
プラズマプロセスツールの性能は、関連するプラズマ組成に依存する。ここに開示される方法は、プラズマ中の電子のエネルギー分布を変更することにより、ユーザがプラズマ組成(イオン種及び中性物質(すなわちラジカル)種、これらの種の励起状態、および電子エネルギー分布を含む)および密度を制御することを可能にする。エネルギー電子は、1以上の超高速電界(E−field)パルスを用いて、電子の一部を加速することによりプラズマ中で生成される。このパルスは、電子に影響する程度には十分長く、その比較的大きな質量に大きく起因してイオンに影響を与えるには短すぎる。エネルギー電子とプラズマの構成物質とが衝突すると、結果的にプラズマ組成に変化が生じる。注意深く電子エネルギーを制御することで、使用される特定のプロセス要求に適合できるように、プラズマ組成を最適化できる。ある実施形態において、これはプラズマ中のイオン種の比率の変更、イオン化と解離の比率の変更、プラズマの励起状態占有率の変更を伴う。
【0007】
ある実施形態において、この方法は、プラズマイオンプランテーション(すなわち、ドーピング)の間、現行の方法により得られるよりも高い、ガス中分子の解離に対するイオン化比率を達成するために用いられうる。これにより、高いプラズマ密度が得られ、また、処理される基板上の堆積が減少する。
【0008】
この超高速電界パルスは、プラズマに面する電気的に絶縁された表面に対して印加される。例えば、この表面は遮蔽板(バッフル)またはインプラントされる基板であってよい。電界パルスは、実質的にプラズマ(電子)周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有する。また、パルス幅は、プラズマシースにおけるイオン通過時間よりもずっと短くてよい。印加される高速上昇電界利得エネルギーの影響を受ける電子は、プラズマ中を移動し、その経路上のガス分子をイオン化し、励起し、または解離する。各電子が生成するイオン化、励起、解離等の数は、(電界パルスから得られる)電子のエネルギー、ガス密度、および特定のプロセスにおける電子/分子衝突断面積に依存するだろう。
【0009】
チャンバに供給ガスを供給する段階、供給ガスを励起してプラズマを生成する段階、およびプラズマに電界パルスを印加する段階を備える、準大気圧プラズマを改良する方法が開示される。電界パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有してよい。電界パルスは、同様に、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有してよい。ここで、電界パルスはプラズマの電子に選択的に影響するが、プラズマのイオンには実質的に影響を与えない。また、影響を受けた電子は、プラズマ中のイオンおよび中性物質の組成、密度、および温度を改良する。
【0010】
供給ガスをチャンバに供給する段階、供給ガスを励起してプラズマを生成する段階、および電界パルスをプラズマに印加する段階とを備える、準大気圧プラズマを改良する方法が開示される。電界パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有してよい。電界パルスは、同様に、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有してよい。ここで、電界パルスはプラズマの電子に選択的に影響するが、プラズマのイオンには実質的に影響を与えない。また、電界パルスの立ち上がり時間、電界パルスの期間、および電界パルスの振幅の少なくとも1つを制御することで、電子密度およびエネルギー分布の制御を介して、プラズマ中のイオンおよび中性物質の組成、密度および温度が改良される。
【0011】
電界パルスをプラズマに印加する、プラズマを調整する方法が開示される。電界パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有してよい。電界パルスは、同様に、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有してよい。ここで、電界パルスはプラズマの電子に選択的に影響するが、プラズマのイオンには実質的に影響を与えない。
【0012】
連続電磁波パルスをプラズマに印加する段階を備え、連続電磁波パルスは非振動極性の電界および電子プラズマ周波数以上の周波数を有する、プラズマを調整する方法が開示される。連続電磁波パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有してよい。連続電磁波パルスは、同様に、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有してよい。ここで、連続電磁波パルスはプラズマの電子に選択的に影響するが、プラズマのイオンには実質的に影響を与えない。
【0013】
チャンバ、チャンバ内で支持され、チャンバから絶縁される遮蔽板、および高電圧フィードスルーを介して遮蔽板と接続されるパルス生成器を備えるプラズマドーピングシステムが開示される。パルス生成器は、チャンバに閉じ込められたプラズマに電界パルスを供給する。パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有し、また、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有してよい。
【0014】
添付される図面は、この原理の実用的応用のために想定される、開示された方法の好ましい実施形態を表す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】1次元パーティクルインセル(PIC)法プラズマシュミレーションのブロック図を外部回路とともに示す。
【図1B】入力電圧ナノパルスの図を示す。
【図2】電圧パルスの開始に先立って、図1AのPICプラズマシュミレーションを用いてシミュレートした左側(LHS)ポテンシャル、プラズマ横断ポテンシャル、プラズマ横断電界、電子エネルギー分布関数、および電子速度の一連の図を示す。
【図3】電圧パルス後0.1ナノ秒における図2に示される測定結果の一連の図である。
【図4】電圧パルス後0.5ナノ秒における図2に示される測定結果の一連の図である。
【図5】電圧パルスの立ち上がりの終点における図2に示される測定結果の一連の図である。
【図6】電圧パルスの立ち上がりの完了後における図2に示される測定結果の一連の図である。
【図7】電圧パルスの開始後3.5ナノ秒における図2に示される測定結果の一連の図である。
【図8】電圧パルスの開始後4ナノ秒における図2に示される測定結果の一連の図である。
【図9】電子エネルギー分布関数(EEDF)対電子エネルギーを示すグラフである。
【図10】ナノパルサに対するピーク印加電圧の関数としてのイオン分別のバリエーションを示す図である。
【図11】ナノパルサ電圧の関数としての0.1%B2H6(He中)プラズマの飛行時間(TOF)スペクトルのグラフを示す。
【図12】ナノパルサ電圧の関数としての0.5%B2H6(He中)プラズマのTOFスペクトルのグラフを示す。
【図13】シリコン基板の表面下深さの関数としてのホウ素濃度の変化のSIMSプロフィールを示す。
【図14】異なるナノパルサ電圧における、電子エネルギー分布関数(EEDF)対電子エネルギー(eV)のlogプロットを示す。
【図15】プラズマドーピング(PLAD)ツールにおけるナノパルサの実施例を示す。
【図16】プラズマエンハスド化学気相成長(PECVD)ツールにおけるナノパルサの第2の実施例を示す。
【図17】PECVD中の高アスペクト比構造上または周辺の堆積物の断面図を示す。
【図18】プロセス指向性対プラズマ特性のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
プラズマソース中におけるイオン/中性物質組成を変更する方法が開示される。開示される方法は、一般的にイオンソースとともに実施され、特に間接加熱カソード(IHC)ソース、バーナスソースのようなソースおよびプラズマドーピング(PLAD)、プラズマエッチング、プラズマ蒸着/PVDとともに用いられてよい。この方法は、プラズマ中の平均電子温度/エネルギーを変更/増加するために用いられる。これにより、結果的に、電子衝突プロセス(イオン化、解離、励起)の可能性が変更される。
【0017】
プラズマ中において、好ましい粒子種の濃度を増加させ、好ましくない粒子種の濃度を減少させるために、イオンおよびラジカル組成を選択的に変更する機能を有することが望ましい。ナノ秒(ns)電界パルサを用いることで、電子エネルギーを選択的に変更することができ、これにより、プラズマのイオン組成の変更が可能となる。
【0018】
開示される方法の応用は、イオンおよび/または中性物質の組成、密度、温度、および同様に電子の密度およびエネルギー分布を制御することが望まれる、いかなるプラズマソースの応用を含む。そのような応用の非限定的な例のリストは、(1)高分子量イオンソース(例えば、カルボラン、デカボラン、オクタデカボラン)、(2)H2イオンソースを含むシリコンオンインシュレータ(SOI)プロセス、(3)プラズマドーピング(PLAD)を含むがこれらに限定されない。
【0019】
開示された方法は、プラズマに電界パルスを印加することを含む。シミュレーションにおいて、電界パルスは数nsのみ続き、〜1nsの立ち上がり時間を有する。この結果、電界は、プラズマシースのみではなく、プラズマ全体で生成される。この電界は、電子エネルギーの増加を引き起こす。時間スケールの小ささ(ns)に起因して、プラズマ中の電子のみが電界に影響されるが、比較的重いイオンは影響されない。これにより、電子エネルギーをプラズマのイオンとは別に、コントロールすることが可能になる。
【0020】
通例では、一般的に、プラズマを横断した電界を維持することはできないとされている。しかし、下記数式で示される、プラズマまたは電子周波数の逆数を超える程度の時間スケールにおいては可能である。
【数1】
ここで、ωpeはプラズマまたは電子周波数であり、qは電荷であり、neは電子密度であり、meは電子質量であり、εоは自由空間における誘電率である。ne=1010cm−3、ωpe≒0.9GHzの場合、電子応答時間τe=1.1nsとなる。
【0021】
約1.1nsよりも大きい電界パルスがプラズマに印加される状況においては、電子はほぼ即時にパルスに応答し、これによりシースを適用されたバイアスに適合するように変更する。このシースにおける電圧降下は、プラズマを通した電界をアクティブに防止する。
【0022】
しかし、電界パルスの大きさの立ち上がりが、電子応答時間τeよりも早い(すなわち、ナノ秒またはナノ未満秒のパルスが用いられる)場合、短時間であるが電界はプラズマを通して生成されうる。これは、電子が応答する十分な時間が経過する前(すなわち、サブns)に電界が生成されるので、電子が電界中に浸されるためである。
【0023】
これを確認するために、本発明者らは、プラズマデバイスコードXPDP1(デバイスコードはhttp://ptsg.eecs.berkeley.edu/から入手可能)を用いて、このシナリオの一次元パーティクルインセル(PIC)プラズマシミュレーションを開発した。このモデルのブロック図は、外部回路とともに図1Aに示される。その結果が以下に示される。
【0024】
PICシミュレーションの入力条件は以下の通りである。
電子密度ne=1010cm−3
電子温度Te=4eV
チャンバ長さL=0.3m
空間セル数10000
セル幅=0.3μm
時間ステップ=10−12s
100000コンピュータ粒子
圧力=1mTorr
【0025】
L、RおよびCは、XPDP1シミュレーションのための外部回路と関連づけられるインダクタンス、抵抗およびキャパシタンスである。この場合、電圧パルスが電界を生成するが、同じ電界を生成するために他の方法を用いてもよい。
【0026】
XPDP1、1次元PICシミュレーション計算機は、ナノ秒パルス印加以前の5nsの間ゼロバイアスで実行され、シースが形成し平衡(すなわち、安定プラズマ状態)に達した状態を得る。図1Bには、約−1.1×103Vの負電圧パルスが約1nsの期間にわたり印加された入力電圧ナノパルスが示される。
【0027】
図2−8において、左側電極(LHS−シミュレーションにおいて用いられたプラズマリアクタの左側電極の電圧)の分布ポテンシャル10、プラズマ横断ポテンシャル20、プラズマ横断電界30、電子エネルギー分布関数(EEDF)40−電子分布対プラズマ内のそのエネルギーを表す−および電子速度(X方向)50のスナップショットが、シミュレーション期間の全体において示される。
【0028】
図2は、電圧パルスの開始前のプラズマ特性を示す。ポテンシャル20に示されるように、プラズマポテンシャルは安定化される。すなわち、ポテンシャル20および電界30を示すラインは平坦である。
【0029】
図3は、電圧パルスの立ち上がり時間に入った後0.1nsのプラズマ特定を示す。電圧パルスは、LHSポテンシャル10において下向きとなることが観察される。同様に、プラズマを通じたわずかな電圧降下(ポテンシャル20)が観察される。電圧の立ち上がりは(電子応答時間τeと比較して)急速であり、接する電極のポテンシャルの突然の上昇に起因する電圧降下に、シースが適合することができない。従って、プラズマ横断電圧降下(ポテンシャル)は、以下のように表される。ここで、V=ポテンシャル、ρ=最終的な荷電種の密度、およびεо=誘電率である。
【数2】
【0030】
これから、電圧変動(ポテンシャル20)はプラズマを通して線形であるだろうということが結論づけられる。図4は、電圧パルスの立ち上がり時間に入った後0.5nsのプラズマ特性のスナップショットを示す。
【0031】
この場合t=6ns(電圧パルス開始後1ns、図5参照)に対応する、電圧パルスがその最大絶対値に上昇した時点(LHSポテンシャル10およびポテンシャル20参照)においても、印加された電圧はプラズマ全体を通じて依然降下したままであることが示される。前述したように、この電圧降下は、パルスに応答するには電子の有する時間が不十分であることに起因する。
【0032】
t=7nsを表す図6に示されるように、電子は電界に応答する。この結果、チャンバ壁近傍において電荷分離が増加し、これによりシースがより薄くなる。この後、プラズマ全体を通じた電圧降下が、成長するシースによってゆっくりと調整される。図7は、継続する電圧パルスの開始後2.5ns後である、t=8.5nsにおけるプラズマ特性を示す。平均電子速度50が増加したことが観察される(平均は図2−6よりもより正である)。
【0033】
ここで図8を参照すると、継続する電圧パルスの開始後3.0nsである、t=9nsにおけるプラズマ特性が示される。再び、平均電子速度50が増加しつづけていることが観察されるだろう。電子エネルギー分布関数(EEDF)(logスケール)対電子エネルギー(eV)のグラフである図9から明らかなように、EEDF40も著しく勾配が大きい。曲線52はt=6ns(即ち、電圧パルスの開始1ns後)のプラズマ中の電子エネルギー状態を示し、曲線54はt=7ns示し、曲線56はt=8nsを示し、曲線58はt=9nsを示し、そして曲線59はt=10nsを示す。
【0034】
これらの図が示すように、ナノ/ナノ未満秒の実効電界パルスを用いて、プラズマ中のEEDFを変更することができる。結果的に、プラズマ中のイオン/中性物質の組成、密度、および温度を変更することも可能であるだろう。これは、これらのパラメータがEEDFに関連するためである。
【0035】
例1:以下において、プラズマドーピング(PLAD)ツール上で実行された実験の結果が示される。図10に関連して、ナノパルサのピーク印加電圧の関数として図示されるイオン分別のバリエーションが示される。この分別は、プラズマ中でどのイオンが生成されるかに言及する(即ち、ジボランであれば、B2H5+またはB2H4+を生成しうる)。図10から分かるように、例えば、(ナノパルサに適用されたように)電圧パルスの大きさが大きくなると、(他と比較して)H+濃度が上昇し、He+イオンの関連する相対的分別度(即ち、濃度)が減少する。従って、ナノパルサの電圧を変化させることで、ユーザは特定のプロセスに適合する所望のイオンの生成を調整することができる。
【0036】
図11は、パルス電圧変化の生成されたイオン濃度における変化を示す。図11は、パルサ電圧の関数としての、(He中の)0.1%B2H6プラズマの飛行時間(TOF)スペクトルを示す。本図において、He+およびBxHyフラクションの生成が、パルサ電圧の変化とともに観察される。パルサ電圧上昇がB3Hx+のイオン濃度の減少を生じさせる一方、パルサ電圧上昇がBHx+およびB2Hx+イオン濃度を増加させたことが観察されうる。従って、パルサ電圧を調整することにより、さらなるイオン濃度の微調整が達成される。
【0037】
図12は、プラズマ中のジボラン(B2H6)濃度の変化が、電圧パルスにより、どのように生成されるイオン濃度に影響しうるかを表す。図12は、パルス電圧の関数としての、(He中の)0.5%B2H6プラズマのTOFスペクトルのグラフを示す。図11と図12の唯一の違いは、ジボラン濃度である(図12において0.5%であるのに対し、図11において0.1%)。ジボラン濃度を変化させることにより、ナノパルサの効果が異なるものとなることが観察されうる。特に、図11のB3Hx+ピークと比較して、B3Hx+濃度の5倍の増加が達成される。
【0038】
図13は、シリコン基板表面下の深度の関数としてのホウ素濃度のバリエーションのSIMSプロフィールを示す。プロフィールから、パルサあり(曲線70、90)の正味ドースが、同一のプラズマ濃度を電圧パルスなしで用いた同様のインプラント(曲線60、80)に対して〜20%増加している。従って、曲線60および70は、0.1%ジボラン濃度および0.325kVのウエハバイアスを有するプラズマにより達成されるSIMSプロフィールである。ここで、曲線70は、250Vナノパルスを用いて得られたインプラント量を示すが、曲線60はナノパルスなしで得られたインプラント量を示す。これにより、開示された方法を用いることで、より大きな深度でより高いイオン濃度を達成できることが結論づけられる。本発明者らは、これは開示された電圧パルス法を用いてプラズマ中に生成されるイオン密度を増加させ、同様にB2Hx+とB3Hx+の濃度を増加させた結果であると考える。図13は、パルス有およびパルス無の場合におけるSIMSプロフィールの比較を示す。
【0039】
同様に、曲線80と90は、0.5%ジボラン濃度のプラズマおよび0.325kVのウエハバイアスで得られたSIMSプロフィールを示す。しかし、曲線90は、250Vナノパルスを用いて得られたインプラント量を示すが、曲線80はナノパルスなしで得られたインプラント量を示す。これらの結果によっても、開示された方法を用いることで、より大きな深度でより高い濃度を達成できることが結論づけられる。さらに、この濃度を変化させるために、ジボラン組成の変化が同様に用いられる。ナノパルスは、プラズマ組成を変え、プラズマ中の異なった化学的特性およびインプラントメカニズムの変化に引き起こす。
【0040】
図の結果は、プラズマ中のジボラン濃度を変化させることにより、又は変化させることなく、開示されたナノパルス法を用いてインプラントプロフィールを改良することが可能であることを示す。
【0041】
図14は、パルサ電圧の関数としてのEEDF(電子エネルギー分布関数)のバリエーションを示す。図14のグラフは、EEDF対電子エネルギー(eV)のlogプロットである。図の値は、6mTorrにおける550Wのアルゴンプラズマおよび電子エネルギー分布を測定するために挿入されたプローブを用いて実験的に計算される。電子エネルギー分布は、0V(100)、150V(110)、300V(120)、450V(130)、600V(140)の異なったナノパルス電圧において測定される。ナノパルス無しで得られたデータ(100)は、ナノパルスの存在下で得られたデータ(100−140)と比較して、概してより多くの低エネルギーの電子を示すことが観察される。(電子温度Teを表す)EEDFの勾配の増大は、XPDP1シミュレーション中で観察されるようなものである。
【0042】
つまり、電子応答時間τeよりも早いナノまたはナノ未満秒の電圧パルスを適用することにより、プラズマの平均電子エネルギーを変化させることができる。これは、(τe∝√neであるため)高プラズマ濃度に対し高速の立ち上がり時間を有するパルス(ナノ未満秒パルス)を用いるか、低プラズマ濃度に対し中程度に高速の立ち上がり時間を有するパルス(ナノ秒パルス)を用いることで達成される。平均電子エネルギーの望まれる改良を得るのに立ち上がり時間の間または終わりにおけるパルス振幅が十分となるように、電界パルスは電子プラズマ周波数の逆数と実質的に等しいまたは未満の立ち上がり時間を有する。この文脈で「実質的に等しい」という用語は、立ち上がり時間が、イオンプラズマ周波数の逆数よりも小さい限りにおいて、電子プラズマ周波数の逆数よりもわずかに大きくてよいことを意味する。
【0043】
開示された方法は、プラズマ中のEEDFの改良を可能にする。これは、シリコンオンインシュレータ(SOI)に応用されるプロセスである、IHCソース中のH+分別を増加または改良するための特定の使用法でありうる。
【0044】
図15において、プラズマドーピング(PLAD)ツールに用いられる、高速パルス生成器の実施例が示される。ナノパルス生成器150は、PLADツールの遮蔽板152に接続される。遮蔽板152は、絶縁体154によってグランドから絶縁され、高電圧供給器156を通じてパルス生成器10に接続される。垂直コイル160または水平コイル162にRF電力により電力を供給して、管158でプラズマが生成される。
【0045】
ここで、図16において、プラズマエンハンスド化学気相成長法(PECVD)ツールに用いられる、高速パルス生成器の第2の実施例が示される。ナノパルス生成器164は、プラズマ管168の内側に配された円筒状リング166に接続され、水晶のような絶縁体170により管本体から絶縁される。円筒状リング166にナノパルスが印加され、プレシース中に存在する電子eをプラズマボディ172に向けて加速する。
【0046】
図17において、PECVDは主に中性物質、イオンおよび基板174の表面上のイオンアシストによる堆積物により駆動される。中性物質による堆積物は、高アスペクト比構造178(トレンチまたはビア180)の入り口のキャップ176の形成を引き起こし、それらの内側にボイドを形成する。イオンによる堆積物は、その指向性のおかげで、入り口を塞ぐことなく構造の底部に所望のイオン種を堆積させることができる。さらに、他の平行経路と比較して、イオンアシストによる堆積はより早く進行する。従って、開示された方法を用いてイオン密度を増加させることで、高アスペクト比構造に充填する性能におけるプロセスパフォーマンスだけでなく、堆積速度も同様に向上することができる。
【0047】
開示された方法は、PECVDプロセス中で中性物質(即ち、ラジカル)密度に対するイオン密度比を増加するため、プラズマに超高速パルス電圧を印加することに用いられうる。一実施形態において、高速負電圧パルスは、プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間とともに用いられる。また、パルス幅は、プラズマシース中のイオン通過時間よりも短い。前述したように、電圧は、プラズマに面するどの絶縁された表面にも印加されうる。高速立ち上がり電界に影響される電子は、エネルギーを獲得し、プラズマ中を移動し、その経路中のガス分子をイオン化し、励起し、または解離する。各電子が生成するイオン化、励起、解離等の数は、(電圧パルスから得られる)電子の初期エネルギー、ガス密度、および特定のプロセスにおける電子/分子衝突断面積に依存するだろう。
【0048】
プラズマ密度の増加のCVDプロセスにおける指向性に対する効果は、図18に示される。図18において、プロセス指向性(規格化された側壁:トレンチ底部成長比率)がプラズマ特性に対してプロットされる。図18から、プラズマ中のイオン濃度の増加によって、より大きな指向性が生じ、これにより高アスペクト比のトレンチ/ビアに対する充填性が強化されることが観察される。
【0049】
図15および16の配置は、プラズマ中において、ナノ/ナノ未満秒パルスが適用される複数の電極を含んでよいことが理解されるだろう。ナノ/ナノ未満秒パルスに用いられる複数の電極の組み合わせは、ここに示されるものと異なる結果を生じうる。例えば、プラズマを挟んで対向する2電極に、非同期的に「ナノ秒パルス」することで、電子の振り子運動を引き起こすことができる。電子の振り子運動は、プラズマ中の電子の効果の増幅器として機能する。そのような配置の同期的なバイアスは電子が豊富なコアを生じさせる。
【0050】
開示された方法は、イオン組成を増加/改良することが望ましい様々な応用のいずれかにおいて用いられうる。例えば、開示された方法において、例えば、カルボラン、デカボラン、オクタデカボランといった高分子質量イオンソースを用いる特定の応用が見いだされる。堆積は、高分子重量化合物を用いたイオンソースに関連した問題の一つである。重度の堆積は結果的にソース寿命および効率を減少させる。堆積するラジカルをより少なく生成するようにナノパルス電圧を調節することにより、堆積が最小化されうる。望ましくない堆積の原因となるラジカルの生成を減少させるように、適用されるナノパルス電界が調整される。表面上で反応する特定のラジカル量を減少させることで、望ましくない堆積がより少なくなる。
【0051】
開示される方法の別の好ましい応用は、H2イオンソースを用いるシリコンオンインシュレータ(SOI)プロセスによるものである。H3+の組成を選択的に増加することと、これらのイオンソースのスループットを向上させることは相互関係を有する。
【0052】
さらに、開示された方法は、低インプラント電圧において高インプラントドースを必要とするプロセスである、B2H6/H2混合物を用いたPLADに利用されうる。現状、これらのプロセスは、低Bイオン密度により生じる長いインプラント時間に起因した低スループットの問題を有する。これらのプロセスは、長いインプラント時間に起因して、望まれずに増加する堆積の問題も有する。開示された方法を適用することにより、改良されたBイオン密度比が達成され得、スループットが増加することが期待される。
【0053】
本発明の利用は幾通りにもなりうる。このアプローチにより、EEDFを改良し、結果的にプラズマのイオン/中性物質組成を改良することが可能となりうる。従って、プラズマを用いたいかなるアプリケーションも本方法から利することができる。
【0054】
ここに記述される方法は、例えば、命令実行可能な機械が読み取り可能なコンピュータ可読記憶媒体上に、命令からなるプログラムを具体的に具現化することにより自動化されうる。汎用コンピュータがそのような機械の一例である。当業者に周知の適切な記憶媒体の非限定的なリストは、読取り可能または書込み可能CD、フラッシュメモリチップ(例えば、サムドライブ)、および様々な磁気記憶媒体等のようなデバイスを含みうる。
【0055】
本発明は特定の実施形態への参照とともに開示されたが、添付された特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から離れることなく記述された実施形態への数的改良、代替および変形が可能である。これにより、本発明は、記述された実施形態に限定されず、後述する特許請求の範囲の用語およびその均等物に定義されるすべての範囲を含むことが意図される。
【0056】
ここに記載される機能およびプロセスステップは、ユーザのコマンドに応じて、自動的、全体的、または部分的に実行されてよい。自動的に実行される活動(ステップを含む)は、ユーザの直接の活動の起動がなくても、実行可能命令またはデバイスオペレーションに応答して実行される。
【0057】
本発明は、特定の実施形態への言及とともに記載されたが、ここに記載された実施形態およびバリエーションは説明の目的のみを有することを理解されたい。当業者によって、現在のデザインに対する改良が本発明の範囲から離れることなく、なされ得るだろう。代替的な実施形態において、ネットワークにアクセスする1以上の(分配された)処理デバイス上に、プロセスおよびアプリケーションが位置し得る。さらに、開示された関数およびステップのいずれも、ハードウエア、ソフトウエアまたは両者の組み合わせにより実施され得、インターネットを含むネットワーク上のいかなる場所における処理デバイスに存在し得る。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラズマ生成の分野に関する。より具体的には、本発明は、準大気圧プラズマ中のイオンおよびラジカルの密度、温度および組成、および、電子の密度およびエネルギーを選択的に制御するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマは、半導体プロセスにおいて、プラズマエンハスド化学気相成長法(PECVD)および基板ドーピングのように、様々な方法により用いられる。このようなプロセスは、シリコンウエハのようなターゲット基板の表面上または表面下における、イオンの指向性堆積またはドーピングを含む。他のプロセスとして、エッチング種の指向性がエッチングされる溝の品質を決定するプラズマエッチングが含まれる。
【0003】
典型的なプラズマドーピングは、プラズマ内の荷電イオン特性を利用し、ターゲット表面上または表面下にイオンを堆積する。ここで、プラズマ堆積プロセスは、基板表面上に堆積する中性物質に依存する。中性物質は荷電していないので制御が難しく、従って、最終プロセスを妨害するように表面上に蓄積しうる。
【0004】
さらに、プラズマは典型的に異なるイオン種および中性物質種を有する。特定のプロセスを実行するために、プラズマ内で特定種を最大化し、別の特定種を最小化することが望ましい。同様に、現在用いられる方法と比較して、プラズマ組成をより十分に制御する方法を有することが有効であるだろう。
【0005】
従って、好ましいイオン種の存在を最大化し、ドーピングの利用に好ましくないイオン種および中性物質の存在を最小化するために、イオン組成およびプラズマ密度を制御する方法が必要である。中性物質が望まれる、エッチングおよび堆積等の他の利用形態のためには、その逆が望ましいかもしれない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
プラズマプロセスツールの性能は、関連するプラズマ組成に依存する。ここに開示される方法は、プラズマ中の電子のエネルギー分布を変更することにより、ユーザがプラズマ組成(イオン種及び中性物質(すなわちラジカル)種、これらの種の励起状態、および電子エネルギー分布を含む)および密度を制御することを可能にする。エネルギー電子は、1以上の超高速電界(E−field)パルスを用いて、電子の一部を加速することによりプラズマ中で生成される。このパルスは、電子に影響する程度には十分長く、その比較的大きな質量に大きく起因してイオンに影響を与えるには短すぎる。エネルギー電子とプラズマの構成物質とが衝突すると、結果的にプラズマ組成に変化が生じる。注意深く電子エネルギーを制御することで、使用される特定のプロセス要求に適合できるように、プラズマ組成を最適化できる。ある実施形態において、これはプラズマ中のイオン種の比率の変更、イオン化と解離の比率の変更、プラズマの励起状態占有率の変更を伴う。
【0007】
ある実施形態において、この方法は、プラズマイオンプランテーション(すなわち、ドーピング)の間、現行の方法により得られるよりも高い、ガス中分子の解離に対するイオン化比率を達成するために用いられうる。これにより、高いプラズマ密度が得られ、また、処理される基板上の堆積が減少する。
【0008】
この超高速電界パルスは、プラズマに面する電気的に絶縁された表面に対して印加される。例えば、この表面は遮蔽板(バッフル)またはインプラントされる基板であってよい。電界パルスは、実質的にプラズマ(電子)周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有する。また、パルス幅は、プラズマシースにおけるイオン通過時間よりもずっと短くてよい。印加される高速上昇電界利得エネルギーの影響を受ける電子は、プラズマ中を移動し、その経路上のガス分子をイオン化し、励起し、または解離する。各電子が生成するイオン化、励起、解離等の数は、(電界パルスから得られる)電子のエネルギー、ガス密度、および特定のプロセスにおける電子/分子衝突断面積に依存するだろう。
【0009】
チャンバに供給ガスを供給する段階、供給ガスを励起してプラズマを生成する段階、およびプラズマに電界パルスを印加する段階を備える、準大気圧プラズマを改良する方法が開示される。電界パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有してよい。電界パルスは、同様に、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有してよい。ここで、電界パルスはプラズマの電子に選択的に影響するが、プラズマのイオンには実質的に影響を与えない。また、影響を受けた電子は、プラズマ中のイオンおよび中性物質の組成、密度、および温度を改良する。
【0010】
供給ガスをチャンバに供給する段階、供給ガスを励起してプラズマを生成する段階、および電界パルスをプラズマに印加する段階とを備える、準大気圧プラズマを改良する方法が開示される。電界パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有してよい。電界パルスは、同様に、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有してよい。ここで、電界パルスはプラズマの電子に選択的に影響するが、プラズマのイオンには実質的に影響を与えない。また、電界パルスの立ち上がり時間、電界パルスの期間、および電界パルスの振幅の少なくとも1つを制御することで、電子密度およびエネルギー分布の制御を介して、プラズマ中のイオンおよび中性物質の組成、密度および温度が改良される。
【0011】
電界パルスをプラズマに印加する、プラズマを調整する方法が開示される。電界パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有してよい。電界パルスは、同様に、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有してよい。ここで、電界パルスはプラズマの電子に選択的に影響するが、プラズマのイオンには実質的に影響を与えない。
【0012】
連続電磁波パルスをプラズマに印加する段階を備え、連続電磁波パルスは非振動極性の電界および電子プラズマ周波数以上の周波数を有する、プラズマを調整する方法が開示される。連続電磁波パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有してよい。連続電磁波パルスは、同様に、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有してよい。ここで、連続電磁波パルスはプラズマの電子に選択的に影響するが、プラズマのイオンには実質的に影響を与えない。
【0013】
チャンバ、チャンバ内で支持され、チャンバから絶縁される遮蔽板、および高電圧フィードスルーを介して遮蔽板と接続されるパルス生成器を備えるプラズマドーピングシステムが開示される。パルス生成器は、チャンバに閉じ込められたプラズマに電界パルスを供給する。パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有し、また、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有してよい。
【0014】
添付される図面は、この原理の実用的応用のために想定される、開示された方法の好ましい実施形態を表す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】1次元パーティクルインセル(PIC)法プラズマシュミレーションのブロック図を外部回路とともに示す。
【図1B】入力電圧ナノパルスの図を示す。
【図2】電圧パルスの開始に先立って、図1AのPICプラズマシュミレーションを用いてシミュレートした左側(LHS)ポテンシャル、プラズマ横断ポテンシャル、プラズマ横断電界、電子エネルギー分布関数、および電子速度の一連の図を示す。
【図3】電圧パルス後0.1ナノ秒における図2に示される測定結果の一連の図である。
【図4】電圧パルス後0.5ナノ秒における図2に示される測定結果の一連の図である。
【図5】電圧パルスの立ち上がりの終点における図2に示される測定結果の一連の図である。
【図6】電圧パルスの立ち上がりの完了後における図2に示される測定結果の一連の図である。
【図7】電圧パルスの開始後3.5ナノ秒における図2に示される測定結果の一連の図である。
【図8】電圧パルスの開始後4ナノ秒における図2に示される測定結果の一連の図である。
【図9】電子エネルギー分布関数(EEDF)対電子エネルギーを示すグラフである。
【図10】ナノパルサに対するピーク印加電圧の関数としてのイオン分別のバリエーションを示す図である。
【図11】ナノパルサ電圧の関数としての0.1%B2H6(He中)プラズマの飛行時間(TOF)スペクトルのグラフを示す。
【図12】ナノパルサ電圧の関数としての0.5%B2H6(He中)プラズマのTOFスペクトルのグラフを示す。
【図13】シリコン基板の表面下深さの関数としてのホウ素濃度の変化のSIMSプロフィールを示す。
【図14】異なるナノパルサ電圧における、電子エネルギー分布関数(EEDF)対電子エネルギー(eV)のlogプロットを示す。
【図15】プラズマドーピング(PLAD)ツールにおけるナノパルサの実施例を示す。
【図16】プラズマエンハスド化学気相成長(PECVD)ツールにおけるナノパルサの第2の実施例を示す。
【図17】PECVD中の高アスペクト比構造上または周辺の堆積物の断面図を示す。
【図18】プロセス指向性対プラズマ特性のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
プラズマソース中におけるイオン/中性物質組成を変更する方法が開示される。開示される方法は、一般的にイオンソースとともに実施され、特に間接加熱カソード(IHC)ソース、バーナスソースのようなソースおよびプラズマドーピング(PLAD)、プラズマエッチング、プラズマ蒸着/PVDとともに用いられてよい。この方法は、プラズマ中の平均電子温度/エネルギーを変更/増加するために用いられる。これにより、結果的に、電子衝突プロセス(イオン化、解離、励起)の可能性が変更される。
【0017】
プラズマ中において、好ましい粒子種の濃度を増加させ、好ましくない粒子種の濃度を減少させるために、イオンおよびラジカル組成を選択的に変更する機能を有することが望ましい。ナノ秒(ns)電界パルサを用いることで、電子エネルギーを選択的に変更することができ、これにより、プラズマのイオン組成の変更が可能となる。
【0018】
開示される方法の応用は、イオンおよび/または中性物質の組成、密度、温度、および同様に電子の密度およびエネルギー分布を制御することが望まれる、いかなるプラズマソースの応用を含む。そのような応用の非限定的な例のリストは、(1)高分子量イオンソース(例えば、カルボラン、デカボラン、オクタデカボラン)、(2)H2イオンソースを含むシリコンオンインシュレータ(SOI)プロセス、(3)プラズマドーピング(PLAD)を含むがこれらに限定されない。
【0019】
開示された方法は、プラズマに電界パルスを印加することを含む。シミュレーションにおいて、電界パルスは数nsのみ続き、〜1nsの立ち上がり時間を有する。この結果、電界は、プラズマシースのみではなく、プラズマ全体で生成される。この電界は、電子エネルギーの増加を引き起こす。時間スケールの小ささ(ns)に起因して、プラズマ中の電子のみが電界に影響されるが、比較的重いイオンは影響されない。これにより、電子エネルギーをプラズマのイオンとは別に、コントロールすることが可能になる。
【0020】
通例では、一般的に、プラズマを横断した電界を維持することはできないとされている。しかし、下記数式で示される、プラズマまたは電子周波数の逆数を超える程度の時間スケールにおいては可能である。
【数1】
ここで、ωpeはプラズマまたは電子周波数であり、qは電荷であり、neは電子密度であり、meは電子質量であり、εоは自由空間における誘電率である。ne=1010cm−3、ωpe≒0.9GHzの場合、電子応答時間τe=1.1nsとなる。
【0021】
約1.1nsよりも大きい電界パルスがプラズマに印加される状況においては、電子はほぼ即時にパルスに応答し、これによりシースを適用されたバイアスに適合するように変更する。このシースにおける電圧降下は、プラズマを通した電界をアクティブに防止する。
【0022】
しかし、電界パルスの大きさの立ち上がりが、電子応答時間τeよりも早い(すなわち、ナノ秒またはナノ未満秒のパルスが用いられる)場合、短時間であるが電界はプラズマを通して生成されうる。これは、電子が応答する十分な時間が経過する前(すなわち、サブns)に電界が生成されるので、電子が電界中に浸されるためである。
【0023】
これを確認するために、本発明者らは、プラズマデバイスコードXPDP1(デバイスコードはhttp://ptsg.eecs.berkeley.edu/から入手可能)を用いて、このシナリオの一次元パーティクルインセル(PIC)プラズマシミュレーションを開発した。このモデルのブロック図は、外部回路とともに図1Aに示される。その結果が以下に示される。
【0024】
PICシミュレーションの入力条件は以下の通りである。
電子密度ne=1010cm−3
電子温度Te=4eV
チャンバ長さL=0.3m
空間セル数10000
セル幅=0.3μm
時間ステップ=10−12s
100000コンピュータ粒子
圧力=1mTorr
【0025】
L、RおよびCは、XPDP1シミュレーションのための外部回路と関連づけられるインダクタンス、抵抗およびキャパシタンスである。この場合、電圧パルスが電界を生成するが、同じ電界を生成するために他の方法を用いてもよい。
【0026】
XPDP1、1次元PICシミュレーション計算機は、ナノ秒パルス印加以前の5nsの間ゼロバイアスで実行され、シースが形成し平衡(すなわち、安定プラズマ状態)に達した状態を得る。図1Bには、約−1.1×103Vの負電圧パルスが約1nsの期間にわたり印加された入力電圧ナノパルスが示される。
【0027】
図2−8において、左側電極(LHS−シミュレーションにおいて用いられたプラズマリアクタの左側電極の電圧)の分布ポテンシャル10、プラズマ横断ポテンシャル20、プラズマ横断電界30、電子エネルギー分布関数(EEDF)40−電子分布対プラズマ内のそのエネルギーを表す−および電子速度(X方向)50のスナップショットが、シミュレーション期間の全体において示される。
【0028】
図2は、電圧パルスの開始前のプラズマ特性を示す。ポテンシャル20に示されるように、プラズマポテンシャルは安定化される。すなわち、ポテンシャル20および電界30を示すラインは平坦である。
【0029】
図3は、電圧パルスの立ち上がり時間に入った後0.1nsのプラズマ特定を示す。電圧パルスは、LHSポテンシャル10において下向きとなることが観察される。同様に、プラズマを通じたわずかな電圧降下(ポテンシャル20)が観察される。電圧の立ち上がりは(電子応答時間τeと比較して)急速であり、接する電極のポテンシャルの突然の上昇に起因する電圧降下に、シースが適合することができない。従って、プラズマ横断電圧降下(ポテンシャル)は、以下のように表される。ここで、V=ポテンシャル、ρ=最終的な荷電種の密度、およびεо=誘電率である。
【数2】
【0030】
これから、電圧変動(ポテンシャル20)はプラズマを通して線形であるだろうということが結論づけられる。図4は、電圧パルスの立ち上がり時間に入った後0.5nsのプラズマ特性のスナップショットを示す。
【0031】
この場合t=6ns(電圧パルス開始後1ns、図5参照)に対応する、電圧パルスがその最大絶対値に上昇した時点(LHSポテンシャル10およびポテンシャル20参照)においても、印加された電圧はプラズマ全体を通じて依然降下したままであることが示される。前述したように、この電圧降下は、パルスに応答するには電子の有する時間が不十分であることに起因する。
【0032】
t=7nsを表す図6に示されるように、電子は電界に応答する。この結果、チャンバ壁近傍において電荷分離が増加し、これによりシースがより薄くなる。この後、プラズマ全体を通じた電圧降下が、成長するシースによってゆっくりと調整される。図7は、継続する電圧パルスの開始後2.5ns後である、t=8.5nsにおけるプラズマ特性を示す。平均電子速度50が増加したことが観察される(平均は図2−6よりもより正である)。
【0033】
ここで図8を参照すると、継続する電圧パルスの開始後3.0nsである、t=9nsにおけるプラズマ特性が示される。再び、平均電子速度50が増加しつづけていることが観察されるだろう。電子エネルギー分布関数(EEDF)(logスケール)対電子エネルギー(eV)のグラフである図9から明らかなように、EEDF40も著しく勾配が大きい。曲線52はt=6ns(即ち、電圧パルスの開始1ns後)のプラズマ中の電子エネルギー状態を示し、曲線54はt=7ns示し、曲線56はt=8nsを示し、曲線58はt=9nsを示し、そして曲線59はt=10nsを示す。
【0034】
これらの図が示すように、ナノ/ナノ未満秒の実効電界パルスを用いて、プラズマ中のEEDFを変更することができる。結果的に、プラズマ中のイオン/中性物質の組成、密度、および温度を変更することも可能であるだろう。これは、これらのパラメータがEEDFに関連するためである。
【0035】
例1:以下において、プラズマドーピング(PLAD)ツール上で実行された実験の結果が示される。図10に関連して、ナノパルサのピーク印加電圧の関数として図示されるイオン分別のバリエーションが示される。この分別は、プラズマ中でどのイオンが生成されるかに言及する(即ち、ジボランであれば、B2H5+またはB2H4+を生成しうる)。図10から分かるように、例えば、(ナノパルサに適用されたように)電圧パルスの大きさが大きくなると、(他と比較して)H+濃度が上昇し、He+イオンの関連する相対的分別度(即ち、濃度)が減少する。従って、ナノパルサの電圧を変化させることで、ユーザは特定のプロセスに適合する所望のイオンの生成を調整することができる。
【0036】
図11は、パルス電圧変化の生成されたイオン濃度における変化を示す。図11は、パルサ電圧の関数としての、(He中の)0.1%B2H6プラズマの飛行時間(TOF)スペクトルを示す。本図において、He+およびBxHyフラクションの生成が、パルサ電圧の変化とともに観察される。パルサ電圧上昇がB3Hx+のイオン濃度の減少を生じさせる一方、パルサ電圧上昇がBHx+およびB2Hx+イオン濃度を増加させたことが観察されうる。従って、パルサ電圧を調整することにより、さらなるイオン濃度の微調整が達成される。
【0037】
図12は、プラズマ中のジボラン(B2H6)濃度の変化が、電圧パルスにより、どのように生成されるイオン濃度に影響しうるかを表す。図12は、パルス電圧の関数としての、(He中の)0.5%B2H6プラズマのTOFスペクトルのグラフを示す。図11と図12の唯一の違いは、ジボラン濃度である(図12において0.5%であるのに対し、図11において0.1%)。ジボラン濃度を変化させることにより、ナノパルサの効果が異なるものとなることが観察されうる。特に、図11のB3Hx+ピークと比較して、B3Hx+濃度の5倍の増加が達成される。
【0038】
図13は、シリコン基板表面下の深度の関数としてのホウ素濃度のバリエーションのSIMSプロフィールを示す。プロフィールから、パルサあり(曲線70、90)の正味ドースが、同一のプラズマ濃度を電圧パルスなしで用いた同様のインプラント(曲線60、80)に対して〜20%増加している。従って、曲線60および70は、0.1%ジボラン濃度および0.325kVのウエハバイアスを有するプラズマにより達成されるSIMSプロフィールである。ここで、曲線70は、250Vナノパルスを用いて得られたインプラント量を示すが、曲線60はナノパルスなしで得られたインプラント量を示す。これにより、開示された方法を用いることで、より大きな深度でより高いイオン濃度を達成できることが結論づけられる。本発明者らは、これは開示された電圧パルス法を用いてプラズマ中に生成されるイオン密度を増加させ、同様にB2Hx+とB3Hx+の濃度を増加させた結果であると考える。図13は、パルス有およびパルス無の場合におけるSIMSプロフィールの比較を示す。
【0039】
同様に、曲線80と90は、0.5%ジボラン濃度のプラズマおよび0.325kVのウエハバイアスで得られたSIMSプロフィールを示す。しかし、曲線90は、250Vナノパルスを用いて得られたインプラント量を示すが、曲線80はナノパルスなしで得られたインプラント量を示す。これらの結果によっても、開示された方法を用いることで、より大きな深度でより高い濃度を達成できることが結論づけられる。さらに、この濃度を変化させるために、ジボラン組成の変化が同様に用いられる。ナノパルスは、プラズマ組成を変え、プラズマ中の異なった化学的特性およびインプラントメカニズムの変化に引き起こす。
【0040】
図の結果は、プラズマ中のジボラン濃度を変化させることにより、又は変化させることなく、開示されたナノパルス法を用いてインプラントプロフィールを改良することが可能であることを示す。
【0041】
図14は、パルサ電圧の関数としてのEEDF(電子エネルギー分布関数)のバリエーションを示す。図14のグラフは、EEDF対電子エネルギー(eV)のlogプロットである。図の値は、6mTorrにおける550Wのアルゴンプラズマおよび電子エネルギー分布を測定するために挿入されたプローブを用いて実験的に計算される。電子エネルギー分布は、0V(100)、150V(110)、300V(120)、450V(130)、600V(140)の異なったナノパルス電圧において測定される。ナノパルス無しで得られたデータ(100)は、ナノパルスの存在下で得られたデータ(100−140)と比較して、概してより多くの低エネルギーの電子を示すことが観察される。(電子温度Teを表す)EEDFの勾配の増大は、XPDP1シミュレーション中で観察されるようなものである。
【0042】
つまり、電子応答時間τeよりも早いナノまたはナノ未満秒の電圧パルスを適用することにより、プラズマの平均電子エネルギーを変化させることができる。これは、(τe∝√neであるため)高プラズマ濃度に対し高速の立ち上がり時間を有するパルス(ナノ未満秒パルス)を用いるか、低プラズマ濃度に対し中程度に高速の立ち上がり時間を有するパルス(ナノ秒パルス)を用いることで達成される。平均電子エネルギーの望まれる改良を得るのに立ち上がり時間の間または終わりにおけるパルス振幅が十分となるように、電界パルスは電子プラズマ周波数の逆数と実質的に等しいまたは未満の立ち上がり時間を有する。この文脈で「実質的に等しい」という用語は、立ち上がり時間が、イオンプラズマ周波数の逆数よりも小さい限りにおいて、電子プラズマ周波数の逆数よりもわずかに大きくてよいことを意味する。
【0043】
開示された方法は、プラズマ中のEEDFの改良を可能にする。これは、シリコンオンインシュレータ(SOI)に応用されるプロセスである、IHCソース中のH+分別を増加または改良するための特定の使用法でありうる。
【0044】
図15において、プラズマドーピング(PLAD)ツールに用いられる、高速パルス生成器の実施例が示される。ナノパルス生成器150は、PLADツールの遮蔽板152に接続される。遮蔽板152は、絶縁体154によってグランドから絶縁され、高電圧供給器156を通じてパルス生成器10に接続される。垂直コイル160または水平コイル162にRF電力により電力を供給して、管158でプラズマが生成される。
【0045】
ここで、図16において、プラズマエンハンスド化学気相成長法(PECVD)ツールに用いられる、高速パルス生成器の第2の実施例が示される。ナノパルス生成器164は、プラズマ管168の内側に配された円筒状リング166に接続され、水晶のような絶縁体170により管本体から絶縁される。円筒状リング166にナノパルスが印加され、プレシース中に存在する電子eをプラズマボディ172に向けて加速する。
【0046】
図17において、PECVDは主に中性物質、イオンおよび基板174の表面上のイオンアシストによる堆積物により駆動される。中性物質による堆積物は、高アスペクト比構造178(トレンチまたはビア180)の入り口のキャップ176の形成を引き起こし、それらの内側にボイドを形成する。イオンによる堆積物は、その指向性のおかげで、入り口を塞ぐことなく構造の底部に所望のイオン種を堆積させることができる。さらに、他の平行経路と比較して、イオンアシストによる堆積はより早く進行する。従って、開示された方法を用いてイオン密度を増加させることで、高アスペクト比構造に充填する性能におけるプロセスパフォーマンスだけでなく、堆積速度も同様に向上することができる。
【0047】
開示された方法は、PECVDプロセス中で中性物質(即ち、ラジカル)密度に対するイオン密度比を増加するため、プラズマに超高速パルス電圧を印加することに用いられうる。一実施形態において、高速負電圧パルスは、プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間とともに用いられる。また、パルス幅は、プラズマシース中のイオン通過時間よりも短い。前述したように、電圧は、プラズマに面するどの絶縁された表面にも印加されうる。高速立ち上がり電界に影響される電子は、エネルギーを獲得し、プラズマ中を移動し、その経路中のガス分子をイオン化し、励起し、または解離する。各電子が生成するイオン化、励起、解離等の数は、(電圧パルスから得られる)電子の初期エネルギー、ガス密度、および特定のプロセスにおける電子/分子衝突断面積に依存するだろう。
【0048】
プラズマ密度の増加のCVDプロセスにおける指向性に対する効果は、図18に示される。図18において、プロセス指向性(規格化された側壁:トレンチ底部成長比率)がプラズマ特性に対してプロットされる。図18から、プラズマ中のイオン濃度の増加によって、より大きな指向性が生じ、これにより高アスペクト比のトレンチ/ビアに対する充填性が強化されることが観察される。
【0049】
図15および16の配置は、プラズマ中において、ナノ/ナノ未満秒パルスが適用される複数の電極を含んでよいことが理解されるだろう。ナノ/ナノ未満秒パルスに用いられる複数の電極の組み合わせは、ここに示されるものと異なる結果を生じうる。例えば、プラズマを挟んで対向する2電極に、非同期的に「ナノ秒パルス」することで、電子の振り子運動を引き起こすことができる。電子の振り子運動は、プラズマ中の電子の効果の増幅器として機能する。そのような配置の同期的なバイアスは電子が豊富なコアを生じさせる。
【0050】
開示された方法は、イオン組成を増加/改良することが望ましい様々な応用のいずれかにおいて用いられうる。例えば、開示された方法において、例えば、カルボラン、デカボラン、オクタデカボランといった高分子質量イオンソースを用いる特定の応用が見いだされる。堆積は、高分子重量化合物を用いたイオンソースに関連した問題の一つである。重度の堆積は結果的にソース寿命および効率を減少させる。堆積するラジカルをより少なく生成するようにナノパルス電圧を調節することにより、堆積が最小化されうる。望ましくない堆積の原因となるラジカルの生成を減少させるように、適用されるナノパルス電界が調整される。表面上で反応する特定のラジカル量を減少させることで、望ましくない堆積がより少なくなる。
【0051】
開示される方法の別の好ましい応用は、H2イオンソースを用いるシリコンオンインシュレータ(SOI)プロセスによるものである。H3+の組成を選択的に増加することと、これらのイオンソースのスループットを向上させることは相互関係を有する。
【0052】
さらに、開示された方法は、低インプラント電圧において高インプラントドースを必要とするプロセスである、B2H6/H2混合物を用いたPLADに利用されうる。現状、これらのプロセスは、低Bイオン密度により生じる長いインプラント時間に起因した低スループットの問題を有する。これらのプロセスは、長いインプラント時間に起因して、望まれずに増加する堆積の問題も有する。開示された方法を適用することにより、改良されたBイオン密度比が達成され得、スループットが増加することが期待される。
【0053】
本発明の利用は幾通りにもなりうる。このアプローチにより、EEDFを改良し、結果的にプラズマのイオン/中性物質組成を改良することが可能となりうる。従って、プラズマを用いたいかなるアプリケーションも本方法から利することができる。
【0054】
ここに記述される方法は、例えば、命令実行可能な機械が読み取り可能なコンピュータ可読記憶媒体上に、命令からなるプログラムを具体的に具現化することにより自動化されうる。汎用コンピュータがそのような機械の一例である。当業者に周知の適切な記憶媒体の非限定的なリストは、読取り可能または書込み可能CD、フラッシュメモリチップ(例えば、サムドライブ)、および様々な磁気記憶媒体等のようなデバイスを含みうる。
【0055】
本発明は特定の実施形態への参照とともに開示されたが、添付された特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から離れることなく記述された実施形態への数的改良、代替および変形が可能である。これにより、本発明は、記述された実施形態に限定されず、後述する特許請求の範囲の用語およびその均等物に定義されるすべての範囲を含むことが意図される。
【0056】
ここに記載される機能およびプロセスステップは、ユーザのコマンドに応じて、自動的、全体的、または部分的に実行されてよい。自動的に実行される活動(ステップを含む)は、ユーザの直接の活動の起動がなくても、実行可能命令またはデバイスオペレーションに応答して実行される。
【0057】
本発明は、特定の実施形態への言及とともに記載されたが、ここに記載された実施形態およびバリエーションは説明の目的のみを有することを理解されたい。当業者によって、現在のデザインに対する改良が本発明の範囲から離れることなく、なされ得るだろう。代替的な実施形態において、ネットワークにアクセスする1以上の(分配された)処理デバイス上に、プロセスおよびアプリケーションが位置し得る。さらに、開示された関数およびステップのいずれも、ハードウエア、ソフトウエアまたは両者の組み合わせにより実施され得、インターネットを含むネットワーク上のいかなる場所における処理デバイスに存在し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバに供給ガスを供給する段階、
前記供給ガスを励起してプラズマを生成する段階、および
前記プラズマに電界パルスを印加する段階を備え、
前記電界パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有し、
前記電界パルスは、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有し、
前記電界パルスは前記プラズマの電子に選択的に影響を与えるが、前記プラズマのイオンには実質的に影響を与えず、
影響を受けた前記電子は、前記プラズマ中の前記イオンおよび中性物質の組成、密度、および温度を改良する、
準大気圧プラズマを改良する方法。
【請求項2】
前記プラズマ中の望ましいイオンまたはラジカルの濃度を最大化するために選択された値で、前記電界パルスが印加される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チャンバに前記供給ガスを供給する段階は、前記プラズマ中の望ましいイオンまたはラジカルの濃度を最大化する化学的性質を有する供給ガスを供給する段階を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プラズマドーピングツール内で前記電界パルスが印加される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記供給ガスと接する表面に電圧を印加することにより、前記電界パルスを生じさせる、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数の電界パルスソースが前記プラズマに印加される、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の電界パルスソースのうち第1および第2のソースが、互いに非同期なパルスを供給する、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の電界パルスソースのうち第1および第2のソースが、同期的なパルスを供給する、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記供給ガスは、
カルボラン、デカボラン、およびオクタデカボランからなるリストから選択される化合物を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電界パルスを印加する段階は、前記プラズマの電子エネルギー分布関数および前記プラズマのイオン/中性物質組成を改良する、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
チャンバに供給ガスを供給する段階、
前記供給ガスを励起してプラズマを生成する段階、および
前記プラズマに電界パルスを印加する段階を備え、
前記電界パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有し、
前記電界パルスは、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有し、
前記電界パルスは前記プラズマの電子に選択的に影響するが、前記プラズマのイオンには実質的に影響を与えず、
電界パルスの前記立ち上がり時間、電界パルスの前記期間、および電界パルスの振幅の少なくとも1つを制御することにより、電子密度および電子エネルギー分布の制御を通じて、前記プラズマ中の前記イオンおよび中性物質の組成、密度、および温度を改良する、
準大気圧プラズマを改良する方法。
【請求項12】
前記プラズマ中の望ましいイオンまたはラジカルの濃度を最大化するために選択された値で、前記電界パルスが印加される、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記チャンバに前記供給ガスを供給する段階は、前記プラズマ中の望ましいイオンまたはラジカルの濃度を最大化する化学的性質を有する供給ガスを供給する段階を有する、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
プラズマドーピングツール内で前記電界パルスが印加される、
請求項11に記載の方法。
【請求項15】
プラズマエッチングツールに対して前記電界パルスが印加される、
請求項11に記載の方法。
【請求項16】
プラズマエンハンスド化学気相成長ツールに対して前記電界パルスが印加される、
請求項11に記載の方法。
【請求項17】
複数の電界パルスソースが前記プラズマに印加される、
請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の電界パルスソースのうち第1および第2のソースが、互いに非同期なパルスを供給する、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の電界パルスソースのうち第1および第2のソースが、同期的なパルスを供給する、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記供給ガスは、
カルボラン、デカボラン、およびオクタデカボランからなるリストから選択される化合物を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記電界パルスを印加する段階は、前記プラズマの電子エネルギー分布関数および前記プラズマのイオン/中性物質組成を改良する、
請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記供給ガスと接する表面に電圧を印加することにより、前記電界パルスを生じさせる、
請求項11に記載の方法。
【請求項23】
プラズマに電界パルスを印加する段階を備え、
前記電界パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有し、
前記電界パルスは、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有し、
前記電界パルスは前記プラズマの電子に選択的に影響を与えるが、前記プラズマのイオンには実質的に影響を与えない、
プラズマを調整する方法。
【請求項24】
連続電磁波パルスをプラズマに印加する段階を備え、
前記連続電磁波パルスは非振動極性の電界および電子プラズマ周波数以上の周波数を有し、
前記連続電磁波パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有し、
前記連続電磁波パルスは、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有し、
前記連続電磁波パルスは前記プラズマの電子に選択的に影響を与えるが、前記プラズマのイオンには実質的に影響を与えない、
プラズマを調整する方法。
【請求項25】
チャンバと、
前記チャンバ内で支持され、前記チャンバから絶縁される遮蔽板と、
高電圧フィードスルーを介して前記遮蔽板と接続されるパルス生成器とを備え、
前記パルス生成器は、前記チャンバに閉じ込められたプラズマに電界パルスを供給し、
前記電界パルスは、電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有し、
前記電界パルスは、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有する、
プラズマドーピングシステム。
【請求項26】
パルスの前記立ち上がり時間は、1ナノ秒以下である、
請求項25に記載のプラズマドーピングシステム。
【請求項27】
前記パルス生成器は、前記プラズマ中の望ましいイオンまたはラジカルの濃度を最大化するために選択された値で、前記電界パルスを供給する、
請求項25に記載のプラズマドーピングシステム。
【請求項28】
供給ガスを前記チャンバ内で励起し、前記プラズマを生成するためのRF電力源をさらに備える、
請求項27に記載のプラズマドーピングシステム。
【請求項1】
チャンバに供給ガスを供給する段階、
前記供給ガスを励起してプラズマを生成する段階、および
前記プラズマに電界パルスを印加する段階を備え、
前記電界パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有し、
前記電界パルスは、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有し、
前記電界パルスは前記プラズマの電子に選択的に影響を与えるが、前記プラズマのイオンには実質的に影響を与えず、
影響を受けた前記電子は、前記プラズマ中の前記イオンおよび中性物質の組成、密度、および温度を改良する、
準大気圧プラズマを改良する方法。
【請求項2】
前記プラズマ中の望ましいイオンまたはラジカルの濃度を最大化するために選択された値で、前記電界パルスが印加される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チャンバに前記供給ガスを供給する段階は、前記プラズマ中の望ましいイオンまたはラジカルの濃度を最大化する化学的性質を有する供給ガスを供給する段階を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プラズマドーピングツール内で前記電界パルスが印加される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記供給ガスと接する表面に電圧を印加することにより、前記電界パルスを生じさせる、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数の電界パルスソースが前記プラズマに印加される、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の電界パルスソースのうち第1および第2のソースが、互いに非同期なパルスを供給する、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の電界パルスソースのうち第1および第2のソースが、同期的なパルスを供給する、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記供給ガスは、
カルボラン、デカボラン、およびオクタデカボランからなるリストから選択される化合物を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電界パルスを印加する段階は、前記プラズマの電子エネルギー分布関数および前記プラズマのイオン/中性物質組成を改良する、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
チャンバに供給ガスを供給する段階、
前記供給ガスを励起してプラズマを生成する段階、および
前記プラズマに電界パルスを印加する段階を備え、
前記電界パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有し、
前記電界パルスは、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有し、
前記電界パルスは前記プラズマの電子に選択的に影響するが、前記プラズマのイオンには実質的に影響を与えず、
電界パルスの前記立ち上がり時間、電界パルスの前記期間、および電界パルスの振幅の少なくとも1つを制御することにより、電子密度および電子エネルギー分布の制御を通じて、前記プラズマ中の前記イオンおよび中性物質の組成、密度、および温度を改良する、
準大気圧プラズマを改良する方法。
【請求項12】
前記プラズマ中の望ましいイオンまたはラジカルの濃度を最大化するために選択された値で、前記電界パルスが印加される、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記チャンバに前記供給ガスを供給する段階は、前記プラズマ中の望ましいイオンまたはラジカルの濃度を最大化する化学的性質を有する供給ガスを供給する段階を有する、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
プラズマドーピングツール内で前記電界パルスが印加される、
請求項11に記載の方法。
【請求項15】
プラズマエッチングツールに対して前記電界パルスが印加される、
請求項11に記載の方法。
【請求項16】
プラズマエンハンスド化学気相成長ツールに対して前記電界パルスが印加される、
請求項11に記載の方法。
【請求項17】
複数の電界パルスソースが前記プラズマに印加される、
請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の電界パルスソースのうち第1および第2のソースが、互いに非同期なパルスを供給する、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の電界パルスソースのうち第1および第2のソースが、同期的なパルスを供給する、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記供給ガスは、
カルボラン、デカボラン、およびオクタデカボランからなるリストから選択される化合物を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記電界パルスを印加する段階は、前記プラズマの電子エネルギー分布関数および前記プラズマのイオン/中性物質組成を改良する、
請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記供給ガスと接する表面に電圧を印加することにより、前記電界パルスを生じさせる、
請求項11に記載の方法。
【請求項23】
プラズマに電界パルスを印加する段階を備え、
前記電界パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有し、
前記電界パルスは、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有し、
前記電界パルスは前記プラズマの電子に選択的に影響を与えるが、前記プラズマのイオンには実質的に影響を与えない、
プラズマを調整する方法。
【請求項24】
連続電磁波パルスをプラズマに印加する段階を備え、
前記連続電磁波パルスは非振動極性の電界および電子プラズマ周波数以上の周波数を有し、
前記連続電磁波パルスは、実質的に電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有し、
前記連続電磁波パルスは、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有し、
前記連続電磁波パルスは前記プラズマの電子に選択的に影響を与えるが、前記プラズマのイオンには実質的に影響を与えない、
プラズマを調整する方法。
【請求項25】
チャンバと、
前記チャンバ内で支持され、前記チャンバから絶縁される遮蔽板と、
高電圧フィードスルーを介して前記遮蔽板と接続されるパルス生成器とを備え、
前記パルス生成器は、前記チャンバに閉じ込められたプラズマに電界パルスを供給し、
前記電界パルスは、電子プラズマ周波数の逆数以下の立ち上がり時間を有し、
前記電界パルスは、イオンプラズマ周波数の逆数未満の期間を有する、
プラズマドーピングシステム。
【請求項26】
パルスの前記立ち上がり時間は、1ナノ秒以下である、
請求項25に記載のプラズマドーピングシステム。
【請求項27】
前記パルス生成器は、前記プラズマ中の望ましいイオンまたはラジカルの濃度を最大化するために選択された値で、前記電界パルスを供給する、
請求項25に記載のプラズマドーピングシステム。
【請求項28】
供給ガスを前記チャンバ内で励起し、前記プラズマを生成するためのRF電力源をさらに備える、
請求項27に記載のプラズマドーピングシステム。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−532417(P2012−532417A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517783(P2012−517783)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/040039
【国際公開番号】WO2011/002688
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(500324750)バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド (88)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/040039
【国際公開番号】WO2011/002688
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(500324750)バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド (88)
【Fターム(参考)】
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