説明

エアバッグドア及びその製造方法

【課題】破断予定部が外部から識別できず、外観見栄えの良いいわゆるシームレスタイプのエアバッグドアを容易かつ安価に提供することである。
【解決手段】表皮5は、樹脂密度が高いスキン層13と、スキン層13の裏面側に一体に成形され、内部に多数の空隙を有する発泡層15とから構成され、発泡層15においては、樹脂密度が上記スキン層13に比べて低く、かつスキン層13に近づくにつれて徐々に高くなっている。基材3には、破断予定部7に沿って延びる複数の切欠部17が間欠的に厚み方向に貫通形成されている。表皮の発泡層15には、破断予定部7に沿って延びる複数のスリット19が、間欠的に形成されている。スリット19の一端は切欠部17に連通しているとともにスリット19の他端は発泡層15の厚み方向中間部に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製基材と該基材の表面に一体に形成された樹脂製表皮とからなるパネルに破断予定部で囲まれて構成され、エアバッグ装置の作動により上記破断予定部が破断して開くエアバッグドア及びその製造方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているエアバッグドアは、樹脂製表皮材の裏面に樹脂製基材が一体に形成されてなり、エアバッグドア外周に設けられた破断予定部に対応してスリットが上記基材の裏面から表皮材に達するように切込み形成されている。
【0003】
一方、特許文献2に開示されているエアバッグドアは、樹脂製表皮材と樹脂製基材との間に発泡層が一体に形成されてなり、エアバッグドア外周に設けられた破断予定部に対応して多数の細孔の一部が上記基材の裏面から発泡層に達するように、残りの細孔が上記基材の裏面側から表皮材に達するようにそれぞれレーザー加工によって穿設されている。
【特許文献1】特開2006−273194号公報
【特許文献2】特許第3916951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1,2における表皮材は共に厚みが薄いため、スリット又は細孔が表皮材の表面に接近しすぎると、表皮材の表面にスリット又は細孔の形成箇所が現れてエアバッグドアの外観見栄えに悪影響を及ぼす恐れがある。このような問題を解決するためには、高精度の設備が必要となり、その結果、エアバッグドアの製造コストの増大を招来する。
【0005】
また、特許文献1では、予め成形した表皮材を一方の成形型にセットし、他方の成形型との間に形成されたキャビティに溶融樹脂を充填することにより、表皮材の裏面に基材を一体に形成しているため、表皮材成形工程と、基材成形工程との2工程が必要で製造工数及び製造コストが増大する。
【0006】
一方、特許文献2では、予め成形した表皮材を一方の成形型にセットするとともに、予め成形した基材を他方の成形型にセットし、表皮材の裏面と基材の表面との間に形成されたキャビティに溶融樹脂を充填することにより、表皮材の裏面と基材の表面との間に発泡層を一体に形成しているため、表皮材成形工程と、基材成形工程と、発泡層成形工程との3工程が必要で製造工数及び製造コストがさらに増大し、量産性が悪化する。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、破断予定部が外部から識別できず、外観見栄えの良いいわゆるシームレスタイプのエアバッグドアを容易かつ安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、表皮をスキン層と発泡層とが一体成形された2層構造にし、かつ発泡層の樹脂密度をスキン層に近づくにつれて徐々に高くしていることを特徴とする。
【0009】
具体的には、本発明は、樹脂製基材と該基材の表面に一体に形成された樹脂製表皮とからなるパネルに破断予定部で囲まれて構成され、エアバッグ装置の作動により上記破断予定部が破断して開くエアバッグドアを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記表皮は、樹脂密度が高いスキン層と、内部に多数の空隙を有し樹脂密度が上記スキン層に比べて低く、かつ該スキン層に近づくにつれて徐々に高くなるようにスキン層の裏面側に一体に成形された発泡層とからなり、上記基材には、上記破断予定部に沿って延びる複数の切欠部が間欠的に厚み方向に貫通形成され、上記表皮の発泡層には、上記破断予定部に沿って延びる複数のスリットが、一端を上記切欠部に連通させるとともに他端を発泡層の厚み方向中間部に位置させるように間欠的に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエアバッグドアにおいて、上記表皮の発泡層は、上記基材の表面に直接一体に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のエアバッグドアを製造する方法であって、上記基材及び表皮の表面側を成形する成形面を有する表面成形型と、上記基材の裏面側を成形する成形面を有し、複数の突出部が上記切欠部に対応するように間欠的に形成された裏面成形型と、該裏面成形型に上記突出部先端面から突出可能に間欠的に設けられ、上記スリットを形成するための複数のスリット形成刃とを備えた成形型を用意し、上記スリット形成刃をその先端が上記突出部先端面とほぼ同一面となるように後退させ、かつ該突出部先端面が上記表面成形型の成形面に当接するように成形型を型閉じした後、該表面成形型と上記裏面成形型との間に形成されたキャビティ内に第1溶融樹脂を充填することにより、上記破断予定部に沿って延びる複数の切欠部が間欠的に厚み方向に貫通形成された基材を成形し、次いで、上記裏面成形型に基材を残した状態で上記表面成形型又は裏面成形型を型開き方向に移動させて上記表面成形型と突出部先端面及び基材との間に形成されたキャビティ内に第2溶融樹脂を充填し、上記表面成形型の成形面近傍の第2溶融樹脂が固化し始めた時点で、上記表面成形型又は裏面成形型を型開き方向に移動させることによりキャビティ容積をさらに拡大させ、その後、上記スリット形成刃を先端部が当該キャビティの型開き方向中間に位置するように上記突出部先端面から突出させることにより、上記破断予定部に沿って延びる複数のスリットを上記表皮の発泡層に間欠的に形成し、しかる後、成形型を型開きして上記パネルを脱型することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、表皮に発泡層を形成したので該表皮の厚みが厚くなり、スリットを発泡層の厚み方向中間部まで達するように形成すればよく、特許文献1,2に比べて表皮の表面とスリットとの間の距離を長くできるので、高精度の設備を用いることなく、スリットの形成箇所が表皮の表面に現れないエアバッグドアを容易に得ることができる。また、表皮の表面とスリットとの間の距離を長くしても、スキン層と発泡層とが一体に形成され、発泡層の樹脂密度がスキン層に近づくにつれて徐々に高くなっているので、エアバッグ装置の作動時に発泡層の破断の影響がスキン層に波及して破断予定部が容易に破断する。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、基材と発泡層との間にスリット形成刃の挿入を妨げる固いスキン層が形成されていないので、スリット形成刃等を発泡層に容易に挿入できる。したがって、スリットの形成が容易になる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、表面成形型又は裏面成形型を移動させるだけで、基材と、該基材に一体となった発泡層及びスキン層を有する表皮とを共通の成形型で成形できる。したがって、基材と表皮とをそれぞれ別の成形型で成形する必要がないので、製造工数を削減でき、その結果、量産性が促進され、エアバッグドアを容易かつ安価に製造することができる。
【0016】
また、基材及び表皮を成形型内に残した状態でスリット形成刃を裏面成形型の突出部先端面から突出させることによりスリットを容易に形成できるので、つまり成形型内でスリットを形成できるので、量産性が促進され、さらに安価なエアバッグドアを容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、パネルとしての車両用内装品であるインストルメントパネル1の助手席前方部分を示す。図2は、図1のA−A線における断面図である。このインストルメントパネル1は、樹脂製基材3と、この基材3の表面に一体に形成された樹脂製表皮5とを備えた2層構造に構成されている。
【0019】
上記インストルメントパネル1には、図3に示すように、平面視略矩形状の破断予定部7(ティアライン)が形成され、車両衝突時に後述するエアバッグ装置9の作動により上記破断予定部7が破断して開くエアバッグドア11が該破断予定部7に囲まれて形成されている。
【0020】
上記表皮5は、図4及び図5に示すように、樹脂密度が高いスキン層13と、該スキン層13の裏面側に一体に成形され、内部に多数の空隙(図示せず)を有する発泡層15とから構成され、上記発泡層15においては、樹脂密度が上記スキン層13に比べて低く、かつスキン層13に近づくにつれて徐々に高くなっている。また、上記スキン層13は発泡層15の裏面側にはなく、該発泡層15は、上記基材3の表面に直接一体に形成されている。
【0021】
上記基材3には、図3及び図4に示すように、上記破断予定部7に沿って延びる複数の切欠部17が間欠的に厚み方向に貫通形成されているとともに、該複数の切欠部17間には図5に示すように基材3における破断予定部としての非切欠形成部3aが形成されている。該非切欠形成部3aは、エアバッグドア11の表面側に荷重が加わった際、該エアバッグドア11が凹んで変形することを防止しつつ、エアバッグ装置9が作動したときに容易に破断することができるような破断予定部7方向(ティアライン方向)つまり、図3に示すx方向、y方向の厚さに設定されている。そして、上記切欠部17の破断予定部7方向に直交する切欠幅Wは、下記スリット19の同方向の幅より大きく形成されている。
【0022】
上記表皮5の発泡層15には、上記破断予定部7に沿って延びる複数のスリット19が、間欠的に形成されている。該スリット19の一端は上記切欠部17に連通しているとともに該スリット19の他端はスキン層13に接近するように発泡層15の厚み方向中間部に位置している。これにより、表皮5には、スリット19の他端側の薄肉部5aと、複数のスリット19間の非スリット形成部5bとが形成され、これら薄肉部5a及び非スリット形成部5bが表皮における破断予定部となる。上記非スリット形成部5bの破断予定部7方向の厚さは、上記非切欠形成部3aの厚さと同等であるため、上記非スリット形成部5bはエアバッグ装置9が作動したとき容易に破断する。
【0023】
上記エアバッグドア11及び該エアバッグドア11外周りの基材3裏面には、樹脂製エアバッグシュータ21が振動溶着により固定されている。このエアバッグシュータ21は、シューティング口25を有する略矩形筒状の枠体23を備え、該枠体23は、車幅方向に延びる前側壁23aと、該前側壁23aの後側に対向配置されて車幅方向に延びる後側壁23bと、これら前側壁23a及び後側壁23bの左縁同士及び右縁同士を連結するように車体前後方向に延びる左右両側壁(図2に右側壁23cを示す)とからなる。上記前側壁23a及び後側壁23bには掛止孔26が貫通形成され、後側壁23bの上記シューティング口25側端面の内側には、段状の受け部27が形成されている。また、枠体23内部には、エアバッグ装置9が収納されている。このエアバッグ装置9は、エアバッグとインフレータ(図示省略)とを格納するエアバッグケース29を備えている。このエアバッグケース29は、インパネレインフォースメント(図示せず)にブラケット(図示せず)を介して連結支持されている。このエアバッグケース29にはフック31が固定されて、該フック31は上記掛止孔26に挿入されている。エアバッグ装置9の作動時には掛止孔26周縁が上記フック31に引っ掛かり、枠体23が飛び出さないようになっている。
【0024】
上記枠体23のシューティング口25は、上記エアバッグドア11補強用の樹脂製フラップ33によって覆われている(閉じられている)。このフラップ33の基端縁は、上記前側壁23aの上端縁(シューティング口25の開口縁部)に略U字状に湾曲するヒンジ35を介して一体に連結されている。上記フラップ33の表面には、振動溶着用の突起37が縦横に一体に突設され、これら突起37を介してフラップ33が基材3裏面に振動溶着されている。また、上記フラップ33の先端縁は上記受け部27によって室内側からの荷重に耐え得るよう下方から支持され、フラップ33の基端縁両端から先端縁まで延びる両側縁33a,33aと上記シューティング口25の開口縁部23dとの間には隙間S1が形成されている(図1参照)。
【0025】
上記枠体23上端(シューティング口25側端部)には、外側方に張り出すようにフランジ39が全周に亘って一体に形成されている。該フランジ39の表面にも、振動溶着用の突起37が縦横に一体に突設され、これら突起37を介してフランジ39が、上記エアバッグドア11外周りの基材3裏面に振動溶着されている。
【0026】
上記の如く構成されたインストルメントパネル1では、エアバッグ装置9のエアバッグがインフレータの作動によって膨出すると、その膨出圧でフラップ33及びエアバッグドア11が上方に押圧されて破断予定部7、すなわち、基材3の上記非切欠形成部3aと、表皮5の薄肉部5a及び非スリット形成部5bとが破断するとともに、フラップ33がヒンジ35を支点として回動し、エアバッグドア11がフラップ33と一体となって車体前方上向きに展開する。この際、上記スリット19の一端が切欠部17に連通しているとともに、上記非切欠形成部3a及び非スリット形成部5bの破断予定部7方向(ティアライン方向)の厚さが薄いので、これら非切欠形成部3a及び非スリット形成部5bが容易に破断してエアバッグドア11はスムーズに展開する。
【0027】
ここで、上記エアバッグドア11の製造方法について説明する。製造に際し、図6〜9に示すような成形型47、基材3成形用の第1溶融樹脂R1、及び表皮5成形用の第2溶融樹脂R2を用意する。上記成形型47は、上記基材3及び表皮5の表面側を成形する成形面41aを有する表面成形型(可動型)41と、上記基材3の裏面側を成形する成形面43aを有する裏面成形型(固定型)43とを備えている。上記裏面成形型43には、複数の突出部43bが上記切欠部17に対応するように破断予定部7方向に間欠的に形成されている。また、上記裏面成形型43には、上記スリット19を形成するための複数のスリット形成刃45が、突出部43b先端面43cから図示しない作動手段の作動により突出可能に破断予定部7方向に間欠的に設けられている。第1溶融樹脂R1は、例えば、ポリプロピレン(PP)であり、第2溶融樹脂R2は、例えば、サーモプラスチックオレフィン(TPO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂に発泡剤を混入したものである。ここで、発泡剤としては特に制限はなく、熱によりガスを発生するものであればよく、化学発泡剤、物理発泡剤のいずれであってもよい。
【0028】
そして、まず、図6に示すように、上記スリット形成刃45をその先端が上記突出部43b先端面43cとほぼ同一面となるように後退させ、かつ該突出部43b先端面43cが上記表面成形型41の成形面41aに当接するように成形型47を型閉じした後、該表面成形型41と上記裏面成形型43との間に形成されたキャビティ49内に第1溶融樹脂R1を充填固化して基材3を成形する。
【0029】
次いで、図7に示すように、上記裏面成形型43に基材3を残した状態で上記表面成形型41を型開き方向(矢印Y方向)に移動させて、上記表面成形型41と、突出部43b先端面43c及び基材3との間に形成されたキャビティ51内に第2溶融樹脂R2を充填する。上記離間の距離は、成形される表皮5の厚さ(肉厚)の略1/2以上に設定することが好ましい。しかる後、表面成形型41の成形面41a近傍の第2溶融樹脂R2は、表面成形型41の冷却の影響により早期に固化し始める。一方、基材3表面近傍の第2溶融樹脂R2は、裏面成形型43の冷却が基材3により緩和されるため、上記表面成形型41の成形面41a近傍より樹脂温度が高く、固化し始めておらず、粘度の高いゲル状態になっている。そして、上記表面成形型41の成形面41a近傍の第2溶融樹脂R2が固化し始めた時点で、図8に示すように、上記裏面成形型43に基材3を残した状態で上記表面成形型41を裏面成形型43からさらに型開き方向(矢印Y方向)に離間させることによりキャビティ51容積を拡大する。すると、キャビティ51の容積拡大により、それまで上記表面成形型41と突出部43b先端面43c及び基材3とで圧縮(膨張が規制)されている第2溶融樹脂R2が、表面成形型41の成形面41aに引っ張られるとともに、第2溶融樹脂R2中の化学反応によって発生したガスや不活性ガス等により発泡膨張する。その結果、樹脂密度の高いスキン層13が表面に形成されるとともに、内部に多数の空隙を有し樹脂密度が上記スキン層13に比べて低い発泡層15がスキン層13の裏面側に一体に成形された表皮5が上記基材3の表面に一体に形成される。また、表面成形型41の成形面41aと基材3表面との温度差により、発泡層15は、樹脂密度がスキン層13に近づくにつれて徐々に高くなるように形成される。なお、キャビティ51容積を拡大し始めた時点で基材3表面近傍の第2溶融樹脂R2は粘度の高いゲル状態になっているので、発泡層15の裏面側、すなわち基材3側にスキン層は形成されない。
【0030】
その後、図9に示すように、上記スリット形成刃45を先端部がキャビティ51の型開き方向(矢印Y方向)中程に位置するように作動手段の作動により上記突出部43b先端面43cから突出させる。これにより、上記破断予定部7に沿って延びる複数のスリット19が、一端が上記切欠部17に連通するとともに他端がスキン層13に接近して上記発泡層15の厚さ方向中間部に位置するように上記表皮5の発泡層15に間欠的に形成される。ここで、表皮5は、スキン層13と発泡層15とから形成されて厚さが厚くなっている上、スリット19をスキン層13に達しないように形成するので、特許文献1,2に比べて表皮5の表面とスリット19との間の距離を長くできる。したがって、高精度の設備を用いることなく、スリット19をその形成箇所が表皮の表面に現れないように容易に形成できる。また、基材3と発泡層15との間にスリット形成刃45の挿入を妨げる固いスキン層が形成されていないので、スリット形成刃45を発泡層15に容易に挿入できる。
【0031】
しかる後、成形型47を型開きしてインストルメントパネル1を脱型する。
【0032】
このように製造されたエアバッグドア11では、表皮5が、スキン層13と発泡層15とで一体に形成され、発泡層15の樹脂密度がスキン層13に近づくにつれて徐々に高くなっているので、エアバッグ装置9の作動時に発泡層15の破断の影響がスキン層13に波及して破断予定部7が容易に破断する。
【0033】
本実施形態によれば、表面成形型41又は裏面成形型43を移動させるだけで、基材3と、該基材3に一体となった発泡層15及びスキン層13を有する表皮5を共通の成形型47で成形できる。したがって、基材3と表皮5とをそれぞれ別の成形型で成形する必要がないので、製造工数を削減でき、その結果、量産性が促進され、エアバッグドア11を容易かつ安価に製造することができる。
【0034】
また、基材3及び表皮5を成形型47内に残した状態でスリット形成刃45を裏面成形型43の突出部43b先端面43cから突出させることによりスリット19を容易に形成できるので、つまり成形型47内でスリット19を形成できるので、量産性が促進され、さらに安価なエアバッグドア11を容易に製造することができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、破断予定部7(ティアライン)を平面視略矩形状に形成したが、H字状や2つのY字を横向きにして左右対称に連結した形状に形成してもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、表面成形型41を可動型とするとともに裏面成形型43を固定型とし、図6〜図8に示す工程で表面成形型41を移動させて裏面成形型43から離間させていたが、可動型と固定型とを反対にして、裏面成形型43を移動させて表面成形型41から離間させるようにしてもよい。要は、表面成形型41又は裏面成形型43をキャビティ51の容積が大きくなるように移動させればよい。
【0037】
また、上記実施形態では、表皮5が基材3の表面に形成された後にスリット形成刃45を突出させたが、第2溶融樹脂R2充填後、表面成形型41を裏面成形型43から矢印Y方向に離間させた直後に突出させるようにしてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、パネルとしてインストルメントパネル1を示したが、本発明は、ステアリングハンドル、座席側方のサイドトリム等の内装品に適用できるものである。
【0039】
また、フランジ39と枠体23とは必ずしも一体で成形されたものでなくてもよく、別体のものを組み付けてもよい。
【0040】
また、フラップ33の先端縁が受け部27に下方から支持されないようにしてもよい。つまり、フラップ33の先端が枠体23のシューティング口25内に位置するようにしてもよい。
【0041】
また、フラップ33及び枠体23は、振動溶着以外の高周波溶着等の溶着方法によって
基材3裏面に溶着してもよいし、溶着以外の方法によって基材3裏面に取り付けてもよい。
【0042】
また、切欠部17の破断予定部7方向(x方向、y方向)に直交する切欠幅Wは、任意に設定できる。この場合、エアバッグドア11の反ヒンジ35側における上記切欠幅Wは、当該エアバッグドア11の回転を阻止しない程度の幅を有していることが必要である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、樹脂製基材と該基材の表面に一体に形成された樹脂製表皮とからなるパネルに破断予定部で囲まれて構成され、エアバッグ装置の作動により上記破断予定部が破断して開くエアバッグドア及びその製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態に係るインストルメントパネルの助手席前方部分を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】図1におけるエアバッグドアの平面図である。
【図4】図3のB−B線における断面図である。
【図5】図3のC−C線における断面図である。
【図6】第1溶融樹脂を充填固化して基材を成形する状態を示す図4対応成形工程図である。
【図7】図6における成形型の表面成形型を裏面成形型から型開き方向に離間させて第2溶融樹脂を充填した状態を示す成形工程図である。
【図8】図7における成形型の表面成形型を裏面成形型から型開き方向にさらに離間させて第2溶融樹脂を発泡させた状態を示す成形工程図である。
【図9】図8の成形工程後、スリット形成刃を突出部先端面から突出させた状態を示す成形工程図である。
【符号の説明】
【0045】
1 インストルメントパネル
3 樹脂製基材
5 表皮
7 破断予定部
9 エアバッグ装置
11 エアバッグドア
13 スキン層
15 発泡層
17 切欠部
19 スリット
41 表面成形型
41a 成形面
43 裏面成形型
43a 成形面
43b 突出部
43c 先端面
45 スリット形成刃
47 成形型
49 キャビティ
51 キャビティ
R1 第1溶融樹脂
R2 第2溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製基材と該基材の表面に一体に形成された樹脂製表皮とからなるパネルに破断予定部で囲まれて構成され、エアバッグ装置の作動により上記破断予定部が破断して開くエアバッグドアであって、
上記表皮は、樹脂密度が高いスキン層と、内部に多数の空隙を有し樹脂密度が上記スキン層に比べて低く、かつ該スキン層に近づくにつれて徐々に高くなるようにスキン層の裏面側に一体に成形された発泡層とからなり、
上記基材には、上記破断予定部に沿って延びる複数の切欠部が間欠的に厚み方向に貫通形成され、
上記表皮の発泡層には、上記破断予定部に沿って延びる複数のスリットが、一端を上記切欠部に連通させるとともに他端を発泡層の厚み方向中間部に位置させるように間欠的に形成されていることを特徴とするエアバッグドア。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグドアにおいて、
上記表皮の発泡層は、上記基材の表面に直接一体に形成されていることを特徴とするエアバッグドア。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアバッグドアを製造する方法であって、
上記基材及び表皮の表面側を成形する成形面を有する表面成形型と、上記基材の裏面側を成形する成形面を有し、複数の突出部が上記切欠部に対応するように間欠的に形成された裏面成形型と、該裏面成形型に上記突出部先端面から突出可能に間欠的に設けられ、上記スリットを形成するための複数のスリット形成刃とを備えた成形型を用意し、
上記スリット形成刃をその先端が上記突出部先端面とほぼ同一面となるように後退させ、かつ該突出部先端面が上記表面成形型の成形面に当接するように成形型を型閉じした後、該表面成形型と上記裏面成形型との間に形成されたキャビティ内に第1溶融樹脂を充填することにより、上記破断予定部に沿って延びる複数の切欠部が間欠的に厚み方向に貫通形成された基材を成形し、
次いで、上記裏面成形型に基材を残した状態で上記表面成形型又は裏面成形型を型開き方向に移動させて上記表面成形型と突出部先端面及び基材との間に形成されたキャビティ内に第2溶融樹脂を充填し、上記表面成形型の成形面近傍の第2溶融樹脂が固化し始めた時点で、上記表面成形型又は裏面成形型を型開き方向に移動させることによりキャビティ容積をさらに拡大させ、
その後、上記スリット形成刃を先端部が当該キャビティの型開き方向中間に位置するように上記突出部先端面から突出させることにより、上記破断予定部に沿って延びる複数のスリットを上記表皮の発泡層に間欠的に形成し、しかる後、成形型を型開きして上記パネルを脱型することを特徴とするエアバッグドアの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−47215(P2010−47215A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215383(P2008−215383)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】