エッチング方法及びエッチングシステム
【課題】スループット良く、銅を、異方的にエッチングすることが可能なエッチング方法を提供すること。
【解決手段】 表面にマスク材102が形成された銅膜101に、マスク材102をマスクに用いて酸素イオン6を照射し、銅膜101内に、銅膜101の厚さ方向の全てに対して異方的に酸化された酸化銅103を形成する工程と、異方的に酸化された酸化銅103をエッチングする工程と、を具備する。
【解決手段】 表面にマスク材102が形成された銅膜101に、マスク材102をマスクに用いて酸素イオン6を照射し、銅膜101内に、銅膜101の厚さ方向の全てに対して異方的に酸化された酸化銅103を形成する工程と、異方的に酸化された酸化銅103をエッチングする工程と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エッチング方法及びエッチングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体集積回路装置の動作の高速化が進展している。動作の高速化は、配線材料の低抵抗化などにより実現される。このため、配線材料は、従来のアルミニウムに代わり、より低抵抗な銅が用いられるようになってきている。
【0003】
しかし、銅の加工には、既存のドライエッチング技術の転用が難しい。これは、エッチングの際に形成される銅の化合物は総じて蒸気圧が低く、蒸発し難いことに由来する。Arスパッタ法、ClガスRIE法などが試されたが、チャンバ内壁への銅の付着などの問題により実用化に至っていない。このため、銅を用いた配線は、もっぱらダマシン法を用いて形成される。ダマシン法は、あらかじめ配線パターンに応じた溝を層間絶縁膜に形成し、この溝を埋めるように銅薄膜を形成し、CMP法を用いて銅薄膜を化学的機械研磨し、溝の内部のみに銅を残す技術である。
【0004】
また、銅を、塩化第二鉄水溶液を用いてウェットエッチングする、という技術もあるが、これもまた、等方的なエッチングである。
【0005】
特許文献1には、銅の異方性ドライエッチング方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−27788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、銅膜上にマスクを形成し、このマスクを介して銅膜に異方性酸化処理を施し、有機酸ガスにより酸化銅をエッチングすること、が記載されている。
【0008】
しかし、特許文献1では、銅膜の異方性酸化と、有機酸ガスによる酸化銅のエッチングとを繰り返す。つまり、特許文献1では、銅膜の異方性エッチングが終わるまで、異方性酸化装置と有機酸ドライエッチング装置との間で、銅膜が形成された半導体ウエハを動かし続けなければならない。このため、銅膜の異方性エッチングに時間がかかる、という事情がある。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、スループット良く、銅を異方的にエッチングすることが可能なエッチング方法及びエッチングシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の第1の態様に係るエッチング方法は、表面にマスク材が形成された銅膜に、前記マスク材をマスクに用いて酸素イオンを照射し、前記銅膜内に、前記銅膜の厚さ方向の全てに対して異方的に酸化された酸化銅を形成する工程と、前記異方的に酸化された酸化銅をエッチングする工程と、を具備する。
【0011】
この発明の第2の態様に係るエッチングシステムは、表面にマスク材が形成された銅膜に、前記マスク材をマスクに用いて酸素イオンを照射し、前記銅膜内に、前記銅膜の厚さ方向の全てに対して異方的に酸化された酸化銅を形成する酸素イオン照射装置と、前記異方的に酸化された酸化銅をエッチングするエッチング装置とを具備する。
【0012】
を備える。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、スループット良く、銅を異方的にエッチングすることが可能なエッチング方法及びエッチングシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図
【図1B】第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図
【図1C】第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図
【図1D】第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図
【図1E】第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図
【図1F】第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図
【図2A】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2B】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2C】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2D】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2E】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2F】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図3】第1、第2の実施形態を実施することが可能なエッチングシステムの一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図にわたり、共通の部分には共通の参照符号を付す。
【0016】
(第1の実施形態)
半導体ウエハの断面例を参照しながら、この発明の第1の実施形態に係るエッチング方法について説明する。
【0017】
図1A〜図1Fはこの発明の第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図である。
【0018】
図1Aに示すように、図示せぬ半導体ウエハ上には銅の拡散を防ぐバリアメタル膜100が形成されており、バリアメタル膜100上には銅膜101が形成されている。銅膜101上にはマスク材102が形成されている。
【0019】
マスク材102は、酸素イオンが銅膜101に到達しないように、酸素イオンを遮断する役目を持つ。このため、マスク材102には、原子量が大きく、厚いことが求められる。可能であれば、銅(Cu:原子量63.546)よりも原子量が大きく、かつ、密度の高い材料が好ましい。マスク材102の膜厚は、酸素イオンが銅膜101に到達しないような厚さに設定される。マスク材102の膜厚は、原子量が大きく、かつ、密度の高い材料ほど、薄くすることが可能である。
【0020】
次に、図1Bに示すように、速度エネルギー(加速電圧)を第1の値に設定し、酸素イオンを銅膜101の表層部分に向けて照射する。酸素イオンが銅膜101の表層部分に注入されることで、銅膜101の表層部分が酸化され、酸化銅103に変わる。
【0021】
次に、図1Cに示すように、速度エネルギーを上記第1の値よりも高い第2の値に設定し、酸素イオンを銅膜101の中層部分に向けて照射する。酸素イオンが銅膜101の中層部分に注入されることで、銅膜101の中層部分が酸化され、酸化銅103に変わる。
【0022】
次に、図1Dに示すように、速度エネルギーを上記第2の値よりも高い第3の値に設定し、酸素イオンを銅膜101の下層部分に向けて照射する。酸素イオンが銅膜101の下層部分に注入されることで、銅膜101の下層部分が酸化され、酸化銅103に変わる。
【0023】
このようにして、速度エネルギーを高めながら酸素イオンを銅膜101に注入する。これにより、図1Eに示すように、銅膜101が異方的に酸化され、銅膜101には、銅膜101のままの部分と、銅膜101の厚さ方向の全てで酸化銅103に変化した部分とが得られる。
【0024】
酸化に必要な酸素の速度エネルギーは、モンテカルロ・シミュレータ、例えば、TRIMを利用して求めることができる。酸化に必要な酸素の速度エネルギーは、例えば、30keV以上のエネルギーとなる。
【0025】
単体の酸素分子イオン(O2+、O22+、O2−、O22−)、もしくはクラッキングにより乖離した酸素イオン(O+、O2+、O−、O2−)を、速度エネルギー30keV以上で加速し、銅膜101に照射することで、効率の良い酸化が可能となる。
【0026】
また、分子量、原子量の低い酸化剤ほど、低い速度エネルギーで銅膜101の深い位置まで注入できるため、銅膜101の下層部分を酸化するためには、酸素分子イオンよりも、酸素イオンの方が有利である。
【0027】
銅膜101全体を酸化する必要があることから、本例のように速度エネルギーを変化させたり、さらに、分子量、即ち、酸素分子イオンか酸素イオンかを変化させたりすることも良い。つまり、注入速度、注入深さを変化させ、表層部分、中層部分、下層のそれぞれを順次酸化させることが、1回のプロセスで銅膜101の異方性酸化を実行するうえで、有効である。
【0028】
銅膜101の厚さ方向に対して全体が酸化されると、酸化銅103を除去することは容易であるため、繰り返しプロセスをする必要がなく、プロセス時間の短縮が可能であり、銅膜101の異方的なエッチングのスループットが向上する。
【0029】
次に、図1Eに示す構造を有した半導体ウエハを、酸素イオン照射装置から搬出し、酸化銅103をエッチングするエッチング装置に搬入する。このエッチング装置で、酸化銅103がエッチングされることで、図1Fに示すように、銅膜101の異方的なエッチングが終了する。
【0030】
酸化銅103をエッチングするエッチング装置としては、ウェットエッチング装置、ドライエッチング装置の双方を使用することができる。
【0031】
ウェットエッチング装置としては、エッチャントとして、カルボキシル基を含むクエン酸、同じくアスコルビン酸、同じくマロン酸、同じくリンゴ酸などの有機酸を含む水溶液を用いるウェットエッチング装置を挙げることができる。これらのような水溶液では、銅膜101を溶かさず、酸化銅103のみを溶かすことができる。
【0032】
また、エッチャントとしては、弗化水素酸を含む水溶液でも良い。弗化水素酸も銅膜101を溶かさず、酸化銅103のみを溶かすことができる。
【0033】
また、弗化水素酸は、シリコン酸化物(SiO2)のエッチングにも利用されており、高純度の薬液を入手できる、という利点もある。
【0034】
また、ドライエッチング装置としては、エッチャントして、有機化合物ガスを用いるドライエッチング装置を挙げることができる。銅膜101は昇華させず、酸化銅103のみを昇華させる有機化合物ガスの例としては、有機酸ガス、例えば、カルボキシル基(−COOH)を有するカルボン酸を挙げることができる。カルボン酸の例としては、以下の式1で記述されるカルボン酸
R6−COOH …式1
(R6は水素、又は直鎖もしくは分枝鎖状のC1〜C20のアルキル基もしくはアルケニル基、好ましくはメチル、エテル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシル)
例えば、蟻酸(HCOOH)
酢酸(CH3COOH)
プロピオン酸(CH3CH2COOH)
酪酸(CH3(CH2)2COOH)
吉草酸(CH3(CH2)3COOH)
などを挙げることができる。
【0035】
なお、有機化合物のうち、一部の有機酸は半導体プロセスで用いられており、高純度の薬液を入手することが可能である。
【0036】
このような第1の実施形態によれば、銅を、異方的にエッチングすることができる。
【0037】
しかも、第1の実施形態によれば、銅膜101には、銅膜101のままの部分と、銅膜101の厚さ方向の全てで酸化銅103に変化した部分とが得られるように、1回のプロセスで銅膜103を異方的に酸化する。このため、半導体ウエハWは、酸素イオン照射装置1とエッチング装置との間で繰り返し搬送し合う必要がなく、スループットが向上する。
【0038】
(第2の実施形態)
図2A〜図2Fはこの発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【0039】
図2Aに示すように、半導体ウエハW上にはTEOS膜104が形成され、TEOS膜104上にはSiCN膜100が形成されている。SiCN膜100上には銅膜101が形成され、銅膜101上にはSiCN膜105が形成されている。さらに、本例ではSiCN膜105上にTEOS膜106が形成されている。
【0040】
次に、図2Bに示すように、TEOS膜106上に、マスク材としてフォトレジスト膜107を形成する。
【0041】
次に、図2Cに示すように、フォトレジスト膜107をマスクに用いて、TEOS膜106、およびSiCN膜105をエッチングする。
【0042】
次に、図2Dに示すように、フォトレジスト膜107を除去する。次いで、TEOS膜106、およびSiCN膜105をマスクに用いて、上記第1の実施形態で説明したエッチング方法により、銅膜101を異方的にエッチングする。
【0043】
次に、図2Eに示すように、TEOS膜106を除去する。SiCN膜105は、銅膜101の上面のバリア膜として使用される。また、SiCN膜100は、銅膜101の下面のバリア膜として使用される。
【0044】
次に、図2Fに示すように、銅膜101の側面上に、銅膜101に対して触媒作用があり、SiCN膜100、105には触媒作用がない選択析出現象を利用した無電解めっき法を用いて、銅の拡散を抑制する物質を含むメッキ膜を形成する。本例ではメッキ膜として、コバルトに少なくともタングステンを含有させた合金、例えば、CoW膜108を形成する。
【0045】
このような第2の実施形態は、銅配線の形成技術に有効であり、例えば、半導体集積回路装置の銅配線形成プロセスに適用することができる。
【0046】
(エッチングシステム)
図3は、この発明の実施形態に係るエッチングシステムの一例を示すブロック図である。
【0047】
図3に示すように、エッチングシステム200は、搬送室201、第1の処理室202、第2の処理室203、第1のロードロック室(LLM1)204、第2のロードロック室(LLM2)205、及び搬入出室206を備えている。
【0048】
搬送室201は、第1の処理室202、第2の処理室203、第1のロードロック室204、及び第2のロードロック室205に、ゲートバルブG1〜G4を介して接続されている。搬送室201内には、搬送装置207が配置されている。搬送装置207は、搬送室201、第1の処理室202、第2の処理室203、第1のロードロック室204、及び第2のロードロック室205の相互間で半導体ウエハを搬送する。
【0049】
第1の処理室202は、酸素イオン照射装置である。第1の処理室202は、例えば、酸素イオン照射装置を用いて構成される。第1の処理室202では、表面にマスク材102が形成された銅膜101に、マスク材をマスクに用いて酸素イオンを照射し、銅膜101内に、銅膜101の厚さ方向の全てに対して異方的に酸化された酸化銅103が形成される。
【0050】
第2の処理室203は、エッチング装置である。第2の処理室203は、有機酸を含む水溶液、又は弗化水素酸を含む水溶液を用いたウェットエッチング装置、又は有機化合物を含むガス、例えば、有機酸ガスを用いたドライエッチング装置を用いて構成される。第2の処理室203では、上記異方的に酸化された酸化銅103がエッチングされる。
【0051】
第1のロードロック室204及び第2のロードロック室205は、圧力変換装置である。第1のロードロック室204及び第2のロードロック室205では、大気圧もしくはほぼ大気圧と搬送室201内の圧力との間で、圧力変換が行われる。第1のロードロック室204は搬入出室206にゲートバルブG5を介して接続される。同じく第2のロードロック室205は搬入出室206にゲートバルブG6を介して接続される。
【0052】
搬入出室206は、複数枚の半導体ウエハが収容されたキャリア、又は空のキャリアが載置されるポート(P)208を有する。キャリアがポート208に載置されると、図示せぬシャッタが外れ、キャリアの内部と搬入出室206の内部とが連通される。搬入出室206には搬送装置209が配置されている。搬送装置209は、搬入出室206、ポート208に載置されたキャリア、第1のロードロック室204、及び第2のロードロック室205の相互間で半導体ウエハを搬送する。
【0053】
このようなエッチングシステムを用い、銅膜101と銅膜101上に形成されたマスク材とを備えた半導体ウエハ(被処理体)に対して、第1の処理室202、第2の処理室203の順で処理を進めることにより、上記第1の実施形態に係るエッチング方法、並びに上記第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を実施することができる。
【0054】
以上、この発明を実施形態に従って説明したが、この発明は上記実施形態に限られるものではなく様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
101…銅膜、102…マスク材、103…酸化銅
【技術分野】
【0001】
この発明は、エッチング方法及びエッチングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体集積回路装置の動作の高速化が進展している。動作の高速化は、配線材料の低抵抗化などにより実現される。このため、配線材料は、従来のアルミニウムに代わり、より低抵抗な銅が用いられるようになってきている。
【0003】
しかし、銅の加工には、既存のドライエッチング技術の転用が難しい。これは、エッチングの際に形成される銅の化合物は総じて蒸気圧が低く、蒸発し難いことに由来する。Arスパッタ法、ClガスRIE法などが試されたが、チャンバ内壁への銅の付着などの問題により実用化に至っていない。このため、銅を用いた配線は、もっぱらダマシン法を用いて形成される。ダマシン法は、あらかじめ配線パターンに応じた溝を層間絶縁膜に形成し、この溝を埋めるように銅薄膜を形成し、CMP法を用いて銅薄膜を化学的機械研磨し、溝の内部のみに銅を残す技術である。
【0004】
また、銅を、塩化第二鉄水溶液を用いてウェットエッチングする、という技術もあるが、これもまた、等方的なエッチングである。
【0005】
特許文献1には、銅の異方性ドライエッチング方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−27788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、銅膜上にマスクを形成し、このマスクを介して銅膜に異方性酸化処理を施し、有機酸ガスにより酸化銅をエッチングすること、が記載されている。
【0008】
しかし、特許文献1では、銅膜の異方性酸化と、有機酸ガスによる酸化銅のエッチングとを繰り返す。つまり、特許文献1では、銅膜の異方性エッチングが終わるまで、異方性酸化装置と有機酸ドライエッチング装置との間で、銅膜が形成された半導体ウエハを動かし続けなければならない。このため、銅膜の異方性エッチングに時間がかかる、という事情がある。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、スループット良く、銅を異方的にエッチングすることが可能なエッチング方法及びエッチングシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の第1の態様に係るエッチング方法は、表面にマスク材が形成された銅膜に、前記マスク材をマスクに用いて酸素イオンを照射し、前記銅膜内に、前記銅膜の厚さ方向の全てに対して異方的に酸化された酸化銅を形成する工程と、前記異方的に酸化された酸化銅をエッチングする工程と、を具備する。
【0011】
この発明の第2の態様に係るエッチングシステムは、表面にマスク材が形成された銅膜に、前記マスク材をマスクに用いて酸素イオンを照射し、前記銅膜内に、前記銅膜の厚さ方向の全てに対して異方的に酸化された酸化銅を形成する酸素イオン照射装置と、前記異方的に酸化された酸化銅をエッチングするエッチング装置とを具備する。
【0012】
を備える。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、スループット良く、銅を異方的にエッチングすることが可能なエッチング方法及びエッチングシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図
【図1B】第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図
【図1C】第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図
【図1D】第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図
【図1E】第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図
【図1F】第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図
【図2A】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2B】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2C】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2D】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2E】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2F】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図3】第1、第2の実施形態を実施することが可能なエッチングシステムの一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図にわたり、共通の部分には共通の参照符号を付す。
【0016】
(第1の実施形態)
半導体ウエハの断面例を参照しながら、この発明の第1の実施形態に係るエッチング方法について説明する。
【0017】
図1A〜図1Fはこの発明の第1の実施形態に係るエッチング方法の一例を示す断面図である。
【0018】
図1Aに示すように、図示せぬ半導体ウエハ上には銅の拡散を防ぐバリアメタル膜100が形成されており、バリアメタル膜100上には銅膜101が形成されている。銅膜101上にはマスク材102が形成されている。
【0019】
マスク材102は、酸素イオンが銅膜101に到達しないように、酸素イオンを遮断する役目を持つ。このため、マスク材102には、原子量が大きく、厚いことが求められる。可能であれば、銅(Cu:原子量63.546)よりも原子量が大きく、かつ、密度の高い材料が好ましい。マスク材102の膜厚は、酸素イオンが銅膜101に到達しないような厚さに設定される。マスク材102の膜厚は、原子量が大きく、かつ、密度の高い材料ほど、薄くすることが可能である。
【0020】
次に、図1Bに示すように、速度エネルギー(加速電圧)を第1の値に設定し、酸素イオンを銅膜101の表層部分に向けて照射する。酸素イオンが銅膜101の表層部分に注入されることで、銅膜101の表層部分が酸化され、酸化銅103に変わる。
【0021】
次に、図1Cに示すように、速度エネルギーを上記第1の値よりも高い第2の値に設定し、酸素イオンを銅膜101の中層部分に向けて照射する。酸素イオンが銅膜101の中層部分に注入されることで、銅膜101の中層部分が酸化され、酸化銅103に変わる。
【0022】
次に、図1Dに示すように、速度エネルギーを上記第2の値よりも高い第3の値に設定し、酸素イオンを銅膜101の下層部分に向けて照射する。酸素イオンが銅膜101の下層部分に注入されることで、銅膜101の下層部分が酸化され、酸化銅103に変わる。
【0023】
このようにして、速度エネルギーを高めながら酸素イオンを銅膜101に注入する。これにより、図1Eに示すように、銅膜101が異方的に酸化され、銅膜101には、銅膜101のままの部分と、銅膜101の厚さ方向の全てで酸化銅103に変化した部分とが得られる。
【0024】
酸化に必要な酸素の速度エネルギーは、モンテカルロ・シミュレータ、例えば、TRIMを利用して求めることができる。酸化に必要な酸素の速度エネルギーは、例えば、30keV以上のエネルギーとなる。
【0025】
単体の酸素分子イオン(O2+、O22+、O2−、O22−)、もしくはクラッキングにより乖離した酸素イオン(O+、O2+、O−、O2−)を、速度エネルギー30keV以上で加速し、銅膜101に照射することで、効率の良い酸化が可能となる。
【0026】
また、分子量、原子量の低い酸化剤ほど、低い速度エネルギーで銅膜101の深い位置まで注入できるため、銅膜101の下層部分を酸化するためには、酸素分子イオンよりも、酸素イオンの方が有利である。
【0027】
銅膜101全体を酸化する必要があることから、本例のように速度エネルギーを変化させたり、さらに、分子量、即ち、酸素分子イオンか酸素イオンかを変化させたりすることも良い。つまり、注入速度、注入深さを変化させ、表層部分、中層部分、下層のそれぞれを順次酸化させることが、1回のプロセスで銅膜101の異方性酸化を実行するうえで、有効である。
【0028】
銅膜101の厚さ方向に対して全体が酸化されると、酸化銅103を除去することは容易であるため、繰り返しプロセスをする必要がなく、プロセス時間の短縮が可能であり、銅膜101の異方的なエッチングのスループットが向上する。
【0029】
次に、図1Eに示す構造を有した半導体ウエハを、酸素イオン照射装置から搬出し、酸化銅103をエッチングするエッチング装置に搬入する。このエッチング装置で、酸化銅103がエッチングされることで、図1Fに示すように、銅膜101の異方的なエッチングが終了する。
【0030】
酸化銅103をエッチングするエッチング装置としては、ウェットエッチング装置、ドライエッチング装置の双方を使用することができる。
【0031】
ウェットエッチング装置としては、エッチャントとして、カルボキシル基を含むクエン酸、同じくアスコルビン酸、同じくマロン酸、同じくリンゴ酸などの有機酸を含む水溶液を用いるウェットエッチング装置を挙げることができる。これらのような水溶液では、銅膜101を溶かさず、酸化銅103のみを溶かすことができる。
【0032】
また、エッチャントとしては、弗化水素酸を含む水溶液でも良い。弗化水素酸も銅膜101を溶かさず、酸化銅103のみを溶かすことができる。
【0033】
また、弗化水素酸は、シリコン酸化物(SiO2)のエッチングにも利用されており、高純度の薬液を入手できる、という利点もある。
【0034】
また、ドライエッチング装置としては、エッチャントして、有機化合物ガスを用いるドライエッチング装置を挙げることができる。銅膜101は昇華させず、酸化銅103のみを昇華させる有機化合物ガスの例としては、有機酸ガス、例えば、カルボキシル基(−COOH)を有するカルボン酸を挙げることができる。カルボン酸の例としては、以下の式1で記述されるカルボン酸
R6−COOH …式1
(R6は水素、又は直鎖もしくは分枝鎖状のC1〜C20のアルキル基もしくはアルケニル基、好ましくはメチル、エテル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシル)
例えば、蟻酸(HCOOH)
酢酸(CH3COOH)
プロピオン酸(CH3CH2COOH)
酪酸(CH3(CH2)2COOH)
吉草酸(CH3(CH2)3COOH)
などを挙げることができる。
【0035】
なお、有機化合物のうち、一部の有機酸は半導体プロセスで用いられており、高純度の薬液を入手することが可能である。
【0036】
このような第1の実施形態によれば、銅を、異方的にエッチングすることができる。
【0037】
しかも、第1の実施形態によれば、銅膜101には、銅膜101のままの部分と、銅膜101の厚さ方向の全てで酸化銅103に変化した部分とが得られるように、1回のプロセスで銅膜103を異方的に酸化する。このため、半導体ウエハWは、酸素イオン照射装置1とエッチング装置との間で繰り返し搬送し合う必要がなく、スループットが向上する。
【0038】
(第2の実施形態)
図2A〜図2Fはこの発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【0039】
図2Aに示すように、半導体ウエハW上にはTEOS膜104が形成され、TEOS膜104上にはSiCN膜100が形成されている。SiCN膜100上には銅膜101が形成され、銅膜101上にはSiCN膜105が形成されている。さらに、本例ではSiCN膜105上にTEOS膜106が形成されている。
【0040】
次に、図2Bに示すように、TEOS膜106上に、マスク材としてフォトレジスト膜107を形成する。
【0041】
次に、図2Cに示すように、フォトレジスト膜107をマスクに用いて、TEOS膜106、およびSiCN膜105をエッチングする。
【0042】
次に、図2Dに示すように、フォトレジスト膜107を除去する。次いで、TEOS膜106、およびSiCN膜105をマスクに用いて、上記第1の実施形態で説明したエッチング方法により、銅膜101を異方的にエッチングする。
【0043】
次に、図2Eに示すように、TEOS膜106を除去する。SiCN膜105は、銅膜101の上面のバリア膜として使用される。また、SiCN膜100は、銅膜101の下面のバリア膜として使用される。
【0044】
次に、図2Fに示すように、銅膜101の側面上に、銅膜101に対して触媒作用があり、SiCN膜100、105には触媒作用がない選択析出現象を利用した無電解めっき法を用いて、銅の拡散を抑制する物質を含むメッキ膜を形成する。本例ではメッキ膜として、コバルトに少なくともタングステンを含有させた合金、例えば、CoW膜108を形成する。
【0045】
このような第2の実施形態は、銅配線の形成技術に有効であり、例えば、半導体集積回路装置の銅配線形成プロセスに適用することができる。
【0046】
(エッチングシステム)
図3は、この発明の実施形態に係るエッチングシステムの一例を示すブロック図である。
【0047】
図3に示すように、エッチングシステム200は、搬送室201、第1の処理室202、第2の処理室203、第1のロードロック室(LLM1)204、第2のロードロック室(LLM2)205、及び搬入出室206を備えている。
【0048】
搬送室201は、第1の処理室202、第2の処理室203、第1のロードロック室204、及び第2のロードロック室205に、ゲートバルブG1〜G4を介して接続されている。搬送室201内には、搬送装置207が配置されている。搬送装置207は、搬送室201、第1の処理室202、第2の処理室203、第1のロードロック室204、及び第2のロードロック室205の相互間で半導体ウエハを搬送する。
【0049】
第1の処理室202は、酸素イオン照射装置である。第1の処理室202は、例えば、酸素イオン照射装置を用いて構成される。第1の処理室202では、表面にマスク材102が形成された銅膜101に、マスク材をマスクに用いて酸素イオンを照射し、銅膜101内に、銅膜101の厚さ方向の全てに対して異方的に酸化された酸化銅103が形成される。
【0050】
第2の処理室203は、エッチング装置である。第2の処理室203は、有機酸を含む水溶液、又は弗化水素酸を含む水溶液を用いたウェットエッチング装置、又は有機化合物を含むガス、例えば、有機酸ガスを用いたドライエッチング装置を用いて構成される。第2の処理室203では、上記異方的に酸化された酸化銅103がエッチングされる。
【0051】
第1のロードロック室204及び第2のロードロック室205は、圧力変換装置である。第1のロードロック室204及び第2のロードロック室205では、大気圧もしくはほぼ大気圧と搬送室201内の圧力との間で、圧力変換が行われる。第1のロードロック室204は搬入出室206にゲートバルブG5を介して接続される。同じく第2のロードロック室205は搬入出室206にゲートバルブG6を介して接続される。
【0052】
搬入出室206は、複数枚の半導体ウエハが収容されたキャリア、又は空のキャリアが載置されるポート(P)208を有する。キャリアがポート208に載置されると、図示せぬシャッタが外れ、キャリアの内部と搬入出室206の内部とが連通される。搬入出室206には搬送装置209が配置されている。搬送装置209は、搬入出室206、ポート208に載置されたキャリア、第1のロードロック室204、及び第2のロードロック室205の相互間で半導体ウエハを搬送する。
【0053】
このようなエッチングシステムを用い、銅膜101と銅膜101上に形成されたマスク材とを備えた半導体ウエハ(被処理体)に対して、第1の処理室202、第2の処理室203の順で処理を進めることにより、上記第1の実施形態に係るエッチング方法、並びに上記第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を実施することができる。
【0054】
以上、この発明を実施形態に従って説明したが、この発明は上記実施形態に限られるものではなく様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
101…銅膜、102…マスク材、103…酸化銅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にマスク材が形成された銅膜に、前記マスク材をマスクに用いて酸素イオンを照射し、前記銅膜内に、前記銅膜の厚さ方向の全てに対して異方的に酸化された酸化銅を形成する工程と、
前記異方的に酸化された酸化銅をエッチングする工程と、
を具備することを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
前記酸素イオンがO2以下の分子量のイオンを含むことを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記酸化銅のエッチングに、有機酸を含む水溶液、又は弗化水素酸を含む水溶液が用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記有機酸を含む水溶液が、
カルボキシル基を含むクエン酸
カルボキシル基を含むアスコルビン酸
カルボキシル基を含むマロン酸
カルボキシル基を含むリンゴ酸
のいずれかから選ばれることを特徴とする請求項3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記酸化銅のエッチングに、有機化合物を含むガスが用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記有機化合物ガスが、
カルボキシル基(−COOH)を有するカルボン酸
であることを特徴とする請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記有機化合物ガスがカルボン酸であるとき、このカルボン酸は(1)式で記述されるカルボン酸
R3−COOH …(1)
(R3は水素、又は直鎖もしくは分枝鎖状のC1〜C20のアルキル基もしくはアルケニル基)
から選ばれることを特徴とする請求項6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
表面にマスク材が形成された銅膜に、前記マスク材をマスクに用いて酸素イオンを照射し、前記銅膜内に、前記銅膜の厚さ方向の全てに対して異方的に酸化された酸化銅を形成する酸素イオン照射装置と、
前記異方的に酸化された酸化銅をエッチングするエッチング装置と、
を具備することを特徴とするエッチングシステム。
【請求項1】
表面にマスク材が形成された銅膜に、前記マスク材をマスクに用いて酸素イオンを照射し、前記銅膜内に、前記銅膜の厚さ方向の全てに対して異方的に酸化された酸化銅を形成する工程と、
前記異方的に酸化された酸化銅をエッチングする工程と、
を具備することを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
前記酸素イオンがO2以下の分子量のイオンを含むことを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記酸化銅のエッチングに、有機酸を含む水溶液、又は弗化水素酸を含む水溶液が用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記有機酸を含む水溶液が、
カルボキシル基を含むクエン酸
カルボキシル基を含むアスコルビン酸
カルボキシル基を含むマロン酸
カルボキシル基を含むリンゴ酸
のいずれかから選ばれることを特徴とする請求項3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記酸化銅のエッチングに、有機化合物を含むガスが用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記有機化合物ガスが、
カルボキシル基(−COOH)を有するカルボン酸
であることを特徴とする請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記有機化合物ガスがカルボン酸であるとき、このカルボン酸は(1)式で記述されるカルボン酸
R3−COOH …(1)
(R3は水素、又は直鎖もしくは分枝鎖状のC1〜C20のアルキル基もしくはアルケニル基)
から選ばれることを特徴とする請求項6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
表面にマスク材が形成された銅膜に、前記マスク材をマスクに用いて酸素イオンを照射し、前記銅膜内に、前記銅膜の厚さ方向の全てに対して異方的に酸化された酸化銅を形成する酸素イオン照射装置と、
前記異方的に酸化された酸化銅をエッチングするエッチング装置と、
を具備することを特徴とするエッチングシステム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【公開番号】特開2012−54305(P2012−54305A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193984(P2010−193984)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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