説明

エッチング液組成物

In、Al及びMoを含む三重膜用のエッチング液組成物は、組成物の総重量に対し、45〜70重量%のリン酸、2〜10重量%の硝酸、5〜25重量%の酢酸、0.01〜3重量%の含フッ素化合物、0.1〜5重量%のリン酸塩、及び残量の水を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラットパネル表示装置の構成成分のうち、インジウム(In)を含む画素電極、アルミニウム(Al)を含むソース/ドレイン電極、及びモリブデン(Mo)を含む緩衝膜を一括してエッチングすることができるIn、Al及びMoを含む三重膜用のエッチング液組成物、前記エッチング液組成物を用いるフラットパネル表示装置用アレイ基板の製造方法、並びにそれによって製造されるフラットパネル表示装置用アレイ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置において、基板上に金属配線を形成する過程は、通常にスパッタリングで金属膜を形成する工程、金属膜上にフォトレジストを塗布、露光及び現像して選択的な領域にフォトレジストを形成する工程、並びに金属膜をエッチングする工程からなる。また、個別的な単位工程前後の洗浄工程などを含む。このようなエッチング工程は、フォトレジストをマスクとして用いて選択的な領域に金属膜を残す工程を意味する。エッチング工程では、通常にプラズマなどを用いた乾式エッチング又はエッチング液を用いる湿式エッチングが用いられる。
【0003】
一方、フラットパネル表示装置において、画素電極としてインジウムを主成分とする透明伝導膜が主に用いられる。また、ソース/ドレイン電極として、アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜、特にAl−La−X(Xは、Mg、Zn、In、Ca、Te、Sr、Cr、Co、Mo、Nb、Ta、W、Ni、Nd、Sn、Fe、Si、Mo、Pt及びCよりなる群から選ばれる1種又は2種以上である。)形態のアルミニウム合金膜が主に用いられる。また、ソース/ドレイン電極の上部及び下部には、緩衝作用をする緩衝膜としてモリブデン膜又はモリブデンを主成分とする合金膜が主に用いられる。
【0004】
従来、フラットパネル表示装置の画素電極、ソース/ドレイン電極及び緩衝膜をエッチングするためには、電極ごとに異なるエッチング液組成物を用いなければならなかった。例えば、特許文献1には画素電極であるインジウムスズ酸化物用のエッチング液が開示されている。また、特許文献2にはソース/ドレイン電極であるアルミニウム、ニッケル、及び添加金属からなる単一金属合金膜用のエッチング液組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10−0502796号明細書
【特許文献2】大韓民国公開特許第10−2006−0066349号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、画素電極、ソース/ドレイン電極及び緩衝膜をそれぞれエッチングするために互いに異なるエッチング液組成物を用いると、エッチング工程が複雑になり、非経済的であるという問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、画素電極、ソース/ドレイン電極、及び緩衝膜を含む三重膜を一括して湿式エッチングすることができるIn、Al及びMoを含む三重膜用のエッチング液組成物を提供することである。
【0008】
また、本発明の目的は、均一なエッチング特性を持つIn、Al及びMoを含む三重膜用のエッチング液組成物を提供することである。
【0009】
また、本発明の目的は、前記エッチング液組成物を用いるフラットパネル表示装置用アレイ基板の製造方法及びそれによって製造されるフラットパネル表示装置用アレイ基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、組成物の総重量に対し、45〜70重量%のリン酸、2〜10重量%の硝酸、5〜25重量%の酢酸、0.01〜3重量%の含フッ素化合物、0.1〜5重量%のリン酸塩、及び残量の水を含むことを特徴とする、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウム(Al)及びモリブデン(Mo)を含む三重膜用のエッチング液組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記エッチング液組成物を用いて、ITO、Al及びMoを含む三重膜をエッチングする工程を含むことを特徴とする、フラットパネル表示装置用アレイ基板の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記エッチング液組成物を用いて形成された画素電極、ソース/ドレイン電極、及び緩衝膜を含むことを特徴とする、フラットパネル表示装置用アレイ基板を提供する。
【0013】
前記において、フラットパネル表示装置用アレイ基板は、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエッチング液組成物は、画素電極としてインジウムを主成分とする透明伝導膜と、ソース/ドレイン電極として使われるアルミニウム又はアルミニウム合金膜、特にAl−La−X(Xは、Mg、Zn、In、Ca、Te、Sr、Cr、Co、Mo、Nb、Ta、W、Ni、Nd、Sn、Fe、Si、Mo、Pt及びCからなる群から選ばれる1種又は2種以上である。)形態のアルミニウム合金膜と、緩衝作用をするモリブデン膜又はモリブデンを主成分とする合金膜とからなる三重膜を一括してエッチングすることができる。また、本発明のエッチング液組成物は、金属膜の上部のカール現象を根本的に解決して均一なエッチング特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例2のエッチング液組成物によりエッチングされたITO/Al−La−Ni/Mo三重膜のエッチングプロファイルを示す写真である。
【図2】実施例2のエッチング液組成物によりエッチングされたITO/Al−La−Ni/Mo三重膜の残渣の有無を示す写真である。
【図3】比較例1のエッチング液組成物によりエッチングされたITO/Al−La−Ni/Mo三重膜の下部Moのエッチングプロファイルを示す写真である。
【図4】図3のストリップ後の写真である。
【図5】比較例2のエッチング液組成物によりエッチングされたITO/Al−La−Ni/Mo三重膜の上部ITOのエッチングプロファイルを示す写真である。
【図6】比較例2のエッチング液組成物によりエッチングされたITO/Al−La−Ni/Mo三重膜の下部Moのエッチングプロファイルを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウム(Al)及びモリブデン(Mo)を含む三重膜用のエッチング液組成物は、リン酸、硝酸、酢酸、含フッ素化合物、リン酸塩及び残量の水を含む。
【0018】
本発明のエッチング液組成物に含まれるリン酸は主酸化剤であって、組成物の総重量に対し、45〜70重量%の割合で含まれることができ、50〜60重量%の割合で含まれることがより好ましい。前述した範囲を満足すれば、モリブデンを含む金属膜とアルミニウムを含む金属膜とをエッチングすることが可能であり、エッチング速度を調節することが容易となり、均一なエッチング特性を得ることができる。
【0019】
本発明のエッチング液組成物に含まれる硝酸は補助酸化剤であって、組成物の総重量に対し、2〜10重量%の割合で含まれることができ、3〜9重量%の割合で含まれることがより好ましい。前述した範囲を満足すれば、前記リン酸と共にモリブデンを含む金属膜とアルミニウムを含む金属膜とをエッチングすることが可能であり、エッチング速度、サイドエッチ及びテーパー角の調節が容易になる。
【0020】
本発明のエッチング液組成物に含まれる酢酸は反応速度を調節する緩衝剤であって、組成物の総重量に対し、5〜25重量%の割合で含まれることができ、10〜20重量%の割合で含まれることがより好ましい。前述した範囲を満足すれば、反応速度を適切に調節してエッチング速度を向上することができる。
【0021】
本発明のエッチング液組成物に含まれる含フッ素化合物は、組成物の総重量に対し、0.01〜3重量%の割合で含まれることができ、0.05〜1重量%の割合で含まれることがより好ましい。前述した範囲に含まれれば、酸化したアルミニウムを含む金属膜、モリブデンを含む金属膜、及びインジウム(In)を含む金属膜をエッチングすることができる。
【0022】
前記含フッ素化合物は、フッ素イオン又は多原子フッ素イオンに解離可能な化合物である。前記含フッ素化合物は、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化リン酸、重フッ化アンモニウム、重フッ化ナトリウム、及び重フッ化リン酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0023】
本発明のエッチング液組成物に含まれるリン酸塩は、モリブデンを含む金属膜及びアルミニウムを含む金属膜のエッチング速度調節剤であって、組成物の総重量に対し、0.1〜5重量%の割合で含まれることができ、0.5〜3重量%の割合で含まれることがより好ましい。前述した範囲に含まれれば、モリブデンを含む金属膜及びアルミニウムを含む金属膜のエッチング速度を調節することが容易となり、均一なエッチング特性を得ることができる。
【0024】
前記リン酸塩としては、リン酸アンモニウム塩、リン酸アルカリ金属塩及びリン酸アルカリ土金属塩などを挙げることができる。具体的な例としては、リン酸アンモニウム(Ammonium hydrogen phosphate)、リン酸二水素カリウム(potassium dihydrogen phosphate)などを挙げることができ、これらは1種の単独で又は2種以上が混合されて用いられることができる。
【0025】
本発明のエッチング液組成物に含まれる水は脱イオン水を意味し、半導体工程用が用いられ、好ましくは18MΩ/cm以上の水が用いられる。前記水は、本発明のエッチング液組成物の総重量が100重量%となるように残量で含まれる。
【0026】
本発明のエッチング液組成物は、前述した成分の外に、エッチング調節剤、界面活性剤、金属イオン封鎖剤及び腐食防止剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上をさらに含むことができる。
【0027】
本発明において、前記ITO、Al及びMoを含む三重膜としては、ITO膜、アルミニウムを含む金属膜及びモリブデンを含む金属膜でなる三重膜を含むことができる。前記アルミニウムを含む金属膜はアルミニウム膜又はアルミニウム合金膜であることが好ましい。前記アルミニウム合金膜は、Al−La−X合金からなり、XはMg、Zn、In、Ca、Te、Sr、Cr、Co、Mo、Nb、Ta、W、Ni、Nd、Sn、Fe、Si、Mo、Pt及びCからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0028】
本発明は、画素電極としてインジウムを主成分とする透明伝導膜、つまりITOと、ソース/ドレイン電極に使われるアルミニウム又はアルミニウム合金膜、特にAl−La−X(Xは、Mg、Zn、In、Ca、Te、Sr、Cr、Co、Mo、Nb、Ta、W、Ni、Nd、Sn、Fe、Si、Mo、Pt及びCからなる群から選ばれる1種又は2種以上である。)形態のアルミニウム合金膜と、緩衝作用をするモリブデン膜又はモリブデンを主成分とする合金膜とからなる三重膜に一層効果的である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び試験例に基づいて本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明の範囲が下記の実施例及び試験例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例3:エッチング液組成物の製造)
下記表1に記載された成分及び組成比でエッチング液組成物が180kgとなるように、実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例3の組成物を製造した。
【0031】
【表1】

【0032】
(試験例:エッチング液組成物の特性評価)
ガラス上にITO/Al−La−Ni/Moからなる三重膜が蒸着され、一定の形状にフォトレジストがパターニングされた基板を用いた。噴射式エッチング方式の実験装置(モデル:ETCHER(TFT)、SEMES社製)内に前記実施例1〜5及び比較例1〜3のエッチング液組成物を入れ、温度を40℃にセットして加温した。その後、温度が40±0.1℃に到逹した後、エッチング工程を行った。総エッチング時間をEPDを基準として60%を与えて実施した。試片を入れて噴射を始め、エッチングが完了すれば、取り出して脱イオン水で洗浄した後、熱風乾燥装置を用いて乾燥し、フォトレジスト(PR)剥離器(stripper)でフォトレジストをとり除いた。洗浄及び乾燥の後、電子走査顕微鏡(SEM)(モデル:S−4700、HITACHI社製)を用いて、エッチングプロファイルの傾斜角、サイドエッチ(CD(critical dimension))損失、エッチング残留物及び下部膜の損傷を評価し、その結果を表2及び図1〜6に示した。
【0033】
【表2】

【0034】
表2を参照すると、実施例1〜実施例5のエッチング液組成物によりエッチングされた金属膜は、エッチングプロファイルが優秀であり、下部膜損傷及び残渣がないエッチング特性を示した。しかし、比較例1〜3のエッチング液組成物によりエッチングする場合、エッチングプロファイルが良好でなく、モリブデン膜の未エッチング、残渣及び下部膜損傷がある良好でない結果を得た。
【0035】
図1は実施例2のエッチング液組成物によりエッチングされた金属膜のエッチングプロファイルを示す写真である。図2は実施例2のエッチング液組成物によりエッチングされた金属膜の残渣の有無を示す写真である。図3は比較例1のエッチング液組成物によりエッチングされた金属膜の下部Moのエッチングプロファイルを示す写真である。図4は比較例1のエッチング液組成物によりエッチングされた金属膜のストリップ以後を示す写真である。図5は比較例2のエッチング液組成物によりエッチングされた金属膜の上部ITOのエッチングプロファイルを示す写真である。図6は比較例2のエッチング液組成物によりエッチングされた金属膜の下部Moを示す写真である。
【0036】
図1〜図6に示すように、実施例2のエッチング液組成物により金属膜をエッチングすれば、エッチングプロファイルが優秀であり、残渣がないことが分かる。一方、比較例1のエッチング液組成物により金属膜をエッチングすれば、下部のモリブデン膜がエッチングされないことが分かる。また、比較例2のエッチング液組成物により金属膜をエッチングすれば、上部膜であるITOにはチップ(tip)が発生し、下部膜のモリブデンにはアンダーカットが発生することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総重量に対し、45〜70重量%のリン酸、2〜10重量%の硝酸、5〜25重量%の酢酸、0.01〜3重量%の含フッ素化合物、0.1〜5重量%のリン酸塩、及び残量の水を含むことを特徴とする、ITO、Al及びMoを含む三重膜用のエッチング液組成物。
【請求項2】
前記含フッ素化合物は、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化リン酸、重フッ化アンモニウム、重フッ化ナトリウム、及び重フッ化リン酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のITO、Al及びMoを含む三重膜用のエッチング液組成物。
【請求項3】
前記リン酸塩は、リン酸アンモニウム及びリン酸二水素カリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のITO、Al及びMoを含む三重膜用のエッチング液組成物。
【請求項4】
前記ITO、Al及びMoを含む三重膜は、ITO膜、アルミニウムを含む金属膜、及びモリブデンを含む金属膜からなる三重膜であることを特徴とする、請求項1に記載のITO、Al及びMoを含む三重膜用のエッチング液組成物。
【請求項5】
前記アルミニウムを含む金属膜は、アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜であることを特徴とする、請求項4に記載のITO、Al及びMoを含む三重膜用のエッチング液組成物。
【請求項6】
前記アルミニウム合金膜は、Al−La−X合金からなり、XはMg、Zn、In、Ca、Te、Sr、Cr、Co、Mo、Nb、Ta、W、Ni、Nd、Sn、Fe、Si、Mo、Pt及びCからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項5に記載のITO、Al及びMoを含む三重膜用のエッチング液組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のエッチング液組成物を用いて、前記ITO、Al及びMoを含む三重膜をエッチングする工程を含むことを特徴とする、フラットパネル表示装置用アレイ基板の製造方法。
【請求項8】
前記フラットパネル表示装置用アレイ基板は、薄膜トランジスタアレイ基板であることを特徴とする、請求項7に記載のフラットパネル表示装置用アレイ基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載のエッチング液組成物を用いて形成された画素電極、ソース/ドレイン電極、及び緩衝膜を含むことを特徴とする、フラットパネル表示装置用アレイ基板。
【請求項10】
薄膜トランジスタアレイ基板であることを特徴とする、請求項9に記載のフラットパネル表示装置用アレイ基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−509703(P2013−509703A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536673(P2012−536673)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007417
【国際公開番号】WO2011/052989
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(506171277)ドンウー ファイン−ケム カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】