説明

エピタキシャル基板

【課題】シリコン基板を下地基板とし、基板サイズに比して問題ない程度に反りが抑制され、半導体素子の作製に好適なエピタキシャル基板を提供する。
【解決手段】エピタキシャル基板が、シリコン単結晶からなる下地基板と、下地基板の上に形成された複数のIII族窒化物層からなるIII族窒化物層群と、を備えており、下地基板が、所定のn型ドーパントが添加されてなることでn型の導電性を有し、かつ、比抵抗が0.1Ω・cm以下であり、複数のIII族窒化物層がそれぞれ、少なくともAlまたはGaを含み、エピタキシャル基板の反り量をSR(単位:μm)、窒化物層群の総膜厚をte(単位:μm)、下地基板の膜厚をts(単位:mm)、下地基板の直径をds(単位:mm)とするときに、規格化反り指数KがK={(SR/te)×(ts/ds)2}≦1×10-3なる関係式をみたすようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子用のエピタキシャル基板に関し、特にIII族窒化物を用いて構成されるエピタキシャル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体は、直接遷移型の広いバンドギャップを有し、高い絶縁破壊電界および高い飽和電子速度を有することから、LEDやLDなどの発光デバイスや、HEMTなど高周波/ハイパワーの電子デバイス用半導体材料として注目されている。例えば、AlGaNからなる障壁層とGaNからなるチャネル層とを積層してなるHEMT(高電子移動度トランジスタ)素子は、窒化物材料特有の大きな分極効果(自発分極効果とピエゾ分極効果)により積層界面(ヘテロ界面)に高濃度の二次元電子ガス(2DEG)が生成するという特徴を活かしたものである(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
HEMT素子用エピタキシャル基板に用いる下地基板として、SiCのような、III族窒化物とは異なる組成の単結晶(異種単結晶)を用いる場合がある。この場合、歪み超格子層や低温成長緩衝層などの緩衝層が、初期成長層として下地基板の上に形成されるのが一般的である。よって、下地基板の上に障壁層、チャネル層、および緩衝層をエピタキシャル形成してなるのが、異種単結晶からなる下地基板を用いたHEMT素子用基板の最も基本的な構成態様となる。これに加えて、障壁層とチャネル層の間に、2次元電子ガスの空間的な閉じ込めを促進することを目的として、厚さ1nm前後のスペーサ層が設けられることもある。スペーサ層は、例えばAlNなどで構成される。さらには、HEMT素子用基板の最表面におけるエネルギー準位の制御や、電極とのコンタクト特性の改善を目的として、例えばn型GaN層や超格子層からなるキャップ層が、障壁層の上に形成される場合もある。
【0004】
HEMT素子およびHEMT素子用の基板に対しては、電力密度の増大、高効率化などの性能向上に関する課題、ノーマリーオフ動作化などの機能性向上に関する課題、高信頼性や低コスト化などの基本的な課題など、様々な課題があり、各々について活発な取り組みが行われている。
【0005】
一方、エピタキシャル基板の低コスト化、さらにはシリコン系回路デバイスとの集積化などを目的として、上記のような窒化物デバイスを作製するにあたって単結晶シリコンを下地基板として用いる研究・開発が行われている(例えば、特許文献1ないし特許文献3、および非特許文献2参照)。HEMT素子用エピタキシャル基板の下地基板にシリコンのような導電性の材料を選んだ場合には、下地基板の裏面からフィールドプレート効果が付与されるので、高耐電圧や高速スイッチングが可能なHEMT素子の設計が可能となる。
【0006】
特に、特許文献1ないし特許文献3においては、エピタキシャル基板の作製に、様々な比抵抗を持つシリコン基板が用いられている。特許文献1には、寄生損失の低減を図ることを目的として、102Ω・cmを越える比抵抗を有するシリコン基板を用いる態様が開示されている。特許文献2には、シリコン基板へのリーク電流の低減を図ることを目的として、1.0Ω・cm〜500Ω・cm程度の比抵抗を有するシリコン基板を用いる態様が開示されている。特許文献3には、一様な断面形状を得ることを目的として、0.01Ω・cm以下の比抵抗を有するp型シリコン基板を用いる態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−522447号公報
【特許文献2】特開2003−059948号公報
【特許文献3】特許第4519196号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】"Highly Reliable 250W GaN High Electron Mobility Transistor Power Amplifier" Toshihide Kikkawa, Jpn. J. Appl. Phys. 44, (2005), 4896.
【非特許文献2】"High power AlGaN/GaN HFET with a high breakdown voltage of over 1.8kV on 4 inch Si substrates and the suppression of current collapse", Nariaki Ikeda, Syuusuke Kaya, Jiang Li, Yoshihiro Sato, Sadahiro Kato, Seikoh Yoshida, Proceedings of the 20th International Symposium on Power Semicoductor Devices & IC's May 18-22,2008 Oralando, FL", pp.287-290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および特許文献2に開示されているような、比較的高抵抗のシリコン基板を用いた場合、エピタキシャル基板には、シリコン基板とその上に形成されるIII族窒化物膜との格子定数差および熱膨張係数差に起因する内部応力が発生する。そのため、エピタキシャル基板は、例えば断面が波形となるような、いびつな形状に変形する。このように変形したエピタキシャル基板を電子デバイスの作製に供することは、当該デバイスの作製工程において、吸着不良や露光不良の原因となるため、好ましくない。
【0010】
一方、特許文献3に開示された技術を用いた場合、||BOW|−SORI|≦2μmなる関係式をみたすことで、上述のようないびつな形状への変形は抑制されるが、例えば断面が弓形になる一様な反り(湾曲)は許容される。ところが、エピタキシャル基板のサイズによっては、そのような一様な反りも問題となる。例えば、基板直径が小さいにもかかわらず反りが大きいエピタキシャル基板は、たとえ上式をみたしていたとしても、実用に耐えるものとはなり難い。すなわち、特許文献3においては、エピタキシャル基板のサイズと変形との関係が考慮されていない。
【0011】
なお、特許文献3においては、反りの矯正について示唆されているが、これは、エピタキシャル基板およびこれを用いたデバイスの作製プロセスにおいて本来的には不要であり、そのような工程を行うことは製造コストを押し上げる要因となるので、好ましくない。
【0012】
また、HEMT素子のような半導体素子は、通常、所定のパターニングが施された一枚のエピタキシャル基板が複数の素子体に切り出されることによって作製される。反りのあるエピタキシャル基板を用いて作製されたHEMT素子には特性不良が生じやすいため、製造歩留まりを確保するという観点からも、エピタキシャル基板には、反りが少なく平坦性が高いことが求められる。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、シリコン基板を下地基板とし、基板サイズに比して問題ない程度に反りが抑制され、半導体素子の作製に好適なエピタキシャル基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、シリコン単結晶からなる下地基板と、前記下地基板の上に形成された複数のIII族窒化物層からなるIII族窒化物層群と、を備えるエピタキシャル基板であって、前記下地基板は、所定のn型ドーパントが添加されてなることでn型の導電性を有し、かつ、比抵抗が0.1Ω・cm以下であり、前記複数のIII族窒化物層はそれぞれ、少なくともAlまたはGaを含み、前記エピタキシャル基板の反り量をSR(単位:μm)、前記窒化物層群の総膜厚をte(単位:μm)、前記下地基板の膜厚をts(単位:mm)、前記下地基板の直径をds(単位:mm)とするときに、規格化反り指数KがK={(SR/te)×(ts/ds)2}≦1×10-3なる関係式をみたすことを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1に記載のエピタキシャル基板であって、前記n型ドーパントがアンチモンまたはヒ素であることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のエピタキシャル基板であって、前記III族窒化物層群が、前記下地基板の上に形成されたバッファ層と、前記バッファ層の上に形成された機能層と、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明は、請求項3に記載のエピタキシャル基板であって、前記機能層が、GaNからなるチャネル層と、前記チャネル層の上に形成された、AlGaNもしくはInAlNからなる障壁層と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明は、請求項4に記載のエピタキシャル基板であって、前記機能層が、前記チャネル層と前記障壁層との間に、AlNからなるスペーサ層、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1ないし請求項5の発明によれば、下地基板のサイズおよびIII族窒化物層群の膜厚に応じて問題ない程度に反りが抑制されたエピタキシャル基板が実現される。
【0020】
特に、請求項4および請求項5の発明によれば、エピタキシャル基板を用いてHEMT素子を作製した際に、素子特性要件をみたすHEMT素子を高い歩留まりで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係るエピタキシャル基板10の構成を示す断面模式図である。
【図2】シリコン単結晶にアンチモン、ヒ素、リンを添加した場合のシリコン単結晶中の各元素の原子濃度とシリコン単結晶の比抵抗との関係を示す図である。
【図3】下地基板1の比抵抗ρとエピタキシャル基板10の規格化反り指数Kとの関係を示す図である。
【図4】窒化物層群の総膜厚teと規格化反り指数Kとの関係を示す図である。
【図5】下地基板1の直径dsと規格化反り指数Kとの関係を示す図である。
【図6】下地基板1の厚みtsと規格化反り指数Kとの関係を示す図である。
【図7】図3に示した結果を与えたそれぞれのエピタキシャル基板10の素子特性歩留まりと、規格化反り指数Kとの関係を示す図である。
【図8】図4に示した結果を与えたそれぞれのエピタキシャル基板10の素子特性歩留まりと、規格化反り指数Kとの関係を示す図である。
【図9】図5および図6に示した結果を与えたそれぞれのエピタキシャル基板10の素子特性歩留まりと、規格化反り指数Kとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<エピタキシャル基板の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るエピタキシャル基板10の構成を示す断面模式図である。エピタキシャル基板10は、下地基板1の上に、いずれもIII族窒化物からなる下地層2と超格子層3と機能層4とをこの順にエピタキシャル形成した構成を有する。なお、下地層2と超格子層3とを合わせてバッファ層とも称する。
【0023】
下地基板1は、シリコン単結晶からなる。また、下地基板1は、n型の導電型を呈し、かつ、0.1Ω・cm以下の比抵抗を有する。係る導電型および比抵抗は、下地基板1に例えばアンチモン(Sb)、ヒ素(As)、リン(P)などのn型ドーパントを添加することで実現されてなる。図2は、シリコン単結晶にアンチモン、ヒ素、リンを添加した場合のシリコン単結晶中の各元素の原子濃度(ドーパント濃度)とシリコン単結晶の比抵抗との関係を示す図である。図2に示すように、これらのドーパントをおよそ1.0×1017/cm3以上の原子濃度で添加した場合に、シリコン単結晶は0.1Ω・cm以下の比抵抗を有する。n型ドーパントのドーパント濃度を高めるほど、下地基板1の比抵抗を小さくすることができる。例えば、アンチモンについては、少なくとも7×1018/cm3程度までは問題なくドープすることができ、これにより、下地基板1の比抵抗は0.008Ω・cmにまで低められる。ヒ素については、少なくとも8×1019/cm3程度までは問題なくドープすることができ、これにより、下地基板1の比抵抗は0.001Ωcmにまで低められる。なお、リンについては、2.0×1017/cm3という原子濃度でドープした場合に下地基板1の比抵抗が0.05Ωcmとなるが、さらなるドープを行ってより比抵抗が小さい下地基板1を得ることは困難である。
【0024】
下地基板1へのn型ドーパントの添加は、種々の手法によって実現可能である。例えば、シリコンインゴットをチョクラルスキー法で作製する際に、シリコン融液内にアンチモン、ヒ素、あるいはリンを添加することなどにより行うことができる。
【0025】
窒化物層群の形成の容易性の点からは、(111)面シリコン単結晶を下地基板1として用いるのが好ましいが、他の結晶面を有するシリコン単結晶を用いる態様であってもよい。
【0026】
下地層2と、超格子層3と、機能層4とは、それぞれ、ウルツ鉱型のIII族窒化物を(0001)結晶面が下地基板1の基板面に対し略平行となるように、エピタキシャル成長手法によって形成した層である。これらの層の形成は、有機金属化学気相成長法(MOCVD法)により行うのが好適な一例である。
【0027】
下地層2は、その上に上述の各層を良好な結晶品質で形成することを可能とするべく設けられる層である。下地層2は、第1下地層2aと、その上に積層された第2下地層2bとからなる。第1下地層2aは、AlNにて数十nmから百数十nm程度の厚みに形成されてなる。第2下地層2bは、AlpGa1-pN(0≦p<1)なる組成のIII族窒化物にて数十nm程度の厚みに形成されてなる。
【0028】
超格子層3は、それぞれが相異なる組成の2種類のIII族窒化物層である第1単位層31と第2単位層32とを繰り返し交互に積層することにより形成されてなる、超格子構造を有する部位である。なお、1つの第1単位層31と1つの第2単位層32との組をペア層と称する。超格子層3は、エピタキシャル基板10の耐電圧性を高める目的で設けられてなる。
【0029】
第1単位層31と第2単位層32とは、前者を構成するIII族窒化物よりも後者を構成するIII族窒化物の方が無歪の状態(バルク状態)における面内格子定数(格子長)が大きい、という関係をみたすように形成されてなる。
【0030】
第1単位層31は、3nm〜20nm程度の厚みに形成されるのが好ましい。典型的には5nm〜10nmの厚みに形成される。一方、第2単位層32は、10nm〜25nm程度であるのが好適である。また、ペア層の繰り返し数は、5〜百数十程度である。
【0031】
好ましくは、第1単位層31はAlNにて構成され、第2単位層32はAlxGa1-xN(0≦x≦0.25)なる組成のIII族窒化物にて構成される。
【0032】
機能層4は、超格子層3の上に形成された、III族窒化物により形成される少なくとも1つの層であり、エピタキシャル基板10の上にさらに所定の半導体層や電極などを形成することで半導体素子を構成する場合において、所定の機能を発現する層である。それゆえ、機能層4は、当該機能に応じた組成および厚みを有する1または複数の層にて形成される。
【0033】
図1においては、エピタキシャル基板10がHEMT素子用の基板として用いられることを想定して、機能層4を、チャネル層4aとスペーサ層4bと障壁層4cとの積層構造として設けた場合を例示している。チャネル層4aは、高抵抗のGaNにて数μm程度の厚みに形成される。スペーサ層4bは、AlNにて1nm程度の厚みに形成されてなる。障壁層4cは、AlGaNやInAlNなどにて数十nm程度の厚みに形成される。なお、スペーサ層を備えない構造であってもよい。
【0034】
<エピタキシャル基板の製造方法>
次に、MOCVD法を用いる場合を例として、エピタキシャル基板10を製造する方法について概説する。
【0035】
まず、下地基板1として、アンチモン、ヒ素、あるいはリンなどのn型ドーパントの添加によって比抵抗が所定の値に調整された(111)面の単結晶シリコンウェハーを用意する。係る単結晶シリコンウェハーをフッ素水素酸水溶液にて洗浄する。その後、該水溶液が除去された単結晶シリコンウェハーをMOCVD装置のリアクタ内にセットする。
【0036】
そして、水素および窒素雰囲気中で単結晶シリコンウェハーを加熱し、それぞれの層に応じた基板温度とガス雰囲気および圧力のもとで、下地層2、超格子層3、および機能層4を順次に形成する。
【0037】
III族窒化物層を形成するための原料ガスとしては、TMG(トリメチルガリウム)、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMI(トリメチルインジウム)を用いることができる。
【0038】
機能層4が形成された後、エピタキシャル基板10は、リアクタ内で常温まで降温される。その後、リアクタから取り出されたエピタキシャル基板10は、適宜、後段の処理(電極層のパターニングなど)に供される。
【0039】
<規格化反り指数>
次に、本実施の形態において用いる規格化反り指数について説明する。規格化反り指数とは、エピタキシャル基板10の反りの程度を表す指数であり、値が大きいほど、エピタキシャル基板10が反っていることを表す。
【0040】
エピタキシャル基板10の反り量(単純反り量)をSR(単位:μm)、窒化物層群の総膜厚をte(単位:μm)、下地基板1の厚みをts(単位:mm)、下地基板1の直径(つまりはエピタキシャル基板10の直径)をds(単位:mm)とするときに、規格化反り指数Kは、
K={(SR/te)×(ts/ds)2} ・・・・(1)
なる式にて算出される。ここで、単純反り量とは、一般的に反りの程度を表す値として用いられる、エピタキシャル基板10を水平面に載置したときに、その鉛直方向最下点の位置(つまりは水平面の位置)から鉛直方向最上点の位置までの鉛直方向の距離である。単純反り量は、例えば、レーザー変位計を用いて測定される。あるいは、ノギスなどによって概略的な値を得ることできる。
【0041】
(1)式に示すように、規格化反り指数は、窒化物層群の膜厚、下地基板1の直径、および下地基板1の厚みの3つの値を算出式に含んでいる。従って、それら3つの値が異なっているエピタキシャル基板10同士であっても、反りの度合いを比較することができる点で特徴的である。
【0042】
例えば、仮に単純反り量SR、窒化物層群の総膜厚te、および下地基板1の厚みtsが同じであっても、下地基板1の直径(つまりはエピタキシャル基板10の直径)dsが小さいほど、(1)式で得られる規格化反り指数Kの値は大きくなる。これは、単純反り量SRが同じであれば、直径が小さいエピタキシャル基板10ほど、実質的にはより反っている、換言すれば、基板全体としての平坦性(平板性)が劣っている、ということを意味している。
【0043】
このように、(1)式で得られる規格化反り指数Kを用いることで、サイズが異なるエピタキシャル基板10同士であっても、反りの度合いを比較することが可能となる。
【0044】
<エピタキシャル基板の反り評価>
次に、上述の構成を有する本実施の形態に係るエピタキシャル基板10を規格化反り指数Kに基づいて評価した場合の反りの度合いについて説明する。
【0045】
図3は、下地基板1の比抵抗ρとエピタキシャル基板10の規格化反り指数Kとの関係を示す図である。図3に示す結果は、アンチモン、ヒ素、あるいはリンの添加量を違えることによって比抵抗を種々に違えた複数の下地基板1に、同一の条件で窒化物層群を形成することによって作製した複数のエピタキシャル基板10について、規格化反り指数Kを求めることにより得られたものである。
【0046】
図3からは、本実施の形態に係るエピタキシャル基板10のように、下地基板1の比抵抗を0.1Ω・cm以下とした場合に、規格化反り指数Kがおよそ1×10-3以下となることがわかる。また、下地基板1の比抵抗が0.1Ω・cm以下である場合、比抵抗の値が同じであればSbドープがもっとも規格化反り指数Kの値が小さくなることもわかる。
【0047】
また、図4は、窒化物層群の総膜厚teと規格化反り指数Kとの関係を示す図である。図4は、比抵抗が0.02Ω・cm、0.05Ω・cm、または0.1Ω・cmとなるようにアンチモンの添加量を調整した下地基板1を用意したうえで、窒化物層群の総膜厚を違えたエピタキシャル基板10を作製し、それぞれについて規格化反り指数Kを求めることにより得られたものである。
【0048】
さらに、図5は、下地基板1の直径dsと規格化反り指数Kとの関係を示す図である。図6は、下地基板1の厚みtsと規格化反り指数Kとの関係を示す図である。図5および図6に示す結果は、直径と厚みを違えた下地基板1を用意し、比抵抗が0.02Ω・cm、0.05Ω・cm、または0.1Ω・cmとなるようにアンチモンの添加量を調整したうえで、エピタキシャル基板10を作製し、それぞれについて規格化反り指数Kを求めることにより得られたものである。
【0049】
図3ないし図6に示す結果は、本実施の形態のように、比抵抗が0.1Ω・cm以下のn型の導電性を呈する下地基板1を用いることで、窒化物層群の総膜厚、下地基板1の直径、または下地基板1の厚みが異なっていても、規格化反り指数Kが1×10-3以下という反りの少ないエピタキシャル基板10を得ることが可能であることを意味している。
【0050】
なお、図4では、比抵抗が0.1Ω・cmの下地基板1を用いる場合、窒化物層群の総膜厚が3μmを下回ると規格化反り指数Kが急激に増大している。このことは、比抵抗が0.1Ω・cmである下地基板1を用いる場合、反りを抑制するには窒化物層群を厚く形成するのが好ましいことを示している。
【0051】
<HEMT素子の作製におけるエピタキシャル基板の反り抑制効果>
次に、エピタキシャル基板10の反りの抑制が、HEMT素子の作製に際して奏する効果について説明する。
【0052】
HEMT素子が実用に供し得るものであるためには、二次元電子ガス濃度、二次元電子ガス移動度、コンタクト抵抗、およびゲートリーク電流などの諸特性が良好であることが必要である。具体的には、少なくとも次の4つの基準をクリアすることが求められる。
【0053】
(基準1)二次元電子ガス濃度が2.0×1013cm-2以上;
(基準2)二次元電子ガス移動度が1300cm2-1-1以上;
(基準3)コンタクト抵抗が10×10-6Ωcm2以下;
(基準4)−100V印加時のゲートリーク電流が1.0μAmm-1以下。
【0054】
以下、これら4つの基準を素子特性基準と総称する。エピタキシャル基板10を用いて作製したHEMT素子は、係る素子特性基準をみたすことが求められる。しかも、HEMT素子は通常、1枚のエピタキシャル基板10から多数個取りされるので、個々のエピタキシャル基板10についてみれば、該基板から得られる全てのHEMT素子のうち、素子特性基準をみたすHEMT素子の比率が高いことが求められる。以下、係る比率を素子特性歩留まりと称する。
【0055】
図7は、図3に示した結果を与えたそれぞれのエピタキシャル基板10から複数個のHEMT素子を作製し、それぞれの二次元電子ガス濃度、二次元電子ガス移動度、コンタクト抵抗、およびゲートリーク電流を測定することにより得られた、エピタキシャル基板10ごとの素子特性歩留まりと、規格化反り指数Kとの関係を示す図である。同様に、図8は、図4に示した結果を与えたそれぞれのエピタキシャル基板10についての素子特性歩留まりと、規格化反り指数Kとの関係を示す図である。また、図9は、図5および図6に示した結果を与えたそれぞれのエピタキシャル基板10についての素子特性歩留まりと、規格化反り指数Kとの関係を示す図である。
【0056】
図7ないし図9に示す結果からは、規格化反り指数Kが1×10-3以下であるエピタキシャル基板10については、80%以上という優れた素子特性歩留まりが実現されているのに対して、規格化反り指数Kが1×10-3を上回るエピタキシャル基板10については、素子特性歩留まりが悪いことがわかる。
【0057】
係る結果は、規格化反り指数Kが1×10-3以下という反りの小さいエピタキシャル基板10を用いることで、高い素子特性歩留まりにてHEMT素子を作製出来ることを意味している。すなわち、規格化反り指数Kと素子特性歩留まりとの間には相関がある。換言すれば、規格化反り指数Kは、エピタキシャル基板10を用いてHEMT素子を作製する際の素子特性歩留まりの評価指標ともなる。
【0058】
また、上述したように、規格化反り指数Kが1×10-3以下となるエピタキシャル基板10は、比抵抗が0.1Ω・cm以下のn型の導電性を呈する下地基板1を用いることで実現される。従って、係る要件をみたす下地基板1を用いてエピタキシャル基板10を作製すれば、高い素子特性歩留まりにてHEMT素子を作製出来ることになる。
【0059】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、比抵抗が0.1Ω・cm以下のn型の導電性を呈する下地基板1を用いてエピタキシャル基板を作製することで、下地基板のサイズおよびIII族窒化物層群の膜厚に応じて問題ない程度に反りが小さく、高い素子特性歩留まりにてHEMT素子を作製出来るエピタキシャル基板が実現される。
【実施例】
【0060】
作製条件を違えた種々のエピタキシャル基板10を作製し、単純反り量SRを測定してそれぞれの規格化反り指数Kを求めた。さらに、それぞれのエピタキシャル基板10から多数個のHEMT素子を作製して、二次元電子ガス濃度測定、二次元電子ガス移動度測定、コンタクト抵抗測定、およびゲートリーク電流測定を行い、その結果から、それぞれのエピタキシャル基板10についての素子特性歩留まりを評価した。
【0061】
(実験例1ないし実験例3)
実験例1として、下地基板1として、アンチモンの添加量(原子濃度)を違えることで異なる比抵抗を有する複数のn型シリコン(111)面単結晶基板を用意し、これを用いて4種類のエピタキシャル基板10を作製した(試料No.1−1〜1−4)。それぞれの下地基板1の直径(エピタキシャル基板10の直径)dsは100mm、厚みtsは0.625mmであった。
【0062】
比抵抗は、0.005Ω・cm、0.01Ω・cm、0.05Ω・cm、0.1Ω・cmの4水準に違えた。それぞれの比抵抗を与えるアンチモンの原子濃度は、順に、5.0×1018/cm3、1.5×1018/cm3、3.0×1017/cm3、1.0×1017/cm3であった。
【0063】
また、実験例2として、ヒ素の添加量(原子濃度)を違えることで異なる比抵抗を有する複数のn型シリコン(111)面単結晶基板を用意し、これを用いて6種類のエピタキシャル基板10を作製した(試料No.2−1〜2−6)。それぞれの下地基板1の直径(エピタキシャル基板10の直径)dsは100mm、厚みtsは0.625mmであった。
【0064】
比抵抗は、0.003Ω・cm、0.01Ω・cm、0.02Ω・cm、0.05Ω・cm、0.1Ω・cm、0.2Ω・cmの6水準に違えた。それぞれの比抵抗を与えるヒ素の原子濃度は、順に、2.4×1019/cm3、4.1×1018/cm3、1.2×1018/cm3、2.3×1017/cm3、8.0×1016/cm3、3.2×1016/cm3であった。
【0065】
さらに、実験例3として、リンの添加量(原子濃度)を違えることで異なる比抵抗を有する複数のn型シリコン(111)面単結晶基板を用意し、これを用いて3種類のエピタキシャル基板10を作製した(試料No.3−1〜3−3)。それぞれの下地基板1の直径(エピタキシャル基板10の直径)dsは100mm、厚みtsは0.625mmであった。
【0066】
比抵抗は、0.05Ω・cm、0.1Ω・cm、0.5Ω・cmの3水準に違えた。それぞれの比抵抗を与えるリンの原子濃度は、順に、2.0×1017/cm3、8.0×1016/cm3、1.0×1016/cm3であった。
【0067】
それぞれのエピタキシャル基板の作製に際しては、まず、下地基板1をフッ素水素酸水溶液にて洗浄した。そして、フッ素水素酸水溶液が除去された下地基板1をMOCVD装置のリアクタ内にセットした。
【0068】
これを水素及び窒素雰囲気中で加熱して、基板温度を1100℃とした。基板温度が1100℃になると、これを保った状態で、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、アンモニア(NH3)の供給量を各層の組成に合わせて調整することにより窒化物層群を形成した。具体的には、第1下地層2aとしての膜厚100nmのAlN層と、第2下地層2bとしての膜厚50nmのAlGaN層と、第1単位層31として膜厚5nmのAlN層と第2単位層32としての膜厚20nmのAlGaN層とを交互に74ペア積層させて形成した総膜厚が1850nmの超格子層3と、チャネル層4aとしての膜厚989nmのGaN層と、スペーサ層4bとしての膜厚1nmのAlN層と、障壁層4cとしての膜厚10nmのInAlN層とからなる総膜厚1000nmの機能層4とをこの順に積層形成した。これにより、窒化物層群の総膜厚が3000nmのエピタキシャル基板10が得られた。
【0069】
得られたそれぞれのエピタキシャル基板10について、レーザー変位計を用いて単純反り量SRを測定した。得られた値を用いて、規格化反り指数Kを算出した。
【0070】
さらに、それぞれのエピタキシャル基板10を用いて、多数個のHEMT素子を作製した。なお、HEMT素子は、ゲート幅が1mm、ソース−ゲート間隔が0.5μm、ゲート−ドレイン間隔が7.5μm、ゲート長が1.5μmとなるように設計した。
【0071】
まず、フォトリソグラフィプロセスとRIE法を用いて、エピタキシャル基板10において個々のHEMT素子の境界となる部位を深さ400nm程度までエッチング除去した。
【0072】
次に、エピタキシャル基板10の上に厚さ10nmのSiO2膜を形成し、続いてフォトリソグラフィを用いてソース電極、ドレイン電極の形成予定箇所のSiO2膜をエッチング除去することで、SiO2パターン層を得た。
【0073】
次いで、真空蒸着法とフォトリソグラフィプロセスとを用い、ソース電極、ドレイン電極の形成予定箇所にTi/Al/Ni/Au(それぞれの膜厚は25/75/15/100nm)からなる金属パターンを形成することで、ソース電極およびドレイン電極を形成した。次いで、ソース電極およびドレイン電極のオーミック性を良好なものにするために、800℃の窒素ガス雰囲気中にて30秒間の熱処理を施した。
【0074】
その後、フォトリソグラフィプロセスを用いて、SiO2パターン層から、ゲート電極の形成予定箇所のSiO2膜を除去し、さらに真空蒸着法とフォトリソグラフィとを用いて、該形成予定箇所に、Pd/Au(それぞれの膜厚は30/100nm)からなるショットキー性金属パターンとしてゲート電極を形成した。
【0075】
続いて、デバイス特性の測定を可能とするため、CVD法とフォトリソグラフィプロセスとを用いて、窒化シリコンのパッシベーション膜をエピタキシャル基板10の上に形成したうえで、該パッシベーション膜のソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極に対応する位置にワイヤボンディング用のコンタクトホールを開けた。
【0076】
最後にダイシングによりチップ化することで、HEMT素子を得た。
【0077】
このようにして得られたそれぞれのHEMT素子について、ワイヤボンディングを行った上で、ホール効果法により、二次元電子ガス濃度と二次元電子ガス移動度とを測定した。また、TLM法によりコンタクト抵抗を測定し、2-terminal gate-drain I-V測定法により−100V印加時のゲートリーク電流を測定した。これらの測定結果から、それぞれのエピタキシャル基板10について、作製した全てのHEMT素子に対する上述の(基準1)〜(基準4)を全て満たすHEMT素子の比率を、素子特性歩留まりとして求めた。
【0078】
表1に、それぞれのエピタキシャル基板10についての、下地基板1の比抵抗、下地基板1におけるn型ドーパントの種類とその原子濃度、単純反り量SR、規格化反り指数K、および素子特性歩留まりを一覧にして示す。なお、これら実験例1ないし実験例3の結果に基づき作成したのが、図2、図3、図7である。
【0079】
【表1】

【0080】
表1さらには図3、図7に示すように、下地基板1の比抵抗が0.1Ω・cm以下の場合、規格化反り指数Kの値が1×10-3以下となり、素子特性歩留まりが80%を上回った。すなわち、反りが抑制され、かつ、HEMT素子を高い歩留まりで作製可能なエピタキシャル基板が得られることが確認された。
【0081】
(実験例4)
バッファ層の厚みを違えることで、III族窒化物層群の総膜厚teを種々に違えた他は、実験例1の試料No.1−2(比抵抗ρ=0.02Ω・cm)、1−3(比抵抗ρ=0.05Ω・cm)、および1−4(比抵抗ρ=0.1Ω・cm)と同様の条件でそれぞれ5種ずつ計15種のエピタキシャル基板10を作製(試料No.4−1〜4−15)し、さらに係るエピタキシャル基板10を用いてHEMTを作製した。なお、試料No.4−3のエピタキシャル基板10が試料No.1−2のエピタキシャル基板10に相当し、試料No.4−8のエピタキシャル基板10が試料No.1−3のエピタキシャル基板10に相当し、試料No.4−13のエピタキシャル基板10が試料No.1−4のエピタキシャル基板10に相当する。
【0082】
具体的には、超格子層3におけるペア層の数を違えることで、III族窒化物層群の総膜厚teの値を違えた。各試料における超格子層3のペア数と総膜厚の関係は以下の通りである。
【0083】
試料No.4−1、4−6、4−11:14ペア、総膜厚1.5μm;
試料No.4−2、4−7、4−12:34ペア、総膜厚2.0μm;
試料No.4−3、4−8、4−13:74ペア、総膜厚3.0μm;
試料No.4−4、4−9、4−14:114ペア、総膜厚4.0μm;
試料No.4−5、4−10、4−15:154ペア、総膜厚5.0μm。
【0084】
表2に、それぞれのエピタキシャル基板10についての、下地基板1の比抵抗、下地基板1におけるアンチモンの原子濃度、バッファ層厚および窒化物層群の総膜厚te、単純反り量SR、規格化反り指数K、および素子特性歩留まりを一覧にして示す。なお、これら実験例5の結果に基づき作成したのが図4、図8である。
【0085】
【表2】

【0086】
表2さらには図4、図8に示すように、下地基板1の比抵抗が0.02Ω・cmであるNo.4−1〜4−5の試料と下地基板1の比抵抗が0.05Ω・cmであるNo.4−6〜4−10の試料については全て、規格化反り指数Kの値が1×10-3以下となり、素子特性歩留まりが80%を上回った。また、比抵抗が0.1Ω・cmの場合においても、総膜厚teが大きい試料No.4−13ないし4−15については、規格化反り指数Kの値は1×10-3以下で、素子特性歩留まりが80%を上回った。
【0087】
係る結果は、下地基板1の比抵抗が0.1Ω・cm以下の場合には、窒化物層群の総膜厚を下地基板1の比抵抗に応じて定めることで、規格化反り指数Kの値が1×10-3以下という反りが抑制されたエピタキシャル基板10を得ることが可能であること、および、規格化反り指数Kの値が1×10-3以下のエピタキシャル基板については、HEMT素子を高い歩留まりで作製可能であることを示している。
【0088】
(実験例5)
下地基板1の直径(エピタキシャル基板10の直径)dsと厚みtsとを種々に違えた他は、実験例1の試料No.1−2(比抵抗ρ=0.02Ω・cm)、1−3(比抵抗ρ=0.05Ω・cm)、および1−4(比抵抗ρ=0.1Ω・cm)と同様の条件でそれぞれ6種ずつ計18種のエピタキシャル基板10を作製(試料No.5−1〜5−18)し、さらに係るエピタキシャル基板10を用いてHEMTを作製した。なお、試料No.5−4のエピタキシャル基板10が試料No.1−2のエピタキシャル基板10に相当し、試料No.5−10のエピタキシャル基板10が試料No.1−3のエピタキシャル基板10に相当し、試料No.5−16のエピタキシャル基板10が試料No.1−4のエピタキシャル基板10に相当する。
【0089】
表3に、それぞれのエピタキシャル基板10についての、下地基板1の比抵抗、下地基板1におけるアンチモンの原子濃度、下地基板1の直径ds、下地基板1の膜厚te、単純反り量SR、規格化反り指数K、および素子特性歩留まりを一覧にして示す。なお、これら実験例5の結果に基づき作成したのが図5、図6、図9である。
【0090】
【表3】

【0091】
表3さらには図5、図6、図9に示すように、下地基板1の比抵抗が0.02Ω・cmであるNo.5−1〜5−6の試料と下地基板1の比抵抗が0.05Ω・cmであるNo.5−7〜5−12の試料については全て、規格化反り指数Kの値が1×10-3以下となり、素子特性歩留まりが80%を上回った。一方、比抵抗が0.1Ω・cmの場合、No.5−13の試料についてのみ、規格化反り指数Kの値が1×10-3を上回り、素子特性歩留まりは80%を下回ったが、他の試料については、規格化反り指数Kの値が1×10-3以下となり、素子特性歩留まりが80%を上回った。
【0092】
係る結果は、下地基板1の比抵抗が0.1Ω・cm以下の場合には、下地基板1の直径および厚みを下地基板1の比抵抗に応じて定めることで、規格化反り指数Kの値が1×10-3以下という反りが抑制されたエピタキシャル基板10を得ることが可能であること、および、規格化反り指数Kの値が1×10-3以下のエピタキシャル基板については、HEMT素子を高い歩留まりで作製可能であることを示している。
【符号の説明】
【0093】
1 下地基板
2 下地層
2a 第1下地層
2b 第2下地層
3 超格子層
31 第1単位層
32 第2単位層
4 機能層
4a チャネル層
4b スペーサ層
4c 障壁層
10 エピタキシャル基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン単結晶からなる下地基板と、
前記下地基板の上に形成された複数のIII族窒化物層からなるIII族窒化物層群と、を備えるエピタキシャル基板であって、
前記下地基板は、所定のn型ドーパントが添加されてなることでn型の導電性を有し、かつ、比抵抗が0.1Ω・cm以下であり、
前記複数のIII族窒化物層はそれぞれ、少なくともAlまたはGaを含み、
前記エピタキシャル基板の反り量をSR(単位:μm)、前記窒化物層群の総膜厚をte(単位:μm)、前記下地基板の膜厚をts(単位:mm)、前記下地基板の直径をds(単位:mm)とするときに、規格化反り指数Kが
K={(SR/te)×(ts/ds)2}≦1×10-3
なる関係式をみたすことを特徴とするエピタキシャル基板。
【請求項2】
請求項1に記載のエピタキシャル基板であって、
前記n型ドーパントがアンチモンまたはヒ素であることを特徴とするエピタキシャル基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエピタキシャル基板であって、
前記III族窒化物層群が、
前記下地基板の上に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層の上に形成された機能層と、
を備えることを特徴とするエピタキシャル基板。
【請求項4】
請求項3に記載のエピタキシャル基板であって、
前記機能層が、
GaNからなるチャネル層と、
前記チャネル層の上に形成された、AlGaNもしくはInAlNからなる障壁層と、
を備えることを特徴とするエピタキシャル基板。
【請求項5】
請求項4に記載のエピタキシャル基板であって、
前記機能層が、前記チャネル層と前記障壁層との間に、
AlNからなるスペーサ層、
をさらに備えることを特徴とするエピタキシャル基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−186268(P2012−186268A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47472(P2011−47472)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】