説明

エンコーダ及び校正方法

【課題】ポリゴンミラーなどの静止物体の校正に使用されるエンコーダに有用な技術を提供する。
【解決手段】光源と、マークが一定のピッチで配列され相対移動するスケールと、スケールのピッチによって決定される周期の整数分の一の大きさの周期で偏光方向が回転する直線偏光を生成する光学系と、生成された直線偏光を第1直線偏光と第2直線偏光とに分割する分割部と、固定配置された第1偏光板を含み、スケールが相対移動する間における、第1偏光板を通過した第1直線偏光の偏光方向の回転の数を得る第1ユニットと、直線偏光の偏光方向に対して回転する第2偏光板を含み、スケールが静止したときにおける第2直線偏光の偏光方向を検出することによってスケールが静止したときにおける直線偏光の1回転内の位相を得る第2ユニットと、第1ユニットおよび第2ユニットにより得られた結果を統合してスケールの移動量を出力する出力部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ及びそれを用いた校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
角度を校正する装置の校正原理は、非特許文献1、2などに公表されている。それによると「等分割平均法」と呼ばれる方法が採用されていて、目盛位置ずれのわからない2つのロータリーエンコーダ(基準エンコーダと被測定エンコーダ)を比較することにより、2つのロータリーエンコーダを同時に校正する。また、その計測の過程で被測定エンコーダの角度点における基準エンコーダの値を参照する必要がある。しかし、被測定エンコーダの角度点は、基準エンコーダの角度点と通常一致しないため、基準エンコーダの内挿信号を用いる必要がある。ここで角度点とは、例えばエンコーダ信号を2値化してパルス信号に変換したときの角度位置を表す用語であり、角度点が1000個であるとき1回転360°を1000分割するときの目盛りを意味する。また、内挿信号とは、相互に90°位相ずれした正弦波状のアナログエンコーダ信号を基にアークタンジェント演算することで算出される位相の値の信号である。例えばアナログエンコーダ信号の1周期を80分割する場合、位相角として0〜2πを80分割した領域に分割して、その領域が切り替わる毎にパルスを出力することで、位相の値を算出し、分解能を向上させる。
【0003】
しかし、一般的にエンコーダ信号は正弦波状信号の歪(振幅、オフセット、位相差、高調波成分など)の状態により内挿信号の誤差が変動しまう課題がある。すなわち、エンコーダの正弦波状信号に歪が存在する場合、正弦波信号1周期を等間隔に分割すべきところ不等間隔になる誤差が生じる。例えば、特許文献1、2などにこうした問題が取り上げられていて、歪を予め算出してデータベースに記録しておき、後で補正する方法が示される。しかし一般的なエンコーダは、取り付け状態やスケールの描画誤差などに依存して正弦波状信号の歪が変動してしまうため、不確かさを特定することが困難であり、校正装置としては不都合である。そこで上述の角度校正装置においては、内挿の方法に「時間平均法」を用いている。
【0004】
時間平均法は、図5に示すように、被測定エンコーダ200の回転軸と基準エンコーダのヘッド100の回転ディスク101を共通の回転軸102に連結してモータ103にて等速回転させる。被測定エンコーダ200の角度点に対応する基準エンコーダの値を参照するとき、被測定エンコーダ200の各角度点のパルス発生時間T(i)と、その前後にある基準エンコーダの角度点のパルス発生時間Tm(i)とを測定する。そして、基準エンコーダが各角度点の間で等速回転すると仮定することで、時間情報から基準エンコーダの角度位置情報を線形内挿の方法で算出する。この方法は、原理が明快であり、被測定エンコーダ200や基準エンコーダの波形歪みの影響を受けないことが特徴である。特に基準エンコーダとして高分解能のエンコーダ(即ち目盛りの多いエンコーダ)を用いると、回転構造体の慣性により、基準エンコーダの隣接した角度点間は限りなく等速となるため、本方式は特定標準機に採用されている。
【0005】
しかし、本方式は測定対象物を回転させないと計測できないため、ポリゴンミラーなどの静止物体を校正することはできない。そこで従来は干渉測長装置などと組合せ、ポリゴンミラーの角度点近傍の基準エンコーダの角度点を干渉計を用いて補間(内挿)して値を算出する方法を採用している。すなわち、静止物体を校正する場合、直接的に校正できないことで作業が煩雑になったり、レーザ干渉測長装置の不確かさを加算したりしなければならないことなどの課題が存在していた。
【0006】
また近年のエンコーダは、周期信号をカウントする方式の所謂インクリメンタルエンコーダからアブソリュートエンコーダに移行しつつある。アブソリュートエンコーダの場合、角度情報を出力する際に、一方的なデータの吐き出しではなく指令に基づいて角度位置情報を出力するなど機能が変わってきており、連続回転を前提にした校正の原理では不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−161644号公報
【特許文献2】特開2006−90738号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】精密工学会誌、67巻7号1091〜1095頁、2001.07、ロータリーエンコーダの高精度校正装置の開発(第1報)
【非特許文献2】産総研計量標準報告、1巻1号19〜23頁、2002.01、ロータリーエンコーダの高精度校正装置の開発
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、対象物の校正に使用されるエンコーダに有用な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、変位又は角度を計測するエンコーダであって、光を射出する光源と、複数のマークが一定のピッチで配列され、前記光源に対して相対移動するスケールと、前記光源から射出された光を偏光方向が互いに異なる2つの偏光に分割し、該分割された2つの偏光を前記マークで回折させることによって正の次数の回折光および負の次数の回折光を生成し、該生成された2つの回折光を互いに逆向きの円偏光状態で干渉させることによって前記マークのピッチと前記スケールの相対移動速度とによって決定される周期の整数分の一の大きさの周期で偏光方向が回転する直線偏光を生成する光学系と、前記光学系により生成された直線偏光を第1直線偏光と第2直線偏光とに分割する分割部と、固定配置された第1偏光板を含み、前記スケールが相対移動する間における、前記第1偏光板を通過した前記第1直線偏光の偏光方向の回転の数を得る第1ユニットと、前記直線偏光の偏光方向に対して回転する第2偏光板を含み、前記スケールが静止したときにおける前記第2直線偏光の偏光方向を検出することによって前記スケールが静止したときにおける前記直線偏光の1回転内の位相を得る第2ユニットと、前記第1ユニットおよび前記第2ユニットにより得られた結果を統合して前記スケールの移動量を出力する出力部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、対象物の校正に使用されるエンコーダに有用な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態のロータリーエンコーダの構成図である。
【図2】第1実施形態のロータリーエンコーダによりポリゴンミラーを校正する様子を示す図である。
【図3】第2実施形態のロータリーエンコーダの構成図である。
【図4】第3実施形態のロータリーエンコーダの構成図である。
【図5】従来技術を用いて被測定エンコーダを校正する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、静止状態のポリゴンミラーやエンコーダの校正する基準エンコーダとして使用可能な第1実施形態の変位又は角度を計測するエンコーダの構成図である。図2は、図1の基準エンコーダを用いてポリゴンミラーを校正する場合の説明図である。半導体レーザ(光源)1から射出された光は、コリメータレンズ2にて略平行光にされ、第1の偏光プリズム31の屋根部に入射し、内部で反射後に、偏光ビームスプリッタ面41にて偏光方向が互いに異なる2つの偏光(P波、S波)に分割される。偏光ビームスプリッタ面41を透過したP波は、光路L1を通り、反射プリズム63で反射された後、1/4波長板71を透過し、回転ディスク(スケール)101の位置P1に斜入射する。回転ディスク101には、複数のマークが一定のピッチで配列され、半導体レーザ1を含むヘッドに対して相対移動する。回転ディスク(スケール)101は、斜入射したP波、S波をマークで回折させることによって正の次数の回折光および負の次数の回折光を生成する。回転ディスク101の位置P1に斜入射されたP波の+1次回折光は、元の光路を戻って、1/4波長板71を再透過して、偏光プリズム31内の偏光ビームスプリッタ面41にて今度は反射され、プリズム3への光路にS波(+1次光)となって出力される。
【0015】
一方、偏光ビームスプリッタ面41にて反射されたS波は光路L2を通り、反射プリズム63で反射された後、1/4波長板71を透過し、回転ディスク101の放射状回折格子5上の位置P1に斜入射する。放射状回折格子5上の位置P1に斜入射されたS波の−1次回折光は元の光路を戻って、1/4波長板71を再透過して、偏光プリズム31内の偏光ビームスプリッタ面41にて今度は透過して、プリズム3への光路にP波(−1次光)となって出力される。
【0016】
これらP波(−1次光)、S波(+1次光)の2光束は、光軸を重ねたままプリズム3内の反射面64、65で反射され、1/2波長板8にて互いの偏光方位を入れ替え、それぞれP波(+1次光)、S波(−1次光)となる。P波(+1次光)、S波(−1次光)は、その後、第2の偏光プリズム32の屋根部に入射し、内部で反射後に、偏光ビームスプリッタ面42にて2つの偏光が分割される。
【0017】
まず偏光ビームスプリッタ面42を透過したP波(+1次光)は、光路L3を通り、反射プリズム66で反射された後、1/4波長板72を透過し、回転ディスク101の位置P2に斜入射する。回転ディスク101の位置P2に斜入射されたP波の+1次再回折光は、1/4波長板72を再透過し、偏光プリズム32内の偏光ビームスプリッタ面42にて今度は反射され、1/4波長板73への光路にS波(+1+1次回折)となって出力される。一方、偏光ビームスプリッタ面42にて反射したS波(−1次光)は、光路L4を通り、反射プリズム66で反射された後、1/4波長板72を透過し、回転ディスク101の位置P2に斜入射する。回転ディスク101の位置P2に斜入射され反射されたS波の−1次再回折光は、元の光路を戻って、1/4波長板72を再透過して、偏光ビームスプリッタ面42にて今度は透過して、1/4波長板73への光路にP波(−1−1次回折)となって出力される。なお、ここで回折次数の符号の意味は、回折格子5が時計回りに回転するとき回転方向寄りに回折された光束の回折次数を+とするルールを適用し、例えばS波(+1+1次回折)の意味は+1次回折を2回行った光束でS偏光を意味する。
【0018】
1/4波長板73を透過する前のS波(+1+1次回折)とP波(−1−1次回折)は互いに偏光方位が90°ずれた独立した直線偏光である。回転ディスク101が1ピッチ分回転すると、S波(+1+1次回折)は波面の位相が2π×(+2)だけずれ、P波(−1−1次回折)は波面の位相が 2π×(−2)だけずれる。よってこの2光束間の位相差の変化は、8π/ピッチ である。なお、ピッチとはディスク101上の隣接するマーク間のピッチの意味である。
【0019】
1/4波長板73を透過することによって、S波(+1+1次回折)とP波(−1−1次回折)の両光束は、互いに逆向きの円偏光状態にあり、互いに干渉しあって偏光方向が回転する1つの直線偏光が生成される。この直線偏光の光束の偏光方向は、元の2光束間の位相差に依存し、位相差が2πずれると、直線偏光の偏光方向が半回転する。すなわち本実施形態の光学系では、元の2光束間の位相差の変化は、8π/ピッチだったので、直線偏光の偏光方向の回転が4回転/ピッチとなる。第1の偏光プリズム31,32、1/4波長板71,72,73等を含む光学系は、マークのピッチとスケールの相対移動速度とによって決定される周期の整数分の一(1/4)の大きさの周期で偏光方向が回転する直線偏光を生成する。したがって、光学系は、スケール(回転ディスク101)の移動の計測分解能を整数倍に向上させている。なお、ディスク101の回転が停止すると、この直線偏光光束の偏光方向は2光束間の位相差で決定される向きに固定される。こうした特性を有する直線偏光の光束は非偏光ビームスプリッタ(分割部)9にて同一の偏光特性を有する第1直線偏光と第2直線偏光との2つの光束に分割される。
【0020】
非偏光ビームスプリッタ9を透過した第1直線偏光は、固定配置された偏光板(第1偏光板)10を透過して受光素子51に入射する。受光素子51で得られた信号はコンパレータ91にて2値化されてインクリメンタル信号S0となる。従来と同様に原点信号にて零にリセットしてカウンター96にてインクリメンタル信号S0を計数する。第1偏光板10、受光素子51、コンパレータ91、カウンター96は、スケールとしてのディスク101が相対移動する間における、前記偏光板10を通過した第1直線偏光の偏光方向の回転の数を得る第1ユニットを構成している。
【0021】
非偏光ビームスプリッタ9を反射した第2直線偏光は、回転体に連結された偏光板11を透過して受光素子52に入射する。偏光板11は、第2直線偏光の偏光方向に対して所定の角速度で回転する第2偏光板を構成している。偏光板11の透過軸の向きがモータMおよびそのモータドライバー93により(高速に)等速回転しているとする。そうすると、偏光板11の透過軸の向きが第2直線偏光の偏光方向と一致したときに受光素子52の出力が最大になり、直交したときに受光素子52の出力が最小になる。受光素子52の出力をコンパレータ92で2値化すると第2直線偏光の偏光方向の回転周期信号S2が得られる。また偏光板11の透過軸の向きがモータドライバー93によって時間で制御されているとすると、その制御系からタイミング信号S1が得られる。直線偏光の回転周期信号S2の立ち上がり時間Tr(1)、Tr(2)、・・・と、タイミング信号S1の立ち上がり時間T(1)、T(2)、T(3)、・・・とは、図3に示されるようになる。スケールとしてのディスク101の相対移動が停止されると、第2直線偏光の偏光方向は特定の方向で静止する。第2直線偏光のその静止した偏光方向は、回転する偏光板11の回転角を検出することによって取得することができる。演算器95は、直線偏光の偏光方向を検出することによって、ディスク101が静止したときにおける直線偏光の1回転周期内の位相φを算出する。なお、時間Tr(1)、Tr(2)、・・・及び時間T(1)、T(2)、T(3)、・・・は、偏光回転周期信号S2及びタイミング信号S1の立ち上がり時間ではなく、立下り時間でもよい。偏光板11、モータM、受光素子52、コンパレータ92、モータドライバー93、演算器95は、スケールが静止したときにおける直線偏光の1回転内の位相を得る第2ユニットを構成している。
カウンター96は、従来と同様に原点信号にて零にリセットしてインクリメンタル信号S0を計数することで、整数部の位置情報N(回折格子5の格子本数の4倍で全周360°を分割したときの序数)を得る。位置情報演算部97は、これら整数部の位置情報Nと演算器95により算出された位相情報φを統合して、エンコーダの位置情報POSを出力する。位置情報演算部97は、第1ユニットおよび第2ユニットにより得られた結果を統合してスケールの移動量を出力する出力部を構成している。
【0022】
第1実施形態では、ディスク101が静止したときにおける偏光板11を通過した第2直線偏光の強度の時間変化を受光素子52により検出し、該検出結果から演算部95により第2直線偏光の偏光方向を算出している。
【0023】
図2は、上述のロータリーエンコーダ(基準エンコーダ)を用いてポリゴンミラー(対象物)を校正する場合の構成の側面図である。基準エンコーダの回転ディスク101は、空気軸受け102の下面に結合されていて、更にその下部に基準エンコーダのヘッド100が図1とは逆さまに設置されている。なお、この基準エンコーダのヘッド100は、「等分割平均法」で用いられる設置ルールに従い、サブ回転ステージに搭載され、ヘッド100の設置方位が変更できるようになっている。ここでは詳細は説明しない。また、空気軸受け102の上部にメイン回転ステージ105が取り付けられていて、その上部にポリゴンミラー201が置かれている。ポリゴンミラー201がワーク面106に設置されたオートコリメータ202に正対するタイミングでオートコリメータ202より零クロス信号203が発生するようにしてある。また、メイン回転ステージ105は、この零クロス信号203にて位置決めできるようにコントローラ104およびモータ103で制御されている。以上のポリゴンミラー201と基準エンコーダとを結合する工程により、ポリゴンミラー201と基準エンコーダの回転ディスク101は同軸で回転可能である。
【0024】
まず、メイン回転ステージ105を回転制御して、ポリゴンミラー201の各ミラー面の法線が所定方向(オートコリメータ202に対向する方向)を向くように順に位置決めする。位置決めの都度、ポリゴンミラー201の各ミラー面の形成位置と基準エンコーダのヘッド100の回転角POSとを計測する。そして、演算器107は、計測する工程での各ミラー面の形成位置の計測結果と基準エンコーダによる回転角の計測結果とを比較し、所定の演算(等分割平均法など)を行うことで、各ミラー面の角度制御データの補正値を決定する。また、エンコーダを校正する場合も同様である。まず、校正すべき第1エンコーダと基準エンコーダとなる第2エンコーダとの双方を用いて、対象物の位置または角度を計測する。前記計測工程の後、第1エンコーダによる計測結果と第2エンコーダによる計測結果とを比較することによって第1エンコーダの出力の補正値(校正データ)を決定する。例えば、アブソリュートエンコーダを校正する場合、アブソリュートエンコーダの角度点ごとにメイン回転ステージ105を位置決めする。そして、位置決めの都度、アブソリュートエンコーダの絶対位置情報と基準エンコーダのヘッド100の位置情報POSと比較し、所定の演算(等分割平均法など)を行うことで、アブソリュートエンコーダの校正ができる。
【0025】
[第2実施形態]
図3は、図1の第1実施形態の基準位相を検出する第2ユニットを変更した第2実施形態のエンコーダの構成図である。第2実施形態では、偏光板11の回転制御系にロータリーエンコーダEを設置し、ロータリーエンコーダEにより偏光板11の回転角を検出する。そして、ロータリーエンコーダEが第2直線偏光の偏光方向と一致する偏光板11の偏光方向を検出することにより第2直線偏光の偏光方向が算出される。第2実施形態の場合、第1実施形態のように偏光板11の回転が等速回転である必要はなく、ロータリーエンコーダEの測定精度が、そのまま位相の計算精度になる。内挿信号に求められる精度は1回転を1000分割程度で十分であるが、これを一般的なロータリーエンコーダEで実現することは非常に容易である。なお図3では、偏光板11の外周部にロータリーエンコーダEの放射状格子を一体的に記録しておき、その放射状格子に回転角読取エンコーダヘッドEを近接配置しているので小型化も可能である。なおこのロータリーエンコーダEは光学式だけではなく磁気式、静電式なども使用できる。
【0026】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態のエンコーダの構成図である。第3実施形態では、放射状格子を用いたロータリーエンコーダEの代わりに偏光を用いた2つのロータリーエンコーダE1、E2を設置し、それらの値により偏光板11の回転角を検出する。図4では、偏光板11の外周部に0°および45°方位の2つの基準偏光板を近接配置する。そして、偏光板11と2つの基準偏光板の1つとの透過光を受光することで1回転に2周期の位相が90°ずれた2相信号を発生させる。この2相信号を元に算出された偏光板11の回転角度位置に基づいて、サーボドライバー93およびモータMを介して偏光板11の回転を制御する。
【0027】
〔他の実施形態〕
本発明は、第1〜第3実施形態の構成に限定されることなく、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
・第1〜3実施形態では、偏光を用いた格子干渉方式のロータリーエンコーダの光学系を、2つの偏光ビームスプリッタ面と3つの1/4波長板と1つの1/2波長板とで構成した。しかし、偏光ビームスプリッタ面、1/4波長板、1/2波長板の数は変更し得る。また、第1〜3実施形態では、偏光ビームスプリッタ面として偏光プリズムの膜面を使用したが、ミラーを用いてもよい。さらに、第1〜3実施形態では、回折格子を反射格子としたが、透過格子としてもよい。
・第1実施例形態では、インクリメンタル信号用の受光素子51の数は、1つのみであった。しかし、受光素子51として、90°の位相差がある2又は4つの受光素子を用いて、2相又は4相信号を出力するように構成し、1相をメインの計数相とし、他の相をカウントアップ/ダウンの不安定性を除くための判定に用いるように設けても良い。
【0028】
・回転する偏光板11は、回転する波長板に変えることもできる。すなわち、第2ユニットは、回転する波長板と固定配置された偏光板とを含み、回転する波長板と固定配置された偏光板とを順次通過した第2直線偏光の強度の時間に対する変化を検出し、該検出結果から第2直線偏光の偏光方向を算出する。
・第1実施形態における時間を用いた内挿位相を演算する演算器95は、同等な機能を他のアルゴリズムやフローで実現させても良い。例えば、タイマーを内蔵し、基準位相信号の立ち上がりパルスの発生時間を順に検出し、回転制御信号の制御時間と比較する手法、回転制御系の制御信号を矩形波に変換し、基準位相信号の矩形波とのANDの時間(または積分値)から位相を算出する手法など様々な手法が採用し得る。
・第1実施形態のメイン回転ステージ105の位置決め(停止)動作は説明を判りやすくするためのものであり、実際には連続的に測定を繰り返すことで完全な停止状態でなくても計測は可能である。但し、その場合、基準エンコーダ内部の偏光板の回転速度との関係で精度が低下することに留意が必要である。
・第1〜3実施形態において基準エンコーダをロータリーエンコーダとした。しかし、本発明は、直進型のエンコーダであるリニアエンコーダにおいても適用が可能である。リニアエンコーダの場合は角度点を座標点に読み替えることで内容は同じである。
【0029】
また、本発明では以下の作用効果を得ることができる。
・基準エンコーダの内部で、通常の角度点信号生成のための光束と基準位相生成のための光束が、同じ光束から分割されている。そして、角度点信号がこれまでと同じパルス発生時間として得られ、基準位相が別途内蔵された等速回転体によるパルス信号の時間関数として得られる。そのため、不確かさが基準エンコーダや被測定体(エンコーダ、ポリゴンミラー)の信号歪みに依存せず等速回転体の回転ムラだけに依存するため、角度点間の内挿信号の不確かさを見積もることが可能である。
・被測定体が静止状態で内挿測定が可能であるため、ポリゴンミラーやアブソリュートエンコーダの校正が可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位又は角度を計測するエンコーダであって、
光を射出する光源と、
複数のマークが一定のピッチで配列され、前記光源に対して相対移動するスケールと、
前記光源から射出された光を偏光方向が互いに異なる2つの偏光に分割し、該分割された2つの偏光を前記マークで回折させることによって正の次数の回折光および負の次数の回折光を生成し、該生成された2つの回折光を互いに逆向きの円偏光状態で干渉させることによって前記マークのピッチと前記スケールの相対移動速度とによって決定される周期の整数分の一の大きさの周期で偏光方向が回転する直線偏光を生成する光学系と、
前記光学系により生成された直線偏光を第1直線偏光と第2直線偏光とに分割する分割部と、
固定配置された第1偏光板を含み、前記スケールが相対移動する間における、前記第1偏光板を通過した前記第1直線偏光の偏光方向の回転の数を得る第1ユニットと、
前記直線偏光の偏光方向に対して回転する第2偏光板を含み、前記スケールが静止したときにおける前記第2直線偏光の偏光方向を検出することによって前記スケールが静止したときにおける前記直線偏光の1回転内の位相を得る第2ユニットと、
前記第1ユニットおよび前記第2ユニットにより得られた結果を統合して前記スケールの移動量を出力する出力部と、
を備える、ことを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記第2偏光板は、所定の角速度で回転する偏光板であり、
前記第2ユニットは、前記第2偏光板を通過した前記第2直線偏光の強度の時間に対する変化を検出し、該検出結果から前記第2直線偏光の偏光方向を得る、ことを特徴とする請求項1記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記第2偏光板は、回転する偏光板であり、
前記第2ユニットは、前記第2偏光板を通過した前記第2直線偏光の強度の時間変化と前記第2偏光板の回転角とを検出し、該検出結果から前記第2直線偏光の偏光方向を得る、ことを特徴とする請求項1記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記第2ユニットは、前記第2偏光板の回転角を検出するロータリーエンコーダを含む、ことを特徴とする請求項3記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記第2ユニットは、回転する波長板と固定配置された偏光板とを含み、前記回転する波長板と前記固定配置された偏光板とを順次通過した前記第2直線偏光の強度の時間に対する変化を検出し、該検出結果から前記第2直線偏光の偏光方向を得る、ことを特徴とする請求項1記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記エンコーダは、ロータリーエンコーダである、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項7】
エンコーダを校正する方法であって、
校正すべき第1エンコーダと請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の第2エンコーダとの双方を用いて、対象物の位置または角度を計測する工程と、
前記第1エンコーダによる計測結果と前記第2エンコーダによる計測結果とを比較することによって前記第1エンコーダの出力の補正値を決定する工程と、
を含む方法。
【請求項8】
ポリゴンミラーを校正する方法であって、
ポリゴンミラーと請求項6に記載のロータリーエンコーダのディスクとを同軸で回転可能なように結合する工程と、
前記ポリゴンミラーと前記回転ディスクとを同軸で回転させて前記ポリゴンミラーの各ミラー面の法線が所定方向を向くように前記ポリゴンミラーを位置決めしたときの前記ディスクの回転角を前記ロータリーエンコーダで計測する工程と、
前記ロータリーエンコーダの計測結果に基づいて前記ポリゴンミラーの各ミラー面に関する校正データを出力する工程と、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−237638(P2012−237638A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106632(P2011−106632)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】