説明

カルコゲン薄膜トランジスタアレイを備えた電子医療映像装置

【課題】カルコゲン薄膜トランジスタアレイを備えた電子医療映像装置を提供する。
【解決手段】外部から照射される光エネルギーを吸収して電子−正孔対が形成される信号生成部と、電子−正孔対を分離し、その極性によって信号生成部内の互いに反対側に密集されるように、信号生成部の一面に接触して電気信号を印加する電源と、信号生成部に接触し、分離された電荷のうち一種を流入して保存する信号保存部と、信号保存部に接触し、信号保存部に制御信号を印加して信号保存部に保存された電荷による電気信号を伝達されて映像信号に変換する信号変換部とを備えている。信号生成部は、カルコゲン素材のうち一つである非晶質セレンを使用するか、又はカルコゲンを利用した化合物素材であるCdTe又はCdZnTeを使用できる。また、信号保存部は、GSTを含む薄膜トランジスタアレイ、あるいはCISを利用した薄膜トランジスタアレイを備えて構成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルコゲン薄膜トランジスタアレイを備えた電子医療映像装置に関し、より詳細には、カルコゲン系の半導体元素を含む薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を利用して光信号を電気的なデジタル信号に変換する電子医療映像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療業界において、X線撮影機は、多様な診断、例えば、骨の骨折如何又は臓器の損傷如何の診断のために使われている。通常的に、X線撮影は、媒体、例えば、人体にX線を照射し、人体の器官によってX線の透過、屈折又は反射などにより変わる強度によるイメージでX線用フィルムを感光する方法を使用する。かかるフィルムを利用した方法は、高価であり、使い捨てのX線フィルムを使用せねばならず、イメージの拡大又は複数枚のイメージの保存のためには、物理的な方法を使用せねばならないという限界があるので、空間的及び時間的にコスト高となるという短所がある。また、使い捨てのX線フィルムの使用又は廃棄において、資源の浪費及び環境汚染という付随的な問題も共に有している。
【0003】
例えば、非特許文献1(従来例1)には、GSTの単一薄膜上にレーザーアニリングを通じて形成したp+−p−p+型のMOS−型TFTが開示されている。また、製作された素子の電流−電圧特性は、一般的なトランジスタと類似したスイッチング性能を有することを表す。本明細書で説明する本発明の一実施形態の構成部分で、特に信号保存部で、この非特許文献1に開示されているTFTを備えている。
【0004】
また、非特許文献2(従来例2)には、太陽電池に広く使われているCISとInSeとを利用してp−n接合を形成し、かかるp−n接合を利用して光反応性に優れたTFT素子の設計及び製作に関して開示されている。本明細書で説明する本発明の一実施形態の構成部分で、特に信号保存部で、この非特許文献2で開示されたTFTを備えている。
【0005】
また、特許文献1(従来例3)である“カルコゲナイド系元素を含むカルコゲンPhoto−TFT”(ソン・キボン外)には、カルコゲン元素を利用したMOS構造のTFTを構成する方法が開示されている。これによって製作されたTFT素子は、光の照射による電流−電圧特性の変化が明確に現れた。本発明での結果物の構成部のうち信号保存部は、この特許文献1で提案したTFTを備えている。
【0006】
【特許文献1】韓国特許出願第2005−124174号公報(米国特許出願第11/481599号)
【非特許文献1】“レーザーアニリングを利用したGST薄膜基盤のスイッチング素子の開発” リ・サンス、キム・ギョンアム、ソン・キボン、チョ・ドゥヒ、ソ・ジョンデ、 Photonics Conference,2006.
【非特許文献2】“CuInSe2を利用した光薄膜型トランジスタの製作及び特性” キム・ギョンアム、チョ・ギュマン、ソン・キボン、 光情報処理技術ワークショップ、p63−65,2006.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、伝統的なフィルム方式のX線読み取り機を代替するように、X線信号から電気信号を生成して保存するカルコゲン系の半導体元素を含んだTFTアレイを利用して製作されたTFTアレイを利用した電子医療映像装置を提供ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電子医療映像装置は、外部から照射される光エネルギーを吸収して電子−正孔対が形成される信号生成部と、前記電子−正孔対を分離し、その極性によって前記信号生成部内の互いに反対側に密集されるように、前記信号生成部の一面に接触して電気信号を印加する電源と、前記信号生成部に接触し、前記分離された電荷のうち一種を流入して保存する信号保存部と、信号保存部に接触し、前記信号保存部に制御信号を印加して、前記信号保存部に保存された電荷による電気信号を伝達されて映像信号に変換する信号変換部とを備えている。
【0009】
前記信号生成部、信号保存部及び信号変換部は、順次に形成された層状構造である。
【0010】
前記信号生成部は、前記電源の電気信号を前記信号生成部に印加されるように、前記電源と電気的に連結された第1電極と、前記第1電極の下面に形成されて、前記電源から流入される電荷を遮断する絶縁層と、前記絶縁層の下面に形成されて、前記外部から照射される光エネルギーを吸収して電子−正孔対が生成され、前記電源から印加された電気信号により電子−正孔対が互いに分離されて互いに反対側に密集される吸収層とを備えている。
【0011】
前記吸収層は、カルコゲンを含みうる。前記吸収層は、非晶質の純粋なセレン(Se)を含みうる。また、前記吸収層は、CdTe又はCdZnTeを含みうる。
【0012】
前記信号保存部は、前記信号生成部内で分離された電荷のうち一種の電荷のみの流入を許容する遮蔽層と、前記遮蔽層と電気的に接触された第2電極と、前記第2電極と電気的に接触され、前記遮蔽層を通じて流入された一種の電荷を保存するキャパシタ及び前記キャパシタを連結されたトランジスタで構成された単位セルを複数個備える素子層と、前記遮蔽層、前記第2電極及び前記素子層が形成された基板とを備えている。
【0013】
前記基板は、ガラス又は石英を含みうる。
【0014】
前記単位セルは、一つ又はそれ以上の電気的な単位素子をさらに備えうる。
【0015】
前記素子層は、前記単位セルを横及び縦方向にそれぞれ複数個配列された2次元アレイを備えうる。
【0016】
前記素子層に備えられた前記トランジスタは、前記基板上にカルコゲン物質を含んで形成されたアクティブ層と、前記アクティブ層の両側に形成されたソース電極及びドレイン電極と、前記アクティブ層上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備える。前記アクティブ層に含まれたカルコゲン物質は、Ge2Sb2Te5(GST)又はCuInSe2(CIS)を含みうる。
【0017】
前記素子層に備えられた前記トランジスタは、前記基板の一部領域上に形成されたゲート電極と、前記基板と前記ゲート電極とを覆う絶縁膜と、前記ゲート電極が形成された領域上を覆うように前記絶縁膜上に形成されたカルコゲン物質を含んで形成されたアクティブ層と、前記アクティブ層の両側に形成されたソース電極及びドレイン電極とを備えている。
【0018】
前記アクティブ層に含まれたカルコゲン物質は、GST又はCISを含みうる。
【0019】
前記アクティブ層は、それぞれIn2Se3とCu2Se3とを利用して形成する。前記アクティブ層の導電型は、In2Se3とCu2Se3との相対的なモル比によって決定する。前記In2Se3とCu2Se3との相対的なモル比が0.1ないし0.5の範囲である場合には、前記CIS膜は、p型の導電型を有する。一方、前記In2Se3とCu2Se3との相対的なモル比が0.6ないし0.9の範囲である場合には、前記CIS膜は、n型の導電型を有する。
【0020】
前記信号変換部は、前記信号保存部のトランジスタに制御信号を印加する信号印加回路部と、前記制御信号により前記トランジスタを通じて伝達される電気信号を増幅する信号増幅素子と、前記信号増幅素子で増幅された信号をマルチプレキシングするマルチプレクサと、マルチプレキシングされた信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部とを備えている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電子医療映像装置は、透視により内部を見ようとする媒体にX線を照射し、前記媒体により変化したX線のエネルギーをデジタル映像信号処理してデジタル化された映像信号としてディスプレイなどに表示できる。これにより、X線フィルムを使用する必要がないので、使用コストを大幅低減でき、X線に敏感に反応するカルコゲン素材を使用してさらに精密な透視を可能にする。
【0022】
また、本発明の製造工程において、TFTを低温工程で形成でき、低価のガラス基板を使用でき、イオン注入工程が必須的でないので経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付された図面を参照して、本発明の望ましい実施形態を詳細に説明する。
本発明の実施形態は、当業者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものであり、以下に説明する実施形態は、色々な他の形態に変形され、本発明の技術的範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。以下の説明で、ある層が他の層上に存在すると記述されるとき、これは、他の層の真上に存在してもよく、その間に第3層が介在されてもよい。また、図面において、各層の厚さや大きさは、説明の便宜及び明確性のために誇張されたものであり、図面上で同じ符号は同じ要素を指す。本明細書で使われたように、用語“及び/又は”は、該当列挙された項目のうちいずれか一つ及び一つ以上のあらゆる組み合わせを含んでいる。
【0024】
本明細書において、第1、第2などの用語が多様な部材、部品、領域、層及び/又は部分を説明するために使われるが、それらの部材、部品、領域、層及び/又は部分は、それらの用語により限定されてはならないことは自明である。それらの用語は、一つの部材、部品、領域、層又は部分を他の領域、層又は部分と区別するためにのみ使われる。したがって、後述する第1部材、部品、領域、層又は部分は、本発明の思想から逸脱せずにも第2部材、部品、領域、層又は部分を示している。
【0025】
本発明は、周期律表上の6族に該当するカルコゲン素材を利用した電子部品素子、例えば、TFTを使用して構成され、これと関連した従来例については上述してある。
【0026】
図1は、本発明による電子医療映像装置の構成を概略的に示す断面図である。
図1に示すように、電子医療映像装置10は、信号生成部100と、この信号生成部100の一面に接触して電気信号を印加する電源150と、信号生成部100と接触する信号保存部200と、信号保存部200と接触する信号変換部300とを備えている。また、図1に示すように、信号生成部100と、信号保存部200と、信号変換部300は、順次に形成された層状構造であり、信号生成部100から信号保存部200及び信号変換部300の順序に積層されるように形成するか、又はその逆の順序に積層されるように形成する。信号生成部100と、信号保存部200と、信号変換部300の構造及び作用に関する詳細な説明は、それぞれ分離して後述する。
【0027】
図2は、図1の信号生成部の概略的な断面図である。
図2に示すように、信号生成部100は、第1電極110と、絶縁層120と、吸収層130とを備えている。第1電極110は、信号生成部100に電気信号を印加する電源150と接触する。絶縁層120は、第1電極110の下側に形成されて、外部から信号生成部100内に流入される電子−正孔を遮断する。例えば、電源150から印加された電気信号により第1電極110に流入された電子又は正孔が絶縁層120の下側に形成された吸収層130に流入されることを防止する。しかし、電源150から印加された電気信号による外部電場が吸収層130に影響を及ぼす。これは、通常的なキャパシタの原理と類似している。
【0028】
吸収層130は、外部から照射された光、例えばX線を吸収する。したがって、上述した第1電極110及び絶縁層120は、照射された光、例えば、X線が透過可能に、それに適切な材料又は構造を有さねばならない。したがって、電子医療映像装置10の信号生成部100に光、例えば、X線が照射されれば、吸収層130は、光エネルギーを吸収して電子−正孔対を生成する。吸収層130は、非晶質の純粋なSeを含んでもよく、周期律表上のVIB族であるカルコゲンを含む化合物、例えば、CdTe又はCdZnTeを含んでもよい。
【0029】
吸収層130で光照射により生成された電子−正孔対は、上述したように電源150から第1電極110に印加された電気信号により互いに分離されて、吸収層130の上側及び下側にそれぞれ移動する。例えば、電源150の+極が第1電極110に連結された場合には、吸収層130の電子−正孔対のうち、電子は吸収層130の上方に移動し、正孔は吸収層130の下方に移動する。かかる電子−正孔の移動は、図2に概略的に示されている。
【0030】
図3は、図1の信号保存部の概略的な断面図である。
図3に示すように、信号保存部200は、その内部に遮蔽層210と、第2電極220と、素子層230とを備えている。遮蔽層210、第2電極220及び素子層230は、基板240から通常的な積層方法により形成される。基板240は、透明な材質を使用でき、例えば、ガラス基板又は石英基板を使用できる。以下では、本発明の特徴を明確にするために、遮蔽層210と、第2電極220と、素子層230の役割を中心に説明する。
【0031】
図1に示したように、信号保存部200は、信号生成部100の下側に位置する。すなわち、信号保存部200の最上側に形成された遮蔽層210が信号生成部100の最下側に形成された吸収層130の下側に位置する。遮蔽層210と吸収層130との間には、他の機能を提供する一つ又はそれ以上の第3層がさらに形成されることもある。遮蔽層210は、信号生成部100の吸収層130で光エネルギー、例えば、X線エネルギーを吸収して形成され、電源150で印加された電気信号により分離された電子−正孔対のうち一種の電荷のみが信号保存部200内に流入されるように他種の電荷を遮蔽する。例えば、遮蔽層210は、信号保存部200内への電子の流入は遮蔽し、正孔の流入のみを許容する。または、その逆に、正孔の流入は遮蔽し、電子の流入のみを許容する。第2電極220は、遮蔽層210と素子層230との電気的接触のために形成され、遮蔽層210を通じて流入された電荷、例えば、正孔が第2電極220を通じて素子層230内のキャパシタ232に保存される。
【0032】
図3では、遮蔽層210と第2電極220とを素子層230の表面から突出した形状に示され、素子層230の一部領域が露出された形状に信号保存部200が示されているが、これは例示的であり、必ずしもこれに限定されるものではない。すなわち、図3の信号保存部200は、本発明の特徴を明確に説明するために、後述する単位セル235に対応して機能する遮蔽層210と第2電極220とを分離して示した。すなわち、遮蔽層210と第2電極220とが形成されていない素子層230の露出された領域上には、例えば、通常的な素子分離膜のような構造が形成されて、遮蔽層210及び第2電極220と共に平坦な表面を形成することもできる。
【0033】
素子層230は、基板240上に形成された複数の単位セル235を備える。図3において点線で示した単位セル235は、一つのキャパシタ232と一つのトランジスタ234とを備えている。しかし、これは例示的であり、必ずしもこれに限定されるものではない。すなわち、一つの単位セル235は、トランジスタ、キャパシタ又は抵抗などの電気的な単位素子をさらに備えることもある。また、トランジスタ234は、TFTでありうる。かかるトランジスタ234は、GST又はCISを含むTFTであり、これについての形成方法は、詳細に後述する。また、上述した単位セル235は、基板240の平面上で横及び縦方向に複数個配列した2次元アレイを構成するように形成される。また、上述した2次元アレイは、必ずしもあらゆる単位セル235が同じ平面上に形成されるものと限定されるものではない。
【0034】
上述したように、第2電極220を通じてキャパシタ232に保存された電荷、例えば、正孔は、制御信号によりスイッチングされるトランジスタ234を通じて信号保存部200の下側に位置する信号変換部300に伝達される。
【0035】
図4は、図1の信号保存部と信号変換部との連結状態を示す回路図である。
図4に示すように、信号変換部300は、信号保存部200内の単位セル、すなわち、トランジスタ234に制御信号を印加する信号印加回路部310と、制御信号によりトランジスタ234を通じて伝達される電気信号を十分な大きさに増幅する信号増幅素子320と、この信号増幅素子320から出力される信号をマルチプレキシングするマルチプレクサ330と、マルチプレキシングされた信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部(Analog−Digital Converter:ADC)340とを備えている。
【0036】
図4を参照して信号変換部300の動作を説明すれば、次の通りである。信号印加回路部310は、信号保存部200のトランジスタ234アレイ内のトランジスタ234に制御信号を、第1ライン312を通じてそれぞれ印加して、それぞれのトランジスタ234に対応するキャパシタ234に保存された電荷、例えば、正孔を第2ライン322を通じて信号増幅素子320に伝達する。第1ライン312は通常的なアドレスライン、第2ラインはビットラインと類似した機能を行える。信号増幅素子320は、伝達された前記電気信号を十分な大きさに増幅してマルチプレクサ330へ伝送し、マルチプレクサ330は、前記増幅された信号をADC340へ伝送する。ADC340は、伝送された電気信号、すなわち、アナログ信号をデジタル信号にエンコーディングすることによって映像信号に変更して、出力装置(図示せず)、例えばディスプレイ装置、印刷装置、保存装置などへ伝送する。
【0037】
また、ADC340は、デジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)を備え、上述したアナログ信号は、DSPにより処理されて出力装置へ伝送される。DSPは、名称の通りにデジタル信号を処理するために形成した中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)であって、速いアナログ信号をデジタル的に処理するために形成されたマイクロプロセッサである。一般的に通称されるマイクロプロセッサがデジタル信号のみを処理できるのに対し、DSPは、アナログ信号を高速で処理できるように色々な装置があり、例えば、内部に乗算器、浮動小数点演算器をハードウェア的設計により備えうる。また、アナログ信号も直接処理できるように、アナログ入出力ポートをチップ内に内蔵することもできる。したがって、高速のアナログ信号処理が可能であることを強調するために、たとえマイクロプロセッサの一種であるとしても、デジタル信号のみを処理できる通常的なマイクロプロセッサと区別してDSPという。DSPの使用方法やプログラミング方法もマイクロプロセッサとほぼ同じであるが、プログラムにより一つ一つの命令がパッチされつつ解析されて移動する特徴がある。DSPの最も大きい特徴は、リアルタイムで非常に速い演算を行えるというものである。特に非常に多くの整数及び浮動小数点数値の演算が必要なデジタル信号処理の場合に多く使われる。一つのクロックに一つ以上の命令の実行が可能であり、命令を高速で処理するためにRISC(Reduced Instruction Set Computer)設計及びハーバード構造を使用している。また、命令処理効率を向上させるために内部にレジスタを多く有しており、ほとんどの演算が前記レジスタを中心に行われる構造の特徴を有する。また、内部に2段階メモリ構造を有して処理速度をさらに速めることができる。
【0038】
以下では、信号保存部200に備えられたトランジスタ234の製造方法について説明する。上述したように、トランジスタ234は、カルコゲン元素を含んで形成でき、例えば、GST又はCISを含むTFTでありうる。また、トランジスタ234は、上述した従来例1乃至従来例3に開示されたTFT及びその製造方法を適用して形成したトランジスタでありうる。
【0039】
以下では、トランジスタ234の適用可能な例として、GSTを含む正スタッガード型TFT及びCISを含む逆スタッガード型TFTとその製造方法について説明する。また、これは例示的であり、必ずしもこれに限定されるものではなく、したがって、CISを含む正スタッガード型TFT及びGSTを含む逆スタッガード型TFTも後述する形成方法により具現可能であり、また、本発明の技術思想的な範囲に含まれることは明白である。ここで、正スタッガード型は、基板に対して光伝導層上にゲート電極が形成されたものであり、逆スタッガード型は、基板に対してゲート電極上に光伝導層が形成されたものである。
【0040】
図5は、図1の信号保存部に形成される正スタッガード型TFTを示す断面図である。
正スタッガード型TFT234aは、基板500上にアクティブ層510が形成される。基板500は、透明な材料で形成され、例えば、ガラス基板又は石英基板を使用できる。特に、ガラス基板は、後述する本発明の構成要素が高温工程の不要な素材から構成されているため、低温工程の基板に適しており、特に光に対して透明であるため、光を利用した素子の製作に適切である。
【0041】
後述する基板500上に形成される色々な層を一般的に前述した通常の蒸着方法及びパターニング方法を利用して形成できるのは、本発明の技術分野の当業者には自明である。したがって、本発明の特徴を明確かつ簡潔に開示するために省略する。
【0042】
アクティブ層510は、ソースとドレインとの間のチャンネルが形成される層であって、カルコゲナイド元素を含むGeTe−Sb2Te3(GST)膜で構成し、GST膜は、光伝導効率が非常に優秀であるので、光伝導層ということもある。すなわち、光伝導層は、光に対して反応し、光を吸収して光電流を発生させる光伝導性薄膜である。GST膜は、レーザーあるいは熱エネルギーにより非晶質状態から結晶質状態、又はその逆への相変化が可能な薄膜で形成できる。
【0043】
基板500上には、アクティブ層510と連結されるようにソース/ドレイン電極520が形成されている。ソース/ドレイン電極520は、金属膜、例えば金(Au)又はアルミニウム(Al)を含む金属膜でありうる。アクティブ層510上には、ゲート絶縁膜530が形成される。ゲート絶縁膜530は、カルコゲナイド系絶縁膜、例えば、As23膜又は有機物膜で構成され、例えば、透明なポリメチルメタクリレート(PMMA)膜でありうる。ゲート絶縁膜530は、アクティブ層510を構成するGST膜との良好な接触を維持し、製造工程中にGST膜の性質を変化させない役割を行う。
【0044】
ゲート絶縁膜530上には、光伝導層510に流れる光電流のオン/オフを制御するゲート電極540が形成される。ゲート電極540は、金属膜、例えば、Au又はAlを含む金属膜でありうる。ゲート電極540やソース/ドレイン電極520を構成する金属膜は、一般的に不透明であるが、透明な金属膜を使用することもできる。
【0045】
上述したように、光伝導層510を構成する材料としてGSTの代わりにCISを使用することもでき、光伝導層510は、後述する方法により形成されたn型CIS層とp型CIS層との複合膜を備えることもできる。
【0046】
図6は、図1の信号保存部に形成される逆スタッガード型TFTを示す断面図である。
後述する基板600上に形成される色々な層を一般的に前述した通常の蒸着方法及びパターニング方法を利用して形成できるのは、本発明の技術分野の当業者には自明である。したがって、本発明の特徴を明確かつ簡潔に開示するために省略する。
【0047】
図6に示すように、基板600上にゲート電極610を形成する。基板600は、透明な材料で形成でき、例えば、ガラス基板又は石英基板を使用できる。ゲート電極610は、導電性を有する物質、例えば、導電性ポリシリコン、ITO(IndiumTin Oxide)又はAuやAlなどの金属を蒸着して形成できる。
【0048】
ゲート電極610及び基板600の露出された領域上に、絶縁層620が形成されている。絶縁層620は、例えば、シリコン酸化物(SiO2)で形成され、又は有機物高分子であるPMMAで形成されることもある。絶縁層620は、ゲート電極610と以後に形成されるCISを含むアクティブ層630との良好な接触を維持することが望ましく、このためには、SiO2で形成されることが望ましい。また、絶縁層620の厚さは、2000ないし5000Åの範囲でありうる。しかし、絶縁層620を形成する材料及びその厚さは例示的であり、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0049】
絶縁層620上にパターニングされ、CISを含むアクティブ層630が形成されている。図6には、異なる導電型を有する複数のアクティブ層630が示されているが、これは例示的であり、必ずしもこれに限定されるものではない。すなわち、アクティブ層630が導電型を有さないか、又は一つの導電型のみを、例えば、n型又はp型を有しうる。また、第1導電型アクティブ層632がn型であり、第2導電型アクティブ層634がp型であるか、又はその逆でありうる。アクティブ層630を形成する方法、特に選択した導電型を有するアクティブ層630を形成する方法は、詳細に後述する。
【0050】
また、アクティブ層630と露出された絶縁層620とを覆う導電層650が形成されている。導電層650は、導電性を有する物質、例えば、導電性ポリシリコン、ITO又はAuやAlなどの金属を蒸着して形成できる。また、導電層650の厚さは、500ないし4000Åの範囲でありうる。しかし、導電層650を形成する材料及びその厚さは例示的であり、必ずしもこれに限定されるものではない。ゲート電極610に対応する位置に、アクティブ層630を露出するようにトレンチ655が形成される。トレンチ655により導電層650は分離されて、ソース/ドレイン電極650を形成する。
【0051】
アクティブ層630は、電気的なチャンネルが形成される層であって、一般的なトランジスタのようにゲート電極に電圧を加えることによってチャンネルが形成される。また、CISを利用したTFT234bは、アクティブ層630に光を照射することによってチャンネルが形成されることもある。これは、CISが有する優秀な光反応性に起因するものであって、アクティブ層630で光エネルギーを吸収して電子−正孔対が生成されて移動して、ソース/ドレイン電極650間の電気的な抵抗を低下させるためである。また、上述したように、アクティブ層630を構成する材料としてCISの代わりにGSTを使用することもできる。また、ソース及びドレイン電極650及びトレンチ655の内部を覆うパッシベーション層660をさらに備えている。
【0052】
以下では、図6のCISを含むアクティブ層630を形成する一方法を例示的に詳細に説明する。
図7は、本発明の一実施形態によるCISを含むアクティブ層の製造方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【0053】
図7に示すように、まず、通常のタングステン(W)ボートを含む熱蒸着装置内にInとSeとを含む第1合金及びCuとSeとを含む第2合金を準備する(ステップS10)。第1合金は、例えば、In2Se3であり、第2合金は、Cu2Se3でありうる。しかし、これは例示的であり、必ずしもこれに限定されるものではない。また、熱蒸着装置内に基板を搭載する(ステップS20)。
【0054】
次いで、基板の温度を第1温度で加熱して維持する(ステップS30)。第1温度で維持される基板上に第1薄膜を形成するために、第1合金を蒸発させる(ステップS40)。第1温度は、150ないし350℃の範囲でありうる。これにより、基板上には、第1合金を含む薄膜、例えば、In2Se3を含む薄膜が形成される。
【0055】
次いで、基板の温度を第2温度で加熱して維持する(ステップS50)。第2温度で維持される基板上にCIS薄膜を形成するために、第2合金を蒸発させる(ステップS60)。第2温度は、第1温度と同じであるか、又は高い。例えば、第2温度は、400乃至550℃の範囲でありうる。しかし、これは例示的であり、必ずしもこれに限定されるものではない。上述したように、第2合金はCu2Se3であり、これにより、第1合金を含む薄膜、例えば、In2Se3薄膜が形成された基板上には、蒸発された第2合金が第1合金と反応してCIS薄膜、すなわち、アクティブ層630を形成する。
【0056】
次いで、基板を冷却しつつ第1合金を再び蒸発させる(ステップS70)。これは、基板の表面にCu2-xSeの形成を防止するために行う選択的な工程である。この場合に再び蒸発させる第1合金の量は、以前の段階で蒸発する第1合金の量に比べて非常に少量である。上述した工程を行って、薄膜型トランジスタ及び光薄膜型トランジスタに適用するのに適した薄いn型CIS及び/又はp型CIS薄膜が形成される。しかし、上述したn型CIS膜及びp型CIS膜の形成方法は例示的であり、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0057】
上述した製造方法により形成されるCIS薄膜は、第1合金と第2合金との相対的な比率によって異なる伝導度を有する。すなわち、第1合金と第2合金との相対的な比率、例えば、In2Se3/Cu2Se3比率が0.1乃至0.5の範囲(0.1≦In2Se3/Cu2Se3比率≦0.5)である場合には、CIS薄膜は、p型の伝導度を有する。一方、In2Se3/Cu2Se3比率が0.6乃至0.9の範囲(0.6≦In2Se3/Cu2Se3比率≦0.9)である場合には、CIS薄膜は、n型の伝導度を有する。すなわち、In2Se3の相対的な量が多いほど、n型の半導体となる傾向が増加し、Cu2Se3の量が多いほど、p型の半導体となる傾向が増加する。これにより、形成された薄膜のキャリア種類及び濃度が変わる。上述したように、In2Se3/Cu2Se3比率によって形成されるCISのキャリア種類及び濃度に対する実験値が表1に整理されている。
【0058】
【表1】

【0059】
本発明の電子医療映像装置は、X線信号を吸収する信号吸収層をSeやCdTe、CdZnTeなどのカルコゲン素材を使用して形成し、また、X線情報を保存する信号保存部を構成するTFTをGST又はCISなどのカルコゲン物質を利用して形成する。
【0060】
以上で説明した本発明が上述した実施形態及び添付された図面に限定されず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で色々な置換、変形及び変更が可能であるというのは、当業者にとって明白である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、電子医療映像装置関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による電子医療映像装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の信号生成部の概略的な断面図である。
【図3】図1の信号保存部の概略的な断面図である。
【図4】図1の信号保存部と信号変換部との連結状態を示す回路図である。
【図5】図1の信号保存部に形成される正スタッガード型TFTを示す断面図である。
【図6】図1の信号保存部に形成される逆スタッガード型TFTを示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態によるCISアクティブ層の製造方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10 電子医療映像装置
100 信号生成部
110 第1電極
120 絶縁層
130 吸収層
150 電源
200 信号保存部
210 遮蔽層
220 第2電極
230 基板
240 素子層
250 TFT
300 信号変換部
310 信号印加回路部
320 信号増幅素子
330 マルチプレクサ
340 ADC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から照射される光エネルギーを吸収して電子−正孔対が形成される信号生成部と、
前記電子−正孔対を分離し、その極性によって前記信号生成部内の互いに反対側に密集されるように、前記信号生成部の一面に接触して電気信号を印加する電源と、
前記信号生成部に接触し、前記分離された電荷のうち一種を流入して保存する信号保存部と、
該信号保存部に接触し、該信号保存部に制御信号を印加して該信号保存部に保存された電荷による電気信号を伝達されて映像信号に変換する信号変換部と
を備えたことを特徴とする電子医療映像装置。
【請求項2】
前記信号生成部と、信号保存部と、信号変換部は、順次に形成された層状構造であることを特徴とする請求項1に記載の電子医療映像装置。
【請求項3】
前記信号生成部は、
前記電源の電気信号を前記信号生成部に印加されるように、前記電源と電気的に連結された第1電極と、
該第1電極の下面に形成されて、前記電源から流入される電荷を遮断する絶縁層と、
該絶縁層の下面に形成され、前記外部から照射される光エネルギーを吸収して電子−正孔対が生成され、前記電源から印加された電気信号により電子−正孔対が互いに分離されて互いに反対側に密集される吸収層と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子医療映像装置。
【請求項4】
前記吸収層は、カルコゲンを含むことを特徴とする請求項3に記載の電子医療映像装置。
【請求項5】
前記吸収層は、非晶質の純粋なセレンを含むことを特徴とする請求項4に記載の電子医療映像装置。
【請求項6】
前記吸収層は、CdTe又はCdZnTeを含むことを特徴とする請求項4に記載の電子医療映像装置。
【請求項7】
前記信号保存部は、
前記信号生成部内で分離された電荷のうち一種の電荷のみの流入を許容する遮蔽層と、
該遮蔽層と電気的に接触された第2電極と、
該第2電極と電気的に接触され、前記遮蔽層を通じて流入された一種の電荷を保存するキャパシタ及び前記キャパシタと連結されたトランジスタで構成された単位セルを複数個備える素子層と、
前記遮蔽層と、前記第2電極と、前記素子層が形成された基板と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子医療映像装置。
【請求項8】
前記基板は、ガラス又は石英を含むことを特徴とする請求項7に記載の電子医療映像装置。
【請求項9】
前記単位セルは、一つ又はそれ以上の電気的な単位素子をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の電子医療映像装置。
【請求項10】
前記素子層は、前記単位セルを横及び縦方向にそれぞれ複数個配列された2次元アレイを備えたことを特徴とする請求項7に記載の電子医療映像装置。
【請求項11】
前記素子層に備えられた前記トランジスタは、
前記基板上にカルコゲン物質を含んで形成されたアクティブ層と、
該アクティブ層の両側に形成されたソース電極及びドレイン電極と、
前記アクティブ層上に形成されたゲート絶縁膜と、
該ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と
を備えたことを特徴とする請求項7に記載の電子医療映像装置。
【請求項12】
前記アクティブ層に含まれたカルコゲン物質は、Ge2Sb2Te5(GST)又はCuInSe2(CIS)を含むことを特徴とする請求項10に記載の電子医療映像装置。
【請求項13】
前記素子層に備えられた前記トランジスタは、
前記基板の一部領域上に形成されたゲート電極と、
前記基板と前記ゲート電極とを覆う絶縁膜と、
前記ゲート電極が形成された領域上を覆うように前記絶縁膜上に形成されたカルコゲン物質を含んで形成されたアクティブ層と、
該アクティブ層の両側に形成されたソース電極及びドレイン電極と
を備えたことを特徴とする請求項7に記載の電子医療映像装置。
【請求項14】
前記アクティブ層に含まれたカルコゲン物質は、GST又はCISを含むことを特徴とする請求項13に記載の電子医療映像装置。
【請求項15】
前記アクティブ層は、それぞれIn2Se3とCu2Se3とを利用して形成したことを特徴とする請求項14に記載の電子医療映像装置。
【請求項16】
前記アクティブ層の導電型は、In2Se3とCu2Se3との相対的なモル比によって決定されることを特徴とする請求項15に記載の電子医療映像装置。
【請求項17】
前記In2Se3とCu2Se3との相対的なモル比が0.1乃至0.5の範囲である場合には、前記CIS膜は、p型の導電型を有することを特徴とする請求項16に記載の電子医療映像装置。
【請求項18】
前記In2Se3とCu2Se3との相対的なモル比が0.6乃至0.9の範囲である場合には、前記CIS膜は、n型の導電型を有することを特徴とする請求項16に記載の電子医療映像装置。
【請求項19】
前記信号変換部は、
前記信号保存部のトランジスタに制御信号を印加する信号印加回路部と、
前記制御信号により前記トランジスタを通じて伝達される電気信号を増幅する信号増幅素子と、
該信号増幅素子で増幅された信号をマルチプレキシングするマルチプレクサと、
該マルチプレクサによりマルチプレキシングされた信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子医療映像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−252090(P2008−252090A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59784(P2008−59784)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】