説明

カーナビゲーションシステム

【課題】 経路が分かりやすいカーナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】 ヘッドアップディスプレイを使用して経路の案内を行うカーナビゲーションシステムである。このカーナビは、経路を探索すると、その経路を示す矢印を前方視界の現実の道路に重なるようにフロントガラスに投影する。その際、矢印は、自車に接する位置を起点とし、所定の距離(例えば100m先)だけ先の目標地点を終点とする連続線である。このように車両と目標地点とが連続線でつながれることにより、たとえば自車のすぐ前を走る車によって前方視界が塞がれているときでも、どのように走行すればよいのか直感的に把握しやすい。さらに、フロントガラスに取り付けられる透過型ディスプレイは、透明のフィルムに多数の小さな偏光板を分散的に貼り付けたものである。こうしたディスプレイは、偏光板と偏光板の間のすきまの透明度が高いため、夜間やトンネル内でも前方視界が見やすい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
GPSを用いて得られる車両の位置情報と電子地図とを用いて目的地までの経路を探索し、運転席の前に設置された小型のディスプレイに経路を表示するカーナビゲーション装置が使用されている。より便利なカーナビゲーション装置が望まれている。
【0003】
特許文献1には、車載用ナビゲーション装置が開示されている。この車載用ナビゲーション装置は、フロントガラスに光を反射させて、運転者に前方風景と重ねて進路案内画像が見えるようにする表示手段を備えている。
【特許文献1】特開平7−262492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、経路が分かりやすいカーナビゲーションシステムを提供することである。
本発明の他の目的は、実際の視界に重ね合わせて経路を表示するカーナビゲーションシステムを提供することである。
本発明の更に他の目的は、ドライバーと車両の特性に依らずに実際の視界に正確に重ね合わせて経路を表示するカーナビゲーションシステムを提供することである。
本発明の更に他の目的は、車両の傾斜角に依らずに実際の視界に正確に重ね合わせて経路を表示するカーナビゲーションシステムを提供することである。
本発明の更に他の目的は、視界が良好で且つ投影された映像がクリアに認識できるヘッドアップディスプレイを用いたカーナビゲーションシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0006】
本発明によるカーナビゲーションシステムは、車両(22)の現在位置を示す位置情報を生成する位置情報生成部(1)と、入力された目的地までの経路を示す経路情報を生成する経路計算部(16)と、経路情報を用いて、現在位置を起点として現在位置から経路に沿って所定距離前方の位置である目標位置を算出する目標位置算出部(52)と、車両(22)のドライバーに対して車両(22)の前方視界に映像をオーバーレイするためのスクリーン(15)と、目(28)の位置から見たときに、前方視界における地面(20)における現在位置に重なる位置(34)を一端とし目標位置に重なる位置(36)を他端とする案内線映像(32)を作画する案内線作画部(54)と、スクリーン(15)に案内線映像(32)を投影する投影部(14)とを備える。
【0007】
本発明によるカーナビゲーションシステムは、車両(22)の速度を検出する車速センサ(9)と、速度が大きいほど所定距離をより長く設定する案内線長さ設定部(56)とを備える。
【0008】
本発明によるカーナビゲーションシステムは、地図を表示する表示画面(12)と、地図における位置である較正点を指定するための第1入力装置(7−1)と、スクリーン(15)における較正用位置を指定する較正用映像を作成する較正用映像作画部(58)とを備える。投影部(14)はスクリーン(15)に較正用映像を投影する。カーナビゲーションシステムは更に、スクリーン(15)に投影された較正用映像の設定位置を設定するための第2入力装置(7−2)を備える。案内線作画部(13)は、設定位置を用いて案内線映像(32)の位置を調節する。
【0009】
本発明によるカーナビゲーションシステムにおいて、較正用映像は、予め設定された基準位置にある目の位置から見たときに、前方視界における地面における現在位置に重なる位置(34)を一端とし較正用位置に重なる位置(36)を他端とする線を含む。
【0010】
本発明によるカーナビゲーションシステムは、車両(22)が水平面に対してなす傾斜角を検出するジャイロセンサ部(10)を備える。案内線作画部(13)は、設定位置を用いて案内線映像(32)の位置を調節する。
【0011】
本発明によるカーナビゲーションシステムは、目標位置が経路における曲がり角よりも遠くに位置していたときに、現在位置が曲がり角に接近するまで一時的に現在位置から目標位置までの距離が所定位置よりも短くなるように目標位置を設定し直す曲がり角処理部(60)を備える。
【0012】
本発明によるカーナビゲーションシステムにおいて、スクリーン(15)は、透明のフィルム(38)と、フィルム(38)に設置され、相互間に隙間を有し、偏光方向が同一である複数の偏光板(40)とを備える。投影部(14)は、偏光板(40)と偏光方向が異なる光によって案内線映像(32)をスクリーン(15)に投影する。
【0013】
本発明によるヘッドアップディスプレイ用スクリーン(15)は、フロントガラス上に配置されたフィルムと、フィルム上の所定領域に均一に分散的に配置された複数の偏光板とを備える。所定領域における平均的な可視光の透過率は70パーセント以上である。
【0014】
本発明によるカーナビゲーションシステムは、車両(22)のドライバーの目(28)と車両(22)の前方視界との間に設置される透明のフィルム(38)と、フィルム(38)に設置され、相互間に隙間を有し、偏光方向が同一である複数の偏光板(40)と、偏光板(40)と偏光方向が異なる光によって、車両(22)の進行方向をガイドするための映像をフィルム(38)に投影する投影部(14)とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、経路が分かりやすいカーナビゲーションシステムが提供される。
更に本発明によれば、実際の視界に重ね合わせて経路を表示するカーナビゲーションシステムが提供される。
更に本発明によれば、ドライバーと車両の特性に依らずに実際の視界に正確に重ね合わせて経路を表示するカーナビゲーションシステムが提供される。
更に本発明によれば、車両の傾斜角に依らずに実際の視界に正確に重ね合わせて経路を表示するカーナビゲーションシステムが提供される。
更に本発明によれば、視界が良好で且つ投影された映像がクリアに認識できるヘッドアップディスプレイを用いたカーナビゲーションシステムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明によるカーナビゲーションシステムを実施するための最良の形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態におけるカーナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。カーナビゲーションシステムは車両に搭載される。カーナビゲーションシステムは、GPS(Global Positioning System)衛星から電波を受信して車両の位置と方位の情報を生成するGPS受信機1を備える。GPS受信機1は、10m〜100m程度の精度で位置を検出する単独測位方式によって車両の位置を検出する。より好ましくは、GPS受信機1は、センチメートルオーダーの精度で位置を検出するRTKGPS(Real Time Kinematic GPS)方式によって車両の位置を検出する。RTKGPS方式が用いられることにより、位置情報が0.1秒間隔程度のサイクルで更新され、実質的にリアルタイムに車両の位置情報を得ることができる。
【0018】
カーナビゲーションシステムは更に、VICSビーコン受信機2を備える。VICSビーコン受信機2は、道路の路側に設置された電波ビーコンまたは光ビーコンから送信されるビーコン情報を受信する。ビーコン情報は、渋滞情報、規制情報、現在位置情報、行先案内、分岐情報、事故情報、駐車場情報、文字情報、簡易図形情報を含む。
【0019】
カーナビゲーションシステムは更に、FM放送の電波を受信して処理するFM受信機3を備える。
カーナビゲーションシステムは更に、CD/DVDドライバ5を備える。CD/DVDドライバ5は、地図データが記録された記録媒体(CDまたはDVD)4から情報を読み取る。
【0020】
カーナビゲーションシステムは更に、操作部7を備える。操作部7は、操作パネル、タッチ画面及び/またはカーソルキーを備えたキーボードを備える。操作部7は、第1入力装置7−1と第2入力装置7−2とを含む。
カーナビゲーションシステムは更に、速度センサ9を備える。速度センサ9は、車両の車軸に取り付けられた回転信号発生器から得られるパルス信号を処理することによって速度を検出する。
【0021】
カーナビゲーションシステムは更に、相対方位を検出するジャイロセンサ10を備える。ジャイロセンサ10は、角運動量を検出し、ジャイロセンサ10が備えるケースの慣性空間に対する回転運動を検出する。ジャイロセンサ10は、角運動量の軸に直交する1軸または2軸の回りの運動を検出する。ジャイロセンサ10によって生成される信号とCD/DVDドライバ5によって読み取られた地図データとがマッチングされることにより、車両の現在位置と走行経路を出力するための信号が取り出される。
【0022】
カーナビゲーションシステムは更に、記憶処理装置11を備える。記憶処理装置11は、ROM、DRAM、SRAM及びVRAMを含む。
【0023】
カーナビゲーションシステムは更に、描画処理装置8を備える。描画処理装置8は、後述するメインCPU6が処理する地図データ及び映像情報を含む画像信号を生成する。描画処理装置8は、記録媒体4に記録された地図データがCD/DVDドライバ5によって読み取られたときに、ルート情報を含む地図データの最新表示データを予め記憶処理装置11に記録する。
【0024】
描画処理装置8は、記録媒体4に記録された地図データの中から車両の現在位置を含む領域の地図データと案内情報をCD/DVDドライバ5を介して読み取る。描画処理装置8は、読み取られた情報を含む映像を表示するための画像信号を生成する。描画処理装置8は、地図、車両の現在位置、交差点情報、誘導経路情報を表示するための制御を行う制御手段を有する。描画処理装置8は、車両の現在位置を示すマークを読み込まれた地図に重ねて表示するための画像信号を生成する。
【0025】
表示部12はタッチパネル機能を有する液晶ディスプレイを備える。表示部12は、描画処理装置8から受信した画像信号に基づく映像をディスプレイに表示する。表示部12に表示される地図は、車両の現在位置の移動に連れて自動的にスクロールされる。そして表示画面は現在地がつねに表示されるように更新される。
カーナビゲーションシステムは更に、経路探索部16を備える。
【0026】
カーナビゲーションシステムによって使用される地図データは次のように特徴づけられる。カーナビゲーションシステムは地理情報システムを使用する。地理情報システムは、カーナビゲーションシステムにより使用される情報の管理と解析に不可欠である。地図データは、道路、建造物、河川に例示される地理情報をベクトルデータの形式で含んでいる。このベクトルデータは、空間上の情報を位置座標と属性値とによって定義される点、線及び面の情報として含む。
【0027】
カーナビゲーションシステムはメインCPU6を備える。メインCPU6はGPS受信機1、VICS情報受信機2、FM受信機3、CD/DVDドライバ5、操作部7、描画処理装置8、速度センサ9、ジャイロセンサ10、記憶処理装置11及び経路探索部16と通信を行う。
【0028】
カーナビゲーションシステムは更に、メインCPU6に接続された矢印作画装置13を備える。矢印作画装置13は、プロジェクタを備える矢印投影装置14に接続される。矢印投影装置14はフロントガラス24の所定位置に対して映像を投影する。フロントガラス24にはフロントガラス表示部15が設けられる。
【0029】
図2は、矢印作画装置13の構成を示す。矢印作画装置13は、目標位置算出部52、矢印作画部54、矢印長さ設定部56、較正部58、曲がり角処理部60及び坂道処理部61を備える。
【0030】
図3には、本実施の形態におけるカーナビゲーションシステムを備えた車両が示されている。車両22にはドライバーが搭乗する。GPS受信機1は、GPS受信機設置位置30に設置される。矢印投影装置14はダッシュボードもしくは天井に設置され、フロントガラス24のフロントガラス表示部15に矢印32を投影する。ドライバーの目28から見たときに、矢印32の起点と終点とは、ドライバーの前方視界に見える地面20の位置である矢印起点34と矢印終点36とに重なる。
【0031】
図4は、フロントガラス表示部15の構成を示す。フロントガラス表示部15は、透明度の高い透明フィルム38を備える。透明フィルム38の表面には接着剤の層が設けられている。その接着剤の層には、多数の小さい偏光板40が偏光方向を同じくして分散的に貼着される。それらの偏光板40は、互いの間に隙間を有する。偏光板40が概ね均一に分布している領域において、偏光板40がフロントガラス表示部15に占める面積は、50パーセント以下であることが好ましい。フロントガラス表示部15において相当数の偏光板40を含む領域における平均的な可視光の透過率は70パーセント以上であることが好ましい。
【0032】
偏光板40は更に、他の透明フィルム(図示せず)によって覆われる。すなわち偏光板40は2枚の透明フィルムの間に挟まれる。こうした偏光板40は製造が容易であり、フロントガラス24に後付するのに好適である。矢印投影装置14は、偏光板40の偏光方向と垂直に偏光した光を投影することにより、偏光板40に投影された映像をドライバーに提供する。
【0033】
こうしたフロントガラス表示部15は、偏光板40と偏光板40との間の隙間は非常に透明度が高いために、視界を妨げることが少ない。偏光板40の透明性が比較的低くても、透明性の高いフロントガラス表示部15を得ることが可能である。偏光板40の面積が50パーセント以下であるとき、例えば偏光板40の透過率が可視光に対して40パーセント程度の場合であっても、実質的に透過率が70パーセント以上のフロントガラス表示部15を得ることができる。こうしたフロントガラス表示部15は、特にトンネル内や夜間における前方視界の視認性が高い。フロントガラス表示部15の透明度を高く維持しながら反射率の高い偏光板40を採用することができるため、矢印投影装置14に要求される輝度を小さく抑えることができ、コストが抑制される。
【0034】
偏光板40に代えて光を透過しない反射部材が分散的に配置されたフロントガラス表示部15を用いても映像を投影することが可能である。同じ平均的な透過率を得るためには、偏光板40の面積は反射部材の面積よりも大きく設定することができ好ましい。
【0035】
以上の構成を備えたカーナビゲーションシステムの動作が以下のように説明される。図5は、カーナビゲーションシステムの初期調節の動作を示すフローチャートである。
【0036】
ドライバーはカーナビゲーションシステムの操作部7に設けられたメーンスイッチをオンにする(ステップS2)。ドライバーは表示部12に設けられたディスプレイの電源スイッチをオンにする(ステップS4)。
【0037】
メインCPU6は、CD/DVDドライバ5を用いて記録媒体4から地図データなどのデータを読み込む(ステップS6)。
【0038】
GPS受信機1は、受信したGPS信号に基づいてGPS受信機設置位置30を示す現在位置情報を生成する。メインCPU6はその現在位置情報を取得する(ステップS8)。ここまでに、メインCPU6は現在位置を含む地図データをCD/DVDドライブから読み取る。
【0039】
表示部12には、ステップS8において読み込まれた現在位置を含む地図が表示される。この地図には車両の現在位置を示すマークが表示される。ドライバーは表示部12を参照し、車両が進行する方向を操作部7から入力する(ステップS10)。
【0040】
矢印の実寸調整が済んでいるか否かの判定がなされる。ドライバーが操作部7に対して所定の操作を行うと、矢印の実寸調整が済んでいないと判定され、メインCPU6はステップS14からの処理を行う。ドライバーが他の操作を行うと、矢印の実寸調整が済んでいると判定され、メインCPU6はステップS24からの処理を行う。
【0041】
ドライバーは、表示部12を参照して、車両の進行方向に位置する適当な目標物を表示画面上の地図から選択して第1入力装置7−1によりその位置を較正用位置として指定する。較正部58は、較正用位置を用いて矢印を作画する。作画される矢印は、次のように設定されることが好ましい。すなわち、標準的なドライバーと車両を予め設定して、そのドライバーの目28から見たとき、投影された矢印の矢印終点36は、指定された目標物の位置である。更に、投影された矢印の矢印起点34は、ドライバーの目28から見て車両22の先端、または先端より少し前方に位置する(ステップS16)。
【0042】
矢印投影装置14は、矢印作画装置13によって作画された矢印をフロントガラス表示部15に投影する。投影された矢印の矢印起点34は、ドライバー及び車両22の個性に依存して、車両22の先端からずれていることがある。投影された矢印の矢印終点36は、ドライバー及び車両22の個性に依存して、ステップS14において指定された目標物からずれていることがある(ステップS18)。
【0043】
ドライバーは第2入力装置7−2を使用して矢印起点34と矢印終点36とを設定する。すなわちドライバーは、矢印32を見て、矢印起点34が車両22の先端、または少し前方に位置するように操作部7から入力を行う。ドライバーは更に、矢印終点36がステップS14において指定された目標物の位置に一致するように、操作部7から入力を行う。
【0044】
較正部58は、ステップS20において設定された矢印のフロントガラス表示部15における長さと、車両先端とステップS14において指定された目標物との距離とを対応づけて記憶する。更に、それらからフロントガラス表示部15における矢印の長さと地面20における距離との対応関係を作成する(ステップS22)。
【0045】
ドライバーは、操作部7を介して、矢印を地面に投影したときの長さ、すなわち矢印起点36と矢印終点38との間の長さLを設定する。ドライバーはLとして例えば300m、180m、120m、30mという候補の中から適切な長さを選ぶ。この長さは、見通しの良い場所では長く、見通しの悪い場所では短く設定されることが好ましい。あるいはドライバーは、矢印を地面に投影したときの長さを自動設定することを選択する(ステップS24)。
【0046】
ドライバーは、操作部7から矢印表示色を入力する(ステップS26)。
矢印投影案内が開始され、初期調節の動作が終了する(ステップS28)。
【0047】
こうした初期調節は、次の問題を解決するのに有効である。フロントガラスに表示される矢印と、地面20に表示される矢印起点34及び矢印終点36との対応関係は、目28の高さ、目28とフロントガラス24との相対位置、フロントガラス24の傾きなどの条件によって異なる。上記の初期調節によって、ドライバーの身長及び姿勢、車種に適合して矢印が表示される。
【0048】
次に、カーナビゲーションシステムを使用した運転の動作が以下のように説明される。
【0049】
ドライバーは、カーナビゲーションシステムのスイッチをオンにする。GPS受信機1は車両22の現在位置(GPS受信機設置位置30)を検出してメインCPU6に送信する。表示部12には電子地図と、その電子地図の中での車両の現在位置とが表示される。ドライバーは表示部12を参照しながら操作部7を用いて目的地を設定する。経路探索部16は現在位置から目的地までの適切な経路を探索し、表示部12に表示する。
【0050】
ドライバーは走行を開始する。GPS受信機1は車両の現在位置を実質的にリアルタイムで検出してメインCPU6に送信する。表示部12には車両22の現在位置を示すマークとその現在位置の周辺の地図が表示される。
【0051】
矢印作画部54は、ステップS24において設定されたLを読み込む。目標位置算出部52は、GPS受信機1が検出する現在位置を用いて、探索された経路に沿って現在位置から距離L離れた地点を目標位置として算出する。矢印作画部54は、現在位置から所定距離離れた矢印起点34と、探索された経路に沿って矢印起点34から距離L前方にある矢印終点36とを結ぶための矢印32を作画する。矢印32に代えて、矢印起点34と矢印終点36とを両端とする矢の無い線が用いられてもよい。
【0052】
矢印投影装置14は、作画された矢印をフロントガラス表示部15に投影する。フロントガラス表示部15には、前方視界における道に重なって、矢印32が表示される。例えば、前方視界において右に曲がるべき角が100m先に見えている場合、ドライバーの目28にとっては、車両の先端を起点として100m先まで延長し、100m先で右に曲がる矢印があたかも実際の道路上に表示されているかのように見える。ドライバーはその矢印を参考にして運転を行う。ドライバーは、実際の前方視界から視線を逸らす必要がない。そのためドライバーの負担が少なく、運転が安全に行われる。
【0053】
車両の先端から目標位置まで連続した矢印が表示されていることにより、走行すべき道が分かりやすい。特に、車両22の前に他の車両が走行している場合など視界を妨げるものがある場合、車両22の先端から離れて方向転換する場所の付近に表示される矢印に比べて、自車と方向転換すべき場所との位置関係が直感的に分かりやすい。
【0054】
矢印32の長さの設定が自動に設定されている場合は、矢印の長さは以下のように設定される。速度センサ9は車両22の速度をリアルタイムで検出する。矢印長さ設定部56は、1以上の基準速度を記憶している。矢印長さ設定部56は、速度センサ9によって検出された速度が基準速度よりも大きくなると矢印の長さLをより長い長さに設定する。矢印長さ設定部56は、速度センサ9によって検出された速度が基準速度よりも小さくなると矢印の長さLをより短い長さに設定する。このように設定されることにより、速度が変化したときに、表示されている矢印の長さに対応する距離を走る時間の変化が小さくなり、運転しやすい。
【0055】
曲がり角処理部60は、矢印が交差点などで曲がって建物の背後の見えない道路に重なって見えなくなることを防止する。例えば曲がり角処理部60は、探索された経路に沿って設定された長さL以内の地点(例えば50m先)に所定角度以上の曲がり角がある場合、矢印の長さLを、現在位置からその曲がり角までの距離(例えば50m)またはそれより所定距離長い距離(例えば55m)に一時的に設定し直す。こうすることにより、曲がり角が距離Lより近くにある場合、矢印が前方視界に見えている道にのみ重なって見え、視認性が向上する。車両22が曲がり角に近づいた場合、曲がり角処理部は矢印の長さを徐々に長く戻し、曲がり角を曲がったときに矢印の長さを元の設定長さに戻す。
【0056】
図6は、フロントガラス表示部15に表示される矢印の例を示す。始点基準点A−1〜A−4は矢印起点34に重なって見える点であり、終点基準点B−1〜B〜4は矢印終点36に重なって見える点である。以下、目標位置までの距離Lが180mである場合について説明する。矢印には、10mごとに中間基準点が設定される。
【0057】
図6(a)は、180m先まで曲がるべき角が無く、直進しつづけるべきことを示す。図6(b)に示された矢印は、16区分の中間基準点までは直線、残りの2区分は曲線と左折側直線とが終点基準点B−2と共に形成されている。これにより、160m先で左折すべきことが示される。図6(c)に示される矢印は、40m先で右折すべきことを示している。この場合、曲がり角処理部60は、180mの設定長さのうち40mよりも遠方の矢印を圧縮する。図6(d)に示される矢印は、高速道路のような見通しの良い分岐地点の進行方向を示す。8区分目の基準点に分岐があり、本線を降りるべきことが示されている。
【0058】
CD/DVDドライバ5の地図データに道路の傾斜情報がある場合に、坂道処理部61は、車両22が坂道に差し掛かったときに、車両22の傾斜による矢印32と地面20との位置対応の変化を調節する。坂道処理部61は、ジャイロセンサ10が検出した車両の水平面に対する傾斜角を読み込む。特に、車両の進行方向に沿う方向のアップダウン、すなわちピッチ方向の角度を示す情報を読み込む。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、カーナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、矢印作画装置13の構成を示す。
【図3】図3は、ドライバー、車両及び地面の関係を示す。
【図4】図4は、フロントガラス表示部15を示す。
【図5】図5は、初期調節の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、矢印の例を示す。
【符号の説明】
【0060】
13…矢印作画装置
14…矢印投影装置
20…地面
22…車両
24…フロントガラス
28…目
30…GPS受信機設置位置
32…矢印
34…矢印起点
36…矢印終点
38…フィルム
40…偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を示す位置情報を生成する位置情報生成部と、
入力された目的地までの経路を示す経路情報を生成する経路計算部と、
前記経路情報を用いて、前記現在位置を起点として前記現在位置から前記経路に沿って所定距離前方の位置である目標位置を算出する目標位置算出部と、
前記車両のドライバーに対して前記車両の前方視界に映像をオーバーレイするためのスクリーンと、
前記目の位置から見たときに、前記前方視界における地面における前記現在位置に重なる位置を一端とし前記目標位置に重なる位置を他端とする前記案内線映像を作画する案内線作画部と、
前記スクリーンに前記案内線映像を投影する投影部
とを具備する
カーナビゲーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載されたカーナビゲーションシステムであって、
更に、前記車両の速度を検出する車速センサと、
前記速度が大きいほど前記所定距離をより長く設定する案内線長さ設定部
とを具備する
カーナビゲーションシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたカーナビゲーションシステムであって、
更に、地図を表示する表示画面と、
前記地図における位置である較正点を指定するための第1入力装置と、
前記スクリーンにおける較正用位置を指定する較正用映像を作成する較正用映像作画部
とを具備し、
前記投影部は前記スクリーンに前記較正用映像を投影し、
更に、前記スクリーンに投影された前記較正用映像の設定位置を設定するための第2入力装置
を具備し、
前記案内線作画部は、前記設定位置を用いて前記案内線映像の位置を調節する
カーナビゲーションシステム。
【請求項4】
請求項3に記載されたカーナビゲーションシステムであって、
前記較正用映像は、予め設定された基準位置にある前記目の位置から見たときに、前記前方視界における前記地面における前記現在位置に重なる位置を一端とし前記較正用位置に重なる位置を他端とする線を含む
カーナビゲーションシステム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載されたカーナビゲーションシステムであって、
更に、前記車両が水平面に対してなす傾斜角を検出するジャイロセンサ部
を具備し、
前記案内線作画部は、前記設定位置を用いて前記案内線映像の位置を調節する
カーナビゲーションシステム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載されたカーナビゲーションシステムであって、
更に、前記目標位置が前記経路における曲がり角よりも遠くに位置していたときに、前記現在位置が前記曲がり角に接近するまで一時的に前記現在位置から前記目標位置までの距離が前記所定位置よりも短くなるように前記目標位置を設定し直す曲がり角処理部
を具備する
カーナビゲーションシステム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載されたカーナビゲーションシステムであって、
前記スクリーンは、
透明のフィルムと、
前記フィルムに設置され、相互間に隙間を有し、偏光方向が同一である複数の偏光板
とを備え、
前記投影部は、前記偏光板と偏光方向が異なる光によって前記案内線映像を前記スクリーンに投影する
カーナビゲーションシステム。
【請求項8】
車両のフロントガラス上に映像が投影されるヘッドアップディスプレイ用スクリーンにおいて、
前記フロントガラス上に配置されたフィルムと、
前記フィルム上の所定領域に均一に分散的に配置された複数の偏光板
とを具備し、
前記所定領域における平均的な可視光の透過率は70パーセント以上である
ヘッドアップディスプレイ用スクリーン。
【請求項9】
車両のドライバーの目と前記車両の前方視界との間に設置される透明のフィルムと、
前記フィルムに設置され、相互間に隙間を有し、偏光方向が同一である複数の偏光板
とを具備する
ヘッドアップディスプレイ用スクリーン。
【請求項10】
請求項8又は9に記載されたヘッドアップディスプレイ用スクリーンと、
投影部
とを具備し、
前記複数の偏光板は偏光方向が同一であり、
前記投影部は前記偏光板と偏光方向が異なる光によって、前記車両の進行方向をガイドするための映像を前記ヘッドアップディスプレイ用スクリーンに投影する
カーナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−343194(P2006−343194A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168460(P2005−168460)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】