説明

カーナビゲーション方法、カーナビゲーションシステム、交通情報管理装置およびカーナビゲーション装置

【課題】右折渋滞リンクがその上流のリンクまで延びた場合であっても、精度の高い経路探索結果を得る。
【解決手段】交通情報管理装置21は、右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間を補正する補正時間を、統計旅行時間記憶部204に蓄積された統計リンク旅行時間と、リンク旅行時間記憶部203から得られる右折渋滞リンクおよびその上流リンクの順調車線を走行した車両のリンク旅行時間と、上流リンクの渋滞車線を走行した車両のリンク旅行時間と、に基づき算出し、その算出した補正時間をカーナビ装置3へ配信する。カーナビ装置3は、経路探索部312により最小コスト経路を探索する場合には、統計旅行時間記憶部315に格納されている当該右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間を前記配信された補正時間により補正して利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在地から目的地までの経路をドライバに提示して、車両の走行進路を誘導するカーナビゲーション方法、カーナビゲーションシステム、交通情報管理装置およびカーナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの車両に搭載されたカーナビゲーション装置においては、内蔵の地図データベースに基づき現在地から目的地までの経路が探索され、探索された経路が表示装置に表示される。その場合、その経路の探索には、ダイクストラ法など種々のアルゴリズムが用いられるが、その経路探索においては、例えば、目的地までの距離や所要時間などが最小になるようないわゆる最小コスト経路が探索される。
【0003】
すなわち、経路探索においては、より一般的には、道路網を構成するリンク(通常、2つの交差点を結ぶ道路に相当)やノード(通常、交差点に相当)に、あらかじめ所定のコスト(例えば、リンク長、リンク走行時間、左折時間、右折時間、通過料金など)が設定され、現在地と目的地とをつなぐすべての経路について、その経路に含まれるリンクおよびノードのコストで表される所定のコスト関数(例えば、所要時間の総和など)の値が計算され、その値が最小になる経路が抽出される。
【0004】
例えば、特許文献1には、リンク間接続コストの概念を導入することにより、交差点における左折または右折時の減速によるロス時間や、右折時の対向車の通過待ち時間を考慮した最小コスト経路(この場合のコストは、時間である)の探索方法が開示されている。そして、その経路探索方法においては、そのリンク間接続コストは、プローブカーが分岐した方向、つまり、直進車、右折車を識別することにより取得されるとし、その結果、右折渋滞などが生じた場合でも、より精度の高い最小コスト経路が探索されるとしている。
【0005】
特許文献1に開示された経路探索方法においては、交差点には、右折車線、直進車線および左折車線があり、右折、直進または左折する車両は、そのそれぞれの車線を通過するものとして、右折、直進または左折するプローブカーのデータに基づき、リンク間接続コストを取得している。こうして取得したリンク間接続コストは、例えば、その交差点で、右折渋滞が生じたとしても、現実に適合したデータが取得される。
【特許文献1】特開2006−47246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された経路探索方法においては、右折渋滞が当該渋滞発生リンクだけでなく、そのリンクの始点交差点を越えて延び、そのリンクの上流リンクに及び、かつ、その上流リンクと右折渋滞発生リンクとを接続する接続交差点を通過する車両の多くがその接続交差点で直進するような場合には、その接続交差点における上流リンクの直進のリンク間接続コストやリンクコストは、必ずしも適切な値が取得されないことがある。
【0007】
すなわち、そのような場合には、右折渋滞発生リンクの上流リンクでは、多くのプローブカーは、順調車線または渋滞車線のいずれを走行していても、その接続交差点を直進するので、そのリンクのリンクコストおよび直進リンクコストとしては、順調車線を走行したときに得られる値と、渋滞車線を走行したときに得られる値と、の間にある値が得られることになる。これのようにして得られたリンクコストおよび直進リンクコストは、右折時間、左折時間、渋滞などを考慮した、より精度の高い経路探索を行う場合には、順調車線のリンクコストとしても、また、渋滞車線のリンクコストとしても中途半端な値であり、適切なリンクコストおよび直進のリンク間接続コストとして利用するのは適切でない。
【0008】
従って、特許文献1に開示された経路探索方法には、右折渋滞がその渋滞発生リンクの始点交差点を越えて、上流リンクまで延びた場合には、精度の高い経路探索結果を得ることができないという問題があることになる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、右折渋滞がその渋滞発生リンクの始点交差点を越えて、上流リンクまで延びた場合であっても、精度の高い経路探索結果を得ることが可能なカーナビゲーション方法、カーナビゲーションシステム、交通情報管理装置およびカーナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係る交通情報管理装置は、車両のプローブデータから得られる車両ごとのリンク旅行時間を蓄積したリンク旅行時間記憶部と、前記リンク旅行時間記憶部に蓄積されたリンク旅行時間を統計して得られたリンクごとの統計リンク旅行時間を蓄積した統計旅行時間記憶部と、を備え、所定の右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間を補正する補正時間を、前記統計旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの統計リンク旅行時間と、前記リンク旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの順調車線を走行した車両のリンク旅行時間と、前記リンク旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの渋滞車線を走行した車両のリンク旅行時間と、に基づき算出し、その算出した右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間の補正時間をカーナビ装置へ配信することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るカーナビゲーション装置は、現在地から目的地までの最小コスト経路を探索するときには、前記配信された右折渋滞リンクおよびその上流リンクの補正時間により、交通情報管理装置から事前に提供された統計リンク旅行時間を補正することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、以上のように、交通情報管理装置は、右折渋滞リンクおよびその上流リンクについての統計リンク旅行時間を補正する補正時間を算出し、カーナビゲーション装置は、それを利用して最小コスト経路を探索するので、右折渋滞がその渋滞発生リンクの始点交差点を越えて、上流リンクまで延びた場合であっても、精度の高い経路探索結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、右折渋滞がその渋滞発生リンクの始点交差点を越えて、上流リンクまで延びた場合であっても、精度の高い経路探索結果を得ることが可能なカーナビゲーション方法、カーナビゲーションシステム、交通情報管理装置およびカーナビゲーション装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るカーナビゲーションシステムの機能ブロックの構成の例を示した図である。図1に示すように、カーナビゲーションシステム1は、交通情報センタ2に設けられた交通情報管理装置21に、通信装置22、通信ネットワーク5および基地局6を介して、車両4に搭載されたカーナビ装置3が接続されて構成される。
【0016】
ここで、通信ネットワーク5は、IP(Internet Protocol)ネットワーク、公衆電話交換回線網、携帯電話回線網などを含んで構成され、基地局6は、携帯電話の基地局、IEEE802.11シリーズ規格の無線LAN(Local Area Network)の基地局などによって構成される。また、交通情報センタ2の通信装置22は、ルータなどによって構成される。
【0017】
車両4は、カーナビ装置3を搭載した一般の車両であり、カーナビ装置3は、本実施形態に特有の機能を実現する機能ブロック(詳細は後記)を備えることを除き、一般市販のカーナビ装置と同様の構成を有する。
【0018】
車両4は、また、いわゆるプローブカーとしての機能を果たす。すなわち、車両4に搭載されたカーナビ装置3は、GPS(Global Positioning System)受信機33を備え、所定の時間間隔(例えば、1秒)ごとに、GPS受信機33により自車位置を測位し、経度・緯度などの現在位置および現在時刻のデータを取得し、その取得した現在位置および現在時刻のデータをプローブデータとして、基地局6、通信ネットワーク5および通信装置22を介して交通情報管理装置21へ送信する。
【0019】
交通情報管理装置21は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、半導体メモリやハードディスク装置などからなる記憶装置と、を備えたコンピュータによって構成され、車両4に搭載されたカーナビ装置3から送信されるプローブデータを受信し、その受信したプローブデータに基づき、リンク旅行時間を求め、前記記憶装置に蓄積するとともに、その蓄積したリンク旅行時間について所定の統計処理および補正処理を行って求めた統計旅行時間および補正時間を、カーナビ装置3へ配信する機能を備える。
【0020】
交通情報管理装置21は、その機能を実現するために、プローブデータ収集部211、リンク旅行時間算出部212、リンク旅行時間統計部213、補正対象リンク抽出部214、補正時間算出部215、旅行時間配信部216などの処理機能ブロックと、リンクデータ記憶部201、プローブデータ記憶部202、リンク旅行時間記憶部203、統計旅行時間記憶部204、補正対象リンク記憶部205、補正時間記憶部206などの記憶機能ブロックと、を備える。
【0021】
ここで、プローブデータ収集部211、リンク旅行時間算出部212、リンク旅行時間統計部213、補正対象リンク抽出部214、補正時間算出部215、旅行時間配信部216などの処理機能ブロックの機能は、前記CPUが前記記憶装置に格納された所定のプログラムを実行することによって実現される。また、リンクデータ記憶部201、プローブデータ記憶部202、リンク旅行時間記憶部203、統計旅行時間記憶部204、補正対象リンク記憶部205、補正時間記憶部206などの記憶機能ブロックは、前記記憶装置上に構成される。
【0022】
また、カーナビ装置3は、図示しないCPUと半導体メモリやハードディスク装置などからなる記憶装置とを備えたコンピュータであるナビ処理装置31と、携帯電話機などからなる通信装置32、GPS受信機33、タッチパネルやリモコン装置からなる入力装置34、LCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示装置35などを含んで構成される。
【0023】
ナビ処理装置31は、少なくとも、前記したプローブカーとしての機能と、入力装置から入力される目的地データまでの推奨経路を探索して、その推奨経路を表示装置35に表示する機能と、を有する。ナビ処理装置31は、その機能を実現するために、データ送受信部311、経路探索部312、入出力制御部313、プローブデータ取得部314などの処理機能ブロックと、統計旅行時間記憶部315、補正時間記憶部316、リンクデータ記憶部317、プローブデータ記憶部318などの記憶機能ブロックと、を備える。
【0024】
ここで、データ送受信部311、経路探索部312、入出力制御部313、プローブデータ取得部314などの処理機能ブロックの機能は、前記CPUが前記記憶装置に格納された所定のプログラムを実行することによって実現される。また、統計旅行時間記憶部315、補正時間記憶部316、リンクデータ記憶部317、プローブデータ記憶部318などの記憶機能ブロックは、前記記憶装置上に構成される。
【0025】
続いて、交通情報管理装置21のCPUが実行する処理内容について、順次、詳しく説明するが、ここでは、まず、その処理で用いられるデータの構成について説明しておく。図2は、交通情報管理装置21の記憶装置に記憶されるデータの構成の例を示した図である。
【0026】
プローブデータは、カーナビ装置3が所定の時間(例えば、1秒)ごとに取得したプローブデータを、プローブデータ収集部211を介して収集したデータであり、プローブデータ記憶部202に蓄積される。プローブデータのレコードは、図2(a)に示すように、「No.」、「車載器ID」、「日時」、「緯度」、「経度」の各フィールドによって構成される。
【0027】
ここで、「No.」は、当該プローブデータのレコードの識別番号、「車載器ID」は、当該プローブデータを取得したカーナビ装置3の識別番号、「日時」、「緯度」および「経度」は、前記の「車載器ID」を有するカーナビ装置3が当該プローブデータを取得したときの日時および位置データである。
【0028】
リンクデータは、始点交差点と終点交差点とを結ぶ道路(以下、リンクという)の位置および接続関係を表すデータ、つまり、道路地図を表すデータであり、本実施形態では、国内の全地域または一部の地域の道路地図に対応するリンクデータが事前にリンクデータ記憶部201に格納されているものとする。リンクデータのレコードは、図2(b)に示すように、「No.」、「流入リンクID」、「流出リンクID」、「始点緯度」、「始点経度」、「終点緯度」、「終点経度」、「接続角度」、「リンク長」、「フラグ」の各フィールドによって構成される。
【0029】
ここで、「No.」は、当該リンクデータのレコードの識別番号、「流入リンクID」は、当該リンクデータの始点交差点と終点交差点とを結ぶリンク(以下、当該リンクという)の識別番号、「流出リンクID」は、当該リンクの終点交差点の先に接続されるリンクの識別番号、「始点緯度」および「始点経度」は、当該リンクの始点交差点の位置を表す緯度および経度のデータ、「終点緯度」および「終点経度」は、当該リンクの終点交差点の位置を表す緯度および経度のデータ、「接続角度」は、流出リンクが終点交差点において当該リンク(流入リンク)の延長線に対してなす角度、「リンク長」は、当該リンクの道のりの距離、「フラグ」は、右折渋滞が常習的に生じる交差点であることを示す目印データで、「ON」または「OFF」のデータである。
【0030】
リンク旅行時間記憶部203に蓄積されるリンク旅行時間データは、リンク旅行時間算出部212が、プローブデータ記憶部202を参照して、ある「車載器ID」を有するプローブデータの「日時」、「緯度」、「経度」をトレースすることによって取得される。リンク旅行時間データのレコードは、図2(c)に示すように、「No.」、「車載器ID」、「日時」、「流入リンクID」、「流出リンクID」、「リンク旅行時間」の各フィールドによって構成される。
【0031】
ここで、「No.」は、当該リンク旅行時間データのレコードの識別番号、「車載器ID」は、当該リンク旅行時間データの元になったプローブデータを取得したカーナビ装置3の識別番号、「日時」は、当該カーナビ装置3を搭載した車両4が、当該リンク(「流入リンクID」を有するリンク)に進入したときの日時、「流入リンクID」は、当該リンクの識別番号、「流出リンクID」は、当該リンクの終点交差点の先に接続されるリンクの識別番号、「リンク旅行時間」は、当該車両4が「流入リンクID」を有するに進入して、そのリンクを走行後、「流出リンクID」を有するリンクへ進入するまでに要する時間(特許文献1でいうリンク間接続コストを含む)である。
【0032】
統計旅行時間記憶部204に蓄積される統計旅行時間データは、リンク旅行時間統計部213が、リンク旅行時間記憶部203に蓄積されたリンク旅行時間をそれぞれのリンクごとに、所定の時刻区分でソートし、その時刻区分ごとに統計処理(通常は、平均処理)して算出した統計リンク旅行時間を含んで構成される。統計旅行時間データのレコードは、図2(d)に示すように、「No.」、「時刻区分」、「流入リンクID」、「流出リンクID」、「統計リンク旅行時間」の各フィールドによって構成される。
【0033】
ここで、「No.」は、当該統計旅行時間データのレコードの識別番号、「時刻区分」は、1日(0時00分から24時00分まで)を所定の時間(例えば、10分、1時間など)ごとに区分したときのその区分の開始時刻、「流入リンクID」は、当該リンクの識別番号、「流出リンクID」は、当該リンクの終点交差点の先に接続されるリンクの識別番号、「統計リンク旅行時間」は、当該時刻区分に属する当該リンクのリンク旅行時間を統計処理した統計リンク旅行時間である。
【0034】
補正対象リンク記憶部205に蓄積される補正対象リンクデータは、リンク旅行時間の補正処理対象のリンクであることを表すデータであり、補正対象リンク抽出部214がリンクデータ記憶部201のリンクデータを検索し、その「フラグ」フィールドが「ON」のデータを抽出することによって取得される。補正対象リンクデータのレコードは、図2(e)に示すように、「No.」、「流入リンクID」、「流出リンクID」の各フィールドによって構成される。
【0035】
ここで、「No.」は、当該補正対象リンクデータのレコードの識別番号、「流入リンクID」は、当該リンクの識別番号、「流出リンクID」は、当該リンクの終点交差点の先に接続されるリンクの識別番号である。
【0036】
図示しない記憶部に蓄積される流出リンクデータは、補正対象リンクデータの「流入リンクID」により指定されるリンクの直進流出リンクおよび右折流出リンクを表すデータである。流出リンクデータのレコードは、図2(f)に示すように、「No.」、「流入リンクID」、「直進流出リンクID」、「右折流出リンクID」の各フィールドによって構成される。
【0037】
ここで、「No.」は、当該流出リンクデータのレコードの識別番号、「流入リンクID」は、当該リンクの識別番号、「直進流出リンクID」は、当該リンクの終点交差点の直進方向の先に接続されるリンクの識別番号、「右折流出リンクID」は、当該リンクの終点交差点の右折方向の先に接続されるリンクの識別番号である。
【0038】
補正時間記憶部206に蓄積される補正時間データは、補正対象リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間を補正するための補正時間を含んで構成される。補正時間データのレコードは、図2(g)に示すように、「No.」、「時刻区分」、「流入リンクID」、「流出リンクID」、「上流リンクID」、「補正時間」の各フィールドによって構成される。
【0039】
ここで、「No.」は、当該補正時間データのレコードの識別番号、「時刻区分」、「流入リンクID」、「流出リンクID」は、補正対象リンクまたはその上流リンクの統計旅行時間の同じフィールドのデータ、「上流リンクID」は、当該リンクの始点交差点の上流に接続されたリンクの識別番号、「補正時間」は、当該リンクのリンク旅行時間の補正時間である。
【0040】
続いて、図1、図2、および、この後に提示する図3以降の図面を参照して、交通情報管理装置21の各処理機能部における処理内容について詳しく説明する。
【0041】
図1において、プローブデータ収集部211は、カーナビ装置3のナビ処理装置31から送信されるプローブデータを受信し、その受信したプローブデータをプローブデータ記憶部202に蓄積する。なお、ナビ処理装置31は、プローブデータを、例えば、1秒ごとに取得するが、その取得したプローブデータを、いったん、ナビ処理装置31のプローブデータ記憶部318に蓄積し、その蓄積したプローブデータを、例えば、5分ごとにまとめて交通情報管理装置21へ送信する。
【0042】
リンク旅行時間算出部212は、プローブデータ記憶部202に蓄積された、ある車両4に搭載されたカーナビ装置3についてのプローブデータに含まれる「日時」、「緯度」、「経度」をトレースすることによって、その車両4が、あるリンク(流入リンク)に進入してから、そのリンクの終点交差点の先に接続されるリンク(流出リンク)に進入するまでの所要時間を、リンク旅行時間として取得する。
【0043】
図3は、リンク旅行時間算出処理の処理フローの例を示した図である。リンク旅行時間算出処理は、リンク旅行時間算出部212の機能を実現する処理であり、交通情報管理装置21の図示しないCPUによって実行される。
【0044】
CPUは、プローブデータ記憶部202に蓄積されたプローブデータに含まれるすべての車載器IDについてのループ処理を開始する(ステップS11)。
【0045】
次に、CPUは、プローブデータ記憶部202から当該車載器IDが付されたプローブデータを読み出し(ステップS12)、その読み出したプローブデータについて、マップマッチングを行い、その当該車載器IDを有するカーナビ装置3が搭載された車両4が走行中のリンクを同定する(ステップS13)。
【0046】
次に、CPUは、マップマッチングしたリンク上で車両4の位置の移動をトレースし、車両4がそのリンクに進入したときの「日時」と、そのリンクを出て、次のリンクに進入したときの「日時」と、に基づき、そのリンクのリンク旅行時間を算出し(ステップS14)、その算出したリンク旅行時間をリンク旅行時間記憶部203に蓄積する(ステップS15)。
【0047】
CPUは、すべての車載器IDについてステップS12〜ステップS15の処理を終えると、そのループ処理を終了する(ステップS16)。
【0048】
再び、図1を参照する。リンク旅行時間統計部213は、リンク旅行時間記憶部203に蓄積されたリンク旅行時間をそれぞれのリンクごと時刻区分ごとにソートし、そのそれぞれのリンクごと時刻区分ごとの平均のリンク旅行時間を算出し、算出した平均のリンク旅行時間を統計リンク旅行時間として統計旅行時間記憶部204に蓄積する。
【0049】
図4は、統計旅行時間算出処理の処理フローの例を示した図である。統計旅行時間算出処理は、リンク旅行時間統計部213の機能を実現する処理であり、交通情報管理装置21の図示しないCPUによって実行される。
【0050】
CPUは、0時00分から24時00分まで所定の時間間隔で区分されたすべての時刻区分についてループ処理を開始し(ステップS21)、さらに、すべての流入リンクIDと流出リンクIDとの組についてループ処理を開始する(ステップS22)。
【0051】
次に、CPUは、リンク旅行時間記憶部203からループ開始処理で指定されるそれぞれの時刻区分、流入リンクIDと流出リンクIDとの組に該当するすべてのレコードのリンク旅行時間を抽出し(ステップS23)、その抽出したリンク旅行時間の平均値を算出し(ステップS24)、その平均値を統計リンク旅行時間として統計旅行時間記憶部204に蓄積する(ステップS25)。
【0052】
次に、CPUは、流入リンクIDと流出リンクIDとの組についてのループ処理を終了し(ステップS26)、次いで、時刻区分についてのループ処理を終了する(ステップS27)。
【0053】
再び、図1を参照する。補正対象リンク抽出部214は、リンクデータ記憶部201に蓄積されているリンクデータを検索し、その「フラグ」フィールドが「ON」のデータを抽出することにより、リンク旅行時間の補正対象リンクを取得し、その取得した補正対象リンクを補正対象リンク記憶部205に蓄積する。なお、後記する補正時間算出処理において実際に補正の対象となるリンクは、ここで取得した補正対象リンクとその補正対象リンクの上流リンクである。
【0054】
図5は、補正対象リンク抽出処理の処理フローの例を示した図である。補正対象リンク抽出処理は、補正対象リンク抽出部214の機能を実現する処理であり、交通情報管理装置21の図示しないCPUによって実行される。
【0055】
CPUは、リンクデータ記憶部201のレコードID(「NO.」フィールド)についてのループ処理を開始する(ステップS41)。
【0056】
次に、CPUは、リンクデータ記憶部201から、そのレコードを順次読み出し(ステップS42)、その「フラグ」フィールドが「ON」であるか否かを判定する(ステップS43)。その判定で、「フラグ」フィールドが「ON」であったときには(ステップS43でYes)、そのレコードに含まれる流入リンクIDおよび流出リンクIDを補正対象リンク記憶部205に蓄積し(ステップS44)、「フラグ」フィールドが「ON」でなかったときには(ステップS43でNo)、ステップS44の処理をスキップする。
【0057】
CPUは、すべてのレコードIDについて、ステップS42〜ステップS44の処理を終えると、そのループ処理を終了する(ステップS45)。
【0058】
再び、図1を参照する。補正時間算出部215は、補正対象リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間を補正するための補正時間を算出し、その算出した補正時間を補正時間記憶部206に蓄積する。
【0059】
図6は、補正時間算出処理を説明するために用いる具体的な道路構成の例を示した図である。図6に示した上下方向の道路は、片側2車線、全4車線の道路で、交差点A、交差点B、交差点Cを有し、交差点Aには、右折待ち車線が設けられている。また、各交差点を結ぶ道路(すなわち、リンク)の傍に記された符号は、その道路のリンクIDを表し、矢印は、そのリンクの進行方向を表す。
【0060】
また、図6の交差点Aでは、直進方向および左折方向の車両は、順調に流れているが、右折待ち車線を先頭に右折渋滞(網掛け表示した部分)が生じ、その渋滞が交差点Bを越えて上流のリンクL103の途中まで続いているとする。すなわち、リンクL102およびL103では、左側車線は順調、右側車線は渋滞の状態にあるとする。
【0061】
このような渋滞が交差点Aで常習的に生じる場合には、交通情報センタ2の管理者は、リンクL102をあらかじめ補正対象リンクに指定しておくものとし、リンクデータ記憶部201の流入リンクがL102、流出リンクがL201のリンクデータの「フラグ」フィールドに「ON」のデータを設定しておく。
【0062】
図7は、補正時間算出処理の処理フローの例を示した図である。補正時間算出処理は、補正時間算出部215の機能を実現する処理であり、交通情報管理装置21の図示しないCPUによって実行される。
【0063】
CPUは、補正対象リンク記憶部205のレコードID(「NO.」フィールド)についてのループ処理を開始する(ステップS51)。
【0064】
次に、CPUは、補正対象リンク記憶部205から補正対象リンクデータのレコードを読み出し、さらに、リンクデータ記憶部201を参照して、その読み出したレコードに含まれる流入リンクIDによって指定されるリンクに対する流出リンクデータ(図2(f)参照)を作成する(ステップS52)。図6の場合、補正対象リンクデータは、流入リンクID:L102、流出リンクID:L201であり、流出リンクデータは、流入リンクID:L102、直進流出リンク:L101、右折流出リンク:L201である。
【0065】
なお、流出リンクの直進および右折判定には、リンクデータの「接続角度」のデータを利用する。例えば、直進判定をする場合には、その直進判定の閾値(例えば、30度)に設定し、接続角度の大きさがその閾値より小さい場合、直進接続と判断する。また、複数のリンクが直進接続リンクと判定された場合には、プローブカーの走行台数が多いリンクを直進接続リンクとする。その場合、プローブカーの走行台数を数えるには、リンク旅行時間記憶部203において、流入リンクIDと流出リンクIDとの組み合わせ別に車載器IDのデータ数を数えればよい。
【0066】
また、本実施形態では、左折のリンク旅行時間は、直進のリンク旅行時間とほぼ同じと考え、ここでは直進と右折のみを考慮する。
【0067】
次に、CPUは、リンクデータ記憶部201を参照して、前記流入リンクIDによって指定されるリンクに対する上流リンク(始点交差点に接続されるリンク)を抽出し、その上流リンクのうち直進接続リンクを選択する(ステップS53)。以下、その選択した直進接続リンクを、単に、上流リンクという。なお、図6の場合、上流リンクは、L103である。
【0068】
次に、CPUは、時刻区分についてのループ処理を開始する(ステップS54)。すなわち、補正時間は、それぞれの時刻区分ごとに算出することになる。
【0069】
次に、CPUは、統計旅行時間記憶部204を参照して、上流リンクの統計旅行時間を取得し(ステップS55)、さらに、上流リンクの順調車線のリンク旅行時間を算出する(ステップS56)。なお、上流リンクの順調車線のリンク旅行時間を算出する場合には、CPUは、プローブデータ記憶部202を参照して、そのプローブデータの「車載器ID」フィールドに着目して、当該上流リンクおよび流入リンク(図6の場合は、L103およびL102)を走行し、当該流入リンクの終点交差点(図6の場合は、交差点A)で直進または左折した車両4のプローブデータを抽出し、その抽出したプローブデータの「日時」フィールドのデータに基づき、当該上流リンクの順調車線のリンク旅行時間を算出する。
【0070】
次に、CPUは、次の(式1)に従って、上流リンクの補正時間を算出する(ステップS57)。
(上流リンクの補正時間)=(上流リンクの順調車線のリンク旅行時間)
−(上流リンクの統計リンク旅行時間) (式1)
【0071】
次に、CPUは、その算出した上流リンクの補正時間を補正時間記憶部206に格納する(ステップS58)。なお、補正時間を補正時間記憶部206に格納する場合には、「流入リンクID」フィールドには、当該上流リンクのIDを、「流出リンクID」フィールドには、当該流入リンクのIDを、「補正時間」フィールドには、ステップS57で算出した上流リンクの補正時間を設定する。図6の場合には、「流入リンクID」フィールドにはL103、「流出リンクID」フィールドにはL102、「上流リンクID」フィールドはNULLを設定する。
【0072】
次に、CPUは、プローブデータ記憶部202を参照して、右折渋滞全区間の合計リンク旅行時間を算出する(ステップS59)。ここで、右折渋滞全区間とは、車両4が当該上流リンクを走行し、当該流入リンクを走行し、右折し終えるまでの区間であり、右折渋滞を含む区間である。図6では、右折渋滞全区間は、リンクL103、リンクL102およびリンクL102からリンクL201へ右折する区間である。
【0073】
なお、右折渋滞全区間の合計リンク旅行時間を算出する場合には、CPUは、プローブデータ記憶部202を参照して、そのプローブデータの「車載器ID」フィールドに着目して、当該上流リンクおよび流入リンク(図6の場合は、L103およびL102)を走行し、当該流入リンクの終点交差点(図6の場合は、交差点A)で右折した車両4のプローブデータを抽出し、その抽出したプローブデータの「日時」フィールドのデータに基づき、右折渋滞全区間の合計リンク旅行時間を算出する。
【0074】
次に、CPUは、統計旅行時間記憶部204を参照して、流入リンクの統計旅行時間を算出し(ステップS60)、次の(式2)に従って、流入リンクの補正時間を算出する(ステップS61)。
(流入リンクの補正時間)=(右折渋滞全区間のリンク旅行時間)
−(上流リンクの順調車線のリンク旅行時間)
−(流入リンクの右折リンク旅行時間) (式2)
【0075】
次に、CPUは、その算出した流入リンクの補正時間を補正時間記憶部206に格納する(ステップS62)。なお、補正時間を補正時間記憶部206に格納する場合には、「流入リンクID」フィールドには、当該流入リンクのIDを、「流出リンクID」フィールドには、当該流出リンクのIDを、「補正時間」フィールドには、ステップS62で算出した流入リンクの補正時間を設定する。図6の場合には、「流入リンクID」フィールドにはL102、「流出リンクID」フィールドにはL201、「上流リンクID」フィールドはL103を設定する。
【0076】
次に、CPUは、すべての時刻区分についてステップS55〜S62の処理を終了すると、時刻区分についてのループ処理を終了する(ステップS63)。次いで、補正対象リンク記憶部205のレコードIDについてステップS52〜S63を終了すると、補正対象リンク記憶部205のレコードIDについてのループ処理を終了し(ステップS64)、補正時間算出処理を終了する。
【0077】
再び、図1を参照する。旅行時間配信部216は、カーナビ装置3から送信される要求に応じて、統計旅行時間記憶部204および補正時間記憶部206にそれぞれ記憶されている統計旅行時間データおよび補正時間データをカーナビ装置3へ配信する。
【0078】
続いて、図1、ならびに、この後に提示する図8および図11を参照して、ナビ処理装置31の各処理機能部の処理内容について詳しく説明する。
【0079】
プローブデータ取得部314は、ナビ処理装置31へ電源が供給され、その動作が開始すると、電源の供給が停止されるまで、所定の時間(例えば、1秒)ごとに、GPS受信機33により測位された緯度、経度および時刻のデータを、入出力制御部313を介して取得し、その取得した緯度、経度および時刻のデータをプローブデータとしてプローブデータ記憶部318に蓄積する。なお、プローブデータ記憶部318に蓄積されるプローブデータの構成は、交通情報管理装置21におけるプローブデータの構成(図2(a)参照)と同じである。
【0080】
データ送受信部311は、所定の時間間隔ごとに、あるいは、ドライバが入力装置34を介してプローブデータの送信指示を入力したときには、プローブデータ記憶部318に蓄積されたプローブデータを交通情報管理装置21へ送信する。また、データ送受信部311は、交通情報管理装置21から送信される統計旅行時間データおよび補正時間データを受信して、その受信した統計旅行時間データおよび補正時間データを、それぞれ、統計旅行時間記憶部315および補正時間記憶部316へ格納する。なお、統計旅行時間記憶部315および補正時間記憶部316にそれぞれ記憶される統計旅行時間データおよび補正時間データの構成は、交通情報管理装置21における統計旅行時間データおよび補正時間データの構成(図2(d)および(g)参照)と同じである。
【0081】
入出力制御部313は、GPS受信機33や入力装置34から入力されるデータを取得して、取得したデータを経路探索部312やプローブデータ取得部314へ受け渡すとともに、経路探索部312により探索された推奨経路などのデータを表示装置35に出力する。
【0082】
経路探索部312は、入出力制御部313を介して、GPS受信機33から入力される自車位置のデータ、および、入力装置34から入力される目的地のデータを取得し、リンクデータ記憶部317、統計旅行時間記憶部315および補正時間記憶部316を参照して、自車位置から目的地までの推奨経路を探索し、その探索した推奨経路を表示装置35に出力する。この場合、リンクデータ記憶部317に記憶されるリンクデータは、交通情報管理装置21のリンクデータ記憶部201のリンクデータの一部または全部を含み、そのリンクデータの構成(図2(a)参照)は、両者で同じである。
【0083】
図8は、経路探索処理の処理フローの例を示した図、図9は、経路探索処理で用いられるリンク履歴積算コストテーブルの構成の例を示した図である。なお、経路探索処理は、経路探索部312の機能を実現する処理であり、ナビ処理装置31の図示しないCPUによって実行される。また、図8の経路探索処理では、いわゆるダイクストラ法を利用している。
【0084】
図9に示すように、リンク履歴積算コストテーブルは、出発リンクから当該リンクまでの最小コスト経路および積算コストを表したデータであり、そのレコードは、「No.」、「流入リンクID」、「流出リンクID」、「積算コスト」の各フィールドによって構成される。
【0085】
ここで、「No.」は、当該リンク履歴積算コストデータのレコードの識別番号、「積算コスト」は、出発地から「流出リンクID」で指定されるリンクに到達する経路のうち最小コスト経路の積算コスト、「流入リンクID」は、その最小コスト経路に含まれ、前記「流出リンクID」で指定されるリンクの1つ前に接続されるリンクのリンクIDである。
【0086】
図8に示すように、ナビ処理装置31のCPUは、まず、リンク履歴積算コストテーブルおよび基準積算コストを初期化する(ステップS80)。ここでは、リンク履歴積算コストテーブルが初期化されると、その「流入リンクID」には、出発地を含むリンクのリンクIDが設定され、「流出リンクID」には、リンクデータ記憶部317において流入リンクが出発地のリンクであるときの流出リンクのリンクIDが設定され、「積算コスト」には、それぞれの「流出リンクID」および「流出リンクID」に基づき統計旅行時間記憶部315から得られる統計リンク旅行時間が設定されるものとする。また、併せて、基準積算コストには、ゼロが設定される。なお、基準積算コストは、そのコスト以下での経路探索が済んでいること示すループ処理用のパラメータである。
【0087】
次に、CPUは、リンク履歴積算コストテーブルの「流出リンクID」で指定されるリンクが目的地に到達するまでのループ処理を開始する(ステップS81)。
【0088】
次に、CPUは、リンク履歴積算コストテーブルを参照して、その積算コストが基準積算コスト以上で、かつ、最小であるレコードを抽出し、そのレコードに含まれる流出リンクIDを取得する(ステップS82)。このとき、CPUは、基準積算コストをその抽出したレコードに含まれる積算コストで更新する。
【0089】
次に、CPUは、前記取得した流出リンクIDを流入リンクIDとし、その流入リンクIDに対する流出リンクIDを取得し(ステップS83)、その新たな流入リンクIDと流出リンクIDとの組からなるリンク履歴候補データを生成する(ステップS84)。このとき、リンク履歴候補データは、流入リンクに対する流出リンクの数、すなわち、流入リンクの終点交差点から分岐するリンクの数だけ存在する。
【0090】
そこで、CPUは、リンク履歴候補データについてのループ処理を開始し(ステップS85)、まず、そのリンク履歴候補データ(流入リンクIDと流出リンクIDとの組)に対する積算コストを算出し、暫定リンク履歴積算コストテーブルのレコード生成する(ステップS86)。ここで、暫定リンク履歴積算コストテーブルのフィールド構成は、リンク履歴積算コストテーブルのフィールド構成と同じである。
【0091】
次に、CPUは、その算出した積算コストについて、補正の要否を判定し(ステップS87)、補正が必要な場合には(ステップS87でYes)、積算コストを補正し(ステップS88)、補正が必要でない場合には(ステップS87でNo)、ステップS88をスキップし、積算コストを補正しない。次に、CPUは、リンク履歴候補データについてのループ処理を終了する(ステップS89)。なお、補正の要否判定については、別途、詳しく説明する。
【0092】
次に、CPUは、リンク履歴積算コストテーブルに暫定リンク履歴積算コストテーブルを追加する(ステップS90)。ただし、その追加により、同じ流出リンクIDを持つ複数のレコードが生じた場合には、積算コストが大きい方のレコードを削除する。
【0093】
次に、CPUは、リンク履歴積算コストテーブルの流出リンクIDを参照し、その流出リンクIDに目的地のリンクIDと同じものがあり、かつ、その目的地のリンクまでの積算コストが基準積算コスト以下であったときには、ステップS81からのループ処理を終了する(ステップS91)。
【0094】
以上の処理により得られたリンク履歴積算コストテーブルにおいて、目的地の流出リンクに対する流入リンク、その流入リンクを流出リンクとしたときの流入リンクと、順次遡っていくことにより、出発地から目的地までの逆経路を得ることができ、その順経路は、出発地から目的地までの最小コスト経路となる
【0095】
ここで、積算コスト補正の要否判定(ステップS87)および積算コストの補正(ステップS88)について説明しておく。CPUは、積算コスト補正の要否判定および積算コストの補正を次のようにして行う(処理フロー図の図示省略)。
【0096】
CPUは、補正時間記憶部316を参照して、当該リンク履歴候補データ(流入リンクIDと流出リンクIDとの組)と同じ組み合わせの流入リンクIDと流出リンクIDを有する補正時間データがあるか否かを判定する(ステップS01)。その判定の結果、当該リンク履歴候補データと同じ組み合わせを有する補正時間データがあった場合には、CPUは、その補正データに含まれる上流リンクIDおよび補正時間を取得する(ステップS02)。さらに、CPUは、リンク履歴積算コストテーブルを参照して、当該流入リンクを流出リンクとする場合の流入リンクのリンクIDを取得し(ステップS03)、そのリンクIDが先に取得した上流リンクIDと同じであるか否かを判定し(ステップS04)、同じであった場合には、それまでに得られていた積算コストに補正コストを加算することにより、積算コストの補正を行う(ステップS05)。また、それ以外の場合には、積算コストの補正を行わない。
【0097】
図6を参照して、以上の処理を例示する。ここでは、「流入リンクID」、「流出リンクID」、「上流リンクID」、「補正時間」が、それぞれ、L102、L201、L103、x秒であるような補正時間データが、補正時間記憶部316に格納され、さらに、それまでの経路探索処理により、リンク履歴積算コストテーブルの中に、L103、L102という「流入リンクID」、「流出リンクID」の組のデータが作成済であるものとする。さらに、この状態で、リンク履歴候補データについてのループ(ステップS85)で、リンク履歴候補データの「流入リンクID」、「流出リンクID」として、L102、L201が選択された場合を想定する。
【0098】
この場合には、当該リンク履歴候補データと同じ組み合わせの流入リンクIDと流出リンクIDを有する補正時間データがあるので(ステップS01でYes)、その上流リンクIDであるL103と補正時間であるx秒を取得する(ステップS02)。そして、リンク履歴積算コストテーブルを参照して、その流出リンクIDにリンクL102があり、また、その流入リンクが前記の上流リンクと同じL103であるので(ステップS04でYes)、積算コストの補正を行う(ステップS05)。
【0099】
なお、以上の処理において、補正時間データの「上流リンクID」にNULLが格納されていた場合には、その上流リンクとの比較判定(ステップS04)は、常に成立するものとする。こうすることにより、補正対象リンクの上流リンクにおける積算コスト補正の要否判定(ステップS87)および積算コストの補正(ステップS88)も可能になる。
【0100】
図10は、表示装置35に表示する渋滞表示画面の例を示した図である。ナビ処理装置31のCPUは、補正時間記憶部316を参照することにより、どのリンクで右折渋滞が発生するかを容易に検知することができる。そこで、車両4がそのリンクの近くに差し掛かったときには、CPUは、そのリンク(L102)およびその上流リンク(L103)について、統計旅行時間記憶部204に記憶されている統計リンク旅行時間を補正した上で、そのリンクの車両の走行速度を算出し、算出した速度に応じて、適宜、図10に示すような表示画面351を表示する。
【0101】
表示画面351では、道路の傍に右折渋滞表示352を行う。本実施形態では、その右折渋滞表示352は、1リンク(L102)だけの右折渋滞表示だけでなく、その右折渋滞が上流のリンク(L103)に続いていることを明示した表示にすることができる。なお、その表示に際して、リンクの速度が10km/時未満であれば、リンクまたは矢印を赤色表示にし、25km/時未満であれば、リンクまたは矢印を黄色表示にしてもよい。また、表示画面351には、右折渋滞が連続区間で渋滞している旨を表すメッセージ353を表示してもよい。また、そのメッセージは、図示しないスピーカなどによって音声で出力してもよい。
【0102】
以上のような表示を行うことにより、カーナビ装置3を搭載した車両4のドライバは、右折渋滞を早めに知ることができるので、渋滞に巻き込まれる前に車線変更などをして、その渋滞を避けることが可能になる。
【0103】
なお、以上に説明した実施形態においては、右折渋滞時のリンクコストの補正について説明したが、同様の説明は左折渋滞にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施形態に係るカーナビゲーションシステムの機能ブロックの構成の例を示した図。
【図2】交通情報管理装置の記憶装置に記憶されるデータの構成の例を示した図。
【図3】リンク旅行時間算出処理の処理フローの例を示した図。
【図4】統計旅行時間算出処理の処理フローの例を示した図。
【図5】補正対象リンク抽出処理の処理フローの例を示した図。
【図6】補正時間算出処理を説明するために用いる具体的な道路構成の例を示した図。
【図7】補正時間算出処理の処理フローの例を示した図。
【図8】経路探索処理の処理フローの例を示した図。
【図9】経路探索処理で用いられるリンク履歴積算コストテーブルの構成の例を示した図。
【図10】表示装置に表示する渋滞表示画面の例を示した図。
【符号の説明】
【0105】
1 カーナビゲーションシステム
2 交通情報センタ
3 カーナビ装置
4 車両
5 通信ネットワーク
6 基地局
21 交通情報管理装置
22 通信装置
31 ナビ処理装置
32 通信装置
33 GPS受信機
34 入力装置
35 表示装置
201 リンクデータ記憶部
202 プローブデータ記憶部
203 リンク旅行時間記憶部
204 統計旅行時間記憶部
205 補正対象リンク記憶部
206 補正時間記憶部
211 プローブデータ収集部
212 リンク旅行時間算出部
213 リンク旅行時間統計部
214 補正対象リンク抽出部
215 補正時間算出部
216 旅行時間配信部
311 データ送受信部
312 経路探索部
313 入出力制御部
314 プローブデータ取得部
315 統計旅行時間記憶部
316 補正時間記憶部
317 リンクデータ記憶部
318 プローブデータ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のプローブデータから得られる車両ごとのリンク旅行時間を蓄積したリンク旅行時間記憶部と、前記リンク旅行時間記憶部に蓄積されたリンク旅行時間を統計して得られたリンクごとの統計リンク旅行時間を蓄積した統計旅行時間記憶部と、を備えた交通情報管理装置と、
前記交通情報管理装置から統計リンク旅行時間の提供を受けて、その統計リンク旅行時間に基づき現在地から目的地までの最小コスト経路を探索して表示装置に表示するカーナビゲーション装置と、
を含んで構成されたカーナビゲーションシステムで行われるカーナビゲーション方法であって、
前記交通情報管理装置は、
所定の右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間を補正する補正時間を、前記統計旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの統計リンク旅行時間と、前記リンク旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの順調車線を走行した車両のリンク旅行時間と、前記リンク旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの渋滞車線を走行した車両のリンク旅行時間と、に基づき算出し、
前記算出した右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間の補正時間をカーナビ装置へ配信し、
前記カーナビゲーション装置は、
前記現在地から目的地までの最小コスト経路を探索するときには、前記配信された右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間の補正時間により、前記交通情報管理装置から事前に提供された前記統計リンク旅行時間を補正すること
を特徴とするカーナビゲーション方法。
【請求項2】
車両のプローブデータから得られる車両ごとのリンク旅行時間を蓄積したリンク旅行時間記憶部と、前記リンク旅行時間記憶部に蓄積されたリンク旅行時間を統計して得られたリンクごとの統計リンク旅行時間を蓄積した統計旅行時間記憶部と、を備えた交通情報管理装置と、
前記交通情報管理装置から統計リンク旅行時間の提供を受けて、その統計リンク旅行時間に基づき現在地から目的地までの最小コスト経路を探索して表示装置に表示するカーナビゲーション装置と、
を含んで構成されたカーナビゲーションシステムであって、
前記交通情報管理装置は、
所定の右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間を補正する補正時間を、前記統計旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの統計リンク旅行時間と、前記リンク旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの順調車線を走行した車両のリンク旅行時間と、前記リンク旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの渋滞車線を走行した車両のリンク旅行時間と、に基づき算出し、
前記算出した右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間の補正時間をカーナビ装置へ配信し、
前記カーナビゲーション装置は、
前記現在地から目的地までの最小コスト経路を探索するときには、前記配信された右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間の補正時間により、前記交通情報管理装置から事前に提供された前記統計リンク旅行時間を補正すること
を特徴とするカーナビゲーションシステム。
【請求項3】
車両のプローブデータから得られる車両ごとのリンク旅行時間を蓄積したリンク旅行時間記憶部と、前記リンク旅行時間記憶部に蓄積されたリンク旅行時間を統計して得られたリンクごとの統計旅行時間を蓄積した統計旅行時間記憶部と、を備えた交通情報管理装置であって、
前記交通情報管理装置は、
所定の右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間を補正する補正時間を、前記統計旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの統計リンク旅行時間と、前記リンク旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの順調車線を走行した車両のリンク旅行時間と、前記リンク旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの渋滞車線を走行した車両のリンク旅行時間と、に基づき算出し、
前記算出した右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間の補正時間をカーナビ装置へ配信すること
を特徴とする交通情報管理装置。
【請求項4】
車両のプローブデータから得られる車両ごとのリンク旅行時間を蓄積したリンク旅行時間記憶部と、前記リンク旅行時間記憶部に蓄積されたリンク旅行時間を統計して得られたリンクごとの統計旅行時間を蓄積した統計旅行時間記憶部と、を備え、
所定の右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間を補正する補正時間を、前記統計旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの統計リンク旅行時間と、前記リンク旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの順調車線を走行した車両のリンク旅行時間と、前記リンク旅行時間記憶部から得られる前記右折渋滞リンクおよびその上流リンクの渋滞車線を走行した車両のリンク旅行時間と、に基づき算出し、前記算出した右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間の補正時間をカーナビ装置へ配信する交通情報管理装置から前記統計リンク旅行時間の提供を受けて、その統計リンク旅行時間に基づき現在地から目的地までの最小コスト経路を探索して表示装置に表示するカーナビゲーション装置であって、
前記現在地から目的地までの最小コスト経路を探索するときには、前記提供を受けた前記統計リンク旅行時間を前記配信された右折渋滞リンクおよびその上流リンクのリンク旅行時間の補正時間により補正すること
を特徴とするカーナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−180500(P2009−180500A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16980(P2008−16980)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】