カーボンナノチューブ解析方法及び試料解析方法
【課題】 カーボンナノチューブ集合体を形成する各単層カーボンナノチューブの特性を効率的且つ精度良く測定して解析する。
【解決手段】 バンドル状のカーボンナノチューブ集合体とシクロアミロース溶液とを混合し、超音波処理を行うことで、単層カーボンナノチューブが分散して含まれるカーボンナノチューブ含有溶液を生成する。カーボンナノチューブ含有溶液を濾過してから回転している基板に滴下し、乾燥させることでカーボンナノチューブ薄膜を形成する。カーボンナノチューブ薄膜に均等に分散する単層カーボンナノチューブに対してラマン顕微分光方法を用いて単層カーボンナノチューブの特性を解析する。
【解決手段】 バンドル状のカーボンナノチューブ集合体とシクロアミロース溶液とを混合し、超音波処理を行うことで、単層カーボンナノチューブが分散して含まれるカーボンナノチューブ含有溶液を生成する。カーボンナノチューブ含有溶液を濾過してから回転している基板に滴下し、乾燥させることでカーボンナノチューブ薄膜を形成する。カーボンナノチューブ薄膜に均等に分散する単層カーボンナノチューブに対してラマン顕微分光方法を用いて単層カーボンナノチューブの特性を解析する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドル状のカーボンナノチューブ集合体から複数のカーボンナノチューブを分離させて溶液中に分散させたカーボンナノチューブ含有溶液を生成し、分散したカーボンナノチューブのチューブ直径及び構造と云った特性を解析するカーボンナノチューブ解析方法に関し、さらにはカーボンナノチューブ以外にも、水に対する溶解度が10-4mol/L以下である試料の特性を効率的に解析可能とした試料解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブとして市販されているバルク体は、図19に示すように複数の単層カーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon Nano Tube:SWCNT)が束になっており、このようなバルク体(以下、カーボンナノチューブ集合体と称す)を形成する要素である各単層カーボンナノチューブの特性を解析することは、カーボンナノチューブ集合体の機能及び性質等を特定する上で非常に重要である。しかし、カーボンナノチューブ集合体のままでは、個々の単層カーボンナノチューブの特性を測定できないので、水との親和性が悪い試料であるカーボンナノチューブ集合体を各単層カーボンナノチューブへ分離する必要がある。
【0003】
従来の分離方法には、強酸処理と超音波処理とを組み合わせて行う方法があり(特許文献1参照)、例えば図20(a)に示すように、強酸溶液としてドデシル硫酸ナトリウム溶液にカーボンナノチューブ集合体を加えて超音波処理を行い可溶化することが下記の非特許文献1で記載されている。なお、非特許文献1では、可溶化した単層カーボンナノチューブを含む溶液(以下、カーボンナノチューブ含有溶液と称す)に対して蛍光分光法を用いて測定し、各単層カーボンナノチューブの特性を平均値として解析評価することも記載されている。
【0004】
また、図20(b)に示すように、カーボンナノチューブ含有溶液を基板上に滴下して薄膜を形成することが開示されている(特許文献1、2及び非特許文献2参照)。例えば特許文献1では、5mm角にカットしたSiウエハー(基板)上にカーボンナノチューブ含有溶液を約1μL滴下して乾燥し、探針として先端の曲率半径が20nmのSi製のカンチレバーを有する原子間力顕微鏡(AFM)で測定を行うことが記載されている。さらに非特許文献2では、形成した薄膜に蛍光分光法で薄膜に含まれる単層カーボンナノチューブの特性を解析することが開示されている。
【0005】
なお、非特許文献3には、カーボンナノチューブ集合体から単層カーボンナノチューブを分離するのではなく、基板に1本の単層カーボンナノチューブを付着して成長させ、成長した1本の単層カーボンナノチューブが存在する位置をAFMで特定し、特定した位置でラマン分光法のマッピング測定を行い、単層カーボンナノチューブの構造として配向(カイラリティ)、及び直径を解析することが開示されている。
【特許文献1】特開2004−2156号公報
【特許文献2】特開2004−167667号公報
【非特許文献1】「Science」誌、vol.297 26 JULY 2002、P593〜P596
【非特許文献2】「Science」誌、vol.301 5 SEPTEMBER 2003、P1354〜P1356
【非特許文献3】「Nanotechnology」誌(Institute of Physics Publishing)、Nanotechnology15(2004)P562〜P567
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に係る解析方法は、カーボンナノチューブ含有溶液に対して測定及び解析を行うが、カーボンナノチューブ含有溶液に含まれる各単層カーボンナノチューブは溶液中を移動して位置が定まらないので、各単層カーボンナノチューブを1本単位で測定して解析することはできない。
【0007】
また、図21は、非特許文献1で生成されたカーボンナノチューブ含有溶液を用いて特許文献1、2及び非特許文献2で記載された方法により基板上に形成された薄膜の一部を厚み方向から見た場合の拡大断面図である。カーボンナノチューブ含有溶液を薄膜化することにより、含有される各単層カーボンナノチューブの位置は定まる。しかし、薄膜を形成する成分であるドデシル硫酸ナトリウムは、界面活性剤として石鹸的な性質を有するため均一な膜厚で薄膜を形成できず、図示するような膜不形成部分が膜全体の各所に散在すると共に、膜が形成された部分の中に単層カーボンナノチューブが含まれないものも生じる。
【0008】
そのため、形成された薄膜は、単層カーボンナノチューブの分散が不均等であると共に、膜自体も均一な膜厚を有する連続した完全薄膜ではなく、不完全薄膜になっている。このような不完全薄膜では膜中に含まれる単層カーボンナノチューブの位置を特定して効率的な測定を行うことが困難になると云う問題がある。
【0009】
例えば、特許文献1で記載されたようにAFMのカンチレバーで薄膜の凹凸を測定しても、薄膜の存在を確認した部分に単層カーボンナノチューブが含まれないこともあるため、単層カーボンナノチューブの位置をAFMで特定することは困難になる。また、非特許文献2で用いる蛍光分光法として光を照射する箇所を微小にした顕微蛍光分光方法を用いる場合は、単層カーボンナノチューブの分散が不均等であるため、単層カーボンナノチューブの位置を特定して光を照射することが困難になる。
【0010】
一方、カーボンナノチューブの他にも、水との親和性が悪い試料を解析対象にすることがあり、試料が固体、液体、気体であるに関わらず、試料を構成する粒子レベルで解析を行う場合、従来の解析方法では上述したカーボンナノチューブの場合と同様に、試料を解析に適した粒子状態へ均一に分離することが困難であった。
【0011】
本発明は、斯かる問題に鑑みてなされたものであり、膜不形成部分が存在せず、単層カーボンナノチューブが膜中に一定の密度で含まれる薄膜を形成できるカーボンナノチューブ含有溶液を生成して、効率的な解析を行えるようにしたカーボンナノチューブ解析方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、薄膜を形成する際に用いる基板の影響を排除し、さらに、様々な条件で効率的な測定解析を行えるようにしたカーボンナノチューブ解析方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、カーボンナノチューブ以外の水との親和性が悪い試料を粒子レベルで解析する場合に、精度の良い解析を効率的に行えるようにした試料解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、第1発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、複数のカーボンナノチューブが束になったカーボンナノチューブ集合体と糖類溶液とを混合し、カーボンナノチューブ集合体を含む糖類溶液に超音波を投射してカーボンナノチューブ集合体から分離した複数のカーボンナノチューブが含むカーボンナノチューブ含有溶液を生成し、生成したカーボンナノチューブ含有溶液を板上に滴下又は塗布し、板上のカーボンナノチューブ含有溶液を乾燥してカーボンナノチューブ含有膜を形成し、形成したカーボンナノチューブ含有膜に含まれるカーボンナノチューブの特性を分光装置により解析することを特徴とする。
【0013】
第1発明にあっては、強酸溶液ではなく、糖類溶液を用いてカーボンナノチューブ含有溶液を生成するので、界面活性剤的な性質がなくなると共に、糖類溶液の性質により糖類溶液の構成分子がカーボンナノチューブ集合体から分離した各カーボンナノチューブを取り囲み、各カーボンナノチューブが均等に分散したカーボンナノチューブ含有溶液を生成し、このようなカーボンナノチューブ含有溶液で膜(カーボンナノチューブ含有膜)を形成することで、膜中にカーボンナノチューブが一定の密度で分散して膜不形成部分が存在しない全体的に均一な膜厚を有する膜を得ることができる。その結果、カーボンナノチューブの位置が固定されて分光装置で膜に含まれるカーボンナノチューブを個別に解析することが容易になる。
【0014】
また、第2発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、前記糖類溶液は、シクロアミロース系溶液であることを特徴とする。
第2発明にあっては、糖類溶液として用いられるシクロアミロース系溶液は水への溶解性が高く、その溶液は低温でも沈殿が生じない上に包接能力があるので、カーボンナノチューブ集合体から分離した各カーボンナノチューブを取り囲んで各カーボンナノチューブを均等に分散できると共に、膜不形成部分が生じることなく連続した膜の形成に貢献できる。なお、シクロアミロース系溶液には、シクロアミロース溶液は勿論のこと、シクロアミロース誘導体の溶液(水溶液)も含まれる。
【0015】
さらに、第3発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、生成したカーボンナノチューブ含有溶液を遠心分離又はフィルターで濾過してから板上に滴下又は塗布することを特徴とする。
第3発明にあっては、遠心分離又はフィルターによる濾過により、溶液中に含まれる不純物が排除されて解析結果に不純物の影響が出ないようにできる。
【0016】
さらにまた、第4発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、板上に塗布又は滴下されたカーボンナノチューブ含有溶液をスピンコートすることを特徴とする。
第4発明にあっては、スピンコートすることで一段と均一な膜厚のカーボンナノチューブ含有膜を形成できる。なお、スピンコートの方法として、回転している板に塗布又は滴下すること、塗布又は滴下してから板を回転させることのいずれを適用してもよい。
【0017】
第5発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、板上に形成したカーボンナノチューブ含有膜を剥離し、剥離したカーボンナノチューブ含有膜と部分的に接することが可能な試料台に該カーボンナノチューブ含有膜を載置して前記分光装置により解析することを特徴とする。
第5発明にあっては、カーボンナノチューブ含有膜を部分的に接する試料台に載置するので、カーボンナノチューブ含有膜は一部のみで試料台と接触することになり、接触していない箇所においてはカーボンナノチューブ含有膜のみとなることから、カーボンナノチューブ含有膜の下方に位置する材質の影響を排除して、より高精度な解析を行えるようになる。
【0018】
第6発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、前記分光装置は、カーボンナノチューブ含有膜へ光を照射する箇所を移動し、光の照射により生じた光を測定して、カーボンナノチューブ含有膜に含まれるカーボンナノチューブの位置を特定し、特定した位置に対して解析を行うことを特徴とする。
第6発明にあっては、光を照射する箇所を移動して測定を行うと云う照射位置に対応させたマッピング測定を行うことによりカーボンナノチューブの位置を特定するので、測定対象エリアを絞りこんで一段と効率的な測定及び解析を行えるようになる。
【0019】
第7発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、前記分光装置は、前記特定した位置に対して照射する光の波長を変化し、変化した波長毎に解析を行うことを特徴とする。
第7発明にあっては、特定したカーボンナノチューブが存在する位置に対して、照射する光の波長を変化して波長毎に解析を行うので、共鳴効果を利用した励起波長に対応するカーボンナノチューブを選択的に観察できるようになる。
【0020】
第8発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、前記分光装置は、ラマン分光装置、ラマン顕微分光装置、蛍光分光装置、蛍光顕微分光装置、ホトルミネッセンス分光装置、カソードヅミネッセンス分光装置、赤外吸収分光装置、顕微赤外吸収分光装置、可視紫外吸収分光装置、顕微可視紫外吸収分光装置、蛍光X線分光装置、表面増強ラマン分光装置、表面増強赤外分光装置、近接場分光装置、又はX線光電子分光装置のいずれか1つであることを特徴とする。
第8発明にあっては、各種分光装置、又は各種顕微分光装置のいずれかで測定及び解析を行うことにより多様な解析を行えるようになり、様々な波長の光でカーボンナノチューブの特定を解析できる。
【0021】
第9発明に係る試料解析方法は、水に対する溶解度が10-4mol/L以下である試料と糖類溶液とを混合して試料含有溶液を生成し、生成した試料含有溶液を板上に滴下又は塗布し、板上の試料含有溶液を乾燥して試料含有物を形成し、形成した試料含有物に含まれる試料の特性を分光装置により解析することを特徴とする。
【0022】
第9発明にあっては、水に対する溶解度が10-4mol/L以下であると云う水との親和性が悪い試料を、糖類溶液に混合して試料含有溶液を生成するので、糖類溶液の特性により試料含有溶液中に試料が散らばった状態になる。また、生成した試料含有溶液より試料含有物を形成するので、固体である試料含有物の中に解析対象となる試料の位置が固定されることになり、分光装置で所定の波長を有する光を位置の定まった試料へ確実に照射でき、安定した試料解析を効率的に行える。なお、水に対する溶解度が10-4mol/L以下である試料としては、球状タンパク質、分子量の大きい医薬品、疎水基を多く持つ有機分子などが挙げられる。
【0023】
第10発明に係る試料解析方法は、試料は、複数の試料構成粒子の凝集体であり、試料を混合した糖類溶液に超音波を投射して、凝集体から分離した複数の試料構成粒子を含む試料含有溶液を生成することを特徴とする。
第10発明にあっては、試料を混合した糖類溶液に超音波を照射するので、凝集体である試料は超音波の威力により複数の試料構成粒子に分離し、分離した各試料構成粒子は糖類溶液の構成分子で取り囲みやすくなる。その結果、試料構成粒子が均一に分散した状態の試料含有溶液を生成でき、従来の方法では解析するのが困難であった試料に対しても、良好に試料解析を行うことができる。
【0024】
第11発明に係る試料解析方法は、試料は、複数の試料構成粒子の凝集体であり、試料を混合した糖類溶液を加熱して、凝集体から分離した複数の試料構成粒子を含む試料含有溶液を生成することを特徴とする。
第11発明にあっては、試料を混合した糖類溶液を加熱するので、凝集体である試料は加熱による熱エネルギーを受けて複数の試料構成粒子に分離し、分離した各試料構成粒子は糖類溶液の構成分子で取り囲みやすくなる。そのため、試料構成粒子が均一に分散した状態の試料含有溶液を生成でき、良好に試料解析を行うことができる。
【0025】
第12発明に係る試料解析方法では、試料は、複数の試料構成粒子の凝集体であり、試料を複数の試料構成粒子に分離することが可能な溶媒と試料とを混合して、凝集体から分離した複数の試料構成粒子を含む中間生成液を生成し、生成した中間生成液と糖類溶液とを混合攪拌して、試料構成粒子を含む糖類溶液相と溶媒相とに相分離した相分離溶液を生成し、生成した相分離溶液の糖類溶液相から試料構成粒子を含む糖類溶液を取り出して試料含有溶液を生成することを特徴とする。
【0026】
第12発明にあっては、複数の試料構成粒子に分離可能な溶媒に試料を混合するので、凝集体である試料は溶媒により複数の試料構成粒子に分離する。また、分離した複数の試料構成粒子を含む中間生成液と糖類溶液とを混合攪拌するので、中間生成液に含まれる試料構成粒子が糖類溶液の構成分子に取り込まれて糖類溶液側へ抽出される。さらに、中間生成液のベースとなる溶媒と糖類溶液の両者は混ざり合わないことから、攪拌により溶媒相と糖類溶液相に相分離し、相分離した一方の糖類溶液だけを取り出せることができ、また、取り出した糖類溶液には抽出された試料構成粒子が含まれることから、超音波を発生する機器及び加熱機器が無い場合でも、解析に適した試料含有溶液を生成できる。
【0027】
第13発明に係る試料解析方法では、前記糖類溶液は、シクロアミロース系溶液であることを特徴とする。
第13発明にあっては、糖類溶液に用いるシクロアミロース系溶液は水への溶解性が高く、その溶液は低温でも沈殿が生じない上に包接能力があるため、試料から分離した試料構成体(試料構成粒子)をシクロアミロース系溶液の要素分子で取り囲み、均等に試料構成粒子を分散できる。なお、シクロアミロース系溶液には、シクロアミロース溶液以外にもシクロアミロース誘導体の溶液(水溶液)も含まれる。
【0028】
第14発明に係る試料解析方法は、生成した試料含有溶液を遠心分離又はフィルターで濾過してから板上に滴下又は塗布することを特徴とする。
第14発明にあっては、遠心分離又はフィルターによる濾過により、溶液中に含まれる不純物が排除されるので、試料の解析を良好に行える。
【0029】
第15発明に係る試料解析方法は、板上に塗布又は滴下された試料含有溶液をスピンコートすることを特徴とする。
第15発明にあっては、スピンコートすることで形成する試料含有物の厚み寸法を均一にでき、分光装置による光の照射も行いやすくなり、特に試料含有物を膜状に形成するときは、試料含有物を均一な膜厚にでき好適である。
【0030】
第16発明に係る試料解析方法は、板上に形成した試料含有物を剥離し、剥離した試料含有物と部分的に接することが可能な試料台に該試料含有物を載置して前記分光装置により解析することを特徴とする。
第16発明にあっては、載置物と部分的に接する形状の試料台に、形成した試料含有物を載置するので、試料含有物における試料台と接していない箇所では、分光装置が光を照射しても試料台の影響が発生しなくなり、高精度に解析を行える。
【0031】
第17発明に係る試料解析方法は、前記分光装置は、試料含有物へ光を照射する箇所を移動し、光の照射により生じた光を測定して、試料含有物に含まれる試料の位置を特定し、特定した位置に対して解析を行うことを特徴とする。
第17発明にあっては、光を照射する箇所を移動するので、試料含有物を照射位置に対応して測定することになり、試料含有物に含まれる試料を一段と効率的に解析できる。
【0032】
第18発明に係る試料解析方法は、前記分光装置は、前記特定した位置に対して照射する光の波長を変化し、変化した波長毎に解析を行うことを特徴とする。
第18発明にあっては、特定した位置に対して照射する光の波長を変化して波長毎に解析を行うので、共鳴効果を利用した励起波長に対応する試料を選択的に観察できるようになり、試料含有物に含まれる試料が重複的に存在しても解析を行える。
【0033】
第19発明に係る試料解析方法は、前記分光装置は、ラマン分光装置、ラマン顕微分光装置、蛍光分光装置、蛍光顕微分光装置、ホトルミネッセンス分光装置、カソードヅミネッセンス分光装置、赤外吸収分光装置、顕微赤外吸収分光装置、可視紫外吸収分光装置、顕微可視紫外吸収分光装置、蛍光X線分光装置、表面増強ラマン分光装置、表面増強赤外分光装置、近接場分光装置、又はX線光電子分光装置のいずれか1つであることを特徴とする。
第19発明にあっては、各種分光装置、又は各種顕微分光装置のいずれかで測定及び解析を行うので、試料に応じて光学的な解析を多様な形態で行える。
【発明の効果】
【0034】
第1発明にあっては、糖類溶液をベースとしたカーボンナノチューブ含有溶液で膜を形成するため、カーボンナノチューブが一定の密度で分散して膜厚が全体的に均一なカーボンナノチューブ含有膜を形成でき、形成した膜中に含まれる自由な移動を規制されたカーボンナノチューブに対して良好な測定及び解析を行える。
【0035】
第2発明にあっては、糖類溶液としてシクロアミロース系溶液を用いることにより、カーボンナノチューブが均等に分散したカーボンナノチューブ含有溶液を生成できると共に、解析に適したカーボンナノチューブ含有膜の形成に貢献できる。
第3発明にあっては、遠心分離又はフィルターによる濾過により、解析に対して不純物の影響が生じることを排除できる。
【0036】
第4発明にあっては、スピンコートすることで一段と均一な膜厚のカーボンナノチューブ含有膜を形成できる。
第5発明にあっては、カーボンナノチューブ含有膜と試料台との接触を部分的にして、カーボンナノチューブ含有膜の下方に位置する材質の影響を排除し、より高精度な解析を行える。
【0037】
第6発明にあっては、照射位置に対応させたマッピング測定によりカーボンナノチューブの位置を特定し、一段と効率的な測定及び解析を行える。
第7発明にあっては、照射する光の波長を変化して波長毎に解析を行うことで、共鳴効果を利用した測定を行い、カーボンナノチューブ含有膜に含まれるカーボンナノチューブを選択的に観察できる。
第8発明にあっては、各種分光装置、又は各種顕微分光装置のいずれかで測定及び解析を行うことにより多様な解析を行える。
【0038】
第9発明にあっては、水との親和性が悪い試料を糖類溶液に混合して試料含有溶液を生成するので、溶液中に試料が散らばった状態の試料含有溶液を生成でき、また、試料含有溶液より試料含有物を形成するので、解析対象となる試料の位置を固体の試料含有物中に固定でき、分光装置による解析を容易に行える。
【0039】
第10発明にあっては、試料を混合した糖類溶液に超音波を照射するので、凝集体の試料を効率的に複数の試料構成粒子に分離できると共に、試料構成粒子が分離することで糖類溶液の構成分子で試料構成粒子を取り囲み、均一に試料構成粒子が分散した試料含有溶液を生成できる。
【0040】
第11発明にあっては、試料を混合した糖類溶液を加熱するので、凝集体である試料を効率良く複数の試料構成粒子に分離でき、分離した各試料構成粒子を糖類溶液の構成分子で取り囲んで解析に好適な試料含有溶液を生成できる。
【0041】
第12発明にあっては、複数の試料構成粒子に分離可能な溶媒に試料を混合するので、凝集体の試料を試料構成粒子に分離でき、また、分離した試料構成粒子を含む中間生成液と糖類溶液とを混合攪拌するので、中間生成液に含まれる試料構成粒子が糖類溶液の構成分子に取り込まれて糖類溶液側へ抽出でき、相分離した溶液から糖類溶液だけを取り出して解析に好適な試料含有溶液を容易に生成できる。
【0042】
第13発明にあっては、糖類溶液としてシクロアミロース系溶液を用いるので、均一に試料が散らばった状態の試料含有溶液を生成できる。
第14発明にあっては、遠心分離又はフィルターによる濾過により、溶液中に含まれる不純物を排除できる。
第15発明にあっては、スピンコートすることで形成する試料含有物の厚み寸法を均一にでき、解析対象を分光装置による光の照射も行いやすい形態にできる。
【0043】
第16発明にあっては、載置物と部分的に接する形状の試料台に、形成した試料含有物を載置するので、試料台の影響を排除して高精度に解析を行える。
第17発明にあっては、光を照射する箇所を移動するので、照射位置に対応付けた効率的な解析を実現できる。
第18発明にあっては、特定した位置に対して照射する光の波長を変化して波長毎に解析を行うので、共鳴効果を利用した励起波長に対応する試料を選択的に観察できる。
第19発明にあっては、各種分光装置、又は各種顕微分光装置のいずれかで測定及び解析を行うので、光学的に多様な解析を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図1は、本発明の第1実施形態に係るカーボンナノチューブ解析方法の処理手順を示す第1フローチャートであり、本発明に係る方法はカーボンナノチューブ集合体から分離した複数の単層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ含有溶液によりカーボンナノチューブ薄膜を形成し、このカーボンナノチューブ薄膜を測定対象としてラマン顕微分光法を用いて測定し、単層カーボンナノチューブの特性を解析するものである。本発明はカーボンナノチューブ集合体と糖類溶液とを混合してカーボンナノチューブ集合体を可溶化することを特徴とする。本実施形態では、糖類溶液として多糖類に属するシクロアミロース溶液を用いており、シクロアミロース分子の化学式を下記に示す。なお、化学式中のnは、15から数百の整数である。
【0045】
【化1】
【0046】
シクロアミロースは15〜数百個のブドウ糖が環状に繋がったα−1,4−グルカンであり、ヘリックス構造の内側に立体的で奥行きのある空洞部分を有し、しかも様々に分子形態(コンホメーション)が変化する柔らかい構造をしている。シクロアミロースは、カーボンナノチューブ集合体から分離した各単層カーボンナノチューブの周囲を取り囲んで単層カーボンナノチューブの分散を容易にして均一な膜厚のカーボンナノチューブ薄膜の形成に貢献している。
【0047】
本実施形態のカーボンナノチューブ解析方法では、図1の第1フローチャートに示すように先ず、カーボンナノチューブ集合体とシクロアミロース溶液とを所要の容器に入れて混合し(S1)、カーボンナノチューブ集合体を含むシクロアミロース溶液に超音波発生装置で超音波を投射して超音波処理を行う(S2)。
【0048】
上述の混合処理で用いるシクロアミロース溶液は水溶液であり、濃度は後述する後の処理段階で形成されるカーボンナノチューブ薄膜において単層カーボンナノチューブが、ほぼ均等に分散して(図4(a)参照)、測定処理におけるラマン顕微分光装置が試料に対して照射するレーザ光の光径内に1本又は2、3本程度の少数の単層カーボンナノチューブが存在する程度に設定することが好適である。また、上述した超音波処理では、超音波処理装置が投射する超音波の周波数を10kHz以上に設定し、1分〜48時間の範囲内の所要時間で超音波処理を行う。なお、水溶液には、分離特性に関連する比重や、分析目的に合わせて溶液の分光特性を変える目的で、重水を用いても良い。
【0049】
このような超音波処理を行うことで、カーボンナノチューブ集合体は複数の単層カーボンナノチューブへ分離して可溶し、可溶化した各単層カーボンナノチューブが分散して含まれるカーボンナノチューブ含有溶液が生成される。
【0050】
次に本実施形態では、図1の第1フローチャートに示すように、生成したカーボンナノチューブ含有溶液をフィルターで濾過する(S3)。濾過で使用するフィルターは、カーボンナノチューブ含有溶液に含まれる単層カーボンナノチューブが通過できる孔を有するものを使用し、具体的には約0.10μ〜数百μm程度の孔径のフィルターを用いることが好適である。フィルターの濾過により、カーボンナノチューブ集合体等に付着していた不純物を除去し、後の測定処理で不純物の影響を排除した測定を行える。
【0051】
それから本実施形態では、図1の第1フローチャートに示すように、回転している基板に濾過したカーボンナノチューブ含有溶液を滴下する(S4)。具体的には図2に示すように、回転軸の端部に設けた載置板にシリコン基板を載置固定し、回転軸を中心にして回転することでシリコン基板を回転させ、この状態でカーボンナノチューブ含有溶液をシリコン基板の板面上に滴下する。滴下したカーボンナノチューブ含有溶液は、回転による遠心力でシリコン基板の外周へ向かって円形状で均等に拡散してスピンコートされる。
【0052】
その後、本実施形態では、図1の第1フローチャートに示すように、シリコン基板上で拡散したカーボンナノチューブ含有溶液を乾燥して水分を除去し、カーボンナノチューブ薄膜(カーボンナノチューブ含有膜に相当)を形成する(S5)。
【0053】
図3は、シリコン基板上に形成されたカーボンナノチューブ薄膜の一部を厚み方向から見た場合の拡大断面図である。カーボンナノチューブ薄膜は、膜厚Tがほぼ均一であり、複数の単層カーボンナノチューブが薄膜成分であるシクロアミロースで囲まれて均等に分散した構造になっており、従来の図21に示すような膜不形成部分も存在せず、単層カーボンナノチューブの位置も溶液的な状態で固定されて位置特定も容易になっている。
【0054】
なお、単層カーボンナノチューブの分散は、図4(a)に示すように全体の中の一部が重なっている程度であれば、吸収波長で分子を励起して通常より遙かに強度の高いラマン信号及び蛍光信号等を得られると云う共鳴効果を測定で利用することにより、非共鳴分子に相当する単層カーボンナノチューブを除いて共鳴分子に相当する単層カーボンナノチューブのみを選択的に測定できる。しかし、図4(b)に示すように、全体的に各単層カーボンナノチューブが重なっていると、共鳴効果を利用しても精度の高い測定が困難となるので分散の程度は不充分となる。
【0055】
最後に、本実施形態では、図1の第1フローチャートに示すように、形成したカーボンナノチューブ薄膜をラマン顕微分光装置で測定して解析する(S6)。図5は、本実施形態で用いるラマン顕微分光装置1の構造を示す概略図である。
【0056】
ラマン顕微分光装置1は、レーザ光源2でレーザ光Rを発し、ハーフミラー3でレーザ光Rの進行方向を変更し、対物レンズ4を介して試料台5の上に載置したシリコン基板10の面上に形成したカーボンナノチューブ薄膜11へレーザ光Rを照射する。カーボンナノチューブ薄膜11へのレーザ光の照射によりラマン散乱光及びレーリー散乱光を含む散乱光が生じ、ラマン顕微分光装置1はノッチフィルタ6でレーリー散乱光を除去してラマン散乱光を分光器7で波長毎に分光し、CCD検出器8で分光されたラマンスペクトルを測定する。また、ラマン顕微分光装置1は、測定されたラマンスペクトル及びレーザ光の波長等に基づきコンピュータ9で所要の解析を行い、得られたラマン散乱光のラマンスペクトルを画像化した内容等をモニタ9aで表示できるようにしている。
【0057】
本実施形態のラマン顕微分光装置1は、レーザ光源2より発するレーザ光Rの波長を調整できるようにしている。また、対物レンズ4はハーフミラー3で反射されたレーザ光Rの光軸に沿って移動可能であり、カーボンナノチューブ薄膜11へ照射されるレーザ光Rの光径(図6参照)を調整でき、さらに、試料台5は図示しない駆動機構により図6に示すX方向及びY方向に適宜移動可能であり、レーザ光Rのカーボンナノチューブ薄膜11に対する照射位置を移動できるようにしている。
【0058】
さらにまた、本実施形態のラマン顕微分光装置1のコンピュータ9には、図6に示す辺の長さがL1、L2の測定対象枠12を決める処理、マッピング測定を行う処理、ラマン散乱向の測定強度値(ラマンスペクトルの強度)に基づき二次元又は三次元画像のラマンイメージを作成してカーボンナノチューブ薄膜11に含まれる単層カーボンナノチューブの位置を特定する処理、測定強度値に係るグラフを作成する処理、並びに測定されたラマンスペクトルの強度と照射したレーザ光の波長との対応関係から単層カーボンナノチューブの直径、カイラリティ、カイラリティの平均値、及び度数分布を過去の単層カーボンナノチューブに係る経験値に基づき演算して解析する処理等を規定したプログラムが内蔵されており、このプログラムに従ってコンピュータ9はレーザ光Rの照射を移動した箇所毎に測定及び解析処理を行う。
【0059】
よって、本実施形態のラマン顕微分光装置1は測定及び解析に対し、先ずレーザ光の照射箇所を適宜移動させてラマン分光法によりマッピング測定を行い、単層カーボンナノチューブの構造により変化するラマンスペクトルのバンド強度を用いてラマンイメージを作成し、カーボンナノチューブ薄膜11の中に含まれる単層カーボンナノチューブの位置を特定する。次に、ラマン顕微分光装置1は、特定した位置に対して測定対象枠12を設定し(図6参照)、測定対象枠12の内部でレーザ光の照射箇所を移動して複数回の測定を行い、測定したラマンスペクトルの強度から、単層カーボンナノチューブのチューブ直径、構造パラメータ(カイラリティの特定に関係)、度数分布等を演算により解析する。
【0060】
図7は、シリコン基板10上に形成されたカーボンナノチューブ薄膜11を上述したラマン顕微分光装置1で測定した一例を示すグラフである。このグラフの横軸は分光器7で分光された各波長の逆数(Wavenumber:波数)であり、縦軸は波長毎に対応して測定されたラマンスペクトルの強度(Intensitiy)である。
【0061】
この測定例では、図6に示す測定対象枠12のL1を20μm、L2を19μmに設定すると共に、カーボンナノチューブ薄膜11の周囲から一部がシリコン基板10へ位置するように設定対象枠12を配置し、レーザ光径を1μmにして設定対象枠12の内部を相異するY方向毎にX方向に沿ってレーザ光Rを移動させて計400回測定した。図7のグラフは、計400回の測定の中で、ピークが1個のみ表れた8個の測定結果を示したものである。なお、図7のグラフで横軸が300の値付近で生じているピークは、シリコン基板10に係るものであり、カーボンナノチューブ薄膜11に含まれる単層カーボンナノチューブに関係するものではない。
【0062】
図7のグラフでは、計8個の測定結果毎にピークP1〜P8が表出しており、各ピークP1〜P8における波数とスペクトルの強度との関係から、コンピュータ9は、単層カーボンナノチューブの直径、カイラリティ等を求める。
【0063】
このように、本発明に係るカーボンナノチューブ解析方法を用いることで、位置が固定された単層カーボンナノチューブが均等に分散したカーボンナノチューブ薄膜に対してラマン顕微分光法で確実に単層カーボンナノチューブを捉えて効率的に測定及び解析を行い、単層カーボンナノチューブの成分比率を定量的に評価できる。また、測定対象となる単層カーボンナノチューブの位置がカーボンナノチューブ薄膜中で固定されることで、レーザ光の照射箇所を同じ位置にして、照射するレーザ光の波長を吸収波長に相当する値に変化させ、共鳴効果を利用して変化させた波長毎に測定及び解析を行える。
【0064】
図8のグラフは、同一箇所で照射するレーザ光の波長を共鳴分子に対応させて切り替えた場合の測定結果を示す一例である。実線は一の単層カーボンナノチューブに対して励起波長となる488nmの波長で測定した結果を示し、破線は他の単層カーボンナノチューブに対して励起波長となる515nmの波長で測定した結果を示す。488nmの測定では5個のピークP10〜P15が表出し、488nmの波長に共鳴する単層カーボンナノチューブが計5個存在することが分かる。また、515nmの波長では1個のピークP20が表出し、515nmの波長に共鳴する単層カーボンナノチューブが1個存在し、共鳴効果を利用して特定の単層カーボンナノチューブを選択的に測定できる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例の適用が可能である。例えば、カーボンナノチューブ集合体と混合する糖類溶液は、シクロアミロース溶液に限定されるものではなく、シクロアミロース系溶液としてシクロアミロース誘導体の溶液(水溶液も含む)も適用できる。
【0066】
また、図1の第1フローチャートにおけるカーボンナノチューブ含有溶液の濾過(S3)の替わりに、カーボンナノチューブ含有溶液を遠心分離し、その上澄みのカーボンナノチューブ含有溶液を滴下するようにしてもよく、遠心分離を行うことで確実に不純物を排除できる。さらには、濾過及び遠心分離を行わずに不純物の沈下を待って上澄みのみを滴下するようにしてもよく、この場合は、濾過に用いるフィルター及び遠心分離に用いる遠心分離器の準備が不用となり、解析に係る費用低減を図れる。
【0067】
カーボンナノチューブ含有溶液が滴下される基板は、滴下されてから回転を開始させてスピンコートを行うようにしてもよい。また、カーボンナノチューブ含有溶液は、滴下するのではなく基板上に塗布することも可能である。さらに、滴下又は塗布により膜厚を一定にできる場合は、スピンコートを省略してもよく、特に、塗布の場合は、形成するカーボンナノチューブ薄膜の膜面積の大きさ及び膜厚をコントロールしやすい。
【0068】
また、カーボンナノチューブ含有溶液が滴下又は塗布される基板は、シリコン基板以外に他の材質の基板も適用でき、例えば平坦な面を有するガラス基板やマイカ(雲母SiO2 )の適用も可能である。
【0069】
測定に対する基板の影響排除を重視する場合は、図9(a)に示すようにシリコン基板10に形成されたカーボンナノチューブ薄膜11を剥離し、図9(b)に示すように、ラマン顕微分光装置1が有する変形例の試料台10の上に、剥離したカーボンナノチューブ薄膜11を載置して測定を行うようにしてもよい。
【0070】
変形例の試料台10は、カーボンナノチューブ薄膜11の外周寸法より小さい径の円形孔15bの中に十字型の支持部15aを設けており、円形孔15bを覆うようにカーボンナノチューブ薄膜11を載置することで、支持部15a及び円形孔15bの周縁部15gのみがカーボンナノチューブ薄膜11の膜面11aと部分的に接してカーボンナノチューブ薄膜11を支持する。このような試料台15を用いることで、支持部15aで区分けされた円形孔15bの計4個の空洞部15c〜15fではカーボンナノチューブ薄膜11のみが存在し、各空洞部15c〜15fに対応する箇所でレーザ光Rの照射を行うことで、実質的にカーボンナノチューブ薄膜11のみにレーザ光Rを照射でき、基板の影響を排除できる。
【0071】
また、カーボンナノチューブ薄膜の測定及び解析には、図5に示すラマン顕微分光装置1の替わりに、顕微分光法で測定及び解析を行える装置を適用することが可能である。具体的には、蛍光顕微分光装置、顕微赤外吸収分光装置、顕微可視紫外吸収分光装置等の各種顕微分光装置も同様に用いることができる。
【0072】
さらに、カーボンナノチューブ薄膜に含まれる単層カーボンナノチューブの特性を個別に評価するのではなく、各単層カーボンナノチューブの平均値の測定及び解析を行う場合には、レーザ光の光径内に1本の単層カーボンナノチューブが存在するようにシクロアミロース溶液の濃度を調整する必要はなく、また、顕微分光法に係るレーザ光より大きい光径のレーザ光を照射する分光法で測定及び解析を行ってもよい。
【0073】
この場合、分光法に係る装置としては、ラマン分光装置、蛍光分光装置、ホトルミネッセンス分光装置、カソードヅミネッセンス分光装置、赤外吸収分光装置、可視紫外吸収分光装置、蛍光X線分光装置、表面増強ラマン分光装置、表面増強赤外分光装置、近接場分光装置、又はX線光電子分光装置のいずれかを適用できる。なお、本発明に係るカーボンナノチューブ解析方法では、分光装置以外に電子線励起X線元素分析装置の適用も可能である。
【0074】
また、本発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、多層カーボンナノチューブ(Multi-Walled Carbon Nano Tubes:MWCNT)の特性測定及び解析にも適用でき、多層カーボンナノチューブが束になったバルク体に対して、上述した単層カーボンナノチューブが束になったバルク体の場合と同様の処理を行うことで多層カーボンナノチューブの解析も実現できる。
【0075】
図10は、本発明の第2実施形態に係る試料解析方法の処理手順を示す第2フローチャートである。第2実施形態は、試料としてカーボンナノチューブに限定されることなく、水との親和性が悪い試料を分光装置で適切に解析できるようにしたものであり、基本的な処理の流れは、図1に示す第1フローチャートと同様である。第2実施形態の試料解析方法で解析対象となる試料は固体、液体、気体を問わず、水に対する溶解度が10-4mol/L以下のものであり、固体としては球状タンパク質、分子量の大きい医薬品、疎水基を多く持つ有機分子などが該当し、液体としては液状の脂肪族化合物、液状の芳香族化合物が該当し、気体としては低沸点有機化合物、香料、揮発性有機有害物質などが該当し、グロブリン、ナフタレン、ヘキサンなどが挙げられる。なお、これらの試料に該当する物質には、各物質を構成する粒子(分子、又は分子がある程度の単位で結合して形成された粒子。この粒子を試料構成粒子と称す)が凝集して形成されたもの(凝集体)を含む(図11参照)。
【0076】
第2実施形態では、試料として分子量の大きい医薬品(固体)を用いており、また、試料と混合する糖類溶液には第1実施形態と同様に、シクロアミロース溶液を用いると共に、試料の解析を行う分光装置には、図5に示すラマン顕微分光装置1を用いている。
以下、図10に示す第2フローチャートに沿って、第2実施形態に係る試料解析方法の処理手順を説明する。
【0077】
先ず、第2実施形態では、試料とシクロアミロース溶液とを所要の容器に入れて混合し(S10)、図12に示すように試料及びシクロアミロース溶液を混合した容器に対して加熱処理を行う(S11)。このような加熱処理を行うことで、凝集していた各試料構成粒子の凝集力が断ち切られ、試料が各試料構成粒子に分離し、分離した試料構成粒子のそれぞれはシクロアミロース溶液の構成分子に取り囲まれて可溶し、可溶化した試料構成粒子が均一に分散して含まれる試料含有溶液が生成される。
【0078】
次に、基板(例えば、シリコン基板)に試料含有溶液を滴下し(S12)、試料含有溶液を乾燥して、図13に示すように、複数の試料構成粒子が均一に分散した試料含有物を基板上に形成する(S13)。なお、形成された試料含有物は、滴下した状態で固体化された形状になっており、各試料構成粒子は試料含有物中に溶液的な状態で位置が固定され、位置特定が容易になっている。
【0079】
最後に、形成した試料含有物を基板と共に、図5に示すラマン顕微分光装置1の試料台5に載置して試料の測定及び解析を行う(S14)。ラマン顕微分光装置1による測定及び解析は、第1実施形態と同様であり、試料含有物中の試料構成粒子にレーザ光を照射してラマン分光法に基づき行っており、試料構成粒子の形状的な特性をラマン顕微分光装置1のコンピュータ9により解析する。
【0080】
なお、第2実施形態でも、レーザ光の照射位置を適宜移動させて測定及び解析を行うことが可能であり(図6参照)、コンピュータ9が、照射位置に応じてマッピング測定を行う処理、ラマン散乱光の測定強度値(ラマンスペクトルの強度)に基づき二次元又は三次元画像のラマンイメージを作成して試料構成粒子の位置を特定する処理、測定強度値に係るグラフを作成する処理、並びに測定されたラマンスペクトルの強度と照射したレーザ光の波長との対応関係から試料構成粒子の形状寸法等を過去の経験値に基づき演算して解析する処理等を第1実施形態と同様に行う。また、レーザ光の照射位置を同じ位置にして、レーザ光の波長を吸収波長に相当する値に変化させ、共鳴効果を利用して変化させた波長毎に測定及び解析を行うことも勿論可能である(第1実施形態参照)。
【0081】
このように、第2実施形態の試料解析方法では、水に対する親和性が悪い試料をシクロアミロース溶液の特性を利用して可溶化すると共に、固体化した試料含有物中に試料の位置を固定するので、解析対象に向けてレーザ光を確実に照射でき、ラマン分光法により試料の特性を効率的に解析できる。なお、第2実施形態の試料解析方法も、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例の適用が可能であり、例えば、試料が汚れている場合は、生成した試料含有溶液を遠心分離又はフィルターで濾過してから板上に滴下又は塗布することが好適である。また、第2実施形態でも、第1実施形態で述べた各種変形例(図9(a)(b)の内容、様々な種類の分光装置を用いること等)を適用することが可能である。
【0082】
さらに、試料を複数の試料構成粒子に分離させるために、図12に示す加熱処理(第2フローチャートのS11)の代わりに、第1実施形態と同様に超音波を投射する処理を行うことも可能であり、さらにまた、試料を複数の試料構成粒子に分離可能な水以外の溶媒を用いてもよい。このような溶媒としては、エーテル、シクロヘキサン、エタノールなどが該当し、エーテル及びシクロヘキサンは図15に示す分析容器20を用いて試料構成粒子を分離する場合に適用でき、エタノールは水との混合性が良好なため、試料を含む糖類溶液と単に混合して攪拌するだけで、試料構成粒子の分離に適用できる。
【0083】
溶媒を用いて試料含有溶液を生成するには、先ず、この種の溶媒と試料とを混合して、分離した複数の試料構成粒子を含む中間生成液(試料構成粒子の分散液又は溶解液)を生成する。次に、図14に示すように、生成した中間生成液と糖類溶液(例えば、シクロアミロース溶液)を混合し、混合した液を図15に示す分析容器20に入れて充分に攪拌する。中間生成液とシクロアミロース溶液とは成分的に相異するため、攪拌して相互に混ざり合うことはないが、混合攪拌により中間生成液に含まれる試料構成粒子がシクロアミロース溶液へ抽出されて移動する。
【0084】
具体的な試料構成粒子の移動の状況としては、図16に示すように、最初、中間生成液中の溶媒成分(図中、大きい丸形状で示す)に存在していた試料構成粒子(図中、小さい丸で示す)は、混合攪拌によりシクロアミロース溶液と接する。このように接した試料構成粒子は、シクロアミロース溶液のシクロアミロース成分体(図中、U字状で示す)が有する空洞に取り込まれてシクロアミロース溶液側へ抽出される(図中、矢印で示す)。よって、充分に攪拌されることで、中間生成液に含まれる試料構成粒子はシクロアミロース溶液と接する機会が多くなり、シクロアミロース成分体へ随時取り込まれる。
【0085】
攪拌後は、図15に示すように、分析容器20の下方にシクロアミロース溶液相、上方に溶媒相が存在する相分離した相分離溶液が生成される。この相分離溶液では、シクロアミロース溶液相(糖類溶液相)に試料構成粒子が含まれ、溶媒相には試料構成粒子が存在しなくなっている。この状態で分析容器20のコック20aを開くと、下方の排出口20bから、下方のシクロアミロース溶液相を構成するシクロアミロース溶液を容器に取り出すことができ、この取り出したシクロアミロース溶液が試料含有溶液となる。このように溶媒を用いて、試料含有溶液を生成する場合は、加熱装置、超音波発生装置等が不要になるため各種装置の準備負担を低減でき、手軽に試料含有溶液を生成できる。
【0086】
なお、水に対する溶解度が10-4mol/L以下の試料の中で、試料構成粒子の凝集力がそれほど強くない試料などに対しては、試料と糖類溶液(シクロアミロース溶液、シクロアミロース誘導体の溶液)を混合攪拌することで、試料を複数の試料構成粒子に分離させられる場合もある。例えば、上述した凝集力がそれほど強くない試料が液体である場合、又は試料に対してエーテル、シクロヘキサン、エタノールなどの溶媒を用いた場合は、試料を混合した糖類溶液を振盪することで試料を複数の試料構成粒子へと分離でき、また、凝集力がそれほど強くない試料が気体の場合は、試料を混合した糖類溶液をバブリングすることで試料を複数の試料構成粒子へと分離でき、これらの場合では、上述した加熱処理、超音波処理、溶媒を用いた処理を省略して試料含有溶液を生成してもよい。
【0087】
また、試料含有溶液から形成する試料含有物を膜状(薄膜状も含む)にする場合は、図2に示すようにスピンコートを用いることが好ましく、さらには、試料含有物を紐状、ブロック状に形成するには、固定した基板の上に試料含有溶液を直線状に塗布、固まり状に塗布することが好適である。なお、測定及び解析に用いる分光装置の種類によっては、形成した試料含有物を適宜カットしてもよく、例えば図17(a)に示すように、試料含有物をスライスして、試料構成粒子を含む薄板状の試料含有片を形成して測定及び解析を行ってもよく、また、図17(b)に示すように短冊状の試料含有片、図17(c)に示すように立方状の試料含有片をカット・スライスにより形成してもよい。
【0088】
さらに、液体の試料、気体の試料を解析する場合も、上述した試料と糖類溶液(シクロアミロース溶液、シクロアミロース誘導体の溶液)を混合して試料含有溶液を生成する方法で対応でき、糖類溶液の包接現象により試料を構成する試料構成粒子を適宜取り込んで可溶化できる。例えば、図18に示すように、液体の試料、気体の試料を構成する試料構成粒子が小さい場合は、シクロアミロース成分体の螺旋状部の内部がポケット部として機能し、このポケット部に試料構成粒子が取り込まれて(包接現象と称す)、試料含有溶液を生成できる。そのため、トリクロロエチレンの気体のような試料でもシクロアミロースの上述した包接現象により、試料構成粒子がシクロアミロース成分体に取り込まれて、試料構成粒子が濃縮された均一な試料含有溶液を生成でき、好適な測定及び解析を実現でき、試料がアセトンのような気体の場合、試料構成粒子がシクロアミロース成分体に取り込まれて濃縮できることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ解析方法に係る処理手順を示す第1フローチャートである。
【図2】カーボンナノチューブ薄膜の形成に対して用いるスピンコートを説明する概略図である。
【図3】カーボンナノチューブ薄膜の厚み方向からの拡大断面図である。
【図4】(a)は適度に単層カーボンナノチューブが分散したカーボンナノチューブ薄膜の平面図であり、(b)は分散が不充分なカーボンナノチューブ薄膜の平面図である。
【図5】ラマン顕微分光装置の構成を示す概略図である。
【図6】レーザ光の照射状況を示す概略図である。
【図7】測定結果を示すグラフである。
【図8】共鳴効果を利用した測定結果を示すグラフである。
【図9】(a)は基板上に形成されたカーボンナノチューブ薄膜を剥離する状態を示す概略図であり、(b)は変形例の試料台にカーボンナノチューブ薄膜を載置する状態を示す概略図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る試料解析方法の処理手順を示す第2フローチャートである。
【図11】解析対象となる試料の構成を示す概略図である。
【図12】加熱処理を示す概略図である。
【図13】形成された試料含有物を示す概略図である。
【図14】中間生成液とシクロアミロース溶液の混合状態を示す概略図である。
【図15】相分離溶液を示す概略図である。
【図16】試料構成粒子の抽出を示す概略図である。
【図17】(a)は試料含有物をスライスした試料含有片を示す概略図、(b)は短冊状の試料含有片を示す概略図、(c)は立方状の試料含有片を示す概略図である。
【図18】試料構成粒子をポケット部に取り込む状態を示す概略図である。
【図19】バンドル状のカーボンナノチューブ集合体を示す概略図である。
【図20】(a)は従来の測定方法を示す図であり、(b)は別の従来の測定方法に係る図である。
【図21】従来の方法で形成される単層カーボンナノチューブが含まれる薄膜の構造を示す厚み方向からの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 ラマン顕微分光装置
2 レーザ光源
3 ハーフミラー
4 対物レンズ
5、15 試料台
6 ノッチフィルタ
7 分光器
8 CCD検出器
9 コンピュータ
10 シリコン基板
11 カーボンナノチューブ薄膜
R レーザ光
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドル状のカーボンナノチューブ集合体から複数のカーボンナノチューブを分離させて溶液中に分散させたカーボンナノチューブ含有溶液を生成し、分散したカーボンナノチューブのチューブ直径及び構造と云った特性を解析するカーボンナノチューブ解析方法に関し、さらにはカーボンナノチューブ以外にも、水に対する溶解度が10-4mol/L以下である試料の特性を効率的に解析可能とした試料解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブとして市販されているバルク体は、図19に示すように複数の単層カーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon Nano Tube:SWCNT)が束になっており、このようなバルク体(以下、カーボンナノチューブ集合体と称す)を形成する要素である各単層カーボンナノチューブの特性を解析することは、カーボンナノチューブ集合体の機能及び性質等を特定する上で非常に重要である。しかし、カーボンナノチューブ集合体のままでは、個々の単層カーボンナノチューブの特性を測定できないので、水との親和性が悪い試料であるカーボンナノチューブ集合体を各単層カーボンナノチューブへ分離する必要がある。
【0003】
従来の分離方法には、強酸処理と超音波処理とを組み合わせて行う方法があり(特許文献1参照)、例えば図20(a)に示すように、強酸溶液としてドデシル硫酸ナトリウム溶液にカーボンナノチューブ集合体を加えて超音波処理を行い可溶化することが下記の非特許文献1で記載されている。なお、非特許文献1では、可溶化した単層カーボンナノチューブを含む溶液(以下、カーボンナノチューブ含有溶液と称す)に対して蛍光分光法を用いて測定し、各単層カーボンナノチューブの特性を平均値として解析評価することも記載されている。
【0004】
また、図20(b)に示すように、カーボンナノチューブ含有溶液を基板上に滴下して薄膜を形成することが開示されている(特許文献1、2及び非特許文献2参照)。例えば特許文献1では、5mm角にカットしたSiウエハー(基板)上にカーボンナノチューブ含有溶液を約1μL滴下して乾燥し、探針として先端の曲率半径が20nmのSi製のカンチレバーを有する原子間力顕微鏡(AFM)で測定を行うことが記載されている。さらに非特許文献2では、形成した薄膜に蛍光分光法で薄膜に含まれる単層カーボンナノチューブの特性を解析することが開示されている。
【0005】
なお、非特許文献3には、カーボンナノチューブ集合体から単層カーボンナノチューブを分離するのではなく、基板に1本の単層カーボンナノチューブを付着して成長させ、成長した1本の単層カーボンナノチューブが存在する位置をAFMで特定し、特定した位置でラマン分光法のマッピング測定を行い、単層カーボンナノチューブの構造として配向(カイラリティ)、及び直径を解析することが開示されている。
【特許文献1】特開2004−2156号公報
【特許文献2】特開2004−167667号公報
【非特許文献1】「Science」誌、vol.297 26 JULY 2002、P593〜P596
【非特許文献2】「Science」誌、vol.301 5 SEPTEMBER 2003、P1354〜P1356
【非特許文献3】「Nanotechnology」誌(Institute of Physics Publishing)、Nanotechnology15(2004)P562〜P567
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に係る解析方法は、カーボンナノチューブ含有溶液に対して測定及び解析を行うが、カーボンナノチューブ含有溶液に含まれる各単層カーボンナノチューブは溶液中を移動して位置が定まらないので、各単層カーボンナノチューブを1本単位で測定して解析することはできない。
【0007】
また、図21は、非特許文献1で生成されたカーボンナノチューブ含有溶液を用いて特許文献1、2及び非特許文献2で記載された方法により基板上に形成された薄膜の一部を厚み方向から見た場合の拡大断面図である。カーボンナノチューブ含有溶液を薄膜化することにより、含有される各単層カーボンナノチューブの位置は定まる。しかし、薄膜を形成する成分であるドデシル硫酸ナトリウムは、界面活性剤として石鹸的な性質を有するため均一な膜厚で薄膜を形成できず、図示するような膜不形成部分が膜全体の各所に散在すると共に、膜が形成された部分の中に単層カーボンナノチューブが含まれないものも生じる。
【0008】
そのため、形成された薄膜は、単層カーボンナノチューブの分散が不均等であると共に、膜自体も均一な膜厚を有する連続した完全薄膜ではなく、不完全薄膜になっている。このような不完全薄膜では膜中に含まれる単層カーボンナノチューブの位置を特定して効率的な測定を行うことが困難になると云う問題がある。
【0009】
例えば、特許文献1で記載されたようにAFMのカンチレバーで薄膜の凹凸を測定しても、薄膜の存在を確認した部分に単層カーボンナノチューブが含まれないこともあるため、単層カーボンナノチューブの位置をAFMで特定することは困難になる。また、非特許文献2で用いる蛍光分光法として光を照射する箇所を微小にした顕微蛍光分光方法を用いる場合は、単層カーボンナノチューブの分散が不均等であるため、単層カーボンナノチューブの位置を特定して光を照射することが困難になる。
【0010】
一方、カーボンナノチューブの他にも、水との親和性が悪い試料を解析対象にすることがあり、試料が固体、液体、気体であるに関わらず、試料を構成する粒子レベルで解析を行う場合、従来の解析方法では上述したカーボンナノチューブの場合と同様に、試料を解析に適した粒子状態へ均一に分離することが困難であった。
【0011】
本発明は、斯かる問題に鑑みてなされたものであり、膜不形成部分が存在せず、単層カーボンナノチューブが膜中に一定の密度で含まれる薄膜を形成できるカーボンナノチューブ含有溶液を生成して、効率的な解析を行えるようにしたカーボンナノチューブ解析方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、薄膜を形成する際に用いる基板の影響を排除し、さらに、様々な条件で効率的な測定解析を行えるようにしたカーボンナノチューブ解析方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、カーボンナノチューブ以外の水との親和性が悪い試料を粒子レベルで解析する場合に、精度の良い解析を効率的に行えるようにした試料解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、第1発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、複数のカーボンナノチューブが束になったカーボンナノチューブ集合体と糖類溶液とを混合し、カーボンナノチューブ集合体を含む糖類溶液に超音波を投射してカーボンナノチューブ集合体から分離した複数のカーボンナノチューブが含むカーボンナノチューブ含有溶液を生成し、生成したカーボンナノチューブ含有溶液を板上に滴下又は塗布し、板上のカーボンナノチューブ含有溶液を乾燥してカーボンナノチューブ含有膜を形成し、形成したカーボンナノチューブ含有膜に含まれるカーボンナノチューブの特性を分光装置により解析することを特徴とする。
【0013】
第1発明にあっては、強酸溶液ではなく、糖類溶液を用いてカーボンナノチューブ含有溶液を生成するので、界面活性剤的な性質がなくなると共に、糖類溶液の性質により糖類溶液の構成分子がカーボンナノチューブ集合体から分離した各カーボンナノチューブを取り囲み、各カーボンナノチューブが均等に分散したカーボンナノチューブ含有溶液を生成し、このようなカーボンナノチューブ含有溶液で膜(カーボンナノチューブ含有膜)を形成することで、膜中にカーボンナノチューブが一定の密度で分散して膜不形成部分が存在しない全体的に均一な膜厚を有する膜を得ることができる。その結果、カーボンナノチューブの位置が固定されて分光装置で膜に含まれるカーボンナノチューブを個別に解析することが容易になる。
【0014】
また、第2発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、前記糖類溶液は、シクロアミロース系溶液であることを特徴とする。
第2発明にあっては、糖類溶液として用いられるシクロアミロース系溶液は水への溶解性が高く、その溶液は低温でも沈殿が生じない上に包接能力があるので、カーボンナノチューブ集合体から分離した各カーボンナノチューブを取り囲んで各カーボンナノチューブを均等に分散できると共に、膜不形成部分が生じることなく連続した膜の形成に貢献できる。なお、シクロアミロース系溶液には、シクロアミロース溶液は勿論のこと、シクロアミロース誘導体の溶液(水溶液)も含まれる。
【0015】
さらに、第3発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、生成したカーボンナノチューブ含有溶液を遠心分離又はフィルターで濾過してから板上に滴下又は塗布することを特徴とする。
第3発明にあっては、遠心分離又はフィルターによる濾過により、溶液中に含まれる不純物が排除されて解析結果に不純物の影響が出ないようにできる。
【0016】
さらにまた、第4発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、板上に塗布又は滴下されたカーボンナノチューブ含有溶液をスピンコートすることを特徴とする。
第4発明にあっては、スピンコートすることで一段と均一な膜厚のカーボンナノチューブ含有膜を形成できる。なお、スピンコートの方法として、回転している板に塗布又は滴下すること、塗布又は滴下してから板を回転させることのいずれを適用してもよい。
【0017】
第5発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、板上に形成したカーボンナノチューブ含有膜を剥離し、剥離したカーボンナノチューブ含有膜と部分的に接することが可能な試料台に該カーボンナノチューブ含有膜を載置して前記分光装置により解析することを特徴とする。
第5発明にあっては、カーボンナノチューブ含有膜を部分的に接する試料台に載置するので、カーボンナノチューブ含有膜は一部のみで試料台と接触することになり、接触していない箇所においてはカーボンナノチューブ含有膜のみとなることから、カーボンナノチューブ含有膜の下方に位置する材質の影響を排除して、より高精度な解析を行えるようになる。
【0018】
第6発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、前記分光装置は、カーボンナノチューブ含有膜へ光を照射する箇所を移動し、光の照射により生じた光を測定して、カーボンナノチューブ含有膜に含まれるカーボンナノチューブの位置を特定し、特定した位置に対して解析を行うことを特徴とする。
第6発明にあっては、光を照射する箇所を移動して測定を行うと云う照射位置に対応させたマッピング測定を行うことによりカーボンナノチューブの位置を特定するので、測定対象エリアを絞りこんで一段と効率的な測定及び解析を行えるようになる。
【0019】
第7発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、前記分光装置は、前記特定した位置に対して照射する光の波長を変化し、変化した波長毎に解析を行うことを特徴とする。
第7発明にあっては、特定したカーボンナノチューブが存在する位置に対して、照射する光の波長を変化して波長毎に解析を行うので、共鳴効果を利用した励起波長に対応するカーボンナノチューブを選択的に観察できるようになる。
【0020】
第8発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、前記分光装置は、ラマン分光装置、ラマン顕微分光装置、蛍光分光装置、蛍光顕微分光装置、ホトルミネッセンス分光装置、カソードヅミネッセンス分光装置、赤外吸収分光装置、顕微赤外吸収分光装置、可視紫外吸収分光装置、顕微可視紫外吸収分光装置、蛍光X線分光装置、表面増強ラマン分光装置、表面増強赤外分光装置、近接場分光装置、又はX線光電子分光装置のいずれか1つであることを特徴とする。
第8発明にあっては、各種分光装置、又は各種顕微分光装置のいずれかで測定及び解析を行うことにより多様な解析を行えるようになり、様々な波長の光でカーボンナノチューブの特定を解析できる。
【0021】
第9発明に係る試料解析方法は、水に対する溶解度が10-4mol/L以下である試料と糖類溶液とを混合して試料含有溶液を生成し、生成した試料含有溶液を板上に滴下又は塗布し、板上の試料含有溶液を乾燥して試料含有物を形成し、形成した試料含有物に含まれる試料の特性を分光装置により解析することを特徴とする。
【0022】
第9発明にあっては、水に対する溶解度が10-4mol/L以下であると云う水との親和性が悪い試料を、糖類溶液に混合して試料含有溶液を生成するので、糖類溶液の特性により試料含有溶液中に試料が散らばった状態になる。また、生成した試料含有溶液より試料含有物を形成するので、固体である試料含有物の中に解析対象となる試料の位置が固定されることになり、分光装置で所定の波長を有する光を位置の定まった試料へ確実に照射でき、安定した試料解析を効率的に行える。なお、水に対する溶解度が10-4mol/L以下である試料としては、球状タンパク質、分子量の大きい医薬品、疎水基を多く持つ有機分子などが挙げられる。
【0023】
第10発明に係る試料解析方法は、試料は、複数の試料構成粒子の凝集体であり、試料を混合した糖類溶液に超音波を投射して、凝集体から分離した複数の試料構成粒子を含む試料含有溶液を生成することを特徴とする。
第10発明にあっては、試料を混合した糖類溶液に超音波を照射するので、凝集体である試料は超音波の威力により複数の試料構成粒子に分離し、分離した各試料構成粒子は糖類溶液の構成分子で取り囲みやすくなる。その結果、試料構成粒子が均一に分散した状態の試料含有溶液を生成でき、従来の方法では解析するのが困難であった試料に対しても、良好に試料解析を行うことができる。
【0024】
第11発明に係る試料解析方法は、試料は、複数の試料構成粒子の凝集体であり、試料を混合した糖類溶液を加熱して、凝集体から分離した複数の試料構成粒子を含む試料含有溶液を生成することを特徴とする。
第11発明にあっては、試料を混合した糖類溶液を加熱するので、凝集体である試料は加熱による熱エネルギーを受けて複数の試料構成粒子に分離し、分離した各試料構成粒子は糖類溶液の構成分子で取り囲みやすくなる。そのため、試料構成粒子が均一に分散した状態の試料含有溶液を生成でき、良好に試料解析を行うことができる。
【0025】
第12発明に係る試料解析方法では、試料は、複数の試料構成粒子の凝集体であり、試料を複数の試料構成粒子に分離することが可能な溶媒と試料とを混合して、凝集体から分離した複数の試料構成粒子を含む中間生成液を生成し、生成した中間生成液と糖類溶液とを混合攪拌して、試料構成粒子を含む糖類溶液相と溶媒相とに相分離した相分離溶液を生成し、生成した相分離溶液の糖類溶液相から試料構成粒子を含む糖類溶液を取り出して試料含有溶液を生成することを特徴とする。
【0026】
第12発明にあっては、複数の試料構成粒子に分離可能な溶媒に試料を混合するので、凝集体である試料は溶媒により複数の試料構成粒子に分離する。また、分離した複数の試料構成粒子を含む中間生成液と糖類溶液とを混合攪拌するので、中間生成液に含まれる試料構成粒子が糖類溶液の構成分子に取り込まれて糖類溶液側へ抽出される。さらに、中間生成液のベースとなる溶媒と糖類溶液の両者は混ざり合わないことから、攪拌により溶媒相と糖類溶液相に相分離し、相分離した一方の糖類溶液だけを取り出せることができ、また、取り出した糖類溶液には抽出された試料構成粒子が含まれることから、超音波を発生する機器及び加熱機器が無い場合でも、解析に適した試料含有溶液を生成できる。
【0027】
第13発明に係る試料解析方法では、前記糖類溶液は、シクロアミロース系溶液であることを特徴とする。
第13発明にあっては、糖類溶液に用いるシクロアミロース系溶液は水への溶解性が高く、その溶液は低温でも沈殿が生じない上に包接能力があるため、試料から分離した試料構成体(試料構成粒子)をシクロアミロース系溶液の要素分子で取り囲み、均等に試料構成粒子を分散できる。なお、シクロアミロース系溶液には、シクロアミロース溶液以外にもシクロアミロース誘導体の溶液(水溶液)も含まれる。
【0028】
第14発明に係る試料解析方法は、生成した試料含有溶液を遠心分離又はフィルターで濾過してから板上に滴下又は塗布することを特徴とする。
第14発明にあっては、遠心分離又はフィルターによる濾過により、溶液中に含まれる不純物が排除されるので、試料の解析を良好に行える。
【0029】
第15発明に係る試料解析方法は、板上に塗布又は滴下された試料含有溶液をスピンコートすることを特徴とする。
第15発明にあっては、スピンコートすることで形成する試料含有物の厚み寸法を均一にでき、分光装置による光の照射も行いやすくなり、特に試料含有物を膜状に形成するときは、試料含有物を均一な膜厚にでき好適である。
【0030】
第16発明に係る試料解析方法は、板上に形成した試料含有物を剥離し、剥離した試料含有物と部分的に接することが可能な試料台に該試料含有物を載置して前記分光装置により解析することを特徴とする。
第16発明にあっては、載置物と部分的に接する形状の試料台に、形成した試料含有物を載置するので、試料含有物における試料台と接していない箇所では、分光装置が光を照射しても試料台の影響が発生しなくなり、高精度に解析を行える。
【0031】
第17発明に係る試料解析方法は、前記分光装置は、試料含有物へ光を照射する箇所を移動し、光の照射により生じた光を測定して、試料含有物に含まれる試料の位置を特定し、特定した位置に対して解析を行うことを特徴とする。
第17発明にあっては、光を照射する箇所を移動するので、試料含有物を照射位置に対応して測定することになり、試料含有物に含まれる試料を一段と効率的に解析できる。
【0032】
第18発明に係る試料解析方法は、前記分光装置は、前記特定した位置に対して照射する光の波長を変化し、変化した波長毎に解析を行うことを特徴とする。
第18発明にあっては、特定した位置に対して照射する光の波長を変化して波長毎に解析を行うので、共鳴効果を利用した励起波長に対応する試料を選択的に観察できるようになり、試料含有物に含まれる試料が重複的に存在しても解析を行える。
【0033】
第19発明に係る試料解析方法は、前記分光装置は、ラマン分光装置、ラマン顕微分光装置、蛍光分光装置、蛍光顕微分光装置、ホトルミネッセンス分光装置、カソードヅミネッセンス分光装置、赤外吸収分光装置、顕微赤外吸収分光装置、可視紫外吸収分光装置、顕微可視紫外吸収分光装置、蛍光X線分光装置、表面増強ラマン分光装置、表面増強赤外分光装置、近接場分光装置、又はX線光電子分光装置のいずれか1つであることを特徴とする。
第19発明にあっては、各種分光装置、又は各種顕微分光装置のいずれかで測定及び解析を行うので、試料に応じて光学的な解析を多様な形態で行える。
【発明の効果】
【0034】
第1発明にあっては、糖類溶液をベースとしたカーボンナノチューブ含有溶液で膜を形成するため、カーボンナノチューブが一定の密度で分散して膜厚が全体的に均一なカーボンナノチューブ含有膜を形成でき、形成した膜中に含まれる自由な移動を規制されたカーボンナノチューブに対して良好な測定及び解析を行える。
【0035】
第2発明にあっては、糖類溶液としてシクロアミロース系溶液を用いることにより、カーボンナノチューブが均等に分散したカーボンナノチューブ含有溶液を生成できると共に、解析に適したカーボンナノチューブ含有膜の形成に貢献できる。
第3発明にあっては、遠心分離又はフィルターによる濾過により、解析に対して不純物の影響が生じることを排除できる。
【0036】
第4発明にあっては、スピンコートすることで一段と均一な膜厚のカーボンナノチューブ含有膜を形成できる。
第5発明にあっては、カーボンナノチューブ含有膜と試料台との接触を部分的にして、カーボンナノチューブ含有膜の下方に位置する材質の影響を排除し、より高精度な解析を行える。
【0037】
第6発明にあっては、照射位置に対応させたマッピング測定によりカーボンナノチューブの位置を特定し、一段と効率的な測定及び解析を行える。
第7発明にあっては、照射する光の波長を変化して波長毎に解析を行うことで、共鳴効果を利用した測定を行い、カーボンナノチューブ含有膜に含まれるカーボンナノチューブを選択的に観察できる。
第8発明にあっては、各種分光装置、又は各種顕微分光装置のいずれかで測定及び解析を行うことにより多様な解析を行える。
【0038】
第9発明にあっては、水との親和性が悪い試料を糖類溶液に混合して試料含有溶液を生成するので、溶液中に試料が散らばった状態の試料含有溶液を生成でき、また、試料含有溶液より試料含有物を形成するので、解析対象となる試料の位置を固体の試料含有物中に固定でき、分光装置による解析を容易に行える。
【0039】
第10発明にあっては、試料を混合した糖類溶液に超音波を照射するので、凝集体の試料を効率的に複数の試料構成粒子に分離できると共に、試料構成粒子が分離することで糖類溶液の構成分子で試料構成粒子を取り囲み、均一に試料構成粒子が分散した試料含有溶液を生成できる。
【0040】
第11発明にあっては、試料を混合した糖類溶液を加熱するので、凝集体である試料を効率良く複数の試料構成粒子に分離でき、分離した各試料構成粒子を糖類溶液の構成分子で取り囲んで解析に好適な試料含有溶液を生成できる。
【0041】
第12発明にあっては、複数の試料構成粒子に分離可能な溶媒に試料を混合するので、凝集体の試料を試料構成粒子に分離でき、また、分離した試料構成粒子を含む中間生成液と糖類溶液とを混合攪拌するので、中間生成液に含まれる試料構成粒子が糖類溶液の構成分子に取り込まれて糖類溶液側へ抽出でき、相分離した溶液から糖類溶液だけを取り出して解析に好適な試料含有溶液を容易に生成できる。
【0042】
第13発明にあっては、糖類溶液としてシクロアミロース系溶液を用いるので、均一に試料が散らばった状態の試料含有溶液を生成できる。
第14発明にあっては、遠心分離又はフィルターによる濾過により、溶液中に含まれる不純物を排除できる。
第15発明にあっては、スピンコートすることで形成する試料含有物の厚み寸法を均一にでき、解析対象を分光装置による光の照射も行いやすい形態にできる。
【0043】
第16発明にあっては、載置物と部分的に接する形状の試料台に、形成した試料含有物を載置するので、試料台の影響を排除して高精度に解析を行える。
第17発明にあっては、光を照射する箇所を移動するので、照射位置に対応付けた効率的な解析を実現できる。
第18発明にあっては、特定した位置に対して照射する光の波長を変化して波長毎に解析を行うので、共鳴効果を利用した励起波長に対応する試料を選択的に観察できる。
第19発明にあっては、各種分光装置、又は各種顕微分光装置のいずれかで測定及び解析を行うので、光学的に多様な解析を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図1は、本発明の第1実施形態に係るカーボンナノチューブ解析方法の処理手順を示す第1フローチャートであり、本発明に係る方法はカーボンナノチューブ集合体から分離した複数の単層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ含有溶液によりカーボンナノチューブ薄膜を形成し、このカーボンナノチューブ薄膜を測定対象としてラマン顕微分光法を用いて測定し、単層カーボンナノチューブの特性を解析するものである。本発明はカーボンナノチューブ集合体と糖類溶液とを混合してカーボンナノチューブ集合体を可溶化することを特徴とする。本実施形態では、糖類溶液として多糖類に属するシクロアミロース溶液を用いており、シクロアミロース分子の化学式を下記に示す。なお、化学式中のnは、15から数百の整数である。
【0045】
【化1】
【0046】
シクロアミロースは15〜数百個のブドウ糖が環状に繋がったα−1,4−グルカンであり、ヘリックス構造の内側に立体的で奥行きのある空洞部分を有し、しかも様々に分子形態(コンホメーション)が変化する柔らかい構造をしている。シクロアミロースは、カーボンナノチューブ集合体から分離した各単層カーボンナノチューブの周囲を取り囲んで単層カーボンナノチューブの分散を容易にして均一な膜厚のカーボンナノチューブ薄膜の形成に貢献している。
【0047】
本実施形態のカーボンナノチューブ解析方法では、図1の第1フローチャートに示すように先ず、カーボンナノチューブ集合体とシクロアミロース溶液とを所要の容器に入れて混合し(S1)、カーボンナノチューブ集合体を含むシクロアミロース溶液に超音波発生装置で超音波を投射して超音波処理を行う(S2)。
【0048】
上述の混合処理で用いるシクロアミロース溶液は水溶液であり、濃度は後述する後の処理段階で形成されるカーボンナノチューブ薄膜において単層カーボンナノチューブが、ほぼ均等に分散して(図4(a)参照)、測定処理におけるラマン顕微分光装置が試料に対して照射するレーザ光の光径内に1本又は2、3本程度の少数の単層カーボンナノチューブが存在する程度に設定することが好適である。また、上述した超音波処理では、超音波処理装置が投射する超音波の周波数を10kHz以上に設定し、1分〜48時間の範囲内の所要時間で超音波処理を行う。なお、水溶液には、分離特性に関連する比重や、分析目的に合わせて溶液の分光特性を変える目的で、重水を用いても良い。
【0049】
このような超音波処理を行うことで、カーボンナノチューブ集合体は複数の単層カーボンナノチューブへ分離して可溶し、可溶化した各単層カーボンナノチューブが分散して含まれるカーボンナノチューブ含有溶液が生成される。
【0050】
次に本実施形態では、図1の第1フローチャートに示すように、生成したカーボンナノチューブ含有溶液をフィルターで濾過する(S3)。濾過で使用するフィルターは、カーボンナノチューブ含有溶液に含まれる単層カーボンナノチューブが通過できる孔を有するものを使用し、具体的には約0.10μ〜数百μm程度の孔径のフィルターを用いることが好適である。フィルターの濾過により、カーボンナノチューブ集合体等に付着していた不純物を除去し、後の測定処理で不純物の影響を排除した測定を行える。
【0051】
それから本実施形態では、図1の第1フローチャートに示すように、回転している基板に濾過したカーボンナノチューブ含有溶液を滴下する(S4)。具体的には図2に示すように、回転軸の端部に設けた載置板にシリコン基板を載置固定し、回転軸を中心にして回転することでシリコン基板を回転させ、この状態でカーボンナノチューブ含有溶液をシリコン基板の板面上に滴下する。滴下したカーボンナノチューブ含有溶液は、回転による遠心力でシリコン基板の外周へ向かって円形状で均等に拡散してスピンコートされる。
【0052】
その後、本実施形態では、図1の第1フローチャートに示すように、シリコン基板上で拡散したカーボンナノチューブ含有溶液を乾燥して水分を除去し、カーボンナノチューブ薄膜(カーボンナノチューブ含有膜に相当)を形成する(S5)。
【0053】
図3は、シリコン基板上に形成されたカーボンナノチューブ薄膜の一部を厚み方向から見た場合の拡大断面図である。カーボンナノチューブ薄膜は、膜厚Tがほぼ均一であり、複数の単層カーボンナノチューブが薄膜成分であるシクロアミロースで囲まれて均等に分散した構造になっており、従来の図21に示すような膜不形成部分も存在せず、単層カーボンナノチューブの位置も溶液的な状態で固定されて位置特定も容易になっている。
【0054】
なお、単層カーボンナノチューブの分散は、図4(a)に示すように全体の中の一部が重なっている程度であれば、吸収波長で分子を励起して通常より遙かに強度の高いラマン信号及び蛍光信号等を得られると云う共鳴効果を測定で利用することにより、非共鳴分子に相当する単層カーボンナノチューブを除いて共鳴分子に相当する単層カーボンナノチューブのみを選択的に測定できる。しかし、図4(b)に示すように、全体的に各単層カーボンナノチューブが重なっていると、共鳴効果を利用しても精度の高い測定が困難となるので分散の程度は不充分となる。
【0055】
最後に、本実施形態では、図1の第1フローチャートに示すように、形成したカーボンナノチューブ薄膜をラマン顕微分光装置で測定して解析する(S6)。図5は、本実施形態で用いるラマン顕微分光装置1の構造を示す概略図である。
【0056】
ラマン顕微分光装置1は、レーザ光源2でレーザ光Rを発し、ハーフミラー3でレーザ光Rの進行方向を変更し、対物レンズ4を介して試料台5の上に載置したシリコン基板10の面上に形成したカーボンナノチューブ薄膜11へレーザ光Rを照射する。カーボンナノチューブ薄膜11へのレーザ光の照射によりラマン散乱光及びレーリー散乱光を含む散乱光が生じ、ラマン顕微分光装置1はノッチフィルタ6でレーリー散乱光を除去してラマン散乱光を分光器7で波長毎に分光し、CCD検出器8で分光されたラマンスペクトルを測定する。また、ラマン顕微分光装置1は、測定されたラマンスペクトル及びレーザ光の波長等に基づきコンピュータ9で所要の解析を行い、得られたラマン散乱光のラマンスペクトルを画像化した内容等をモニタ9aで表示できるようにしている。
【0057】
本実施形態のラマン顕微分光装置1は、レーザ光源2より発するレーザ光Rの波長を調整できるようにしている。また、対物レンズ4はハーフミラー3で反射されたレーザ光Rの光軸に沿って移動可能であり、カーボンナノチューブ薄膜11へ照射されるレーザ光Rの光径(図6参照)を調整でき、さらに、試料台5は図示しない駆動機構により図6に示すX方向及びY方向に適宜移動可能であり、レーザ光Rのカーボンナノチューブ薄膜11に対する照射位置を移動できるようにしている。
【0058】
さらにまた、本実施形態のラマン顕微分光装置1のコンピュータ9には、図6に示す辺の長さがL1、L2の測定対象枠12を決める処理、マッピング測定を行う処理、ラマン散乱向の測定強度値(ラマンスペクトルの強度)に基づき二次元又は三次元画像のラマンイメージを作成してカーボンナノチューブ薄膜11に含まれる単層カーボンナノチューブの位置を特定する処理、測定強度値に係るグラフを作成する処理、並びに測定されたラマンスペクトルの強度と照射したレーザ光の波長との対応関係から単層カーボンナノチューブの直径、カイラリティ、カイラリティの平均値、及び度数分布を過去の単層カーボンナノチューブに係る経験値に基づき演算して解析する処理等を規定したプログラムが内蔵されており、このプログラムに従ってコンピュータ9はレーザ光Rの照射を移動した箇所毎に測定及び解析処理を行う。
【0059】
よって、本実施形態のラマン顕微分光装置1は測定及び解析に対し、先ずレーザ光の照射箇所を適宜移動させてラマン分光法によりマッピング測定を行い、単層カーボンナノチューブの構造により変化するラマンスペクトルのバンド強度を用いてラマンイメージを作成し、カーボンナノチューブ薄膜11の中に含まれる単層カーボンナノチューブの位置を特定する。次に、ラマン顕微分光装置1は、特定した位置に対して測定対象枠12を設定し(図6参照)、測定対象枠12の内部でレーザ光の照射箇所を移動して複数回の測定を行い、測定したラマンスペクトルの強度から、単層カーボンナノチューブのチューブ直径、構造パラメータ(カイラリティの特定に関係)、度数分布等を演算により解析する。
【0060】
図7は、シリコン基板10上に形成されたカーボンナノチューブ薄膜11を上述したラマン顕微分光装置1で測定した一例を示すグラフである。このグラフの横軸は分光器7で分光された各波長の逆数(Wavenumber:波数)であり、縦軸は波長毎に対応して測定されたラマンスペクトルの強度(Intensitiy)である。
【0061】
この測定例では、図6に示す測定対象枠12のL1を20μm、L2を19μmに設定すると共に、カーボンナノチューブ薄膜11の周囲から一部がシリコン基板10へ位置するように設定対象枠12を配置し、レーザ光径を1μmにして設定対象枠12の内部を相異するY方向毎にX方向に沿ってレーザ光Rを移動させて計400回測定した。図7のグラフは、計400回の測定の中で、ピークが1個のみ表れた8個の測定結果を示したものである。なお、図7のグラフで横軸が300の値付近で生じているピークは、シリコン基板10に係るものであり、カーボンナノチューブ薄膜11に含まれる単層カーボンナノチューブに関係するものではない。
【0062】
図7のグラフでは、計8個の測定結果毎にピークP1〜P8が表出しており、各ピークP1〜P8における波数とスペクトルの強度との関係から、コンピュータ9は、単層カーボンナノチューブの直径、カイラリティ等を求める。
【0063】
このように、本発明に係るカーボンナノチューブ解析方法を用いることで、位置が固定された単層カーボンナノチューブが均等に分散したカーボンナノチューブ薄膜に対してラマン顕微分光法で確実に単層カーボンナノチューブを捉えて効率的に測定及び解析を行い、単層カーボンナノチューブの成分比率を定量的に評価できる。また、測定対象となる単層カーボンナノチューブの位置がカーボンナノチューブ薄膜中で固定されることで、レーザ光の照射箇所を同じ位置にして、照射するレーザ光の波長を吸収波長に相当する値に変化させ、共鳴効果を利用して変化させた波長毎に測定及び解析を行える。
【0064】
図8のグラフは、同一箇所で照射するレーザ光の波長を共鳴分子に対応させて切り替えた場合の測定結果を示す一例である。実線は一の単層カーボンナノチューブに対して励起波長となる488nmの波長で測定した結果を示し、破線は他の単層カーボンナノチューブに対して励起波長となる515nmの波長で測定した結果を示す。488nmの測定では5個のピークP10〜P15が表出し、488nmの波長に共鳴する単層カーボンナノチューブが計5個存在することが分かる。また、515nmの波長では1個のピークP20が表出し、515nmの波長に共鳴する単層カーボンナノチューブが1個存在し、共鳴効果を利用して特定の単層カーボンナノチューブを選択的に測定できる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例の適用が可能である。例えば、カーボンナノチューブ集合体と混合する糖類溶液は、シクロアミロース溶液に限定されるものではなく、シクロアミロース系溶液としてシクロアミロース誘導体の溶液(水溶液も含む)も適用できる。
【0066】
また、図1の第1フローチャートにおけるカーボンナノチューブ含有溶液の濾過(S3)の替わりに、カーボンナノチューブ含有溶液を遠心分離し、その上澄みのカーボンナノチューブ含有溶液を滴下するようにしてもよく、遠心分離を行うことで確実に不純物を排除できる。さらには、濾過及び遠心分離を行わずに不純物の沈下を待って上澄みのみを滴下するようにしてもよく、この場合は、濾過に用いるフィルター及び遠心分離に用いる遠心分離器の準備が不用となり、解析に係る費用低減を図れる。
【0067】
カーボンナノチューブ含有溶液が滴下される基板は、滴下されてから回転を開始させてスピンコートを行うようにしてもよい。また、カーボンナノチューブ含有溶液は、滴下するのではなく基板上に塗布することも可能である。さらに、滴下又は塗布により膜厚を一定にできる場合は、スピンコートを省略してもよく、特に、塗布の場合は、形成するカーボンナノチューブ薄膜の膜面積の大きさ及び膜厚をコントロールしやすい。
【0068】
また、カーボンナノチューブ含有溶液が滴下又は塗布される基板は、シリコン基板以外に他の材質の基板も適用でき、例えば平坦な面を有するガラス基板やマイカ(雲母SiO2 )の適用も可能である。
【0069】
測定に対する基板の影響排除を重視する場合は、図9(a)に示すようにシリコン基板10に形成されたカーボンナノチューブ薄膜11を剥離し、図9(b)に示すように、ラマン顕微分光装置1が有する変形例の試料台10の上に、剥離したカーボンナノチューブ薄膜11を載置して測定を行うようにしてもよい。
【0070】
変形例の試料台10は、カーボンナノチューブ薄膜11の外周寸法より小さい径の円形孔15bの中に十字型の支持部15aを設けており、円形孔15bを覆うようにカーボンナノチューブ薄膜11を載置することで、支持部15a及び円形孔15bの周縁部15gのみがカーボンナノチューブ薄膜11の膜面11aと部分的に接してカーボンナノチューブ薄膜11を支持する。このような試料台15を用いることで、支持部15aで区分けされた円形孔15bの計4個の空洞部15c〜15fではカーボンナノチューブ薄膜11のみが存在し、各空洞部15c〜15fに対応する箇所でレーザ光Rの照射を行うことで、実質的にカーボンナノチューブ薄膜11のみにレーザ光Rを照射でき、基板の影響を排除できる。
【0071】
また、カーボンナノチューブ薄膜の測定及び解析には、図5に示すラマン顕微分光装置1の替わりに、顕微分光法で測定及び解析を行える装置を適用することが可能である。具体的には、蛍光顕微分光装置、顕微赤外吸収分光装置、顕微可視紫外吸収分光装置等の各種顕微分光装置も同様に用いることができる。
【0072】
さらに、カーボンナノチューブ薄膜に含まれる単層カーボンナノチューブの特性を個別に評価するのではなく、各単層カーボンナノチューブの平均値の測定及び解析を行う場合には、レーザ光の光径内に1本の単層カーボンナノチューブが存在するようにシクロアミロース溶液の濃度を調整する必要はなく、また、顕微分光法に係るレーザ光より大きい光径のレーザ光を照射する分光法で測定及び解析を行ってもよい。
【0073】
この場合、分光法に係る装置としては、ラマン分光装置、蛍光分光装置、ホトルミネッセンス分光装置、カソードヅミネッセンス分光装置、赤外吸収分光装置、可視紫外吸収分光装置、蛍光X線分光装置、表面増強ラマン分光装置、表面増強赤外分光装置、近接場分光装置、又はX線光電子分光装置のいずれかを適用できる。なお、本発明に係るカーボンナノチューブ解析方法では、分光装置以外に電子線励起X線元素分析装置の適用も可能である。
【0074】
また、本発明に係るカーボンナノチューブ解析方法は、多層カーボンナノチューブ(Multi-Walled Carbon Nano Tubes:MWCNT)の特性測定及び解析にも適用でき、多層カーボンナノチューブが束になったバルク体に対して、上述した単層カーボンナノチューブが束になったバルク体の場合と同様の処理を行うことで多層カーボンナノチューブの解析も実現できる。
【0075】
図10は、本発明の第2実施形態に係る試料解析方法の処理手順を示す第2フローチャートである。第2実施形態は、試料としてカーボンナノチューブに限定されることなく、水との親和性が悪い試料を分光装置で適切に解析できるようにしたものであり、基本的な処理の流れは、図1に示す第1フローチャートと同様である。第2実施形態の試料解析方法で解析対象となる試料は固体、液体、気体を問わず、水に対する溶解度が10-4mol/L以下のものであり、固体としては球状タンパク質、分子量の大きい医薬品、疎水基を多く持つ有機分子などが該当し、液体としては液状の脂肪族化合物、液状の芳香族化合物が該当し、気体としては低沸点有機化合物、香料、揮発性有機有害物質などが該当し、グロブリン、ナフタレン、ヘキサンなどが挙げられる。なお、これらの試料に該当する物質には、各物質を構成する粒子(分子、又は分子がある程度の単位で結合して形成された粒子。この粒子を試料構成粒子と称す)が凝集して形成されたもの(凝集体)を含む(図11参照)。
【0076】
第2実施形態では、試料として分子量の大きい医薬品(固体)を用いており、また、試料と混合する糖類溶液には第1実施形態と同様に、シクロアミロース溶液を用いると共に、試料の解析を行う分光装置には、図5に示すラマン顕微分光装置1を用いている。
以下、図10に示す第2フローチャートに沿って、第2実施形態に係る試料解析方法の処理手順を説明する。
【0077】
先ず、第2実施形態では、試料とシクロアミロース溶液とを所要の容器に入れて混合し(S10)、図12に示すように試料及びシクロアミロース溶液を混合した容器に対して加熱処理を行う(S11)。このような加熱処理を行うことで、凝集していた各試料構成粒子の凝集力が断ち切られ、試料が各試料構成粒子に分離し、分離した試料構成粒子のそれぞれはシクロアミロース溶液の構成分子に取り囲まれて可溶し、可溶化した試料構成粒子が均一に分散して含まれる試料含有溶液が生成される。
【0078】
次に、基板(例えば、シリコン基板)に試料含有溶液を滴下し(S12)、試料含有溶液を乾燥して、図13に示すように、複数の試料構成粒子が均一に分散した試料含有物を基板上に形成する(S13)。なお、形成された試料含有物は、滴下した状態で固体化された形状になっており、各試料構成粒子は試料含有物中に溶液的な状態で位置が固定され、位置特定が容易になっている。
【0079】
最後に、形成した試料含有物を基板と共に、図5に示すラマン顕微分光装置1の試料台5に載置して試料の測定及び解析を行う(S14)。ラマン顕微分光装置1による測定及び解析は、第1実施形態と同様であり、試料含有物中の試料構成粒子にレーザ光を照射してラマン分光法に基づき行っており、試料構成粒子の形状的な特性をラマン顕微分光装置1のコンピュータ9により解析する。
【0080】
なお、第2実施形態でも、レーザ光の照射位置を適宜移動させて測定及び解析を行うことが可能であり(図6参照)、コンピュータ9が、照射位置に応じてマッピング測定を行う処理、ラマン散乱光の測定強度値(ラマンスペクトルの強度)に基づき二次元又は三次元画像のラマンイメージを作成して試料構成粒子の位置を特定する処理、測定強度値に係るグラフを作成する処理、並びに測定されたラマンスペクトルの強度と照射したレーザ光の波長との対応関係から試料構成粒子の形状寸法等を過去の経験値に基づき演算して解析する処理等を第1実施形態と同様に行う。また、レーザ光の照射位置を同じ位置にして、レーザ光の波長を吸収波長に相当する値に変化させ、共鳴効果を利用して変化させた波長毎に測定及び解析を行うことも勿論可能である(第1実施形態参照)。
【0081】
このように、第2実施形態の試料解析方法では、水に対する親和性が悪い試料をシクロアミロース溶液の特性を利用して可溶化すると共に、固体化した試料含有物中に試料の位置を固定するので、解析対象に向けてレーザ光を確実に照射でき、ラマン分光法により試料の特性を効率的に解析できる。なお、第2実施形態の試料解析方法も、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例の適用が可能であり、例えば、試料が汚れている場合は、生成した試料含有溶液を遠心分離又はフィルターで濾過してから板上に滴下又は塗布することが好適である。また、第2実施形態でも、第1実施形態で述べた各種変形例(図9(a)(b)の内容、様々な種類の分光装置を用いること等)を適用することが可能である。
【0082】
さらに、試料を複数の試料構成粒子に分離させるために、図12に示す加熱処理(第2フローチャートのS11)の代わりに、第1実施形態と同様に超音波を投射する処理を行うことも可能であり、さらにまた、試料を複数の試料構成粒子に分離可能な水以外の溶媒を用いてもよい。このような溶媒としては、エーテル、シクロヘキサン、エタノールなどが該当し、エーテル及びシクロヘキサンは図15に示す分析容器20を用いて試料構成粒子を分離する場合に適用でき、エタノールは水との混合性が良好なため、試料を含む糖類溶液と単に混合して攪拌するだけで、試料構成粒子の分離に適用できる。
【0083】
溶媒を用いて試料含有溶液を生成するには、先ず、この種の溶媒と試料とを混合して、分離した複数の試料構成粒子を含む中間生成液(試料構成粒子の分散液又は溶解液)を生成する。次に、図14に示すように、生成した中間生成液と糖類溶液(例えば、シクロアミロース溶液)を混合し、混合した液を図15に示す分析容器20に入れて充分に攪拌する。中間生成液とシクロアミロース溶液とは成分的に相異するため、攪拌して相互に混ざり合うことはないが、混合攪拌により中間生成液に含まれる試料構成粒子がシクロアミロース溶液へ抽出されて移動する。
【0084】
具体的な試料構成粒子の移動の状況としては、図16に示すように、最初、中間生成液中の溶媒成分(図中、大きい丸形状で示す)に存在していた試料構成粒子(図中、小さい丸で示す)は、混合攪拌によりシクロアミロース溶液と接する。このように接した試料構成粒子は、シクロアミロース溶液のシクロアミロース成分体(図中、U字状で示す)が有する空洞に取り込まれてシクロアミロース溶液側へ抽出される(図中、矢印で示す)。よって、充分に攪拌されることで、中間生成液に含まれる試料構成粒子はシクロアミロース溶液と接する機会が多くなり、シクロアミロース成分体へ随時取り込まれる。
【0085】
攪拌後は、図15に示すように、分析容器20の下方にシクロアミロース溶液相、上方に溶媒相が存在する相分離した相分離溶液が生成される。この相分離溶液では、シクロアミロース溶液相(糖類溶液相)に試料構成粒子が含まれ、溶媒相には試料構成粒子が存在しなくなっている。この状態で分析容器20のコック20aを開くと、下方の排出口20bから、下方のシクロアミロース溶液相を構成するシクロアミロース溶液を容器に取り出すことができ、この取り出したシクロアミロース溶液が試料含有溶液となる。このように溶媒を用いて、試料含有溶液を生成する場合は、加熱装置、超音波発生装置等が不要になるため各種装置の準備負担を低減でき、手軽に試料含有溶液を生成できる。
【0086】
なお、水に対する溶解度が10-4mol/L以下の試料の中で、試料構成粒子の凝集力がそれほど強くない試料などに対しては、試料と糖類溶液(シクロアミロース溶液、シクロアミロース誘導体の溶液)を混合攪拌することで、試料を複数の試料構成粒子に分離させられる場合もある。例えば、上述した凝集力がそれほど強くない試料が液体である場合、又は試料に対してエーテル、シクロヘキサン、エタノールなどの溶媒を用いた場合は、試料を混合した糖類溶液を振盪することで試料を複数の試料構成粒子へと分離でき、また、凝集力がそれほど強くない試料が気体の場合は、試料を混合した糖類溶液をバブリングすることで試料を複数の試料構成粒子へと分離でき、これらの場合では、上述した加熱処理、超音波処理、溶媒を用いた処理を省略して試料含有溶液を生成してもよい。
【0087】
また、試料含有溶液から形成する試料含有物を膜状(薄膜状も含む)にする場合は、図2に示すようにスピンコートを用いることが好ましく、さらには、試料含有物を紐状、ブロック状に形成するには、固定した基板の上に試料含有溶液を直線状に塗布、固まり状に塗布することが好適である。なお、測定及び解析に用いる分光装置の種類によっては、形成した試料含有物を適宜カットしてもよく、例えば図17(a)に示すように、試料含有物をスライスして、試料構成粒子を含む薄板状の試料含有片を形成して測定及び解析を行ってもよく、また、図17(b)に示すように短冊状の試料含有片、図17(c)に示すように立方状の試料含有片をカット・スライスにより形成してもよい。
【0088】
さらに、液体の試料、気体の試料を解析する場合も、上述した試料と糖類溶液(シクロアミロース溶液、シクロアミロース誘導体の溶液)を混合して試料含有溶液を生成する方法で対応でき、糖類溶液の包接現象により試料を構成する試料構成粒子を適宜取り込んで可溶化できる。例えば、図18に示すように、液体の試料、気体の試料を構成する試料構成粒子が小さい場合は、シクロアミロース成分体の螺旋状部の内部がポケット部として機能し、このポケット部に試料構成粒子が取り込まれて(包接現象と称す)、試料含有溶液を生成できる。そのため、トリクロロエチレンの気体のような試料でもシクロアミロースの上述した包接現象により、試料構成粒子がシクロアミロース成分体に取り込まれて、試料構成粒子が濃縮された均一な試料含有溶液を生成でき、好適な測定及び解析を実現でき、試料がアセトンのような気体の場合、試料構成粒子がシクロアミロース成分体に取り込まれて濃縮できることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ解析方法に係る処理手順を示す第1フローチャートである。
【図2】カーボンナノチューブ薄膜の形成に対して用いるスピンコートを説明する概略図である。
【図3】カーボンナノチューブ薄膜の厚み方向からの拡大断面図である。
【図4】(a)は適度に単層カーボンナノチューブが分散したカーボンナノチューブ薄膜の平面図であり、(b)は分散が不充分なカーボンナノチューブ薄膜の平面図である。
【図5】ラマン顕微分光装置の構成を示す概略図である。
【図6】レーザ光の照射状況を示す概略図である。
【図7】測定結果を示すグラフである。
【図8】共鳴効果を利用した測定結果を示すグラフである。
【図9】(a)は基板上に形成されたカーボンナノチューブ薄膜を剥離する状態を示す概略図であり、(b)は変形例の試料台にカーボンナノチューブ薄膜を載置する状態を示す概略図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る試料解析方法の処理手順を示す第2フローチャートである。
【図11】解析対象となる試料の構成を示す概略図である。
【図12】加熱処理を示す概略図である。
【図13】形成された試料含有物を示す概略図である。
【図14】中間生成液とシクロアミロース溶液の混合状態を示す概略図である。
【図15】相分離溶液を示す概略図である。
【図16】試料構成粒子の抽出を示す概略図である。
【図17】(a)は試料含有物をスライスした試料含有片を示す概略図、(b)は短冊状の試料含有片を示す概略図、(c)は立方状の試料含有片を示す概略図である。
【図18】試料構成粒子をポケット部に取り込む状態を示す概略図である。
【図19】バンドル状のカーボンナノチューブ集合体を示す概略図である。
【図20】(a)は従来の測定方法を示す図であり、(b)は別の従来の測定方法に係る図である。
【図21】従来の方法で形成される単層カーボンナノチューブが含まれる薄膜の構造を示す厚み方向からの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 ラマン顕微分光装置
2 レーザ光源
3 ハーフミラー
4 対物レンズ
5、15 試料台
6 ノッチフィルタ
7 分光器
8 CCD検出器
9 コンピュータ
10 シリコン基板
11 カーボンナノチューブ薄膜
R レーザ光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカーボンナノチューブが束になったカーボンナノチューブ集合体と糖類溶液とを混合し、
カーボンナノチューブ集合体を含む糖類溶液に超音波を投射してカーボンナノチューブ集合体から分離した複数のカーボンナノチューブが含むカーボンナノチューブ含有溶液を生成し、
生成したカーボンナノチューブ含有溶液を板上に滴下又は塗布し、
板上のカーボンナノチューブ含有溶液を乾燥してカーボンナノチューブ含有膜を形成し、
形成したカーボンナノチューブ含有膜に含まれるカーボンナノチューブの特性を分光装置により解析することを特徴とするカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項2】
前記糖類溶液は、シクロアミロース系溶液である請求項1に記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項3】
生成したカーボンナノチューブ含有溶液を遠心分離又はフィルターで濾過してから板上に滴下又は塗布する請求項1又は請求項2に記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項4】
板上に塗布又は滴下されたカーボンナノチューブ含有溶液をスピンコートする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項5】
板上に形成したカーボンナノチューブ含有膜を剥離し、
剥離したカーボンナノチューブ含有膜と部分的に接することが可能な試料台に該カーボンナノチューブ含有膜を載置して前記分光装置により解析する請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項6】
前記分光装置は、
カーボンナノチューブ含有膜へ光を照射する箇所を移動し、
光の照射により生じた光を測定して、カーボンナノチューブ含有膜に含まれるカーボンナノチューブの位置を特定し、
特定した位置に対して解析を行う請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項7】
前記分光装置は、
前記特定した位置に対して照射する光の波長を変化し、
変化した波長毎に解析を行う請求項6に記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項8】
前記分光装置は、ラマン分光装置、ラマン顕微分光装置、蛍光分光装置、蛍光顕微分光装置、ホトルミネッセンス分光装置、カソードヅミネッセンス分光装置、赤外吸収分光装置、顕微赤外吸収分光装置、可視紫外吸収分光装置、顕微可視紫外吸収分光装置、蛍光X線分光装置、表面増強ラマン分光装置、表面増強赤外分光装置、近接場分光装置、又はX線光電子分光装置のいずれか1つである請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項9】
水に対する溶解度が10-4mol/L以下である試料と糖類溶液とを混合して試料含有溶液を生成し、
生成した試料含有溶液を板上に滴下又は塗布し、
板上の試料含有溶液を乾燥して試料含有物を形成し、
形成した試料含有物に含まれる試料の特性を分光装置により解析することを特徴とする試料解析方法。
【請求項10】
試料は、複数の試料構成粒子の凝集体であり、
試料を混合した糖類溶液に超音波を投射して、凝集体から分離した複数の試料構成粒子を含む試料含有溶液を生成する請求項9に記載の試料解析方法。
【請求項11】
試料は、複数の試料構成粒子の凝集体であり、
試料を混合した糖類溶液を加熱して、凝集体から分離した複数の試料構成粒子を含む試料含有溶液を生成する請求項9に記載の試料解析方法。
【請求項12】
試料は、複数の試料構成粒子の凝集体であり、
試料を複数の試料構成粒子に分離することが可能な溶媒と試料とを混合して、凝集体から分離した複数の試料構成粒子を含む中間生成液を生成し、
生成した中間生成液と糖類溶液とを混合攪拌して、試料構成粒子を含む糖類溶液相と溶媒相とに相分離した相分離溶液を生成し、
生成した相分離溶液の糖類溶液相から試料構成粒子を含む糖類溶液を取り出して試料含有溶液を生成する請求項9に記載の試料解析方法。
【請求項13】
前記糖類溶液は、シクロアミロース系溶液である請求項9乃至請求項12のいずれか1つに記載の試料解析方法。
【請求項14】
生成した試料含有溶液を遠心分離又はフィルターで濾過してから板上に滴下又は塗布する請求項9乃至請求項13のいずれか1つに記載の試料解析方法。
【請求項15】
板上に塗布又は滴下された試料含有溶液をスピンコートする請求項9乃至請求項14のいずれか1つに記載の試料解析方法。
【請求項16】
板上に形成した試料含有物を剥離し、
剥離した試料含有物と部分的に接することが可能な試料台に該試料含有物を載置して前記分光装置により解析する請求項9乃至請求項15のいずれか1つに記載の試料解析方法。
【請求項17】
前記分光装置は、
試料含有物へ光を照射する箇所を移動し、
光の照射により生じた光を測定して、試料含有物に含まれる試料の位置を特定し、
特定した位置に対して解析を行う請求項9乃至請求項16のいずれか1つに記載の試料解析方法。
【請求項18】
前記分光装置は、
前記特定した位置に対して照射する光の波長を変化し、
変化した波長毎に解析を行う請求項17に記載の試料解析方法。
【請求項19】
前記分光装置は、ラマン分光装置、ラマン顕微分光装置、蛍光分光装置、蛍光顕微分光装置、ホトルミネッセンス分光装置、カソードヅミネッセンス分光装置、赤外吸収分光装置、顕微赤外吸収分光装置、可視紫外吸収分光装置、顕微可視紫外吸収分光装置、蛍光X線分光装置、表面増強ラマン分光装置、表面増強赤外分光装置、近接場分光装置、又はX線光電子分光装置のいずれか1つである請求項9乃至請求項18のいずれか1つに記載の試料解析方法。
【請求項1】
複数のカーボンナノチューブが束になったカーボンナノチューブ集合体と糖類溶液とを混合し、
カーボンナノチューブ集合体を含む糖類溶液に超音波を投射してカーボンナノチューブ集合体から分離した複数のカーボンナノチューブが含むカーボンナノチューブ含有溶液を生成し、
生成したカーボンナノチューブ含有溶液を板上に滴下又は塗布し、
板上のカーボンナノチューブ含有溶液を乾燥してカーボンナノチューブ含有膜を形成し、
形成したカーボンナノチューブ含有膜に含まれるカーボンナノチューブの特性を分光装置により解析することを特徴とするカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項2】
前記糖類溶液は、シクロアミロース系溶液である請求項1に記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項3】
生成したカーボンナノチューブ含有溶液を遠心分離又はフィルターで濾過してから板上に滴下又は塗布する請求項1又は請求項2に記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項4】
板上に塗布又は滴下されたカーボンナノチューブ含有溶液をスピンコートする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項5】
板上に形成したカーボンナノチューブ含有膜を剥離し、
剥離したカーボンナノチューブ含有膜と部分的に接することが可能な試料台に該カーボンナノチューブ含有膜を載置して前記分光装置により解析する請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項6】
前記分光装置は、
カーボンナノチューブ含有膜へ光を照射する箇所を移動し、
光の照射により生じた光を測定して、カーボンナノチューブ含有膜に含まれるカーボンナノチューブの位置を特定し、
特定した位置に対して解析を行う請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項7】
前記分光装置は、
前記特定した位置に対して照射する光の波長を変化し、
変化した波長毎に解析を行う請求項6に記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項8】
前記分光装置は、ラマン分光装置、ラマン顕微分光装置、蛍光分光装置、蛍光顕微分光装置、ホトルミネッセンス分光装置、カソードヅミネッセンス分光装置、赤外吸収分光装置、顕微赤外吸収分光装置、可視紫外吸収分光装置、顕微可視紫外吸収分光装置、蛍光X線分光装置、表面増強ラマン分光装置、表面増強赤外分光装置、近接場分光装置、又はX線光電子分光装置のいずれか1つである請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ解析方法。
【請求項9】
水に対する溶解度が10-4mol/L以下である試料と糖類溶液とを混合して試料含有溶液を生成し、
生成した試料含有溶液を板上に滴下又は塗布し、
板上の試料含有溶液を乾燥して試料含有物を形成し、
形成した試料含有物に含まれる試料の特性を分光装置により解析することを特徴とする試料解析方法。
【請求項10】
試料は、複数の試料構成粒子の凝集体であり、
試料を混合した糖類溶液に超音波を投射して、凝集体から分離した複数の試料構成粒子を含む試料含有溶液を生成する請求項9に記載の試料解析方法。
【請求項11】
試料は、複数の試料構成粒子の凝集体であり、
試料を混合した糖類溶液を加熱して、凝集体から分離した複数の試料構成粒子を含む試料含有溶液を生成する請求項9に記載の試料解析方法。
【請求項12】
試料は、複数の試料構成粒子の凝集体であり、
試料を複数の試料構成粒子に分離することが可能な溶媒と試料とを混合して、凝集体から分離した複数の試料構成粒子を含む中間生成液を生成し、
生成した中間生成液と糖類溶液とを混合攪拌して、試料構成粒子を含む糖類溶液相と溶媒相とに相分離した相分離溶液を生成し、
生成した相分離溶液の糖類溶液相から試料構成粒子を含む糖類溶液を取り出して試料含有溶液を生成する請求項9に記載の試料解析方法。
【請求項13】
前記糖類溶液は、シクロアミロース系溶液である請求項9乃至請求項12のいずれか1つに記載の試料解析方法。
【請求項14】
生成した試料含有溶液を遠心分離又はフィルターで濾過してから板上に滴下又は塗布する請求項9乃至請求項13のいずれか1つに記載の試料解析方法。
【請求項15】
板上に塗布又は滴下された試料含有溶液をスピンコートする請求項9乃至請求項14のいずれか1つに記載の試料解析方法。
【請求項16】
板上に形成した試料含有物を剥離し、
剥離した試料含有物と部分的に接することが可能な試料台に該試料含有物を載置して前記分光装置により解析する請求項9乃至請求項15のいずれか1つに記載の試料解析方法。
【請求項17】
前記分光装置は、
試料含有物へ光を照射する箇所を移動し、
光の照射により生じた光を測定して、試料含有物に含まれる試料の位置を特定し、
特定した位置に対して解析を行う請求項9乃至請求項16のいずれか1つに記載の試料解析方法。
【請求項18】
前記分光装置は、
前記特定した位置に対して照射する光の波長を変化し、
変化した波長毎に解析を行う請求項17に記載の試料解析方法。
【請求項19】
前記分光装置は、ラマン分光装置、ラマン顕微分光装置、蛍光分光装置、蛍光顕微分光装置、ホトルミネッセンス分光装置、カソードヅミネッセンス分光装置、赤外吸収分光装置、顕微赤外吸収分光装置、可視紫外吸収分光装置、顕微可視紫外吸収分光装置、蛍光X線分光装置、表面増強ラマン分光装置、表面増強赤外分光装置、近接場分光装置、又はX線光電子分光装置のいずれか1つである請求項9乃至請求項18のいずれか1つに記載の試料解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図15】
【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−64693(P2006−64693A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210587(P2005−210587)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
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