説明

クロスカップリング反応のためのPd(acac)2求核性複素環カルベン誘導体

本発明の実施態様により、一般式(I)により特徴付けられるパラジウム錯体が提供される:式中、Aは二座モノアニオン性配位子であり、NHCは求核性複素環カルベンであり、Zはアニオン性配位子である。このようなパラジウム錯体はクロスカップリング反応の開始において有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
この出願は、2006年4月4日に出願された米国仮出願第60/788989号及び2005年5月27日に出願された米国仮出願第60/685620号に基づく優先権を主張するもので、上記出願双方の全てを出典明示によって本明細書に援用するものとする。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、一般に、二座モノアニオン性配位子と、求核性複素環カルベン(NHC)と、炭素−炭素及び炭素−ヘテロ原子結合形成反応に用いられるアニオン性配位子とを有するパラジウム錯体に関する。
【0003】
以下においてはクロスカップリング反応とも称する、パラジウム触媒による炭素−炭素及び炭素−ヘテロ原子結合形成反応、例えば、これに限られるものではないが、鈴木−宮浦、スティール、ヘック、薗頭(Sonagashira)、根岸、熊田クロスカップリング、ブッフバルト−ハートウィッグのアミノ化、触媒的エーテル形成、ケトンの触媒的α−アリール化及び触媒的チオエーテル形成反応、のような従来型の反応は、有機化学において極めて強力な合成手段である。
【0004】
しかしながら、そのような反応の使用に関して、解消することが有利であると思われる大きな制限がある。そのような制限の一つには、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、あるいは、適切なトリアリールホスフィンとPd(II)もしくはPd(0)前駆体の何れかとから系中で形成される触媒のような、従来型の触媒は、一般的な活性が低く、それ故に高い変換率を実現するためには比較的高い濃度で存在する必要があることが挙げられる。パラジウムのコストの高さと、生成物中の費やされた触媒に起因するパラジウム金属残渣を取り除くことに関連するコストの高さとの双方のために、そのような高い濃度での使用は望ましくない。さらなる制限としては、そのような従来型の触媒は不活性化アリールブロミドを用いるクロスカップリング反応においてかなり低い活性を示し、アリールクロリドのカップリングに関しても一般的に非効率的であることが挙げられる。アリールクロリドは、ブロミド及びヨーダイドアナログに比べ、高い利便性及び魅力的なコストのために特に魅力的な基質の類であるため、そのような従来型の触媒の非効率性は問題である。
【0005】
パラジウム化合物と、工業及び研究室スケールの双方におけるそれらの触媒的使用とに焦点を置いた研究は、過去十年以上の間、増加している。無配位系が知られており、研究もされているが、金属中心への補助的な結合が触媒系の効率を決定付ける重大な役割を演じていることがよく理解されており、そのためにそのような無配位系は特に効果的ではない。結果として、P(t−Bu)Me及びP(t−Bu)のような嵩高く、電子が豊富なホスフィン配位子がPd(0)中間体を安定化させるために一般的に用いられるようになってきており、それゆえに効果的であると考えられている。しかしながら、ホスフィン配位子は、幾つかの欠点を有する:
(1)それらは空気酸化され易く、それ故に空気の無い状態での取り扱いが要求される、
(2)これらの配位子がより高い温度にさらされると、顕著なP−C結合の分解が起き、そのため、過剰量のホスフィンの使用が必要となる、
(3)それらは、しばしば、例えばPd(OAc)のようなPd前駆体と反応し、PPd(0)及びホスフィンオキシドを形成する還元工程となる;
以上の欠点は、それらの実用性を制限するものである。
【0006】
求核性複素環カルベン(NHC)配位子は、同種の触媒中における第三級ホスフィンに対する魅力的な代替物であるため、最近数年間でますます人気となっている。一般的にNHC類はホスフィンとは大きく異なる反応挙動を示し、例えば、高温安定性や酸化条件への耐性を示す。イミダゾリウム塩(空気感受性NHCへの空気安定な前駆体)とPd(0)もしくはPd(II)源との組み合わせに基づいた幾つかの系により、系中で触媒活性種を生成することが開発されており、そのような活性種は数多くの有機反応、主にクロスカップリング反応を媒介する。これらの予備的な系やその他は、NHC/Pd比率の反応効率に対する重要性を実証してきており、大抵の場合、1:1の配位子と金属の比率が最適であることを指摘している。そこから、モノマー性NHCを有するPd(II)錯体の開発とそれらの触媒活性の研究とを目標として努力がなされてきた。カルベンは既にパラジウム中心に配位しているため、一般的に、これらの特定の系では、より短い反応時間が観察される。特定のプレ触媒の使用により、配位子が配位する以前の配位子又はパラジウム前駆体の分解につながる副反応の可能性が減少することからも、溶液中での配位子安定化パラジウム種の量についてさらに知識を得ることができる。
【0007】
モノマー性(NHC)Pd(アリル)Cl錯体及び(NHC)Pd(カルボキシラート)錯体の合成が、多くの設計概念の中で報告されており、活性化機構及び触媒活性が研究されてきた。これらの錯体の大部分の合成は、空気感受性のNHC類と対応するパラジウム源との使用を含む、成功した系中(インサイツ)の系と直接関係している。例えば、ジアザブタジエン配位子とパラジウム前駆体としてのPd(OAc)もしくはPd(acac)との使用に関係するヘック反応のための触媒系が報告されている。
【0008】
2,4−ペンタジオン(アセチルアセトン、Hacac)及び他のβ−カルボニル化合物は、工業スケールで生成されるため、非常に用途が広く、遷移金属化学で一般的な配位子である。2,4−ペンタジオンは典型的にはη−O,O様式で金属イオンと結合するが、幾つか他の配位様式が白金(II)及びパラジウム(II)錯体において観察されている。従来の研究は、パラジウム(II)アセチルアセトナート及び新規錯体につながるホスフィンを有する関連化合物の反応性に焦点が置かれていたが、触媒的応用は報告されていない。最近、水素化触媒としてのそのような型の錯体の使用が広く研究されている。
【0009】
それ故に、炭素−炭素及び炭素−ヘテロ原子形成のための現在公知の触媒系の使用はしばしば問題を生じ得る。そのような問題には、(i)相対的に困難又は面倒な合成、(ii)高価な触媒前駆体及び/又は配位子の組み合わせ、(iii)配位子又は金属触媒の酸素及び水感受性、(iv)共通性の無いプレ触媒の構造及び独特で非モジュール状の配位子のために活性の最適化が困難なこと、及び、(v)アリールクロリドの活性化のための触媒が相対的に高い濃度で用いられる必要があること、が含まれる。そのため、上記の問題を解決する触媒もしくは触媒系であることが望ましい。そのような触媒系が、単離の必要無しに工業スケールで直接用いることができ、広範囲の温度と圧力にわたって安定であることも、望ましい。さらに、そのような錯体が、容易に利用可能な出発原料から単一の反応工程で調製できることが望ましい。
【0010】
〔詳細な説明〕
実施例もしくは他に指示される場合以外は、本明細書及び請求項で用いられる、成分、反応条件等について言及する全ての数字、値及び/又は表現は、全ての場合において「約」という単語で修飾されているものとして理解されるべきである。
【0011】
本特許出願において、多様な数値範囲が開示されている。これらの範囲は連続であるため、特に注記しない限り、それらは、それぞれの範囲の最大値と最小値、及び、それらの間の全ての値を含む。さらに、明確に他に指示されなければ、この明細書及び請求項で特定される多様な数値範囲は、そのような値を得る際に直面する様々な測定上の不明確性を反映する近似値である。
【0012】
以上及び本明細書全体で用いられるように、他に指示されなければ、以下の用語は以下に示す意味を持つものとして理解されるであろう。
【0013】
「クロスカップリング」は、新たな炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子結合を形成する反応もしくは一連の反応を意味する。
【0014】
「ヒドロカルビル」は、その置換基が水素、又は、炭素及び水素原子だけで構成されていることを意味する。当業者が理解するように、ヒドロカルビルは、他に指示されなければ、単語がそれ自身で用いられるか、他の単語と組み合わせて用いられるかによらず、定義が適用される以下のものを含む。それ故に、「アルキル」は、「アルキル」と同様に「アラルキル」、「アルカリール」等の「アルキル」部分にも適用される。
【0015】
ここに用いられるように、「アルキル」という用語は、直鎖状又は分岐状の、非環又は環であってよい脂肪族炭化水素基を意味し、鎖中に1から25の炭素原子を含んでなる。ある実施態様では、有用なアルキル基は、鎖中に1から12の炭素原子を含んでなる。「分岐状」は、例えば、メチル基、エチル基もしくはプロピル基のような一又は複数の低級アルキル基が、直鎖状アルキル鎖に付着されていることを意味する。アルキル基は、F、O、N及びSiから選択される一又は複数のヘテロ原子を含んでもよい。適するアルキル基の非限定的な例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、ノニル、デシル、シクロヘキシル及びシクロプロピルメチルが含まれる。
【0016】
「アリール」は、5から14、好ましくは6から10の炭素原子を含んでなる芳香族単環又は多環系を意味する。アリール基は、F、O、N及びSiから選択される一又は複数のヘテロ原子を含んでもよい。アリール基は、同一又は異なっていてもよく、ヒドロカルビル置換基を含んでいてもよい一又は複数の「環系置換基」により置換されていてもよい。適するアリール基の非限定的な例には、フェニル、ナフチル、インデニル、テトラヒドロナフチル及びインダニルが含まれる。
【0017】
「アラルキル」又は「アリールアルキル」は、アリール及びアルキルの双方が既に述べた通りであるアリール−アルキル基を意味する。ある態様では、有用なアラルキルは低級アルキル基を含む。そのような適するアラルキル基の非限定的な例には、ベンジル、フェネチル及びナフチレニルメチルであって、アルキレン基を介してノルボルネンに連結されたものが含まれる。ある態様では、有用なアラキルは、F、O、N及びSiから選択される一又は複数のヘテロ原子を含んでもよい。
【0018】
「環状アルキル」もしくはシクロアルキルは、一般的に3から10、幾つかの態様では5から10、他の態様では5から7の炭素原子を含む非芳香族性の単又は多環系を意味する。シクロアルキルは、同一又は異なっていてもよく、ヒドロカルビル置換基を含んでいてもよい一又は複数の「環系置換基」により置換されていてもよい。単環系シクロアルキルの非限定的な適する例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及び同様のものが含まれる。多環系シクロアルキルの非限定的な適する例には、1−デカリニル、ノルボルニル、アダマンチル及び同様のものが含まれる。
【0019】
ここで用いられるように、BPin、BCat及び9−BBNは、以下のものを意味する:

【0020】
本発明の実施態様によると、炭素−炭素及び炭素−ヘテロ原子結合形成反応のための触媒もしくは触媒系を容易に合成することが提供される。そのような触媒は、有利には、安価で、商業的に利用可能で、安定な前駆体に基づく。さらに、それらは酸素及び水安定性であり、任意の特定の型の基質を用いたクロスカップリング反応に最適化するように容易に変更できる化合物及び配位子の構造のものに基づいており、相対的に低い触媒濃度しか必要ではないにも関わらず、そのような反応での使用についてアリールクロリド基質を活性化することができる。
【0021】
本発明の幾つかの実施態様によると、式Iで一般的に表されるPd(パラジウム)錯体が提供される:

上式中、Aは以下の式IIで表される二座モノアニオン性配位子である:

上式中、X及びYのそれぞれはO、N又はSから独立に選択され、かつ、R、R、R、R、R、R及びRは、独立して、水素、メチル、直鎖状又は分岐状のC−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C20アラルキル、あるいは、C−C24アリールもしくは置換アリールを表し、nは0、1又は2の整数を表し;NHCは、求核性複素環カルベンであり;Zはアニオン性配位子であるが、ただし、X又はYがそれぞれ、O又はS、R及びRである時、Zは存在しない。
【0022】
さらに、RとRとそれらが結合している炭素原子、あるいは、RとRとそれらがそれぞれ結合している炭素とXとは、置換又は非置換芳香環を形成してもよい。
【0023】
式I及びIIの幾つかの代表例においては、X−Yは、二座モノアニオン性配位子、すなわち、同一の配位子中の二つの結合部位から中心金属原子への結合の存在によって特徴付けられるキレートであるか、あるいは、半不安定性(hemilabile)基、すなわち、同一の配位子中の二つの結合部位から中心金属原子への結合の存在によって特徴付けられるキレートであって、その結合の一つが溶媒により容易に破壊されて金属結合中心がアニオン性基の一つの末端と結合するようになり、それ故に金属中心に空の配位部位を生じるキレートである。NHCは、求核性複素環カルベン、つまり、金属中心に電荷密度を供与すること、すなわち電子対供与、のできる種である。Zは、Cl、Br、I、OAc、OMs、OTf、OTs、OCCF、アセチルアセトナート(acac)、トリフルオロアセチルアセトナート、ヘキサフルオロアセチルアセトナート(hfacac);ジベンゾイルメタナート(dbm)、ベンゾイルアセトナート(bac)及びテトラメチルヘプタンジオナート(tmhd)から選択される。
【0024】
式IIにおいて、二座アニオン性種X−Yは、中性種HX−Yから生成される。置換基X及びYは、O、N又はSから選択され、RないしRは上記のように定義される。下式において、例示されるX−Y配位子は、β−ジケトナート(O−O)、β−ジケチミナート(N−N)、β−ケチミナート(N−O)及びシッフ塩基(N−O)配位子である。したがって、二座アニオン性種は以下に示すように互変異性型で存在する:


【0025】
本発明の他の実施形態では、二座アニオンX−Yは以下から選択される:


【0026】
他の実施態様では、二座アニオンは、以下に示すトロポロン誘導体の一つか、その任意の適切な置換又は非置換ヒドロカルビル誘導体である。


【0027】
本発明のある実施態様では、パラジウム源及びX−Y源は、Pd(acac)、ビス(トリフルオロアセチルアセトナート)Pd、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)Pd;ビス(ジベンゾイルメタナート)Pd、ビス(ベンゾイルアセトナート)、ビス(テトラメチルヘプタンジオナート)Pd又はビス(トロポロナート)パラジウム(II)から選択される。
【0028】
本発明のある実施態様では、求核性複素環カルベン(NHC)は、式A、B又はCから選択される:

上式中、Rは、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリールもしくは置換アリールから選択される。
【0029】
ある実施態様では、式CのRは、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニルもしくは2−メチルフェニルから選択される。
【0030】
本発明のさらなる他の実施態様では、カルベン部分は、(NHC)Pd(acac)、(NHC)Pd(acac)Cl、(NHC)Pd(hfacac)、(NHC)Pd(hfacac)Cl、(NHC)Pd(dbm)、(NHC)Pd(dbm)Cl、(NHC)Pd(tmhd)、(NHC)Pd(tmhd)Cl、(NHC)Pd(bac)又は(NHC)Pd(bac)Clから選択され、ここでNHCは、IMes(N,N′−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール)−2−イリデン)、sIMes(N,N′−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール)−2−イリデン)、IPr(N,N′−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール)−2−イリデン)、sIPr(N,N′−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール)−2−イリデン)、IAd(N,N′−ビス(アダマンチル)イミダゾール−2−イリデン)、ICy(N,N′−ビス(シクロヘキシル)イミダゾール−2−イリデン)又はItBu(N,N′−ビス(tert−ブチル)イミダゾール−2−イリデン)から選択される。
【0031】
本発明の他の実施態様では、特定の錯体、(IPr)Pd(acac)(Pd錯体1)及び(IPr)Pd(acac)Cl(Pd錯体2)は、ブッフバルト−ハートウィッグのアリールのアミノ化反応及びα−ケトンのアリール化反応において触媒活性を示す。
【0032】
報告された(PPh)Pd(acac)と比較して、NHCを有するアナログは、以下に示すスキーム1の手順によって合成される。遊離カルベンIPrのPd(acac)との無水トルエン中における室温での反応により、(IPr)Pd(acac)(Pd錯体1)が黄色粉末として高い収率で得られた。その錯体中における、酸素をキレートする配位子及びCと結合した配位子は、13C及びH NMRの双方によって明らかであった。13C NMRスペクトルにおいて、160ppmより大きな6つの異なるシグナル:207.5(Cと結合したacac)、192.9、188.1、185.6、183.3(カルボニル炭素)及び161.2(カルベン性炭素)が観察された。H NMRスペクトルにおいては、4つのメチルプロトンのシングレットが、5.90及び4.78の二つのシグナルと共に、それぞれ、2.63、2.01、1.63及び1.31に観察された。最低領域のメチルピークは、最低領域のメテン性水素と共に、炭素に結合したacacと帰属され、一方他の三つのシグナルは酸素をキレートしている配位子と帰属された。PPhアナログは、自由な回転のために、炭素と結合した配位子のメチルに対し一つのピークしか示さなかったことに注目すべきである。明らかに、立体的要求の厳しいNHC配位子がこの回転を阻害している。X線回折により結晶構造が解明された時に、配位子の配置は明確に帰属された。パラジウム中心の周りの平面四角形配置が、ほとんどひずみ無く観察された。予想通り、Pd−C間のカルベン性結合の距離は、Pd−C一重結合の範囲内であった。NHCと反対側のPd−O結合は、強いトランス効果のために、Pd−O結合と比較して、引き伸ばされている。
〔スキーム1.(IPr)Pd(acac)(Pd錯体1)への合成経路〕

【0033】
4−クロロトルエン及びモルホリンのカップリングに対して、KOtBuを塩基とし、DMEを溶媒として、50℃で行った、ブッフバルト−ハートウィッグ反応に対するPd錯体1の活性試験は、中程度の触媒活性を示した(1mol%の触媒量で1時間で43%)。NaOtBuを塩基とし、トルエンを溶媒として、60℃で行った、4−クロロトルエン及びプロピオフェノンのカップリングに対しても、同様の中程度の活性が観察された。その反応は、1mol%の触媒量を用いると、終結に2時間を要した。触媒活性を増加させるために、その錯体は改良された。
【0034】
新たな種(PPh)Pd(acac)Clを得るための(PPh)Pd(acac)のベンゾイルクロリドとの反応が、一連の酸化的付加−還元的除去反応を提案し、報告されている。同様に、Pd錯体1は室温で1当量のHClと反応し、新たな種(IPr)Pd(acac)Cl(Pd錯体2)を黄色粉末としてほぼ定量的収率で与える(スキーム2)。Cと結合した配位子の消失は、NMRによっても再度明確に確認される。13C NMRにおいては、二つのカルボニル炭素(187.1, 184.1)及びカルベン性炭素(156.4)が現れる一方、H NMRにおいては、一つのacac配位子のみが帰属され得る:一つの水素からなる5.12でのシングレット及び二つのメチル性シングレット(1.84, 1.82)。再び、X線回折により結晶構造が解明された時に、配位子の配置は明確に帰属された。この錯体については、Pd−Oの距離はより類似している一方(2.036、2.044Å)、パラジウム中心の周りの平面四角形配置は僅かによりゆがめられていた。
〔スキーム2.(IPr)Pd(acac)Cl(Pd錯体2)への合成経路〕

【0035】
何れの理論に縛られるものではないが、Pd錯体1の形成とそれに続くPd錯体2の形成は、以下に示すように、スキーム3に図示される経路によって起こる。そのため、パラジウム付近での立体的要求の厳しいIPrの配置は、acac配位子のη2−O,O−キレートからO−単座型への遷移を伴い、それに続いてπ−ヒドロキソアリル型及びさらなるC結合型への変換が起こる。そのため、錯体1へのHClの酸化的付加、それに続くacacHの還元的除去により、錯体2が得られる。
〔スキーム3.Pd錯体1及び2の形成についての提唱するメカニズム〕

【0036】
その後、既に述べた条件でのモルホリン及び4−クロロトルエンのブッフバルト−ハートウィッグカップリング反応についてのPd錯体2の活性が試験された。1mol%の錯体2を用いると、そのカップリングは、たった30分で97%の収率で起こった(表1、エントリー1、単離収率)。有利なことに、低触媒量を用いて、良好な収率で生成物を得ることが可能であり、反応時間が増す室温においても可能であった。
【0037】
Pd錯体2を触媒として用いたアリールクロリドのアミノ化の結果を表1に示した。様々な基質が調べられた:ヘテロ芳香族(エントリー2)、立体的要求の厳しいもの(エントリー3)及び不活性クロリド(エントリー4)。立体的要求の厳しいジブチルアミンの4−クロロトルエンとのカップリングには長い時間が必要であり(エントリー5)、アリールクロリドの脱ハロゲン化が観察された唯一の反応であった(GCによると3%)。第一級アミンから始まる非対称第三級アミンの合成は依然として難関であるため、アニリン及び2−クロロピリジン間の反応が調べられた。N,N−ビス(2−ピリジル)アミノ配位子のワンポット合成、特にアリールクロリドを用いた合成は、これらの化合物の関与し得る適用例の数故に魅力的である:C−C結合形成、同種及び異種触媒、DNA結合及び非線形光学材料。二ピリジル化された生成物の形成は、2.1当量のクロリドを用いた際に、良好な収率で観察された。
〔表1.Pd錯体2を用いたアリールクロリドの、ブッフバルト−ハートウィッグのアリールのアミノ化〕

単離収率、二回の平均。 2.1当量のアリールクロリドを使用。
【0038】
ブッフバルト−ハートウィッグ反応に関して、Pd錯体2は、α−ケトンのアリール化反応に対してPd錯体1よりも効果的であった。プロピオフェノン及び4−クロロトルエンのカップリングの時間(表2、エントリー1)は半分に減少した。さらに、Pd錯体2を用いることにより、アリール−アリール及びアリール−アルキルケトンの種々のアリールクロリドとのカップリングが有利に行われた。
〔表2.Pd錯体2を用いたアリールクロリドとの、α−ケトンのアリール化〕

単離収率、二回の平均。
【0039】
Pd錯体2はPd錯体1よりも高い活性を示すため、(IPr)Pd(acac) 中間体を単離する必要の無いPd錯体2の合成についての利便性が望まれるであろう。その趣旨で、錯体2のマルチグラムのワンスポット合成が開発され、それは以下のスキーム4に要約される。遊離カルベンIPrのPd(acac)との無水1,4−ジオキサン中、室温での反応、それに続く等分子量のHClの添加によって、所望の生成物が形成される。
〔スキーム4.(IPr)Pd(acac)Cl(Pd錯体2)の合成のためのワンポットプロトコール〕

【0040】
本発明のある実施態様では、Pd錯体2の生成は、以下のスキーム5に示される反応経路によって達成することができる。この手順では、イミダゾイリウム塩(N,N′−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロリド)は、系中でPd(acac)錯体によって脱保護化され、その金属中心と結合するNHC、acac部分を置換するクロリドアニオン、及び、遊離のアセチルアセトンを生成する。有利なことに、この合成法は、遊離NHCの単離を必要とせず、生成物は許容可能な空気安定性を示す。
〔スキーム5.Pd(acac)及びNHC.HClからのPd錯体2合成のワンポットプロトコール〕

【0041】
スキーム5の方法で形成されたPd錯体2の活性をアリールブロミド及びクロリドのN−アリールのアミノ化について評価し、表3に示す。
〔表3.アリールブロミド及びクロリドの、N−アリールのアミノ化〕

反応条件:アリールハライド(1mmol)、アミン(1.1mmol)、(IPr)Pd(acac)Cl(1mol%)、KOBu(1.1mmol)、DME(1mL) 単離収率、二回の平均。
【0042】
全体として、本触媒系は、活性化(エントリー1)、中性(エントリー2)及び不活性化ブロミド(エントリー3)を用いた際に、環状ジアルキルアミンに対して良好な効率を示した。後半のエントリーにおいては、メトキシ基の好ましくない電子効果と、それに加えてのそのような基のオルト置換の立体障害との組み合わせが、活性の消失につながらないことに注目すべきである。第二級ジアルキルアミンは従来は結合しにくかったのだが、エントリー4に示されるように、o−ブロモトルエンと優れた収率で反応した。
【0043】
本発明のPd錯体の立体的に妨害された基質への寛容性をさらに厳密に調べるために、2,6−ジイソプロピルアニリンとの反応が実行された。有利には、トリ−及びテトラ−オルト−置換ジアリールアミンでさえ、穏やかな反応条件で得られた(エントリー5及び6)。さらに、エントリー8に示すように、反応性の低いアリールクロリドの反応性も調べられ、不活性なクロリドでさえも立体的障害アミンと結合(カップリング)することができた。ブロミドについて観察されたように、極端に妨害された基質が、クロリドを用いて、適度な反応時間、良好な収率で得ることができた(エントリー9−11)。最後に、1−及び2−ナフチルアミンの合成について調べられた。このような化合物はホール輸送材料又は光活性発色団としてよく知られており、多くの阻害剤のファルマコホアとして重要な役割を果たしている。本発明の触媒系は、これらの基質の急速なカップリングを提供し、穏やかな条件下で良好な収率でナフチルアミンを生成した(エントリー7、12及び13)。
【0044】
複素環部分は、生物学的に活性な分子として広く表されている。したがって、複素環ハライド及び特にヘテロ芳香族ハライドは、非常に興味のあるカップリング相手である。表4は、そのような複素環アリールブロミド及びクロリドを用いて得られた結果を示す。N、O及びS含有複素環ハライドに対する本触媒系態様の活性が調べられた。O及びS含有複素環ハライドを幾つかのアミンと反応させる試みは成功しなかったが、N含有複素環ハライドは適するカップリング相手だということが判明した。すなわち、2−ハロピリジンは第二級環状アミン(エントリー1及び2)、第二級非環状アミン(エントリー6)及びアニリン(エントリー7)と極端に短い時間で反応した。有利なことに、2−ハロピリジンに比べると強く不活性化されている3−ハロピリジン及びキノリンが高い収率で結合(カップリング)される(エントリー3−5及び8)。さらに、ピペリジン及び3−ハロピリジンのカップリングは、近い反応時間で成功した(エントリー3及び4)。
〔表4.N含有複素環ハライドの、N−アリールのアミノ化〕

反応条件:アリールハライド(1mmol)、アミン(1.1mmol)、(IPr)Pd(acac)Cl(1mol%)、KOBu(1.1mmol)、DME(1mL) 単離収率、二回の平均。
【0045】
本発明の態様のPd錯体の反応性のプロファイルをさらに調査するため、ほんのわずかな系しか立体障害アリールクロリドを用いてうまく行うことができると知られていないので、ケトンのαアリール化の効率について試験した。
【0046】
表4のN−アリールのアミノ化反応に用いられたものと同様の本発明の触媒系態様が最初に評価された。この手順を用いると、クロロベンゼン及びプロピオフェノン間の反応は3時間で終結する。さらなる最適化研究によると、溶媒及び塩基の性質に加え、立体化学も反応の進行における重要な因子であることが示された。表5は、幾つかのケトンの異なるアリールハライドとのカップリングの結果を示す。エントリー3及び4に示されるように、自然の状態及び活性化されたアリールクロリドはプロピオフェノンと急速に反応した。予想されたように、α−テトラロンのような、より活性の低いケトンは、完全な変換に達するまでより多くの時間を必要とした(エントリー5及び6)。オルト置換2−クロロ及び2−ブロモトルエンは、アセトフェノン(エントリー1及び2)及びα−テトラロン(エントリー10)の双方と効率よく反応した。有利なことに、本発明に係る態様の触媒系は、比較的短い時間で実現された高い収率で、不活性化された立体的要求の厳しいアリールクロリドのカップリングを活性化する役割を果たした(エントリー7)。
〔表5.アリールクロリド及びブロミドの、α−ケトンのアリール化反応〕

反応条件:アリールハライド(1mmol)、アミン(1.1mmol)、(IPr)Pd(acac)Cl(1mol%)、NaOBu(1.5mmol)、トルエン(1mL) 単離収率、二回の平均。
【0047】
さらに、ジ−オルト置換基質について、触媒系態様の適合性が明らかとなり、ブッフバルト−ハートウィッグ反応において以前に述べたように、極端に立体障害された基質に対する寛容性が強調された。さらなる利点として、ヘテロ芳香族ケトンは活性を消失することなくα−アリール化された(表5、エントリー11)。最終的には、カップリング相手としてのポリ芳香族ハライドの使用について調べられ、それぞれ1−ナフチル、2−ナフチル及び4−ビフェニル部分をα位に有する三つのプロピオフェノンがほとんど定量的収率で得られた(表5、12−14)。有利なことに、これらの生成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を用いることなく単離された。その生成物のアルカン類への溶解性の低さを利用すると、ペンタンでの簡単な洗浄とそれに続く濾過により、純粋な化合物12、13及び14が十分に単離され、このことは、考えられる限り、そのような化合物が初めてPd触媒クロスカップリング反応により形成されたことを実証するものであった。
【0048】
さらに、本発明の触媒系態様は、形成されるC−C結合がアルキル−アルキル、アルキル−アリール及びアルキル−アラルキルであるとみなされるC−C又はC−X結合形成を介して、他の有用なノルボルネン(NB)モノマーを得るための合成シントンとして機能化されたノルボルネンモノマー基質を利用する合成戦略の発展の上でも有用である。例示される基質としての有用種は、以下のモノマーD、E及びFから選択され得る:

上式中、以下の反応例の項の任意の反応について述べられるように、nは0又は1から選択され、mは0から5から選択され、FG(Functional Group(官能基))は任意の金属(限定されるものではないが、例えば、B、Li、Mg、Al、Zn、Si、ZrもしくはSn)、Y置換基、X置換基もしくはそれらの任意の組み合わせから選択される。ある有利な非限定的態様においては、FGは、Cl、Br、I、OTf、OMs、OTs、ZnBr、MgBr、SiF、Si(OR)、B(OH)、Bcat、9−BBN、Bpin、ケトン、アルデヒドもしくはアミンから選択される。
【0049】
本発明の触媒系態様を用いることのできる例示的な有機反応は、遷移金属触媒反応もしくは遷移金属触媒カップリング反応から選択され得る。より具体的には、例示的な遷移金属触媒反応は、鈴木、鈴木−宮浦、村橋、熊田、熊田−コリュー、熊田−玉尾、野崎、野崎−大嶌、根岸、檜山、玉尾−熊田、檜山−畠中、スティール、右田−小杉、ブッフバルト−ハートウィッグ、村橋、シアノ化、α−”カルボニル”アリール化、薗頭、カディオット−チョドキーウィクス(Cadiot-Chodkiewicz)、ヘック反応、触媒的エーテル形成、ケトンの触媒的アリール化、及び、触媒的チオエーテル形成反応である。
【0050】
有利なことに、モノマーD、E又はFの何れも、本発明の触媒系態様、例えばPd(NHC)(acac)Cl、の存在下で、適切な試薬及び適切な添加物と反応し、クロスカップリングされた生成物を生成することができる。
【0051】
したがって、本発明の態様によると、Pd前駆体としてPd(acac)を用いる新たなNHC含有パラジウム錯体の合成が提供されるであろう。Pd錯体2の態様は、非常に穏やかな条件で短い反応時間で反応するように、ブッフバルト−ハートウィッグ反応及びα−ケトンのアリール化に対して高い活性を示す。
【0052】
他の態様では、式I及びIIの空気及び湿気安定性パラジウム錯体がマルチグラムスケールで高収率で調製され、それらのモジュールのX−Y、PR,及びNHC配位子モチーフに基づき、それらの活性が反応に対して最適化される。
【0053】
このようにして、本発明の触媒は、多様な反応に対して有用である。本発明の触媒が用いられ得る反応スキームの非限定的な例には、以下の反応が含まれる。
【0054】
〔反応例〕
〔有機ホウ素(鈴木−宮浦もしくは鈴木反応)〕

上式中、R及びR′は、独立して、アリール、ヘテロアリール、アルケニルもしくはアルキルであって、さらにRはアルキニルであってもよく;Yは、R′′がCからCアルキルである(OH)もしくは(OR′′);R′′′が[C(CH、[(CH)−C(CH−(CH)]、エチル、プロピルもしくは9−BBNである(O(R′′′)O);R′′がCからCアルキルであって、Z*=Li、NaもしくはKであるR′′Z*;R′′及びZ*が上記のように定義される[(OR′′)Z*];Z*が上記のように定義される[(OMe)(9−BBN)Z*;あるいは、Z*がLi、Na、Kもしくは(NBuである(FZ*)、のうちの一つであり;かつ、XはI、Br、Cl、OTf、OTs、OMs、OP(O)(OPh)もしくはNBFである。
【0055】
〔有機リチウム(村橋反応)〕

上式中、R及びR′は上記のように定義され、XはI、BrもしくはClである。
【0056】
〔有機マグネシウム(熊田あるいは熊田−コリューあるいは熊田−玉尾反応)〕

上式中、R及びR′は上記のように定義され;YはCl、BrもしくはIであり;Xは、I、Br、Cl、OTf、OTs、Oms、ZがアルキルであるOC(O)NZ、あるいは、OAcである。
【0057】
〔有機アルミニウム(野崎あるいは野崎−大嶌あるいは根岸反応)〕

上式中、Rは、アルケニルもしくはアルキルであり、R′は、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルもしくはアルキルであり;Xは、I、Br、Cl、OAc、OAlMe2、OSiMe、OTf、OP(O)(OPh)もしくはOP(O)(OEt)であり;Yは、(OR′′)、あるいは、R′′がアルキルであってZがLi、NaもしくはKであるR′′Zである。
【0058】
〔有機亜鉛(根岸反応)〕

上式中、R及びR′は、独立して、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルもしくはアルキルであって、さらに、R′は、R′′′がアルキルであるC(O)R′′′であってもよく;Xは、I、Br、Cl、OTf、ONf、OTs、OAc、SOPhもしくはSMeであり;Yは、I、BrもしくはClである。
【0059】
〔有機シリコン(檜山あるいは玉尾−熊田あるいは檜山−畠中反応)〕

上式中、R及びR′は、独立して、アリール、ヘテロアリール、アルケニルもしくはアルキルであって、さらに、Rはアルキニルであってもよく;Xは、I、Br、Cl、OTf、ONfもしくはNBFであり;Yは、R′′′がCからCアルキルであるR′′′もしくは(OR′′′)もしくはHR′′′;RIVがアルキルもしくはアリールであって、0≦n≦3である、RIV3−nもしくはRIV3−n(OH);R及びRVIがアルキルであって、0≦n≦3である、R3−n(ORVI;RVIIがアルキルであり、RVIIIがヘテロアリールであって、0≦n≦3である、RVII3−nVIII;ZがLi、Na、Kもしくは(NBuであるFZ;ZがLi、Na、Kもしくは(NBuであるF;RIXがアルキルであって、ZがLi、Na、Kもしくは(NBu である、(ORIXZ、のうちの一つである。
【0060】
〔有機ジルコニウム(根岸反応)〕

上式中、R及びR′は、独立して、アルケニルであって、さらに、R′はアリールであってもよく;Xは、IもしくはBrであり;Yは、(CClである。
【0061】
〔有機スズ(スティールもしくは右田−小杉反応)〕

上式中、R及びR′は、独立して、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルもしくはアルキルであって、さらに、R′は、R′′′がアルキルであるC(O)R′′′もしくはC(N)R′′′であってもよく;Xは、I、Br、Cl、OTfもしくはIPh(OTf)であり;Yは、Me、Bu、ZがClであってRIVがアルキルであるRIV、あるいは、Rが(CHOMeであってRVIがアルキルであるRVIである。
【0062】
〔アミン(ブッフバルト−ハートウィッグ反応)〕

上式中、R及びR′は、独立して、H、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール(Nは、環内にあるか、ピロール、インドールもしくはカルバゾールである);R′′′がH、アルキルもしくはアリールであるC(O)R′′′;RIVがアルキルであるCOIV;RがH、アルキルもしくはアリールであるC(O)NR;RVIがアリールであるSOVI;RVIIがアルキルもしくはアリールである=S(O)RVII;=CPh、N=CPh、SiPhあるいはLiであり;R′′は、アリール、ヘテロアリール、アルケニルもしくはアルキル(XがOHの場合)であり;Xは、I、Br、Cl、OH(R′′がアルキルの場合)、OTf、ONf、OTsもしくはOSOPhである。
【0063】
〔アルコール(ブッフバルト−ハートウィッグ反応)〕

上式中、Rはアルキル、アリール、アルケニル、あるいは、RがアルキルであるSiR(上記のアルコールについては、対応するアルコキシド塩(例えば、Li、NaもしくはK)を用いてもよい);R′はアリールもしくはヘテロアリール;XはClもしくはBrである。
【0064】
〔チオール(村橋反応)〕

上式中、R及びR′は、独立して、アリールであって、さらに、Rは、アルキル及びSi(iPr)であってもよく;Xは、I、Br、Cl、OTfもしくはOTsである。
【0065】
〔シアノ化〕

上式中、[CN]は、KCN、NaCN、Zn(CN)、(CHC(OH)(CN)、MeSi(CN)もしくはK[Fe(CN)]であり;Xは、I;Br、ClもしくはOTfであり;Rはアリールもしくはヘテロアリールである。
【0066】
〔脱ハロゲン化〕

上式中、Rはアリールもしくはヘテロアリールであり;XはI、BrもしくはClである。
【0067】
α−“カルボニル”アリール化

上式中、Rはアルキル、アリール、ヘテロアリール、RがアルキルであるOR;RがアルキルもしくはアリールであるNRであり;R2,3は、独立して、H、F、アルキル、N=CPh、アリールもしくはRがアルキルであるCOであり;XはI、Br、ClもしくはOTfであり;Rはアリール、ヘテロアリールもしくはアルケニルである。
【0068】
アルキン(薗頭反応)[R”=アルキニルの時は、カディオット−チョドキーウィクス(Cadiot-Chodkiewicz)反応と呼ばれる]

上式中、Rは、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、アルキル、R′′′がアルキルもしくはO(アルキル)であるSiR′′′;RivがアルキルであってRがアリールであるか、RIVがOHであってRがアルキルであるSiRiv;R’がH、RVIがアルキルであるSiRVI;Xは、I、Br、ClもしくはOTf;R′′は、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、アルキル、あるいは、RVIIがアルキルであるC(O)RVIIである。
【0069】
〔アルケン(ヘック反応)〕

上式中、R1,2,3は、独立して、H、F、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、アルキル、RがH、アルキル、アリールもしくはヘテロアリールであるC(O)R;Rがアルキル、アリールもしくはヘテロアリールであるS(O)R;RがH、アルキル、アリールもしくはヘテロアリールであるCO;CN;RがアルキルもしくはアリールであるOR;ZがアルキルもしくはアリールであるSR;R10がアルキルもしくはアリールであるSiR10;R11がアルキルもしくはアリールであるSnR11;R12がH、アルキル、アリールもしくはヘテロアリールであるNR12;NO;R13がアルキルもしくはアリールであるPR13;R14がアルキルもしくはアリールであるP(O)R14、であり;Xは、I、Br、Cl、C(O)Cl、R15がアルキルであるCO(CO)R15;R16がHもしくはアリールであるCO16;OTf;ONf;OTs;SOCl;OP(O)(OPh);OP(O)(OEt);NBF;BiPhBF;あるいは、ZがOTf、BFであるIPh(Z)であり;Rは、アリール、ヘテロアリールもしくはアルケニルである。
【0070】
〔実験の詳細〕
他に注記されていなければ、Hおよび13C核磁気共鳴スペクトルは、室温、CDCl中で、Varian−300もしくはVarian−400MHz分光計(Cambridge Isotope Laboratories, Inc)で記録した。元素分析は、Robertson Microlit Laboratories,Inc.,Madison,NJで行った。IPr・HClは、文献の手順に従って合成した。
【0071】
〔実施例1〕 (IPr)Pd(acac)(Pd錯体1)の合成
グローブボックス中で、マグネットバーを備え付けたシュレンク管に、遊離カルベンIPr(855mg、2.2mmol)、Pd(acac)(609mg、2mmol)及び無水トルエン(30mL)を加え、ゴムキャップで封止した。その混合液を室温で2時間攪拌した。溶媒を真空中で蒸発させ、THF(25mL)を加えた。その溶液を濾過し、固形物をTHF(2x5mL)で洗浄した。溶媒を真空中で蒸発させ;その後、その錯体を冷ペンタン(25mL)で粉状にし、溶液から濾過した。クロロホルム/ペンタン混合液(25/75)で再結晶し、1.28g(93%)の所望の化合物を得た。1H-NMR (400 MHz, C6D6): δ 7.28-7.24 (m, 2H), 7.18 (d, J= 8.0 Hz, 4H), 6.47 (s, 2H), 5.90 (s, 1H), 4.78 (s, 1H), 2.88 (q, J= 6.8 Hz, 4H), 2.63 (d, J= 0.8 Hz, 3H), 2.01 (d, J= 0.8 Hz, 3H), 1.63 (s, 3H), 1.35 (d, J= 6.8, 12H), 1.31 (s, 3H), 0.97 (d, J= 6.8, 12H). 13C-NMR (100 MHz, C6D6): 207.5, 192.9, 188.1, 185.6, 183.3, 161.2, 146.9, 135.9, 131.2, 130.4, 125.7, 125.2, 124.7, 124.5, 104.8, 100.3, 47.2, 31.9, 31.5, 29.3, 29.0, 28.9, 28.1, 27.0, 26.5, 26.2, 25.1, 24.0, 23.8, 23.4. 元素分析: 計算値: C, 64.11; H, 7.27; N, 4.04. 実測値: C, 63.89; H, 7.06; N: 3.86.
【0072】
〔実施例2〕 (IPr)Pd(acac)Cl(Pd錯体2)のワンポット合成
グローブボックス中で、マグネットバーを備え付けたシュレンク管に、遊離カルベンIPr(2.73g、7mmol)、Pd(acac)(1.53g、5mmol)及び無水ジオキサン(50mL)を加え、ゴムキャップで封止した。その混合液を室温で2時間攪拌した。その後、ジオキサン中の4MのHCl1.25mLをその溶液に加え、その混合液をさらに2時間室温で攪拌した。溶媒を真空中で蒸発させ、それ以上固体が溶解しなくなるまでジエチルエーテルを加えた(20mL)。その溶液を濾過し、固形物をジエチルエーテル(2x10mL)で洗浄した。溶媒を真空中で蒸発させ、得られた粉末を一晩真空下に置き、2.85g(90%)の所望の化合物を得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.51 (t, J= 7.6 Hz, 2H), 7.35 (d, J= 8 Hz, 4H), 7.12 (s, 2H), 5.12 (s, 1H), 2.95 (q, J= 6.4 Hz, 4H), 1.84 (s, 3H), 1.82 (s, 3H), 1.34 (d, J= 6.4 Hz, 12H), 1.10 (d, J= 6.4 Hz, 12H). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): 187.1, 184.1, 156.4, 147.0, 135.5, 134.8, 130.9, 125.7, 124.7, 124.6, 99.9, 29.1, 30.0, 27.6, 26.8, 23.7, 23.5. 元素分析: 計算値: C, 61.05; H, 6.88; N, 4.45. 実測値: C, 60.78; H, 7.15; N: 4.29.
【0073】
〔実施例3〕 (IPr)Pd(acac)Cl(Pd錯体2)のワンポット合成
グローブボックス中で、マグネットバーを備え付けたシュレンク管に、IPr・HClのイミダゾリウム塩(2.96g、7mmol)、Pd(acac)(1.53g、5mmol)及び無水ジオキサン(100mL)を加え、ゴムキャップで封止した。その管をグローブボックスの外に取り出し、油浴中に置き、100℃で6時間攪拌し続けた。その後、その溶液は、固体が残留することなく透明に見えた。溶媒を真空中で蒸発させ、それ以上固体が溶解しなくなるまでジエチルエーテルを加えた。その溶液を濾過し、固形物をジエチルエーテル(2x10mL)で洗浄した。溶媒を真空中で蒸発させ、黄色粉末として2.99g(95%)の所望の化合物を得た。
1H NMR (d, 400 MHz, CDCl3)〕: 7.51 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 7.12 (s, 2H), 5.12 (s, 1H), 2.95 (q, J = 6.4 Hz, 4H), 1.84 (s, 3H), 1.82 (s, 3H), 1.34 (d, J = 6.4 Hz, 12H), 1.10 (d, J = 6.4 Hz, 12H).
13C NMR (d, 100 MHz, CDCl3)〕: 187.1, 184.1, 156.4, 147.0, 135.5, 134.8, 130.9, 125.7, 124.7, 124.6, 99.9, 29.1, 30.0, 27.6, 26.8, 23.7, 23.5.
C32H43ClN2O2Pd (MW 629.57)に対する計算値: C, 61.05; H, 6.88; N, 4.45. 実測値: C, 60.78; H, 7.15; N: 4.29.
【0074】
〔実施例4−9〕
クロスカップリング反応:アリールクロリドの第一級及び第二級アミンとのブッフバルト−ハートウィッグ反応
実施例6−11のそれぞれにおいて、以下の手順は、特定のアミン及びアリールクロリドを用いて行い、それらの実施例で形成された生成物は、表1に示される。
【0075】
グローブボックス中で、2(1mol%、6mg)のカリウムtert−ブトキシド(1.1mmol、124mg)及びDME(1mL)を順番にマグネットバーを備え付けたバイアルに加え、セプタムを取り付けたネジ蓋で封止した。グローブボックスの外で、アミン(1.1mmol)及びアリールクロリド(1mmol)をセプタムを通して順番に注入した。そのバイアルを50℃の油浴中に置き、混合液を攪拌プレートの上で攪拌した。反応は、ガスクロマトグラフィーで観察した。反応が終結したか、あるいは、さらなる変換を観察できなくなった時、バイアルを室温まで冷まさせた。反応混合液に水を加え、有機層をジエチルエーテルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、溶媒を真空中で蒸発させた。必要に応じて、生成物は、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/酢酸エチル:9/1)により精製した。報告した収率は、2回の平均である。
【0076】
〔実施例4〕 4−(4−メチルフェニル)モルホリン(表1、エントリー1)。この手順により、171mg(97%)の標題の化合物が得られた。
【0077】
〔実施例5〕 4−(2−ピリジニル)モルホリン(表1、エントリー2)。この手順により、160mg(98%)の標題の化合物が得られた。
【0078】
〔実施例6〕 4−(2,6−ジメチルフェニル)モルホリン(表1、エントリー3)。この手順により、170mg(90%)の標題の化合物が得られた。
【0079】
〔実施例7〕 4−(4−メトキシフェニル)モルホリン(表1、エントリー4)。この手順により、190mg(99%)の標題の化合物が得られた。
【0080】
〔実施例8〕 N,N−ジブチル−p−トルイジン(表1、エントリー5)。この手順により、207mg(95%)の標題の化合物が得られた。
【0081】
〔実施例9〕 N−フェニル−N−(ピリジン−2−イル)ピリジン−2−アミン(表1、エントリー6)。2−クロロピリジン(2.1mmol、197mL)、アニリン(1mmol、93mL)、KOBu(2.2mmol、248mg)、(IPr)Pd(acac)Cl(1mol%、12.6mg)及びDME(2mL)を用いたこの手順により、230mg(93%)の標題の化合物が得られた。1H NMR (400 Mhz, (CD3)2CO): d 8.22 (d, J= 4 Hz, 2H), 7.61 (m, 2H), 7.38 (t, J= 8.1 Hz, 2H), 7.24-7.16 (m, 3H), 7.00 (d, J= 8.4 Hz, 2H), 6.97-6.94 (m, 2H). 13C NMR (100 MHz, ((CD3)2CO): 159.5 (C), 149.4 (CH), 146.6(C), 138.6 (CH), 130.7 (CH), 128.9 (CH), 126.6 (CH), 119.3 (CH), 118.0 (CH). 元素分析: C16H13N3 (MW 247.29)に対する計算値: C, 77.71; H, 5.30; N, 16.99. 実測値: C, 77.79; H, 5.57; N, 16.93.
【0082】
〔実施例10−15〕
アルキルもしくはアリールケトンのα−ケトンのアリール化
実施例12−17のそれぞれにおいて、以下の手順は、特定のケトン及びアリールクロリドを用いて行い、それらの実施例で形成された生成物は、表2に示される。
【0083】
グローブボックス中で、2(1mol%、6mg)のナトリウムtert−ブトキシド(1.5mmol、144mg)及びトルエン(1mL)を順番にマグネットバーを備え付けたバイアルに加え、セプタムを取り付けたネジ蓋で封止した。グローブボックスの外で、ケトン(1.1mmol)及びアリールクロリド(1mmol)をセプタムを通して順番に注入した。そのバイアルを60℃の油浴中に置き、混合液を攪拌プレートの上で攪拌した。反応は、ガスクロマトグラフィーで観察した。反応が終結したか、あるいは、さらなる変換を観察できなくなった時、バイアルを室温まで冷まさせた。反応混合液に水を加え、有機層をジエチルエーテルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、溶媒を真空中で蒸発させた。必要に応じて、生成物は、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/酢酸エチル:9/1)により精製した。報告した収率は、2回の平均である。
【0084】
〔実施例10〕 2−(4−メチルフェニル)−1−フェニル−1−プロパノン(表2、エントリー1)。この手順により、216mg(97%)の標題の化合物が得られた。
【0085】
〔実施例11〕 1−(ナフチル)−2−フェニルエタノン(表2、エントリー2)。この手順により、173mg(70%)の標題の化合物が得られた。
【0086】
〔実施例12〕 α−フェニルシクロヘキサノン(表2、エントリー3)。この手順により、150mg(86%)の標題の化合物が得られた。
【0087】
〔実施例13〕 2−(2,6−ジメチルフェニル)−1−フェニルエタノン(表2、エントリー3)。この手順により、212mg(95%)の標題の化合物が得られた。1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): d 8.09 (d, J= 7.2 Hz, 2H), 7.64 (t, J= 7.2 Hz, 1H), 7.54 (t, J= 8.0 Hz, 2H), 7.14-7.06 (m, 3H), 4.40 (s, 2H), 2.21 (s, 6H). 13C NMR (100 MHz, CD2Cl2): 197.5 (C), 137.7 (C), 133.7 (CH), 133.4 (C), 129.2 (CH), 128.5 (CH), 128.3 (CH), 127.3 (CH), 114.0 (C), 40.2 (CH2), 20.6 (CH3). 元素分析: C16H16O (MW 224.30)に対する計算値: C, 85.68; H, 7.19. 実測値: C, 85.36; H, 7.23.
【0088】
〔実施例14〕 2−(p−メトキシフェニル)−アセトフェノン(表2、エントリー5)。この手順により、208mg(92%)の標題の化合物が得られた。
【0089】
〔実施例15〕 1−フェニル−2−(3−ピジジニル)−1−プロパノン(表2、エントリー6)。この手順により、188mg(89%)の標題の化合物が得られた。
【0090】
〔実施例16−28(表3)〕
〔(IPr)Pd(acac)Cl(1)の合成〕: 触媒は、実施例3について述べたのと同様の方法で調製した。
【0091】
アリールハライドの第一級及び第二級アミンとのブッフバルト−ハートウィッグクロスカップリング
一般的手順: グローブボックス中で、(IPr)Pd(acac)Cl(0.01mmol、6.3mg)、カリウムtert−ブトキシド(1.1mmol、124mg)及び無水ジメトキシエタン(DME)(1mL)を順番にマグネットバーを備え付けたバイアルに加え、セプタムを取り付けたネジ蓋で封止した。グローブボックスの外で、アミン(1.1mmol)及びアリールハライド(1mmol)をセプタムを通して順番に注入した。二つの出発原料のうちの一方が固体であった場合は、それはグローブボックス内においてバイアルに加えられ、DME及び第二の出発原料はグローブボックスの外、アルゴン下で加えられた。その後、他に指示されなければ、反応混合液は室温で攪拌した。反応が終結したか、あるいは、さらなる変換をガスクロマトグラフィー(GC)によって観察できなくなった時、バイアルを室温まで冷まさせた。反応混合液に水を加え、有機層をtert−ブチルメチルエーテル(MTBE)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を真空中で蒸発させた。必要に応じて、生成物は、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。報告した収率は、少なくとも2回の平均である。
【0092】
〔実施例16〕 N−4−(シアノフェニル)ピペリジン(表3、エントリー1)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、95/5)の後、168mg(90%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (400 MHz, CDCl3)〕: d 7.42 (d, J = 9.0 Hz, 2H, HAr), 6.82 (d, J = 9.0 Hz, 2H, HAr), 3.31 (t, J = 5.1 Hz, 4H, H1), 1.64 (s broad, 6H, H2 + H3).
13C NMR (100 MHz, CDCl3)〕: d 153.5 (C, C-CN), 133.3 (CH, CAr), 120.3 (C, C-N), 114.0 (CH, CAr), 98.7 (C, CN), 48.3 (CH2, C1), 25.2 (CH2, C2), 24.2 (CH2, C3).
【0093】
〔実施例17〕 N−(o−トリル)モルホリン(表3、エントリー2)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、90/10)の後、170mg(96%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.20-7.15 (m, 2H, HAr ), 7.03-6.97 (m, 2H, H Ar ), 3.84 (t, J = 4.6 Hz, O-CH2), 2.90 (t, J = 4.6 Hz, 6H, N-CH2), 2.31 (s, 3H, CH3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 151.5 (C, CAr), 132.8 (CH, CAr), 131.3 (CH, CAr), 126.8 (CH, CAr), 123.6 (CH, CAr), 119.2 (CH, CAr), 67.5 (CH2, O-CH2), 52.5 (CH2, N-CH2), 18 .0 (CH3, CH3).
【0094】
〔実施例18〕 N−(2−メトキシフェニル)モルホリン(表3、エントリー3)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、90/10)の後、186mg(96%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.00-6.95 (m, 2H, HAr ), 6.89 (d, J = 6.6 Hz, 1H, HAr ), 6.83 (d, J = 7.5 Hz, 1H, HAr ), 3.85 (t, J = 4.5 Hz, 2H, O-CH2 ), 3.81 (s, 3H, OMe), 3.03 (t, J = 4.5 Hz, 2H, N-CH2).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 152.1 (C, CAr-O), 141.0 (C, CAr-N), 123.0 (CH, CAr), 120.9 (CH, CAr), 117.9 (CH, CAr), 111.2 (CH, CAr), 67.1 (CH3, OMe), 55.2 (CH2, O-CH2), 51.0 (CH2, N-CH2).
【0095】
〔実施例19〕 N,N−ジブチル−N−(o−トリル)アミン(表3、エントリー4)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/DCM、90/10)の後、210mg(96%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.17-7.12 (m, 2H, HAr), 6.62-6.56 (m, 2H, HAr), 3.20 (t, J = 7.8 Hz, 4H, H4), 2.19 (s, 3H, CAr-CH3), 1.56-1.48 (m, 4H, H3), 1.35-1.27 (m, 4H, H2), 0.92 (t, J = 7.5 Hz, 6H, H1).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 148.3 (C, CAr), 131.9 (C, CAr), 129.2 (CH, CAr), 115.3 (CH, CAr), 111.9 (CH, CAr), 50.9 (CH2, C4), 29.6 (CH2, C3), 20.4 (CH2, C2), 16.7 (CH3, CAr-CH3), 14.0 (CH3, C1).
【0096】
〔実施例20〕 N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N−(o−トリル)アミン(表3、エントリー5)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/DCM、90/10)の後、246mg(92%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.27-7.20 (m, 3H, HAr), 7.07 (d, J = 7.2 Hz, 1H, H Ar ), 6.91 (t, J = 7.5 Hz, 1H, HAr), 6.63 (t, J = 6.0 Hz, 1H, HAr), 6.12 (d, J = 8.4 Hz, 1H, HAr ), 3.12 (septet, J = 6.5 Hz, 2H, CH(CH3)2), 2.30 (s, 3H, CAr-CH3), 1.16 (d, J = 6.5 Hz, 6H, CH(CH3)2), 1.10 (d, J = 6.5 Hz, 6H, CH(CH3)2).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 147.3 (C, CAr-N), 146.2 (C, CAr-N), 135.9 (C, CAr), 130.3 (CH, CAr), 127.2 (CH, CAr), 127.1 (CH, CAr), 123.9 (CH, CAr), 121.3 (C, CAr), 117.7 (CH, CAr), 111.6 (CH, CAr), 28.4 (CH, CH(CH3)2), 24.8 (CH3, CH(CH3)2), 23.2 (CH3, CH(CH3)2), 17.7 (CH3, CAr-CH3).
【0097】
〔実施例21〕 N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アミン(表3、エントリー6)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/DCM、90/10)の後、264mg(94%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.13-7.09 (m, 3H, HAr), 6.91 (d, J = 7.5 Hz, 2H, HAr), 6.69 (t, J= 7.5 Hz, 1H, HAr), 3.15 (septet, J = 6.6 Hz, 2H, CH(CH3)2), 1.97 (s, 6H, CAr-CH3), 1.11 (d, J = 6.6 Hz, 12H, CH(CH3)2).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 144.3 (C, CAr), 143.3 (C, CAr), 139.0 (C, CAr), 129.7 (CH, CAr), 125.8 (C, CAr), 125.0 (CH, CAr), 123.4 (CH, CAr), 119.8 (CH, CAr), 28.2 (CH, CH(CH3)2), 23.7 (CH3, CH(CH3)2), 19.5 (CH3, CAr-CH3).
【0098】
〔実施例22〕 N−(2−ナフチル)ピペリジン(表3、エントリー7)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/DCM、95/5)の後、186mg(88%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (400 MHz, CDCl3)〕: d 7.69-7.65 (m, 3H, HAr), 7.39-7.35 (m, 1H, HAr), 7.28-7.23 (m, 2H, HAr), 7.11 (s, 1H, HAr), 3.23 (t, J = 4.8 Hz, 4H, H1), 1.77-1.71 (m, 4H, H2), 1.62-1.58 (m, 2H, H3).
13C NMR (100 MHz, CDCl3)〕: d 150.3 (C, N-CAr), 134.9 (C, CAr), 128.7 (CH, CAr), 128.5 (C, CAr), 127.6 (CH, CAr), 126.9 (CH, CAr), 126.3 (CH, CAr), 123.3 (CH, CAr), 120.4 (CH, CAr), 110.5 (CH, CAr), 51.2 (CH2, C1), 26.1 (CH2, C2), 24.6 (CH2, C3).
【0099】
〔実施例23〕 N,N−ジブチル−N−(4−メトキシフェニル)アミン(表3、エントリー8)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、95/5)の後、219mg(93%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 6.80 (d, J = 2.1 Hz, 2H, HAr), 6.63 (d, J = 2.1 Hz, 2H, HAr), 3.72 (s, 3H, O-CH3), 3.16 (t, J = 7.8 Hz, 4H, H4), 1.56-1.46 (m, 4H, H3), 1.38-1.26 (m, 4H, H2), 0.93 (t, J = 7.5 Hz, 6H, H1).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 151.3 (C, CAr-O), 143.5 (C, CAr-N), 114.9 (CH, CAr), 114.7 (CH, CAr), 55.9 (CH3, O-CH3), 51.8 (CH2, C4), 29.7 (CH2, C3), 20.6 (CH2, C2), 14.1 (CH3, C1).
【0100】
〔実施例24〕 N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−(o−トリル)アミン(表3、エントリー9)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、95/5)の後、180mg(85%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.15-7.09 (m, 4H, HAr ), 6.99-6.96 (m, 1H, HAr), 6.72 (t, J = 4.8 Hz, 1H, HAr), 6.19 (d, J = 6.0 Hz, 1H, HAr), 2.32 (s, 3H, CAr-CH3), 2.20 (s, 6H, CAr-CH3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 144.3 (C, CAr), 139.9 (C, CAr), 135.7 (C, CAr), 130.4 (CH, CAr), 128.7 (CH, CAr), 127.0 (CH, CAr), 125.7 (CH, CAr), 122.4 (C, CAr), 118.2 (CH, CAr), 111.8 (CH, CAr), 18.3 (CH3, CAr-CH3), 17.7 (CH3, CAr-CH3).
【0101】
〔実施例25〕 N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N−(p−トリル)アミン(表3、エントリー10)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/DCM、90/10)の後、259mg(97%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.26-7.18 (m, 3H, HAr), 7.93 (d, J = 6.0 Hz, 2H, HAr), 6.39 (d, J = 8.4 Hz, 2H, HAr), 3.19 (septet, J = 6.3 Hz, 2H, CH(CH3)2), 2.22 (s, 3H, CH3), 1.13 (d, J = 6.3 Hz, 12H, CH(CH3)2).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 147.5 (C, CAr-N), 146.0 (C, CAr-N), 135.7 (C, CAr), 129.9 (CH, CAr), 127.17 (C, CAr), 126.99 (C, CAr), 123.9 (CH, CAr), 113.2 (CH, CAr), 28.4 (CH, CH(CH3)2), 24.0 (CH3, CH(CH3)2), 20.6 (CH3, CH3-CAr).
【0102】
〔実施例26〕 N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N−(o−トリル)アミン(表3、エントリー11)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/DCM、90/10)の後、237mg(89%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.27-7.20 (m, 3H, HAr), 7.07 (d, J = 7.2 Hz, 1H, HAr), 6.91 (t, J = 7.5 Hz, 1H, HAr), 6.63 (t, J = 6.0 Hz, 1H, HAr), 6.12 (d, J = 8.4 Hz, 1H, HAr ), 3.12 (septet, J = 6.5 Hz, 2H, CH(CH3)2), 2.30 (s, 3H, CAr-CH3), 1.16 (d, J = 6.5 Hz, 6H, CH(CH3)2), 1.10 (d, J = 6.5 Hz, 6H, CH(CH3)2).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 147.3 (C, CAr-N), 146.2 (C, CAr-N), 135.9 (C, CAr), 130.3 (CH, CAr), 127.2 (CH, CAr), 127.1 (CH, CAr), 123.9 (CH, CAr), 121.3 (C, CAr), 117.7 (CH, CAr), 111.6 (CH, CAr), 28.4 (CH, CH(CH3)2), 24.8 (CH3, CH(CH3)2), 23.2 (CH3, CH(CH3)2), 17.7 (CH3, CAr-CH3).
【0103】
〔実施例27〕 N−(1−ナフチル)モルホリン(表3、エントリー12)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/DCM、90/10)の後、183mg(86%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (d, 300 MHz, CDCl3)〕: 8.19-8.16 (m, 1H, HAr), 7.78-7.75 (m, 1H, HAr), 7.52-7.31 (m, 4H, HAr), 6.98 (d, J = 7.2 Hz, 1H, HAr), 3.89 (t, J = 4.5 Hz, 4H, OCH2), 3.00 (t, J = 4.5 Hz, 4H, NCH2).
13C NMR (d, 75 MHz, CDCl3)〕: 149.5 (C, CAr), 134.9 (C, CAr), 128.9(C, CAr), 128.5 (CH, CAr), 125.93 (CH, CAr), 125.88 (CH, CAr), 125.5 (CH, CAr), 123.8 (CH, CAr), 123.5 (CH, CAr), 114.7 (CH, CAr), 67.5 (CH2, OCH2), 53.5 (CH2, NCH2).
【0104】
〔実施例28〕 N−メチル−N−(1−ナフチル)フェニルアミン(表3、エントリー13)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/DCM、95/5)の後、222mg(95%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (d, 300 MHz, CDCl3)〕: 7.86-7.80 (m, 2H, HAr), 7.69 (d, J = 8.4 Hz, 1H, HAr), 7.42-7.27 (m, 4H, HAr), 7.12-7.07 (m, 2H, HAr), 6.68 (t, J = 7.2 Hz, 1H, HAr), 6.58 (d, J = 7.8 Hz, 2H, HAr), 3.30 (s, 3H, Me).
13C NMR (d, 75 MHz, CDCl3)〕: 150.3 (C, N-CAr), 145.6 (C, N-CAr), 135.3 (C, CAr), 131.5 (C, CAr), 129.1 (CH, CAr), 128.6 (CH, CAr), 126.8 (CH, CAr), 126.6 (CH, CAr), 126.5 (CH, CAr), 126.4 (CH, CAr), 125.3 (CH, CAr), 124.0 (CH, CAr), 117.4 (CH, CAr), 113.8 (CH, CAr), 40.3 (CH3, Me).
【0105】
〔実施例29−35(表4)〕
〔実施例29〕 N−(2−ピリジル)モルホリン(表4、エントリー1)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、85/15)の後、141mg(86%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 8.20-8.18 (m, 1H, HAr), 7.51-7.45 (m, 1H, HAr), 6.66-6.60 (m, 2H, HAr), 3.80 (t, J = 4.8 Hz, 4H, O-CH2), 3.48 (t, J = 4.8 Hz, 4H, N-CH2).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 159.5 (C, CAr-N), 147.5 (CH, CAr), 137.3 (C, CAr), 113.6 (CH, CAr), 106.8 (CH, CAr), 66.6 (CH2, O-CH2), 45.5 (CH2, N-CH2).
【0106】
〔実施例30〕 N−(2−ピリジル)ピペリジン(表4、エントリー2)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、90/10)の後、154mg(95%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 8.16 (d, J = 1.4 Hz, 1H, =CH-N), 7.38 (t, J = 8.7 Hz, 1H, HAr), 6.59 (d, J = 8.7 Hz, 1H, HAr), 6.50 (t, J = 1.4 Hz, 1H, HAr), 3.49 (s broad, 4H, CH2-N), 1.60 (s broad, 6H, CH2).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 159.6 (C, CAr-N), 147.8 (CH, CAr-N), 137.1 (CH, CAr), 112.2 (CH, CAr), 106.9 (C, CAr), 46.2 (CH2, CH2-N), 25.4 (CH2, CH2), 25.7 (CH2, CH2).
【0107】
〔実施例31〕 N−(3−ピリジル)ピペリジン(表4、エントリー3及び4)
A)アリールクロリドを用いた上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、80/20)の後、128mg(79%)の標題の化合物が得られた。
【0108】
B)アリールブロミドを用いた上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、80/20)の後、141mg(87%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 8.30 (s, 1H, =CH-N), 8.05 (d, J = 4.5 Hz, 1H, =CH-N), 7.19-7.10 (m, 2H, HAr), 3.18 (t, J = 5.1 Hz, 4H, H1), 1.75-1.67 (m, 4H, H2), 1.63-1.57 (m, 2H, H3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 147.9 (C, N-CAr), 140.2 (CH, CAr), 139.1 (CH, CAr), 123.5 (CH, CAr), 122.7 (CH, CAr), 50.0 (CH2, C1), 25.7 (CH2, C2), 24.2 (CH2, C3).
【0109】
〔実施例32〕 N−(3−ピリジル)モルホリン(表4、エントリー5)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、80/20)の後、144mg(88%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (400 MHz, CDCl3)〕: d 8.31 (s, 1H, H5), 8.14-8.12 (m, 1H, H1), 7.19-7.10 (m, 2H, H2 + H3), 3.88 (t, J = 4.4 Hz, 4H, O-CH2), 3.19 (t, J = 4.4 Hz, 4H, N-CH2).
13C NMR (100 MHz, CDCl3)〕: d 146.9 (C, C4), 141.0 (CH, CAr), 138.3 (CH, CAr), 123.5 (CH, CAr), 122.0 (CH, CAr), 66.6 (CH2, O-CH2), 48.6 (CH2, N-CH2).
【0110】
〔実施例33〕 N,N−ジブチル−N−(2−ピリジル)アミン(表4、エントリー6)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/DCM、90/10)の後、178mg(86%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 8.03 (d, J = 3.3 Hz, 1H, =CH-N), 7.27-7.23 (m, 1H, HAr), 6.35-6.30 (m, 2H, HAr), 3.32 (t, J = 5.7 Hz, 4H, H4), 1.51-1.43 (m, 4H, H3), 1.33-1.20 (m, 4H, H2), 0.85 (t, J = 5.1 Hz, 6H, H1).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 158.0 (C, CAr-N), 148.1 (CH, CAr-N), 136.8 (CH, CAr), 110.7 (CH, CAr), 105.5 (CH, CAr), 48.5 (CH2, C4), 29.9 (CH2, C3), 20.4 (CH2, C2), 14.1 (CH3, C1).
【0111】
〔実施例34〕 N−メチル−N−フェニル−N−(2−ピリジル)アミン(表4、エントリー7)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/DCM、90/10)の後、168mg(91%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 8.22 (d, J = 2.7 Hz, 1H, =CH-N), 7.34 (t, J = 6.0 Hz, 1H, HAr), 7.23-7.14 (m, 2H, HAr), 6.55 (t, J = 3.9 Hz, 1H, HAr), 6.50 (d, J = 6.6 Hz, 4H, HAr), 3.45 (s, 3H, Me).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 158.6 (C, N-CAr-N), 147.6 (CH, CAr-N), 146.7 (C, CAr-N), 136.3 (CH, CAr), 129.5 (CH, CAr), 126.1 (CH, CAr), 125.2 (CH, CAr), 112.9 (CH, CAr), 108.9 (CH, CAr), 38.2 (CH3, Me).
【0112】
〔実施例35〕 N−メチル−N−フェニル−N−(3−キノリル)アミン(表4、エントリー8)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/DCM、95/5)の後、225mg(96%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (400 MHz, CDCl3)〕: d 8.68 (d, J = 3.2 Hz, 1H, HAr), 8.00 (d, J = 8.4 Hz, 1H, HAr), 7.59 (d, J = 7.6 Hz, 1H, HAr), 7.48-7.38 (m, 3H, HAr), 7.28 (t, J = 8.0 Hz, 2H, HAr), 6.58 (d, J = 7.8 Hz, 2H, HAr), 7.09-7.02 (m, 3H, HAr), 3.32 (s, 3H, Me).
13C NMR (100 MHz, CDCl3)〕: d 148.0 (C, CAr), 146.1 (CH, CAr), 143.1 (C, CAr), 142.3 (C, CAr), 129.6 (CH, CAr), 129.0 (CH, CAr), 126.9 (CH, CAr), 126.51 (CH, CAr), 126.45 (CH, CAr), 123.3 (CH, CAr), 122.2 (CH, CAr), 119.2 (CH, CAr), 40.4 (CH3, Me).
【0113】
〔実施例36−46(表5)〕
アリールハライドのα−ケトンのアリール化
一般的手順: グローブボックス中で、(IPr)Pd(acac)Cl(0.01mmol、6.3mg)、ナトリウムtert−ブトキシド(1.5mmol、144mg)及び無水トルエン(1mL)を順番にマグネットバーを備え付けたバイアルに加え、セプタムを取り付けたネジ蓋で封止した。グローブボックスの外で、ケトン(1.1mmol)及びアリールハライド(1mmol)をセプタムを通して順番に注入した。二つの出発原料のうちの一方が固体であった場合は、それはグローブボックス内においてバイアルに加えられ、トルエン及び第二の出発原料はグローブボックスの外、アルゴン下で加えられた。その後、反応混合液は60℃で攪拌した。反応が終結したか、あるいは、さらなる変換をガスクロマトグラフィー(GC)によって観察できなくなった時、バイアルを室温まで冷まさせた。反応混合液に水を加え、有機層をtert−ブチルメチルエーテル(MTBE)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を真空中で蒸発させた。必要に応じて、生成物は、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。報告した収率は、少なくとも2回の平均である。
【0114】
〔実施例36〕 1−フェニル−2−o−トリルエタノン(表5、エントリー1及び2)
A)アリールクロリドを用いた上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、90/10)の後、187mg(89%)の標題の化合物が得られた。
【0115】
B)アリールブロミドを用いた上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、90/10)の後、189mg(90%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.98 (d, J = 7.2 Hz, 2H, HAr), 7.52-7.42 (m, 1H, HAr), 7.40-7.37 (m, 2H, HAr), 7.16-7.07 (m, 4H, HAr), 4.23 (s, 2H, CH2), 2.21 (s, 3H, CH3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 197.4 (C, C=O), 136.9 (C, CAr), 133.5 (C, CAr), 133.1 (CH, CAr), 130.3 (CH, CAr), 128.7 (CH, CAr), 128.5 (CH, CAr), 128.3 (CH, CAr), 128.1 (C, CAr), 127.2 (CH, CAr), 126.1 (CH, CAr), 43.4 (CH2, CH2), 19.8 (CH3, CH3).
【0116】
〔実施例37〕 1,2−ジフェニルプロパン−1−オン(表5、エントリー3)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、80/20)の後、206mg(98%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.93 (d, J = 7.2 Hz, 2H, HAr), 7.43 (t, J = 7.2 Hz, 1H, HAr), 7.34 (t, J = 7.5 Hz, 2H, HAr), 7.26 (d, J = 3.6 Hz, 2H, HAr), 7.21-7.16 (m, 1H, HAr), 4.66 (q, J = 6.9 Hz, 1H, CH-CH3), 1.52 (d, J = 6.9 Hz, 3H, CH-CH3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 200.5 (C, C=O), 141.8 (C, CAr), 132.9 (C, CAr), 129.2 (CH, CAr), 129.0 (CH, CAr), 128.7 (CH, CAr), 128.0 (CH, CAr), 127.1 (CH, CAr), 48.2 (CH, CH), 19.7 (CH3, CH3).
【0117】
〔実施例38〕 1−フェニル−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパン−1−オン
(表5、エントリー4)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/EtOAc、90/10)の後、259mg(93%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.93 (d, J = 7.2 Hz, 2H, HAr), 7.55 (d, J = 8.4 Hz, 2H, HAr), 7.51-7.48 (m, 1H, HAr), 7.43-7.38 (m, 4H, HAr), 4.77 (q, J = 6.9 Hz, 1H, CH-CH3), 1.55 (d, J = 6.9 Hz, 3H, CH-CH3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 199.9 (C, C=O), 145.6 (C, CF3), 136.4 (C, CAr-CF3), 133.9 (C, CAr), 133.4 (CH, CAr), 130.4 (C, CAr), 128.92 (CH, CAr), 128.88 (CH, CAr), 128.4 (CH, CAr), 128.4 (CH, CAr), 47.8 (CH, CH-CH3), 19.6 (CH3, CH-CH3).
【0118】
〔実施例39〕 2−フェニル−α−テトラロン(表5、エントリー5及び6)
A)アリールクロリドを用いた上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、90/10)の後、138mg(62%)の標題の化合物が得られた。
【0119】
B)アリールブロミドを用いた上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、90/10)の後、160mg(72%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.09 (d, J = 7.8 Hz, 1H, HAr), 7.49 (t, J = 7.2 Hz, 1H, HAr ), 7.35-7.23 (m, 4H, HAr), 7.18 (d, J = 7.2 Hz, 3H, HAr), 3.79 (t, J = 7.8 Hz, 1H, C(O)-CH), 3.14-2.99 (m, 2H, CAr-CH2), 2.46-2.39 (m, 2H, CH-CH2).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 198.2 (C, C=O), 144.2 (C, CAr), 139.9 (C, CAr), 133.5 (CH, CAr), 128.9 (CH, CAr), 128.6 (CH, CAr), 128.5 (CH, CAr), 127.9 (CH, CAr), 127.0 (CH, CAr), 126.9 (CH, CAr), 54.5 (CH, C(O)-CH), 31.3 (CH2), 28.9 (CH2).
【0120】
〔実施例40〕 2−(2−メトキシフェニル)−1−フェニルプロパン−1−オン(表5、エントリー7及び8)
A)アリールクロリドを用いた上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、85/15)の後、219mg(91%)の標題の化合物が得られた。
【0121】
B)アリールクロリドを用いた上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、85/15)の後、199mg(83%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.94 (d, J = 7.8 Hz, 2H, HAr ), 7.38 (t, J = 6.9 Hz, 1H, HAr), 7.31 (t, J = 6.6 Hz, 2H, HAr), 7.17-7.09 (m, 2H, HAr), 6.86-6.81 (m, 2H, HAr), 5.07 (q, J = 6.8 Hz, 1H, CH-CH3), 3.83 (s, 3H, OCH3), 1.46 (d, J = 6.8 Hz, 3H, CH-CH3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 201.5 (C, C=O), 155.9 (C, CAr-O), 136.7 (C, CAr), 132.6 (C, CAr), 128.6 (CH, CAr), 128.4 (CH, CAr), 128.2 (CH, CAr), 128.1 (CH, CAr), 128.0 (CH, CAr), 121.2 (CH, CAr), 110.9 (CH, CAr), 55.6 (CH, CH-CH3), 40.5 (CH3, OCH3), 17.7 (CH3, CH-CH3).
【0122】
〔実施例41〕 1−フェニル−2−(2,4,6−トリメチルフェニル)プロパン−1−オン(表5、エントリー9)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、90/10)の後、212mg(84%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.70 (d, J = 8.4 Hz, 2H, HAr), 7.37 (t, J = 7.2 Hz, 1H, HAr), 7.25 (t, J = 7.5 Hz, 2H, HAr), 6.77 (s, 2H, HAr), 4.47 (q, J = 6.6 Hz, 1H, CH-CH3), 2.24 (s, 6H, CAr-CH3), 2.19 (s, 3H, CAr-CH3), 1.48 (d, J = 6.6 Hz, 3H, CH-CH3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 202.4 (C, C=O), 137.0 (C, CAr), 136.2 (C, CAr), 135.6 (C, CAr), 132.5 (CH, CAr), 130.5 (CH, CAr), 128.4 (CH, CAr), 46.0 (CH, CH-CH3), 29.8 (CH3, CAr-CH3), 20.8 (CH3, CAr-CH3), 20.6 (CH3, CAr-CH3), 15.2 (CH3, CH-CH3).
【0123】
〔実施例42〕 2−(o−トリル)−α−テトラロン(表5、エントリー10)
上記の一般的手順により、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン/MTBE、90/10)の後、206mg(87%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 8.10 (d, J = 7.8 Hz, 1H, HAr), 7.51 (t, J = 7.1 Hz, 1H, HAr), 7.37-7.29 (m, 2H, HAr), 7.25-7.15 (m, 3H, HAr), 7.07-7.04 (m, 1H, HAr), 3.98 (dd, J = 11.4, 4.8 Hz, 1H, C(O)-CH), 3.16-3.04 (m, 2H, CAr-CH2), 2.53-2.27 (m, 2H, CH-CH2), 2.32 (s, 3H, CH3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 198.2 (C, C=O), 164.3 (C, CAr), 144.3 (C, CAr), 138.9 (C, CAr), 136.7 (C, CAr), 133.6 (CH, CAr), 130.8 (CH, CAr), 129.0 (CH, CAr), 128.0 (CH, CAr), 127.8 (CH, CAr), 127.1 (CH, CAr), 127.0 (CH, CAr), 126.4 (CH, CAr), 51.7 (CH, C(O)- CH), 30.6 (CH2, CH2), 29.7 (CH2, CH2), 20.1 (CH3, CH3).
【0124】
〔実施例43〕 2−(2,6−ジメチル−フェニル)−1−(1−メチル−1H−ピロール−2−イル)−エタノン(表5、エントリー11)
上記の一般的手順により、ペンタンで洗浄後、218mg(96%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.12-7.10 (m, 1H, HAr), 7.04-7.02 (m, 3H, HAr), 6.75 (s, 1H, HAr), 6.14-6.12 (m, 1H, HAr), 4.28 (s, 2H, C(O)-CH2), 3.96 (s, 3H, N-CH3), 2.32 (s, 6H, CAr-CH3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 188.0 (C, C=O), 137.3 (C, CAr), 132.9 (C, CAr), 131.0 (CH, CAr), 130.7 (C, CAr), 128.0 (CH, CAr), 126.8 (CH, CAr), 118.8 (CH, CAr), 108.0 (CH, CAr), 39.7 (CH2, C(O)-CH2), 37.8 (CH3, N-CH3), 20.6 (CH3, CAr-CH3).
〔計算値〕 for C15H17NO (MW 227.30): C, 79.26; H, 7.54; N, 6.16. 実測値: C, 79.39; H, 7.24; N, 5.74.
【0125】
〔実施例44〕 2−(ナフタレン−1−イル)−1−フェニル−プロパン−1−オン(表5、エントリー12)
上記の一般的手順により、ペンタンで洗浄後、250mg(96%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 8.21 (d, J = 8.1 Hz, 1H, HAr ), 7.84 (d, J = 7.5 Hz, 2H, HAr), 7.65 (d, J = 8.1 Hz, 1H, HAr), 7.57 (t, J = 7.8 Hz, 1H, HAr), 7.48 (t, J = 7.2 Hz, 1H, HAr), 7.34-7.21 (m, 2H, HAr), 7.20-7.17 (m, 2H, HAr), 5.34 (q, J = 6.7 Hz, 1H, CH-CH3), 1.61 (d, J = 6.7 Hz, 3H, CH-CH3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 200.7 (C, C=O), 138.1 (C, CAr), 136.5 (C, CAr), 134.5 (C, CAr), 132.7 (CH, CAr), 130.7 (C, CAr), 129.4 (CH, CAr), 128.7 (CH, CAr), 128.5 (CH, CAr), 127.7 (CH, CAr), 126.8 (CH, CAr), 125.9 (CH, CAr), 125.1 (CH, CAr), 122.6 (CH, CAr), 43.8 (CH, CH-CH3), 18.6 (CH3, CH-CH3).
【0126】
〔実施例45〕 2−(ナフタレン−2−イル)−1−フェニルプロパン−1−オン(表5、エントリー13)
上記の一般的手順により、ペンタンで洗浄後、253mg(97%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.96 (d, J = 5.7 Hz, 2H, HAr), 7.73-7.69 (m, 4H, HAr), 7.39-7.31 (m, 4H, HAr), 7.26 (t, J = 5.7 Hz, 2H, HAr), 4.77 (q, J = 5.1 Hz, 1H, CH-CH3), 1.58 (d, J = 5.1 Hz, 3H, CH-CH3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 200.3 (C, C=O), 139.1 (C, CAr), 136.5 (C, CAr), 133.7 (C, CAr), 132.9 (CH, CAr), 132.4 (C, CAr), 128.9 (CH, CAr), 128.8 (CH, CAr), 128.5 (CH, CAr), 127.8 (CH, CAr), 127.7 (CH, CAr), 126.5 (CH, CAr), 125.2 (CH, CAr), 126.0 (CH, CAr), 125.8 (CH, CAr), 48.0 (CH, CH-CH3), 19.6 (CH3, CH-CH3).
C19H16O (MW 260.33)に対する計算値: C, 87.66; H, 6.19. 実測値: C, 87.90; H, 6.35.
【0127】
〔実施例46〕 2−(ビフェニル−4−イル)−1−フェニルプロパン−1−オン(表5、エントリー14)
上記の一般的手順により、ペンタンで洗浄後、272mg(95%)の標題の化合物が得られた。

1H NMR (300 MHz, CDCl3)〕: d 7.97 (d, J = 5.4 Hz, 2H, HAr), 7.52-7.47 (m, 4H, HAr), 7.43 (d, J = 5.4 Hz, 2H, HAr), 7.39-7.33 (m, 5H, HAr), 7.29 (d, J = 5.7 Hz, 1H, HAr), 4.72 (q, J = 5.1 Hz, 1H, CH-CH3), 1.55 (d, J = 5.1 Hz, 3H, CH-CH3).
13C NMR (75 MHz, CDCl3)〕: d 200.5 (C, C=O), 140.8 (C, CAr), 140.6 (C, CAr), 139.9 (C, CAr), 136.6 (C, CAr), 133.0 (C, CAr), 128.9 (CH, CAr), 128.8 (CH, CAr), 128.7 (CH, CAr), 128.3 (CH, CAr), 127.8 (CH, CAr), 127.4 (CH, CAr), 127.1 (CH, CAr), 47.6 (CH, CH-CH3), 19.6 (CH3, CH-CH3).
【0128】
〔実施例47〕
以下の一般的手順に従って、以下に論じる触媒を用いた変換率を評価した。
【0129】
一般的手順: グローブボックス中で、(IPr)Pd(acac)Cl、(IPr)Pd(acacジPh)Cl、(IPr)Pd(acactBu)Cl、(IPr)Pd(acacMePh)Cl及び(IPr)Pd(acacF)Cl(0.01mmol)のうちの1つをカリウムtert−ブトキシド(1.1 mmol、124 mg)と合わせ、無水ジメトキシエタン(DME)(1mL)を順番にマグネットバーを備え付けたバイアルに加え、セプタムを取り付けたネジ蓋で封止した。グローブボックスの外で、ジブチルアミン(185μL、1.1mmol)及び4−クロロトルエン(118μL、1mmol)をセプタムを通して順番に注入した。その後、反応混合液は50℃で攪拌した。反応はガスクロマトグラフィーにより観察された。図1に示すパーセント変換率は、三回の平均を表す。
【0130】
上位発明概念から逸脱することなく、上述の態様に対して変更を加えることができることは、当業者には十分理解されるであろう。したがって、この発明は、開示された特定の態様に限定されるものではなく、添付した請求項により定義されるように、本発明の精神と範囲の範囲内における改変に及ぶことを意図するものであることが理解されるであろう。本発明は、その特定の態様の特定の詳細について記述されているものの;上述したように、添付する請求項に含まれる範囲と程度以外には、そのような詳細が本発明の範囲の限定とみなされることを意図するものではないこともまた理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、実施例47に記載の手順における、パーセント変換率対時間のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:

〔上式中、Aは二座モノアニオン性配位子であり、NHCは求核性複素環カルベンであり、Zはアニオン性配位子である〕
であることを特徴とするパラジウム錯体。
【請求項2】
Zが、Cl、Br、I、OAc、OMs、OTf、OTs、OCCF、アセチルアセトナート(acac)、トリフルオロアセチルアセトナート、ヘキサフルオロアセチルアセトナート(hfacac);ジベンゾイルメタナート(dbm)、ベンゾイルアセトナート(bac)もしくはテトラメチルヘプタンジオナート(tmhd)から選択される、請求項1のパラジウム錯体。
【請求項3】
Aが:

〔上式中、X及びYのそれぞれは、O、NもしくはSから独立して選択され、R、R、R、R、R、R及びRは、独立して、水素、メチル、直鎖状もしくは分岐状C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C20アラルキル、又は、C−C24アリールもしくは置換アリールを表し、ただし、X及び/又はYがNである時にのみR及びRは存在し;nは、0、1もしくは2の整数を表し;Zは、Cl、Br、I、OAc、OMs、OTf、OTs、OCCF、アセチルアセトナート(acac)、トリフルオロアセチルアセトナート、ヘキサフルオロアセチルアセトナート(hfacac);ジベンゾイルメタナート(dbm)、ベンゾイルアセトナート(bac)もしくはテトラメチルヘプタンジオナート(tmhd)から選択される〕
により表される、請求項1のパラジウム錯体。
【請求項4】
X−Yが半不安定性(hemilabile)基である請求項3のパラジウム錯体。
【請求項5】
X−Yがβ−ジケトナート(O−O)、β−ジケチミナート(N−N)、β−ケチミナート(N−O)もしくはシッフ塩基(N−O)配位子である請求項3のパラジウム錯体。
【請求項6】
X−Yが、以下に示すX−Y(a)及びX−Y(b)互変異性体である請求項3のパラジウム錯体:


【請求項7】
Aが以下に示す構造のうちの一つである請求項1のパラジウム錯体:


【請求項8】
NHCが、A、BもしくはCのうちの一つである請求項7のパラジウム錯体:

〔上式中、それぞれのRは、独立して、水素、メチル、直鎖状もしくは分岐状C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C20アラルキル、あるいは、C-C24アリールもしくは置換アリール、のうちの一つである〕。
【請求項9】
NHCが、

〔上式中、それぞれのRは、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニルもしくは2−メチルフェニルのうちの一つである〕
である、請求項7のパラジウム錯体。
【請求項10】
錯体が、(NHC)Pd(acac)、(NHC)Pd(acac)Cl、(NHC)Pd(hfacac)、(NHC)Pd(hfacac)Cl、(NHC)Pd(dbm)、(NHC)Pd(dbm)Cl、(NHC)Pd(tmhd)、(NHC)Pd(tmhd)Cl、(NHC)Pd(bac)もしくは(NHC)Pd(bac)Clのうちの一つであって、NHCが、IMes(N,N′−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール)−2−イリデン)、sIMes(N,N′−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール)−2−イリデン)、IPr(N,N′−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール)−2−イリデン)、sIPr(N,N′−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール)−2−イリデン)、IAd(N,N′−ビス(アダマンチル)イミダゾール−2−イリデン)、ICy(N,N′−ビス(シクロヘキシル)イミダゾール−2−イリデン)もしくはItBu(N,N′−ビス(tert−ブチル)イミダゾール−2−イリデン)のうちの一つである、請求項1のパラジウム錯体。
【請求項11】
錯体が、以下のように表される(IPr)Pd(acac)Clである請求項1の錯体:


【請求項12】
請求項1のパラジウム錯体を調製するための方法であって、
有機溶媒中で、VIII族の金属源をNHCと、適切な温度で適切な時間、反応させることを含み、その反応が該パラジウム錯体を形成する方法。
【請求項13】
前記パラジウム錯体を単離することをさらに含む請求項12の方法。
【請求項14】
前記VIII族の金属源がPd(acac)であり、有機溶媒がジエチルエーテルであり、かつ、反応温度が常温である、請求項12の方法。
【請求項15】
NHCが、A、BもしくはCのうちの一つである請求項12の方法:

〔上式中、それぞれのRは、独立して、水素、メチル、直鎖状もしくは分岐状C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C20アラルキル、あるいは、C-C24アリールもしくは置換アリール、のうちの一つである〕。
【請求項16】
NHCが、

であり、それぞれのRは、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニルもしくは2−メチルフェニルのうちの一つである、請求項12の方法。
【請求項17】
請求項1のパラジウム錯体を調製するための方法であって、
有機溶媒中にパラジウム金属源及びイミダゾリウム塩を含む溶液を提供すること;
該溶液を、適切な温度まで、適切な時間加熱すること;及び
該錯体を単離すること、を含む方法。
【請求項18】
前記パラジウム金属源がPd(acac)であり、前記イミダゾリウム塩がI−PrHClであり、前記有機溶媒がジオキサンであり、前記反応温度が100℃であり、前記適切な時間が6時間であり、前記単離される錯体が(I−Pr)Pd(acac)Clである、請求項17の方法。
【請求項19】
前記パラジウム金属源が、Pd(acac)、ビス(トリフルオロアセチルアセトナート)Pd、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)Pd;ビス(ジベンゾイルメタナート)Pd、ビス(ベンゾイルアセトナート)Pd、ビス(テトラメチルヘプタンジオナート)Pdもしくはビス(トロポロナート)パラジウム(II)のうちの一つである請求項17の方法。
【請求項20】
炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子結合を形成する方法であって、
式I:

〔上式中、NHCは求核性複素環カルベンであり;Zはアニオン性配位子であり;Aは式II:

(上式中、X及びYのそれぞれは、独立して、O、NもしくはSのうちの一つであり、R、R、R、R、R、R及びRは、独立して、水素、メチル、直鎖状もしくは分岐状C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C20アラルキル、又は、C−C24アリールもしくは置換アリールを表し、ただし、X及び/又はYがNである時にのみR及びRは存在し;nは0、1もしくは2の整数を表し;Zは、Cl、Br、I、OAc、OMs、OTf、OTs、OCCF、アセチルアセトナート(acac)、トリフルオロアセチルアセトナート、ヘキサフルオロアセチルアセトナート(hfacac);ジベンゾイルメタナート(dbm)、ベンゾイルアセトナート(bac)もしくはテトラメチルヘプタンジオナート(tmhd)のうちの一つである)
により表される二座モノアニオン性配位子である〕
により表されるパラジウム錯体を提供すること;及び、
鈴木、鈴木−宮浦、村橋、熊田、熊田−コリュー、熊田−玉尾、野崎、野崎−大嶌、根岸、檜山、玉尾−熊田、檜山−畠中、スティール、右田−小杉、ブッフバルト−ハートウィッグ、村橋、シアノ化、α−“カルボニル”アリール化、薗頭、カディオット−チョドキーウィクス(Cadiot-Chodkiewicz)、ヘック反応、触媒的エーテル形成、ケトンの触媒的α−アリール化、触媒的チオエーテル形成反応、あるいは、それらの基質及び反応相手、のうちの一つを用いて、炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子結合を形成すること、
を含む方法。
【請求項21】
前記結合形成反応が、ブッフバルトハートウィッグのアリールのアミノ化もしくはケトンのα−アリール化のどちらかである請求項20の方法。
【請求項22】
用いられる前記パラジウム錯体が、(NHC)Pd(acac)、(NHC)Pd(acac)Cl、(NHC)Pd(hfacac)、(NHC)Pd(hfacac)Cl、(NHC)Pd(dbm)、(NHC)Pd(dbm)Cl、(NHC)Pd(tmhd)、(NHC)Pd(tmhd)Cl、(NHC)Pd(bac)、(NHC)Pd(bac)Cl、又は、Xがハロゲンもしくは偽ハロゲンである(NHC)Pd(acac)X、のうちの一つであり;NHCが、IMes(N,N′−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール)−2−イリデン)、sIMes(N,N′−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール)−2−イリデン)、IPr(N,N′−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール)−2−イリデン)、sIPr(N,N′−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール)−2−イリデン)、IAd(N,N′−ビス(アダマンチル)イミダゾール−2−イリデン)、ICy(N,N′−ビス(シクロヘキシル)イミダゾール−2−イリデン)もしくはItBu(N,N′−ビス(tert−ブチル)イミダゾール−2−イリデン)のうちの一つである、請求項20の方法。
【請求項23】
前記結合形成反応がブッフバルトハートウィッグのアリールのアミノ化であり、前記パラジウム錯体が(IPr)Pd(acac)Clもしくは(IPr)Pd(acac)Brであり、アリールクロリドもしくはアリールブロミドが2−クロロピリジン、2,6−ジメチルクロロベンゼン、4−クロロトルエン、4−メトキシクロロベンゼン、2−ブロモピリジン、2、6−ジメチルブロモベンゼンもしくは6−メトキシブロモベンゼンのうちの一つであり、アミンがアニリン、ジブチルアミンもしくはモルホリンのうちの一つである、請求項22の方法。
【請求項24】
前記結合形成反応がα−ケトンのアリール化であり、前記パラジウム錯体が(IPr)Pd(acac)Clもしくは(IPr)Pd(acac)Brであり、アリールクロリドもしくはアリールブロミドがそれぞれクロロベンゼン、2,6−ジメチルクロロベンゼン、4−クロロトルエン、4−メトキシクロロベンゼン、2−クロロピリジン、2−ブロモピリジン、2,6−ジメチルブロモベンゼン、6−メトキシブロモベンゼンのうちの一つであり、該ケトンがシクロヘキサノン、メチルフェニルケトン、エチルフェニルケトンもしくはメチルナフチルケトンのうちの一つである、請求項22の方法。
【請求項25】
ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、KCO、KPO、KF及びCsCOから選択される塩基を加えることをさらに含む請求項24の方法。
【請求項26】
基質が、NBCHCl、NBCHBr、NBCHI、NBCHOMs、NBCHOTs、NBCHOTf、NBCHBpin、NBCHBcat、NBCH−9−BBN、NBCHLi、NBCHMgBr、NBCHZnBr、NBCHSiF、NBCHBFK、NBCHB(OH)、NBCHCHCl、NBCHCHBr、NBCHCHI、NBCHCHOMs、NBCHCHOTs、NBCHCHOTf、NBCHCHBpin、NBCHCHBcat、NBCHCH−9−BBN、NBCHCHLi、NBCHCHMgBr、NBCHCHZnBr、NBCHCHSiF、NBCHCHBFK、NBCHCHB(OH)、NBCB(OH)、NBCHB(OH) NBCHCHB(OH)もしくはNBCBCH(OH)から選択される請求項20の方法。
【請求項27】
基質が以下のモノマー:

の何れかから選択される請求項20の方法。
【請求項28】
請求項27の方法により製造されたノルボルネン化合物。
【請求項29】
請求項1のパラジウム錯体を調製する方法であって、
パラジウム金属源を直接イミダゾリウム塩と反応させ、該パラジウム錯体を形成させることを含む方法。
【請求項30】
前記パラジウム金属源及びイミダゾリウム塩を有機溶媒に加えること、及び、結果として生ずる混合液を還流させることを含む、請求項29の方法。
【請求項31】
前記パラジウム金属源及び前記イミダゾリウム塩が、1当量のパラジウム金属源:1当量より多いイミダゾリウム塩の比で提供される、請求項29の方法。
【請求項32】
前記反応が空気中で実行される請求項29の方法。
【請求項33】
前記混合液を50℃から150℃の範囲の温度まで加熱すること、及び、2時間から8時間の範囲の間、還流させることを含む、請求項30の方法。
【請求項34】
前記混合液を100℃に加熱するすること、及び、6時間還流することを含む請求項33の方法。
【請求項35】
前記有機溶媒がジオキサンである請求項30の方法。
【請求項36】
前記パラジウム金属源が、Pd(acac)、ビス(トリフルオロアセチルアセトナート)Pd、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)Pdもしくはビス(テトラメチルヘプタンジオナート)Pdから選択される、請求項29の方法。
【請求項37】
前記イミダゾリウム塩がIPr・HC1もしくはIMes・HC1から選択される請求項29の方法。
【請求項38】
請求項29の方法により製造されるパラジウム錯体。
【請求項39】
前記結合形成反応の生成物が、N−4−(シアノフェニル)ピペリジン、N−(o−トリル)モルホリン、N−(2−メトキシフェニル)モルホリン、N,N−ジブチル−N−(o−トリル)アミン、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N−(o−トリル)アミン、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アミン、N−(2−ナフチル)ピペリジン、N−N−ジブチル−N−(4−メトキシフェニル)アミン、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−(o−トリル)アミン、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N−(p−トリル)アミン、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−N−(o−トリル)アミン、N−(1−ナフチル)モルホリン、N−メチル−N−(1−ナフチル)フェニルアミン、N−(2−ピリジル)モルホリン、N−(2−ピリジル)ピペリジン、N−(3−ピリジル)ピペリジン、N−(3−ピリジル)モルホリン、N−N−ジブチル−N−(2−ピリジル)アミン、N−メチル−N−フェニル−N−(2−ピリジル)アミンもしくはN−メチル−N−フェニル−N−(3−キノリル)アミンから選択される、請求項23の方法。
【請求項40】
前記結合形成反応の生成物が、1−フェニル−2−o−トリルエタノン、1,2−ジフェニルプロパン−1−オン、1−フェニル−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパン−1−オン、2−フェニル−α−テトラロン、2−(2−メトキシフェニル)−1−フェニルプロパン−1−オン、1−フェニル−2−(2,4,6−トリメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−(o−トリル)−α−テトラロン、2−(2,6−ジメチル−フェニル)−1−(1−メチル−1H−ピロール−2−イル)−エタノン、2−(ナフタレン−1−イル)−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−(ナフタレン−2−イル)−1−フェニルプロパン−1−オンもしくは2−(ビフェニル−4−イル)−1−フェニルプロパン−1−オンから選択される請求項24の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−545713(P2008−545713A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513801(P2008−513801)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/020664
【国際公開番号】WO2006/128097
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(507282691)プロメラス, エルエルシー (6)
【Fターム(参考)】