説明

コアレスモータ

【課題】空芯コイルのラジアル方向への傾きによるモータ効率・モータ特性の悪化を防ぎ、また、モータの製造効率を向上させることが可能なコアレスモータを提供する。
【解決手段】コアレスモータ1は、周面が多極着磁された磁石15を有するロータ10と、動圧軸受部40を介在させてロータ10を回転自在に支持するステータ30と、磁石15の周面に空隙を介して対向するように配置され、トルク発生に寄与する複数の有効導体部16a、16b及び隣り合う各有効導体部16a、16bどおしを連結する連結導体部16dとを有する空芯コイル16と、空芯コイル16を支持するコイル受け部20aを有する支持部材20とを備え、コイル受け部20aは、連結導体部16dの周面を支持し、空芯コイル16を径方向に位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば精密機器などの動力源として用いられるコアレスモータに関し、特に、モータ特性の低下を防ぐコアレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば精密機器などの動力源として用いられる小型モータの1つに、円筒状のヨーク内面に空芯コイルが配置され、多極着磁された永久磁石がヨークと共に内部を回転するコアレスモータ(いわゆるインナーロータモータ)がある。このコアレスモータは、例えば、コアドモータ(鉄心付きモータ)のようなコギングトルクが発生しない、整流火花が少なく電気雑音が小さい、ロータ慣性が小さく応答性が良好である、といった様々な利点を有している。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたコアレスモータは、シャフトに円柱状のホルダ部材が固定され、このホルダ部材の外周部に永久磁石が配置されたロータと、ロータを軸受によって回転可能に保持するエンドベース及び空芯コイルから構成されるステータと、を有している。ここで、空芯コイルの固定態様に着目すると、エンドベースに空芯コイルの一端部を固定するコイル受けが設けられている。具体的には、このコイル受けは、中心軸と同心の円弧溝が2箇所形成されており、各円弧溝に、波型した空芯コイルの一端部をはめ込んで位置決めしつつ、このコイル受けに対し自立状態で固定されている。これにより、空芯コイルはロータとの相対的な位置関係を保つことができるようになっている。
【0004】
また、特許文献2に開示された電気モータにおいて、内側コイル及び外側コイルとからなる駆動コイルの固定態様に着目すると、これらは、電気絶縁材によって形成されたコイルボスの小径部及び大径部に嵌め込まれて固着されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−136696号公報(図1)
【特許文献2】特開2003−111332号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1又は特許文献2に開示されたコアレスモータでは、より高いモータ特性(トルク性能)を発揮するのは困難である。
【0007】
まず、特許文献1について、空芯コイルの取り付け方法は、上述のようにその一端をコイル受けとしての2箇所の円弧溝に自立状態に固定するものであることから、ラジアル方向への位置ズレに対する抵抗力が低い。そして、モータの回転に起因した振動や外部からの振動等の影響で、空芯コイルがラジアル方向(の内側又は外側)に傾くと、ロータとステータとの同軸度が低下し、ロータとステータのギャップが不均一となる。その結果、モータ効率・モータ特性が低下してしまう。なお、空芯コイルの傾きがあまりに大きくなると、最終的にはロータがステータに接触し、ロータがロックしてしまう虞がある。
【0008】
また、特許文献2について、駆動コイルの取り付け方法は、上述のようにコイルボスの小径部及び大径部に嵌め込んで固着するものであるが、このコイルボスは、高速回転する(つまり可動する)ロータの一部を構成している。したがって、静止しているエンドベース(いわゆるステータ)に空芯コイルが取り付けられているモータ(特許文献1参照)と比べて、空芯コイルが遠心力により変形する問題があり、また、モータの起動と停止時にロータのイナーシャ効果によりコイルが動いてしまう虞があり、かつ耐震性の面で劣る。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、空芯コイルが径方向(ラジアル方向)へ傾くのを防ぐことによって、モータ効率・モータ特性の悪化を防ぐことが可能なコアレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
【0011】
(1) 周面が多極着磁された磁石を有するロータと、軸受部を介在させて前記ロータを回転自在に支持するステータと、前記磁石の周面に空隙を介して対向するように配置され、トルク発生に寄与する複数の有効導体部及び隣り合う各有効導体部どおしを連結する連結導体部とを有する(略筒状の)空芯コイルと、該空芯コイルを支持するコイル受け部を有する支持部材とを備え、前記コイル受け部は、前記連結導体部の周面を支持し、前記空芯コイルを径方向に位置決めすることを特徴とするコアレスモータ。
【0012】
本発明によれば、コアレスモータは、周面が多極着磁された磁石を有するロータと、軸受部を介在させて前記ロータを回転自在に支持するステータと、前記磁石の周面に空隙を介して対向するように配置され、トルク発生に寄与する複数の有効導体部及び隣り合う各有効導体部どおしを連結する連結導体部とを有する(略筒状の)空芯コイルと、該空芯コイルを支持するコイル受け部を有する支持部材とを備え、前記コイル受け部は、前記連結導体部の周面を支持し、前記空芯コイルを径方向に位置決めするので、空芯コイルが径方向(ラジアル方向)へ傾くのを防ぐことができ、ひいてはモータ効率・モータ特性の悪化を防ぐことができる。
【0013】
すなわち、支持部材に、略円筒状の空芯コイルの連結導体部の周面を支持するコイル受け部を形成することによって、空芯コイルは、ロータの回転軸と平行な面(例えば、コアレスモータが水平な台に設置された場合には、垂直面)によって支持されることになる。したがって、従来のコアレスモータと比べて、空芯コイルを径方向(ラジアル方向)へ傾きにくくすることができ、ロータと空芯コイル(ステータ)の同軸度の低下を防ぐことができ、ひいてはモータ特性の低下を防ぐことができる。
【0014】
ここで、「空芯コイル」については、カゴ型にコイルを巻いて形成されたものであってもよいし、複数のセグメントコイルを所定数(円弧状に)並べて形成されたものであってもよい。
【0015】
また、「コイル受け部」は、空芯コイルの連結導体部の周面を「支持する」ものであり、連結導体部の周面を接着剤を用いて支持するようにしてもよいし、例えば、空芯コイルの連結導体部の周面とコイル受け部との間に何らかの部材を介在させた状態で、支持していてもよい。
【0016】
(2) 前記支持部材には、前記空芯コイルを軸方向に位置決めするように支持する突起部が形成されてなることを特徴とするコアレスモータ。
【0017】
本発明によれば、空芯コイルを径方向及び軸方向に位置決めしながら支持部材に支持できるので、ロータと空芯コイル(ステータ)の同軸度の低下を防ぐことができ、ひいてはモータ特性の低下を防ぐことができる。
【0018】
(3) 前記支持部材は、少なくとも前記コイル受け部がアルミ材からなることを特徴とするコアレスモータ。
【0019】
本発明によれば、空芯コイルの連結導体部の周面をコイル受け部に支持するので、特許文献1記載のコイル受けに比べて接触する面積が広い。これにより、空芯コイルで発生した熱を支持部材に効率的に逃がすことができ、放熱特性を向上させることができる。さらに、支持部材は、少なくともコイル受け部がアルミ材からなるので、支持部材の熱伝導性を高め、上述した放熱特性を更に向上させることができる。
【0020】
(4) 前記空芯コイルは、前記有効導体部が周方向に重なり合った複数のセグメントコイルから構成されていることを特徴とするコアレスモータ。
【0021】
本発明によれば、空芯コイルは、前記有効導体部が周方向に重なり合った複数のセグメントコイルから構成されているので、有効導体部を周方向に重なり合わせて、重なり部分を接着剤等を用いて固定することで、略円筒状した空芯コイルの強度を高めることができる。
【0022】
(5) 前記軸受部は動圧軸受部であり、該動圧軸受部はセラミックス材料からなることを特徴とするコアレスモータ。
【0023】
本発明によれば、前記動圧軸受部はセラミックス材料からなるので、剛性が高いことから安定した動圧効果が得られるとともに、摩耗量を低減し、高い信頼性と長寿命化をもたらすことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るコアレスモータによれば、空芯コイルが径方向(ラジアル方向)へ傾くのを防ぎ、モータ効率・モータ特性の悪化を防ぐことができる。また、モータの製造効率を向上させることができる。なお、放熱特性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係るコアレスモータ1の機械構成を示す側面断面図である。なお、本実施の形態では、コアレスモータ1は、モータ軸が固定のインナーロータ型であり、図1に示すように、ロータ10とステータ30と軸受部としての動圧軸受部40とを主な構成としている。
【0027】
図1において、コアレスモータ1のロータ10は、ロータハブ11,軸受スリーブ13,ヨーク14,永久磁石15,及びバックヨーク17から構成されている。なお、永久磁石15は、周面にN極、S極を交互に多極着磁されている。ヨーク14は、永久磁石15の内周面に配置されている。
【0028】
また、バックヨーク17は、鉄等の磁性材からなり、後述する空芯コイル16の外周面をおおうように、略円筒状に形成されている。
【0029】
ステータ30は、ロータ10を構成する永久磁石15の周面に空隙を介して対向する略円筒状の空芯コイル16と、モータ軸12と、モータ軸12の一端を支持する支持部材20と、を有している。
【0030】
さらに、支持部材20は、空芯コイル16等で発生する熱を放熱する機能を有しており、本実施の形態において、熱伝導性が良好なアルミ材からなっている。
【0031】
支持部材20の中央部には、図1に示すように、凹部からなる軸受支持部20cが形成されている。軸受支持部20c(凹部)には、モータ軸12の一端側が嵌合して固定されており、このモータ軸12とわずかな空間を介して軸受スリーブ13が配置されている。
【0032】
軸受スリーブ13の径方向外側(図1の上側)には、ロータハブ11が固定され、図1の下側には、ヨーク14を介して永久磁石15が取り付けられている。
【0033】
また、永久磁石15の空隙を介した周面には、ロータハブ11にバックヨーク17が取り付けられている。
【0034】
一方で、支持部材20には、空芯コイル16が、永久磁石15とバックヨーク17との空隙部に位置するように取り付けられている。また、永久磁石15の磁極検出用のホール素子18は、支持部材20に固着されたセンサ基板19に実装されており、永久磁石15の近傍に配置されている。なお、本実施形態では、永久磁石15の極数は4極(外周面にNSNSと着磁されている)とし、空芯コイル16の数が全部で6個からなる3相インナーロータモータを考えている。
【0035】
支持部材20に、磁極検出用のホール素子18が実装されたセンサ基板19が取り付けられる。このセンサ基板19には、6個の空芯コイル16を配線するパターンが施されており、コイル線が半田付けされている。なお、コイル線をリード線で引き出すようにしてもよい。
【0036】
軸受部としての動圧軸受部40は、モータ軸12(軸部材)に形成された動圧軸受面と軸受スリーブ13(軸受部材)に形成された動圧軸受面とを径方向に所定の狭小隙間を介在させて対向配置するとともに、狭小隙間(動圧軸受面間)に空気(軸受流体)を介在させ、両動圧軸受面の少なくとも一方側に設けた動圧発生溝41(動圧軸受発生手段)によって軸受流体を加圧して得た動圧力により、前記軸部材と軸受部材とを相対的に回転可能に支承する。なお、本実施の形態では、図1に示すコアレスモータ1においては、CCW方向に回転するようになっている。
【0037】
さらに、本実施の形態において、モータ軸12及び軸受スリーブ13はセラミックス材料で形成されている。
【0038】
このように、セラミックス材料で製作したモータ軸12と軸受スリーブ13で構成し、空気動圧によって軸受機能を持たせる動圧軸受部40が構成され、モータ軸12と軸受スリーブ13の狭小隙間(動圧軸受面間)が数μmと微小となっている。
【0039】
本実施の形態において、動圧軸受部40はセラミックス材料からなるので、剛性が高いことから安定した動圧効果が得られるとともに、摩耗量を低減し、高い信頼性と長寿命化をもたらすことができる。
【0040】
なお、本実施の形態において、空気(軸受流体)を用いた動圧軸受部40で構成されているが、これに限定されるものではなく、空気以外の滑り軸受でもよい。さらには、動圧軸受以外の軸受部材、例えば、ボールベアリング等の転がり軸受を用いてもよい。
【0041】
本実施の形態において、モータ軸12の上端(図1)には、環状の第一の吸引マグネット21が固着され、この第一の吸引マグネット21に対面(周対向)する位置には、環状の第二の吸引マグネット22がロータハブ11の内周面に固着されている。
【0042】
これら第一、第二の吸引マグネット21、22は、軸方向に極性を逆にして着磁が施されており、これにより、互いに磁気吸引し、ステータ30に対してロータ10の軸方向における位置決めとして作用している。
【0043】
コアレスモータ1の組み立て方法について概説すると、まず、支持部材20にモータ軸12を固着するとともに、支持部材20のモータ軸12側の面に、磁極検出用のホール素子18が実装されたセンサ基板19が取り付けられる。次に、6個の空芯コイル16を、略円筒状になるようにして支持部材20に固定する。なお、コアレスモータ1では、支持部材20への空芯コイル16の取り付け態様が特徴的であるので、この点については後述する。空芯コイル16の固定が終わると、ステータ(ステータ組)を完成させた後、ロータ10をステータに取り付ける。このようにして、コアレスモータ1が完成する。
【0044】
次に、上述した空芯コイル16の取り付け態様について詳述する。図2は、空芯コイル16の取り付け態様について説明するための説明図である。特に、図2(a)は、空芯コイル16の平面断面図であって、図1に示すコアレスモータ1のうち空芯コイル16及び支持部材20のみに着目している。また、図2(b)は、1個の空芯コイル(セグメントコイル)16の外観構成を示している。
【0045】
図2(a)によれば、湾曲成形された空芯コイル16(図2(b)参照)は、全部で6個、略筒状になるように支持部材20に固定されている。
【0046】
各空芯コイル16は、トルク発生に寄与する複数の有効導体部16a、16b及び隣り合う各有効導体部16a、16bどおしを連結する連結導体部16c、16dとを有している。
【0047】
さらに、各空芯コイル16は、周方向に機械角で凡そ90°の幅をもつように形成されており、隣り合う空芯コイル16同士は、周方向に機械角で凡そ60°ずれた状態で位置決めされている。すなわち、図2(a)に示すように、有効導体部16b、16aが周方向に重なり合った状態で位置決めされている。
【0048】
このように、空芯コイル16は、有効導体部16bと有効導体部16aが周方向に重なり合い、重なり部分を接着剤等を用いて固定することで、略円筒状した空芯コイルの強度を高めることができる。なお、本実施の形態では、(セグメント)コイルの線は自己融着線(接着剤の付いた線)を使用しているため、重なり部分も自己融着させて固着させている。これにより、空芯コイルの強度を高めることができる。
【0049】
6個の空芯コイル16のうち、一の空芯コイル(セグメントコイル)16に着目すると、周方向に右隣の空芯コイル16(図2(a)でいえば、反時計回りの方向に隣接している空芯コイル16)と比べて、一部がモータ軸12の径方向(ラジアル方向)内側に配置されており、周方向に左隣の空芯コイル16(図2(a)でいえば、時計回りの方向に隣接している空芯コイル16)と比べて、一部がモータ軸12のラジアル方向外側に配置されている。
【0050】
また、隣り合う空芯コイル16、16同士において、一方の空芯コイル16の有効導体部16bに、他方の空芯コイル16の有効導体部16aが、幅全体が重なるようになっている(図4(b)参照)。なお、重なり量は限定されるものではない。
【0051】
図3は、空芯コイル16を略円筒状になるようにして支持部材20に固定する様子を示す概略工程図(模式図)である。図3(a)は、空芯コイル16及び支持部材20を斜めから見たときの概略斜視図であり、図3(b)は、図3(a)を縦方向に切断したときの縦断面図であり、図3(c)は、図3(b)のX部分を拡大した様子を示す拡大図であり、図3(d)は、空芯コイル16を支持部材20に嵌合させたときの様子を示す概略斜視図である。
【0052】
本実施の形態において、図3に示すように、支持部材20には、上述した軸受支持部20cだけでなく、コイル受け部20a及び突起部20bが形成されている。コイル受け部20aの外径は、略筒状に形成された空芯コイル16の内径と比べて、同一又は僅かに小さく形成されており(図3(c)参照)、空芯コイル16の連結導体部16dの内周面が、このコイル受け部20a(外周面)に接着剤を用いて固着されている。
【0053】
また、コイル受け部20a(外周面)に連結導体部16dの内周面が嵌合(又は固着)したとき、突起部20bは、一の空芯コイル(セグメントコイル)16の厚さが収まる高さに突起している(図3(c)参照)。すなわち、空芯コイル16が突起部20bで係止するように取り付けられ、空芯コイル16の下端部は、突起部20bに当接した状態で支持される。こうして、支持部材20への空芯コイル16の取り付けが完了する(図3(d)参照)。
【0054】
なお、コイル受け部20aと空芯コイル16の連結導体部16eの間に何らかの部材(絶縁材等)が介在していてもよいし、突起部20bと空芯コイル16の下端部の間に何らかの部材(絶縁材等)が介在していてもよい。
【0055】
なお、本実施の形態において、支持部材20を加工する際は、凹部からなる軸受支持部20cとコイル受け部20aはワンチャックで加工することができるため、軸受支持部20cの内周面とコイル受け部20aの外周面の両者の同軸度を精度良く加工することができる。このため、ロータ10を構成する永久磁石15及びバックヨーク17とステータ30を構成する空芯コイル16とのギャップを従来に比べてより狭くすることができる。その結果、モータの更なる小型化が可能であるとともに、永久磁石15から生じる磁束の無効部分(漏れ磁束)が少なくなり、モータ効率を高めることができる。なお、支持部材20のコイル受け部20a及び突起部20bは空芯コイル16と接触するため、必要に応じて絶縁処理が施されている。
【0056】
ここで、空芯コイル16が支持部材20に位置決め固定されたとき、支持部材20のコイル受け部20aは、連結導体部16d、すなわち、空芯コイル16のうちモータ特性にほとんど影響を及ぼさない部分の周面を支持する。図4は、連結導体部16d、すなわち、空芯コイル16のうちモータ特性にほとんど影響を及ぼさない部分の一例を示す図である。
【0057】
図4(a)において、一の空芯コイル(セグメントコイル)16において、上述している連結導体部16c、16dは、ロータ10のモータ軸12と凡そ直交する方向に電流が流れる直交部である(図中の斜線部参照)。これら連結導体部16c、16d(直交部)のうち、支持部材20に近い側にあるのは連結導体部16dであり、この連結導体部16dを流れる電流の方向(図中の矢印参照)は、モータ軸12と凡そ直交する方向となるため、モータ特性にほとんど影響を及ぼさない。したがって、コイル受け部20aによって連結導体部16dの(内)周面を支持すれば、支持したことに起因するモータ特性の低下を防ぐことができる。図4(b)では、2個の空芯コイル(セグメントコイル)16を重ねたときに、モータ特性にほとんど影響を及ぼさない2個の空芯コイル16の連結導体部16dの位置を図示している(図中の斜線部参照)。
【0058】
また、図1に示すように、本実施の形態では、連結導体部16dの幅全体をコイル受け部20aの外周面に取り付けているので、モータ特性に影響を及ぼさない部分を支持するため、モータ特性を低下させることなく、モータ全長を短くすることができる。
【0059】
[実施形態の効果]
図1に示すコアレスモータ1によれば、コイル受け部20a(外周面)に連結導体部16dの内周面が嵌合(又は固着)するので、空芯コイル16が径方向(ラジアル方向)へ傾くのを防ぎ、コアレスモータ1全長を短くすることができて、モータ効率・モータ特性の悪化を防ぐことができる。また、コアレスモータ1の製造効率を向上させることができる。更には、放熱特性を高めることができる。
【0060】
また、空芯コイル16の連結導体部16dの"周面"を支持するようにしているので、空芯コイルの"一端部"を支持する特許文献1と比べて、空芯コイル16とコイル受け部20a(特許文献1ではコイル受け)が接触する面積が広くなっている。これにより、空芯コイル16で発生した熱を支持部材20に効率的に逃がすことができ、放熱特性を向上させることができる。特に、コアレスモータ1が、高いトルクを必要とする製品(例えばファンモータなど)の駆動源として用いられる場合には、発熱量の増加に起因して放熱特性が重要になるため、本発明に係るコアレスモータが有用なものになる。
【0061】
さらに、空芯コイル16の連結導体部16dの周面を支持するコイル受け部20aが、可動するロータ10側ではなく、ステータ30側に設けられている。これにより、空芯コイル16で生じる熱が、静止している支持部材20を介して逃げ易い構成となっている。この点、ロータという可動部を介してしか熱が逃げない特許文献2と比べて、放熱効果が高いという効果がある。
【0062】
また、支持部材20は、熱伝導率の良好なアルミ部材からなるので、放熱特性の更なる向上を図ることができる。なお、この放熱特性に関しては、支持部材20のうち少なくともコイル受け部20aがアルミ部材であれば放熱特性向上に資することができる。
【0063】
コアレスモータ1において、ロータ10はステータ30に動圧軸受部40を介して同心円上に回転可能に支持されているので、ステータ30を構成する支持部材20(コイル受け部20a)に設けられた空芯コイル16の円筒面とロータ10を構成する永久磁石15及びバックヨーク17との対向面が均一な距離となるように位置決め固定することができる。したがって、空芯コイル16の同心円上にコイル受け部20aが存在することになり、より確実に位置決めすることが可能になる。
【0064】
また、本発明は、前記ロータを回転自在に支持する支持部材に形成されたコイル受け部によって、空芯コイルを支持することとしている。したがって、特許文献2に開示された従来の電気モータと異なり、空芯コイルが遠心力により変形することがなく、また、空芯コイルの固定強度及び耐震性の向上に寄与することができる。
【0065】
本実施の形態に係るコアレスモータ1によれば、空芯コイル16の連結導体部16eが、コイル受け部20a及び突起部20bに支持されることによって、空芯コイル16の連結導体部16eは、内周面に加え、その下端部によっても、支持されることになる。その結果、空芯コイル16の径方向(ラジアル方向)への傾きを防ぎ、空芯コイル16を従来に比べてより安定して保持することができる。
【0066】
また、空芯コイル16の径方向(ラジアル方向)への傾きを防ぐことによって、永久磁石15及びバックヨーク17(ロータ10)と空芯コイル16(ステータ30)の同軸度を向上させることができ、ひいてはモータ特性の低下を防ぐことができる。また、同軸度が向上すると、余計なギャップが不要となり、ロータ10とステータ30のギャップを従来に比べてより狭くすることができる。その結果、コアレスモータ1の更なる小型化が可能であるとともに、空芯コイル及び永久磁石を小型化することで磁気抵抗を小さくしてモータ効率を高めることができる。
【0067】
また、空芯コイル16は支持部材20に支持されるため、空芯コイル16を支持するための治具が不要になり、モータ製造時の取り付け作業の簡素化及び製造効率の向上を図ることができる。
【0068】
[変形例]
本実施形態では、空芯コイル16として、複数のセグメントコイルを所定数並べて形成されるものを採用したが、例えば図4(c)に示すように、カゴ型にコイルを巻いて形成される空芯コイル16Aを採用した場合であっても、同様のことがいえる。すなわち、コイル受け部20aによって、空芯コイル16Aの連結導体部16dの周面を、すなわち、空芯コイル16Aのうちモータ特性にほぼ影響を及ぼさない部分を支持するので、モータ特性の低下を防ぎつつ、ロータ10と空芯コイル16Aとの同軸度が低下するのを防ぐことができる。
【0069】
また、図4(d)に示すように、カゴ型にコイルを巻いて形成される空芯コイル16Bの展開図が三角波状になる場合も考えられる。このように、たとえロータ10のモータ軸12と略直交する方向に電流が流れない場合であっても(図中の矢印参照)、空芯コイル16Bの連結導体部16eの周面を、すなわち、モータ特性にほとんど影響を及ぼさない部分を支持するようにコイル受け部20aが形成されていれば、本発明は適用可能である。
【0070】
なお、例えばカゴ型の空芯コイル16Bを展開したときには、矩形波、ひし形や六角形等の形状になるような巻き方にしてもよい。また、複数のセグメントコイルを並べることによって空芯コイルを形成するときには、各セグメントコイルは略四角枠の形状となる。
【0071】
また、本実施形態では、4(極)−6(空芯コイル数)構造の3相インターロータモータを考えることとしたが、例えば、2相モータであっても、アウターロータモータであっても、例えば8−12構造のモータであっても、その種類の如何は問わない。また、本実施形態においては、6個の空芯コイル16を固定することとしたが、用いる空芯コイル16の数や形状は、上述したものに限られない。
【0072】
また、本実施形態では、モータ軸12を支持部材20に固定した軸固定型コアレスモータ構成について説明したが、例えば、図5に示すように、支持部材20に軸受スリーブ13Aが固定され、ロータ10が回転自在に支持されるような構成であっても構わない。すなわち、モータ軸12Aがロータハブ11に固定され、空芯コイル16及び軸受スリーブ13Aが支持部材20に固定され、ロータハブ11に固定された永久磁石15が、空芯コイル16と軸受スリーブ13との空隙を回転するような構成であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係るコアレスモータは、空芯コイルがラジアル方向へ傾くのを防ぐことができ、ひいてはモータ効率・モータ特性の悪化を防ぐことが可能なものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態に係るコアレスモータの機械構成を示す側面断面図である。
【図2】空芯コイルの取り付け態様について説明するための説明図である。
【図3】空芯コイルを略円筒状になるようにして支持部材に固定する様子を示す概略工程図である。
【図4】空芯コイルの連結導体部の一例を示す図である。
【図5】本発明に係るコアレスモータの他の実施の形態の機械構成を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 コアレスモータ
10 ロータ
11 ロータハブ
12 モータ軸(軸部材)
13 軸受スリーブ(軸受部材)
14 ヨーク
15 永久磁石
16,16A,16B 空芯コイル
16a,16b 有効導体部
16c,16d,16e 連結導体部
17 バックヨーク
18 ホール素子
19 センサ基板
20 支持部材
20a コイル受け部
20b 突起部
20c 軸受支持部
30 ステータ
40 軸受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面が多極着磁された磁石を有するロータと、
軸受部を介在させて前記ロータを回転自在に支持するステータと、
前記磁石の周面に空隙を介して対向するように配置され、トルク発生に寄与する複数の有効導体部及び隣り合う各有効導体部どおしを連結する連結導体部とを有する空芯コイルと、
該空芯コイルを支持するコイル受け部を有する支持部材と、を備え、
前記コイル受け部は、前記連結導体部の周面を支持し、前記空芯コイルを径方向に位置決めすることを特徴とするコアレスモータ。
【請求項2】
前記支持部材には、前記空芯コイルを軸方向に位置決めするように支持する突起部が形成されてなることを特徴とする請求項1記載のコアレスモータ。
【請求項3】
前記支持部材は、少なくとも前記コイル受け部がアルミ材からなることを特徴とする請求項1または2記載のコアレスモータ。
【請求項4】
前記空芯コイルは、前記有効導体部が周方向に重なり合った複数のセグメントコイルから構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコアレスモータ。
【請求項5】
前記軸受部は動圧軸受部であり、該動圧軸受部はセラミックス材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のコアレスモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−72871(P2008−72871A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251347(P2006−251347)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】