説明

コークス炉の壁面評価装置、コークス炉の壁面評価方法、及びコンピュータプログラム

【課題】コークス炉の炭化室からコークスを押し出す際に生じる押出負荷と、炭化室の炉壁の凹凸の状態との関係を定量的に把握することができるようにする。
【解決手段】炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14L全体に亘る凹凸量を示す炉壁3次元プロフィールデータ701を、壁面観察装置200で得られた画像信号を用いて生成する。そして、炉壁14に登り勾配があることによって、押し出されるコークス15が受ける抵抗を指標化した抵抗指数kを、炉壁3次元プロフィールデータ701を用いて求めるようにした。そして、この抵抗指数kと押出負荷とに相関があることが確認できた。したがって、押出負荷に影響を与える炉壁14の状態を定量的に評価することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の壁面評価装置、コークス炉の壁面評価方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、コークス炉の炭化室の壁面の状態を評価するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
石炭を乾留してコークスを生成するためのコークス炉は、耐火レンガ等で形成された炉壁を介して、多数の炭化室と燃焼室とが交互に配置されて構成される。このようなコークス炉でコークスを生成する場合には、まず、炭化室の頂部にある石炭装入口から石炭を装入する。そして、ガスを燃やすことにより燃焼室で発生した熱によって、1000℃以上の高温を凡そ20時間、炭化室内の石炭に加える。これにより石炭が乾留され、コークスケーキ(以下、単にコークスと称する)が製造される。コークスが製造されると、炭化室の両端にある扉を開けて、炭化室の側方から押出機によりコークスを押し出し、コークスを炭化室から取り出す。このようにしてコークスを製造するための炭化室は、例えば、長さが15m、高さが6m、幅が0.4m程度の大きさを有しており、長さと高さに比較して幅が狭い構造を有しているのが特徴である。
【0003】
操業効率の観点から、長年連続的に稼動しているコークス炉では、炭化室の炉壁に損傷が発生することがある。したがって、炭化室の炉壁の状態を把握することは、炭化室の損傷による操業の中断や遅滞等によってコークスの生産能力を低下させないようにするという観点から、極めて重要である(以下では、炭化室の炉壁を、必要に応じて炉壁と略称する)。
炉壁の状態を診断する従来の技術として、特許文献1に記載の技術がある。かかる技術では、まず、炭化室のある高さにおいて、炉壁間の距離を測定し、測定した結果から、炭化室の奥行方向の距離と、炉壁間の距離との関係を表す実測距離変位線を求め、更に、求めた実測距離変位線をスムージング化した平準化変位線を求める。そして、これら実測距離変位線と平準化変位線とによって囲まれた部分の面積の総和を求め、求めた面積から、炉壁の状態を診断する。
【0004】
【特許文献1】特開2003−183661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コークス炉を操業する上では、コークスを押し出す際に生じる押出負荷が小さいことが望ましい。押出負荷が一定値以上になると、コークスの押し詰まりが発生して、コークスの生産能力が著しく低下するからである。このような押出負荷を決定する要因には様々なものがある。具体的に、炉壁の凹凸、炉壁の耐力、炉壁とコークスとの隙間量、コークスを構成する各コークス塊の大きさ、コークスの炭化室における充填量、押出時に炉壁とコークスとの間に生じる摩擦力、石炭の配合や石炭に含まれる水分量、及び石炭の乾留状態等の様々な要因が複雑に絡み合って押出負荷が生じる。
【0006】
そして、炉壁の凹凸が押出負荷にどのような影響を与えているのかを定量的に把握することができれば、押出負荷が炉壁の凹凸によって増大しているのか、それとも炉壁の凹凸以外の要因によって増大しているのかを把握することができるので、コークス炉の操業を、これまでよりも適切に管理することができる。
【0007】
しかしながら、前述したように押出負荷を決定する要因は複雑である。したがって、従来は、押出負荷と炉壁の凹凸の状態との関係を定量的に把握することができなかった。前述した特許文献1に記載の技術でも、炉壁の状態をある程度客観的に把握することができるだけであり、押出負荷と炉壁の凹凸の状態とを定量的に対応付けることはできなかった。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、コークス炉の炭化室からコークスを押し出す際に生じる押出負荷と、炭化室の炉壁の凹凸の状態との関係を定量的に把握することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコークス炉の壁面評価装置は、コークス炉の炭化室の側壁面の状態を評価するコークス炉の壁面評価装置であって、前記炭化室の側壁面の画像信号に基づいて、前記炭化室の側壁面に生じている凹凸に関わる凹凸情報を導出する凹凸情報導出手段と、前記凹凸情報導出手段により導出された凹凸情報に基づいて、前記炭化室の側壁面における、コークスの押出方向に対する勾配に関わる勾配情報を導出する勾配情報導出手段と、前記勾配情報導出手段により導出された勾配情報を用いて、コークスが押出時に受ける抵抗を指標化した抵抗指標を導出する指標化手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のコークス炉の壁面評価方法は、コークス炉の炭化室の側壁面の状態を評価するコークス炉の壁面評価方法であって、前記炭化室の側壁面の画像信号に基づいて、前記炭化室の側壁面に生じている凹凸に関わる凹凸情報を導出する凹凸情報導出ステップと、前記凹凸情報導出ステップにより導出された凹凸情報に基づいて、前記炭化室の側壁面における、コークスの押出方向に対する勾配に関わる勾配情報を導出する勾配情報導出ステップと、前記勾配情報導出ステップにより導出された勾配情報を用いて、コークスが押出時に受ける抵抗を指標化した抵抗指標を導出する指標化ステップとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明のコンピュータプログラムは、コークス炉の炭化室の側壁面の状態を評価するための処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記炭化室の側壁面の画像信号に基づいて、前記炭化室の側壁面に生じている凹凸に関わる凹凸情報を導出する凹凸情報導出ステップと、前記凹凸情報導出ステップにより導出された凹凸情報に基づいて、前記炭化室の側壁面における、コークスの押出方向に対する勾配に関わる勾配情報を導出する勾配情報導出ステップと、前記勾配情報導出ステップにより導出された勾配情報を用いて、コークスが押出時に受ける抵抗を指標化した抵抗指標を導出する指標化ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炭化室の側壁面における勾配であって、コークスの押出方向に対する登り勾配の情報を導出し、導出した登り勾配の情報を用いて、コークスが押出時に受ける抵抗を指標化することにより、コークスの押出時に生じる押出負荷と、炭化室の炉壁の凹凸の状態との関係を定量的に把握することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、コークス炉の構成の一例を示す図である。具体的に、図1(a)は、コークス炉100全体のうち、炭化室の奥行き方向に見たときの、測定対象の炭化室付近の様子の一例を示す縦断面図である。図1(b)は、コークス炉100全体のうち、コークス炉100の上側から見たときの、図1(a)に示した部分の横断面図である。
【0014】
図1(a)に示すように、コークス炉100は、炉壁14を介して炭化室11a、11bと燃焼室16a、16b、16cとが交互に配置されている。石炭装入口13aから、炭化室11a内に石炭が装入され、コークス15が製造される。コークス15は、ガス燃焼を行う燃焼室16a、16bからの熱によって、石炭が乾留されることにより製造される。
【0015】
炉壁14は、例えば耐火レンガを積み重ねることによって形成される。操業中における炉壁14の温度は、燃焼室16a、16b、16cからの熱によって、1000℃以上の高温となっている。また、炭化室11a、11b内も1000℃以上の高温となっている。
炉壁14の上には、天井耐火物18が形成されている。本実施形態のコークス炉100の炭化室11a、11b(炉壁14)の高さは6mであり、天井耐火物18の高さは1.5mであり、石炭装入口13a、13bの直径は0.4mである。また、図1(b)に示すように、炭化室11bの奥行方向における両端部には、押出機側扉19aと排出側扉19bとが設けられている。本実施形態では、これら押出機側扉10aと排出側扉19bとの間の距離(すなわち、炭化室11の奥行方向の長さ)は、16mである。尚、以下の説明では、必要に応じて、押出機側(押出元側)をPS側と称し、排出側(押出先側)をCS側と称する。
尚、炭化室11a、11bの石炭装入口13a、13bは、蓋12a、12bで塞がれている。更に、燃焼室16の開口部も蓋17で塞がれている。
【0016】
また、図1(b)に示すように、例えばコークス15aが製造されると、押出機側扉19aと排出側扉19bとが開けられる。そして、PS側から炭化室11aの奥行方向に押出機(図示を省略)に搭載されている押出ラム20を挿入して、コークス15aをCS側に押し出す。これによりコークス15aがコークス炉100から取り出される。
このようにしてコークス15aをコークス炉100から取り出す際に、前述したような様々な要因によって、押出負荷が変化する。この押出負荷は、押出ラム20を駆動するモータの電力や、モータと押出ラム20とを接続するシャフトに生じるトルク等に基づいて測定することができる。
【0017】
本実施形態では、以上のような構成を有するコークス炉100の炭化室11の両側壁面(炉壁)全体に亘る凹凸を観測するために、図2に示す壁面観察装置を用いる。図2は、壁面観察装置の外観構成の一例を示す図である。図2では、炭化室11のPS側から、炭化室11の奥行方向に、壁面観察装置200が挿入されたときの様子を示している。
【0018】
図2において、壁面観察装置200は、ベースビームBBと、アッパビームUBと、垂直柱1と、ミラー管2とが一体となって形成された水冷ランスを有している。水冷ランスは、高耐熱のステンレス製の2重管であり、内管と外管との間に冷却水が流されるようになっている。このようにして、冷却水が流されるようにすることによって、水冷ランスの内部が高熱に曝されないようにしている。
【0019】
具体的に、炭化室11の奥行方向に延設されているアッパビームUBの先端面と、同じく炭化室11の奥行方向に延設されているベースビームBBの先端上面に、炭化室11の高さ方向に延設される垂直柱1が取り付けられている。また、ベースビームBBの先端面と、垂直柱1の上端側面に、炭化室11の高さ方向に延設されるミラー管2が取り付けられている。前述したように、垂直柱1と、ミラー管2と、アッパビームUBと、ベースビームBBとは、一体で形成されており、互いに共通の内空間を有している。
【0020】
垂直柱1の側面には、透光板3a〜3dが、所定の間隔で高さ方向に設けられている。垂直柱1の内部に設けられた4つのリニアイメージカメラ5は、夫々透光板3a〜3dを通して、ミラー管2に映し出された画像を撮影する。すなわち、リニアイメージカメラ5は、炭化室11の右側・左側の炉壁14R、14Lの画像を撮影する(図3及び図4を参照)。
【0021】
また、透光板3a、3bの間と、透光板3c、3dの間には、夫々透光板4a、4bが設けられている。垂直柱1の内部に設けられた、例えば複数の半導体レーザからなるレーザ投光器群8は、透光板4a、4bを通して、ミラー管2を介して、炭化室11の右側・左側の炉壁14R、14L上のリニアイメージカメラ5の視野に、レーザ光を投光する(図3及び図4を参照)。
また、垂直柱1の底面の先端側には、炭化室11の炉壁(床面)14Fに乗ったシューSHが形成されている。このシューSHを介して水冷ランスの先端部が炭化室11の炉壁(床面)14Fで支持される。尚、水冷ランスの後端部は、水冷ランス挿入装置(図示を省略)に装着され支持されている。
【0022】
炭化室11のPS側から、ミラー管2を先頭にして水冷ランスを、炉外の水冷ランス挿入装置(図示を省略)を用いて炭化室11の奥行方向に挿入する。これにより、水冷ランスが、炭化室11の奥行方向(CS側の方向)に進入する。
【0023】
図3は、垂直柱1の内部であって、透光板3a、4aが設けられた部分の様子の一例を示す図である。
図3に示すように、垂直柱1の内部の位置であって、透光板3aと対向する位置に、第1のリニアイメージカメラ5aが設けられている。また、垂直柱1の内部の位置であって、透光板4aと対向する位置には、11個のレーザ投光器からなるレーザ投光器群8aと、同じく11個のレーザ投光器からなるレーザ投光器群8bとが設けられている。第1のリニアイメージカメラ5aと、レーザ投光器群8a、8bとの間には、減速機を内蔵した第1の電気モータ6aが設けられている。この第1の電気モータ6aは、垂直柱1に固定されている。また、第1の電気モータ6aの回転軸(出力軸)に、第1のリニアイメージカメラ5aと支持板7aとが結合されている。そして、支持板7aに、レーザ投光器群8a、8bが固定されている。
【0024】
レーザ投光器群8aは、その上方にある第1のリニアイメージカメラ5aで撮影されるレーザスポットを、炉壁14上に形成するためのものである。一方、レーザ投光器群8bは、その下方にある図示しない第2のリニアイメージカメラ5で撮影されるレーザスポットを形成するためのものである。レーザ投光器群8bの下方にある第2のリニアイメージカメラは、垂直柱1の内部の位置であって、透光板3bと対向する位置に設けられている。この第2のリニアイメージカメラ5は、第1のリニアイメージカメラ5aと同様に、減速機を内蔵した図示しない第2の電気モータ6の回転軸に結合されている。また、第2の電気モータ6は垂直柱1に固定されている。尚、第2の電気モータ6と、第2のリニアイメージカメラ5には、レーザ投光器群8a、8bは結合されていない。
【0025】
第1のリニアイメージカメラ5aと、レーザ投光器群8a、8bとがミラー管2の管軸をねらっている状態で、第1の電気モータ6aが正転すると、第1のリニアイメージカメラ5aと、レーザ投光器群8a、8bは、炭化室11の左側の炉壁14Lと対面する位置まで回動する。一方、第1の電気モータ6aが逆転すると、第1のリニアイメージカメラ5aと、レーザ投光器群8a、8bは、炭化室11の右側の炉壁14Rと対面する位置まで回動する。
【0026】
第1の電気モータ6aの正転に伴い、第2の電気モータ6も正転する。これにより、第2のリニアイメージカメラ5も、炭化室11の左側の炉壁14Lと対面する位置まで回動する。同様に、第1の電気モータ6aの逆転に伴い、第2の電気モータ6も逆転する。これにより、第2のリニアイメージカメラ5も、炭化室11の右側の炉壁14Rと対面する位置まで回動する。
【0027】
以上のような第1及び第2のリニアイメージカメラ5と、レーザ投光器群8a、8bと、第1及び第2の電気モータ6と同様の構成が、垂直柱1の内部の領域であって、透光板3c、3d、4bが形成されている領域にも形成されている。このように、本実施形態では、垂直柱1の内部に、リニアイメージカメラ5とレーザ投光器群8との組みが、4組設けられている。
【0028】
図4は、垂直柱1とミラー管2の配置関係の一例を示す図である。前述したように、垂直柱1の内部には、リニアイメージカメラ5とレーザ投光器群8との組みを4組設けるようにしているが、各組は、撮影する場所が異なるだけであるので、以下では、第1のリニアイメージカメラ5aと、レーザ投光器群8との組みの説明を行い、その他の組みの詳細な説明を必要に応じて省略する。
【0029】
前述したように、第1のリニアイメージカメラ5aとレーザ投光器群8aは、垂直柱1の管軸を回転軸として旋回駆動をし得る。ミラー管2には、炭化室11の左側の炉壁14Lを正面から観察するための左鏡面9Lと、炭化室11の右側の炉壁14Rを正面から観察するための右鏡面9Rとが形成されている。これらの鏡面9L、9Rは、ステンレス製の外管の表面を鏡面研磨して鏡面化した後、クロムメッキを施すことにより形成される。
【0030】
第1のリニアイメージカメラ5aと、レーザ投光器群8aとを、例えば左鏡面9Lをねらう位置に回動させると、レーザ投光器群8aから出射されるレーザ光線が、左鏡面9Lに当って反射され、炭化室11の左側の炉壁14Lに当る。そうすると、炭化室11の左側の炉壁14Lに、レーザスポット52が現われる(図5を参照)。本実施形態では、例えば、水平方向の長さ(幅)が30mm、高さ方向の長さ(厚み)が2mmの線状のレーザスポット52が現われる。前述したように、レーザ投光器群8aは、11個のレーザ投光器からなるので、11個のレーザスポット52a〜52kが、炉壁14の高さ方向に現われる。
【0031】
そして、本実施形態では、炭化室11の炉壁14が平らである場合には、これら11個のレーザスポット52a〜52kと、レーザ投光器群8a以外の3つのレーザ投光器群8によって形成されるレーザスポットとが、概ね130mm間隔で、炉壁14の高さ方向に現われるように、合計44個のレーザ投光器から投光されるレーザ光線の投光角度が調整されている。
【0032】
本実施形態では、リニアイメージカメラ5aは、炭化室11の炉壁14の高さ方向を撮影する1次元カメラである。例えば、第1のリニアイメージカメラ5aと、レーザ投光器群8aとが、左鏡面9Lをねらっているときには、図5(a)に示すように、炭化室11の炉壁14の高さ方向に、第1のリニアイメージカメラ5aの撮影視野51が形成される。
水平方向(炭化室14の奥行方向)に長さを有するレーザスポット52を形成することにより、レーザスポット52が形成される領域が、炭化室14の奥行方向に多少ずれても、リニアイメージカメラ5の視野51から完全に逸脱しない範囲にレーザスポット52があればよい。
【0033】
炭化室11の炉壁14は粗面であるので、レーザスポット52から各方向にレーザ光が散乱する。この散乱したレーザ光の一部が、例えば左鏡面9Lに当って反射され、第1のリニアイメージカメラ5aに入る。
【0034】
尚、炉壁14の赤熱発光に対してレーザスポット52を強調するため、狭帯域の特定波長のみを透過する光学干渉フィルタをカメラに取り付けてある。この光学干渉フィルタは斜めから光が入射すると透過波長が短波長側にシフトする特性がある。そこで、本実施形態では、波長685nm付近の光を透過するフィルタを採用し、レーザ投光器群8を構成するレーザ投光器のうち、撮影視野51の中心付近にレーザスポットを形成するレーザ投光器は、フィルタの透過帯域と合致した685nmの波長のレーザ光を投光し、撮影視野の周辺部にスポットを形成するレーザ投光器は、670nmの波長のレーザ光を投光するようにしている。
【0035】
ここで、炭化室11の炉壁14に凹部が存在していると、炉壁14が平らな場合に比べて、鏡面9Lと炉壁14との間の距離が増大する。すると、図5(b)に示すように、リニアイメージカメラ5aの画面上では、レーザスポット52の像52´が上方向にシフトする。レーザ光がリニアイメージカメラ5aの下方から斜めに投光されているためである。一方、炭化室11の炉壁14に凸部が存在していると、炉壁14が平らな場合に比べて、鏡面9Lと炉壁14との間の距離が増大する。したがって、図5(c)に示すように、リニアイメージカメラ5aの画面上では、レーザスポット52の像52´が下方向にシフトする。
【0036】
尚、第1のリニアイメージカメラ5aのように、対応するレーザ投光器群8よりも上方にあるリニアイメージカメラ5では、前述したように、凹部が存在している所で、撮影画面上のレーザスポット像52´が上方向にシフトし、凸部が存在している所で、影画面上のレーザスポット像52´が下方向にシフトする。一方、第2のリニアイメージカメラ5のように、対応するレーザ投光器群8よりも下方にあるリニアイメージカメラ5では、凹部が存在している所で、撮影画面上のレーザスポット像52´が下方向にシフトし、凸部が存在している所で、撮影画面上のレーザスポット像52´が上方向にシフトする。
【0037】
以上のようにして、炭化室11の炉壁14に形成されたレーザスポット像52´を撮影するに際し、リニアイメージカメラ5と、レーザ投光器群8との指向方向を左鏡面9Lにすると、炭化室11の左側の炉壁14Lを正面から見る画像が得られる。また、レーザ投光器群8との指向方向を右鏡面9Rにすると、炭化室11の右側の炉壁14Rを正面から見る画像が得られる。
【0038】
次に、壁面観察装置200の使用態様の一例を説明する。各リニアカメラ5の指向方向を、右鏡面9Rに設定して、炭化室11内に水冷ランスを前進させる。水冷ランスが40mm移動する度に発せられる移動同期パルスが1パルス発生すると、壁面観察装置200に設けられたA/D変換器は、各リニアイメージカメラ5の1ライン分の画像信号をA/D変換する。そして、壁面観察装置200に設けられたCPUは、A/D変換された画像信号を、どのリニアイメージカメラ5で撮影されたものであるのかを区別できる状態で、RAMにより構成される右壁面用メモリ領域に書き込む。
【0039】
炭化室11の奥行方向の略全長に渡って、以上の処理を終えると、各リニアカメラ5の指向方向を、左鏡面9Lに設定して、水冷ランスを後退させながら、同様に計測を行う。
尚、壁面観察装置200については、例えば、国際公開第00/55575パンフレットや、特開2005−249698号公報等に記載されている。
【0040】
次に、コークス炉の壁面評価装置について説明する。図6は、コークス炉の壁面評価装置の機能構成の一例を示す図である。尚、コークス炉の壁面評価装置300のハードウェアは、例えば、パーソナルコンピュータ等、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、及び画像入出力ボードを備えた装置である。そして、図6に示す各ブロックは、例えば、CPUが、ROMやハードディスクに記憶されている制御プログラムを、RAMを用いて実行することにより実現することができる。
【0041】
炉壁3次元プロフィールデータ導出部301は、前述したようにして壁面観察装置200で得られた画像信号に基づいて、炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14L全体の炉壁3次元プロフィールデータを導出する。炉壁3次元プロフィールデータでは、凹凸損傷のない健全部をゼロとして、炭化室11に張出している凸部を正の値、逆に陥没している凹部を負の値として凹凸量が表される。図7は、炉壁3次元プロフィールデータの一例を説明する図である。尚、ここでは、炭化室11の奥行方向(PSからCSまで)の長さをD0[m]とし、炭化室11の高さをH0[m]と表記する。
【0042】
図7において、壁面観察装置200における炉壁14R、14Lの撮影領域に対応した複数の領域(図7では(p×q)個(p、qは2以上の自然数)の領域)それぞれに、壁面観察装置200で得られた画像信号に基づいて、凹凸量(z(1,1)〜z(p,q))を求めたものが、炉壁3次元プロフィールデータ701となる。
【0043】
具体的に説明すると、炉壁3次元プロフィールデータ導出部301は、壁面観察装置200に設けられた右壁面用メモリ領域に記憶されている画像信号を順次読み出す。そして、読み出した画像信号から、輝度が最も高い位置(ピーク位置)を特定することにより、レーザスポット52を、炭化室11の奥行方向(PS側からCS側に向かう方向)に追跡する。前述したように本実施形態では、44個(11個×4セット)のレーザスポット52が得られるので、レーザスポット52の追跡結果が、44個得られることになる。
【0044】
図8は、レーザスポット52の追跡結果の一例を示す図である。図8において、レーザスポット52の追跡結果801は、炭化室11の高さ方向におけるレーザスポット52の位置と、炭化室11の奥行方向の位置とをパラメータとする曲線となる。前述したようにレーザスポット52それぞれは、炭化室11の炉壁14に凹凸部が存在していると、炭化室11の高さ方向において上下にシフトする。したがって、レーザスポット52の追跡結果801を用いることにより、炭化室11の右側の炉壁14R全体に亘って凹凸量を検出することができる。一方、炭化室11の左側の炉壁14Lについても、壁面観察装置200に設けられた左壁面用メモリ領域に記憶されている画像信号を用いて、右壁面用メモリ領域に記憶されている画像信号に対する処理と同様の処理を行うことによって、凹凸量を検出することができる。
【0045】
そして、本実施形態の炉壁3次元プロフィールデータ導出部301は、以上のようにして求めた炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14L全体に亘る凹凸量を、互いに対向する領域同士で合算し、合算した凹凸量(z(1,1)〜z(p,q))を炉壁3次元プロフィールデータ701としている。なお、合算した凹凸量の符号は、炉壁14が凹凸のない健全な状態から広がる向きが負、逆に狭まる向きが正となる。このようにするのは、コークス51が炭化室11から押し出される際には、左右のどちらの炉壁が変形していても、同じ引っかかり抵抗が発生するので、左右別々に計算を行う場合よりも、その後の計算が簡便になるからである。
以上のように本実施形態では、凹凸情報として、凹凸行列データの一例である炉壁3次元プロフィールデータ701が用いられ、炉壁3次元プロフィールデータ導出部301を用いて凹凸情報導出手段が実現される。
【0046】
領域指定部302は、炉壁3次元プロフィールデータ導出部301で導出された炉壁3次元プロフィールデータ701の各領域(凹凸行列データ要素)を順次指定する。図7に示した例では、(p×q)個の領域を、(1,1)、・・・、(p,1)、(2,1)、・・・(p,q)の順で指定し、指定した領域(局所指標化対象領域)の炉壁3次元プロフィールデータ701を段差算出部303に出力する。
前述したように、壁面観察装置200は、炭化室11の奥行方向(PS側からCS側に向かう方向)においては、40mm間隔で画像信号を得るようにしている。また、壁面観察装置200は、炭化室11の高さ方向においては、130mm間隔で画像信号を得るようにしている。したがって、図7に示した炉壁3次元プロフィールデータ701の各領域における凹凸量(z(1,1)〜z(p,q))は、横(炭化室11の奥行方向)が40mm、縦(炭化室11の高さ方向)が130mmの大きさを有する長方形の領域の凹凸量を代表する値である。
【0047】
段差算出部303は、領域指定部302から出力された炉壁3次元プロフィールデータ701に基づいて、領域指定部302で指定された領域の段差ΔZ[mm]を求める。
図9は、炭化室11の壁面14の凹凸の様子の一例を示す図である。具体的に図9(a)は、炭化室11の一部の横断面図を示す図であり、図9(b)は、図9(a)の破線で囲まれた部分をモデル化して示す図である。
【0048】
前述したように、領域指定部302は、図7に示した炉壁3次元プロフィールデータ701において、(p×q)個の領域を、(1,1)、・・・、(p,1)、(2,1)、・・・(p,q)の順で指定する。そこで、段差算出部303は、領域指定部302によって今回指定された領域の凹凸量と、前回指定された互いに隣接する領域の凹凸量とから、今回指定された領域と、前回指定された領域との段差ΔZを導出する。例えば、図9(b)において、領域nが指定された場合、領域nの凹凸量と、領域(n−1)の凹凸量とから、領域nの凹凸量と、領域(n−1)との段差ΔZnを導出する。尚、炉壁3次元プロフィールデータ701において、1列目の領域については、その領域の凹凸量が段差ΔZとなる。あるいは、段差ΔZnは2列目から計算するようにしてもよい。
前述したように、炭化室11の奥行方向(PS側からCS側に向かう方向)においては、40mm間隔で画像信号を得るようにしている。したがって、段差ΔZは、領域指定部302で指定された領域における勾配であって、コークス15の押出方向に対する勾配を示す情報となる。すなわち、凹凸行列の要素間の差分値である段差ΔZは、局所的な勾配を示す情報となる。
以上のように本実施形態では、段差算出部303を用いて勾配情報導出手段が実現される。
【0049】
局所抵抗指数導出決定部304は、領域指定部302で指定された領域について、局所抵抗指数ki,jを導出するか否かを決定する。具体的に局所抵抗指数導出決定部304は、段差算出部303で導出された段差ΔZが、閾値δより大きい場合に、局所抵抗指数ki,jを導出すると決定する。ここで、局所抵抗指数ki,jとは、押出ラム20によって押し出されているコークス15が、領域指定部302で指定された領域の登り勾配から受ける抵抗を指標化したものである。このように本実施形態では、局所抵抗指標として局所抵抗指数ki,jが用いられる。
【0050】
一方、段差算出部303で今回導出された段差ΔZがδ(δ>0)以下の場合には、局所抵抗指数ki,jを0(ゼロ)とする。
段差算出部303で今回導出された段差ΔZが0(ゼロ)以下である場合には、領域指定部302で指定された領域が、コークス15の押出方向に対して下り勾配を有している。このような場合、押出ラム20によって押し出されているコークス15が、領域指定部302で指定された領域の勾配によって受ける抵抗は発生しない。したがって、段差算出部303で今回導出された段差ΔZが0(ゼロ)未満である場合には、その抵抗を指標化した局所抵抗指数ki,jを0(ゼロ)とする。また、段差算出部303で今回導出された段差ΔZが、正の値を示していたとしても、その値が小さければ、押出ラム20によって押し出されているコークス15が、領域指定部302で指定された領域の勾配によって受ける抵抗は無視できる。なぜならば、コークス15と炉壁14の間には焼き減りと呼ばれる1〜2mm程度の隙間が生じているからである。したがって、本実施形態では、段差算出部303で今回導出された段差ΔZが、正の値を示していたとしても、その値が小さければ局所抵抗指数ki,jを0(ゼロ)とする。尚、閾値δは焼き減り量に対応させて、例えば、1mm以上2mm以下の任意の値とすることができる。
【0051】
局所抵抗指数導出部305は、局所抵抗指数導出決定部304で、局所抵抗指数ki,jを導出すると決定された場合に、領域指定部302で指定された領域の局所抵抗指数ki,jを導出する。
具体的に局所抵抗指数導出部305は、以下の(1)式を用いて、領域(i,j)における局所抵抗指数ki,jを導出する(iは、1以上p以下の自然数であり、jは、1以上q以下の自然数である)。
【0052】
【数1】

【0053】
ここで、D0は、炭化室11の奥行方向(PSからCSまで)の長さ[m]であり、H0は、炭化室11の高さ[m]である。これらD0、H0は炭化室11の形状によって定まるものであり、コークス炉の壁面評価装置300に設けられたROMに予め記憶されている。
dは、領域指定部302で指定された領域の位置であって、炭化室11の奥行方向の位置[m]であり、hは、領域指定部302で指定された領域の位置であって、炭化室11の高さ方向の位置[m]である(図10を参照)。これらd、hは、領域指定部302によって指定された領域に対応する位置であり、炉壁3次元プロフィールデータ導出部301で導出された炉壁3次元プロフィールデータ701から得ることができる。
【0054】
αは、領域指定部302によって今回指定された領域の段差ΔZに与える定数である。βは、領域指定部302によって前回指定された領域の局所抵抗指数ki-1,jに与える定数である。本実施形態では、段差ΔZが大きくなるにつれて、指数関数的に局所抵抗指数ki,jが増大するという本願発明者らの知見に基づいて、領域指定部302によって今回指定された領域の段差ΔZの累乗(定数α乗)を演算するようにしている。
【0055】
また、本実施形態では、領域指定部302によって前回指定された領域(領域指定部302によって今回指定された領域とコークス15の押出元側で隣接する領域)の局所抵抗指数ki-1,jも考慮して、領域指定部302によって今回指定された領域の局所抵抗指数ki,jを導出する。このようにするのは、例えば、登り勾配の領域と下り勾配の領域とが交互に存在する場合に比べ、登り勾配の領域が連続する場合の方が、押出ラム20によって押し出されているコークス15が、領域指定部302で指定された領域の勾配によって受ける抵抗が大きくなるからである。そして、本実施形態では、領域指定部302によって前回指定された領域の局所抵抗指数ki-1,jに定数βを乗じることにより、領域指定部302によって前回指定された領域の局所抵抗指数ki-1,jによる影響を調整するのが好ましいという本願発明者らの知見に基づいて、定数βを定義している。
【0056】
εは、炭化室11の奥行方向(PS側からCS側に向かう方向)の位置に値が依存する重み係数であり、γは、炭化室11の炉壁14の高さ方向の位置に値が依存する重み係数である。図10は、重み係数ε、γを説明する図である。具体的に図10(a)は、炭化室11の炉壁14を示す図であり、図10(b)は、重み係数εと、炭化室11の奥行方向における位置dとの関係の一例を示す図であり、図10(c)は、重み係数γと、炭化室11の高さ方向における位置hとの関係の一例を示す図である。
【0057】
図10(b)に示すように、重み係数εは、PS側(押出元)から遠ざかる程大きくなる。このようにするのは、PS側から遠ざかる位置である程、押出ラム20の押出ラムからの距離が長くなり、その位置にあるコークス15が押出ラム20から受ける力が伝播ロスにより小さくなるからである。すなわち、炉壁14やコークス15の状態が同じであっても、PS側から遠ざかる位置にあるコークス15である程、余計に押出負荷が必要になる。本実施形態では、炭化室11の奥行方向における位置dの増加に伴い、重み係数εが直線的に増加するように、重み係数εを定義している。
【0058】
また、図10(c)に示すように、重み係数γは、高さが低い位置である程大きくなる。このようにするのは、高さが低い位置にあるコークス15程、その上にあるコークス15の自重による拘束が発生し、段差を通過するためのコークス15の変形が起こりにくくなるからである。すなわち、炉壁14やコークス15の状態が同じであっても、低い位置にあるコークス15である程、余計に押出負荷が必要になるからである。本実施形態では、炭化室11の高さ方向の位置hの増加に伴い、重み係数γが直線的に減少するように、重み係数γを定義している。
【0059】
以上のような定数α、βと、重み係数ε、γは、炭化室11にコークス15を押し出す操業をモデル化して行った数値シミュレーションの結果や、実際の操業の結果等に基づいて決定される任意の実数であり、コークス炉の壁面評価装置300に設けられたROMに予め記憶されている。コークス押出性の観点から炉壁状態を精度高く指標化することができるα、β、ε、γを定める必要がある。本願発明者らは、限定的な操業データで定数α、βと重み係数ε、γの概略の範囲を調査したところ、例えば、αは1.2以上2.5以下、βは0.1以上1.0以下、εは0以上5以下、γは0以上5以下の範囲の値であった。
尚、炉壁3次元プロフィールデータ701の1列目の領域が領域指定部302によって指定されている場合、局所抵抗指数導出部305は、(1)式において、前回指定された領域の局所抵抗指数ki-1,jを0(ゼロ)として、局所抵抗指数ki,jを導出する。
【0060】
また、炉壁3次元プロフィールデータ701が測定ノイズを含んでいる場合は、データをスムージング処理することが望ましい。例えば、領域指定部302により指定された領域の炉壁3次元プロフィールデータ701と、その炉壁3次元プロフィールデータ701と奥行き方向や縦方向で隣り合う領域の炉壁3次元プロフィールデータ701とを平均した値を、領域指定部302により指定された領域の炉壁3次元プロフィールデータ701として用いて局所抵抗指数ki,jを導出するのが好ましい。
【0061】
局所抵抗指数導出部305は、以上のようにして導出した局所抵抗指数ki,jを、コークス炉の壁面評価装置300に設けられたRAMによって構成される局所抵抗指数記憶部306に一時的に記憶する。
以上のように本実施形態では、第1の重み係数として重み係数γが用いられ、第2の重み係数として重み係数εが用いられる。
【0062】
局所抵抗指数導出終了判定部307は、炉壁3次元プロフィールデータ701の全ての領域について、局所抵抗指数導出部305により局所抵抗指数ki,jが導出されたか否かを判定する。炉壁3次元プロフィールデータ701の全ての領域について、局所抵抗指数導出部305により局所抵抗指数ki,jが導出されていない場合、局所抵抗指数導出終了判定部307は、そのことを示す局所抵抗指数導出未完了信号を、領域指定部302に送信する。そして、領域指定部302は、炉壁3次元プロフィールデータ導出部301で導出された炉壁3次元プロフィールデータ701の次の領域を指定する。本実施形態において、炉壁3次元プロフィールデータ701の領域を指定する順序は、前述したように、(1,1)、・・・、(p,1)、(2,1)、・・・(p,q)の順である(図7を参照)。
【0063】
一方、炉壁3次元プロフィールデータ701の全ての領域について、局所抵抗指数導出部305により局所抵抗指数ki,jが導出された場合、すなわち、図7に示す例では、領域指定部302により領域(p,q)が指定され、局所抵抗指数導出部305により局所抵抗指数kp,qが導出された場合、局所抵抗指数導出終了判定部307は、そのことを示す局所抵抗指数導出完了信号を抵抗指数決定部308に出力する。局所抵抗指数導出完了信号を入力した抵抗指数決定部308は、局所抵抗指数記憶部306に記憶されている全ての局所抵抗指数ki,jを読み出し、読み出した局所抵抗指数ki,jから、以下の(2)式を用いて抵抗指数kを導出する。そして、抵抗指数決定部308は、導出した抵抗指数kを、例えばハードディスクに記憶する。
【0064】
【数2】

【0065】
以上のように本実施形態では、抵抗指標として抵抗指数kが用いられ、局所抵抗係数導出決定部304、局所抵抗係数導出部305、局所抵抗係数記憶部306、及び抵抗係数決定部308を用いて指標化手段が実現される。
抵抗指数表示部309は、抵抗指数決定部308により導出された抵抗指数kを、LCD(Liquid Crystal Display)等のコンピュータディスプレイを備えた表示装置400に表示する。
【0066】
図11は、以上のようにしてコークス炉の壁面評価装置300により導出される炉壁3次元プロフィールデータ701a(図11(a))と、その炉壁3次元プロフィールデータ701aに基づいてコークス炉の壁面評価装置300により導出される局所抵抗指数ki,j(図11(b))の一例を示す図である。また、図12は、図11(a)に示す炉壁3次元プロフィールデータ701aを含む、右側及び左側の炉壁14R、14L全体の炉壁3次元プロフィールデータ701で示される凹凸量を、等高線を用いて画像化した図である。尚、図11では、炭化室11における左右の炉壁14の一部14aについて、炉壁3次元プロフィールデータ701aと局所抵抗指数ki,jとを示している。また、図11(a)に示す炉壁3次元プロフィールデータ701aの数値の単位は[mm]である。
【0067】
図11(b)において、例えば、炉壁3次元プロフィールデータ701aの領域(12,3)、(13,3)、(14,3)における局所抵抗指数ki,jは、夫々「30」、「51」、「34」である。このように、コークス15を炭化室11から押し出す方向に対して、炭化室11の炉壁の勾配が、閾値δで定まる勾配よりも急な登り勾配であると、局所抵抗指数ki,jが発生することが分かる。
【0068】
前述したように、壁面観察装置200は、炭化室11の奥行方向(PS側からCS側に向かう方向)においては、40mm間隔で画像信号を得るようにしている。このように、炭化室11の奥行方向において、40mm間隔で画像信号を得るようにしているのは、本実施形態では、コークス15を構成するコークス塊の、炭化室11の奥行方向における長さの最小値が80mmであると見積もっているからである。
【0069】
図13は、コークス15が、炭化室11の右側の炉壁14Rに生じている凹凸の影響を受けて押し出されることを説明する図である。
図13(a)は、コークス塊15Cの位置にコークス塊15Cの長さLminより小さい開口幅の凹部1301がある様子を示している。図13(a)に示すように、コークス15を構成するコークス塊15A〜15Dのうち、炭化室11の奥行方向における長さが最小値Lminを示すコークス塊は、コークス塊15Cである。このコークス塊15Cの長さLminより開口幅が小さい凹部1301が炉壁14Rにあったとしても、コークス塊15A〜15Dは凹部1301に入り込めないので、実質的に凹部1301の影響を受けずに炭化室から押し出される。
【0070】
一方、図13(b)は、コークス塊15Cの位置にコークス塊15Cの長さLminと同じ開口幅の凹部1302がある様子を示している。この場合、コークス塊15cは開口幅の凹部1302に入り込んで形成されるので、押し出される時に抵抗を生じる。開口幅がLminの凹部を捉えることができる最低限の奥行方向に画像信号間隔は、サンプリング定理に従い、コークス塊15Cの長さLminの1/2倍(=Lmin÷2)以下である。奥行方向の画像信号間隔を必要以上に小さくすると炉壁3次元プロフィールデータ701のデータサイズが大きくなり演算する上で好ましくない。そこで、本実施形態では、奥行方向の画像信号間隔を、コークス塊15Cの長さLminの1/2倍の40mmにした。
【0071】
次に、図14のフローチャートを参照しながら、コークス炉の壁面評価装置300の処理動作の一例を説明する。この図14のフローチャートは、コークス炉の壁面評価装置300に設けられたCPUが、ROMやハードディスクに記憶された制御プログラムを実行することにより実現される。
【0072】
まず、ステップS1において、炉壁3次元プロフィールデータ導出部301は、壁面観察装置200によって、炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14L全体の画像信号が得られるまで待機する。炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14L全体の画像信号が得られると、ステップS2に進む。
【0073】
ステップS2に進むと、炉壁3次元プロフィールデータ導出部301は、壁面観察装置200で得られた画像信号に基づいて、炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14L全体の炉壁3次元プロフィールデータ701を導出する(図7、図11を参照)。
次に、ステップS3において、領域指定部302は、変数i,jを夫々1に設定する。変数i,jは、例えば、コークス炉の壁面評価装置300に設けられているRAMやレジスタ等に記憶される。
【0074】
次に、ステップS4において、段差算出部303は、炉壁3次元プロフィールデータ701に基づいて、領域(i,j)における段差ΔZを求める(図9を参照)。
次に、ステップS5において、局所抵抗指数導出決定部304は、ステップS4で求められた段差ΔZが閾値δよりも大きいか否かを判定する。この判定の結果、ステップS4で求められた段差ΔZが閾値δよりも大きい場合には、後述するステップS14に進む。
【0075】
一方、ステップS4で求められた段差ΔZが閾値δ以下である場合には、ステップS6に進む。ステップS6に進むと、局所抵抗指数導出決定部304は、領域(i,j)における局所抵抗指数ki,jを0(ゼロ)に設定する。
次に、ステップS7において、局所抵抗指数導出部305は、ステップS6で設定された局所抵抗指数ki,jを局所抵抗指数記憶部306に一時的に記憶する。
次に、ステップS8において、局所抵抗指数導出終了判定部307は、変数iが、規定値pか否かを判定する。規定値pは、炉壁3次元プロフィールデータ701の横方向(PS側からCS側に向かう方向)の数によって定まる値である。この判定の結果、変数iが、規定値pでない場合には、ステップS9に進み、領域指定部302は、変数iに「1」を加算する。そして、ステップS4移行の処理を再度行う。
【0076】
一方、変数iが、規定値pである場合には、ステップS10に進む。ステップS10に進むと、局所抵抗指数導出終了判定部307は、変数jが、規定値qか否かを判定する。規定値qは、炉壁3次元プロフィールデータ701の縦方向(高さ方向)の数によって定まる値である。この判定の結果、変数jが、規定値qでない場合には、ステップS11に進み、領域指定部302は、変数jに「1」を加算する。そして、ステップS4移行の処理を再度行う。
【0077】
一方、変数jが、規定値qである場合には、全ての局所抵抗指数ki,jを導出したと判定し、ステップS12に進む。ステップS12に進むと、抵抗指数決定部308は、ステップS7で局所抵抗指数記憶部306に記憶された全ての局所抵抗指数ki,jを読み出し、読み出した局所抵抗指数ki,jから、(2)式を用いて抵抗指数kを導出する。
次に、ステップS13において、抵抗指数表示部309は、ステップS12で算出された抵抗指数kを表示装置400に表示する。
【0078】
ステップS5において、ステップS4で求められた段差ΔZが閾値δよりも大きいと判定された場合には、ステップS14に進む。ステップS14に進むと、局所抵抗指数導出終了判定部307は、領域(i−1,j)の局所抵抗指数ki-1,jを局所抵抗指数記憶部306から読み出し、読み出した局所抵抗指数ki-1,jが0(ゼロ)でないか否かを判定する。この判定の結果、局所抵抗指数ki-1,jが0(ゼロ)である場合には、後述するステップS16に進む。
【0079】
一方、局所抵抗指数ki-1,jが0(ゼロ)でない場合には、ステップS15に進む。ステップS15に進むと、局所抵抗指数導出部305は、定数α、βと、重み係数ε、γと、炭化室11の奥行方向の長さD0と、炭化室の高さH0と、領域(i,j)により定まる位置d、hとを読み出す。そして、局所抵抗指数導出部305は、読み出したパラメータと、ステップS14で読み出した局所抵抗指数ki-1,jとを(2)式に代入して、局所抵抗指数ki,jを算出する。そして、前述したステップS7に進み、局所抵抗指数導出部305は、ステップS15で算出した局所抵抗指数ki,jを一時的に記憶する。
【0080】
ステップS14において、局所抵抗指数ki-1,jが0(ゼロ)であると判定された場合には、ステップS16に進む。ステップS16に進むと、局所抵抗指数導出部305は、ステップS15と同様に、定数α、βと、重み係数ε、γと、炭化室11の奥行方向の長さD0と、炭化室の高さH0と、領域(i,j)にり定まる位置d、hとを読み出す。そして、局所抵抗指数導出部305は、読み出したパラメータを(2)式に代入すると共に、局所抵抗指数ki-1,jとして0(ゼロ)を(2)式に代入して、局所抵抗指数ki,jを算出する。そして、前述したステップS7に進み、局所抵抗指数導出部305は、ステップS16で算出した局所抵抗指数ki,jを一時的に記憶する。尚、ステップS14に進んだ場合、局所抵抗指数ki-1,jは0(ゼロ)であり、(2)式の右辺の第2項は0(ゼロ)となるので、このステップS14では、定数βを読み出さないようにしてもよい。
【0081】
図15は、以上のようにして求めた抵抗指数kと、押出負荷との関係を示した図である。コークス15の乾留時間の不足といった押出負荷を変動させる他の要因が極力ない炭化室11を選んで、炉壁3次元プロフィールデータ701を導出し、その炉壁3次元プロフィールデータ701を用いて前述したようにして抵抗指数kを算出する。一方、その炭化室11から実際にコークス15を取り出した際に生じた押出負荷を、押出ラム20のモータ軸に取り付けたトルク計の計測値に基づいて求める。具体的には、トルク計測値と押出ラム駆動機構の減速比から押出負荷(力)を計算する。ここでは、コークス15を押し出す過程で押出負荷が最大値となるところを単に押出負荷最大値と言う。そして、このようにして得られた抵抗指数kと押出負荷とに対応する位置をプロットする。以上のような処理を多数の炭化室11に対して行った結果、図15に示すように多数のプロットが得られる。
【0082】
前述したように、押出負荷を決定する要因には石炭の配合や乾留時間など様々なものがあり、従来は、炉壁14の凹凸の状態が押出負荷にどの程度影響を与えているのかを他の要因と分離して評価することができなかった。しかしながら、図15に示すように、抵抗指数kと押出負荷(押出力)とには、明瞭な相関が得られることが分かる。つまり、炭化室11を診断するに際し、抵抗指数kを導出すれば、押出負荷に影響を与える炉壁14の状態を定量的に評価して管理することができる。
【0083】
図16は、重み係数γを0(ゼロ)とした場合の抵抗指数kと、押出負荷との関係を示した図である。図16に示すように、重み係数γを考慮しなくても、抵抗指数kと押出負荷とに相関が見られる。ただし、図15と図16とを比較しても分かるように、重み係数γを考慮した方が、抵抗指数kと押出負荷とに、より明瞭な相関が得られる。したがって、重み係数γを考慮して抵抗指数kを求めるのが好ましいことが分かる。
【0084】
従来から、炭化室11の炉壁14の状態と押出負荷との関係が調べられてきたが、その方法としては、炉壁14に発生している凹凸の面積を炉壁14の状態を表す指標とするといった単純なものであった。例えば、図17は、炭化室11の炉壁14に生じている陥没もしくは張り出しの凹凸量が20mm以上の領域が、炉壁14全体に占める割合と、押出負荷との関係を示した図である。図17の横軸の凹凸面積割合合計とは、陥没もしくは張り出しの凹凸量が20mm以上ある領域の面積の合計値を、炭化室11の炉壁14全体の面積で割った値に、100を乗じた値を面積割合としている。図17に示すように、面積割合と押出負荷との相関は、図15及び図16に示した抵抗指数kと押出負荷との相関よりも明らかに劣る。本願発明者らは、炉壁凹凸がコークス移動時の抵抗となる物理的現象を鋭意検討し、抵抗量すなわち押出負荷はコークスが当る凹凸部の上り勾配の形状や位置に依存するとしたモデルに基づき抵抗指数という指標を定義することを考案した。この結果、今回初めて炭化室11の炉壁14の状態と、押出負荷との間に明瞭な相関が得られるようになった。
【0085】
以上のように本実施形態では、炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14L全体に亘る凹凸量を示す炉壁3次元プロフィールデータ701を、壁面観察装置200で得られた画像信号を用いて生成する。そして、炉壁14に登り勾配があることによって、押し出されるコークス15が受ける抵抗を指標化した抵抗指数kを、炉壁3次元プロフィールデータ701を用いて求めるようにした。そして、この抵抗指数kと押出負荷とに相関があることが確認できた。
【0086】
したがって、押出負荷に影響を与える炉壁14の状態を定量的に評価することができ、鉄鋼製造プロセスの操業において最も重要なものの1つであるコークス15の押出性という観点から、炭化室11の炉壁14の凹凸状況を評価・管理することができる。そして、炭化室11に装入する石炭の量を減らして押出負荷を下げたり、置時間を長くして押出負荷を下げたりする等の操業アクションの必要性を、抵抗指数kに基づいて定量的に判断することができる。例えば、抵抗係数kが閾値を超えた場合には、抵抗係数kの値に応じて、炭化室11に装入する石炭の量を減らすようにすることができる。
凹凸が顕著な炉壁については、凹部を溶射により穴埋めしたり凸部のレンガを削ったりする等して平滑面を回復する補修を行うこともある。しかしながら、炉壁の補修作業は多大な時間と労力を要し、コークス15の減産も余儀なくされる。このため、補修の必要性を客観的に判断する指標として、本実施形態で説明した抵抗指数を使えば有効である。
以上の結果、炭化室11におけるコークス15の押し詰まりが発生することを防止することができることに加えて、炭化室11に装入する石炭の量を減らし過ぎたり、置時間を長くし過ぎたりすることを防止することができ、コークス15の生産性が低下することも防止することができる。
【0087】
また、本実施形態では、コークス15の押出方向から見た炉壁14の登り勾配に、コークス15が当る(引っかかる)ことにより生じる抵抗を、炉壁14の各領域について指標化した局所抵抗指数ki,jを導出するに際し、コークス15の押出元側に隣接する領域の局所抵抗指数ki-1,jを考慮するようにした。したがって、例えば、登り勾配の領域と下り勾配の領域とが交互に存在する場合と、登り勾配の領域が連続する場合とで、抵抗指数ki,jを異ならせることができる。よって、実際の凹凸の状態を、抵抗指数kに反映させることが可能になり、抵抗指数kの精度をより向上させることができる。
【0088】
更に、本実施形態では、局所抵抗指数ki,jの導出対象となる位置に応じて重み付けを行って局所抵抗指数ki,jを導出するようにした。具体的には、コークス15の押出元から遠ざかる位置にある領域の局所抵抗指数ki,j程、局所抵抗指数ki,jが大きくなるように、重み係数εを用いて局所抵抗指数ki,jに重み付けを行った。また、高さが低い位置にある領域の局所抵抗指数ki,j程、局所抵抗指数ki,jが大きくなるように、重み係数γを用いて局所抵抗指数ki,jに重み付けを行った。したがって、コークス15が押出ラム20から受ける力を、抵抗指数kに反映させることが可能になり、抵抗指数kの精度をより向上させることができる。
【0089】
また、本実施形態では、炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14L全体に亘る凹凸量を、互いに向かい合う領域同士で加算し、加算した凹凸量(z(1,1)〜z(p,q))を炉壁3次元プロフィールデータ701とした。したがって、抵抗係数kを導出する際の計算負荷を低減させることができる。
【0090】
また、前述した特許文献1では、炭化室のある高さにおいて、炭化室の奥行方向の炉壁間の距離を測定しているだけであるので、測定している高さと別の高さにある凹凸を把握することができない。したがって、特許文献1に記載の技術では、炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14Lの状態を正確に把握することができない。これに対して、本実施形態では、炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14L全体に亘る凹凸量を、壁面観察装置200で撮影された画像信号から求めるようにしているので、炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14Lの状態を正確に反映させて、抵抗指数kを導出することができる。
【0091】
尚、本実施形態では、(1)式、(2)式を用いて、抵抗指数kを求めるようにしたが、必ずしも(1)式、(2)式を用いて、抵抗指数kを求めなくてもよい。すなわち、炉壁14に登り勾配があることによって、押し出されるコークス15が受ける抵抗を指標化した指標値であれば、必ずしも(1)式、(2)式を用いて、抵抗指数kを求めなくてもよい。
【0092】
また、前述したように炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14L全体に亘る凹凸量を、互いに向かい合う領域同士で加算し、加算した凹凸量(z(1,1)〜z(p,q))を炉壁3次元プロフィールデータ701とすれば、計算負荷を軽減することができ好ましい。しかしながら、炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14Lの夫々について炉壁3次元プロフィールデータを算出し、それら2つの炉壁3次元プロフィールデータを用いて、局所抵抗指数ki,j、抵抗指数kを求めるようにしてもよい。
【0093】
また、本実施形態のように、局所抵抗指数ki,jの導出対象となる位置に応じて重み付けを行って局所抵抗指数ki,jを導出すれば、抵抗指数kをより精度良く求めることができ好ましい。しかしながら、局所抵抗指数ki,jの導出対象となる位置に応じて重み付けを行わずに、局所抵抗指数ki,jを導出してもよい。例えば、重み係数ε、γの少なくとも何れか一方を0(ゼロ)にして、局所抵抗指数ki,jを導出してもよい。
また、重み係数ε、γは、必ずしも直線的に変化しなくてもよい。例えば、重み係数ε、γが指数関数的に変化するようにしてもよい。
【0094】
また、本実施形態のように、炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14L全体に亘る凹凸量を、壁面観察装置200で撮影された画像信号から求めるようにすれば、炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14Lをより正確に評価することができるので好ましい。しかしながら、必ずしも、炭化室11の右側及び左側の炉壁14R、14L全体に亘る凹凸量を、壁面観察装置200で撮影された画像信号から求める必要はない。
【0095】
また、壁面観察装置200が行う画像処理の一部又は全部を、コークス炉の壁面評価装置300で行うようにしてもよい。
また、本実施形態では、閾値δが0(ゼロ)よりも大きい値を有するようにしたが、閾値δを0(ゼロ)にしてもよい。
また、本実施形態では、炭化室11の奥行方向における画像信号を得る間隔を、炭化室11の奥行方向における長さが最小値であるコークス塊15Cの表面性状に基づいて決定するようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、炭化室11の奥行方向における長さが、全コークス塊の平均値(又は代表値)であるコークス塊の表面性状に基づいて、炭化室11の奥行方向における画像信号を得る間隔を決定するようにしてもよい。
【0096】
以上説明した本発明の実施形態のうち、CPUが実行する部分は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。上記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施形態を示し、コークス炉の構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、壁面観察装置の外観構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示し、垂直柱の内部の様子の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、垂直柱とミラー管の配置関係の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態を示し、レーザスポットの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態を示し、コークス炉の壁面評価装置の機能構成の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態を示し、炉壁3次元プロフィールデータの一例を説明する図である。
【図8】本発明の実施形態を示し、レーザスポットの追跡結果の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態を示し、炭化室の壁面の凹凸の様子の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態を示し、重み係数を説明する図である。
【図11】本発明の実施形態を示し、コークス炉の壁面評価装置により導出される炉壁3次元プロフィールデータと、その炉壁3次元プロフィールデータに基づいてコークス炉の壁面評価装置により導出される局所抵抗指数の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施形態を示し、炉壁3次元プロフィールデータで示される凹凸量を、等高線を用いて画像化した図である。
【図13】本発明の実施形態を示し、コークスが、炭化室の右側の炉壁に生じている凹凸の影響を受けて押し出されることを説明する図である。
【図14】本発明の実施形態を示し、コークス炉の壁面評価装置の処理動作の一例を説明するフローチャートである。
【図15】本発明の実施形態を示し、抵抗指数と、押出負荷との関係を示した図である。
【図16】本発明の実施形態を示し、重み係数γを0(ゼロ)とした場合の抵抗指数と、押出負荷との関係を示した図である。
【図17】本発明の実施形態を示し、炭化室の炉壁に生じている陥没もしくは張出しの凹凸量が20mm以上の領域が、炉壁全体に占める割合と、押出負荷との関係を示した図である。
【符号の説明】
【0098】
11 炭化室
14 炉壁
15 コークス
16 燃焼室
20 押出ラム
100 コークス炉
200 壁面観察装置
300 コークス炉の壁面評価装置
400 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炭化室の側壁面の状態を評価するコークス炉の壁面評価装置であって、
前記炭化室の側壁面の画像信号に基づいて、前記炭化室の側壁面に生じている凹凸に関わる凹凸情報を導出する凹凸情報導出手段と、
前記凹凸情報導出手段により導出された凹凸情報に基づいて、前記炭化室の側壁面における、コークスの押出方向に対する勾配に関わる勾配情報を導出する勾配情報導出手段と、
前記勾配情報導出手段により導出された勾配情報を用いて、コークスが押出時に受ける抵抗を指標化した抵抗指標を導出する指標化手段とを有することを特徴とするコークス炉の壁面評価装置。
【請求項2】
前記凹凸情報導出手段は、前記凹凸に関わる凹凸情報を、前記炭化室の側壁面に対して予め設定された所定の距離間隔の複数の領域毎に導出し、
前記勾配情報導出手段は、前記勾配情報を、前記複数の領域毎に導出し、
前記指標化手段は、前記炭化室の側壁面における、前記コークスの押出方向に対する登り勾配から、コークスが押出時に受ける前記複数の領域毎の局所的な抵抗を指標化した局所抵抗指標を導出し、導出した局所抵抗指標を集計して、前記炭化室の側壁面全体における前記抵抗指標を導出することを特徴とする請求項1に記載のコークス炉の壁面評価装置。
【請求項3】
前記凹凸情報導出手段は、前記複数の領域のうち、前記炭化室の一方の側壁面と他方の側壁面との互いに対向する領域に生じている凹凸の量を合算して凹凸情報を導出し、
前記勾配情報導出手段は、前記凹凸情報導出手段により合算された凹凸情報を用いて、前記勾配情報を導出することを特徴とする請求項2に記載のコークス炉の壁面評価装置。
【請求項4】
前記勾配情報は、前記炭化室の側壁面に生じている、コークスの押出方向で互いに隣接する前記領域間の凹凸の段差に関する情報を含み、
前記指標化手段は、前記隣接する領域の凹凸の段差を累乗した値を用いて、前記局所指標化対象領域における局所抵抗指標を導出することを特徴とする請求項2又は3に記載のコークス炉の壁面評価装置。
【請求項5】
前記勾配情報は、前記炭化室の側壁面に生じている、コークスの押出方向で互いに隣接する前記領域間の凹凸の段差に関する情報を含み、
前記指標化手段は、前記隣接する領域の局所抵抗指標を定数倍した値を用いて、前記局所指標化対象領域における前記局所抵抗指標を導出することを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載のコークス炉の壁面評価装置。
【請求項6】
前記指標化手段は、前記複数の領域のうち、前記コークスの押出方向に対する登り勾配が閾値以下の領域については、前記コークスが押出時に受ける抵抗がないものとして、前記局所抵抗指標を導出することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のコークス炉の壁面評価装置。
【請求項7】
前記指標化手段は、前記領域の前記炭化室の側壁面の高さ方向の位置に値が依存する第1の重み係数を用いて、前記局所抵抗指標を導出することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のコークス炉の壁面評価装置。
【請求項8】
前記指標化手段は、前記領域の前記炭化室の奥行方向の位置に値が依存する第2の重み係数を用いて、前記局所抵抗指標を導出することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のコークス炉の壁面評価装置。
【請求項9】
コークス炉の炭化室の側壁面の状態を評価するコークス炉の壁面評価方法であって、
前記炭化室の側壁面の画像信号に基づいて、前記炭化室の側壁面に生じている凹凸に関わる凹凸情報を導出する凹凸情報導出ステップと、
前記凹凸情報導出ステップにより導出された凹凸情報に基づいて、前記炭化室の側壁面における、コークスの押出方向に対する勾配に関わる勾配情報を導出する勾配情報導出ステップと、
前記勾配情報導出ステップにより導出された勾配情報を用いて、コークスが押出時に受ける抵抗を指標化した抵抗指標を導出する指標化ステップとを有することを特徴とするコークス炉の壁面評価方法。
【請求項10】
前記凹凸情報導出ステップは、前記凹凸に関わる凹凸情報を、前記炭化室の側壁面に対して予め設定された所定の距離間隔の複数の領域毎に導出し、
前記勾配情報導出ステップは、前記勾配情報を、前記複数の領域毎に導出し、
前記指標化ステップは、前記炭化室の側壁面における、前記コークスの押出方向に対する登り勾配から、コークスが押出時に受ける前記複数の領域毎の局所的な抵抗を、指標化した局所抵抗指標を導出し、導出した局所抵抗指標を集計して、前記炭化室の側壁面全体における前記抵抗指標を導出することを特徴とする請求項9に記載のコークス炉の壁面評価方法。
【請求項11】
前記凹凸情報導出ステップは、前記複数の領域のうち、前記炭化室の一方の側壁面と他方の側壁面との互いに対向する領域に生じている凹凸の量を合算して凹凸情報を導出し、
前記勾配情報導出ステップは、前記凹凸情報導出ステップにより合算された凹凸情報を用いて、前記勾配情報を導出することを特徴とする請求項10に記載のコークス炉の壁面評価方法。
【請求項12】
前記勾配情報は、前記炭化室の側壁面に生じている、コークスの押出方向で互いに隣接する前記領域間の凹凸の段差に関する情報を含み、
前記指標化ステップは、前記隣接する領域の凹凸の段差を累乗した値を用いて、前記局所指標化対象領域における前記局所抵抗指標を導出することを特徴とする請求項10又は11に記載のコークス炉の壁面評価方法。
【請求項13】
前記勾配情報は、前記炭化室の側壁面に生じている、コークスの押出方向で互いに隣接する前記領域間の凹凸の段差の情報であり、
前記指標化ステップは、前記隣接する領域の局所抵抗指標を定数倍した値を用いて、前記局所指標化対象領域における局所抵抗指標を導出することを特徴とする請求項10〜12の何れか1項に記載のコークス炉の壁面評価方法。
【請求項14】
前記指標化ステップは、前記複数の領域のうち、前記コークスの押出方向に対する登り勾配が閾値以下の領域については、前記コークスが押出時に受ける抵抗がないものとして、前記局所抵抗指標を導出することを特徴とする請求項10〜13の何れか1項に記載のコークス炉の壁面評価方法。
【請求項15】
前記指標化ステップは、前記領域の前記炭化室の側壁面の高さ方向の位置に値が依存する第1の重み係数を更に用いて、前記局所抵抗指標を導出することを特徴とする請求項10〜14の何れか1項に記載のコークス炉の壁面評価方法。
【請求項16】
前記指標化ステップは、前記領域の前記炭化室の奥行方向の位置に値が依存する第2の重み係数を更に用いて、前記局所抵抗指標を導出することを特徴とする請求項10〜15の何れか1項に記載のコークス炉の壁面評価方法。
【請求項17】
コークス炉の炭化室の側壁面の状態を評価するための処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記炭化室の側壁面の画像信号に基づいて、前記炭化室の側壁面に生じている凹凸に関わる凹凸情報を導出する凹凸情報導出ステップと、
前記凹凸情報導出ステップにより導出された凹凸情報に基づいて、前記炭化室の側壁面における、コークスの押出方向に対する勾配に関わる勾配情報を導出する勾配情報導出ステップと、
前記勾配情報導出ステップにより導出された勾配情報を用いて、コークスが押出時に受ける抵抗を指標化した抵抗指標を導出する指標化ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−201993(P2008−201993A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42460(P2007−42460)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】