説明

シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法

【課題】エピタキシャル成長の際の裏面クモリ及びピンハローを抑制して、高品質なシリコンエピタキシャルウェーハを製造することができる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】チャンバー内に配設されたサセプタのウェーハ載置面上にシリコン単結晶基板を載置して、該シリコン単結晶基板上にエピタキシャル成長させることによりシリコンエピタキシャルウェーハを製造する方法であって、前記シリコン単結晶基板を載置する前に、前記チャンバー内にシリコン原料ガスを流入させながら、50秒を超えて300秒以下の時間で、前記サセプタのウェーハ載置面上にポリシリコン膜を被覆し、その後前記サセプタのウェーハ載置面上に前記シリコン単結晶基板を載置してエピタキシャル成長させるシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶基板上にエピタキシャル成長させるシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶基板上にエピタキシャル膜を成長させる際、加熱方法やサセプタの形状が異なる各種構造の気相成長装置が使用されている。近年、このような気相成長装置としては、シリコン単結晶基板を1枚単位で処理する枚葉式の気相成長装置が主流になってきている。枚葉式の気相成長装置では、密閉可能な反応チャンバー内にサセプタを配置し、このサセプタ上でシリコン単結晶基板を所定温度に加熱しながらシリコン単結晶基板上に原料ガスを供給することによりエピタキシャル膜の形成が行われる(特許文献1参照)。
【0003】
典型的なサセプタとしては、略円板状でチャンバー内に水平に配置され、座ぐり部(シリコン単結晶基板の載置領域)に3つ以上の貫通孔が設けられ、各貫通孔内にウェーハリフトピンが挿入されている。外部の搬送装置からチャンバー内にシリコン単結晶基板が搬入されると、ウェーハリフトピンが貫通孔より上方に上昇してシリコン単結晶基板を受け取り、続いて下降してシリコン単結晶基板をサセプタ上に載置する。そしてエピタキシャル成長工程が終了すると、ウェーハリフトピンが再び貫通孔より上方に上昇してシリコン単結晶基板を持ち上げる。持ち上げられたシリコン単結晶基板は、ロボットアーム等により搬送装置に移され反応チャンバ外へ搬出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−40574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような枚葉式気相成長装置でのエピタキシャル成長について、本発明者が検討した結果、以下の課題があることが判明した。
(1)エピタキシャル成長後のウェーハの裏面を観察すると、全体または局所的にクモリ(エッチング斑、裏面クモリともいう)が観察される。
(2)上記したように、サセプタの座ぐり内には、シリコン単結晶基板をサセプタ上に搬送・載置する際に必要となるウェーハリフトピンの挿入のための貫通孔が設けられているが、貫通孔内のウェーハリフトピン先端部と対向するシリコン単結晶基板の裏面には、「ピンハロー」と呼ばれるドーナツ状のクモリが発生する。
【0006】
このような裏面クモリやピンハローが目視でも確認できるようになると、外観不良となり製品ウェーハとしては好ましくない。さらに、近年、デバイス工程ではデザインルールの微細化に伴い、エピタキシャルウェーハに対し、より高度な平坦度が要求されている。そのため、これまでデバイス特性に影響を及ぼさなかった裏面クモリやピンハローによる面荒れ(凹凸)が問題視されてきている。
従って、高品質なエピタキシャルウェーハを得るためには、裏面クモリ及びピンハローを抑制することが求められる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、エピタキシャル成長の際の裏面クモリ及びピンハローを抑制して、高品質なシリコンエピタキシャルウェーハを製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、チャンバー内に配設されたサセプタのウェーハ載置面上にシリコン単結晶基板を載置して、該シリコン単結晶基板上にエピタキシャル成長させることによりシリコンエピタキシャルウェーハを製造する方法であって、前記シリコン単結晶基板を載置する前に、前記チャンバー内にシリコン原料ガスを流入させながら、50秒を超えて300秒以下の時間で、前記サセプタのウェーハ載置面上にポリシリコン膜を被覆し、その後前記サセプタのウェーハ載置面上に前記シリコン単結晶基板を載置してエピタキシャル成長させることを特徴とするシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【0009】
このように、ウェーハ載置面上にポリシリコン膜を50秒を超えて300秒以下の時間で被覆することで、後工程のエピタキシャル成長の際に基板裏面への不均一なエッチングや異常成膜を抑制することができる。従って、裏面クモリ及びピンハローを低減して、外観が良好で、かつ高平坦度である高品質なシリコンエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0010】
このとき、前記ポリシリコン膜を被覆する時間を、100秒以上300秒以下とすることが好ましい。
このような時間で被覆すれば、裏面クモリ及びピンハローを十分に抑制して、より高品質なシリコンエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0011】
このとき、前記ポリシリコン膜を被覆する際に流入させるシリコン原料ガスを、トリクロロシランとすることが好ましい。
このようなシリコン原料ガスを用いれば、サセプタのウェーハ載置面上にポリシリコン膜を効率的に被覆することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、エピタキシャル成長の際の裏面クモリ及びピンハローを抑制して、外観が良好で、かつ高平坦度である高品質なシリコンエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の製造方法に用いることができる気相成長装置の一例を示す概略図である。
【図2】実施例、比較例において測定したサセプタコート時間と裏面クモリ量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者は、エピタキシャル成長の際にウェーハ裏面のクモリ及びピンハローが生じるという課題を見出し、この課題を解決するために鋭意検討を重ねた。
その結果、裏面クモリおよびピンハローは、エピタキシャル成長中にサセプタ上の残留物質が、ウェーハ裏面の自然酸化膜を不均一にエッチングすることや、成膜ガス(原料ガス)の侵入による異常成膜によって、他領域と比較して粗さが不均一になったことに起因することを見出した。そして、このような知見から、上記課題を解決することができる以下のような本発明の製造方法を完成するに至った。
【0015】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の製造方法に用いることができる枚葉式の気相成長装置を示す概略図である。
【0016】
図1に示す気相成長装置10のチャンバー(反応容器)12は、チャンバーベース11と、チャンバーベース11を上下から挟む透明石英部材13、14とから形成される。このチャンバー12内には、シリコン単結晶基板Wを上面のウェーハ載置面19で支持するサセプタ17が配設されている。このサセプタ17には貫通孔16が設けられ、この貫通孔16を通って上下動することでシリコン単結晶基板Wを支持するウェーハリフトピン15が配置されている。
【0017】
このサセプタ17はウェーハ回転機構18に接続されており、エピタキシャル成長中はサセプタ17を回転させることで、載置されたシリコン単結晶基板Wを回転させ、シリコンエピタキシャル層をシリコン単結晶基板W上に膜厚均一に成長させる。
【0018】
チャンバー12には、チャンバー12内に原料ガス及びキャリアガス(例えば、水素)を含む気相成長ガスを導入して、サセプタ17上に載置されたシリコン単結晶基板Wの表面上に原料ガスとキャリアガスを供給するガス導入管20が接続されている。
また、チャンバー12のガス導入管20が接続された側の反対側には、チャンバー12内からガスを排出するガス排出管21が接続されている。
【0019】
上記した気相成長装置を用いて、本発明では、シリコン単結晶基板をサセプタに載置する前に、例えば1000〜1180℃に加熱されたチャンバー内にシリコン原料ガスを流入させながら、50秒を超えて300秒以下の時間、好ましくは100秒以上300秒以下の時間で、サセプタのウェーハ載置面上にポリシリコン膜を被覆する。
このように予めサセプタのウェーハ載置面上にポリシリコン膜を被覆することで、エピタキシャル成長の際、基板の裏面に、サセプタ上の残留物質による不均一なエッチングや、原料ガスの侵入による異常成膜が生じることを効果的に抑制できる。これにより、裏面クモリやピンハローを十分に低減して、外観が良好で、裏面の平坦度が高いシリコンエピタキシャルウェーハを製造できる。被覆時間が50秒以下であると、裏面クモリやピンハローの抑制効果はほとんどみられず、300秒を超えると生産性が悪くなる。
【0020】
このポリシリコン膜の被覆の際に流入させるシリコン原料ガスとしては、特に限定されず、エピタキシャル成長に用いる原料ガスを流入させることができ、例えば、トリクロロシランを用いればウェーハ載置面上に効率的にポリシリコンを形成させて被覆することができる。
【0021】
上記のようにポリシリコン膜を被覆した後、投入温度(例えば650℃)に調整したチャンバー内のサセプタのウェーハ載置面上にシリコン単結晶基板を載置して、水素熱処理温度(例えば1050〜1200℃)まで加熱する。そして、シリコン単結晶基板を所望の成長温度(例えば950〜1180℃)にして、シリコン単結晶基板の表面上に、ガス導入管を介して原料ガス(例えばトリクロロシラン:SiHCl)及びキャリアガス(例えば水素)をそれぞれ略水平に供給することによって、シリコン単結晶基板の表面上にシリコンエピタキシャル層をエピタキシャル成長させてシリコンエピタキシャルウェーハを製造する。
【0022】
なお、上記した本発明によるサセプタのウェーハ載置面上へのポリシリコン膜の被覆は、エピタキシャルウェーハ一枚毎(一回のエピタキシャル成長毎)に実施してもよいし、数枚毎(複数回のエピタキシャル成長毎)に実施してもよい。
【0023】
以上のような本発明によれば、裏面クモリ及びピンハローによる面荒れを抑制することができ、外観が良好であり、かつ高い平坦度を有する高品質なシリコンエピタキシャルウェーハを提供することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例、比較例)
P型の直径300mmのシリコン単結晶ウェーハを使用し、その上に抵抗率10Ωcm、膜厚5μmのエピタキシャル層を成長させた。
【0025】
エピタキシャル成長工程の前に、1100℃で、コート時間を40〜300秒としてトリクロロシランを導入することで、サセプタのウェーハ載置面上にポリシリコン膜を被覆した。その後エピタキシャル成長工程を行い、それぞれエピタキシャル成長後のシリコンエピタキシャルウェーハの裏面クモリ量(Haze DWN Peak)をSP−2(パーティクルカウンター:KLAテンコール社製)にて測定した。図2にその結果を示す。
【0026】
図2より明らかなように、サセプタコート時間40秒(比較例)では裏面クモリ量はあまり低減されていないことが確認できた。一方、サセプタコート時間が50秒を超える場合は裏面クモリ量は抑制され、特に100秒以上であれば十分に抑制されている。
以上の結果より、サセプタ表面へのコート時間を50秒を超える時間とすることで裏面クモリを低減できることが確認できた。また、300秒もコートすれば十分であることが分かる。
【0027】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0028】
10…気相成長装置、 11…チャンバーベース、 12…チャンバー、
13、14…透明石英部材、 15…ウェーハリフトピン、16…貫通孔、
17…サセプタ、 18…ウェーハ回転機構、 19…ウェーハ載置面、
20…ガス導入管、 21…ガス排出管、 W…シリコン単結晶基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内に配設されたサセプタのウェーハ載置面上にシリコン単結晶基板を載置して、該シリコン単結晶基板上にエピタキシャル成長させることによりシリコンエピタキシャルウェーハを製造する方法であって、
前記シリコン単結晶基板を載置する前に、前記チャンバー内にシリコン原料ガスを流入させながら、50秒を超えて300秒以下の時間で、前記サセプタのウェーハ載置面上にポリシリコン膜を被覆し、その後前記サセプタのウェーハ載置面上に前記シリコン単結晶基板を載置してエピタキシャル成長させることを特徴とするシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記ポリシリコン膜を被覆する時間を、100秒以上300秒以下とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記ポリシリコン膜を被覆する際に流入させるシリコン原料ガスを、トリクロロシランとすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−105924(P2013−105924A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249257(P2011−249257)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】