シリコン含有膜の選択的堆積
【課題】混合基板の選択された領域上に、Si含有膜を選択的に堆積するためのトリシランおよびハロゲン含有エッチャントソース(塩素など)を使用する化学気相成長方法を提供すること。
【解決手段】ドーパントソースは、ドープしたSi含有膜を選択的に堆積させるために、トリシランおよびエッチャントソースと混合することもできる。この選択的堆積方法は、半導体製造などの様々な用途に有用である。
【解決手段】ドーパントソースは、ドープしたSi含有膜を選択的に堆積させるために、トリシランおよびエッチャントソースと混合することもできる。この選択的堆積方法は、半導体製造などの様々な用途に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本願は、2005年2月4日出願の米国特許仮出願第60/649,990号、2005年3月18日出願の米国特許仮出願第60/663,434号、および2005年4月4日出願の米国特許仮出願第60/668,420号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本願は、一般的に半導体処理におけるシリコン含有材料の堆積に関する。より詳細には、本願は、トリシランを使用するシリコン含有膜の選択的堆積に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の記載
半導体製造業において、表面に材料を堆積させるために様々な方法が用いられている。例えば、最も広範囲に使用されている方法の1つは化学気相成長(「CVD」)であり、ここでは蒸気に含まれる原子または分子が表面に堆積し蓄積されて膜を形成する。通常のシリコンソースおよび堆積方法を使用するシリコン含有(「Si含有」)材料の堆積は、幾つかの明確な段階において進行すると考えられる、Peter Van Zant著、「マイクロチップ加工(Microchip Fabrication)」第4版、McGraw Hill、New York、(2000年)、pp.364〜365を参照されたい。第1段階の核生成は非常に重要であり、これは基板表面の性質および品質によって大きく影響を受ける。核生成は、最初の僅かな原子または分子が表面上に堆積して核を形成したときに起こる。第2段階において、分離した核が小さなアイランドを形成し、これはより大きなアイランドへと成長する。第3段階において、成長したアイランドは、連続膜へと合体を始める。この時点で、膜は典型的に数百オングストロームの厚さを有し、「遷移(transition)」膜として知られている。これは一般的に、遷移膜が形成された後に成長を始めるより厚いバルク膜とは異なる化学的および物理的性質を有している。
【0004】
トリシランは、シリコンの理論上の前駆物質として長い間知られているが、これに対する研究はほとんど行われておらず、その利点もほとんど認識されていない。したがって、歴史的にトリシランの重要な商用源は開発されなかった。しかしながら、最近トリシランに関する様々な利点が発見された。例えば、2004年11月23日発行の、米国特許第6,821,825号は、トリシランから堆積した優れた膜均一性を開示している。2005年5月31日発行の米国特許第6,900,115号は、同様に半導体および絶縁体の混合表面のような、混合基板上に同時に堆積させる場合の、トリシランを使用することによる均一性および処理量の利点を開示している。
【0005】
上記特許の両方において開示されたように、絶縁体(例えば、酸化ケイ素)および半導体(例えば、シリコン)の両方の表面上に均一な堆積を達成することはしばしば望ましい。一方、他の状況においては、フィールド絶縁酸化物(field isolation oxide)など、異なる材料のフィールドに露出した半導体ウィンドウ内で選択的に堆積させることが望ましい。例えば、ヘテロ接合バイポーラトランジスタは、エピタキシャル(単結晶)半導体膜を活性領域上にのみ堆積させる選択的堆積法を用いてしばしば加工される。他のトランジスタ設計は、高くなったソース/ドレイン構造から利益を得られ、この構造は浅い接合デバイスの性能を変更することなくソース/ドレインコンタクトプロセスによって消費することのできる追加のシリコンを供給する。ソース/ドレイン領域上の選択的エピタキシは、その後のパターン化およびエッチング段階の必要性を有利に減少する。
【0006】
一般的に言えば、選択性は、異種材料上に堆積している間の核生成の差異をうまく利用する。選択的堆積は、堆積される材料の同時エッチングおよび堆積であると一般的に説明できる。前駆物質は、一般的に核生成と成長がある表面上ではより迅速に行われ、別の表面ではよりゆっくりと行われる傾向を示すように選択される。例えば、シランは、一般的に酸化ケイ素とシリコンの両方上で核生成するが、酸化ケイ素上では、より長い核生成フェーズになる。核生成段階の初めには、酸化物上の不連続膜は、シリコン上の合体した連続膜に比較して高い露出表面積を有している。したがって、工程に加えられるエッチャントは、急速に核生成されたシリコン上の膜に比べて、酸化物上の核生成が不十分な膜に対してより大きな影響を有している。それ故、工程の相対的選択性は、堆積速度(例えば、前駆物質の流量、温度、圧力)およびエッチング速度(例えば、エッチャント流量、温度、圧力)に影響する要因を調節することによって調整することができる。各変量を変更することは、一般的に、エッチング速度および堆積速度に異なる影響を有している。典型的に、選択的堆積方法は、フィールド領域においては堆積なしを達成しながら、関係するウィンドウ上で実施可能な最大の堆積速度を得るように調整される。既知の選択的シリコン堆積方法は、反応物質シランおよび水素キャリアガスを伴う塩酸を含んでいる。
【0007】
選択的堆積方法は当該技術において知られているが、より迅速でより電力消費の少ない回路を追求する継続スケーリングの要求が、集積回路加工において高まっている。したがって、改良された均一性、純度、堆積速度および再現性を有する選択的堆積方法が望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
現在、より迅速で、堆積層のより高い品質をもたらす堆積方法が見出されている。幾つかの説明された方法は、シリコンソースとしてトリシラン(H3SiSiH2SiH3)を使用し、Si含有膜の堆積方法に対する選択性を提供するための塩素のソースとして、塩素ガス(Cl2)などのハロゲン含有エッチャントガスを使用する。有利には、この方法は、ひずみを堆積層または隣接構造体に取り込むための炭素またはゲルマニウムソース、および/またはドーパントソースを含む追加のプロセスガスと良好に働く。例えば、選択的に堆積した結晶性シリコンは、結晶シリコンの堆積を塩素、トリシラン(シリコンソースとして)、および添加プロセスガス(炭素ソース、ゲルマニウムソースおよび/または電気的に活性なドーパント前駆物質)を使用して行なうことによりドープし、相対的に高い水準の他の元素(炭素、ゲルマニウムならびに砒素およびリンなどの様々な電気的に活性なドーパント)を含むこともできる。電気的に活性なドーパント前駆物質は、所望の導電性をin situで提供し、その後のドーピング段階を取り除くことが見出されただけでなく、堆積層の表面品質を独立に改良することも見出された。トリシラン/塩素堆積手段と併せた非水素キャリアガスの使用に関して、特別の利点が見出された。
【0009】
ある実施形態は、
第1表面形態を有する第1表面と第1表面形態とは異なる第2表面形態を有する第2表面とを含む基板を供給すること、
トリシランと塩素ガスを混合することによって供給ガスを形成すること、
この供給ガスを、化学気相成長条件下で、基板に導入すること、
この導入によって、Si含有層を、第2表面に堆積させることなく第1表面に選択的に堆積させること
を含む、基板上のシリコン含有層の選択的堆積方法を提供する。
【0010】
別の実施形態は、
基板をパターン化して露出した半導体表面と絶縁領域を画定すること、および
トリシランと塩素ガスを供給することによってSi含有エピタキシャル膜を、露出した半導体表面上に選択的に堆積させること
を含む、集積回路を形成する方法を提供する。
【0011】
別の実施形態は、
チャンバ内で堆積される基板を供給すること、
トリシラン、ハロゲン含有エッチャントガスおよび非水素キャリアガスを混合して供給ガスを形成すること、および
この供給ガスを基板に導入することによってシリコン含有層を基板上に堆積させること
を含む、シリコン含有層を基板上に堆積させる方法を提供する。
【0012】
別の実施形態は、
トリシラン蒸気ソース、
塩素ガスソース、
キャリアガスソース、
トリシラン、塩素およびキャリアガスのソースを化学気相成長チャンバに接続するガス分布ネットワーク、および
シリコン含有層を、基板の他の部分に堆積させることなく、チャンバ内の基板部分に選択的に堆積させるのに適した条件下で、トリシランおよび塩素をガス分布ネットワークに送るように構成された制御システム
を含む、半導体膜を堆積させるための装置を提供する。
【0013】
これらのおよび他の実施形態は、以下においてより詳細に説明する。
【0014】
本発明のこれらのおよび他の局面は、本発明を例示することを意味し本発明を制限するものではない、以下の説明および添付図面(原寸に比例していない)から容易に明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書で使用される用語「シリコン含有材料(Si−containing material)」および類似の用語は、これらに限定されるものではないが、Si(結晶シリコンを含む)、SiC(例えば、炭素ドープ結晶Si)、SiGeおよびSiGeC(例えば、炭素ドープ結晶SiGe)を含む幅広い種類のシリコン含有材料を指す。本明細書で使用される場合、「炭素ドープSi」、「SiC」、「Si:C」、「SiGe」、「炭素ドープSiGe」、「SiGeC」および類似の用語は、様々な割合の表示された化学元素および、場合によっては少量の他の元素を含む材料を指す。例えば、「SiGe」は、シリコン、ゲルマニウムおよび場合によっては、例えば、炭素のようなドーパントおよび電気的に活性なドーパントなどの他の元素を含む材料である。それ故炭素ドープSiは、SiCと称することもでき、その逆も同じである。「SiC」、「SiGe」および「SiGeC」などの用語は、それ自体化学量論的化学式ではなく、それ故表示された元素を特定の割合で含有する材料に限定されるものではない。Si含有膜中の、(炭素、ゲルマニウムまたは電気的に活性なドーパントなどの)ドーパントの百分率は、本明細書において、特に指定のない限り、全膜に対する原子百分率で表示される。
【0016】
本明細書で使用される、用語「エピタキシャル(epitaxial)」、「エピタキシャルに(epitaxially)」、「ヘテロエピタキシャル(heteroepitaxial)」、「ヘテロエピタキシャルに(heteroepitaxially)」および類似の用語は、堆積した層が基板の格子定数を反映するかこれに従う様な方法での結晶基板上の結晶Si含有材料の堆積を指す。堆積した層の組成が基板と異なる場合、エピタキシャル堆積は、ヘテロエピタキシャルであることもある。
【0017】
本明細書で使用される場合、「基板(Substrate)」という用語は、その上に堆積させることを希望するワークピースか、または堆積ガスに露出された表面を指す。例えば、基板は単結晶シリコンウエハでよく、または絶縁体上の半導体(SOI)基板でよく、またはこのようなウエハ上に堆積されたエピタキシャルSi、SiGeまたはIII〜V族材料でもよい。ワークピースは、ウエハに限定されるものではなく、ガラス、プラスチック、あるいは半導体処理に使用される任意のその他の基板も含まれる。良く知られているように、半導体処理は最も一般的に集積回路の加工に使用され、集積回路の加工は特に厳しい品質要求を伴っているが、このような処理はまた様々な他のフィールドに使用される。例えば、半導体処理技術は、多種多様な技術を使用するフラットパネルディスプレーの加工および微小電気機械システム(MEMS)の加工にしばしば使用される。
【0018】
「混合基板(Mixed substrate)」という用語は、当業者に知られている。特に混合基板について論じるために、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、「混合基板への堆積(Deposition Over Mixed Substrates)」と題する米国特許第6,900,115号(発行2005年5月31日)を参照されたい。米国特許第6,900,115号において論じられているように、混合基板は、2つ以上の異なる種類の表面を有する基板である。ある実施形態において、Si含有層が、単結晶半導体材料上に選択的に形成され、一方、隣接する誘電体上の形成は、最小限度であり、より好ましくは堆積を回避する。誘電材料の例には、二酸化ケイ素(例えば炭素ドープまたはフッ素ドープなどの低誘電定数形態を含む)、窒化シリコン、金属酸化物および金属ケイ酸塩が含まれる。混合基板の表面をお互いに異なったものにできる様々な方法がある。例えば、表面を銅もしくはシリコンなどの異なる元素から、または銅もしくはアルミニウムなどの異なる金属から、またはシリコンもしくは二酸化ケイ素などの異なるSi含有材料から作ることができる。表面の電気的性質も、お互いに異なるようにすることができる。
【0019】
材料が同じ元素から作製されても、表面の形態(結晶化度)が異なる場合、表面は異なり得る。本明細書で説明する方法は、Si含有膜を様々な基板に堆積させるのに有用であるが、混合表面形態を有する混合基板に関して特に有用である。このような混合基板は、第1表面形態を有する第1表面と、第2表面形態を有する第2表面を含んでいる。この文脈において、「表面形態」は、基材表面の結晶構造を指す。無定形および結晶は、異なる形態の例である。多結晶形態は、秩序正しい結晶の無秩序な配列よりなる結晶構造であり、それ故中間的秩序度を有している。多結晶材料中の原子は、お互いに秩序正しく配列しているが、結晶自体はお互いに関して長い距離での秩序に欠けている。単結晶形態は、高い長距離の秩序度を有している結晶構造である。エピタキシャル膜は、これらがその上で成長する、一般的に単結晶の基板に対して、同一の結晶構造および配向によって特徴付けられる。これら材料中の原子は、格子様構造に配列されており、これは(原子スケールで)相対的に長い距離存続する。非定型構造は、原子が明確な周期的配列に欠けているため、低い秩序度を有する非結晶構造である。他の形態には、微結晶と無定形および結晶性材料の混合物が含まれる。本明細書で使用する場合、「単結晶」または「エピタキシャル」は、通常トランジスタ加工に使用される、許容可能な数の欠陥を有することもできる大部分が大きな結晶構造を説明するのに使用される。当業者は、層の結晶化度は、一般的に無定形から多結晶へそして単結晶への連続体になることを認識するであろう。当業者は、低密度欠陥であっても、結晶構造が、単結晶またはエピタキシャルであると考えられる場合、容易に決定することができる。混合基板の具体例には、単結晶/多結晶、単結晶/無定形、エピタキシャル/多結晶、エピタキシャル/無定形、単結晶/誘電体、エピタキシャル/誘電体、伝導体/誘電体、および半導体/誘導体が含まれるが、これらに限定されるものではない。「混合基板」という用語には、2つ以上の異なる種類の表面を有する基板が含まれ、それ故当業者は、本明細書で説明するSi含有膜を2種類の表面を有する混合基板に堆積させる方法は、3種類以上の異なる種類の表面を有する混合基板にも適用できることを認識するであろう。
典型的な集積方法
図1は、図解した実施形態においてシリコンウエハを含む混合基板10を示す。上で述べたように、混合基板10は、ウエハまたはSOI基板上に形成されたエピタキシャル層を含むことができる。フィールドアイソレーション領域12は、通常のシャロートレンチアイソレーション(shallow trench isolation(STI))法によって形成され、STI素子のうちのウィンドウ中の単結晶アクティブ領域14を画定する。別の方法として、シリコンの局所酸化(LOCOS)および多くのLOCOSおよびSTIのバリエーションを含む、任意の適切な方法を使用して、フィールド絶縁材料を画定することができる。幾つかのアクティブ領域は、一般的に基板10を横断するSTIによって同時に画定され、STIはしばしばお互いからウェブ分離トランジスタアクティブ領域14を形成することが理解される。基板は、チャンネル形成に適切なレベルにおいてバックグラウンドドープすることが好ましい。
【0020】
図2は、ゲート電極16をアクティブ領域14上に形成した後の混合基板10を示す。絶縁スペーサおよびキャップ層に囲まれ、ゲート誘電体層18によって基礎をなす基板10から分離されている伝統的なシリコン電極として図解しているが、トランジスタゲートスタックは様々な形状のいずれにもすることができる。あるプロセスフローにおいて、例えば、スペーサを省略することができる。図に示す実施形態において、ゲート電極16の配置は、アクティブ領域14内のトランジスタゲート電極16の両側上のソースおよびドレイン領域20を画定する。ゲート電極16は、ゲート電極16の下で、ソースおよびドレイン領域20の間のチャンネル領域22を画定する。
【0021】
図3は、露出したシリコンを選択的にソースおよびドレイン領域20から除去するエッチングステップの結果を示す。垂直側壁画定を保証し、露出した酸化物および窒化物材料への損害を最小にするため、反応性イオンエッチング(RIE)を使用することが好ましい。陥凹(recess)の深さは、チャンネル上のひずみが堆積によって臨界厚さを超えることができるとはいえ、陥凹において堆積される層の臨界厚さ未満であることが好ましい。露出されるシリコンは、基本的にアクティブ領域14のソースおよびドレイン(S/D)領域20であるので、エッチングは、ソース/ドレイン陥凹と呼ばれる。あるアレンジメントにおいて、ソース/ドレイン領域上の薄い誘電体の除去の第1ステップを使用することもできることが理解される。
【0022】
図4は、本明細書において説明するトリシラン/塩素選択的堆積方法を使用して、結晶Si含有材料30を、陥凹したS/D領域20へ選択的に堆積した結果を示す。堆積の前に、露出した半導体表面を、例えばHF蒸気またはHF最終浸漬を用いて清浄し、そこへのエピタキシャルのために元の状態の表面を除去しておくことが好ましい。図解した実施形態において、トリシラン/塩素選択的堆積方法は、化学気相成長条件下で、混合基板10の表面に、供給ガスを導入することを含む。トリシランおよび塩素は混ざり合って、供給ガスを形成する。図1〜5の実施形態に関し、ゲルマニウムまたは炭素ソースも、以下により詳細に説明するように、チャンネル領域20上にひずみを作り出すために、Geドープまたは炭素ドープしたSi含有膜を堆積させるために、供給ガスに含まれていることが好ましい。ドーパント水素化物などのドーパント前駆物質が、供給ガスに含まれていることが好ましい。Si含有エピタキシャル層30は、S/D領域20において選択的に成長する。有利には、層30は、S/D領域20を充填してひずみをチャンネル領域22に作用するドープしたヘテロエピタキシャル膜(例えば、SiCまたはSiGe)である。図解した実施形態において、ヘテロエピタキシャル膜30は、チャンネル領域22の表面とほとんど同一表面上にある。図解するように、選択的堆積は、例えばフィールドアイソレーション領域12(一般的に酸化ケイ素の形態)を含む絶縁体およびゲート電極16上のスペーサキャップ(一般的に窒化ケイ素)などの無定形領域上の堆積を、最小限度にするかまたは堆積を回避する。
【0023】
図5は、延長ヘテロエピタキシャル膜32を有する、高くなったS/D領域20を形成するための選択的堆積の任意の延長を示す。チャンネル領域22の表面の下の延長膜32の部分は、チャンネル領域22に横応力を働かせるので、基板の表面上の部分は、天然シリコン格子定数からのそれほどのまたはいかなる格子の逸脱も含んでいる必要はない。したがって、いかなるゲルマニウムまたは炭素ソースガスも、場合によっては、チャンネル領域22の表面の上の選択的堆積の部分に関しては徐々に減少しあるいは停止することがあり得、トリシランおよび塩素の流れは継続する。電気的ドーパントソースガス、特にアルシン、ホスフィン、ジボランなどのドーパント水素化物は継続することが好ましい。
【0024】
図5の、高くなったS/D構造32は、基板10の表面上に追加のシリコン材料を備えると有利である。当該技術において知られているように、その後の処理を通して絶縁層が堆積され、これは絶縁膜を通してソースおよびドレイン領域20とコンタクトする。追加のシリコン材料は、ケイ化物のコンタクト形成を促進し、これはコンタクト抵抗(オームコンタクトの形成)を減少する。したがって、ニッケル、コバルトまたは他の金属をコンタクトホールの中に堆積させて、基礎をなすソース/ドレインのための浅い接合の電気的性質を妨害することなく、過剰のシリコンを消費することを可能にする。
【0025】
図6は別の実施形態を示し、ここにおいて図2の構造は、S/D陥凹ステップの介入なしで、トリシランおよび塩素を使用して選択的堆積を受ける。この場合、過剰シリコン34が接触ケイ素化によって浅い接合を破壊することなく消費されるならば、選択的堆積は、ソースおよびドレイン領域を上昇させることにのみ役立つ。堆積は、例えば電気的に活性なドーパントでドープしたシリコンなど、ドープシリコンを堆積させるため、必要に応じてドーパント前駆物質を含むことができる。しかしながら、全過剰シリコン構造体34が、接触ケイ素化によって消費されるならば、ドーパントは不要である。
【0026】
別のアレンジメント(示されていない)において、トリシランおよび塩素ガスを使用する選択的堆積が、シリコンコンタクトプラグを選択的に形成するのに使用されている。例えば、BPSGまたはTEOSなど、相対的に厚い絶縁層をパターン化し、コンタクトビアを開けて、単結晶半導体表面を露出させる。選択的堆積は、エピタキシャルプラグが、表面からコンタクトホールを通して成長するのに使用される。
【0027】
トリシラン/塩素方法の選択的性質は、その後のパターン化およびエッチング段階を取り除いて過剰の堆積をフィールド領域から除去するので有利である。不完全な選択性であっても、絶縁表面上の望ましくない堆積を除去するための時限の湿式エッチングの使用が可能であるので、高価なマスク段階を必要とするよりむしろ有利である。さらに、相対的に高い堆積速度において、優れた膜品質が得られ、処理能力が改良される。例えば、ある方法の実施形態を、トリシラン、ゲルマン、メチルシラン、B2H6及び塩素を使用して、例えばヘテロバイポーラトランジスタ(HBT)の基礎構造を形成するなど、ホウ素ドープSiGeCの選択的堆積に使用することもできる。ある実施形態において、本明細書で説明されているような、トリシラン、n−ドーパント前駆物質(アルシンまたはホスフィンなど)および塩素を使用する堆積方法を、例えばHBTのエピタキシャルエミッタを形成するためのn−ドープシリコン層の選択的堆積にも使用することもできる。他の選択的堆積方法の実施形態は、例えばトリシランおよび塩素を約550℃の堆積温度で用いて、高くなったソース/ドレイン(ESD)構造、DRAMおよび/またはSRAMのためのコンタクトプラグなどを形成するのに使用することもできる。幾つかの実施形態において、例えば炭素ソース、ゲルマニウムソースまたは電気的に活性なドーパントソースの実質的不在など、実質的にドーパント前駆物質の不在の下、トリシランおよび塩素を使用して真性シリコンが選択的に堆積される。トリシラン/塩素の選択的堆積方法の様々な堆積パラメータおよび操作上の詳細については以下に詳細に説明する。
トリシラン/塩素選択的堆積
ある実施形態は、シリコン含有層を基板上に選択的に堆積させる方法を提供する。この方法は、チャンバ内に配置される基板を供給し;ここにおいてこの基板は、第1表面形態を有する第1表面と、第1表面形態とは異なる第2表面形態を有する第2表面を含んでいることが好ましい。この方法は、トリシラン、塩素ガスおよび、必要に応じて、1つまたは複数のキャリアガスおよびドーパントガスを混合し、これによって供給ガスを形成し;この供給ガスを化学気相成長条件下で基板に導き;トリシランおよび塩素の導入によってまたは導入中に、Si含有膜を、第2表面への堆積を最小化しながら、第1表面上に選択的に堆積させることを含んでいることが好ましい。
【0028】
例えば、2004年11月23日に発行された、米国特許第6,821,825号において開示されているトリシランの使用によって得られる均一および高品質の膜に加えて、塩素ガスと組み合わせたトリシランを使用することによって、優れた選択性が得られることが見出された。事実、実験は一般的に99%またはそれより良好な選択性を示しており、100%(すなわち、酸化ケイ素および窒化ケイ素など、周囲の絶縁体上への堆積がゼロ)も可能である。したがって、好ましい実施形態において、トリシランおよび塩素の導入によってまたは導入中に、第2表面には実質的に堆積は行われない。
【0029】
さらにこの選択性は、追加のエッチャント種を加えることなく得られる。一般的にHClが、選択的シリコンベース堆積方法に用いられるが、ここにおいて無定形(一般的に絶縁体)表面への核生成の遅い堆積に対するエッチング効果が、露出した半導体表面へのエッチング効果より大きい。しかしながら、HClは、精製するのが難しい悪評があり、HClの一般的な市販ソースは、過剰の水分を堆積反応に持ち込む。このような水分は、堆積した膜の導電性を低下させ、エピタキシャル堆積に許容できない水準の欠陥を生ずる。したがって、トリシランおよび塩素の反応は、エッチャントの添加なしで、特にHClの添加なしで、高レベルの選択性を有利に達成する。
【0030】
本明細書において説明するようにトリシランを選択的堆積方法に使用することは、既知のSi含有層を混合基板に堆積させるトリシランの非選択性を考慮すると、驚くべきことである。例えば、「混合基板への堆積(Deposition Over Mixed Substrates)」と題する米国特許第6,900,115号は、そこで説明されているCVD条件下で行われたトリシラン堆積は、基礎をなす表面形態とは相対的に無関係な厚さを有するSi含有膜を生成する傾向があることを開示している。したがって、例えば米国特許第6,900,115号の図2は、トリシラン堆積方法を使用して混合基板に堆積したSi含有膜210の厚さが、基礎の基板の表面を横断する結晶化度が変化しているにもかかわらず、相対的に均一であることを示している。米国特許第6,900,115号に教示されているトリシラン堆積条件は、約400℃〜約750℃の好ましい温度範囲を含んでいる。したがって、米国特許第6,900,115号は、混合基板上の堆積に関して、トリシランは当業者によって非選択的シリコンソースであると見なされていることを示している。
【0031】
ジシラン/塩素を使用した選択的堆積のある条件が知られている。この関連で、図7〜10は、両方ともその全部が参照により本明細書に組み込まれている、Violette他、J.Electrochem.Soc.第143巻(1996年)、p.3290〜3296(以下「Violette」と称する)およびO’Neill他、J.Electrochem.Soc.第144巻(1997年)、p.3309〜3315(以下「O’Neill」と称する)で開示されている、ジシラン/塩素を使用した選択的堆積の様々なバックグラウンド原理を示す。
【0032】
図7は、様々な堆積温度に関し、H2キャリアガス中の10%ジシラン流100sccmにおいて、全圧力22〜24mTorrを用い、Cl2流を各温度で調節する状態における、Cl2流量の関数としてのSi成長速度のプロットである(Violetteの図6参照)。これらの条件下で、約700℃を超える温度および2sccm未満のCl2流量が高い成長速度を維持している。2sccmまたはこれより高いCl2流量は、成長速度に著しい悪影響をあたえることが観察された。Violetteによれば、低い温度では、シリコン成長速度は、Siエッチングではなくて、Cl不動態化によって制限される。
【0033】
図8は、堆積速度対塩素流量のグラフで、様々な条件下でのジシラン/塩素堆積に関する選択的しきい値を示している(O’Neillの図1参照)。図9は、温度の関数としての、絶縁表面上の核の表面被覆率を示すグラフである(O’Neillの図3参照)。図8および図9の試験条件下で、750℃未満の温度が選択性を維持している。したがって、実験に使用した枚葉式ツールに関し、H2中の50〜200sccmの10%Si2H6および1〜2sccmのCl2を用い、約25〜40mTorrの範囲の圧力に関して、最適な選択的は、700℃〜750℃であると思われる。図10は、ジシラン/塩素を使用したSi堆積に関して、欠陥密度はCl2流量が低下すると一般的に低下することが判明したことを示している(O’Neillの図6参照)。したがって、塩素レベルは所望の選択性を未だ得ることが可能な最低のレベルにおいて維持することが好ましい。
【0034】
図7〜図10から、Violette/O’Neillのジシラン/塩素システムにおいて、より高い堆積温度とより低いCl2流量の組合せがより高い成長速度に有利であるが、逆の組合せ(より低い堆積温度とより高いCl2流量の組合せ)が選択性に有利であり、より低いCl2流量がまた低欠陥密度に有利であることは明らかである。当業者は、これらの結果を(当業者に公知の他の知識と併せて)、ジシラン/塩素に関する処理ウィンドウの開発に使用することもできることを認識している。したがって、図7に示す結果に関して、枚葉式製造における高選択的堆積のために、ジシラン/塩素の使用が適しているとVioletteが考えているのは、750℃を超える温度と5sccm未満のCl2流量だけである(Violetteの3294頁を参照されたい)。同様に、O’Neillは、堆積温度を低下させると選択性を増加させることができることを認識する一方で、そのように低い温度ではSi成長がCl表面の不動体化の存在によって不適切になることにも気が付いており、最適な堆積温度を「およそ800℃」と教示している(O’Neillの3312頁を参照されたい)。
【0035】
トリシラン堆積は、混合基板を横断する優れた核生成の均一性のため、非選択的方法に有利であると知られていたので、ここで説明する本発明より前には、当業者はトリシランが選択的堆積で使用する魅力的な候補である考えていなかったはずである。加えて、Violette/O’Neillのジシラン/塩素方法を、ジシランをトリシランに置き換える変更は、トリシラン堆積が一般的にVioletteおよびO’Neillによって最適と考えられている温度よりも低い温度で行われるため、問題があると考えられていたはずである(米国特許第6,900,115号を参照されたい)。例えば、上述のように、Violetteは、シリコン成長速度は、低温においてClの不動態化によって制限されると教示しているが、この低温は一般的にトリシラン堆積に使用される温度である。
【0036】
驚くべきことに、本明細書で説明したトリシラン/塩素方法の実施形態が、一方では、従来他の選択的堆積方法では達成するのが実用的ではない、困難または不可能であると考えられていた、2つ以上の性能目標を同時に達成しながら、Si含有材料の選択的堆積に使用することもできることが発見された。例えば、トリシラン/塩素方法は、様々な実施形態において、相対的に高い堆積速度(例えば、約5nm/分超、好ましくは約10nm/分超)、高い選択性(例えば99%超)、および相対的に低い堆積温度(例えば750℃未満、好ましくは725℃未満)の2つ以上を同時に達成しながら、Si含有材料の選択的堆積に使用することもできる。実施形態において、選択的堆積は、堆積温度約700℃以下、好ましくは約650℃以下、より好ましくは約600℃以下、さらにより好ましくは約550℃以下で達成することもできる。
【0037】
本明細書で教示した化学気相成長(CVD)条件下で、トリシランおよび塩素ガスのリアクタハウジングへの送出によって、基板の表面にエピタキシャルSi含有膜が、単結晶基板上に選択的に形成される結果となることが好ましい。トリシランおよび塩素ガスの基板表面を収容したリアクタハウジングへの送出が、トリシランおよび塩素ガスを、個別にまたは混合して供給ガスを形成した後に、配置された基板を有する適切な堆積チャンバへの導入によって完成することが好ましい。堆積は、当業者に知られている様々なCVD方法によって適切に行うこともできるが、堆積を本明細書で教示されたCVD方法により実施する場合に最大の利益が得られる。この開示した方法は、プラズマエンハンスト化学気相成長(PECVD)または熱CVDを含むCVDを使用し、トリシラン蒸気と塩素ガスを利用して、エピタキシャルSi含有膜をCVDチャンバ内の基板の露出したウィンドウ上に選択的に堆積させることによって適切に実施され得る。幾つかの実施形態において、選択的に堆積されたSi含有膜は、炭素ドープエピタキシャルSi膜である。別の実施形態において、ゲルマニウムソースがトリシランおよび塩素と一緒に反応装置に導入され、これによって単結晶SiGe膜をSi含有膜として選択的に堆積させる。幾つかの実施形態において、ドーパントソースがトリシランおよび塩素と一緒にCVD反応装置に導入され、これによってドープした単結晶Si含有膜を選択的に堆積させる。本明細書において、トリシランおよび塩素を、ある種のSi含有膜(例えば、エピタキシャルSi膜)に選択的に堆積させるために使用することについて言及することができる。これらの説明は、例えば、SiGe膜(例えば、ゲルマニウムソースの使用を含む)、SiCおよびSiGeC膜の堆積、電気的にドープしたSiGe、SiCおよびSiGeC膜(例えば、電気的に活性なドーパントのためのドーパント前駆物質の使用を含む)など、他のSi含有膜に対しても、特に記載のない限り、一般的に適用可能であることが認識される。熱CVDは、プラズマ処理に伴う基板および装置を損傷するリスクなしで、選択的堆積が効果的に達成されるので好ましい。
【0038】
トリシランおよび塩素は、ガスの形態または混合して供給ガスを形成してチャンバに導入するのが好ましい。供給ガスを形成するための混合は、チャンバ内でまたはチャンバに供給ガスを導入する前に行い得る。CVDチャンバ中の全圧は、好ましくは約0.001Torr〜約1000Torrの範囲、より好ましくは約0.1Torr〜約350Torrの範囲、最も好ましくは約0.25Torr〜約100Torrの範囲である。実験は、0.25Torr〜100Torrの圧力範囲で行われた。少なくとも約500mTorrのチャンバ圧力が、以下に説明する実験が行われた、枚葉式、単一パス、水平層流反応装置に適していた。本明細書において、チャンバ圧力は堆積圧力を指すこともある。トリシランの分圧は、全圧に対して好ましくは約0.0001%〜約100%の範囲、より好ましくは全圧に対して約0.001%〜約50%の範囲である。供給ガスは、他のシリコンソース、炭素ソース、ドーパント前駆物質および/または不活性キャリアガスなど、トリシラン以外のガス(単数または複数)をまた含むことができるが、トリシランが唯一のシリコンソースであることが好ましい。本明細書において使用される「ドーパント前駆物質(dopant precursor(s))」という用語は、一般的に、様々な元素(炭素、ゲルマニウム、ホウ素、ガリウム、インジウム、砒素、リン、および/またはアンチモン)に対する前駆物質であり、得られた堆積膜に(シリコンに比較して)相対的に少量取り入れられる様々な材料を指す。シリコンソースは、相対的に少量のシリコンを含有するSiGe膜の堆積のためのドーパント前駆物質を考え得ることが認識される。He、Ar、H2、N2は、本明細書で説明する方法の可能性のあるキャリアガスである。ある実施形態において、キャリアガスは、以下に詳細に説明するようにHe、Ar、および/またはN2などの非水素キャリアである。トリシランは、トリシラン蒸気を混入させるために、例えばキャリアガスを使用したバブラーなどの噴霧器を経由してチャンバに導入するのが好ましく、バブラーおよびバブラーから流出するキャリアガス中のトリシラン量を測定するためのガス濃度センサーを含む送出システムを経由するのがより好ましい。このようなセンサーは、例えば、Lorex Industries、Poughkeepsie、N.Y.(米国)のPiezocon(登録商標)ガス濃度センサーとして市販されている。
【0039】
供給ガスに含むこともできる適切な炭素ソースの例には、モノシリルメタン、ジシリルメタン、トリシリルメタンおよびテトラシリルメタンなどのシリルアルカンおよび/またはモノメチルシラン(MMS)およびジメチルシランなどのアルキルシランが含まれるが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態において、炭素ソースは、H3Si−CH2−SiH2−CH3(1,3−ジシラブタン)を含む。
【0040】
供給ガスは、所望する場合、Si含有膜をドーピングまたは合金化するのに有用であると当業者に知られている、補助シリコンソース、ゲルマニウムソース、補助塩素ソース、ホウ素ソース、ガリウムソース、インジウムソース、砒素ソース、リンソース、および/またはアンチモンソースなどの他の材料を含有することもできる。このようなソースの具体的な例には、補助シリコンソースとしてシラン、ジシランおよびテトラシラン;ゲルマニウムソースとしてゲルマン、ジゲルマンおよびトリゲルマン;炭素およびシリコン両方のソースとしてモノシリルメタン、ジシリルメタン、トリシリルメタン、テトラシリルメタン、モノメチルシラン(MMS)およびジメチルシラン;およびアンチモン、砒素、ホウ素、ガリウム、インジウムおよびリンなど、電気的に活性なドーパント(n型およびp型の両方)のソースとしての様々なドーパント前駆物質が含まれる。一般式(SiH3−zClz)xCH4−x−yClyのクロロシリルメタン(式中、xは1〜4の範囲の整数であり、yおよびzは、x+y≦4かつyおよびzの少なくとも1つが0でないことを条件にして、それぞれ独立に0または1〜3の範囲の整数である)が、炭素、シリコンおよび塩素のソースとして特に有用であることが判明している。一般式XaSiHb(CnH2n+1)4−a−bのアルキルハロシランもまた炭素、シリコンおよび塩素のソースとして特に有用である(式中、Xはハロゲン(例えば、F、Cl、Br)であり;nは1または2であり;aは1または2であり、bは0、1または2であり;aおよびbの合計は4未満である)。メチルジクロロシラン(Cl2SiH(CH3))が、式XaSiHb(CnH2n+1)4−a−bのアルキルハロシランの例である。
【0041】
トリシランを用いたCVDによる、電気的に活性なドーパントのSi含有膜への組込みは、供給ガス中のドーパントソースまたはドーパント前駆物質を使用してin situドーピングにおいて達成することが好ましい。電気的に活性なドーパントのための好ましい前駆物質は、ドーパント水素化物であり、ジボラン、重水素化したジボランなどのp型ドーパント前駆物質、ホスフィン、砒素蒸気、アルシンなどのn型ドーパント前駆物質を含む。例えば、(H3Si)3−xPRxなどのシリルホスフィン、例えば、(H3Si)3−xAsRxなどのシリルアルシン(式中、x=0〜2、Rx=Hおよび/または重水素(D)である)は、リンおよび砒素ドーパントの代替前駆物質である。SbH3およびトリメチルインジウムは、それぞれ、アンチモンおよびインジウムの代替ソースである。このようなドーパント前駆物質は、以下に説明する、好ましくはホウ素、リン、アンチモン、インジウム、および砒素ドープシリコン、Si:C、SiGeおよびSiGe:C膜および合金の、好ましい膜の調製に有用である。
【0042】
供給ガス中のドーパント前駆物質の量は、Si含有膜中の所望のドーパント水準を備えるためおよび/または選択的に堆積した層中の所望する表面品質のために調節することもできる。好ましい供給ガス中の濃度は、全反応ガス(不活性キャリアガスおよび希釈ガスを除く)の重量に対して約10億分の1(ppb)から約20重量%の範囲であり、約0.1sccmから5sccmの間の純粋なホスフィン(または当量の希釈したホスフィン)、またはアルシンまたはジボランが好ましいが、結果として得られる膜中の所望の性質を得るために、時々より高いあるいはより低い量が好ましい。好ましい枚葉式Epsilon(商標)反応装置シリーズにおいて、キャリアガス中のドーパント前駆物質の希釈混合物は、所望のドーパント濃度およびドーパントガス濃度に依存して、約10〜約1000標準立方センチメートル/分(sccm)の設定点において、質量流制御器を経由して反応装置に送出することができる。ドーパントガスの希釈は、相当する純粋なドーパント流量の、10−7〜10−2倍とすることができる。一般的に、市販されているドーパントソースは、H2中に希釈したドーパントの水素化物である。しかしながら、下記で説明するように、図26〜27に関して、幾つかの実施形態においてドーパント前駆物質は非水素ガスで希釈されている。希釈混合物は、トリシラン、塩素、任意の適切な希釈ガス、およびひずみ影響性前駆物質(例えば、ゲルマンなどのゲルマニウムソース、またはモノメチルシランなどの炭素ソース)など、置換型ドーピングのための任意の所望するドーパント前駆物質と混合することによりさらに希釈される。好ましいEpsilon(商標)シリーズ反応装置に関する典型的な全流量は、しばしば約20標準リットル/分(slm)〜約180slmの範囲であるので、このような方法で使用されるドーパント前駆物質の濃度は、全流量と比較して一般的に小さい。
【0043】
供給ガスをCVDチャンバに供給するために、適切なマニホールドを使用することもできる。CVDチャンバは、例えば図解の実施形態で説明されているような枚葉式、水平ガス流CVDチャンバなど、枚葉式反応装置であることが好ましい。最も好ましいCVDチャンバは、枚葉式、単一パス、水平層流ガス流反応装置であり、放射によって加熱されることが好ましい。この種類の適切な反応装置は市販されており、好ましいモデルには、ASM America、Inc.Phoenix(米国アリゾナ州)から販売されているEpsilon(商標)シリーズの枚葉式反応装置が挙げられる。本明細書において説明する方法は、シャワーヘッド型設備など、代替のリアクタも使用することができるが、均一性の向上および堆積速度の増加の利益は、Epsilon(商標)チャンバの水平の、単一パス層流ガス流配置において、回転基板を使用し、特に短いガス滞留時間において、特に有効であることが判明した。CVDは、プラズマ生成物(遠隔プラズマ発生装置のin situまたは下流)をチャンバに導入することで行うこともできるが、上記のように熱CVDが好ましい。
【0044】
塩素およびトリシランは、シリコン前駆物質だけの場合のシランの標準的使用に比較して、相対的に高いトリシラン流量および相対的に低い水素流量を使用して、水素キャリアガスと一緒に堆積反応装置に導入するのが好ましい。例えば、好ましい実施形態において、熱CVDは、Epsilon E2500(商標)、E3000(商標)またはE3200(商標)反応装置システム(ASM America、Inc.Phoenix(米国アリゾナ州)から市販されている)中で、トリシラン流量約5mg/分〜2,000mg/分、より好ましくは約10mg/分と約200mg/分を用いて実施される。水素流量は、約40標準リットル/分(slm)またはそれ未満、好ましくは10slmまたはそれ未満、より好ましくは5slmまたはそれ未満でよく、堆積温度は約450℃〜約700℃の範囲、より好ましくは約500℃〜約650℃の範囲でよい。図26〜27に関して以下でより詳細に説明するように、ある実施形態において、トリシラン/塩素ガスを用いての選択的堆積中に、水素ガスは最小化することが好ましい。塩素流量は、約20〜200sccmであることが好ましい。実験は、トリシラン流25〜400mg/分、H2キャリアガス流量0〜4slm、および塩素流量25〜200sccmで実施した。ドーパント前駆物質(例えば、炭素ソース、ゲルマニウムソースおよび/または電気的に活性なドーパント前駆物質)流量は、ドーパントソースの性質および他の成分の相対的流量に依存して、一般的に約5sccm〜約500sccmの範囲である。例えば、ホスフィンドーピングに関し、ドーパント水素化物(前駆物質)流量は、ホスフィン(H2中の1%PH3)で10〜200sccmであることが好ましい。
【0045】
熱CVDは、結晶性Si含有膜を基板上に選択的に堆積させるのに有効な基板温度で行うのが好ましい。熱CVDは、好ましくは約350℃〜約900℃、より好ましくは約500℃〜約800℃、さらに一層好ましくは約500℃〜約700℃の温度範囲で行われる。好ましい低温トリシラン/塩素堆積実施形態において、熱CVDは、好ましくは約500℃〜約600℃、より好ましくは約525℃〜約575℃の範囲の温度において行われる。好ましい中間温度トリシラン/塩素堆積実施形態において、熱CVDは約700℃〜約800℃の温度範囲で行われる。1つの実施形態において、化学気相成長条件は、トリシランに関して、実質的に質量移行制御堆積条件と実質的に反応速度論的制御堆積条件の間のほぼ転移温度である温度を含む。このようなトリシラン堆積条件は、参照により本明細書に組み込まれている、特にトリシラン堆積条件を説明することを目的とした、米国特許第6,821,825号において説明されている。PECVDは、約300℃〜約700℃の温度範囲で行うことが好ましい。当業者は、これらの温度範囲を、例えば、熱経済性の保持、堆積速度、チャンバの寸法の違い、枚葉式およびバッチ反応装置を含めた、好ましい全圧および分圧などの現実の製造のリアリティを考慮して調節することが可能である。一般的に、分圧が高くなると、所望の結果、それが堆積速度、層の品質または2つの組合せであっても、を得るためにはより低い温度を必要とする。基板は、例えば抵抗加熱、ランプ加熱など、当該技術において知られている様々方法で加熱することができる。
【0046】
様々な供給ガス成分の相対量は、結果として得られるSi含有膜の所望の組成および使用する堆積条件(例えば、温度、圧力、堆積速度など)に基づき、広範囲に変化させることもでき、本明細書に設けられたガイダンスを考慮した日常の実験により決定することもできる。供給ガス成分は混合し、次いでチャンバまたは基板に送出することもできるし、あるいは、例えば供給ガス成分を別個にCVDチャンバに供給し、基板においてまたは基板の近くで成分を混合して供給ガスを形成することもできる。
【0047】
図11〜16は、トリシランを用いて行った堆積実験の結果を要約する。当業者は、図11〜16に示すデータは、特定のトリシラン/塩素選択的堆積の用途のための様々な堆積パラメータを選択する有用なガイドであることを見出すであろう。
【0048】
図11は、H2キャリアガス流が増加すると、温度約650℃およびそれ未満の堆積(成長)速度が減少することを示すプロットである。これに対して、約750℃より高い温度では、堆積速度はH2キャリアガス流が増加すると増加する傾向を示し、H2キャリアガス流の増加および/または圧力の低下は、枯渇効果が減少する傾向を示す。図26〜27に関して、下記においてより詳細に説明するように、幾つかの実施形態において、システム中の水素ガスを最小化することが望ましく、水素ガスを、キャリアガスおよび/またはドーパントガスの希釈剤としての非水素不活性ガスと置換することが望ましい。
【0049】
図12Aは、トリシラン流が増加すると堆積速度が増加することを示すプロットである(1Torr、650℃、0.33〜3.3slmH2キャリアガス、塩素なしにおいて得られたデータ)。約150nm/分の堆積速度は、約100mg/分以上のトリシラン流量で得られた。図12Bは、それを示すプロットである。
【0050】
図13は、塩素の使用なしにおけるSiO2(非単結晶)上のトリシラン堆積速度が顕著であり、温度を上昇させると上昇することを示すプロットである(1Torr堆積圧力、トリシラン流量50mg/分、H2キャリアガス0.33slm、塩素なし、成長速度は単位nm/分で得られたデータ)。
【0051】
図14A〜Dは、所定の温度において、トリシラン堆積速度が、一般的にチャンバ圧力が上昇すると増加すること、そして特定の温度範囲において、圧力変化に対する感受性が低いことを示すプロットである。
【0052】
図15は、より高いドーパント流が抵抗率を減少させることを示すプロットである。データは、トリシランおよびホスフィンを、550℃および16Torrにおいて使用して得られたものである。x軸上のホスフィン流量は、H2中の1%ホスフィンの標準立方センチメートル/分(sccm)の単位である(本明細書においては「ドーパント数」または「DN」と称する)。得られた極度に低い抵抗率は、トリシランおよび塩素を使用するin situの選択的堆積によって、極めて高いドーパントの取込み水準が得られ得ることを示している。約50DN以上の流量においてヘーズは観察されなかった。
【0053】
図16Aは、堆積温度が上昇すると酸化物上の堆積速度が減少する傾向にあることを示すプロットである(8Torr堆積圧力、トリシラン流50mg/分、H2キャリアガスなし、塩素200sccm、酸化物基板上の成長速度単位がnm/分で得られたデータ)。トリシラン堆積速度は、一般的に温度の上昇に伴って増加する傾向にあるので(図14A参照)、図16Aで示されたデータは、トリシラン/塩素の堆積選択性が堆積温度の上昇に伴って上昇していることを示している。図16Bは、この一連の実験に用いられた堆積条件(550℃、16Torr、主キャリアガス流なし)の下で、単結晶シリコン上の堆積が、酸化ケイ素(SiO2)および窒化ケイ素(Si3N4)に対して実質上100%選択性であるCl2/トリシラン流量比を示すプロットである。ヘリウムが、バブラー中に供給されたトリシランを蒸発させるためのキャリアガスとして使用された(トリシラン25mg/分においてHe60sccm、トリシラン50mg/分においてHe120sccm、およびトリシラン100mg/分においてHe240sccm)。堆積は、図16Bにプロットされた線の上側に示されるより高いCl2/トリシラン流量比条件において、酸化ケイ素および窒化ケイ素に対して実質上100%の単結晶シリコン選択的であり、図16Bにプロットされた線の下側に示されるより低いCl2/トリシラン流量比条件において、100%未満の選択性である。図16Bは、所定の水準の選択性を達成するためにトリシラン流量は増加されるにつれて、より高い相対塩素流量が好ましいことを示している。
ドープSi含有膜
有利なことに、トリシランからの堆積は、選択的であってもなくても、炭素の極めて高水準も達成できる。高水準のシリコンへの置換炭素の取込みは、選択的であってもなくても、トリシランおよび炭素ソース(および幾つかの実施形態において、電気的に活性なドーパントのための必要に応じたドーパント前駆物質)を使用して、相対的に高い成長速度における堆積を行うことによって得ることもできる。図17A〜Dは、トリシラン、炭素ソース(図解した実施形態ではMMS)およびIII/V族ドーパントソース(図解した実施形態ではアルシン)を用いて堆積した、電気的にドープしたSiC膜の性質に対する温度および成長速度の影響を示す。図17A〜Dは、非選択的方法における炭素取込みを示すが、塩素追加による選択的方法、特にドーパント水素化物の組合せにおいても、類似の結果を得ることもできる。図17Aは、膜成長速度への温度の影響を示すアレニウスプロットである。図17Bは、置換炭素含有量への堆積温度の影響を示す別のアレニウスプロットで、置換炭素のより高い水準は、一般的により高い堆積温度において得られることを示している。好ましい堆積条件下で、置換炭素取込み水準は、約1.0原子%〜約3.5原子%の範囲とすることができる。図17Cは、成長速度の置換炭素含有量および抵抗率への影響を示すプロット(堆積温度の関数、図17A参照)であり、より高い置換炭素水準およびより高い抵抗率は、一般的により高い成長速度において得られることを示している。図17Dは、温度の抵抗率への影響を示す別のアレニウスプロットで、より高い抵抗率の水準は、一般的により高い堆積温度において得られることを示している。
【0054】
当該分野において知られているように、単結晶シリコンの格子定数は、約5.431Åであり、一方ダイヤモンド形態の単結晶炭素は、炭素原子のサイズが小さいことに起因して、3.567の格子定数を有する。したがって、炭素原子が置換するシリコン原子よりも小さいため、炭素を用いた置換型ドーピングによって、単結晶シリコンに引っ張りひずみが導入され得る。置換的にシリコン内にドープされる炭素の量は、ドープされたシリコンの垂直格子間距離をX線回折により測定し、次いでベガードの法則(Vegard‘ law、単結晶シリコンと単結晶炭素の間の線形補間)を適用することによって決定することもできる。ベガードの法則および置換炭素水準、格子間隔およびひずみの相関関係は、当業者に知られている。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、Judy L.Hoyt著「置換炭素の組込みと、Si1−yCy/SiおよびSi1−x−yGexCy/Siヘテロ接合の電子的特徴(Substitutional Carbon Incorporation and Electronic Characterization of Si1−yCy/Si and Si1−x−yGexCy/Si Heterojunctions)」、第3章「シリコン−ゲルマニウム炭素合金」、TaylorおよびFrancis、NY(米国)p.59〜89、2002年を参照されたい。Hoytによる上記論文の73頁、図3.10において図解されているように、従前の堆積方法は、2.3%までの置換炭素含有量を有するシリコンを備えており、これは5.4Åを超える格子間隔と1.0GPa未満の引っ張りひずみに相当する。図3.10は、またドープシリコン中の全炭素含有量は、SIMSによって決定することもできることを示しており、それ故、非置換炭素含有量は、全炭素含有量から置換炭素含有量を差し引くことによって決定することもできる。
【0055】
炭素ドープ単結晶Si含有膜は、さらに例えばリンおよび砒素からなる群から選択されるドーパントなどの、電気的に活性なドーパントを含むこともできる。一般的に、置換炭素の存在は散乱をもたらし、置換炭素を含有しない他の類似の電気的にドープした単結晶Si含有膜に比較して抵抗率を増加させる傾向がある。しかしながら、本明細書で説明するようにトリシランを使用してドープした場合、驚くべきことに、このような電気的にドープした単結晶Si含有膜が、炭素の存在にもかかわらず、依然として低い抵抗率を有していることが見出された。例えば、電気的ドーパントでドープされた場合(好ましくは置換型でドープされた場合)、置換炭素を含む単結晶Si含有膜は、約1.0mΩ・cm以下、好ましくは0.7mΩ・cm以下の抵抗率を有することもできる。実験において、約5.323Å(X線回折で測定して)の格子間隔が、トリシラン、アルシンおよびモノメチルシランから堆積したSiC(炭素で置換的にドープしたシリコン)に関して達成された。格子間隔5.323Åは、約3.25%の置換炭素の水準に相当する。基礎をなすシリコンテンプレート(例えば、格子間隔約5.43Å)に対して拘束される場合、このようなSiC層における引っ張り応力は2.06GPaに達する。より一般的に、作り出される応力は、1GPaと3GPaの間であることが好ましい。シリコンの自然の格子定数からの逸脱は応力を導き、相当するひずみは半導体中の電気的キャリアの移動度を有利に改良し、デバイス有効性を改良する。SiCがその材料の臨界厚さ未満に堆積した場合、堆積層は引っ張り応力を残存させる。ある実施形態において、電気的にドープしたSi:CまたはSiGe膜は、ひずみが隣接層に作用するように構成される。例えば、圧縮応力は、電気的にドープした弛緩したSi:C層上に堆積したシリコン膜上に作用することもある。ある実施形態において、陥凹したソース/ドレイン領域中に選択的に形成された電気的にドープされたSi:C膜が、以下においてより詳細に説明するように、引っ張り応力をソースおよびドレイン間に形成されたシリコンチャンネル上に作用する。このような形状は、例えばNMOSデバイスに関する電子移動度の改良など、様々な用途に使用することができる。
【0056】
図1〜5の実施形態において、SiC層は陥凹したソース/ドレイン20中に選択的に形成され、応力を維持する条件(厚さ、温度)の下で好ましく堆積される。SiC材料のより小さい格子定数が、S/D陥凹を充填して引っ張り応力をそれらの間のチャンネル領域22に作用する。トリシラン、塩素および炭素ソースに加えて、ドーパント水素化物を供給ガスに加えることが好ましい。アルシンまたはホスフィンを使用するのが好ましい。ある実施形態は集積回路を形成する方法を提供し、この方法は、露出半導体表面および絶縁領域を画定するために基板をパターン化し、トリシランおよび塩素ガスを供給し、これによってエピタキシャル膜を露出した半導体表面上に選択的に堆積させることを含む。トリシランおよび塩素ガスは混合して、例えば化学気相成長条件下で、基板と接触して膜を堆積させるための供給ガスを形成することもできる。供給ガスの様々成分の2つ以上を、同時にまたは段階的に、どの順序で混合することもでき、供給ガスをチャンバに供給する前でもまたは後でも混合することもできる。したがって、例えば、塩素ガスおよびトリシランの供給は、基板での混合、または事前に混合して供給ガスを形成し次いで例えばキャリアガスを使用して基板に運ぶことを含むこともできる。ドーパントソース(例えば、炭素ソース、ゲルマニウムソースおよび/または電気的に活性なドーパント前駆物質)などの他の添加ガスを、供給ガスを形成するために混合することもできる。ドーパントソースは、トリシランおよび塩素と一緒に供給し、ドープしたエピタキシャル膜を露出した半導体表面上に選択的に堆積させることもできる。例えば、図1〜5の実施形態において、炭素またはゲルマニウムソースは、トリシランおよび塩素と一緒に供給される。
【0057】
ある実施形態において、炭素ソースはトリシランおよび塩素と一緒に基板に供給され、置換炭素を含むSi含有膜を選択的に堆積させる。置換炭素の量は、好ましくは約1.0原子%以上、より好ましくは約1.5原子%以上である。選択的に堆積した炭素−およびSi含有膜は、5.38Å以下、好ましくは約5.36Å以下、より好ましくは約5.34Å以下の格子間隔を有する単結晶シリコン膜であってよい。このような単結晶シリコン膜は、さらに電気的に活性なドーパント(リンまたは砒素など)を含むこともできる。電気的に活性なドーパントでドープ(好ましくは置換型ドープ)した場合、置換炭素を含む選択的に堆積した単結晶シリコン膜は、約1.0mΩ・cm以下、好ましくは約0.7mΩ・cm以下の抵抗率を有することもできる。このような置換炭素を含む単結晶シリコン膜は、塩素、トリシラン、炭素前駆物質、および場合によっては電気的に活性なドーパントのためのドーパント前駆物質を使用して、相対的に高速度の堆積方法により、選択的に堆積させることもできる。図18Aは、炭素および砒素の両方を用いて置換的にドープしたシリコン膜に関する成長速度(1分間当たりのナノメートル、nm/分)の関数としての置換炭素の割合を示すプロットである。プロットは、またこれら膜の抵抗率(単位は、左側軸のmΩ・cm)を示す。図18Bは、トリシラン流(単位は1分間当たりのミリグラム、mg/分)の関数としてのこれら膜の成長率を示す。
【0058】
図18Aおよび18Bは、トリシランおよび塩素を使用して、例えば、少なくとも約5nm/分の相対的に高い堆積速度すなわち成長速度において選択的堆積を実施することにより、高水準の置換炭素を達成し得ることを示している。炭素含有量と抵抗率は、共に堆積速度が増加すると改良される、換言すればトリシランの使用により改良される。図18Aおよび18Bにおいて図解するように、例えば、トリシラン流量および温度を制御することよって、成長速度を制御することもでき、例えば、2.5%以上の置換炭素、好ましくは2.6%以上の置換炭素、より好ましくは2.7%以上の置換炭素など、様々な水準の炭素を含む単結晶膜を生成する。幾つかの実施形態において、単結晶膜は、図18Aおよび18Bにおいて示されるように、例えば、2.8%以上の置換炭素、好ましくは2.9%以上の置換炭素、より好ましくは3.0%以上の置換炭素など、さらに高い水準の炭素を含むこともできる。
【0059】
図19は、1.8%炭素でもって置換的にドープした結晶性シリコン膜(厚さ200nm)に関するFTIRスペクトルの一部分を示す。約605波数における強い吸収は、シリコン膜中に置換炭素が存在することを実証している。約450〜500の波数において幅広の吸収バンドがないことは、シリコン膜は、(例えあったとしても)極少量の非置換炭素しか含有していないことを実証している。したがって、ある実施形態は、2.4%以上の置換炭素を含む選択的に堆積した単結晶シリコン膜を提供し、この膜は、約0.3%未満の非置換炭素、好ましくは約0.25%未満の非置換炭素、より好ましくは約0.20%未満の非置換炭素、より一層好ましくは約0.15%未満の非置換炭素を含んでいる。前述の通り、単結晶膜中のドーパント(炭素、ゲルマニウムまたは電気的に活性なドーパントなど)の割合は、本明細書においては、特段の注記がない限り全体の膜に対する原子%で表示される。
【0060】
本明細書において説明するような置換炭素を含む、選択的に堆積した単結晶シリコン膜の厚さは、臨界膜厚未満であることが好ましい。当業者は、臨界膜厚は、張力を有する膜が特定の一連の条件下で、弛緩する膜厚であることを理解している。置換ドーパントの濃度が増加すると、一般的に臨界厚は減少する。臨界厚未満の厚さを有する膜には、これらの条件下で、一般的に張力が残存している。例えば、約1.8%の置換炭素を含む単結晶シリコン膜は、約500℃において約200nmの臨界厚さを有することもできるが、これに対して3.5%の置換炭素を含む他の類似の膜は、その温度において、約25〜30nmの臨界厚さを有することもできる。その膜に関する臨界厚未満の厚さを有する膜は、十分不安定な状態でない場合または十分不安定な状態に達するまで張力が残存する傾向を示す(例えば、十分な熱に曝すと弛緩する)。
【0061】
上記で説明し、図18Aおよび18Bで図解したように、塩素およびトリシランを炭素ソースと共に使用して、少なくとも約5nm/分、好ましくは少なくとも約10nm/分の堆積速度で膜を堆積させることによって、相対的に高い水準の置換炭素を選択的堆積シリコン膜に組み込むこともできることが発見された。本明細書で説明し、図17および20〜24で図解したように、選択率、堆積速度、および得られたシリコン膜に組み込まれる置換炭素の水準を制御するために、様々な堆積パラメータを使用することができる。
【0062】
図20Aは、3つの異なるキャリアガス(H2)流量に関し、チャンバ圧力の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。図20Aおよび20Bに示すデータは、堆積温度550℃、トリシラン流量200mg/分、およびMMS(炭素ソース)流量180sccmにおいて得られたものである。図20Aは、より高い置換炭素の水準が、これらの条件下で、相対的により高いチャンバ圧力および相対的により低いH2キャリアガス流において達成できることを示している。図20Bは、3つの異なるキャリアガス(H2)流量に関し、チャンバ圧力の関数としての成長速度のグラフを示し、これら条件下で、最も高い成長速度が、約40Torr〜約70Torrの範囲のチャンバ圧力で達成され、より高い成長速度がより低いH2キャリアガス流量で得られたことを示している。
【0063】
図21Aは、トリシラン流量の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。図21Aおよび21Bに示すデータは、堆積温度550℃、チャンバ圧力15Torr、キャリアガス(H2)流量20slm、およびMMS流量180sccmにおいて得られたものである。MMS流量を一定として、トリシラン流量を変化させたので、図21Aは、トリシランのMMSに対する流量比を変化させた場合の置換炭素含有量への影響を図解している。トリシランの炭素ソースに対する流量比を増加させると、得られる膜中の置換炭素の量が減少する。
【0064】
図21Bは、堆積速度(成長速度)の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量を示す。図21Bは、これら条件下で、5nm/分の成長速度において相対的に高い水準の置換炭素を達成することもできることを図解している。トリシランの炭素ソースに対する流量比が増加する(これによって、膜への取込みに利用できる相対的炭素の量が減少する)ため、(より高いトリシラン流量に起因する)より高い成長速度は、これら条件下では、(図18Aに比較して)より高い置換炭素をもたらさない。
【0065】
図22は、(上で説明した図21に比較して)一定のトリシラン流量におけるMMS流量の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。図22中のプロットしたデータは、これらの条件下で、より高いMMS流量においてより高い置換炭素水準が得られることを示している。トリシラン流量を一定にしてMMS流量を変化させたため、図22は、炭素ソース(MMS)のトリシランに対する流量比を変化させた場合の置換炭素への影響を示している。MMSのトリシランに対する流量比が増加すると、得られる膜中の置換炭素の量が、図21に示された結果により、相対的に直線的に増加する。
【0066】
図23Aは、トリシランの炭素ソースに対する比を一定に維持し、一方では両方のガス流量を同時に増加させることによって成長速度を増加させた場合の影響を図解している。図23Aに示されたデータは、堆積温度約550℃およびキャリアガス(H2)流量20slmにおいて得られたものである。図23Aは、より高い水準の置換炭素がより高い成長速度において達成されること、より高い成長速度がより高いチャンバ圧力およびより高い総体的流量において得られること、より高い実質的炭素が、所定のトリシラン対炭素前駆物質比において、より高い成長速度において得ることができることを実証している。図23Bは、成長速度がトリシラン流量の強力な正の関数であること、チャンバ圧力が相対的に少なめの影響しか有していないことを示している。したがって、総合すれば、図20〜23は、その下で単結晶シリコン中の置換炭素の高水準を達成するために使用することもできる高堆積速度の様々な条件を図解している。
【0067】
少なくとも2.4%の置換炭素を含む単結晶シリコン膜を選択的に堆積させるための化学気相成長条件は、実質的に質量移行制御堆積条件と実質的に反応速度論的制御堆積条件の間のほぼ転移温度である堆積温度を含むことが好ましい。このような堆積温度は、図17Aに垂直の点線で示してある。図17Aに示すグラフは、堆積温度の逆数の関数としての成長速度のプロットである。点線で示される転移温度は、グラフに示すデータを作り出すのに使用された堆積条件下で、約550℃である。点線で示される転移温度より高い温度(すなわち、点線の左側)において、堆積条件は実質的に物質輸送に制御される。一部の例では、約550℃より高い堆積温度において、膜品質のある側面が低下することもある。点線で示される転移温度より低い温度(すなわち、点線の右側)において、堆積条件は実質的に反応速度論的に制御され、相対的により高い炭素ソース流量を使用することもできる。転移温度の位置は、例えばチャンバ圧力およびキャリアガス流量を変えるなど、堆積条件を操作することによって変えることもできる。一部の実施形態において、化学気相成長条件は、約500℃〜約600℃の範囲の温度を含む。一部の実施形態において、化学気相成長条件は、少なくとも約500mTorrの、好ましくは少なくとも約30Torr、例えば約30Torr〜約200Torrの範囲のチャンバ圧力を含む。
【0068】
置換炭素を、選択的堆積Si含有膜に組み込ませるための上で説明した方法は、電気的に活性なドーパントなど、他のドーパントを使用する置換型ドーピングに使用することもできる。高水準の置換型ドーピングを、特にシリコン膜もまた炭素で置換的にドープされた場合、低い抵抗率を有する選択的堆積シリコン膜に対して使用することもできる。
【0069】
トリシランおよび塩素からの選択的堆積は、SiGe層にひずみを作り出すための、ゲルマニウムをエピタキシャル膜に置換的に組み込むことに対しても有効であるので有利である。好ましい堆積条件下で、例えば、ひずみをチャンネルに作用するための、ゲルマニウムの組込み水準は、約1%と99%の間、一般的に約17%と50%の間、しばしば約20%と約50%の間、より具体的には約20%と40%の間とすることができる。
【0070】
当該技術分野において知られているように、単結晶シリコンの格子定数は約5.431Åであり、これに対して単結晶ゲルマニウムは、ゲルマニウム原子のより大きなサイズのために5.657の格子定数を有している。シリコンの自然の格子定数からの逸脱は、ひずみをもたらし、これが半導体中の電気的キャリアの移動度を改良し、デバイスの効率を有利に改良する。SiGeをその材料の臨界厚さ未満に堆積した場合、堆積した層は、圧縮的ひずみを残存しており、PMOSデバイスに関してホール移動度が改良される。この場合、堆積したSiGe層は全活性領域上に選択的に形成することができ、チャンネルを画定することができ、または引っ張りひずみを有するSi層をその上に形成するための弛緩テンプレートとして働くことができ、それ自体がチャンネル領域として役立つことができる。
【0071】
置換炭素をSiGeに組み込むための上述の方法は、またSiGe中の圧縮的ひずみを低減するため、または、例えば本質的に約3.5原子%の置換炭素、約35原子%Ge、および約61.5原子%のシリコンからなる合金のような、ひずみなしの三元SiGeC合金を生成するために使用することもできる。
【0072】
図1〜5の実施形態において、SiC層は、陥凹したソース/ドレイン領域20中に選択的に形成され、応力を維持する条件(厚さ、温度)下で堆積されるのが好ましい。S/D陥凹を充填しているより小さな格子定数のSiC材料は、引っ張りひずみをそれらの間のチャンネル領域22に作用させる。しかしながら、ある実施形態において、SiGe層がSiCの代わりに陥凹したソース/ドレイン領域20中に選択的に堆積される。S/D陥凹を充填しているより大きな格子定数のSiGe材料は、圧縮ひずみをそれらの間のチャンネル領域22に作用させる。またアルシンまたホスフィンを使用することが好ましい。上記で説明したように、ある実施形態は、集積回路を形成する方法を提供し、この方法は、露出半導体表面および絶縁領域を画定するために基板をパターン化し;供給ガスを基板に供給し、これによってエピタキシャル膜を露出した半導体表面上に選択的に堆積し、ここにおいて供給ガスが、トリシラン、塩素、およびドーパントソース(場合によっては、キャリアガスなどの他のガス)を混合することによって形成されることを含む。好ましい実施形態において、ドーパントソースはゲルマニウムソースおよび必要に応じて電気的に活性なドーパント前駆物質であり、これはトリシランおよび塩素ガスと一緒に基板に供給され、ドープエピタキシャル膜を、露出した半導体表面上に選択的に堆積させる。
【0073】
別の実施形態において、トリシランおよび塩素は、電気的ドーパントと一緒に基板に供給され、これによって電気的にドープしたシリコン膜を基板上に堆積させる。したがって、実施形態は、チャンバ内に配置された基板を提供し;塩素、トリシランおよびドーパント前駆物質を、化学気相成長条件下で、チャンバに導入し、このドーパント前駆物質が電気的に活性なドーパントを含み;単結晶シリコン膜を、少なくとも約5nm/分の堆積速度において基板上に堆積させることを含む、単結晶シリコン膜を選択的に堆積させるための方法を提供する。選択的に堆積した単結晶シリコン膜は、約1.0mΩ・cm以下の抵抗率を有することが好ましく、少なくとも約3×1020cm−3の置換ドーパント、好ましくは少なくとも約4×1020cm−3の置換ドーパント、より好ましくは少なくとも約5×1020cm−3の置換ドーパントを含んでいる。電気的に活性なドーパントの水準および種類は、特定の用途に関して所望される場合、1.0mΩ・cm以下、例えば0.9mΩ・cm以下、好ましくは0.8mΩ・cm以下、より好ましくは0.7mΩ・cm以下となるように得られたドープシリコン中の抵抗率の値を生じるように変更することもできる。適切なドーパント前駆物質を使用することによって、この方法は、n型ドーパントまたはp型ドーパントを含有するシリコン膜を生成するために使用することもできる。好ましくは、n型ドーパントは、カーボンドープシリコン膜で使用される。適切なドーパント前駆物質およびドーパントの例については、上記で説明した。堆積速度は、図25で図解すように、例えば少なくとも約10nm/分まで、少なくとも約20nm/分までなど、増加させることもできる(以下で説明)。
【0074】
ゲルマニウムまたは電気的に活性なドーパントで置換的にドープされたシリコン膜を選択的に堆積するのに適した化学気相成長条件は、炭素で置換的にドープしたシリコン膜の堆積に関して上記で説明したCVD条件と一般的に適合する。したがって、ある実施形態は、炭素および電気的に活性なドーパントでドープした、選択的に堆積した単結晶シリコン膜を提供する。別の実施形態は、ゲルマニウムおよび電気的に活性なドーパントでドープした、選択的に堆積した単結晶シリコン膜を提供する。
【0075】
図24は、トリシランを使用して堆積した一連の膜の、ドーパント前駆物質(アルシン)流の関数としてのドープシリコン膜抵抗率のプロットである。図24は、アルシン流の関数としての膜抵抗率は、最低点を通過するので、抵抗率の低減は、単にドーパント前駆物質の流量を増加させるだけでは必ずしも達成されないという一般的な命題を示している。本発明は、理論に拘束されるものではないが、抵抗率の増加は、電気的に不活性なドーパントの部分の組込みが増加することによるものであろうと考えられている。
【0076】
図25Aは、トリシランのアルシンに対する一定流量比における、成長速度の関数としての、一連の堆積膜に関するドープシリコン膜の抵抗率のプロットである(図15も参照されたい)。図25Bは、トリシランおよびアルシンの流量の関数としての、膜堆積速度のプロットである。図25は、特定の一連のデータ内で、トリシランの置換ドーパント前駆物質(図23ではMMS、図25ではAsH3)に対する一定の流量比が使用されており、ある意味で図23に類似している。図25Aは、約1.0mΩ・cm以下のシリコン膜抵抗率の値が、トリシランを使用して、例えば少なくとも約5nm/分、より好ましくは少なくとも約10nm/分の相対的に高い速度において堆積を行うことによって達成できることを実証している。図25Bにおいて図解するように、ドープシリコン膜の成長速度は、実質上トリシランの流量の一次関数である。
【0077】
図15、23および25は、トリシランの使用が、相対的に高速度の堆積を可能にする、言い換えれば驚くべき高水準の置換的ドーピングを可能にすることを実証している。リン、炭素、および砒素の間の公知の違いにもかかわらず、図15、23および25間の類似性は、本明細書で教示されたようなトリシランを使用する堆積方法は、ドーパントまたはドーパント前駆物質の性質に対して相対的に感受性が低いことを実証している。したがって、本明細書で説明するトリシランを使用する選択的堆積方法は、広範囲な様々なドーパント(例えば、置換炭素、電気的に活性なドーパントなど)に適用可能であり、これらドーパントの、多種多様なSi含有材料(例えば、Si、SiC、SiGe、SiGeCなど)への組込みに適用可能である。特定のSi含有材料に適用可能な堆積条件に対して日常の実験を使用することもできる。
塩素のドーパント水素化物ゲッタリング
in situドーピングは、特に枚葉式処理において、CVDチャンバの望ましくない汚染のためにしばしば回避される。p型(例えばホウ素ドープ)およびn型(例えばリンドープまたは砒素ドープ)の両方の用途に有用な真性半導体の堆積によって、経済性を達成することができる。層は、別個のプロセスツールにおいて、埋込みまたは拡散によって簡単にドープされる。さらにドーパント拡散にバッチ処理を使用することができるので、処理能力は追加のドーピングステップによって大きく影響されない。
【0078】
しかしながら、塩素ガスを使用する好ましい選択的方法に関し、ドーパント水素化物をプロセスフローに添加することによって、改良された層表面品質が見出された。これは、ドーパント水素化物が表面において塩素に関する優れたゲッターとして働き、(純)HClおよびドーパント塩化物を形成し、前駆物質ガスが高品質エピタキシャル堆積のために表面にアクセスするのを可能にしたと考えられる。
【0079】
トリシランおよび塩素を使用するSi含有膜の堆積は、本明細書で説明するように行った場合、従来のシリコンソースの使用を超えて著しい利点を提供することができる。例えば、所定の堆積温度において、トリシランを使用するSi含有膜の堆積は、トリシランの代わりにシランを使用した場合より著しく速い速度において好ましく進行する。好ましい実施形態は、トリシランを基板表面に約50〜200mg/分の送出速度で送出する高速度堆積方法を提供する。熱CVD条件下で、好ましくは約500℃〜約800℃の範囲の堆積温度において、この実施形態を実施することによって、結果としてSi含有材料の、好ましくは約50Å/分以上、より好ましくは約100Å/分以上、最も好ましくは約200Å/分以上の(他のシリコンソースと比較して)相対的に速い堆積が得られる。またドーパント水素化物ソースは、表面品質を改良しin situドーピングを提供するために、トリシランおよび塩素と一緒に表面に送出することが好ましい。
【0080】
好ましいSi含有膜は、膜の表面を横断して極めて均一な厚さを有している。パターン化したまたは混合した基板上に(特に、半導体および酸化ケイ素かまたは窒化ケイ素上に)、本明細書で説明するように(例えば、ドーパント水素化物ゲッターの存在下において)堆積を行った場合、得られたSi含有膜に関する非均一厚さの割合は、好ましくは約2%以下である。膜の平均厚さに基づく、非均一厚さの割合に関する追加の値は、下の表1に示すようであることが好ましい。表1に示す非均一厚さ%のそれぞれの値は、その前に「約」という言葉が付いているかのように、理解されるものとする。
【0081】
【表1】
【0082】
一般的に、特定の一連のプロセス条件下で堆積した膜に関する膜厚均一性の測定は、約200mm〜約300mmの直径を有する均一または混合基板上に膜を堆積することによって行うことができる。膜厚均一性は、ランダムに選択した直径に沿った複数の厚さ測定点(ウエハ周囲における3mm以内の除外ゾーンでは測定しない)を構成し、様々な厚さ測定値を平均化することで平均厚さを決定し、二乗平均平方根(rms)の変動を決定することによって決定される。膜厚測定のための機器は、ThermawaveからのOptiprobe(商標)を使用することが好ましく、好ましい測定方法は、このような機器を使用して、ランダムに選択したウエハ直径に沿って49点において膜厚さを測定することを含む。実際には、厚さの変動は、通常このような測定に続いて機器から直接得ることができるので、手動で計算する必要はない。比較を可能にするため、計算によりrms厚さ変動を平均厚さで割って100倍し、結果を百分率で表現して、非均質%で表現することもできる。例えば、その上に1つまたは複数の追加の層が適用されている膜、またはその中に集積回路を含んでいる膜などの、このような測定が適用できない表面を有する膜の厚さ均一性の測定の場合は、切断して電子顕微鏡で厚さを測定する。膜厚を、横断面の最も薄い部分と最も厚い部分において測定し、これら2点の間の厚さ測定値の範囲(例えば、±6Å)を2つの測定値の合計で割ることで測定する。この非均一性は、本明細書では百分率で表現する。
【0083】
加えて、本明細書で説明する方法に従って(例えば、ドーパント水素化物ゲッターの存在下において)作製した、他のエレメント(例えば、ドープシリコン、Si含有SiCおよびSiGe合金、およびドープSi含有合金)を含有する好ましい結晶性Si含有膜の組成上の均一性が、トリシランを使用しないで作製した対応する膜に比較して著しく改良される。本発明は、いかなる動作理論にも拘束されるものではないが、Si含有膜が、例えば、シラン、DCSまたはTCSなどの従来の前駆物質を使用した、対応するSi含有膜より良好な、ある程度の組成上の均一性を有していると考えられる。さらに、相対的に高水準の非シリコン成分を含有する結晶性Si含有合金を、本明細書で説明する方法によって調製することができる。例えば、結晶性SiGeは、好ましくは約10原子%以上のGe、より好ましくは約20原子%以上のGe、さらにより好ましくは約30原子%以上のGeを含有する。Si:Cは、約1%と約3.5%の間の炭素を含有していることが好ましい。
非水素キャリアガス
本発明の別の態様により、非水素キャリアガスは、ハロゲン含有エッチャントガスおよびトリシランガスと組み合わせて使用するのが好ましい。ハロゲン含有エッチャントガスは、塩化水素(HCl)、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)および/または塩素などの塩素含有エッチャントガスでよい。水素ガス(H2)は、半導体処理のための蒸気堆積、特にエピタキシャル堆積において使用される、最も一般的なキャリアガスである。H2が最も一般的であるのには幾つかの理由がある。H2は高純度で供給することができる。さらに、水素の熱的性質は、ウエハに他の不活性ガスが影響するよりもより大きな熱的効果がある。加えて、水素は還元剤として働く傾向があるので、反応チャンバの完全とは言えない密封の結果生ずる自然酸化膜の形成に対抗する。
【0084】
しかしながら、本発明は、上記のトリシラン/塩素堆積システムなどの、トリシラン/ハロゲン含有エッチャントガス堆積システムにおいて、非水素キャリアガスを使用することによる特別な利点を見出した。ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)または窒素ガス(N2)、あるいはこのような不活性ガスの組合せを、水素の代わりに使用することが好ましい。塩化水素を、例えばトリシラン流量約5mg/分、堆積温度が約675℃〜約700℃の範囲、塩化水素流量約2.2slm、堆積圧力約4Torr、希釈したホスフィン流量約200sccmおよびMMS(希釈していない)流量約6sccmを含む堆積条件を用いて、ある選択的堆積におけるキャリアガスとして使用することもできる。図解した実施形態においては、Heの熱的挙動がH2のそれに近いので、H2キャリアガスの使用から少ない調節で済むため、Heが使用される。
【0085】
前述のトリシラン/塩素/水素システムにおいて、以下を含めた多くの可能性のある反応機構がある。
(1)Si(s)+Cl2(g)→SiCl2(g) エッチング
(2)Si3H8(g)→H3SiSiH:(g)+SiH4(g) トリシラン解離
(3)H3SiSiH:(g)→H2Si=SiH2(g)
(4)SiH2(g)+SiCl2(s)→2Si(s)+2HCl(g) 堆積
(5)Si(s)+2HCl⇔SiCl2(g)+H2(g) 堆積とエッチングの平衡
(6)2PH3(g)→2P(s)+3H2(g) ドーピング
(7)PH3(g)+6Cl(s)→PC13(g)+3HCl(g) フリー表面部位
(8)C12(g)+H2(g)→2HC1(g)
比較:SiH2Cl2(g)→SiCl2(g)+H2(g) DCS分解
式(1)は、システムにおけるエッチング反応を表す。式(1)は、(選択性を維持するために必要な)エッチングを提供することに加えて、またシリコン堆積を生成する傾向のある式(5)の反応物質を生成する。式(5)は、右側への反応(エッチング)と左側への反応(堆積)の間のバランスを表す。絶縁表面上ではエッチングが優位であり、一方半導体ウィンドウ上では堆積が優位であるような条件が好ましい。理論によって制限されることを望まないが、十分な濃度の塩素ガスを供給して選択性のためのエッチングを生成し、一方では堆積を提供するためのSiCl2を生成することが望ましい。
【0086】
しかしながら、遊離H2がキャリアガスとして存在すると(すなわち、大量に存在すると)、反応(8)が起こり、HClを発生する。システム中のHClの濃度が増加すると、堆積/エッチング式(4)および(5)の両方をエッチングの方向に促進し、このようにして堆積速度をいずれかの所定の「調整」プロセスに押し下げる。調整プロセスは、そこにおいて反応物質濃度が選択的堆積を達成するように調整されている。
【0087】
式(7)は、また別の望ましい反応を示し、これはH2キャリアガスの存在によるHClの生成によって抑制される。式(7)は、ウエハ表面に吸着された塩化物のゲッタリングを示す。アルシン、ホスフィンおよびジボランなどのドーパント水素化物(式はホスフィンで示してある)は、表面の塩素原子と反応して揮発性の副産物を形成する傾向があり、このようにして表面反応サイトは、堆積のために解放される。しかしながら、式(4)および(5)と同様に、HCl濃度が増加すると、反応式(7)の平衡が左側に移行することにより、望ましいゲッタリング反応が抑制される。
【0088】
したがって、非水素キャリアガス(一般的にシステム中の優位ガスである)の使用は、式(8)によるCl2の消費を避け、これによって堆積反応(4)、(5)およびゲッタリング反応(7)の抑制を避ける。Violetteの論文(上記参考資料に組み込まれている)から再生した図26は、H2キャリアガスの添加が、彼らの研究のSi/Cl中の堆積反応物質SiCl2の濃度をどのように抑制するかを示している。H2を使用しないプロセスが好ましいが、H2を最小化する利益は、全体的排除なしでは得ることができないことに留意されたい。システム中の最大のガスのソースを表す主キャリアガスは、非水素であることが好ましい。ドーパント前駆物質(炭素ソース、ゲルマニウムソースおよび/または電気的ドーパント前駆物質など)は、好ましくは非水素キャリアガスで希釈される(例えば、He中の1%アルシン、He中の1%ホスフィン)。堆積の選択性は、堆積温度を増加させると増加する傾向を示すので(図16Aを参照されたい)、相対的に高い堆積温度(例えば、550℃超、より好ましくは約550℃〜約650℃の範囲)を、H2の最小化または排除と組み合わせて使用することが好ましい。
【0089】
図27は、ヘリウム、トリシランおよび塩素ガスを使用する、好ましい反応装置システム100を示す。図に示すように、清浄器102がヘリウムソース104の下流に置かれている。不活性ガス流の一部が、バブラー106の形態の蒸発器に分流し、キャリアガスが、蒸発器から蒸発したトリシラン108を運び出す。別な方法として、トリシランを単に加熱して、液体上の空間におけるトリシランの蒸気圧を増加させ、キャリアガスがこの空間を通過する際にトリシランを取り込むことができる。どの場合でも、液体反応物質ソース容器106の下流に分析装置110があり、ここで蒸気を通過する音の速さを測定することによって、流動ガスの反応物質濃度が決定される。この測定に基づき、ソフトウェア制御の下流質量流制御器(MFC)112に関する設定点は、分析装置110によって変えられる。このような分析装置は、市販されている。
【0090】
MFC112を通過する流れは、主キャリアガスMFC114を通過する主キャリアガスおよび他の反応物質と、堆積チャンバ122に向けた注入マニホールド120の上流のガスパネルにおいて合流する。別な方法として、流れは反応装置システム100内のどの点においても合流することができ、得られた供給ガスを基板に供給する。好ましくは塩素ガス130の、エッチャント種のソースも同様に供給される。図解した実施形態において、炭素132(モノメチルシランまたはMMSと図解されている)のためのソースおよびドーパント水素化物134(ホスフィンとして示されている)のためのソースも同様に供給される。
【0091】
図解されているように、反応装置システム100は、システム100の様々な制御可能な構成要素に電気的に接続している中央制御装置150を含んでいる。この制御装置は、反応チャンバ122内に収容されている基板上に、本明細書で説明しているような堆積プロセスを実施するための、ガス流、温度、圧力等を提供するようにプログラムされている。当業者によって認識されるように、制御装置150は、一般的にメモリーおよびマイクロプロセッサーを含み、ソフトウェア、ハードワイヤード(hardwired)、またはこれら2つの組合せによってプログラムすることもでき、制御装置の機能性は、異なる物理的位置に設置されたプロセッサー内に分配し得る。したがって、制御装置150はシステム100を通して分布している複数の制御装置を代表することができる。
【0092】
したがって、トリシラン/塩素/非水素キャリアガスの組合せは、シリコン含有材料、特にエピタキシャル層の堆積速度の向上をもたらす。ある実施形態において、絶縁材料内の半導体ウィンドウの表面または内部に選択的堆積を達成するために、ガス流量は、圧力および温度の組合せにおいて選択される。ヘリウムソース104は、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよび/または窒素(N2)などの他の非水素ガスと置換できることが理解される。またヘリウムソース104は、水素キャリアガスを使用する反応装置システムに供給するために、水素ソースと置換することができる。例えば、水素をキャリアガスとして使用することを説明した堆積プロセスを、このような反応装置システムで行うことができる。
【0093】
図解した実施形態において、炭素ソース132もまた備えられており、トリシランと塩素と組み合わせて、上記で開示したように高い置換炭素含有量を達成することができる。別の実施形態において、向上した伝導率を有するin situドープ半導体層をもたらすために、ドーパント水素化物ソース134を備えていることも同様に好ましい。シリコンまたはSiCエピタキシに関しては、ドーパント水素化物がアルシンまたはホスフィンであって、層がn型ドープであることが好ましい。またドーパント水素化物のための希釈不活性ガスは、非水素不活性ガスであることが最も好ましい。したがってホスフィンおよびMMSは、例えばヘリウム中でそれらのソース容器132、134に貯蔵することが好ましい。一般的なドーパント水素化物濃度は、アルシンおよびホスフィンに関して、ヘリウム中で0.1%〜5%の範囲であり、より一般的には、0.5%〜1.0%の範囲である。一般的な炭素ソース濃度は、ヘリウム中で5%〜50%であり、より一般的にはヘリウム中で10%〜30%である。例えば、実験はヘリウム中20%MMSを用いて行った。別の方法として、炭素ソース(例えば、MMS)を希釈していない形態で供給することもできる。
【0094】
トリシランおよび塩素ガスと組み合わせた非水素不活性キャリアガスの利益についての前述の論議は、他の半導体化合物にも適用可能である。例えば、トリシラン、ゲルマン、塩素および非水素キャリアガスは、SiGeに関して、同様の向上しそして選択性の堆積利益を得る。例えば、ヘリウム中に1%のジボランを加えることで、p型ドープ層を得ることができる。
【実施例1】
【0095】
本実施例は、混合形態基板上のエピタキシャルシリコン膜の選択的堆積について示す。
【0096】
8インチの非パターン化Si<100>ウエハ基板および十分に酸化した表面(1000Å)を有する別のウエハを、Epsilon E2500(商標)反応装置システムに装荷した(loaded)。次いで基板を、900℃および水素流量20slmにおいて反応装置システムに導入し、基板を1分間安定化した。次いで、基板の温度が550℃に低下したときに水素流を停止した。次いで基板を10秒間安定化し、その時間の後50mg/分のトリシラン流を10分間導入した。200sccmの塩素ガスおよび100sccmの1%ホスフィンを同時に供給し、約6Torrの堆積圧力で堆積を行った。厚さ約500Åを有する連続した均一なリンドープSi膜が、(堆積速度5nm/分で)単結晶基板上に選択的に堆積した。次いで基板を反応装置から取り出し、ロードロックに戻した。シリコンウエハ上に堆積したリンドープSi膜は、優れたエピタキシャル品質と約0.35mΩ・cmの抵抗率を有していたが、一方酸化物基板上には、基本的に堆積は観察されなかった。
【実施例2】
【0097】
酸化ケイ素の表面を有する別のウエハの代わりに、窒化ケイ素の表面を有する別のウエハを反応装置に装荷したことを除き、実施例1で説明した通りに堆積プロセスを行った。エピタキシャルリンドープSi膜が選択的にシリコンウエハ上に堆積し、窒化ケイ素表面上には本質的に堆積はなかった。実施例1と同じく、堆積したリンドープSi膜は、優れたエピタキシャル品質と約0.35mΩ・cmの抵抗率を有していた。
【0098】
本明細書で述べた全ての特許、特許出願および論文は、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。当業者によって、上記で説明した方法に対して、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な削除、追加および改良を行うこともできることが理解され、このような改良および変更の全ては、添付の特許請求の範囲に規定するように、本発明の範囲に含まれることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】フィールド酸化物を画定し、絶縁体を取り除き半導体表面を露出した後の半導体基板の概略断面図である。
【図2】アクティブ領域ウィンドウ内に、トランジスタゲート電極を形成した後の図1の構造図を示す。
【図3】ゲート電極両側のソースおよびドレイン領域を陥凹した後の図2の構造図を示す。
【図4】本発明の好ましい実施形態により陥凹した領域内に半導体膜を選択的に堆積した後の図3の構造図を示す。
【図5】任意に選択的堆積を継続し、高くなったソース/ドレイン構造を形成した後の図4の構造図を示す。
【図6】本発明の別の好ましい実施形態による半導体ウィンドウを露出させ選択的堆積を行い高くなったソース/ドレイン構造を形成した後の図2の構造図を示す。
【図7】固定ジシラン流量に関し、幾つかの温度における塩素流量の関数としてのシリコン上の堆積速度を示すグラフである。
【図8】様々な条件下におけるジシラン/塩素堆積に関する選択率しきい値を示す、塩素流量の関数としての堆積速度を示すグラフである。
【図9】ジシランおよび塩素プロセスガスを使用する堆積に関する、温度の関数としての絶縁体表面上の核表面被覆率を示すグラフである。
【図10】ジシランおよび塩素プロセスガスを使用する堆積に関する、塩素流の関数としての欠陥密度を示すグラフである。
【図11】本発明の好ましい実施形態よるトリシラン、塩素および水素キャリアガスを使用する堆積に関する、水素流の関数としてのシリコン上の堆積速度を示すグラフである。
【図12】トリシラン流の関数としてのシリコン上の堆積速度を示すグラフである。
【図13】温度の逆数の関数としての酸化ケイ素上の堆積速度を示すグラフである(堆積圧力=1T=1Torr)。
【図14A−D】トリシラン、塩素および水素キャリアガスを使用する堆積に関する、温度の逆数および圧力(T=Torr)の関数としてのシリコン上の堆積速度を示す一連のグラフである。
【図15】トリシラン、塩素および水素キャリアガスを使用する堆積に関する、ドーパント流量の関数としてのシート抵抗を示すグラフである。
【図16A】水素キャリアガスを使用しないトリシランおよび塩素ガスを用いた、温度の逆数の関数としてのシリコンの酸化ケイ素上の堆積速度を示すグラフである。
【図16B】単結晶シリコン上の堆積が、この一連の実験において使用された堆積条件(550℃、16Torr、主キャリアガスなし)下、酸化ケイ素(SiO2)および窒化ケイ素(Si3N4)に対して実質的に100%選択性である、Cl2/トリシラン流量比を示すプロット図である。
【図17A】好ましい実施形態により堆積した膜に関する、成長速度、堆積した膜への炭素組込みおよび抵抗率を示す、一連のグラフである。
【図17B】好ましい実施形態により堆積した膜に関する、成長速度、堆積した膜への炭素組込みおよび抵抗率を示す、一連のグラフである。
【図17C】好ましい実施形態により堆積した膜に関する、成長速度、堆積した膜への炭素組込みおよび抵抗率を示す、一連のグラフである。
【図17D】好ましい実施形態により堆積した膜に関する、成長速度、堆積した膜への炭素組込みおよび抵抗率を示す、一連のグラフである。
【図18A】実質的に炭素および砒素の両方を用いてドープされたシリコン膜に関する、成長速度(1分間当たりのナノメートル、nm/分)の関数としての、置換炭素の割合を示すグラフであり、またこれら膜の抵抗率(単位mΩ・cm、これも左軸)を示す。
【図18B】トリシラン流(単位mg/分)の関数としてのこれら膜の成長速度を示すグラフである。
【図19】好ましい実施形態により、炭素を用いて置換的にドープされたシリコン膜に関するフーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトルの部分図を示す。
【図20A】3つの異なるキャリアガス(H2)流量に関するチャンバ圧力の関数としての、シリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。
【図20B】3つの異なるキャリアガス(H2)流量に関するチャンバ圧力の関数としての、成長速度のグラフを示す。
【図21A】一定のMMS(モノメチルシランまたはメチルシラン)流量における、トリシラン流量の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。
【図21B】堆積速度(成長速度)の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量を示す。
【図22】一定のトリシラン流量における、MMS流量の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。
【図23A】一定のトリシラン対MMSの流量比における、膜成長速度の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。
【図23B】トリシラン流量の関数としての成長速度のグラフを示す。
【図24】トリシランを用いて堆積した一連の膜に関する、ドーパント前駆物質(アルシン)流の関数としてのドープシリコン膜抵抗率のグラフである。
【図25A】一定のトリシラン対アルシン流量比において堆積した一連の膜に関する成長速度の関数としてのドープシリコン膜抵抗率のグラフである。
【図25B】トリシランおよびアルシン流量の関数としての膜堆積速度のプロット図である。
【図26】水素キャリアガスの添加のある場合とない場合における様々な塩素化シリコン種を含むシステムに関する、温度の関数としての様々な反応物質の熱力学的平衡を示す2つのグラフである。
【図27】本発明の好ましい実施形態によるシリコン含有膜の堆積に関し、トリシラン、塩素ガス、および不活性、非水素キャリアガスを使用するシステムに関してセットした反応装置の概略図である。
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本願は、2005年2月4日出願の米国特許仮出願第60/649,990号、2005年3月18日出願の米国特許仮出願第60/663,434号、および2005年4月4日出願の米国特許仮出願第60/668,420号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本願は、一般的に半導体処理におけるシリコン含有材料の堆積に関する。より詳細には、本願は、トリシランを使用するシリコン含有膜の選択的堆積に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の記載
半導体製造業において、表面に材料を堆積させるために様々な方法が用いられている。例えば、最も広範囲に使用されている方法の1つは化学気相成長(「CVD」)であり、ここでは蒸気に含まれる原子または分子が表面に堆積し蓄積されて膜を形成する。通常のシリコンソースおよび堆積方法を使用するシリコン含有(「Si含有」)材料の堆積は、幾つかの明確な段階において進行すると考えられる、Peter Van Zant著、「マイクロチップ加工(Microchip Fabrication)」第4版、McGraw Hill、New York、(2000年)、pp.364〜365を参照されたい。第1段階の核生成は非常に重要であり、これは基板表面の性質および品質によって大きく影響を受ける。核生成は、最初の僅かな原子または分子が表面上に堆積して核を形成したときに起こる。第2段階において、分離した核が小さなアイランドを形成し、これはより大きなアイランドへと成長する。第3段階において、成長したアイランドは、連続膜へと合体を始める。この時点で、膜は典型的に数百オングストロームの厚さを有し、「遷移(transition)」膜として知られている。これは一般的に、遷移膜が形成された後に成長を始めるより厚いバルク膜とは異なる化学的および物理的性質を有している。
【0004】
トリシランは、シリコンの理論上の前駆物質として長い間知られているが、これに対する研究はほとんど行われておらず、その利点もほとんど認識されていない。したがって、歴史的にトリシランの重要な商用源は開発されなかった。しかしながら、最近トリシランに関する様々な利点が発見された。例えば、2004年11月23日発行の、米国特許第6,821,825号は、トリシランから堆積した優れた膜均一性を開示している。2005年5月31日発行の米国特許第6,900,115号は、同様に半導体および絶縁体の混合表面のような、混合基板上に同時に堆積させる場合の、トリシランを使用することによる均一性および処理量の利点を開示している。
【0005】
上記特許の両方において開示されたように、絶縁体(例えば、酸化ケイ素)および半導体(例えば、シリコン)の両方の表面上に均一な堆積を達成することはしばしば望ましい。一方、他の状況においては、フィールド絶縁酸化物(field isolation oxide)など、異なる材料のフィールドに露出した半導体ウィンドウ内で選択的に堆積させることが望ましい。例えば、ヘテロ接合バイポーラトランジスタは、エピタキシャル(単結晶)半導体膜を活性領域上にのみ堆積させる選択的堆積法を用いてしばしば加工される。他のトランジスタ設計は、高くなったソース/ドレイン構造から利益を得られ、この構造は浅い接合デバイスの性能を変更することなくソース/ドレインコンタクトプロセスによって消費することのできる追加のシリコンを供給する。ソース/ドレイン領域上の選択的エピタキシは、その後のパターン化およびエッチング段階の必要性を有利に減少する。
【0006】
一般的に言えば、選択性は、異種材料上に堆積している間の核生成の差異をうまく利用する。選択的堆積は、堆積される材料の同時エッチングおよび堆積であると一般的に説明できる。前駆物質は、一般的に核生成と成長がある表面上ではより迅速に行われ、別の表面ではよりゆっくりと行われる傾向を示すように選択される。例えば、シランは、一般的に酸化ケイ素とシリコンの両方上で核生成するが、酸化ケイ素上では、より長い核生成フェーズになる。核生成段階の初めには、酸化物上の不連続膜は、シリコン上の合体した連続膜に比較して高い露出表面積を有している。したがって、工程に加えられるエッチャントは、急速に核生成されたシリコン上の膜に比べて、酸化物上の核生成が不十分な膜に対してより大きな影響を有している。それ故、工程の相対的選択性は、堆積速度(例えば、前駆物質の流量、温度、圧力)およびエッチング速度(例えば、エッチャント流量、温度、圧力)に影響する要因を調節することによって調整することができる。各変量を変更することは、一般的に、エッチング速度および堆積速度に異なる影響を有している。典型的に、選択的堆積方法は、フィールド領域においては堆積なしを達成しながら、関係するウィンドウ上で実施可能な最大の堆積速度を得るように調整される。既知の選択的シリコン堆積方法は、反応物質シランおよび水素キャリアガスを伴う塩酸を含んでいる。
【0007】
選択的堆積方法は当該技術において知られているが、より迅速でより電力消費の少ない回路を追求する継続スケーリングの要求が、集積回路加工において高まっている。したがって、改良された均一性、純度、堆積速度および再現性を有する選択的堆積方法が望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
現在、より迅速で、堆積層のより高い品質をもたらす堆積方法が見出されている。幾つかの説明された方法は、シリコンソースとしてトリシラン(H3SiSiH2SiH3)を使用し、Si含有膜の堆積方法に対する選択性を提供するための塩素のソースとして、塩素ガス(Cl2)などのハロゲン含有エッチャントガスを使用する。有利には、この方法は、ひずみを堆積層または隣接構造体に取り込むための炭素またはゲルマニウムソース、および/またはドーパントソースを含む追加のプロセスガスと良好に働く。例えば、選択的に堆積した結晶性シリコンは、結晶シリコンの堆積を塩素、トリシラン(シリコンソースとして)、および添加プロセスガス(炭素ソース、ゲルマニウムソースおよび/または電気的に活性なドーパント前駆物質)を使用して行なうことによりドープし、相対的に高い水準の他の元素(炭素、ゲルマニウムならびに砒素およびリンなどの様々な電気的に活性なドーパント)を含むこともできる。電気的に活性なドーパント前駆物質は、所望の導電性をin situで提供し、その後のドーピング段階を取り除くことが見出されただけでなく、堆積層の表面品質を独立に改良することも見出された。トリシラン/塩素堆積手段と併せた非水素キャリアガスの使用に関して、特別の利点が見出された。
【0009】
ある実施形態は、
第1表面形態を有する第1表面と第1表面形態とは異なる第2表面形態を有する第2表面とを含む基板を供給すること、
トリシランと塩素ガスを混合することによって供給ガスを形成すること、
この供給ガスを、化学気相成長条件下で、基板に導入すること、
この導入によって、Si含有層を、第2表面に堆積させることなく第1表面に選択的に堆積させること
を含む、基板上のシリコン含有層の選択的堆積方法を提供する。
【0010】
別の実施形態は、
基板をパターン化して露出した半導体表面と絶縁領域を画定すること、および
トリシランと塩素ガスを供給することによってSi含有エピタキシャル膜を、露出した半導体表面上に選択的に堆積させること
を含む、集積回路を形成する方法を提供する。
【0011】
別の実施形態は、
チャンバ内で堆積される基板を供給すること、
トリシラン、ハロゲン含有エッチャントガスおよび非水素キャリアガスを混合して供給ガスを形成すること、および
この供給ガスを基板に導入することによってシリコン含有層を基板上に堆積させること
を含む、シリコン含有層を基板上に堆積させる方法を提供する。
【0012】
別の実施形態は、
トリシラン蒸気ソース、
塩素ガスソース、
キャリアガスソース、
トリシラン、塩素およびキャリアガスのソースを化学気相成長チャンバに接続するガス分布ネットワーク、および
シリコン含有層を、基板の他の部分に堆積させることなく、チャンバ内の基板部分に選択的に堆積させるのに適した条件下で、トリシランおよび塩素をガス分布ネットワークに送るように構成された制御システム
を含む、半導体膜を堆積させるための装置を提供する。
【0013】
これらのおよび他の実施形態は、以下においてより詳細に説明する。
【0014】
本発明のこれらのおよび他の局面は、本発明を例示することを意味し本発明を制限するものではない、以下の説明および添付図面(原寸に比例していない)から容易に明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書で使用される用語「シリコン含有材料(Si−containing material)」および類似の用語は、これらに限定されるものではないが、Si(結晶シリコンを含む)、SiC(例えば、炭素ドープ結晶Si)、SiGeおよびSiGeC(例えば、炭素ドープ結晶SiGe)を含む幅広い種類のシリコン含有材料を指す。本明細書で使用される場合、「炭素ドープSi」、「SiC」、「Si:C」、「SiGe」、「炭素ドープSiGe」、「SiGeC」および類似の用語は、様々な割合の表示された化学元素および、場合によっては少量の他の元素を含む材料を指す。例えば、「SiGe」は、シリコン、ゲルマニウムおよび場合によっては、例えば、炭素のようなドーパントおよび電気的に活性なドーパントなどの他の元素を含む材料である。それ故炭素ドープSiは、SiCと称することもでき、その逆も同じである。「SiC」、「SiGe」および「SiGeC」などの用語は、それ自体化学量論的化学式ではなく、それ故表示された元素を特定の割合で含有する材料に限定されるものではない。Si含有膜中の、(炭素、ゲルマニウムまたは電気的に活性なドーパントなどの)ドーパントの百分率は、本明細書において、特に指定のない限り、全膜に対する原子百分率で表示される。
【0016】
本明細書で使用される、用語「エピタキシャル(epitaxial)」、「エピタキシャルに(epitaxially)」、「ヘテロエピタキシャル(heteroepitaxial)」、「ヘテロエピタキシャルに(heteroepitaxially)」および類似の用語は、堆積した層が基板の格子定数を反映するかこれに従う様な方法での結晶基板上の結晶Si含有材料の堆積を指す。堆積した層の組成が基板と異なる場合、エピタキシャル堆積は、ヘテロエピタキシャルであることもある。
【0017】
本明細書で使用される場合、「基板(Substrate)」という用語は、その上に堆積させることを希望するワークピースか、または堆積ガスに露出された表面を指す。例えば、基板は単結晶シリコンウエハでよく、または絶縁体上の半導体(SOI)基板でよく、またはこのようなウエハ上に堆積されたエピタキシャルSi、SiGeまたはIII〜V族材料でもよい。ワークピースは、ウエハに限定されるものではなく、ガラス、プラスチック、あるいは半導体処理に使用される任意のその他の基板も含まれる。良く知られているように、半導体処理は最も一般的に集積回路の加工に使用され、集積回路の加工は特に厳しい品質要求を伴っているが、このような処理はまた様々な他のフィールドに使用される。例えば、半導体処理技術は、多種多様な技術を使用するフラットパネルディスプレーの加工および微小電気機械システム(MEMS)の加工にしばしば使用される。
【0018】
「混合基板(Mixed substrate)」という用語は、当業者に知られている。特に混合基板について論じるために、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、「混合基板への堆積(Deposition Over Mixed Substrates)」と題する米国特許第6,900,115号(発行2005年5月31日)を参照されたい。米国特許第6,900,115号において論じられているように、混合基板は、2つ以上の異なる種類の表面を有する基板である。ある実施形態において、Si含有層が、単結晶半導体材料上に選択的に形成され、一方、隣接する誘電体上の形成は、最小限度であり、より好ましくは堆積を回避する。誘電材料の例には、二酸化ケイ素(例えば炭素ドープまたはフッ素ドープなどの低誘電定数形態を含む)、窒化シリコン、金属酸化物および金属ケイ酸塩が含まれる。混合基板の表面をお互いに異なったものにできる様々な方法がある。例えば、表面を銅もしくはシリコンなどの異なる元素から、または銅もしくはアルミニウムなどの異なる金属から、またはシリコンもしくは二酸化ケイ素などの異なるSi含有材料から作ることができる。表面の電気的性質も、お互いに異なるようにすることができる。
【0019】
材料が同じ元素から作製されても、表面の形態(結晶化度)が異なる場合、表面は異なり得る。本明細書で説明する方法は、Si含有膜を様々な基板に堆積させるのに有用であるが、混合表面形態を有する混合基板に関して特に有用である。このような混合基板は、第1表面形態を有する第1表面と、第2表面形態を有する第2表面を含んでいる。この文脈において、「表面形態」は、基材表面の結晶構造を指す。無定形および結晶は、異なる形態の例である。多結晶形態は、秩序正しい結晶の無秩序な配列よりなる結晶構造であり、それ故中間的秩序度を有している。多結晶材料中の原子は、お互いに秩序正しく配列しているが、結晶自体はお互いに関して長い距離での秩序に欠けている。単結晶形態は、高い長距離の秩序度を有している結晶構造である。エピタキシャル膜は、これらがその上で成長する、一般的に単結晶の基板に対して、同一の結晶構造および配向によって特徴付けられる。これら材料中の原子は、格子様構造に配列されており、これは(原子スケールで)相対的に長い距離存続する。非定型構造は、原子が明確な周期的配列に欠けているため、低い秩序度を有する非結晶構造である。他の形態には、微結晶と無定形および結晶性材料の混合物が含まれる。本明細書で使用する場合、「単結晶」または「エピタキシャル」は、通常トランジスタ加工に使用される、許容可能な数の欠陥を有することもできる大部分が大きな結晶構造を説明するのに使用される。当業者は、層の結晶化度は、一般的に無定形から多結晶へそして単結晶への連続体になることを認識するであろう。当業者は、低密度欠陥であっても、結晶構造が、単結晶またはエピタキシャルであると考えられる場合、容易に決定することができる。混合基板の具体例には、単結晶/多結晶、単結晶/無定形、エピタキシャル/多結晶、エピタキシャル/無定形、単結晶/誘電体、エピタキシャル/誘電体、伝導体/誘電体、および半導体/誘導体が含まれるが、これらに限定されるものではない。「混合基板」という用語には、2つ以上の異なる種類の表面を有する基板が含まれ、それ故当業者は、本明細書で説明するSi含有膜を2種類の表面を有する混合基板に堆積させる方法は、3種類以上の異なる種類の表面を有する混合基板にも適用できることを認識するであろう。
典型的な集積方法
図1は、図解した実施形態においてシリコンウエハを含む混合基板10を示す。上で述べたように、混合基板10は、ウエハまたはSOI基板上に形成されたエピタキシャル層を含むことができる。フィールドアイソレーション領域12は、通常のシャロートレンチアイソレーション(shallow trench isolation(STI))法によって形成され、STI素子のうちのウィンドウ中の単結晶アクティブ領域14を画定する。別の方法として、シリコンの局所酸化(LOCOS)および多くのLOCOSおよびSTIのバリエーションを含む、任意の適切な方法を使用して、フィールド絶縁材料を画定することができる。幾つかのアクティブ領域は、一般的に基板10を横断するSTIによって同時に画定され、STIはしばしばお互いからウェブ分離トランジスタアクティブ領域14を形成することが理解される。基板は、チャンネル形成に適切なレベルにおいてバックグラウンドドープすることが好ましい。
【0020】
図2は、ゲート電極16をアクティブ領域14上に形成した後の混合基板10を示す。絶縁スペーサおよびキャップ層に囲まれ、ゲート誘電体層18によって基礎をなす基板10から分離されている伝統的なシリコン電極として図解しているが、トランジスタゲートスタックは様々な形状のいずれにもすることができる。あるプロセスフローにおいて、例えば、スペーサを省略することができる。図に示す実施形態において、ゲート電極16の配置は、アクティブ領域14内のトランジスタゲート電極16の両側上のソースおよびドレイン領域20を画定する。ゲート電極16は、ゲート電極16の下で、ソースおよびドレイン領域20の間のチャンネル領域22を画定する。
【0021】
図3は、露出したシリコンを選択的にソースおよびドレイン領域20から除去するエッチングステップの結果を示す。垂直側壁画定を保証し、露出した酸化物および窒化物材料への損害を最小にするため、反応性イオンエッチング(RIE)を使用することが好ましい。陥凹(recess)の深さは、チャンネル上のひずみが堆積によって臨界厚さを超えることができるとはいえ、陥凹において堆積される層の臨界厚さ未満であることが好ましい。露出されるシリコンは、基本的にアクティブ領域14のソースおよびドレイン(S/D)領域20であるので、エッチングは、ソース/ドレイン陥凹と呼ばれる。あるアレンジメントにおいて、ソース/ドレイン領域上の薄い誘電体の除去の第1ステップを使用することもできることが理解される。
【0022】
図4は、本明細書において説明するトリシラン/塩素選択的堆積方法を使用して、結晶Si含有材料30を、陥凹したS/D領域20へ選択的に堆積した結果を示す。堆積の前に、露出した半導体表面を、例えばHF蒸気またはHF最終浸漬を用いて清浄し、そこへのエピタキシャルのために元の状態の表面を除去しておくことが好ましい。図解した実施形態において、トリシラン/塩素選択的堆積方法は、化学気相成長条件下で、混合基板10の表面に、供給ガスを導入することを含む。トリシランおよび塩素は混ざり合って、供給ガスを形成する。図1〜5の実施形態に関し、ゲルマニウムまたは炭素ソースも、以下により詳細に説明するように、チャンネル領域20上にひずみを作り出すために、Geドープまたは炭素ドープしたSi含有膜を堆積させるために、供給ガスに含まれていることが好ましい。ドーパント水素化物などのドーパント前駆物質が、供給ガスに含まれていることが好ましい。Si含有エピタキシャル層30は、S/D領域20において選択的に成長する。有利には、層30は、S/D領域20を充填してひずみをチャンネル領域22に作用するドープしたヘテロエピタキシャル膜(例えば、SiCまたはSiGe)である。図解した実施形態において、ヘテロエピタキシャル膜30は、チャンネル領域22の表面とほとんど同一表面上にある。図解するように、選択的堆積は、例えばフィールドアイソレーション領域12(一般的に酸化ケイ素の形態)を含む絶縁体およびゲート電極16上のスペーサキャップ(一般的に窒化ケイ素)などの無定形領域上の堆積を、最小限度にするかまたは堆積を回避する。
【0023】
図5は、延長ヘテロエピタキシャル膜32を有する、高くなったS/D領域20を形成するための選択的堆積の任意の延長を示す。チャンネル領域22の表面の下の延長膜32の部分は、チャンネル領域22に横応力を働かせるので、基板の表面上の部分は、天然シリコン格子定数からのそれほどのまたはいかなる格子の逸脱も含んでいる必要はない。したがって、いかなるゲルマニウムまたは炭素ソースガスも、場合によっては、チャンネル領域22の表面の上の選択的堆積の部分に関しては徐々に減少しあるいは停止することがあり得、トリシランおよび塩素の流れは継続する。電気的ドーパントソースガス、特にアルシン、ホスフィン、ジボランなどのドーパント水素化物は継続することが好ましい。
【0024】
図5の、高くなったS/D構造32は、基板10の表面上に追加のシリコン材料を備えると有利である。当該技術において知られているように、その後の処理を通して絶縁層が堆積され、これは絶縁膜を通してソースおよびドレイン領域20とコンタクトする。追加のシリコン材料は、ケイ化物のコンタクト形成を促進し、これはコンタクト抵抗(オームコンタクトの形成)を減少する。したがって、ニッケル、コバルトまたは他の金属をコンタクトホールの中に堆積させて、基礎をなすソース/ドレインのための浅い接合の電気的性質を妨害することなく、過剰のシリコンを消費することを可能にする。
【0025】
図6は別の実施形態を示し、ここにおいて図2の構造は、S/D陥凹ステップの介入なしで、トリシランおよび塩素を使用して選択的堆積を受ける。この場合、過剰シリコン34が接触ケイ素化によって浅い接合を破壊することなく消費されるならば、選択的堆積は、ソースおよびドレイン領域を上昇させることにのみ役立つ。堆積は、例えば電気的に活性なドーパントでドープしたシリコンなど、ドープシリコンを堆積させるため、必要に応じてドーパント前駆物質を含むことができる。しかしながら、全過剰シリコン構造体34が、接触ケイ素化によって消費されるならば、ドーパントは不要である。
【0026】
別のアレンジメント(示されていない)において、トリシランおよび塩素ガスを使用する選択的堆積が、シリコンコンタクトプラグを選択的に形成するのに使用されている。例えば、BPSGまたはTEOSなど、相対的に厚い絶縁層をパターン化し、コンタクトビアを開けて、単結晶半導体表面を露出させる。選択的堆積は、エピタキシャルプラグが、表面からコンタクトホールを通して成長するのに使用される。
【0027】
トリシラン/塩素方法の選択的性質は、その後のパターン化およびエッチング段階を取り除いて過剰の堆積をフィールド領域から除去するので有利である。不完全な選択性であっても、絶縁表面上の望ましくない堆積を除去するための時限の湿式エッチングの使用が可能であるので、高価なマスク段階を必要とするよりむしろ有利である。さらに、相対的に高い堆積速度において、優れた膜品質が得られ、処理能力が改良される。例えば、ある方法の実施形態を、トリシラン、ゲルマン、メチルシラン、B2H6及び塩素を使用して、例えばヘテロバイポーラトランジスタ(HBT)の基礎構造を形成するなど、ホウ素ドープSiGeCの選択的堆積に使用することもできる。ある実施形態において、本明細書で説明されているような、トリシラン、n−ドーパント前駆物質(アルシンまたはホスフィンなど)および塩素を使用する堆積方法を、例えばHBTのエピタキシャルエミッタを形成するためのn−ドープシリコン層の選択的堆積にも使用することもできる。他の選択的堆積方法の実施形態は、例えばトリシランおよび塩素を約550℃の堆積温度で用いて、高くなったソース/ドレイン(ESD)構造、DRAMおよび/またはSRAMのためのコンタクトプラグなどを形成するのに使用することもできる。幾つかの実施形態において、例えば炭素ソース、ゲルマニウムソースまたは電気的に活性なドーパントソースの実質的不在など、実質的にドーパント前駆物質の不在の下、トリシランおよび塩素を使用して真性シリコンが選択的に堆積される。トリシラン/塩素の選択的堆積方法の様々な堆積パラメータおよび操作上の詳細については以下に詳細に説明する。
トリシラン/塩素選択的堆積
ある実施形態は、シリコン含有層を基板上に選択的に堆積させる方法を提供する。この方法は、チャンバ内に配置される基板を供給し;ここにおいてこの基板は、第1表面形態を有する第1表面と、第1表面形態とは異なる第2表面形態を有する第2表面を含んでいることが好ましい。この方法は、トリシラン、塩素ガスおよび、必要に応じて、1つまたは複数のキャリアガスおよびドーパントガスを混合し、これによって供給ガスを形成し;この供給ガスを化学気相成長条件下で基板に導き;トリシランおよび塩素の導入によってまたは導入中に、Si含有膜を、第2表面への堆積を最小化しながら、第1表面上に選択的に堆積させることを含んでいることが好ましい。
【0028】
例えば、2004年11月23日に発行された、米国特許第6,821,825号において開示されているトリシランの使用によって得られる均一および高品質の膜に加えて、塩素ガスと組み合わせたトリシランを使用することによって、優れた選択性が得られることが見出された。事実、実験は一般的に99%またはそれより良好な選択性を示しており、100%(すなわち、酸化ケイ素および窒化ケイ素など、周囲の絶縁体上への堆積がゼロ)も可能である。したがって、好ましい実施形態において、トリシランおよび塩素の導入によってまたは導入中に、第2表面には実質的に堆積は行われない。
【0029】
さらにこの選択性は、追加のエッチャント種を加えることなく得られる。一般的にHClが、選択的シリコンベース堆積方法に用いられるが、ここにおいて無定形(一般的に絶縁体)表面への核生成の遅い堆積に対するエッチング効果が、露出した半導体表面へのエッチング効果より大きい。しかしながら、HClは、精製するのが難しい悪評があり、HClの一般的な市販ソースは、過剰の水分を堆積反応に持ち込む。このような水分は、堆積した膜の導電性を低下させ、エピタキシャル堆積に許容できない水準の欠陥を生ずる。したがって、トリシランおよび塩素の反応は、エッチャントの添加なしで、特にHClの添加なしで、高レベルの選択性を有利に達成する。
【0030】
本明細書において説明するようにトリシランを選択的堆積方法に使用することは、既知のSi含有層を混合基板に堆積させるトリシランの非選択性を考慮すると、驚くべきことである。例えば、「混合基板への堆積(Deposition Over Mixed Substrates)」と題する米国特許第6,900,115号は、そこで説明されているCVD条件下で行われたトリシラン堆積は、基礎をなす表面形態とは相対的に無関係な厚さを有するSi含有膜を生成する傾向があることを開示している。したがって、例えば米国特許第6,900,115号の図2は、トリシラン堆積方法を使用して混合基板に堆積したSi含有膜210の厚さが、基礎の基板の表面を横断する結晶化度が変化しているにもかかわらず、相対的に均一であることを示している。米国特許第6,900,115号に教示されているトリシラン堆積条件は、約400℃〜約750℃の好ましい温度範囲を含んでいる。したがって、米国特許第6,900,115号は、混合基板上の堆積に関して、トリシランは当業者によって非選択的シリコンソースであると見なされていることを示している。
【0031】
ジシラン/塩素を使用した選択的堆積のある条件が知られている。この関連で、図7〜10は、両方ともその全部が参照により本明細書に組み込まれている、Violette他、J.Electrochem.Soc.第143巻(1996年)、p.3290〜3296(以下「Violette」と称する)およびO’Neill他、J.Electrochem.Soc.第144巻(1997年)、p.3309〜3315(以下「O’Neill」と称する)で開示されている、ジシラン/塩素を使用した選択的堆積の様々なバックグラウンド原理を示す。
【0032】
図7は、様々な堆積温度に関し、H2キャリアガス中の10%ジシラン流100sccmにおいて、全圧力22〜24mTorrを用い、Cl2流を各温度で調節する状態における、Cl2流量の関数としてのSi成長速度のプロットである(Violetteの図6参照)。これらの条件下で、約700℃を超える温度および2sccm未満のCl2流量が高い成長速度を維持している。2sccmまたはこれより高いCl2流量は、成長速度に著しい悪影響をあたえることが観察された。Violetteによれば、低い温度では、シリコン成長速度は、Siエッチングではなくて、Cl不動態化によって制限される。
【0033】
図8は、堆積速度対塩素流量のグラフで、様々な条件下でのジシラン/塩素堆積に関する選択的しきい値を示している(O’Neillの図1参照)。図9は、温度の関数としての、絶縁表面上の核の表面被覆率を示すグラフである(O’Neillの図3参照)。図8および図9の試験条件下で、750℃未満の温度が選択性を維持している。したがって、実験に使用した枚葉式ツールに関し、H2中の50〜200sccmの10%Si2H6および1〜2sccmのCl2を用い、約25〜40mTorrの範囲の圧力に関して、最適な選択的は、700℃〜750℃であると思われる。図10は、ジシラン/塩素を使用したSi堆積に関して、欠陥密度はCl2流量が低下すると一般的に低下することが判明したことを示している(O’Neillの図6参照)。したがって、塩素レベルは所望の選択性を未だ得ることが可能な最低のレベルにおいて維持することが好ましい。
【0034】
図7〜図10から、Violette/O’Neillのジシラン/塩素システムにおいて、より高い堆積温度とより低いCl2流量の組合せがより高い成長速度に有利であるが、逆の組合せ(より低い堆積温度とより高いCl2流量の組合せ)が選択性に有利であり、より低いCl2流量がまた低欠陥密度に有利であることは明らかである。当業者は、これらの結果を(当業者に公知の他の知識と併せて)、ジシラン/塩素に関する処理ウィンドウの開発に使用することもできることを認識している。したがって、図7に示す結果に関して、枚葉式製造における高選択的堆積のために、ジシラン/塩素の使用が適しているとVioletteが考えているのは、750℃を超える温度と5sccm未満のCl2流量だけである(Violetteの3294頁を参照されたい)。同様に、O’Neillは、堆積温度を低下させると選択性を増加させることができることを認識する一方で、そのように低い温度ではSi成長がCl表面の不動体化の存在によって不適切になることにも気が付いており、最適な堆積温度を「およそ800℃」と教示している(O’Neillの3312頁を参照されたい)。
【0035】
トリシラン堆積は、混合基板を横断する優れた核生成の均一性のため、非選択的方法に有利であると知られていたので、ここで説明する本発明より前には、当業者はトリシランが選択的堆積で使用する魅力的な候補である考えていなかったはずである。加えて、Violette/O’Neillのジシラン/塩素方法を、ジシランをトリシランに置き換える変更は、トリシラン堆積が一般的にVioletteおよびO’Neillによって最適と考えられている温度よりも低い温度で行われるため、問題があると考えられていたはずである(米国特許第6,900,115号を参照されたい)。例えば、上述のように、Violetteは、シリコン成長速度は、低温においてClの不動態化によって制限されると教示しているが、この低温は一般的にトリシラン堆積に使用される温度である。
【0036】
驚くべきことに、本明細書で説明したトリシラン/塩素方法の実施形態が、一方では、従来他の選択的堆積方法では達成するのが実用的ではない、困難または不可能であると考えられていた、2つ以上の性能目標を同時に達成しながら、Si含有材料の選択的堆積に使用することもできることが発見された。例えば、トリシラン/塩素方法は、様々な実施形態において、相対的に高い堆積速度(例えば、約5nm/分超、好ましくは約10nm/分超)、高い選択性(例えば99%超)、および相対的に低い堆積温度(例えば750℃未満、好ましくは725℃未満)の2つ以上を同時に達成しながら、Si含有材料の選択的堆積に使用することもできる。実施形態において、選択的堆積は、堆積温度約700℃以下、好ましくは約650℃以下、より好ましくは約600℃以下、さらにより好ましくは約550℃以下で達成することもできる。
【0037】
本明細書で教示した化学気相成長(CVD)条件下で、トリシランおよび塩素ガスのリアクタハウジングへの送出によって、基板の表面にエピタキシャルSi含有膜が、単結晶基板上に選択的に形成される結果となることが好ましい。トリシランおよび塩素ガスの基板表面を収容したリアクタハウジングへの送出が、トリシランおよび塩素ガスを、個別にまたは混合して供給ガスを形成した後に、配置された基板を有する適切な堆積チャンバへの導入によって完成することが好ましい。堆積は、当業者に知られている様々なCVD方法によって適切に行うこともできるが、堆積を本明細書で教示されたCVD方法により実施する場合に最大の利益が得られる。この開示した方法は、プラズマエンハンスト化学気相成長(PECVD)または熱CVDを含むCVDを使用し、トリシラン蒸気と塩素ガスを利用して、エピタキシャルSi含有膜をCVDチャンバ内の基板の露出したウィンドウ上に選択的に堆積させることによって適切に実施され得る。幾つかの実施形態において、選択的に堆積されたSi含有膜は、炭素ドープエピタキシャルSi膜である。別の実施形態において、ゲルマニウムソースがトリシランおよび塩素と一緒に反応装置に導入され、これによって単結晶SiGe膜をSi含有膜として選択的に堆積させる。幾つかの実施形態において、ドーパントソースがトリシランおよび塩素と一緒にCVD反応装置に導入され、これによってドープした単結晶Si含有膜を選択的に堆積させる。本明細書において、トリシランおよび塩素を、ある種のSi含有膜(例えば、エピタキシャルSi膜)に選択的に堆積させるために使用することについて言及することができる。これらの説明は、例えば、SiGe膜(例えば、ゲルマニウムソースの使用を含む)、SiCおよびSiGeC膜の堆積、電気的にドープしたSiGe、SiCおよびSiGeC膜(例えば、電気的に活性なドーパントのためのドーパント前駆物質の使用を含む)など、他のSi含有膜に対しても、特に記載のない限り、一般的に適用可能であることが認識される。熱CVDは、プラズマ処理に伴う基板および装置を損傷するリスクなしで、選択的堆積が効果的に達成されるので好ましい。
【0038】
トリシランおよび塩素は、ガスの形態または混合して供給ガスを形成してチャンバに導入するのが好ましい。供給ガスを形成するための混合は、チャンバ内でまたはチャンバに供給ガスを導入する前に行い得る。CVDチャンバ中の全圧は、好ましくは約0.001Torr〜約1000Torrの範囲、より好ましくは約0.1Torr〜約350Torrの範囲、最も好ましくは約0.25Torr〜約100Torrの範囲である。実験は、0.25Torr〜100Torrの圧力範囲で行われた。少なくとも約500mTorrのチャンバ圧力が、以下に説明する実験が行われた、枚葉式、単一パス、水平層流反応装置に適していた。本明細書において、チャンバ圧力は堆積圧力を指すこともある。トリシランの分圧は、全圧に対して好ましくは約0.0001%〜約100%の範囲、より好ましくは全圧に対して約0.001%〜約50%の範囲である。供給ガスは、他のシリコンソース、炭素ソース、ドーパント前駆物質および/または不活性キャリアガスなど、トリシラン以外のガス(単数または複数)をまた含むことができるが、トリシランが唯一のシリコンソースであることが好ましい。本明細書において使用される「ドーパント前駆物質(dopant precursor(s))」という用語は、一般的に、様々な元素(炭素、ゲルマニウム、ホウ素、ガリウム、インジウム、砒素、リン、および/またはアンチモン)に対する前駆物質であり、得られた堆積膜に(シリコンに比較して)相対的に少量取り入れられる様々な材料を指す。シリコンソースは、相対的に少量のシリコンを含有するSiGe膜の堆積のためのドーパント前駆物質を考え得ることが認識される。He、Ar、H2、N2は、本明細書で説明する方法の可能性のあるキャリアガスである。ある実施形態において、キャリアガスは、以下に詳細に説明するようにHe、Ar、および/またはN2などの非水素キャリアである。トリシランは、トリシラン蒸気を混入させるために、例えばキャリアガスを使用したバブラーなどの噴霧器を経由してチャンバに導入するのが好ましく、バブラーおよびバブラーから流出するキャリアガス中のトリシラン量を測定するためのガス濃度センサーを含む送出システムを経由するのがより好ましい。このようなセンサーは、例えば、Lorex Industries、Poughkeepsie、N.Y.(米国)のPiezocon(登録商標)ガス濃度センサーとして市販されている。
【0039】
供給ガスに含むこともできる適切な炭素ソースの例には、モノシリルメタン、ジシリルメタン、トリシリルメタンおよびテトラシリルメタンなどのシリルアルカンおよび/またはモノメチルシラン(MMS)およびジメチルシランなどのアルキルシランが含まれるが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態において、炭素ソースは、H3Si−CH2−SiH2−CH3(1,3−ジシラブタン)を含む。
【0040】
供給ガスは、所望する場合、Si含有膜をドーピングまたは合金化するのに有用であると当業者に知られている、補助シリコンソース、ゲルマニウムソース、補助塩素ソース、ホウ素ソース、ガリウムソース、インジウムソース、砒素ソース、リンソース、および/またはアンチモンソースなどの他の材料を含有することもできる。このようなソースの具体的な例には、補助シリコンソースとしてシラン、ジシランおよびテトラシラン;ゲルマニウムソースとしてゲルマン、ジゲルマンおよびトリゲルマン;炭素およびシリコン両方のソースとしてモノシリルメタン、ジシリルメタン、トリシリルメタン、テトラシリルメタン、モノメチルシラン(MMS)およびジメチルシラン;およびアンチモン、砒素、ホウ素、ガリウム、インジウムおよびリンなど、電気的に活性なドーパント(n型およびp型の両方)のソースとしての様々なドーパント前駆物質が含まれる。一般式(SiH3−zClz)xCH4−x−yClyのクロロシリルメタン(式中、xは1〜4の範囲の整数であり、yおよびzは、x+y≦4かつyおよびzの少なくとも1つが0でないことを条件にして、それぞれ独立に0または1〜3の範囲の整数である)が、炭素、シリコンおよび塩素のソースとして特に有用であることが判明している。一般式XaSiHb(CnH2n+1)4−a−bのアルキルハロシランもまた炭素、シリコンおよび塩素のソースとして特に有用である(式中、Xはハロゲン(例えば、F、Cl、Br)であり;nは1または2であり;aは1または2であり、bは0、1または2であり;aおよびbの合計は4未満である)。メチルジクロロシラン(Cl2SiH(CH3))が、式XaSiHb(CnH2n+1)4−a−bのアルキルハロシランの例である。
【0041】
トリシランを用いたCVDによる、電気的に活性なドーパントのSi含有膜への組込みは、供給ガス中のドーパントソースまたはドーパント前駆物質を使用してin situドーピングにおいて達成することが好ましい。電気的に活性なドーパントのための好ましい前駆物質は、ドーパント水素化物であり、ジボラン、重水素化したジボランなどのp型ドーパント前駆物質、ホスフィン、砒素蒸気、アルシンなどのn型ドーパント前駆物質を含む。例えば、(H3Si)3−xPRxなどのシリルホスフィン、例えば、(H3Si)3−xAsRxなどのシリルアルシン(式中、x=0〜2、Rx=Hおよび/または重水素(D)である)は、リンおよび砒素ドーパントの代替前駆物質である。SbH3およびトリメチルインジウムは、それぞれ、アンチモンおよびインジウムの代替ソースである。このようなドーパント前駆物質は、以下に説明する、好ましくはホウ素、リン、アンチモン、インジウム、および砒素ドープシリコン、Si:C、SiGeおよびSiGe:C膜および合金の、好ましい膜の調製に有用である。
【0042】
供給ガス中のドーパント前駆物質の量は、Si含有膜中の所望のドーパント水準を備えるためおよび/または選択的に堆積した層中の所望する表面品質のために調節することもできる。好ましい供給ガス中の濃度は、全反応ガス(不活性キャリアガスおよび希釈ガスを除く)の重量に対して約10億分の1(ppb)から約20重量%の範囲であり、約0.1sccmから5sccmの間の純粋なホスフィン(または当量の希釈したホスフィン)、またはアルシンまたはジボランが好ましいが、結果として得られる膜中の所望の性質を得るために、時々より高いあるいはより低い量が好ましい。好ましい枚葉式Epsilon(商標)反応装置シリーズにおいて、キャリアガス中のドーパント前駆物質の希釈混合物は、所望のドーパント濃度およびドーパントガス濃度に依存して、約10〜約1000標準立方センチメートル/分(sccm)の設定点において、質量流制御器を経由して反応装置に送出することができる。ドーパントガスの希釈は、相当する純粋なドーパント流量の、10−7〜10−2倍とすることができる。一般的に、市販されているドーパントソースは、H2中に希釈したドーパントの水素化物である。しかしながら、下記で説明するように、図26〜27に関して、幾つかの実施形態においてドーパント前駆物質は非水素ガスで希釈されている。希釈混合物は、トリシラン、塩素、任意の適切な希釈ガス、およびひずみ影響性前駆物質(例えば、ゲルマンなどのゲルマニウムソース、またはモノメチルシランなどの炭素ソース)など、置換型ドーピングのための任意の所望するドーパント前駆物質と混合することによりさらに希釈される。好ましいEpsilon(商標)シリーズ反応装置に関する典型的な全流量は、しばしば約20標準リットル/分(slm)〜約180slmの範囲であるので、このような方法で使用されるドーパント前駆物質の濃度は、全流量と比較して一般的に小さい。
【0043】
供給ガスをCVDチャンバに供給するために、適切なマニホールドを使用することもできる。CVDチャンバは、例えば図解の実施形態で説明されているような枚葉式、水平ガス流CVDチャンバなど、枚葉式反応装置であることが好ましい。最も好ましいCVDチャンバは、枚葉式、単一パス、水平層流ガス流反応装置であり、放射によって加熱されることが好ましい。この種類の適切な反応装置は市販されており、好ましいモデルには、ASM America、Inc.Phoenix(米国アリゾナ州)から販売されているEpsilon(商標)シリーズの枚葉式反応装置が挙げられる。本明細書において説明する方法は、シャワーヘッド型設備など、代替のリアクタも使用することができるが、均一性の向上および堆積速度の増加の利益は、Epsilon(商標)チャンバの水平の、単一パス層流ガス流配置において、回転基板を使用し、特に短いガス滞留時間において、特に有効であることが判明した。CVDは、プラズマ生成物(遠隔プラズマ発生装置のin situまたは下流)をチャンバに導入することで行うこともできるが、上記のように熱CVDが好ましい。
【0044】
塩素およびトリシランは、シリコン前駆物質だけの場合のシランの標準的使用に比較して、相対的に高いトリシラン流量および相対的に低い水素流量を使用して、水素キャリアガスと一緒に堆積反応装置に導入するのが好ましい。例えば、好ましい実施形態において、熱CVDは、Epsilon E2500(商標)、E3000(商標)またはE3200(商標)反応装置システム(ASM America、Inc.Phoenix(米国アリゾナ州)から市販されている)中で、トリシラン流量約5mg/分〜2,000mg/分、より好ましくは約10mg/分と約200mg/分を用いて実施される。水素流量は、約40標準リットル/分(slm)またはそれ未満、好ましくは10slmまたはそれ未満、より好ましくは5slmまたはそれ未満でよく、堆積温度は約450℃〜約700℃の範囲、より好ましくは約500℃〜約650℃の範囲でよい。図26〜27に関して以下でより詳細に説明するように、ある実施形態において、トリシラン/塩素ガスを用いての選択的堆積中に、水素ガスは最小化することが好ましい。塩素流量は、約20〜200sccmであることが好ましい。実験は、トリシラン流25〜400mg/分、H2キャリアガス流量0〜4slm、および塩素流量25〜200sccmで実施した。ドーパント前駆物質(例えば、炭素ソース、ゲルマニウムソースおよび/または電気的に活性なドーパント前駆物質)流量は、ドーパントソースの性質および他の成分の相対的流量に依存して、一般的に約5sccm〜約500sccmの範囲である。例えば、ホスフィンドーピングに関し、ドーパント水素化物(前駆物質)流量は、ホスフィン(H2中の1%PH3)で10〜200sccmであることが好ましい。
【0045】
熱CVDは、結晶性Si含有膜を基板上に選択的に堆積させるのに有効な基板温度で行うのが好ましい。熱CVDは、好ましくは約350℃〜約900℃、より好ましくは約500℃〜約800℃、さらに一層好ましくは約500℃〜約700℃の温度範囲で行われる。好ましい低温トリシラン/塩素堆積実施形態において、熱CVDは、好ましくは約500℃〜約600℃、より好ましくは約525℃〜約575℃の範囲の温度において行われる。好ましい中間温度トリシラン/塩素堆積実施形態において、熱CVDは約700℃〜約800℃の温度範囲で行われる。1つの実施形態において、化学気相成長条件は、トリシランに関して、実質的に質量移行制御堆積条件と実質的に反応速度論的制御堆積条件の間のほぼ転移温度である温度を含む。このようなトリシラン堆積条件は、参照により本明細書に組み込まれている、特にトリシラン堆積条件を説明することを目的とした、米国特許第6,821,825号において説明されている。PECVDは、約300℃〜約700℃の温度範囲で行うことが好ましい。当業者は、これらの温度範囲を、例えば、熱経済性の保持、堆積速度、チャンバの寸法の違い、枚葉式およびバッチ反応装置を含めた、好ましい全圧および分圧などの現実の製造のリアリティを考慮して調節することが可能である。一般的に、分圧が高くなると、所望の結果、それが堆積速度、層の品質または2つの組合せであっても、を得るためにはより低い温度を必要とする。基板は、例えば抵抗加熱、ランプ加熱など、当該技術において知られている様々方法で加熱することができる。
【0046】
様々な供給ガス成分の相対量は、結果として得られるSi含有膜の所望の組成および使用する堆積条件(例えば、温度、圧力、堆積速度など)に基づき、広範囲に変化させることもでき、本明細書に設けられたガイダンスを考慮した日常の実験により決定することもできる。供給ガス成分は混合し、次いでチャンバまたは基板に送出することもできるし、あるいは、例えば供給ガス成分を別個にCVDチャンバに供給し、基板においてまたは基板の近くで成分を混合して供給ガスを形成することもできる。
【0047】
図11〜16は、トリシランを用いて行った堆積実験の結果を要約する。当業者は、図11〜16に示すデータは、特定のトリシラン/塩素選択的堆積の用途のための様々な堆積パラメータを選択する有用なガイドであることを見出すであろう。
【0048】
図11は、H2キャリアガス流が増加すると、温度約650℃およびそれ未満の堆積(成長)速度が減少することを示すプロットである。これに対して、約750℃より高い温度では、堆積速度はH2キャリアガス流が増加すると増加する傾向を示し、H2キャリアガス流の増加および/または圧力の低下は、枯渇効果が減少する傾向を示す。図26〜27に関して、下記においてより詳細に説明するように、幾つかの実施形態において、システム中の水素ガスを最小化することが望ましく、水素ガスを、キャリアガスおよび/またはドーパントガスの希釈剤としての非水素不活性ガスと置換することが望ましい。
【0049】
図12Aは、トリシラン流が増加すると堆積速度が増加することを示すプロットである(1Torr、650℃、0.33〜3.3slmH2キャリアガス、塩素なしにおいて得られたデータ)。約150nm/分の堆積速度は、約100mg/分以上のトリシラン流量で得られた。図12Bは、それを示すプロットである。
【0050】
図13は、塩素の使用なしにおけるSiO2(非単結晶)上のトリシラン堆積速度が顕著であり、温度を上昇させると上昇することを示すプロットである(1Torr堆積圧力、トリシラン流量50mg/分、H2キャリアガス0.33slm、塩素なし、成長速度は単位nm/分で得られたデータ)。
【0051】
図14A〜Dは、所定の温度において、トリシラン堆積速度が、一般的にチャンバ圧力が上昇すると増加すること、そして特定の温度範囲において、圧力変化に対する感受性が低いことを示すプロットである。
【0052】
図15は、より高いドーパント流が抵抗率を減少させることを示すプロットである。データは、トリシランおよびホスフィンを、550℃および16Torrにおいて使用して得られたものである。x軸上のホスフィン流量は、H2中の1%ホスフィンの標準立方センチメートル/分(sccm)の単位である(本明細書においては「ドーパント数」または「DN」と称する)。得られた極度に低い抵抗率は、トリシランおよび塩素を使用するin situの選択的堆積によって、極めて高いドーパントの取込み水準が得られ得ることを示している。約50DN以上の流量においてヘーズは観察されなかった。
【0053】
図16Aは、堆積温度が上昇すると酸化物上の堆積速度が減少する傾向にあることを示すプロットである(8Torr堆積圧力、トリシラン流50mg/分、H2キャリアガスなし、塩素200sccm、酸化物基板上の成長速度単位がnm/分で得られたデータ)。トリシラン堆積速度は、一般的に温度の上昇に伴って増加する傾向にあるので(図14A参照)、図16Aで示されたデータは、トリシラン/塩素の堆積選択性が堆積温度の上昇に伴って上昇していることを示している。図16Bは、この一連の実験に用いられた堆積条件(550℃、16Torr、主キャリアガス流なし)の下で、単結晶シリコン上の堆積が、酸化ケイ素(SiO2)および窒化ケイ素(Si3N4)に対して実質上100%選択性であるCl2/トリシラン流量比を示すプロットである。ヘリウムが、バブラー中に供給されたトリシランを蒸発させるためのキャリアガスとして使用された(トリシラン25mg/分においてHe60sccm、トリシラン50mg/分においてHe120sccm、およびトリシラン100mg/分においてHe240sccm)。堆積は、図16Bにプロットされた線の上側に示されるより高いCl2/トリシラン流量比条件において、酸化ケイ素および窒化ケイ素に対して実質上100%の単結晶シリコン選択的であり、図16Bにプロットされた線の下側に示されるより低いCl2/トリシラン流量比条件において、100%未満の選択性である。図16Bは、所定の水準の選択性を達成するためにトリシラン流量は増加されるにつれて、より高い相対塩素流量が好ましいことを示している。
ドープSi含有膜
有利なことに、トリシランからの堆積は、選択的であってもなくても、炭素の極めて高水準も達成できる。高水準のシリコンへの置換炭素の取込みは、選択的であってもなくても、トリシランおよび炭素ソース(および幾つかの実施形態において、電気的に活性なドーパントのための必要に応じたドーパント前駆物質)を使用して、相対的に高い成長速度における堆積を行うことによって得ることもできる。図17A〜Dは、トリシラン、炭素ソース(図解した実施形態ではMMS)およびIII/V族ドーパントソース(図解した実施形態ではアルシン)を用いて堆積した、電気的にドープしたSiC膜の性質に対する温度および成長速度の影響を示す。図17A〜Dは、非選択的方法における炭素取込みを示すが、塩素追加による選択的方法、特にドーパント水素化物の組合せにおいても、類似の結果を得ることもできる。図17Aは、膜成長速度への温度の影響を示すアレニウスプロットである。図17Bは、置換炭素含有量への堆積温度の影響を示す別のアレニウスプロットで、置換炭素のより高い水準は、一般的により高い堆積温度において得られることを示している。好ましい堆積条件下で、置換炭素取込み水準は、約1.0原子%〜約3.5原子%の範囲とすることができる。図17Cは、成長速度の置換炭素含有量および抵抗率への影響を示すプロット(堆積温度の関数、図17A参照)であり、より高い置換炭素水準およびより高い抵抗率は、一般的により高い成長速度において得られることを示している。図17Dは、温度の抵抗率への影響を示す別のアレニウスプロットで、より高い抵抗率の水準は、一般的により高い堆積温度において得られることを示している。
【0054】
当該分野において知られているように、単結晶シリコンの格子定数は、約5.431Åであり、一方ダイヤモンド形態の単結晶炭素は、炭素原子のサイズが小さいことに起因して、3.567の格子定数を有する。したがって、炭素原子が置換するシリコン原子よりも小さいため、炭素を用いた置換型ドーピングによって、単結晶シリコンに引っ張りひずみが導入され得る。置換的にシリコン内にドープされる炭素の量は、ドープされたシリコンの垂直格子間距離をX線回折により測定し、次いでベガードの法則(Vegard‘ law、単結晶シリコンと単結晶炭素の間の線形補間)を適用することによって決定することもできる。ベガードの法則および置換炭素水準、格子間隔およびひずみの相関関係は、当業者に知られている。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、Judy L.Hoyt著「置換炭素の組込みと、Si1−yCy/SiおよびSi1−x−yGexCy/Siヘテロ接合の電子的特徴(Substitutional Carbon Incorporation and Electronic Characterization of Si1−yCy/Si and Si1−x−yGexCy/Si Heterojunctions)」、第3章「シリコン−ゲルマニウム炭素合金」、TaylorおよびFrancis、NY(米国)p.59〜89、2002年を参照されたい。Hoytによる上記論文の73頁、図3.10において図解されているように、従前の堆積方法は、2.3%までの置換炭素含有量を有するシリコンを備えており、これは5.4Åを超える格子間隔と1.0GPa未満の引っ張りひずみに相当する。図3.10は、またドープシリコン中の全炭素含有量は、SIMSによって決定することもできることを示しており、それ故、非置換炭素含有量は、全炭素含有量から置換炭素含有量を差し引くことによって決定することもできる。
【0055】
炭素ドープ単結晶Si含有膜は、さらに例えばリンおよび砒素からなる群から選択されるドーパントなどの、電気的に活性なドーパントを含むこともできる。一般的に、置換炭素の存在は散乱をもたらし、置換炭素を含有しない他の類似の電気的にドープした単結晶Si含有膜に比較して抵抗率を増加させる傾向がある。しかしながら、本明細書で説明するようにトリシランを使用してドープした場合、驚くべきことに、このような電気的にドープした単結晶Si含有膜が、炭素の存在にもかかわらず、依然として低い抵抗率を有していることが見出された。例えば、電気的ドーパントでドープされた場合(好ましくは置換型でドープされた場合)、置換炭素を含む単結晶Si含有膜は、約1.0mΩ・cm以下、好ましくは0.7mΩ・cm以下の抵抗率を有することもできる。実験において、約5.323Å(X線回折で測定して)の格子間隔が、トリシラン、アルシンおよびモノメチルシランから堆積したSiC(炭素で置換的にドープしたシリコン)に関して達成された。格子間隔5.323Åは、約3.25%の置換炭素の水準に相当する。基礎をなすシリコンテンプレート(例えば、格子間隔約5.43Å)に対して拘束される場合、このようなSiC層における引っ張り応力は2.06GPaに達する。より一般的に、作り出される応力は、1GPaと3GPaの間であることが好ましい。シリコンの自然の格子定数からの逸脱は応力を導き、相当するひずみは半導体中の電気的キャリアの移動度を有利に改良し、デバイス有効性を改良する。SiCがその材料の臨界厚さ未満に堆積した場合、堆積層は引っ張り応力を残存させる。ある実施形態において、電気的にドープしたSi:CまたはSiGe膜は、ひずみが隣接層に作用するように構成される。例えば、圧縮応力は、電気的にドープした弛緩したSi:C層上に堆積したシリコン膜上に作用することもある。ある実施形態において、陥凹したソース/ドレイン領域中に選択的に形成された電気的にドープされたSi:C膜が、以下においてより詳細に説明するように、引っ張り応力をソースおよびドレイン間に形成されたシリコンチャンネル上に作用する。このような形状は、例えばNMOSデバイスに関する電子移動度の改良など、様々な用途に使用することができる。
【0056】
図1〜5の実施形態において、SiC層は陥凹したソース/ドレイン20中に選択的に形成され、応力を維持する条件(厚さ、温度)の下で好ましく堆積される。SiC材料のより小さい格子定数が、S/D陥凹を充填して引っ張り応力をそれらの間のチャンネル領域22に作用する。トリシラン、塩素および炭素ソースに加えて、ドーパント水素化物を供給ガスに加えることが好ましい。アルシンまたはホスフィンを使用するのが好ましい。ある実施形態は集積回路を形成する方法を提供し、この方法は、露出半導体表面および絶縁領域を画定するために基板をパターン化し、トリシランおよび塩素ガスを供給し、これによってエピタキシャル膜を露出した半導体表面上に選択的に堆積させることを含む。トリシランおよび塩素ガスは混合して、例えば化学気相成長条件下で、基板と接触して膜を堆積させるための供給ガスを形成することもできる。供給ガスの様々成分の2つ以上を、同時にまたは段階的に、どの順序で混合することもでき、供給ガスをチャンバに供給する前でもまたは後でも混合することもできる。したがって、例えば、塩素ガスおよびトリシランの供給は、基板での混合、または事前に混合して供給ガスを形成し次いで例えばキャリアガスを使用して基板に運ぶことを含むこともできる。ドーパントソース(例えば、炭素ソース、ゲルマニウムソースおよび/または電気的に活性なドーパント前駆物質)などの他の添加ガスを、供給ガスを形成するために混合することもできる。ドーパントソースは、トリシランおよび塩素と一緒に供給し、ドープしたエピタキシャル膜を露出した半導体表面上に選択的に堆積させることもできる。例えば、図1〜5の実施形態において、炭素またはゲルマニウムソースは、トリシランおよび塩素と一緒に供給される。
【0057】
ある実施形態において、炭素ソースはトリシランおよび塩素と一緒に基板に供給され、置換炭素を含むSi含有膜を選択的に堆積させる。置換炭素の量は、好ましくは約1.0原子%以上、より好ましくは約1.5原子%以上である。選択的に堆積した炭素−およびSi含有膜は、5.38Å以下、好ましくは約5.36Å以下、より好ましくは約5.34Å以下の格子間隔を有する単結晶シリコン膜であってよい。このような単結晶シリコン膜は、さらに電気的に活性なドーパント(リンまたは砒素など)を含むこともできる。電気的に活性なドーパントでドープ(好ましくは置換型ドープ)した場合、置換炭素を含む選択的に堆積した単結晶シリコン膜は、約1.0mΩ・cm以下、好ましくは約0.7mΩ・cm以下の抵抗率を有することもできる。このような置換炭素を含む単結晶シリコン膜は、塩素、トリシラン、炭素前駆物質、および場合によっては電気的に活性なドーパントのためのドーパント前駆物質を使用して、相対的に高速度の堆積方法により、選択的に堆積させることもできる。図18Aは、炭素および砒素の両方を用いて置換的にドープしたシリコン膜に関する成長速度(1分間当たりのナノメートル、nm/分)の関数としての置換炭素の割合を示すプロットである。プロットは、またこれら膜の抵抗率(単位は、左側軸のmΩ・cm)を示す。図18Bは、トリシラン流(単位は1分間当たりのミリグラム、mg/分)の関数としてのこれら膜の成長率を示す。
【0058】
図18Aおよび18Bは、トリシランおよび塩素を使用して、例えば、少なくとも約5nm/分の相対的に高い堆積速度すなわち成長速度において選択的堆積を実施することにより、高水準の置換炭素を達成し得ることを示している。炭素含有量と抵抗率は、共に堆積速度が増加すると改良される、換言すればトリシランの使用により改良される。図18Aおよび18Bにおいて図解するように、例えば、トリシラン流量および温度を制御することよって、成長速度を制御することもでき、例えば、2.5%以上の置換炭素、好ましくは2.6%以上の置換炭素、より好ましくは2.7%以上の置換炭素など、様々な水準の炭素を含む単結晶膜を生成する。幾つかの実施形態において、単結晶膜は、図18Aおよび18Bにおいて示されるように、例えば、2.8%以上の置換炭素、好ましくは2.9%以上の置換炭素、より好ましくは3.0%以上の置換炭素など、さらに高い水準の炭素を含むこともできる。
【0059】
図19は、1.8%炭素でもって置換的にドープした結晶性シリコン膜(厚さ200nm)に関するFTIRスペクトルの一部分を示す。約605波数における強い吸収は、シリコン膜中に置換炭素が存在することを実証している。約450〜500の波数において幅広の吸収バンドがないことは、シリコン膜は、(例えあったとしても)極少量の非置換炭素しか含有していないことを実証している。したがって、ある実施形態は、2.4%以上の置換炭素を含む選択的に堆積した単結晶シリコン膜を提供し、この膜は、約0.3%未満の非置換炭素、好ましくは約0.25%未満の非置換炭素、より好ましくは約0.20%未満の非置換炭素、より一層好ましくは約0.15%未満の非置換炭素を含んでいる。前述の通り、単結晶膜中のドーパント(炭素、ゲルマニウムまたは電気的に活性なドーパントなど)の割合は、本明細書においては、特段の注記がない限り全体の膜に対する原子%で表示される。
【0060】
本明細書において説明するような置換炭素を含む、選択的に堆積した単結晶シリコン膜の厚さは、臨界膜厚未満であることが好ましい。当業者は、臨界膜厚は、張力を有する膜が特定の一連の条件下で、弛緩する膜厚であることを理解している。置換ドーパントの濃度が増加すると、一般的に臨界厚は減少する。臨界厚未満の厚さを有する膜には、これらの条件下で、一般的に張力が残存している。例えば、約1.8%の置換炭素を含む単結晶シリコン膜は、約500℃において約200nmの臨界厚さを有することもできるが、これに対して3.5%の置換炭素を含む他の類似の膜は、その温度において、約25〜30nmの臨界厚さを有することもできる。その膜に関する臨界厚未満の厚さを有する膜は、十分不安定な状態でない場合または十分不安定な状態に達するまで張力が残存する傾向を示す(例えば、十分な熱に曝すと弛緩する)。
【0061】
上記で説明し、図18Aおよび18Bで図解したように、塩素およびトリシランを炭素ソースと共に使用して、少なくとも約5nm/分、好ましくは少なくとも約10nm/分の堆積速度で膜を堆積させることによって、相対的に高い水準の置換炭素を選択的堆積シリコン膜に組み込むこともできることが発見された。本明細書で説明し、図17および20〜24で図解したように、選択率、堆積速度、および得られたシリコン膜に組み込まれる置換炭素の水準を制御するために、様々な堆積パラメータを使用することができる。
【0062】
図20Aは、3つの異なるキャリアガス(H2)流量に関し、チャンバ圧力の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。図20Aおよび20Bに示すデータは、堆積温度550℃、トリシラン流量200mg/分、およびMMS(炭素ソース)流量180sccmにおいて得られたものである。図20Aは、より高い置換炭素の水準が、これらの条件下で、相対的により高いチャンバ圧力および相対的により低いH2キャリアガス流において達成できることを示している。図20Bは、3つの異なるキャリアガス(H2)流量に関し、チャンバ圧力の関数としての成長速度のグラフを示し、これら条件下で、最も高い成長速度が、約40Torr〜約70Torrの範囲のチャンバ圧力で達成され、より高い成長速度がより低いH2キャリアガス流量で得られたことを示している。
【0063】
図21Aは、トリシラン流量の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。図21Aおよび21Bに示すデータは、堆積温度550℃、チャンバ圧力15Torr、キャリアガス(H2)流量20slm、およびMMS流量180sccmにおいて得られたものである。MMS流量を一定として、トリシラン流量を変化させたので、図21Aは、トリシランのMMSに対する流量比を変化させた場合の置換炭素含有量への影響を図解している。トリシランの炭素ソースに対する流量比を増加させると、得られる膜中の置換炭素の量が減少する。
【0064】
図21Bは、堆積速度(成長速度)の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量を示す。図21Bは、これら条件下で、5nm/分の成長速度において相対的に高い水準の置換炭素を達成することもできることを図解している。トリシランの炭素ソースに対する流量比が増加する(これによって、膜への取込みに利用できる相対的炭素の量が減少する)ため、(より高いトリシラン流量に起因する)より高い成長速度は、これら条件下では、(図18Aに比較して)より高い置換炭素をもたらさない。
【0065】
図22は、(上で説明した図21に比較して)一定のトリシラン流量におけるMMS流量の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。図22中のプロットしたデータは、これらの条件下で、より高いMMS流量においてより高い置換炭素水準が得られることを示している。トリシラン流量を一定にしてMMS流量を変化させたため、図22は、炭素ソース(MMS)のトリシランに対する流量比を変化させた場合の置換炭素への影響を示している。MMSのトリシランに対する流量比が増加すると、得られる膜中の置換炭素の量が、図21に示された結果により、相対的に直線的に増加する。
【0066】
図23Aは、トリシランの炭素ソースに対する比を一定に維持し、一方では両方のガス流量を同時に増加させることによって成長速度を増加させた場合の影響を図解している。図23Aに示されたデータは、堆積温度約550℃およびキャリアガス(H2)流量20slmにおいて得られたものである。図23Aは、より高い水準の置換炭素がより高い成長速度において達成されること、より高い成長速度がより高いチャンバ圧力およびより高い総体的流量において得られること、より高い実質的炭素が、所定のトリシラン対炭素前駆物質比において、より高い成長速度において得ることができることを実証している。図23Bは、成長速度がトリシラン流量の強力な正の関数であること、チャンバ圧力が相対的に少なめの影響しか有していないことを示している。したがって、総合すれば、図20〜23は、その下で単結晶シリコン中の置換炭素の高水準を達成するために使用することもできる高堆積速度の様々な条件を図解している。
【0067】
少なくとも2.4%の置換炭素を含む単結晶シリコン膜を選択的に堆積させるための化学気相成長条件は、実質的に質量移行制御堆積条件と実質的に反応速度論的制御堆積条件の間のほぼ転移温度である堆積温度を含むことが好ましい。このような堆積温度は、図17Aに垂直の点線で示してある。図17Aに示すグラフは、堆積温度の逆数の関数としての成長速度のプロットである。点線で示される転移温度は、グラフに示すデータを作り出すのに使用された堆積条件下で、約550℃である。点線で示される転移温度より高い温度(すなわち、点線の左側)において、堆積条件は実質的に物質輸送に制御される。一部の例では、約550℃より高い堆積温度において、膜品質のある側面が低下することもある。点線で示される転移温度より低い温度(すなわち、点線の右側)において、堆積条件は実質的に反応速度論的に制御され、相対的により高い炭素ソース流量を使用することもできる。転移温度の位置は、例えばチャンバ圧力およびキャリアガス流量を変えるなど、堆積条件を操作することによって変えることもできる。一部の実施形態において、化学気相成長条件は、約500℃〜約600℃の範囲の温度を含む。一部の実施形態において、化学気相成長条件は、少なくとも約500mTorrの、好ましくは少なくとも約30Torr、例えば約30Torr〜約200Torrの範囲のチャンバ圧力を含む。
【0068】
置換炭素を、選択的堆積Si含有膜に組み込ませるための上で説明した方法は、電気的に活性なドーパントなど、他のドーパントを使用する置換型ドーピングに使用することもできる。高水準の置換型ドーピングを、特にシリコン膜もまた炭素で置換的にドープされた場合、低い抵抗率を有する選択的堆積シリコン膜に対して使用することもできる。
【0069】
トリシランおよび塩素からの選択的堆積は、SiGe層にひずみを作り出すための、ゲルマニウムをエピタキシャル膜に置換的に組み込むことに対しても有効であるので有利である。好ましい堆積条件下で、例えば、ひずみをチャンネルに作用するための、ゲルマニウムの組込み水準は、約1%と99%の間、一般的に約17%と50%の間、しばしば約20%と約50%の間、より具体的には約20%と40%の間とすることができる。
【0070】
当該技術分野において知られているように、単結晶シリコンの格子定数は約5.431Åであり、これに対して単結晶ゲルマニウムは、ゲルマニウム原子のより大きなサイズのために5.657の格子定数を有している。シリコンの自然の格子定数からの逸脱は、ひずみをもたらし、これが半導体中の電気的キャリアの移動度を改良し、デバイスの効率を有利に改良する。SiGeをその材料の臨界厚さ未満に堆積した場合、堆積した層は、圧縮的ひずみを残存しており、PMOSデバイスに関してホール移動度が改良される。この場合、堆積したSiGe層は全活性領域上に選択的に形成することができ、チャンネルを画定することができ、または引っ張りひずみを有するSi層をその上に形成するための弛緩テンプレートとして働くことができ、それ自体がチャンネル領域として役立つことができる。
【0071】
置換炭素をSiGeに組み込むための上述の方法は、またSiGe中の圧縮的ひずみを低減するため、または、例えば本質的に約3.5原子%の置換炭素、約35原子%Ge、および約61.5原子%のシリコンからなる合金のような、ひずみなしの三元SiGeC合金を生成するために使用することもできる。
【0072】
図1〜5の実施形態において、SiC層は、陥凹したソース/ドレイン領域20中に選択的に形成され、応力を維持する条件(厚さ、温度)下で堆積されるのが好ましい。S/D陥凹を充填しているより小さな格子定数のSiC材料は、引っ張りひずみをそれらの間のチャンネル領域22に作用させる。しかしながら、ある実施形態において、SiGe層がSiCの代わりに陥凹したソース/ドレイン領域20中に選択的に堆積される。S/D陥凹を充填しているより大きな格子定数のSiGe材料は、圧縮ひずみをそれらの間のチャンネル領域22に作用させる。またアルシンまたホスフィンを使用することが好ましい。上記で説明したように、ある実施形態は、集積回路を形成する方法を提供し、この方法は、露出半導体表面および絶縁領域を画定するために基板をパターン化し;供給ガスを基板に供給し、これによってエピタキシャル膜を露出した半導体表面上に選択的に堆積し、ここにおいて供給ガスが、トリシラン、塩素、およびドーパントソース(場合によっては、キャリアガスなどの他のガス)を混合することによって形成されることを含む。好ましい実施形態において、ドーパントソースはゲルマニウムソースおよび必要に応じて電気的に活性なドーパント前駆物質であり、これはトリシランおよび塩素ガスと一緒に基板に供給され、ドープエピタキシャル膜を、露出した半導体表面上に選択的に堆積させる。
【0073】
別の実施形態において、トリシランおよび塩素は、電気的ドーパントと一緒に基板に供給され、これによって電気的にドープしたシリコン膜を基板上に堆積させる。したがって、実施形態は、チャンバ内に配置された基板を提供し;塩素、トリシランおよびドーパント前駆物質を、化学気相成長条件下で、チャンバに導入し、このドーパント前駆物質が電気的に活性なドーパントを含み;単結晶シリコン膜を、少なくとも約5nm/分の堆積速度において基板上に堆積させることを含む、単結晶シリコン膜を選択的に堆積させるための方法を提供する。選択的に堆積した単結晶シリコン膜は、約1.0mΩ・cm以下の抵抗率を有することが好ましく、少なくとも約3×1020cm−3の置換ドーパント、好ましくは少なくとも約4×1020cm−3の置換ドーパント、より好ましくは少なくとも約5×1020cm−3の置換ドーパントを含んでいる。電気的に活性なドーパントの水準および種類は、特定の用途に関して所望される場合、1.0mΩ・cm以下、例えば0.9mΩ・cm以下、好ましくは0.8mΩ・cm以下、より好ましくは0.7mΩ・cm以下となるように得られたドープシリコン中の抵抗率の値を生じるように変更することもできる。適切なドーパント前駆物質を使用することによって、この方法は、n型ドーパントまたはp型ドーパントを含有するシリコン膜を生成するために使用することもできる。好ましくは、n型ドーパントは、カーボンドープシリコン膜で使用される。適切なドーパント前駆物質およびドーパントの例については、上記で説明した。堆積速度は、図25で図解すように、例えば少なくとも約10nm/分まで、少なくとも約20nm/分までなど、増加させることもできる(以下で説明)。
【0074】
ゲルマニウムまたは電気的に活性なドーパントで置換的にドープされたシリコン膜を選択的に堆積するのに適した化学気相成長条件は、炭素で置換的にドープしたシリコン膜の堆積に関して上記で説明したCVD条件と一般的に適合する。したがって、ある実施形態は、炭素および電気的に活性なドーパントでドープした、選択的に堆積した単結晶シリコン膜を提供する。別の実施形態は、ゲルマニウムおよび電気的に活性なドーパントでドープした、選択的に堆積した単結晶シリコン膜を提供する。
【0075】
図24は、トリシランを使用して堆積した一連の膜の、ドーパント前駆物質(アルシン)流の関数としてのドープシリコン膜抵抗率のプロットである。図24は、アルシン流の関数としての膜抵抗率は、最低点を通過するので、抵抗率の低減は、単にドーパント前駆物質の流量を増加させるだけでは必ずしも達成されないという一般的な命題を示している。本発明は、理論に拘束されるものではないが、抵抗率の増加は、電気的に不活性なドーパントの部分の組込みが増加することによるものであろうと考えられている。
【0076】
図25Aは、トリシランのアルシンに対する一定流量比における、成長速度の関数としての、一連の堆積膜に関するドープシリコン膜の抵抗率のプロットである(図15も参照されたい)。図25Bは、トリシランおよびアルシンの流量の関数としての、膜堆積速度のプロットである。図25は、特定の一連のデータ内で、トリシランの置換ドーパント前駆物質(図23ではMMS、図25ではAsH3)に対する一定の流量比が使用されており、ある意味で図23に類似している。図25Aは、約1.0mΩ・cm以下のシリコン膜抵抗率の値が、トリシランを使用して、例えば少なくとも約5nm/分、より好ましくは少なくとも約10nm/分の相対的に高い速度において堆積を行うことによって達成できることを実証している。図25Bにおいて図解するように、ドープシリコン膜の成長速度は、実質上トリシランの流量の一次関数である。
【0077】
図15、23および25は、トリシランの使用が、相対的に高速度の堆積を可能にする、言い換えれば驚くべき高水準の置換的ドーピングを可能にすることを実証している。リン、炭素、および砒素の間の公知の違いにもかかわらず、図15、23および25間の類似性は、本明細書で教示されたようなトリシランを使用する堆積方法は、ドーパントまたはドーパント前駆物質の性質に対して相対的に感受性が低いことを実証している。したがって、本明細書で説明するトリシランを使用する選択的堆積方法は、広範囲な様々なドーパント(例えば、置換炭素、電気的に活性なドーパントなど)に適用可能であり、これらドーパントの、多種多様なSi含有材料(例えば、Si、SiC、SiGe、SiGeCなど)への組込みに適用可能である。特定のSi含有材料に適用可能な堆積条件に対して日常の実験を使用することもできる。
塩素のドーパント水素化物ゲッタリング
in situドーピングは、特に枚葉式処理において、CVDチャンバの望ましくない汚染のためにしばしば回避される。p型(例えばホウ素ドープ)およびn型(例えばリンドープまたは砒素ドープ)の両方の用途に有用な真性半導体の堆積によって、経済性を達成することができる。層は、別個のプロセスツールにおいて、埋込みまたは拡散によって簡単にドープされる。さらにドーパント拡散にバッチ処理を使用することができるので、処理能力は追加のドーピングステップによって大きく影響されない。
【0078】
しかしながら、塩素ガスを使用する好ましい選択的方法に関し、ドーパント水素化物をプロセスフローに添加することによって、改良された層表面品質が見出された。これは、ドーパント水素化物が表面において塩素に関する優れたゲッターとして働き、(純)HClおよびドーパント塩化物を形成し、前駆物質ガスが高品質エピタキシャル堆積のために表面にアクセスするのを可能にしたと考えられる。
【0079】
トリシランおよび塩素を使用するSi含有膜の堆積は、本明細書で説明するように行った場合、従来のシリコンソースの使用を超えて著しい利点を提供することができる。例えば、所定の堆積温度において、トリシランを使用するSi含有膜の堆積は、トリシランの代わりにシランを使用した場合より著しく速い速度において好ましく進行する。好ましい実施形態は、トリシランを基板表面に約50〜200mg/分の送出速度で送出する高速度堆積方法を提供する。熱CVD条件下で、好ましくは約500℃〜約800℃の範囲の堆積温度において、この実施形態を実施することによって、結果としてSi含有材料の、好ましくは約50Å/分以上、より好ましくは約100Å/分以上、最も好ましくは約200Å/分以上の(他のシリコンソースと比較して)相対的に速い堆積が得られる。またドーパント水素化物ソースは、表面品質を改良しin situドーピングを提供するために、トリシランおよび塩素と一緒に表面に送出することが好ましい。
【0080】
好ましいSi含有膜は、膜の表面を横断して極めて均一な厚さを有している。パターン化したまたは混合した基板上に(特に、半導体および酸化ケイ素かまたは窒化ケイ素上に)、本明細書で説明するように(例えば、ドーパント水素化物ゲッターの存在下において)堆積を行った場合、得られたSi含有膜に関する非均一厚さの割合は、好ましくは約2%以下である。膜の平均厚さに基づく、非均一厚さの割合に関する追加の値は、下の表1に示すようであることが好ましい。表1に示す非均一厚さ%のそれぞれの値は、その前に「約」という言葉が付いているかのように、理解されるものとする。
【0081】
【表1】
【0082】
一般的に、特定の一連のプロセス条件下で堆積した膜に関する膜厚均一性の測定は、約200mm〜約300mmの直径を有する均一または混合基板上に膜を堆積することによって行うことができる。膜厚均一性は、ランダムに選択した直径に沿った複数の厚さ測定点(ウエハ周囲における3mm以内の除外ゾーンでは測定しない)を構成し、様々な厚さ測定値を平均化することで平均厚さを決定し、二乗平均平方根(rms)の変動を決定することによって決定される。膜厚測定のための機器は、ThermawaveからのOptiprobe(商標)を使用することが好ましく、好ましい測定方法は、このような機器を使用して、ランダムに選択したウエハ直径に沿って49点において膜厚さを測定することを含む。実際には、厚さの変動は、通常このような測定に続いて機器から直接得ることができるので、手動で計算する必要はない。比較を可能にするため、計算によりrms厚さ変動を平均厚さで割って100倍し、結果を百分率で表現して、非均質%で表現することもできる。例えば、その上に1つまたは複数の追加の層が適用されている膜、またはその中に集積回路を含んでいる膜などの、このような測定が適用できない表面を有する膜の厚さ均一性の測定の場合は、切断して電子顕微鏡で厚さを測定する。膜厚を、横断面の最も薄い部分と最も厚い部分において測定し、これら2点の間の厚さ測定値の範囲(例えば、±6Å)を2つの測定値の合計で割ることで測定する。この非均一性は、本明細書では百分率で表現する。
【0083】
加えて、本明細書で説明する方法に従って(例えば、ドーパント水素化物ゲッターの存在下において)作製した、他のエレメント(例えば、ドープシリコン、Si含有SiCおよびSiGe合金、およびドープSi含有合金)を含有する好ましい結晶性Si含有膜の組成上の均一性が、トリシランを使用しないで作製した対応する膜に比較して著しく改良される。本発明は、いかなる動作理論にも拘束されるものではないが、Si含有膜が、例えば、シラン、DCSまたはTCSなどの従来の前駆物質を使用した、対応するSi含有膜より良好な、ある程度の組成上の均一性を有していると考えられる。さらに、相対的に高水準の非シリコン成分を含有する結晶性Si含有合金を、本明細書で説明する方法によって調製することができる。例えば、結晶性SiGeは、好ましくは約10原子%以上のGe、より好ましくは約20原子%以上のGe、さらにより好ましくは約30原子%以上のGeを含有する。Si:Cは、約1%と約3.5%の間の炭素を含有していることが好ましい。
非水素キャリアガス
本発明の別の態様により、非水素キャリアガスは、ハロゲン含有エッチャントガスおよびトリシランガスと組み合わせて使用するのが好ましい。ハロゲン含有エッチャントガスは、塩化水素(HCl)、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)および/または塩素などの塩素含有エッチャントガスでよい。水素ガス(H2)は、半導体処理のための蒸気堆積、特にエピタキシャル堆積において使用される、最も一般的なキャリアガスである。H2が最も一般的であるのには幾つかの理由がある。H2は高純度で供給することができる。さらに、水素の熱的性質は、ウエハに他の不活性ガスが影響するよりもより大きな熱的効果がある。加えて、水素は還元剤として働く傾向があるので、反応チャンバの完全とは言えない密封の結果生ずる自然酸化膜の形成に対抗する。
【0084】
しかしながら、本発明は、上記のトリシラン/塩素堆積システムなどの、トリシラン/ハロゲン含有エッチャントガス堆積システムにおいて、非水素キャリアガスを使用することによる特別な利点を見出した。ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)または窒素ガス(N2)、あるいはこのような不活性ガスの組合せを、水素の代わりに使用することが好ましい。塩化水素を、例えばトリシラン流量約5mg/分、堆積温度が約675℃〜約700℃の範囲、塩化水素流量約2.2slm、堆積圧力約4Torr、希釈したホスフィン流量約200sccmおよびMMS(希釈していない)流量約6sccmを含む堆積条件を用いて、ある選択的堆積におけるキャリアガスとして使用することもできる。図解した実施形態においては、Heの熱的挙動がH2のそれに近いので、H2キャリアガスの使用から少ない調節で済むため、Heが使用される。
【0085】
前述のトリシラン/塩素/水素システムにおいて、以下を含めた多くの可能性のある反応機構がある。
(1)Si(s)+Cl2(g)→SiCl2(g) エッチング
(2)Si3H8(g)→H3SiSiH:(g)+SiH4(g) トリシラン解離
(3)H3SiSiH:(g)→H2Si=SiH2(g)
(4)SiH2(g)+SiCl2(s)→2Si(s)+2HCl(g) 堆積
(5)Si(s)+2HCl⇔SiCl2(g)+H2(g) 堆積とエッチングの平衡
(6)2PH3(g)→2P(s)+3H2(g) ドーピング
(7)PH3(g)+6Cl(s)→PC13(g)+3HCl(g) フリー表面部位
(8)C12(g)+H2(g)→2HC1(g)
比較:SiH2Cl2(g)→SiCl2(g)+H2(g) DCS分解
式(1)は、システムにおけるエッチング反応を表す。式(1)は、(選択性を維持するために必要な)エッチングを提供することに加えて、またシリコン堆積を生成する傾向のある式(5)の反応物質を生成する。式(5)は、右側への反応(エッチング)と左側への反応(堆積)の間のバランスを表す。絶縁表面上ではエッチングが優位であり、一方半導体ウィンドウ上では堆積が優位であるような条件が好ましい。理論によって制限されることを望まないが、十分な濃度の塩素ガスを供給して選択性のためのエッチングを生成し、一方では堆積を提供するためのSiCl2を生成することが望ましい。
【0086】
しかしながら、遊離H2がキャリアガスとして存在すると(すなわち、大量に存在すると)、反応(8)が起こり、HClを発生する。システム中のHClの濃度が増加すると、堆積/エッチング式(4)および(5)の両方をエッチングの方向に促進し、このようにして堆積速度をいずれかの所定の「調整」プロセスに押し下げる。調整プロセスは、そこにおいて反応物質濃度が選択的堆積を達成するように調整されている。
【0087】
式(7)は、また別の望ましい反応を示し、これはH2キャリアガスの存在によるHClの生成によって抑制される。式(7)は、ウエハ表面に吸着された塩化物のゲッタリングを示す。アルシン、ホスフィンおよびジボランなどのドーパント水素化物(式はホスフィンで示してある)は、表面の塩素原子と反応して揮発性の副産物を形成する傾向があり、このようにして表面反応サイトは、堆積のために解放される。しかしながら、式(4)および(5)と同様に、HCl濃度が増加すると、反応式(7)の平衡が左側に移行することにより、望ましいゲッタリング反応が抑制される。
【0088】
したがって、非水素キャリアガス(一般的にシステム中の優位ガスである)の使用は、式(8)によるCl2の消費を避け、これによって堆積反応(4)、(5)およびゲッタリング反応(7)の抑制を避ける。Violetteの論文(上記参考資料に組み込まれている)から再生した図26は、H2キャリアガスの添加が、彼らの研究のSi/Cl中の堆積反応物質SiCl2の濃度をどのように抑制するかを示している。H2を使用しないプロセスが好ましいが、H2を最小化する利益は、全体的排除なしでは得ることができないことに留意されたい。システム中の最大のガスのソースを表す主キャリアガスは、非水素であることが好ましい。ドーパント前駆物質(炭素ソース、ゲルマニウムソースおよび/または電気的ドーパント前駆物質など)は、好ましくは非水素キャリアガスで希釈される(例えば、He中の1%アルシン、He中の1%ホスフィン)。堆積の選択性は、堆積温度を増加させると増加する傾向を示すので(図16Aを参照されたい)、相対的に高い堆積温度(例えば、550℃超、より好ましくは約550℃〜約650℃の範囲)を、H2の最小化または排除と組み合わせて使用することが好ましい。
【0089】
図27は、ヘリウム、トリシランおよび塩素ガスを使用する、好ましい反応装置システム100を示す。図に示すように、清浄器102がヘリウムソース104の下流に置かれている。不活性ガス流の一部が、バブラー106の形態の蒸発器に分流し、キャリアガスが、蒸発器から蒸発したトリシラン108を運び出す。別な方法として、トリシランを単に加熱して、液体上の空間におけるトリシランの蒸気圧を増加させ、キャリアガスがこの空間を通過する際にトリシランを取り込むことができる。どの場合でも、液体反応物質ソース容器106の下流に分析装置110があり、ここで蒸気を通過する音の速さを測定することによって、流動ガスの反応物質濃度が決定される。この測定に基づき、ソフトウェア制御の下流質量流制御器(MFC)112に関する設定点は、分析装置110によって変えられる。このような分析装置は、市販されている。
【0090】
MFC112を通過する流れは、主キャリアガスMFC114を通過する主キャリアガスおよび他の反応物質と、堆積チャンバ122に向けた注入マニホールド120の上流のガスパネルにおいて合流する。別な方法として、流れは反応装置システム100内のどの点においても合流することができ、得られた供給ガスを基板に供給する。好ましくは塩素ガス130の、エッチャント種のソースも同様に供給される。図解した実施形態において、炭素132(モノメチルシランまたはMMSと図解されている)のためのソースおよびドーパント水素化物134(ホスフィンとして示されている)のためのソースも同様に供給される。
【0091】
図解されているように、反応装置システム100は、システム100の様々な制御可能な構成要素に電気的に接続している中央制御装置150を含んでいる。この制御装置は、反応チャンバ122内に収容されている基板上に、本明細書で説明しているような堆積プロセスを実施するための、ガス流、温度、圧力等を提供するようにプログラムされている。当業者によって認識されるように、制御装置150は、一般的にメモリーおよびマイクロプロセッサーを含み、ソフトウェア、ハードワイヤード(hardwired)、またはこれら2つの組合せによってプログラムすることもでき、制御装置の機能性は、異なる物理的位置に設置されたプロセッサー内に分配し得る。したがって、制御装置150はシステム100を通して分布している複数の制御装置を代表することができる。
【0092】
したがって、トリシラン/塩素/非水素キャリアガスの組合せは、シリコン含有材料、特にエピタキシャル層の堆積速度の向上をもたらす。ある実施形態において、絶縁材料内の半導体ウィンドウの表面または内部に選択的堆積を達成するために、ガス流量は、圧力および温度の組合せにおいて選択される。ヘリウムソース104は、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよび/または窒素(N2)などの他の非水素ガスと置換できることが理解される。またヘリウムソース104は、水素キャリアガスを使用する反応装置システムに供給するために、水素ソースと置換することができる。例えば、水素をキャリアガスとして使用することを説明した堆積プロセスを、このような反応装置システムで行うことができる。
【0093】
図解した実施形態において、炭素ソース132もまた備えられており、トリシランと塩素と組み合わせて、上記で開示したように高い置換炭素含有量を達成することができる。別の実施形態において、向上した伝導率を有するin situドープ半導体層をもたらすために、ドーパント水素化物ソース134を備えていることも同様に好ましい。シリコンまたはSiCエピタキシに関しては、ドーパント水素化物がアルシンまたはホスフィンであって、層がn型ドープであることが好ましい。またドーパント水素化物のための希釈不活性ガスは、非水素不活性ガスであることが最も好ましい。したがってホスフィンおよびMMSは、例えばヘリウム中でそれらのソース容器132、134に貯蔵することが好ましい。一般的なドーパント水素化物濃度は、アルシンおよびホスフィンに関して、ヘリウム中で0.1%〜5%の範囲であり、より一般的には、0.5%〜1.0%の範囲である。一般的な炭素ソース濃度は、ヘリウム中で5%〜50%であり、より一般的にはヘリウム中で10%〜30%である。例えば、実験はヘリウム中20%MMSを用いて行った。別の方法として、炭素ソース(例えば、MMS)を希釈していない形態で供給することもできる。
【0094】
トリシランおよび塩素ガスと組み合わせた非水素不活性キャリアガスの利益についての前述の論議は、他の半導体化合物にも適用可能である。例えば、トリシラン、ゲルマン、塩素および非水素キャリアガスは、SiGeに関して、同様の向上しそして選択性の堆積利益を得る。例えば、ヘリウム中に1%のジボランを加えることで、p型ドープ層を得ることができる。
【実施例1】
【0095】
本実施例は、混合形態基板上のエピタキシャルシリコン膜の選択的堆積について示す。
【0096】
8インチの非パターン化Si<100>ウエハ基板および十分に酸化した表面(1000Å)を有する別のウエハを、Epsilon E2500(商標)反応装置システムに装荷した(loaded)。次いで基板を、900℃および水素流量20slmにおいて反応装置システムに導入し、基板を1分間安定化した。次いで、基板の温度が550℃に低下したときに水素流を停止した。次いで基板を10秒間安定化し、その時間の後50mg/分のトリシラン流を10分間導入した。200sccmの塩素ガスおよび100sccmの1%ホスフィンを同時に供給し、約6Torrの堆積圧力で堆積を行った。厚さ約500Åを有する連続した均一なリンドープSi膜が、(堆積速度5nm/分で)単結晶基板上に選択的に堆積した。次いで基板を反応装置から取り出し、ロードロックに戻した。シリコンウエハ上に堆積したリンドープSi膜は、優れたエピタキシャル品質と約0.35mΩ・cmの抵抗率を有していたが、一方酸化物基板上には、基本的に堆積は観察されなかった。
【実施例2】
【0097】
酸化ケイ素の表面を有する別のウエハの代わりに、窒化ケイ素の表面を有する別のウエハを反応装置に装荷したことを除き、実施例1で説明した通りに堆積プロセスを行った。エピタキシャルリンドープSi膜が選択的にシリコンウエハ上に堆積し、窒化ケイ素表面上には本質的に堆積はなかった。実施例1と同じく、堆積したリンドープSi膜は、優れたエピタキシャル品質と約0.35mΩ・cmの抵抗率を有していた。
【0098】
本明細書で述べた全ての特許、特許出願および論文は、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。当業者によって、上記で説明した方法に対して、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な削除、追加および改良を行うこともできることが理解され、このような改良および変更の全ては、添付の特許請求の範囲に規定するように、本発明の範囲に含まれることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】フィールド酸化物を画定し、絶縁体を取り除き半導体表面を露出した後の半導体基板の概略断面図である。
【図2】アクティブ領域ウィンドウ内に、トランジスタゲート電極を形成した後の図1の構造図を示す。
【図3】ゲート電極両側のソースおよびドレイン領域を陥凹した後の図2の構造図を示す。
【図4】本発明の好ましい実施形態により陥凹した領域内に半導体膜を選択的に堆積した後の図3の構造図を示す。
【図5】任意に選択的堆積を継続し、高くなったソース/ドレイン構造を形成した後の図4の構造図を示す。
【図6】本発明の別の好ましい実施形態による半導体ウィンドウを露出させ選択的堆積を行い高くなったソース/ドレイン構造を形成した後の図2の構造図を示す。
【図7】固定ジシラン流量に関し、幾つかの温度における塩素流量の関数としてのシリコン上の堆積速度を示すグラフである。
【図8】様々な条件下におけるジシラン/塩素堆積に関する選択率しきい値を示す、塩素流量の関数としての堆積速度を示すグラフである。
【図9】ジシランおよび塩素プロセスガスを使用する堆積に関する、温度の関数としての絶縁体表面上の核表面被覆率を示すグラフである。
【図10】ジシランおよび塩素プロセスガスを使用する堆積に関する、塩素流の関数としての欠陥密度を示すグラフである。
【図11】本発明の好ましい実施形態よるトリシラン、塩素および水素キャリアガスを使用する堆積に関する、水素流の関数としてのシリコン上の堆積速度を示すグラフである。
【図12】トリシラン流の関数としてのシリコン上の堆積速度を示すグラフである。
【図13】温度の逆数の関数としての酸化ケイ素上の堆積速度を示すグラフである(堆積圧力=1T=1Torr)。
【図14A−D】トリシラン、塩素および水素キャリアガスを使用する堆積に関する、温度の逆数および圧力(T=Torr)の関数としてのシリコン上の堆積速度を示す一連のグラフである。
【図15】トリシラン、塩素および水素キャリアガスを使用する堆積に関する、ドーパント流量の関数としてのシート抵抗を示すグラフである。
【図16A】水素キャリアガスを使用しないトリシランおよび塩素ガスを用いた、温度の逆数の関数としてのシリコンの酸化ケイ素上の堆積速度を示すグラフである。
【図16B】単結晶シリコン上の堆積が、この一連の実験において使用された堆積条件(550℃、16Torr、主キャリアガスなし)下、酸化ケイ素(SiO2)および窒化ケイ素(Si3N4)に対して実質的に100%選択性である、Cl2/トリシラン流量比を示すプロット図である。
【図17A】好ましい実施形態により堆積した膜に関する、成長速度、堆積した膜への炭素組込みおよび抵抗率を示す、一連のグラフである。
【図17B】好ましい実施形態により堆積した膜に関する、成長速度、堆積した膜への炭素組込みおよび抵抗率を示す、一連のグラフである。
【図17C】好ましい実施形態により堆積した膜に関する、成長速度、堆積した膜への炭素組込みおよび抵抗率を示す、一連のグラフである。
【図17D】好ましい実施形態により堆積した膜に関する、成長速度、堆積した膜への炭素組込みおよび抵抗率を示す、一連のグラフである。
【図18A】実質的に炭素および砒素の両方を用いてドープされたシリコン膜に関する、成長速度(1分間当たりのナノメートル、nm/分)の関数としての、置換炭素の割合を示すグラフであり、またこれら膜の抵抗率(単位mΩ・cm、これも左軸)を示す。
【図18B】トリシラン流(単位mg/分)の関数としてのこれら膜の成長速度を示すグラフである。
【図19】好ましい実施形態により、炭素を用いて置換的にドープされたシリコン膜に関するフーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトルの部分図を示す。
【図20A】3つの異なるキャリアガス(H2)流量に関するチャンバ圧力の関数としての、シリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。
【図20B】3つの異なるキャリアガス(H2)流量に関するチャンバ圧力の関数としての、成長速度のグラフを示す。
【図21A】一定のMMS(モノメチルシランまたはメチルシラン)流量における、トリシラン流量の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。
【図21B】堆積速度(成長速度)の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量を示す。
【図22】一定のトリシラン流量における、MMS流量の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。
【図23A】一定のトリシラン対MMSの流量比における、膜成長速度の関数としてのシリコン膜中の置換炭素含有量のグラフを示す。
【図23B】トリシラン流量の関数としての成長速度のグラフを示す。
【図24】トリシランを用いて堆積した一連の膜に関する、ドーパント前駆物質(アルシン)流の関数としてのドープシリコン膜抵抗率のグラフである。
【図25A】一定のトリシラン対アルシン流量比において堆積した一連の膜に関する成長速度の関数としてのドープシリコン膜抵抗率のグラフである。
【図25B】トリシランおよびアルシン流量の関数としての膜堆積速度のプロット図である。
【図26】水素キャリアガスの添加のある場合とない場合における様々な塩素化シリコン種を含むシステムに関する、温度の関数としての様々な反応物質の熱力学的平衡を示す2つのグラフである。
【図27】本発明の好ましい実施形態によるシリコン含有膜の堆積に関し、トリシラン、塩素ガス、および不活性、非水素キャリアガスを使用するシステムに関してセットした反応装置の概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン含有層を基板上に堆積させる方法であって、
チャンバ内で堆積される基板を供給すること、
トリシラン、ハロゲン含有エッチャントガスおよび非水素キャリアガスを混合して供給ガスを形成すること、および
前記供給ガスを前記基板に導入することによって基板上にシリコン含有層を堆積させること
を含む方法。
【請求項2】
ハロゲン含有エッチャントガスが塩素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板が、フィールド絶縁領域に囲まれた半導体ウィンドウを含み、導入することが前記フィールド絶縁領域への堆積を含まない、半導体ウィンドウ中の選択的堆積を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記Si含有層を、前記基板上に5nm/分超の堆積速度で堆積させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記Si含有層を、前記基板上に650℃以下で堆積させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記Si含有層を、前記基板上に400℃〜600℃の範囲で堆積させる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記Si含有層を、前記基板上に10nm/分超の堆積速度で堆積させる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
非水素キャリアガスを用いた炭素ソースを導入することをさらに含み、前記シリコン含有層がX線回折によって決定して、少なくとも2.4原子%の置換炭素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
電気的ドーパント水素化物を、非水素キャリアガスを用いて導入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記Si含有層を、前記基板上に750℃以下で堆積させる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記Si含有層を、前記基板上に400℃〜600℃の範囲で堆積させる、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
シリコン含有層を基板上に堆積させる方法であって、
チャンバ内で堆積される基板を供給すること、
トリシラン、ハロゲン含有エッチャントガスおよび非水素キャリアガスを混合して供給ガスを形成すること、および
前記供給ガスを前記基板に導入することによって基板上にシリコン含有層を堆積させること
を含む方法。
【請求項2】
ハロゲン含有エッチャントガスが塩素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板が、フィールド絶縁領域に囲まれた半導体ウィンドウを含み、導入することが前記フィールド絶縁領域への堆積を含まない、半導体ウィンドウ中の選択的堆積を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記Si含有層を、前記基板上に5nm/分超の堆積速度で堆積させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記Si含有層を、前記基板上に650℃以下で堆積させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記Si含有層を、前記基板上に400℃〜600℃の範囲で堆積させる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記Si含有層を、前記基板上に10nm/分超の堆積速度で堆積させる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
非水素キャリアガスを用いた炭素ソースを導入することをさらに含み、前記シリコン含有層がX線回折によって決定して、少なくとも2.4原子%の置換炭素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
電気的ドーパント水素化物を、非水素キャリアガスを用いて導入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記Si含有層を、前記基板上に750℃以下で堆積させる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記Si含有層を、前記基板上に400℃〜600℃の範囲で堆積させる、請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−54613(P2012−54613A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−265240(P2011−265240)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2007−554163(P2007−554163)の分割
【原出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(500019890)エーエスエム アメリカ インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2007−554163(P2007−554163)の分割
【原出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(500019890)エーエスエム アメリカ インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】
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