説明

ジチエノベンゾジチオフェン誘導体からなる有機半導体材料前駆体、インク、絶縁部材、電荷輸送性部材、有機電子デバイス

【課題】印刷等の簡便なプロセスで成膜できる溶解性を有し、成膜後は簡単な処理により不溶化し、後工程でのダメージを軽減できると共に、不溶化処理後は良好な半導体特性を示すジチエノベンゾジチオフェン誘導体からなる有機半導体材料前駆体、該前駆体を含有するインク、該インクを用いて作製された絶縁部材、電荷輸送性部材、有機電子デバイスの提供。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体からなることを特徴とする有機半導体材料前駆体。


〔上記式中、X及びYは、外部刺激によりXとYが結合してX−Yとして一般式(I)の化合物から脱離する基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、又はアリール基を表し、R〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、又はアリール基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体からなる新規な有機半導体材料前駆体、該前駆体を含有するインク、該インクを用いて作製された絶縁部材、電荷輸送性部材、有機電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料を利用した有機エレクトロニクスデバイスの研究開発が盛んである。有機半導体材料は、印刷法、スピンコート法等のウェットプロセスによる簡便な方法で薄膜形成できる可能性があり、従来の無機半導体材料を利用したエレクトロニクスデバイスと比べ、製造プロセス温度の低温化と低コスト化が実現できるという利点がある。これにより、一般に耐熱性の低いプラスチック基板上への形成が可能となり、ディスプレイ等のエレクトロニクスデバイスの軽量化や低価格化が実現できるとともに、プラスチック基板のフレキシビリティーを活かした新規な用途など、多様な展開が期待できる。
これまでに、有機半導体材料として、ポリ(3−アルキルチオフェン)(非特許文献1)やジアルキルフルオレンとビチオフェンとの共重合体(非特許文献2)等が提案されている。これらの有機半導体材料は、低いながらも溶解性を有するため、真空蒸着工程を経ず、塗布や印刷で薄膜化が可能である。しかしながら、これらの高分子材料は精製方法に制約があるため、高純度の材料を得るのに非常に手間が掛かること、分子量分布が存在するため品質の安定性に欠けることが問題になっている。
【0003】
一方、低分子の有機半導体材料として、ペンタセン等のアセン系材料が報告されている(例えば、特許文献1)。このペンタセンを有機半導体層として利用した有機薄膜トランジスタは、比較的高移動度であることが報告されているが、これらアセン系材料は汎用溶媒に対し極めて溶解性が低く、それを有機薄膜トランジスタにおける有機半導体層として薄膜化する際には、真空蒸着工程を経る必要がある。また、大気安定性にも乏しく、前述したような塗布や印刷などの簡便なプロセスでデバイスを作製できるという有機半導体材料への期待に応えるものではない。
また、これまで溶解性を有する低分子有機半導体材料も幾つか報告されているものの、湿式プロセスにより作製された膜は、アモルファスであったり、各材料由来の晶癖のために連続膜を得ることが困難であり、良好な特性が得られない等の問題があった。従って、現在も、印刷法等の湿式製造プロセスが適用可能な新規な有機半導体材料の開発が強く望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、印刷等の簡便なプロセスで成膜できる溶解性を有し、成膜後は簡単な処理により不溶化し、後工程でのダメージを軽減できると共に、不溶化処理後は良好な半導体特性を示すジチエノベンゾジチオフェン誘導体からなる有機半導体材料前駆体、該前駆体を含有するインク、該インクを用いて作製された絶縁部材、電荷輸送性部材、有機電子デバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の1)〜7)の発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
1) 下記一般式(I)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体からなることを特徴とする有機半導体材料前駆体。
【化1】

〔上記式中、X及びYは、外部刺激によりXとYが結合してX−Yとして一般式(I)の化合物から脱離する基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R〜R10はそれぞれ独立に、水素、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。〕
2) 前記X及びYの一方が水素であり、他方が水酸基、又はエーテル構造、又はエステル構造若しくはチオエステル構造を有する基であることを特徴とする、1)記載の有機半導体材料前駆体。
3) 前記エーテル構造、又はエステル構造若しくはチオエステル構造が、下記一般式(III)〜(IX)のいずれかであることを特徴とする、2)記載の有機半導体材料前駆体。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

〔上記式中、R11は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。〕
4) 1)〜3)のいずれかに記載の有機半導体材料前駆体を含有することを特徴とするインク。
5) 4)記載のインクを用いて作製されたことを特徴とする絶縁部材。
6) 5)記載の絶縁部材を用いて作製された、前記一般式(I)で表される化合物からのX−Yの脱離により生成する、下記一般式(II)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体を主成分とすることを特徴とする電荷輸送性部材。
【化9】

〔上記式中のR〜R10は前記(I)と同じ基を表す。〕
7) 6)記載の電荷輸送性部材を用いて作製されたことを特徴とする有機電子デバイス。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、印刷等の簡便なプロセスで成膜できる溶解性を有し、成膜後は簡単な処理により不溶化し、後工程でのダメージを軽減できると共に、不溶化処理後は良好な半導体特性を示すジチエノベンゾジチオフェン誘導体からなる有機半導体材料前駆体、該前駆体を含有するインク、該インクを用いて作製された絶縁部材、電荷輸送性部材、有機電子デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】有機薄膜トランジスタの構造例(A)〜(D)を示す図である。
【図2】本発明の有機半導体材料前駆体(実−1)のTG−DTAのデータである。
【図3】実施例10で作製したトランジスタの出力特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、上記本発明について詳細に説明する。
本発明の有機半導体材料前駆体は、下記一般式(I)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体からなる。
【化10】

〔上記式中、X及びYは、外部刺激によりXとYが結合してX−Yとして一般式(I)の化合物から脱離する基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R〜R10はそれぞれ独立に、水素、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。〕
【0009】
X及びYとしては、一方が水素で、他方が水酸基、エーテル構造、エステル構造、チオエステル構造又はチオエステル構造を有する基の組み合わせが挙げられるが、水素とエステル構造又はチオエステル構造を有する基の組合せが好ましい。中でもカルボン酸エステルと水素、炭酸エステルと水素、キサントゲン酸エステルと水素の組合せが好ましく、特に次の一般式(III)〜(IX)のいずれかと水素の組合せが好ましい。
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

上記式中、R11は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。
【0010】
一般式(I)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体は、外部刺激によりXとYが結合してX−Yとして脱離する結果、新たにアルケン部位が生成し、一般式(II)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体へと変換する。
【化18】

上記一般式(I)〜(IX)中の、R〜R11における置換若しくは無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、置換若しくは無置換のアルコキシ基、アルキルチオ基としては、例えば上記アルキル基の結合位に酸素原子又は硫黄原子を挿入してアルコキシ基、アルキルチオ基としたものが挙げられる。
【0011】
〜R11における置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、ピレン、フルオレン、9,9−ジメチルフルオレン、アズレン、アントラセン、トリフェニレン、クリセン、9−ベンジリデンフルオレン、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン、[2,2]−パラシクロファン、トリフェニルアミン、チオフェン、ビチオフェン、ターチオフェン、クォーターチオフェン、チエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ジチエニルベンゼン、フラン、ベンゾフラン、カルバゾール、ベンゾジチアゾール等が挙げられる。これらはさらに上記の置換若しくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、又はフッ素、塩素、ヨウ素及び臭素のハロゲン基を置換基として有していてもよい。
特にR及びRに上記アルキル基又はアリール基を導入することにより、棒状の分子形状となり、結晶が2次元的に成長しやすくなるため、結晶性の連続膜が得やすくなる。さらにアリール基を導入した場合、一般式(II)の状態において分子の共役系の拡大により材料のイオン化ポテンシャルが低くなり、ホール輸送特性が向上する。
【0012】
一般式(I)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体の合成方法は特に限定されず、公知の種々の方法を採用することができる。手順としては、ジチエノベンゾジチオフェン骨格を構築した後、X及びYで表される脱離ユニットを導入すればよい。
例えば、一般式(I)において、Xがエステル構造を有する基でYが水素の場合、ジチエノベンゾジチオフェン骨格を構築した後、カルボニル化合物へ誘導し、さらにグリニヤール試薬をはじめとする求核試薬との反応によりアルコール体とし、このアルコール体を酸塩化物や酸無水物等と反応させれば、目的とするカルボン酸エステルが得られる。
【化19】

【0013】
また、上記アルコール体を、塩基を用いて二硫化炭素と反応させた後、ハロゲン化アルキル等のアルキル化試薬と反応させれば、目的とするキサントゲン酸エステル体を得ることができる。
【化20】

【0014】
また、上記アルコール体を、クロロギ酸エステルで処理することにより、炭酸エステル体を得ることができる。
【化21】


また、例えば一般式(I)において、Xがエーテル構造を有する基でYが水素の場合、同様に、上記アルコール体から、ハロゲン化アルキル等を用いてウィリアムソン合成として知られる方法により、目的とするエーテル体を得ることができる。
【0015】
なお、上記カルボニル化合物は、公知の種々の反応により合成することができ、例えば次の(a)〜(d)の反応が挙げられる。
(a)次の式で示されるVilsmeier反応
【化22】

(b)次の式で示される、アリールリチウム化合物と、DMF、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、各種酸塩化物、各種酸無水物等をはじめとするホルミル化又はアシル化試薬との反応
【化23】

(c)次の式で示される、Gatterman反応
【化24】

(d)次の式で示される、Friedel−Crafts反応
【化25】

【0016】
上記〔化19〕〜〔化25〕中、Rはアルキル基を、harはハロゲンを表し、R〜R11は一般式(I)の場合と同様である。また、Xが水素でYがエステル構造を有する基の場合にも、同様の反応により容易に合成することができる。
【0017】
上記のようにして得られた有機半導体材料前駆体は、反応に使用した触媒、無機塩、未反応原料、副生成物等の不純物を除去して使用される。精製操作は再結晶、各種クロマトグラフィー法、昇華精製、再沈澱、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。不純物の混入は半導体特性に悪影響を及ぼすため、可能な限り高純度にすることが望ましい。溶解性に優れた材料では、これら精製方法の制約が少なくなり、結果的に半導体特性にも好影響を与える。
【0018】
一般式(I)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体は、次の式で示すように、一般式(I)中のX−Yの脱離によりアルケン部位が生成し、一般式(II)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体へと変換する。
【化26】

この時、X−Yの組合せが、水素とカルボン酸エステルの場合には、カルボン酸分子が脱離し、X−Yの組合せが水素とキサントゲン酸エステルの場合には、キサントゲン酸部位が脱離した後、さらに分解して、硫化カルボニルとチオール化合物として除去される。X−Yの組合せが水素と炭酸エステルの場合には、やはり脱炭酸が起こる。
【0019】
上記X−Yの脱離により生成する、一般式(II)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体では、脱離前の一般式(I)で表される構造と比べて、共役系が拡大すると共に平面性が得られるため結晶性が向上し、半導体部材として使用可能な良好な電荷輸送特性が発現する。
同時にX−Yの脱離前後では溶剤に対する溶解性が劇的に変化する。一般式(I)ではジチエノベンゾジチオフェンユニットの側鎖(R、R、R、X、Y及び、R、R、R、X、Yを含む部位)が分子に良好な溶解性を付与するのに対し、一般式(II)ではそのような効果が小さくなり、非常に溶解性が低下する。
【0020】
上記X−Yの脱離反応を行うための外部刺激としては、熱、光、電磁波等のエネルギーを印加すればよい。反応性及び収率、後処理の観点から、熱エネルギー又は光エネルギーが望ましく、特に熱エネルギーが好ましい。反応の触媒として、酸や塩基等を共存させることも効果的である。
加熱には、ホットプレート上で加熱する方法、オーブン内で加熱する方法、マイクロ波照射による方法、レーザーを用い光を熱に変換して加熱する方法、ホットスタンピング、ヒートローラー等の種々の方法を用いることができるが、特に限定されるものではない。
脱離反応を行うための加熱温度は、室温〜400℃の範囲とすることが可能であるが、50〜300℃の範囲が好ましく、特に100〜280℃の範囲が好ましい。温度が低すぎると十分な変換が行われず所望の特性が得られないし、逆に高すぎると、本発明に係る有機半導体材料自体、あるいはデバイスを構成する基板や電極などのその他の部材に熱的なダメージを生じる可能性がある。
加熱時間は、脱離反応の反応性、デバイスを構成するその他の部材の熱伝導性、あるいはデバイス構成によっても異なる。時間が短い程、製造工程のスループットは上がるが、十分な変換が行われず所望の特性が得られない恐れがあるため、通常0.5〜120分、好ましくは1〜60分、特に好ましくは3〜30分とする。
【0021】
本発明の有機半導体材料前駆体は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、メシチレン、安息香酸エチル、ジクロロベンゼン及びキシレン等をはじめとする汎用溶剤への溶解性が高いため、これらの溶剤に溶解させてインク化することができる。さらに該インクを支持体上に付着させた後、溶剤を揮発させることによって絶縁部材となる構造体を形成することができる。
支持体への付着方法としては、例えばスピンコート法、キャスト法、ディップ法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、ディスペンス法等の公知の印刷手法が挙げられる。また、これらの手法により、パターニングされた膜や大面積の膜を作製することができ、さらにインク濃度や付着量を変えることにより、膜厚を適宜調整することができる。作製するデバイスに応じて、最適な印刷方法と溶媒の組み合わせを選択すればよい。
【0022】
インクを構成する溶剤の例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン等の飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、安息香酸エチル、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、テルピネオール、エチレングリコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、メトキシエタノール、ブトキシエタノール等のエーテル類等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、インクの表面張力や乾燥速度などの諸特性改善するために、2種以上を混合して使用することもできる。中でも、芳香族炭化水素類、ハロゲン化合物類、エーテル類が溶解性の観点から好ましい。
【0023】
このようにして得られた本発明の有機半導体材料前駆体を利用した部材を、加熱処理をはじめとする外部刺激により、一般式(II)で表される有機半導体材料へと変換しエレクトロニクスデバイスに用いる。局所的にエネルギー印加を行って部分的に一般式(I)から一般式(II)へ変換することにより、半導体領域と絶縁体領域のパターニングを行うことも可能である。
さらに、溶解性の高い本発明の有機半導体材料前駆体が、溶解性の低い一般式(II)で表される有機半導体材料へ変換できることは、デバイス作製工程上、非常に有利となる。一般式(II)で表される有機半導体材料に変換した後は、さらにその上に絶縁材料や電極材料等を、ウェットプロセスを用いて構成することが容易になり、後工程によるプロセスダメージを抑えることが可能となる。
これらの薄膜、厚膜、或いは結晶は、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の機能素子の電荷輸送性部材として機能するので、本発明の有機半導体材料前駆体を用いて多様な有機電子デバイスを作製することが可能である。
【0024】
次に、上記有機電子デバイスの一例である有機薄膜トランジスタについて、図1に概略構造図を示して説明する。図1の(A)〜(D)は構造のバリエーションである。
有機薄膜トランジスタを構成する有機半導体層1は、本発明の一般式(I)で表される有機半導体材料前駆体を用いたインクを塗布した後、乾燥し、加熱処理により変換した、一般式(II)で表される化合物を主成分とする有機半導体材料からなる。
有機薄膜トランジスタは、有機半導体層1を介して分離形成された第1の電極(ソース電極)2、第2の電極(ドレイン電極)3を有しており、これらと対向する第3の電極(ゲート電極)4を有している。
なお、ゲート電極4と有機半導体層1との間には、絶縁膜5を設けてもよい。
有機薄膜トランジスタは、ゲート電極4への電圧印加により、ソース電極2とドレイン電極3の間の有機半導体層1内を流れる電流がコントロールされるものである。
【0025】
前記有機薄膜トランジスタは、所定の支持体上に形成される。
支持体としては、従来公知の基板材料が適用でき、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック等が挙げられる。なお、導電性基板を用いることによりゲート電極4を兼用することができる。
また、ゲート電極4と導電性基板とが積層された構成としてもよいが、前記有機薄膜トランジスタをデバイスに応用する場合、フレキシビリティー、軽量化、安価、耐衝撃性等の実用面の特性を良好なものとするために、支持体としては、プラスチックシートを用いることが好ましい。
プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等のフィルムが挙げられる。
【0026】
次に、図1の有機薄膜トランジスタにおける、有機半導体層以外の構成要素について説明する。
有機半導体層は、第1の電極(ソース電極)、第2の電極(ドレイン電極)、及び必要に応じて絶縁膜に接して形成されている。
絶縁膜は種々の絶縁膜材料を用いて形成されている。例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機系絶縁材料が挙げられる。
また、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル、無置換又はハロゲン原子置換ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等の高分子化合物も用いることができる。
さらに、上記絶縁膜材料を2種以上組み合わせて用いても良い。また、特に材料は限定されないが、誘電率が高く導電率が低いものが好ましい。
絶縁膜の形成方法としては、例えば、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法のようなドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、キャスト法、ブレードコート法、バーコート法等の塗布によるウェットプロセスが挙げられる。
【0027】
次に、有機半導体層と絶縁膜との界面修飾について説明する。
有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層と絶縁膜との接着性を向上させ、かつ駆動電圧の低減、リーク電流の低減等を図ることを目的として、有機半導体層と絶縁膜との間には、所定の有機薄膜を設けるようにしてもよい。
この有機薄膜は有機半導体層に対し化学的影響を与えなければ特に限定されるものではないが、例えば、有機分子膜や高分子薄膜が利用できる。
有機分子膜としては、例えばオクタデシルトリクロロシランやヘキサメチルジシラザン等を始めとしたカップリング剤が挙げられる。
高分子薄膜としては、上述の高分子絶縁膜材料を利用することができ、これらが絶縁膜の一種として機能していても良い。
また、この有機薄膜に、ラビング等により異方性処理を施しても良い。
【0028】
次に、有機薄膜トランジスタを構成する電極について説明する。
前記有機薄膜トランジスタは、有機半導体層を介して互いに分離した1対の第1の電極(ソース電極)と第2の電極(ドレイン電極)、及び、電圧を印加することにより第1の電極と第2の電極の間の有機半導体層内を流れる電流をコントロールする機能を有する第3の電極(ゲート電極)を具備している。有機薄膜トランジスタはスイッチング素子であるため、第3の電極(ゲート電極)による電圧の印加状態により、第1の電極(ソース電極)と第2の電極(ドレイン電極)間に流れる電流量を大きく変調できることが重要である。これはトランジスタの駆動状態では大きな電流が流れ、非駆動状態では、電流が流れないことを意味する。
【0029】
ゲート電極、ソース電極の材料は、導電性材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が適用できる。
ソース電極及びドレイン電極は、半導体層との接触面において、電気抵抗が少ないものとすることが望ましい。
【0030】
上記電極の形成方法としては、例えば、上記電極形成用材料を原料として、蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を適用することによって、電極形状とする方法が挙げられる。
また、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法も適用できる。
また、導電性ポリマーの溶液又は分散液、あるいは導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしても良いし、塗工膜からリソグラフィーやレーザーアブレーション等により形成しても良い。
さらには、導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を、凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も適用できる。
【0031】
前記有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引出し電極を設けてもよ
い。
また、前記有機薄膜トランジスタは、大気中でも安定に駆動するものであるが、機械的破壊からの保護、水分やガスからの保護、又はデバイスの集積の都合上の保護等のため、必要に応じて保護層を設けることもできる。
【0032】
上述した前記有機薄膜トランジスタは、液晶、エレクトロルミネッセンス、エレクトロクロミック、電気泳動等の、従来公知の各種画像表示素子を駆動するための素子として好適に利用でき、これらの集積化により、いわゆる「電子ペーパー」と呼ばれるディスプレイを製造することが可能である。
ディスプレイ装置は、例えば、液晶表示装置では液晶表示素子、EL表示装置では有機又は無機のエレクトロルミネッセンス表示素子、電気泳動表示装置では電気泳動表示素子などの表示素子を1表示画素として、該表示素子をX方向及びY方向にマトリックス状に複数配列して構成される。前記表示素子は、該表示素子に対して電圧の印加又は電流の供給を行うためのスイッチング素子として、前記有機薄膜トランジスタを用いることができる。ディスプレイ装置では、前記スイッチング素子を、前記表示素子の数、即ち表示画素数に対応して複数用いる。
前記表示素子は、前記スイッチング素子の他に、例えば、基板、透明電極等の電極、偏光板、カラーフィルタなどの構成部材を備えるが、これらの構成部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来から公知のものを使用することができる。
【0033】
前記ディスプレイ装置が、所定の画像を形成する場合には、例えば、マトリックス状に配置されたスイッチング素子の中から任意に選択されたスイッチング素子が、対応する表示素子に電圧の印加又は電流を供給する時のみスイッチがON又はOFFとなり、その他の時間はOFF又はONとなるように構成することにより、高速、高コントラストで、ディスプレイ装置の表示を行うことができる。なお、前記ディスプレイ装置における画像の表示動作としては、従来から公知の表示動作を採用できる。例えば、液晶表示素子の場合には、液晶に対して電圧を印加することにより、該液晶の分子配列を制御して画像等の表示が行われる。また、有機又は無機のエレクトロルミネッセンス表示素子の場合には、有機又は無機膜で形成された発光ダイオードに電流を供給して該有機又は無機膜を発光させることにより画像等の表示が行われる。また、電気泳動表示素子の場合には、例えば、異なる極性に帯電された白及び黒色の着色粒子に電圧を印加して、電極間で該着色粒子を所定方向に電気的に泳動させて画像等の表示が行われる。
【0034】
前記ディスプレイ装置は、塗工、印刷等の簡易なプロセスで前記スイッチング素子を作製することができ、プラスチック基板、紙等の高温処理に耐えない基板を用いることができるとともに、大面積のディスプレイであっても、省エネルギー、低コストで前記スイッチング素子を作製することができる。
また、ICタグ等のデバイスとして、前記有機薄膜トランジスタを集積化したICを利用することが可能である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0036】
実施例1
<有機半導体材料前駆体(実−1)の合成>
下記合成経路により、(実−1)を合成した。
【化27】

【0037】
100mLフラスコに、Advanced Materials,2009 21213−216.記載の方法で合成したジチエノベンゾジチオフェンを0.500g(1.653mmol)入れ、アルゴン置換した後、THF30mLを加えた。次いで、−20℃に冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液(4.133mmol)を滴下し1時間撹拌した。さらに、−78℃に冷却し、DMF2.5mLを加えて30分撹拌した後、希塩酸を加え、室温に戻した。析出した固体を濾取し、水、メタノール、酢酸エチルで洗浄した。減圧下乾燥し、化合物1を0.392g得た(収率66%)。
次に、25mLフラスコに、上記化合物1を0.100g(0.279mmol)入れ、アルゴン置換した後、THFを2mL加えて0℃に冷却した。この溶液に、ベンジルマグネシウムクロライドの2.0mol/LのTHF溶液を0.56mL(1.116mmol)滴下した後、室温に戻して4時間攪拌した。
次いで、飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた後、THFを加え、有機層を飽和食塩水で洗浄した。次いで、溶媒を減圧留去した後、化合物2を含む残渣を、そのまま次の反応に用いた。
100mLフラスコに、上記残渣、及び、N,N−ジメチルアミノピリジン3.4mg(0.028mmol)を入れ、アルゴン置換した後、ピリジン2mL及び塩化ピバロイル0.136mL(1.116mmol)を加え、室温で2日間撹拌した。
次いでTHFを加えた後、この溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液の順に用いて洗浄した。次いで溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の(実−1)を、無色の結晶として0.174g得た。
得られた(実−1)は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。(実−1)の同定データを次に示す。
H−NMR(CDCl,TMS)δ/ppm:1.14(18H,s),3.25〜3.38(4H,m),6.26〜6.31(2H,m),7.17(2H,s),7.2〜7.3(10H,m),8.23(2H,s).
IR(KBr)ν/cm−1:1717(νC=O)
【0038】
(実−1)の熱分析
(実−1)のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。結果を図2に示す。5℃/minの速度で昇温したところ、240〜260℃で、ピバル酸の2分子に相当する重量減少(理論減少量28.7%、実測減少量29.7%)が観測された。また、さらに昇温すると362℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441に記載されている、下記化合物(実−1−2)の融点に一致した。
【化28】

【0039】
実施例2
<有機半導体材料前駆体(実−2)の合成>
【化29】

100mLフラスコに、実施例1に記載の化合物2(2.790mmol)、及び、N,N−ジメチルアミノピリジン34mg(0.279mmol)を入れ、アルゴン置換した後、ピリジン20mL及び塩化ヘキサノイル1.56mL(11.16mmol)を加えて、室温で一晩撹拌した。次いでトルエンを加え、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、残渣をリサイクル分取GPC(日本分析工業社製)により精製し、目的の(実−2)を、無色の結晶として0.44g得た。得られた(実−2)は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
【0040】
(実−2)の熱分析
(実−2)のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、150〜240℃で、ヘキサン酸の2分子に相当する重量減少(理論減少量31.5%、実測減少量31.4%)が観測された。また、さらに昇温すると362℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441に記載されている、前記化合物(実−1−2)の融点に一致した。
【0041】
実施例3
<有機半導体材料前駆体(実−3)の合成>
【化30】

【0042】
50mLフラスコに、2−メチル−6−ニトロ無水安息香酸を1.1g(3.30mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジンを67mg(0.55mmol)入れ、アルゴンガスで置換した後、トリエチルアミンを0.84mL(6.05mmol)、THFを15mL、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を0.291mL(3.3mmol)加えて、室温で30分間攪拌した。次いで、THF20mLに実施例1に記載の化合物2を600mg(1.1mmol)溶解させた溶液を加えて、室温でさらに24時間攪拌した。次いで反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え酢酸エチルで4回抽出を行った。
4回の抽出液を併せて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で2回、飽和食塩水(50mL)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで溶媒を減圧留去し、粗生成物として褐色のオイル(収量1.2g)を得た。
これをカラム精製〔固定相:塩基性アルミナ(活性度II)、溶離液:トルエン〕し、黄色の固体(収量350mg)を得た。続いて、リサイクル分取HPLC(日本分析工業社製LC−9104、溶離液:THF)で精製し、黄色の結晶(100mg)を得た。
最後に、この結晶をTHF/MeOHから再結晶することにより、淡黄色の結晶として、目的物である(実−3)を収量60mgで得た。
この結晶の純度をLC/MS(ピーク面積法)により測定したところ、99.9モル%以上であることが確認された。(実−3)の同定データを次に示す。
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS)δ/ppm:3.16(q,4H,J=10.3Hz),3.31(dd,2H,J=7.5Hz,J=6.3Hz),3.40(dd,2H,J=6.3Hz,J=8.0Hz),6.38(t,2H,J=7.5Hz),5.93(t,1H,J=5.2Hz),7.21〜7.25(8H),7.28〜7.31(4H),8.25(s,2H)
【0043】
(実−3)の熱分析
(実−3)のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、150〜200℃で、トリフルオロプロピオン酸の2分子に相当する重量減少(理論減少量33.6%、実測減少量32.6%)が観測された。また、さらに昇温すると361℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441に記載されている、前記化合物(実−1−2)の融点に一致した。
【0044】
実施例4
<有機半導体材料前駆体(実−4)の合成>
【化31】

ベンジルマグネシウムクロライドの代りに4−メチルベンジルマグネシウムクロライドを用いた点以外は、実施例1と同様の方法により、化合物3を得た。

次いで、実施例2に記載の化合物2の代わりに、化合物3を用いた点以外は実施例2と同様の方法により、化合物(実−4)を合成した。
【0045】
(実−4)の熱分析
(実−4)のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、190〜250℃で、ヘキサン酸2分子に相当する重量減少(理論減少量29.5%、実測減少量30.0%)が観測された。また、さらに昇温すると369℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441に記載されている、下記化合物(実−4−2)の融点に一致した。
【化32】

【0046】
実施例5
<有機半導体材料前駆体(実−5)の合成>
【化33】

実施例2に記載の化合物2の代わりに実施例4に記載の化合物3を用い、塩化ヘキサノイルの代わりにアセチルクロライドを用いた点以外は、実施例2と同様の方法により化合物(実−5)を合成した。
【0047】
(実−5)の熱分析
(実−5)のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、200〜230℃で、酢酸2分子に相当する重量減少(理論減少量18.3%、実測減少量17.9%)が観測された。また、さらに昇温すると367℃に吸熱ピークが観測され、前記化合物(実−4−2)に変換されることが確認された。
【0048】
実施例6
<有機半導体材料前駆体(実−6)の合成>
【化34】

【0049】
25mLフラスコに、マグネシウムを0.855g(35.16mmol)入れ、系内をアルゴン置換し、ジエチルエーテルを2.5mL加えた。次いでヨウ素一粒及び1,2−ジブロモエタン3滴を加えた後、室温で30分撹拌した。この溶液に、4−ヘキシルベンジルクロライド2.470g(11.72mmol)のジエチルエーテル溶液11mLを5時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに1時間撹拌した。この溶液をアルゴン置換した200mLフラスコに移し、THF13mL及び塩化亜鉛57mgを加えて1時間撹拌した。この溶液に実施例1に記載の化合物1を0.500g(1.395mmol)加えて、室温で3日間撹拌した。反応溶液を0℃の希塩酸に滴下した後、析出した固体を、水、エタノール、ヘキサンの順に用いて洗浄した。次いで真空乾燥し、ジオール0.820gを得た(収率83%)。
続いて、50mLフラスコに、上記ジオールを0.820g入れ、系内をアルゴン置換した。THFを10mL、ピリジンを0.75mL、N,N−ジメチルアミノピリジンを17mg及び無水酢酸を0.44mL加えて、室温で一晩撹拌した。次いでジクロロメタンを加え、溶液を水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、リサイクル分取GPCで精製し、目的の(実−6)を無色の結晶として得た。
【0050】
(実−6)の熱分析
(実−6)のTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、110〜200℃で、酢酸2分子に相当する重量減少(理論減少量15.1%、実測減少量15.1%)が観測された。また、さらに昇温すると272℃及び295℃に相転移及び融点に帰属される吸熱ピークが観測され、下記化合物(実−6−2)に変換されていることが確認された。
【化35】

【0051】
実施例7
実施例6の第一段階の反応で得られたジオールを(実−7)とする。
【化36】

(実−7)の熱分析
実施例6の第一段階の反応で得られたジオールのTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)を行った。5℃/minの速度で昇温したところ、200〜270℃で、水2分子に相当する重量減少(理論減少量5.1%、実測減少量4.0%)が観測され、前記化合物(実−6−2)に変換されていることが確認された。
【0052】
実施例8
<有機電子デバイス(有機薄膜トランジスタ)の作製>
実施例1で合成した化合物(実−1)を用いて、以下の手順で、図1−(D)の構造の電界効果型トランジスタを作製した。
膜厚300nmの熱酸化膜を有するNドープシリコン基板を濃硫酸に24時間浸漬し、洗浄した。
この基板上に京セラケミカル社製CT4112をスピンコートした後、200℃程度の温度で硬化させて、膜厚およそ500nmのポリイミド膜を作製した。次いで、実施例1で得た化合物(実−1)をスピンコート(0.5wt%クロロホルム溶液)することにより、化合物(実−1)の薄膜を形成した。次いで、260℃のホットプレート上で30秒間加熱し、化合物(実−1−2)に変換させた。
この有機半導体層上部にシャドウマスクを用いて金を真空蒸着(背圧〜10−4Pa、蒸着レート1〜2Å/s、膜厚:50nm)することにより、ソース電極とドレイン電極を形成した(チャネル長50μm、チャネル幅2mm)。
こうして得られたFET(電界効果型トランジスタ)素子の電気特性を、Agilent社製半導体パラメーターアナライザー4156Cを用いて大気下で評価した結果、p型のトランジスタ素子としての特性を示した。
なお、有機薄膜トランジスタの電界効果移動度の算出には、以下の式を用いた。
Ids=μCinW(Vg−Vth)/2L
(ただし、Cinはゲート絶縁膜の単位面積当りのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vgはゲート電圧、Idsはソースドレイン電流、μは移動度、Vthはチャネルが形成し始めるゲートの閾値電圧である。)
作製した有機薄膜トランジスタの特性を評価したところ、電界効果移動度0.5cm/Vs、閾値電圧−0.2Vの非常に優れた特性を示した。
なお、260℃、30秒間の熱処理をしない場合にはトランジスタとして動作しなかった。
【0053】
実施例9
実施例2で合成した化合物(実−2)を用いた点以外は、実施例8と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
この有機薄膜トランジスタの特性を評価したところ、電界効果移動度0.33cm/Vs、閾値電圧−0.6Vの非常に優れた特性を示した。
実施例8と同様に、260℃、30秒間の熱処理をしない場合にはトランジスタとして動作しなかった。
【0054】
実施例10
実施例2で合成した化合物(実−2)を用い、ソース電極とドレイン電極を銀に代えた以外は、実施例8と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
この有機薄膜トランジスタの特性を評価したところ、電界効果移動度0.91cm/Vs、閾値電圧−6.6Vの非常に優れた特性を示した。図3に作製したトランジスタの出力特性を示す。
【0055】
実施例11
<有機半導体材料前駆体(実−11)の合成>
【化37】

塩化ヘキサノイルの代りにクロロギ酸アミルを用いた点以外は、実施例2と同様の方法により、化合物(実−11)を合成した。得られた(実−11)は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
【0056】
(実−11)の熱分析
(実−11)のTG−DTA測定を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、150〜190℃で炭酸エステル部位の脱離に由来する重量減少(ペンタノールと二酸化炭素のそれぞれ2分子に相当する減少、理論減少量34.3%、実測減少量33.3%)が観測された。また、さらに昇温すると360.3℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441に記載されている、前記化合物(実−1−2)の融点に一致した。
【0057】
実施例12
<有機半導体材料前駆体(実−12)の合成>
【化38】

100mLフラスコに、化合物2を0.500g入れ、系内をアルゴン置換した。次いで、DMF20mL、THF20mLを加え、0℃に冷却した。次いで、水素化ナトリウム(55%パラフィン分散)N,N−ジメチルアミノピリジンを17mg及び無水酢酸を0.44mL加えて、室温0.23gを少しずつ加えた後、室温で0.5時間撹拌した。この溶液にヨードメタン0.32mLを滴下した後、さらに室温で5時間撹拌した。次いで反応溶液に水を加えた後、トルエンで抽出した。抽出溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、リサイクル分取GPCで精製して目的の(実−12)を無色の結晶として得た。得られた(実−12)は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に溶解した。
【0058】
(実−12)の熱分析
(実−12)のTG−DTA測定を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、170〜320℃で、メタノール2分子に相当する重量減少(理論減少量11.2%、実測減少量13.9%)が観測され、前記化合物(実−1−2)へ変換されていることが確認された。
【0059】
実施例13
<有機半導体材料前駆体(実−13)の合成>
【化39】

塩化ヘキサノイルの代りにエチルマロニルクロリドを用いた点以外は、実施例2と同様の方法により、化合物(実−13)を合成した。得られた(実−13)は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
【0060】
(実−13)の熱分析
(実−13)のTG−DTA測定を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、100〜160℃でエステル部位の脱離に由来する重量減少(酢酸エチルと二酸化炭素のそれぞれ2分子に相当する減少、理論減少量34.3%、実測減少量35.5%)が観測され、前記化合物(実−1−2)へ変換されていることが確認された。
【0061】
実施例14
<有機半導体材料前駆体(実−14)の合成>
【化40】

塩化ヘキサノイルの代りにクロロアセチルクロリドを用いた点以外は、実施例2と同様の方法により、化合物(実−14)を合成した。得られた(実−14)は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。(実−14)の同定データを次に示す。
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS)δ/ppm:3.30−3.34(m,2H,),3.40−3.44(m,2H,),4.03(s,4H,),6.37(t,2H,J=7.4Hz),7.22−7.31(m,12H),8.25(s,2H)
【0062】
(実−14)の熱分析
(実−14)のTG−DTA測定を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、140〜192℃でエステル部位の脱離に由来する重量減少(理論減少量27.2%、実測減少量26.6%)が観測された。また、さらに昇温すると363.1℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441に記載されている、前記化合物(実−1−2)の融点に一致した。
【0063】
実施例15
<有機半導体材料前駆体(実−15)の合成>
【化41】

50mLフラスコにジクロロメタン10mL、トリエチルアミン0.35mL、N,N−ジメチルアミノピリジン45mg(0.37mmol)、2−メチル−6−ニトロベンゾイックアンハイドライド、及び4,4,4−トリフルオロブタン酸を入れ、20分間撹拌した。この溶液に実施例1に記載の化合物2(0.37mmol)、及びTHF13mLを加えて20時間撹拌した。次いで、飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出した。次いで抽出溶液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、残渣をリサイクル分取GPC(日本分析工業社製)により精製して、目的の(実−15)を、無色の固体として0.22g得た。得られた(実−15)は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
【0064】
(実−15)の熱分析
(実−15)のTG−DTA測定を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、150〜200℃でエステル部位の脱離に由来する重量減少(理論減少量35.9%、実測減少量34.3%)が観測された。また、さらに昇温すると363.0℃に吸熱ピークが観測された。これは特願2009−171441に記載されている、前記化合物(実−1−2)の融点に一致した。
【0065】
実施例16
<有機半導体材料前駆体(実−16)の合成>
【化42】

化合物2の代りに前記化合物(実−7)を用い、4,4,4−トリフルオロブタン酸の代りに2−オキソプロピオン酸を用いた点以外は、実施例15と同様の方法により、化合物(実−16)を合成した。得られた(実−16)は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
【0066】
(実−16)の熱分析
(実−16)のTG−DTA測定を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、100〜200℃でエステル部位の脱離に由来する重量減少(理論減少量20.7%、実測減少量21.1%)が観測された。また、さらに昇温すると273℃、300℃に吸熱ピークが観測され、前記化合物(実−6−2)に変換されている事が確認された。
【0067】
実施例17
<有機半導体材料前駆体(実−17)の合成>
【化43】

4−ヘキシルベンジルクロライドの代りに4−クロロメチル−4′-メチルビフェニルを用いた点以外は、実施例6と同様の方法によりジオール(実−17)を合成した(収率74%)。得られた(実−17)は、THF、トルエン、等の溶媒に溶解した。
【0068】
(実−17)の熱分析
(実−17)のTG−DTA測定を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、200〜300℃で水2分子に相当する重量減少(理論減少量5.0%、実測減少量4.0%)が観測され、下記化合物(実−17−2)に変換されていることが確認された。
【化44】

【0069】
実施例18
<有機半導体材料前駆体(実−18)の合成>
【化45】

化合物2の代りに化合物(実−17)を用いた点以外は、実施例2と同様の方法により化合物(実−18)を無色の固体として得た(収率54%)。得られた(実−18)は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
【0070】
(実−18)の熱分析
(実−18)のTG−DTA測定を行った。
5℃/minの速度で昇温したところ、195〜270℃でエステル部位の脱離に由来する重量減少(理論減少量25.3%、実測減少量24.2%)が観測された。また、さらに昇温すると、428℃に吸熱ピークが観測され、前記化合物(実−17−2)に変換されていることが確認された。
【0071】
実施例19〜22
<有機電子デバイス(有機薄膜トランジスタ)の作製>
有機半導体材料前駆体及び有機半導体材料前駆体の変換温度を表1に示すように変え、ソース・ドレイン電極を銀に変えた点以外は、実施例8と同様の方法により、電界効果型トランジスタを作製した。トランジスタの電界効果移動度、オンオフ比を表1に示す。
【表1】

なお、実施例8と同様に、260℃、30秒間の熱処理をしない場合には、何れも絶縁体として作用し、トランジスタとして動作しなかった。
【0072】
実施例23
<有機半導体前駆体(実−23)の合成>
【化46】

50mLフラスコに、化合物3を160mg(0.28mmol)、及びイミダゾール5mgを入れてアルゴン置換した後、THF15mLを加えて0℃に冷却した。そこへ、水素化ナトリウム〔55%ミネラルオイル分散182mg(4.2mmol)〕を加え、室温で30分間攪拌した。再度0℃に冷却し、二硫化炭素0.35mL(5.8mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。再度0℃に冷却し、ヨードメタン0.35mL(5.6mmol)を加え、室温で3時間攪拌した後、水10mLを加えた。溶液を酢酸エチルで4回抽出し、併せた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾液を濃縮し赤色の固体を得た。これをカラムクロマトグラフィーにより精製し、粗生成物として赤色の固体を得た(収量250mg)。
続いて、これをリサイクル分取GPC(日本分析工業製、LC−9104(装置名)、溶離液:THF)により精製し、黄色の固体100mgを得た。最後にTHF/メタノールから再結晶させ、黄色の結晶として目的物を得た(収量60mg)。
得られた(実−23)は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS,δ):2.29(s,6H),2.42(s,6H,),3.31−3.37(m,4H),5.32(t,2H,J=7.7Hz),7.06(d,4H,J=8.1Hz),7.09(d,4H,J=8.1Hz),7.14(s,2H),8.17(s,2H)
【0073】
(実−23)の熱分析
(実−23)のTG−DTA測定を行った。5℃/minの速度で昇温したところ、238〜260℃でエステル部位の脱離に由来すると思われる重量減少が観測された。またこれとは別に、KBr法で(実−23)のIRスペクトルを測定した。265℃に加熱したサンプルのIRでは、(実−23)に由来する1641及び875cm−1の吸収は消失し、新たに945、929、851cm−1の吸収が出現した。このスペクトルは別途合成した(実−4−2)のスペクトルと一致し、(実−23)の加熱処理により、前記化合物(実−4−2)に変換されていることが確認された。
【0074】
実施例24
<有機半導体前駆体(実−24)の合成>
【化47】

50mLフラスコに、化合物2を0.800g(1.47mmol)、及び4−ジメチルアミノピリジン33.3mg(0.27mmol)を入れてアルゴン置換した後、THF35mLを加えた。この懸濁液にジケテン0.26mL(3.34mmol)を加えて室温で1時間撹拌した。THFを加えて希釈した後、食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、残渣をリサイクル分取GPC〔日本分析製、LC−9104(装置名)、溶離液:THF〕により精製した。得られた固体を0℃の酢酸エチルから再結晶して目的物を得た(収量0.68g、収率65%)。
得られた(実−24)は、THF、トルエン、クロロホルム、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の溶媒に容易に溶解した。
【0075】
(実−24)の熱分析
(実−24)のTG−DTA測定を行った。5℃/minの速度で昇温したところ、150〜200℃でアセト酢酸部位の脱離に由来する重量減少(アセトンと二酸化炭素のそれぞれ2分子に相当、理論減少量28.7%、実測減少量25.7%)が観測され、前記化合物(実−1−2)に変換されていることが確認された。
【0076】
比較例1
実施例1に記載の化合物(実−1−2)を、THF、クロロホルム、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、エタノールに加えて溶解性試験を行ったところ、何れの溶媒においても不溶であり、各種印刷法により成膜することが出来なかった。
【符号の説明】
【0077】
1 有機半導体層
2 第1の電極(ソース電極)
3 第2の電極(ドレイン電極)
4 第3の電極(ゲート電極)
5 絶縁膜
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【特許文献1】特開平5−55568号公報
【非特許文献】
【0079】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,69(26),4108(1996).
【非特許文献2】Science,290,2123(2000).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体からなることを特徴とする有機半導体材料前駆体。
【化48】

〔上記式中、X及びYは、外部刺激によりXとYが結合してX−Yとして一般式(I)の化合物から脱離する基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R〜R10はそれぞれ独立に、水素、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。〕
【請求項2】
前記X及びYの一方が水素であり、他方が水酸基、又はエーテル構造、又はエステル構造若しくはチオエステル構造を有する基であることを特徴とする、請求項1記載の有機半導体材料前駆体。
【請求項3】
前記エーテル構造、又はエステル構造若しくはチオエステル構造が、下記一般式(III)〜(IX)のいずれかであることを特徴とする、請求項2記載の有機半導体材料前駆体。
【化49】

【化50】

【化51】

【化52】

【化53】

【化54】

【化55】

〔上記式中、R11は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。〕
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の有機半導体材料前駆体を含有することを特徴とするインク。
【請求項5】
請求項4記載のインクを用いて作製されたことを特徴とする絶縁部材。
【請求項6】
請求項5記載の絶縁部材を用いて作製された、前記一般式(I)で表される化合物からのX−Yの脱離により生成する、下記一般式(II)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体を主成分とすることを特徴とする電荷輸送性部材。
【化56】

〔上記式中のR〜R10は前記(I)と同じ基を表す。〕
【請求項7】
請求項6記載の電荷輸送性部材を用いて作製されたことを特徴とする有機電子デバイス。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−23334(P2012−23334A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29071(P2011−29071)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】