説明

スピンナ洗浄装置および加工装置

【課題】ミストの漏洩防止および排気が十分になされ、加工装置が備える他の機器や部品へのミストによる悪影響を防止する。
【解決手段】ケーシング20内の洗浄室21に設けたスピンナテーブル30にウェーハ(ワーク)Wを保持し、ケーシング20上方の開口をフラップ25で閉じ、洗浄室21内を密閉した状態で、スピンナテーブル30を回転させ、洗浄水供給ノズル50から、回転するウェーハWの上面に洗浄水を供給して洗浄するスピンナ洗浄装置1において、洗浄室21内の、スピンナテーブル30の保持面30Aよりも上方に配したエアブロワ70から下向き、かつスピンナテーブル30の回転方向に沿った方向に空気を噴出させて、発生するミストを下方におさえ込み、ケーシング20の下部に接続した排気管60からミストを外部に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転させたワークに洗浄水を供給して洗浄する形式のスピンナ洗浄装置と、該洗浄装置を装備した各種加工装置に関する。本発明で対象となるワークは、例えば半導体ウェーハや電子部品の基板等の薄板状のものが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイス製造工程においては、円板状の半導体ウェーハの表面に格子状の分割予定ラインによって多数の矩形領域を区画し、これら矩形領域の表面にICやLSI等の電子回路を形成し、次いで裏面を研削した後に研磨するなど必要な処理をしてから、全ての分割予定ラインを切削して切断する、すなわちダイシングして、多数の半導体チップを得ている。このようにして得られた半導体チップは、樹脂封止によりパッケージングされて、携帯電話やPC(パーソナル・コンピュータ)等の各種電気・電子機器に広く用いられている。
【0003】
半導体ウェーハをダイシングする装置としては、チャックテーブルに吸着して保持した半導体ウェーハに対して、高速回転させた円板状の薄い切削ブレードを切り込ませていくブレード式の切削装置が一般的である(例えば特許文献1)。ブレード式の切削装置でダイシングされた半導体ウェーハは、付着している切削屑等を除去するために洗浄する必要があることから、洗浄手段を備えた切削装置が提供されている(例えば特許文献2)。
【0004】
半導体ウェーハの切削装置に具備される洗浄手段は、上記特許文献2に記載されるように、ワーク(半導体ウェーハ)をスピンナテーブルに吸着して保持し、スピンナテーブルを回転させて、回転するワークに向けて洗浄水供給ノズルから洗浄水を噴出して供給することにより洗浄を行う。そして、洗浄水の供給を停止し、スピンナテーブルの回転を続けることにより、遠心力で水分を除去して乾燥まで行っている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−25209号公報
【特許文献2】特開2003−229382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような洗浄手段は、加工後のワークを洗浄して乾燥させるまでが一連の動作で行うことができるため有効なものである。ところが、この種の洗浄手段では、スピンナテーブルを高速で回転させるため、洗浄水がワークに供給されると汚れたミストが発生する。そこで、汚れたミストが周辺に飛散することを防ぐためにスピンナテーブルをケーシングで覆うなどの対策が考えられた。しかしながら、ミストの飛散を十分におさえることが困難であったり、ケーシングの内面に付着した水滴が乾いたワークに滴下したりするなど、新たな問題が生じており、より有効なミスト飛散防止の対策が求められた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、洗浄することによって発生するミストを確実に排出して周辺への悪影響を効果的に防止することができるスピンナ洗浄装置と、そのような洗浄装置を備えた加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ワークを保持する保持面を有し、回転可能に設けられたスピンナテーブルと、該スピンナテーブルに保持されたワークに洗浄水を供給する洗浄水供給ノズルと、スピンナテーブルを囲繞して洗浄室を形成する囲繞部材と、該囲繞部材に設けられて洗浄室を開閉する開閉手段と、洗浄室内の、保持面を開閉手段との間に挟む位置に配設され、該洗浄室内を排気する排気手段と、洗浄室内に配設され、保持面と開閉手段との間の空間に対して空気を排気手段方向に噴出するエアブロー手段とを少なくとも含むことを特徴としている。
【0009】
本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えば上記半導体ウェーハ等のウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、あるいは半導体製品のパッケージ、ガラス系あるいはシリコン系の基板、さらには、ミクロンオーダーの精度が要求される各種加工材料等が挙げられる。
【0010】
本発明のスピンナ洗浄装置によれば、保持面にワークを保持したスピンナテーブルを回転させながら、回転するワークに向けて洗浄水供給ノズルから洗浄水を供給することによりワークが洗浄される。そして、スピンナテーブルの回転を継続して洗浄水の供給を停止すると、ワークに付着する洗浄水が遠心力で吹き飛ばされ、さらにワークが乾燥する。
【0011】
洗浄水がワークに供給されることにより発生するミストは、囲繞部材によって洗浄室から外部へ漏洩して広がることが防止されるとともに、排気手段によって所定の処理設備に排出される。エアブロー手段から噴出する空気が、スピンナテーブルの保持面に保持されているワークにかぶさるようにして排気手段方向に流れ、これによりミストは開閉手段の方向へ流れることなく速やかに排気手段に導入される。その結果、発生するミストを確実に排気手段で排出することができる。そしてこのように効率的にミストが排出されるため、洗浄運転終了後に開閉手段を開いた際に、洗浄室内に残ったミストが洗浄室から外部に漏れるといったおそれがなく、ミストによる周辺への悪影響を防止することができる。
【0012】
本発明では、スピンナテーブルのワーク保持面を挟んで該保持面の片側に開閉手段が配設され、反対側に排気手段が配設されており、この位置関係においてエアブロー手段から排気手段方向に空気を噴出するため、上記のようにミストを排気手段に向かって円滑に導入することができ、また、開閉手段を開いた際もミストが外部に漏れにくい構造となっている。このような構造の具体例としては、開閉手段が保持面の上方に配設され、排気手段が保持面の下方に配設され、エアブロー手段から噴出される空気の噴出方向が水平方向よりも下向きに設定された形態が挙げられる。
【0013】
この形態によると、ワークから舞い上がろうとするミストを、エアブロー手段から下向きに噴出する空気でおさえ込んで速やかに排気手段に導入することができる。また、ミストが洗浄室上方の開閉手段の内面に付着することを防止することができ、このため、開閉手段の内側にミストが凝集した水滴が付着し、例えば開閉手段を開いた際などに、その水滴が洗浄後のワークに落下して汚染を招くといった不具合を防止することができる。
【0014】
本発明では、エアブロー手段の噴出方向および排気手段の排気方向が、スピンナテーブルの回転方向に沿った方向に設定されている形態を好ましいものとしている。スピンナテーブルが回転すると該スピンナテーブルの周囲には回転方向に沿った空気の流れが生じる場合があり、この空気の流れと同じ方向に空気を噴出させるとともに排気を行えば、螺旋状の空気の流れが生じるとともに、その流れを促進させることができる。ミストはその螺旋状に流れる空気に巻き込まれて流れていき、このため、ミストの舞い上がりが効果的におさえられるとともに、より一層効率的にミストを排出させることができる。
【0015】
次に、本発明の加工装置は、上記本発明のスピンナ洗浄装置を備えていることを特徴とするものであり、上記の作用効果によって、該加工装置が具備する各種機器へのミストの悪影響が防止される。本発明の具体的な加工装置としては、ワークのダイシング加工(切削ブレードによるダイシング、またはレーザ光照射によるダイシングを含む)、レーザ光を用いた孔あけ加工、研削加工、研磨加工、エキスパンド分割加工のうちの少なくとも1つの加工を行う加工装置が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワークを洗浄することによって発生する汚染したミストが洗浄室の外部に漏洩すること、ならびにそのミストを排気手段によって洗浄室の外部に排出することが確実かつ効率的になされ、結果としてミストの周辺への悪影響を効果的に防止することができるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態のスピンナ洗浄装置1を示している。このスピンナ洗浄装置1は、半導体ウェーハ(以下、ウェーハと略称)を加工する加工装置に具備され、加工後のウェーハを洗浄するものである。加工装置としては、ウェーハのダイシング加工(切削ブレードによるダイシング、またはレーザ光照射によるダイシングを含む)、レーザ光を用いた孔あけ加工、研削加工、研磨加工、エキスパンド分割加工などを行うものが挙げられる。スピンナ洗浄装置1は、そのような加工装置の基台上の所定位置に、支持台10を介して支持されている。
【0018】
支持台10は、加工装置の基台に固定される水平なプレート11と、このプレート11上に立設された複数の脚部12と、これら脚部12の上端に固定された受け部13とから構成されている。受け部13は図示せぬ円形状の底板の周縁に環状の外枠13aが設けられたものであり、この受け部13に、スピンナ洗浄装置1の主体をなす円筒状のケーシング(囲繞部材)20が嵌め込まれて支持されている。
【0019】
受け部13に支持されているケーシング20は軸心がほぼ鉛直方向に沿った状態となっている。このケーシング20の内部が洗浄室21となっており、洗浄室21内には、図2に示すように、円板状のスピンナテーブル30がケーシング20と同心状に配設されている。図3に示すように、スピンナテーブル30は、円板状の枠体31の上面に多孔質体からなる円板状の吸着部32が嵌合されたものである。
【0020】
吸着部32は枠体31と同心状でスピンナテーブル30の上面の大部分を占めており、吸着部32の上面と周囲の環状の枠体31の上面とは同一の平面であって、ウェーハを保持する平坦な保持面30Aとなっている。スピンナテーブル30には空気を吸引する配管を介してバキューム装置が接続されており(いずれも図示略)、バキューム装置を運転すると吸着部32の上方の空気が吸引され、この空気吸引作用により、スピンナテーブル30上に載置されたウェーハが吸着部32に吸着されて保持されるようになっている。
【0021】
スピンナテーブル30は、受け部13の底板を貫通して鉛直方向に延びるポスト35の上端に、回転自在に支持されている。ポスト35は、例えば複数の筒状体を組み合わせたテレスコープ構造のような伸縮する構造を有しており、ケーシング20の中心に配設されている。ポスト35が伸びるとスピンナテーブル30はケーシング20よりも上方に出てウェーハの受け渡し位置まで上昇させられる。また、ポスト35が縮むとスピンナテーブル30は洗浄室21内に設定された所定の洗浄位置まで下降させられる。このようにポスト35を伸縮させてスピンナテーブル30を昇降させるモータ等を有する昇降手段41が、プレート11上に固定されている。
【0022】
また、プレート11上には、スピンナテーブル30を回転させるモータ42が固定されている。スピンナテーブル30の枠体31には、モータ42の回転を伝達する図示せぬ回転伝達機構が接続されており、モータ42が運転されると枠体31すなわちスピンナテーブル30が回転するようになっている。スピンナテーブル30は上記のようにポスト35の伸縮によって昇降するが、下降して洗浄位置に位置付けられたときに回転可能であればよい。したがって、スピンナテーブル30が洗浄位置に位置付けられたときに、該回転伝達機構がスピンナテーブル30の枠体31に接続されるような構成が採られる。
【0023】
なお、スピンナテーブル30の昇降にかかわらず常に該回転伝達機構がスピンナテーブル30に接続する構造であっても勿論よい。スピンナテーブル30の昇降機構や回転機構は上記実施形態に限定はされず、昇降と回転が可能な構成であればいかなる構造も選択される。
【0024】
図4(a)は、スピンナ洗浄装置1で洗浄されるウェーハWを示している。ウェーハWはスピンナ洗浄装置1が具備されている加工装置の加工の種類に応じて、ウェーハWのみ単体の状態で処理される場合と、図4(b)に示すように環状のフレーム61の内側に粘着テープ62を介して支持された状態で処理される場合がある。ウェーハWは加工された後に、いずれかの状態のままスピンナ洗浄装置1に供される。フレーム61は、金属等の板材からなる剛性を有するものである。粘着テープ62は片面が粘着面とされたもので、その粘着面にフレーム61とウェーハWが貼着される。
【0025】
スピンナテーブル30の周囲には、フレーム61を着脱自在に把持する複数のクランプ34が配設されており、ウェーハWが粘着テープ62を介してフレーム61に保持されている場合、フレーム61はクランプ34に把持されて保持されるようになっている。各クランプ34は、スピンナテーブル30の枠体31に固定されている。
【0026】
ケーシング20の上方開口は、巻取式のフラップ(開閉手段)25によって開閉されるようになっている。このフラップ25は可撓性を有する材料によって帯状に形成されたもので、ケーシング20の上方の側方に配設された巻取部26から引き出されるとケーシング20の上方開口が閉塞されるようになっている。フラップ25が閉じた状態は、フラップ25の先端部をケーシング20に引っ掛けて係合させるなどの手段により保持されるようになっている。フラップ25が閉じられると洗浄室21内は密閉状態になる。なお、洗浄室21の密閉度を高めるために、上記ポスト35が貫通するケーシング20の底板の孔などは密閉シールで閉塞されることが望ましい。
【0027】
洗浄室21内には、スピンナテーブル30の保持面30Aに保持されたウェーハWの上面に洗浄水を噴出して供給する洗浄水供給ノズル50が、この場合2つ設けられている。洗浄水は、純水、あるいは静電気防止のためにCO入りの純水が用いられる。洗浄水供給ノズル50は配管51の先端に、洗浄水を下向きに噴出するように設けられている。配管51はケーシング20内に取り付けられた回転軸52に水平旋回可能に支持されており、往復旋回することによって、スピンナテーブル30に保持されて回転するウェーハWの上面にまんべんなく洗浄水を噴出するようになっている。なお図示はしていないが、ケーシング20の底部には、洗浄水をケーシング20の外部に導いて所定の処理設備に排出するための排水口および該排水口に接続された排水管が設けられている。
【0028】
ケーシング20の下部には、洗浄室21内の空気をケーシング20の外部に導いて排出するための排気管(排気手段)60の一端部が外部から接続されている。図3に示すように、排気管60はケーシング20に形成された排気口20aに対して水平に接続されているが、図2に示すように、接続された部分に近接するケーシング20の外周面から延びる接線Lと平行な方向に延びている。言い換えると、排気管60から洗浄室21内方向へ真っ直ぐに延びる延長線が、スピンナテーブル30とケーシング20の内面との間に位置するように延びている。このような排気管60の延びる方向は、スピンナテーブル30の回転方向(図1および図2で矢印Rで示す)に沿った方向と言える。
【0029】
排気管60は図示せぬ所定の処理設備まで延びており、排気管60の途中、あるいは該処理設備には、洗浄室21内の空気を吸引して排気管60に流入させる図示せぬ排気ファンが装備されている。排気管60が接続されるケーシング20の排気口20aは、スピンナテーブル30の保持面30Aよりも下方位置に形成されている。
【0030】
洗浄室21内の上部であって保持面30Aよりも上方の位置には、複数(この場合4つ)のエアブロワ(エアブロー手段)70が、周方向に等間隔をおいて配設されている。エアブロワ70はケーシング20の内面に近接しており、図示せぬブラケットを介してケーシング20の内面に支持されている。エアブロワ70には図示せぬ空気供給配管がケーシング20を気密的に貫通して接続されており、横方向に複数配列された噴出口71から空気が所定圧力で噴出するようになっている。
【0031】
これらエアブロワ70から噴出される空気の噴出方向は、横方向が、図2に示すようにスピンナテーブル30の外周縁の接線方向であって、スピンナテーブル30の回転方向に沿った方向に設定されている。そして上下方向は、図3に示すように斜め下方に設定されている。図3に示すように、エアブロワ70はスピンナテーブル30の周囲の上方に配設されており、スピンナテーブル30上に保持されるウェーハWの上面に向かってエアブロワ70から空気が噴出されるようになっている。
【0032】
図3に示すように、本実施形態においては、フラップ25はスピンナテーブル30の保持面30Aの上方に配設され、排気管60が接続された排気口20aは保持面30Aの下方に配設されている。そしてエアブロワ70は保持面30Aとフラップ25との間に配置され、保持面30Aとフラップ25との間の空間に対して空気を下方の保持面30A方向、ひいては排気口20aの方向に噴出するように構成されている。
【0033】
以上が本実施形態のスピンナ洗浄装置1の構成であり、続いて該装置1の動作ならびに作用効果を述べる。
加工装置での加工工程を終えたウェーハWは、スピンナ洗浄装置1のスピンナテーブル30に受け渡される。スピンナテーブル30へのウェーハの受け渡しは、フラップ25が開いた状態から、昇降手段41によってスピンナテーブル30が上昇させられ、ケーシング20の上方の受け渡し位置に位置付けられた状態で行われる。
【0034】
スピンナテーブル30においては予め上記バキューム装置が運転されており、ウェーハWは加工装置が備える搬送手段によって保持面30Aに同心状に載置されると同時に、吸着されて保持される。ウェーハWが図4(b)に示したように粘着テープ62を介してフレーム61に支持されている場合には、クランプ34でフレーム61を保持する。また、図4(a)に示されるようにウェーハWが単体で処理される場合には、ウェーハWは吸着部32に吸着される作用のみでスピンナテーブル30に保持される。
【0035】
ウェーハWを保持したスピンナテーブル30は、昇降手段41によって洗浄室21内に下降して洗浄位置に位置付けられる。続いてフラップ25が閉じられ、さらに、エアブロワ70から空気が噴出されるとともに上記排気ファンが運転されて洗浄室21内の空気が排気管60を経て外部に排出される。この状態で洗浄の準備が完了したことになり、次いでスピンナテーブル30が、例えば800rpm程度の速度で回転するとともに、配管51が往復旋回しながら洗浄水供給ノズル50より洗浄水が噴出される。洗浄水は回転するウェーハWの上面にまんべんなく噴出して供給され、これにより、ウェーハWに付着している汚れ成分(例えば切削屑や研削屑)が洗浄水で洗い流される。
【0036】
所定の洗浄時間が経過したら、洗浄水の供給を停止し、スピンナテーブル30の回転を継続して遠心力によりウェーハWから洗浄水を吹き飛ばし、さらに乾燥させる。この乾燥過程では、スピンナテーブル30の回転速度を例えば3000rpm程度まで上昇させて速やかに乾燥するようにする。
【0037】
なお、本実施形態では2つのノズル50から洗浄水を供給しているが、2つのノズル50のうちの一方のノズルからは洗浄水が噴出し、他方のノズルからは空気が噴出するように構成し、洗浄時には一方の洗浄水供給ノズルから洗浄水を噴出させ、乾燥時には切り替えて他方の空気供給ノズルから空気を噴出するように構成してもよい。また、また、2つのノズル50の双方が、洗浄時には洗浄水が噴出し、乾燥時には空気が噴出するように構成してもよい。このように乾燥時にノズルから空気を噴出させると、ウェーハWをより速やかに乾燥させることができるので好ましい。
【0038】
所定の乾燥時間が経過したら、スピンナテーブル30の回転を停止し、フラップ25を開けてスピンナテーブル30を受け渡し位置まで上昇させ、上記バキューム装置の運転を停止する。この後、ウェーハは加工装置が備えるロボットハンド等によってスピンナテーブル30から取り上げられ、所定の収容手段に収容される。
【0039】
さて、上記の洗浄および乾燥の過程では、回転するウェーハWに洗浄水が供給されることにより、汚れ成分を含んだミストがウェーハWから発生する。このミストはケーシング20およびフラップ25によって洗浄室21の外部へ漏洩して広がることが防止されるとともに、排気管60からの空気吸引作用によって排気口20aから排気管60を経て外部に排出される。
【0040】
ところで、ミストは粒子が細かいほど上方に舞い上がろうとして排気管60には達しにくいものであるが、本実施形態では、スピンナテーブル30に保持されているウェーハWの上方のエアブロワ70から斜め下向きに空気が噴出しており、この噴出空気によってミストはおさえ込まれて上方への舞い上がりがおさえられるとともに下方へ流動する。このため、ミストは速やかに、かつ効率よく排気口20aから排気管60に導入されていく。また、ミストが十分に排気されるため、洗浄運転終了後にフラップ25を開いた際に、洗浄室21内に残ったミストが外部に漏れるといったおそれがない。したがって、加工装置が備える他の機器や部品へのミストによる悪影響を効果的に防止することができる。なお、エアブロワ70から噴出される空気によるミストのおさえ効果を確実に得るために、エアブロワ70からの噴出空気の斜め下向き角度は、スピンナテーブル30の保持面30Aに保持されたウェーハWの上面で噴出空気が跳ね返り、これによって上向きの流れが生じないよう、適度に緩やかな角度に設定される。
【0041】
また、エアブロワ70からの空気噴出によってミストの舞い上がりがおさえられるため、ミストがフラップ25の内面に付着して凝集し、水滴が生成するといった現象が起こらない。フラップ25の内面に水滴が生成すると、例えば洗浄が終了してフラップ25を開いた際などにその水滴が洗浄後のウェーハWに落下して汚染を招くといった不具合が生じるが、本実施形態ではそのような不具合は発生せず、洗浄後のウェーハWを清浄な状態に保つことができる。
【0042】
また、本実施形態では、エアブロワ70の空気の噴出方向および排気管60による洗浄室21内の空気の排気方向が、スピンナテーブル30の回転方向に沿った方向に設定されている。スピンナテーブル30が回転すると、その周囲には回転方向に沿った空気の流れが生じる。そこでこの空気の流れと同じ方向にエアブロワ70から空気を噴出させるとともに排気管60から排気を行えば、螺旋状の空気の流れが生じるとともに、その流れを促進させることができる。ミストはその螺旋状に流れる空気に巻き込まれて排気管60に流れていき、このため、ミストの舞い上がりが効果的におさえられるとともに、より一層効率的にミストを排出させることができる。
【0043】
ところで、上記のようにフラップ25を閉じて密閉した洗浄室21内を排気しながらウェーハWを洗浄すると、洗浄室21内に空気が入りにくくなって排気効率が低下し、洗浄後にフラップ25を開けた際に、残ったミストが外部に漏れるといった不具合を招くことが考えられる。ところが本実施形態ではエアブロワ70から空気を洗浄室21内に噴出するため、洗浄室21内は十分に排気され、したがって洗浄室21内を密閉しながらもミストを十分に排気させることができる。その結果、洗浄後にフラップ25を開けて際に残ったミストが外部に漏れるといった不具合は起こらない。
【0044】
図5および図6は上記一実施形態の変形例を示しており、この変形例では、上記エアブロワ70に代わるエアブロー手段として環状のエアブロワ75が設けられている。このエアブロワ75はパイプ状で、洗浄室21内の上部であってスピンナテーブル30の保持面30Aよりも上方位置のケーシング20の内面に固定されている。エアブロワ75には、図示せぬ空気供給配管がケーシング20を気密的に貫通して接続されている。
【0045】
エアブロワ75の内周部分には等間隔をおいて複数の噴出口76が形成されている。これら噴出口76から噴出する空気の噴出方向は、横方向が、図5に示すようにケーシング20およびスピンナテーブル30の径方向に沿った方向に設定されている。また上下方向は、図9に示すように斜め下方に設定されている。斜め下方への噴出角度については、上記のようにスピンナテーブル30の保持面30Aで空気が跳ね返って上向きの流れが生じない角度に設定される。
【0046】
この変形例によれば、スピンナテーブル30に保持されるウェーハWの中心に向かってエアブロワ75から空気が噴出され、 その噴出空気は洗浄室21全体を上から覆うように流動する。このため、ウェーハWから発生するミストの舞い上がりがおさえられ、排気管60に速やかに導入される。この変形例によっても、ミストの漏洩防止ならびに排出を十分に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るスピンナ洗浄装置の一部切欠き斜視図である。
【図2】一実施形態のスピンナ洗浄装置の平面図である。
【図3】一実施形態のスピンナ洗浄装置の断面図である。
【図4】(a)は一実施形態のスピンナ洗浄装置で洗浄処理されるウェーハ(ワーク)単体の斜視図、(b)はウェーハが粘着テープを介してフレームに保持された状態を示す斜視図である。
【図5】一実施形態のスピンナ洗浄装置の変形例を示す平面図である。
【図6】同変形例の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1…スピンナ洗浄装置、20…ケーシング(囲繞部材)、21…洗浄室、25…フラップ(開閉手段)、30…スピンナテーブル、30A…保持面、50…洗浄水供給ノズル、60…排気管(排気手段)、70,75…エアブロワ(エアブロー手段)、R…回転方向、W…半導体ウェーハ(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持面を有し、回転可能に設けられたスピンナテーブルと、
該スピンナテーブルに保持されたワークに洗浄水を供給する洗浄水供給ノズルと、
前記スピンナテーブルを囲繞して洗浄室を形成する囲繞部材と、
該囲繞部材に設けられて前記洗浄室を開閉する開閉手段と、
前記洗浄室内の、前記保持面を前記開閉手段との間に挟む位置に配設され、該洗浄室内を排気する排気手段と、
前記洗浄室内に配設され、前記保持面と前記開閉手段との間の空間に対して空気を前記排気手段方向に噴出するエアブロー手段と
を少なくとも含むことを特徴とするスピンナ洗浄装置。
【請求項2】
前記開閉手段が前記保持面の上方に配設され、前記排気手段が前記保持面の下方に配設され、前記エアブロー手段から噴出される空気の噴出方向が水平方向よりも下向きに設定されることを特徴とする請求項1に記載のスピンナ洗浄装置。
【請求項3】
前記エアブロー手段の噴出方向および前記排気手段の排気方向が、前記スピンナテーブルの回転方向に沿った方向に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスピンナ洗浄装置。
【請求項4】
ワークのダイシング加工、レーザ光を用いた孔あけ加工、研削加工、研磨加工、エキスパンド分割加工のうちの少なくとも1つの加工を行う加工装置であって、請求項1〜3のいずれかに記載のスピンナ洗浄装置を備えていることを特徴とする加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−260094(P2009−260094A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108466(P2008−108466)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】