説明

スラブの表面欠陥検出方法およびスラブ表面欠陥検出装置

【課題】スラブに発生したノロ噛み等の表面欠陥を精度よく検出することのできるスラブの表面欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】スラブ6の表面にレーザ光8を照射してスラブ表面の凹凸状態を計測することでスラブ表面に発生した表面欠陥を検出する方法において、スラブ6の表面で反射したレーザ光をレーザ受光器9で受光し、レーザ受光器9から出力された信号を表面凹凸状態計測回路10に供給する。表面凹凸状態計測回路10から出力された信号を凹凸変化率算出回路11に供給してスラブの長手方向における凹凸変化率を算出し、凹凸変化率算出回路11で算出された凹凸変化率と予め定めた閾値とを判定装置12で比較し、凹凸変化率の絶対値が閾値以上となった部位を表面欠陥と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブの表面欠陥を検出する方法およびその装置に関し、特に、溶鋼を連続鋳造して得られたスラブに手入れを要する表面欠陥が発生しているか否かを検査するときに好適に用いられるスラブの表面欠陥検出方法およびスラブ表面欠陥検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、転炉などで精錬された溶鋼は、図4に示されるように、取鍋(レードル)1を経てダンディッシュ2からモールド(鋳型)3に鋳込まれる。そして、モールド3に鋳込まれた溶鋼はモールド3の下方に配置された多数のピンチローラ4の間を通過する間に表層部のみが凝固した連鋳材となり、さらに不図示の冷却水散水装置から散水される冷却水により冷却されて内部まで固化した後、切断装置5により所定の長さに切断されてスラブ6となる。
【0003】
上記のようにして得られるスラブには、種々の表面欠陥が発生する。たとえば、溶鋼の鋳込み時に気泡が巻き込まれると、ブローホールと称される表面欠陥がスラブ表面に発生する。また、溶鋼の凝固時に大きな曲げ応力が加わると、割れと称される表面欠陥がスラブ表面に発生する。さらに、溶鋼の鋳込み時に連続鋳造用パウダーが塊となって巻き込まれると、ノロ噛みと称される表面欠陥がスラブ表面に発生する。これらの表面欠陥はいずれもスラブの表面品質を低下させる要因となるため、溶鋼を連続鋳造して得られたスラブに手入れを要する表面欠陥が生じているか否かを検査する必要がある。
【0004】
溶鋼を連続鋳造して得られたスラブに表面欠陥が生じているか否かを検査する方法としては、スラブ表面上の所定領域に照明光を双方向から照射する一対の照明装置と、スラブ表面で反射した照明光をスラブ表面に対しほぼ垂直方向に受光してスラブ表面を撮像する撮像装置とを用いて表面欠陥の有無を検査する方法(特許文献1参照)や、スラブの表面凹みをレーザ距離計により計測し、レーザ距離計により計測された表面凹みから割れの有無を検査する方法(特許文献2参照)などが知られている。
【特許文献1】特開2004−219358号公報
【特許文献2】特開平2−224851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、撮像装置で得られたスラブ表面画像の濃淡から表面欠陥の有無を検査しているため、スラブに発生した表面欠陥がブローホールや割れであるのか、それともノロ噛みであるのかを判別することができないという問題点がある。
一方、特許文献2に開示された方法は、レーザ距離計により計測された表面凹みの深さから表面欠陥の有無を検査しているため、特許文献1に開示された方法と同様に、スラブに発生した表面欠陥がブローホールや割れであるのか、それともノロ噛みであるのかを判別することができないという問題点がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、スラブに発生したノロ噛み等の表面欠陥を精度よく検出することのできるスラブの表面欠陥検出方法およびスラブ表面欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、スラブの表面にレーザ光を照射してスラブ表面の凹凸状態を計測することでスラブ表面に発生した表面欠陥を検出する方法であって、前記スラブ表面の凹凸状態からスラブの長手方向における凹凸変化率を算出し、該算出した凹凸変化率の絶対値が予め定めた閾値以上となった部位を表面欠陥と判定することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の発明は、スラブの表面にレーザ光を照射してスラブ表面の凹凸状態を計測することでスラブ表面に発生した表面欠陥を検出するスラブ表面欠陥検出装置であって、前記スラブ表面で反射したレーザ光を受光するレーザ光受光手段と、該レーザ光受光手段で受光したレーザ光を基に前記スラブ表面の凹凸状態を計測する表面凹凸状態計測手段と、該表面凹凸状態計測手段で計測されたスラブ表面の凹凸状態から前記スラブの長手方向における凹凸変化率を算出する凹凸変化率算出手段と、該凹凸変化率算出手段で得られた凹凸変化率の値を予め定めた閾値と比較し、凹凸変化率の絶対値が閾値以上となった場合に表面欠陥と判定する表面欠陥判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1及び請求項2の発明によると、スラブ表面の凹凸状態からスラブの長手方向における凹凸変化率を算出し、算出された凹凸変化率を予め定めた閾値と比較し、凹凸変化率の絶対値が閾値以上となった部位を表面欠陥と判定するため、スラブに発生したノロ噛み等の表面欠陥を精度よく検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図1〜図3を参照して、本発明に係るスラブの表面欠陥検出方法およびスラブ表面欠陥検出装置について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るスラブ表面欠陥検出装置の概略構成を示す図であり、図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るスラブ表面欠陥検出装置は、レーザ投光器7a,7b、レーザ光受光手段としてのレーザ受光器9、表面凹凸状態計測手段としての表面凹凸状態計測回路10、凹凸変化率算出手段としての凹凸変化率算出回路11、および表面欠陥判定手段としての判定装置12を備えている。
【0010】
レーザ投光器7a,7bは検査対象物であるスラブ6の表面に例えば0.1〜0.2mmのビーム幅を有するスリット状のレーザ光8を投光するものであり、スラブ6の幅方向に一定間隔で配列されている。また、レーザ投光器7a,7bはスラブ6からの輻射熱が届かない位置(例えば、スラブ表面から上方に2500mm以上離れた位置)に配置されており、従って、スラブ6の表面にはレーザ投光器7a,7bからのレーザ光8がほぼ真上から投光されるようになっている。なお、レーザ投光器7a,7bからスラブ6の表面に投光されたレーザ光はスラブ6の表面で反射した後、レーザ受光器9に入射するようになっている。
【0011】
レーザ受光器9はスラブ6の表面で反射したレーザ光を受光するものであり、このレーザ受光器9から出力された信号は、スラブ表面の凹凸変化情報として凹凸状態計測回路10に供給されるようになっている。
表面凹凸状態計測回路10はレーザ受光器9から出力された信号を基にスラブ6の幅方向におけるスラブ表面の凹凸状態をスラブ6の進行方向である長手方向に連続的に計測してスラブ表面全体の凹凸データを取得するものであり、この表面凹凸状態計測回路10から出力された信号は凹凸変化率算出回路11に供給されるようになっている。
【0012】
凹凸変化率算出回路11は表面凹凸状態計測回路10により計測した表面凹凸状態のデータを処理してスラブ6の長手方向におけるスラブ表面の凹凸変化率を算出するものであり、この凹凸変化率算出回路11から出力された信号は、スラブ6の表面に発生する表面欠陥情報として判定装置12に供給されるようになっている。
判定装置12は凹凸変化率算出回路11で算出されたスラブ表面の凹凸変化率と予め定めた閾値とを比較して表面欠陥の有無等を判定するものであり、スラブの内部側に凹となる方向の凹凸変化率の絶対値(以下、単に「凹凸変化率の絶対値」と記す。)が閾値以上の場合には「スラブ6の表面にノロ噛みが発生した。」と判定し、凹凸変化率の絶対値が閾値より小さい場合には「スラブ6の表面にノロ噛みが発生していない。」と判定するように構成されている。
【0013】
スラブ6の表面にノロ噛みと称される表面欠陥が発生したときのスラブ表層部の断面を図2に示す。図2に示されるように、ノロ噛みと称される表面欠陥がスラブ6に発生すると、スラブ6の表面凹凸がノロ噛み13の先端部分で急峻に変化することがわかる。
スラブ6の表面にノロ噛みが発生したときの凹凸変化率算出回路11の出力信号波形の一例を図3に示す。図3に示されるように、スラブ6の表面にノロ噛みが発生すると、凹凸変化率算出回路11で算出されるスラブ長手方向の凹凸変化率が大きく変化することがわかる。
【0014】
したがって、凹凸変化率算出回路11で算出された凹凸変化率の絶対値を予め定めた閾値と比較することで、スラブ6にノロ噛みが発生している場合には凹凸変化率の絶対値が閾値以上となるので、スラブ6に発生した表面欠陥がノロ噛みであるか否かを精度よく検出することができる。
上述した本発明の一実施形態では、レーザ投光器からのレーザ光をスラブの表面にほぼ真上から投光するようにしたが、これに限られるものではなく、レーザ投光器からのレーザ光をスラブの表面に斜め上方から投光するようにしてもよい。ただし、より高い精度で表面欠陥を検出するためには、レーザ投光器からのレーザ光をスラブの表面にほぼ真上から投光することが好ましい。
【0015】
また、上述した本発明の一実施形態では、スラブの幅方向に配列された二つのレーザ投光器からスラブの表面にレーザ光を投光するようにしたが、これに限られるものではなく、スラブの幅寸法に応じてレーザ投光器の個数を適宜設定すればよい。
また、上述した本発明の一実施形態では、スラブの表面で反射したレーザ光を1個のレーザ受光器で受光するようにしたが、これに限られるものではなく、レーザ光受光手段としてのレーザ受光器の個数は複数個であってもよい。
【0016】
また、スラブの長手方向における凹凸変化率を求める方法としては、上述した本発明の一実施形態のように、スラブの幅方向に長いスリット状のレーザ光をスラブの表面に照射しながらスラブをその長手方向に移動させてスラブの長手方向における凹凸変化率を求めてもよいし、スラブの表面に照射されたスリット状あるいはスポット状のレーザ光をスラブの幅方向や長手方向に走査してスラブの長手方向における凹凸変化率を求めてもよい。
【0017】
また、上述した本発明の一実施形態では、レーザ受光器から出力された信号を微分処理してスラブの長手方向における凹凸変化率を取得するようにしたが、これに限られるものではなく、例えば、表面凹凸状態計測回路により計測された二つの計測点の間の傾きからスラブの長手方向における凹凸変化率を取得するようにしてもよい。
上述した本発明の一実施形態では、スラブの上面側における表面欠陥の検出について記載したが、本発明はスラブの下面側における表面欠陥の検出についても同様に適用することができる。さらに、本発明の構成を、スラブの上面側及び下面側に設けることで、スラブの上下面の欠陥の検出が同時に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るスラブ表面欠陥検出装置の概略構成を示す図である。
【図2】スラブの表面にノロ噛みと称される表面欠陥が発生したときのスラブ表層部の断面を示す図である。
【図3】スラブの表面にノロ噛みが発生したときの凹凸変化率算出回路の出力信号波形の一例を示す図である。
【図4】溶鋼の連続鋳造設備の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1 取鍋
2 ダンディッシュ
3 モールド(鋳型)
4 ピンチローラ
5 切断装置
6 スラブ
7a,7b レーザ投光器
8 レーザ光
9 レーザ受光器(レーザ光受光手段)
10 表面凹凸状態計測回路(表面凹凸状態計測手段)
11 凹凸変化率算出回路(凹凸変化率算出手段)
12 判定装置(表面欠陥判定手段)
13 ノロ噛み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブの表面にレーザ光を照射してスラブ表面の凹凸状態を計測することでスラブ表面に発生した表面欠陥を検出する方法であって、
前記スラブ表面の凹凸状態からスラブの長手方向における凹凸変化率を算出し、該算出した凹凸変化率の絶対値が予め定めた閾値以上となった部位を表面欠陥と判定することを特徴とするスラブの表面欠陥検出方法。
【請求項2】
スラブの表面にレーザ光を照射してスラブ表面の凹凸状態を計測することでスラブ表面に発生した表面欠陥を検出するスラブ表面欠陥検出装置であって、
前記スラブ表面で反射したレーザ光を受光するレーザ光受光手段と、
該レーザ光受光手段で受光したレーザ光を基に前記スラブ表面の凹凸状態を計測する表面凹凸状態計測手段と、
該表面凹凸状態計測手段で計測されたスラブ表面の凹凸状態から前記スラブの長手方向における凹凸変化率を算出する凹凸変化率算出手段と、
該凹凸変化率算出手段で得られた凹凸変化率の値を予め定めた閾値と比較し、凹凸変化率の絶対値が閾値以上となった場合に表面欠陥と判定する表面欠陥判定手段とを備えたことを特徴とするスラブ表面欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−117279(P2010−117279A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291549(P2008−291549)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】