説明

センサデバイスの製造方法及びセンサデバイス

【課題】本発明は、湿気の多い外気によるセンサの金属電極の腐食を防止し、かつセンサの樹脂封止によるセンサの反りの発生を防止してセンサ特性への影響を低減するセンサデバイスの製造方法及びセンサデバイスを提供する。
【解決手段】センサデバイスの製造方法は、固定部、前記固定部の内側に位置する可動部、前記固定部と前記可動部を接続する可撓部、及び複数の金属電極を有するセンサを基板上に配置し、前記センサの複数の金属電極及び前記基板の複数の端子をボンディングワイヤにより電気的に接続し、前記複数の金属電極と前記複数の端子の間にある前記ボンディングワイヤの一部が露出するように、前記センサの複数の金属電極の前記ボンディングワイヤと接続された部位を樹脂により覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外力により可動する可動部を有するセンサデバイスの製造方法及びセンサデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型軽量化、多機能化や高機能化が進み、実装される電子部品に高密度化が要求されている。このような要求に応じて各種電子部品が半導体デバイスとして製造されるものが増加している。また、回路素子として製造される半導体デバイス以外に各種センサも半導体デバイスとして製造されて、小型軽量化が図られている。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて小型で単純な構造を有する力学量センサデバイスが実用化されている。力学量センサデバイスとしては、例えば、加速度センサあるいは角速度センサがある。加速度センサあるいは角速度センサでは、半導体基板を用いて外力に応じて変位する可動部を有するセンサを形成しており、可動部の変位が加速度あるいは角速度を示す電気信号の変化として検出される。
【0003】
上記のような力学量センサデバイスでは、センサの可動部を安定して変位させるため、センサを形成した半導体基板をパッケージキャップで覆い、パッケージキャップの周縁部を樹脂等で封止する中空パッケージが利用されている。この中空パッケージを利用する力学量センサデバイスでは、パッケージキャップの周縁部を樹脂で封止する際に、浸透圧により樹脂がパッケージキャップ内部に侵入してセンサにまで流れ込むことがあり、センサの動きを悪化させ、センサの感度特性や周波数特性などに悪影響を与えるという問題があった。この問題に対応する特許文献1に記載された半導体加速度センサでは、パッケージキャップの周縁部を封止する樹脂を2回に分けて塗布して、樹脂がキャップ部材内部に侵入することを防止している。
【0004】
また、中空パッケージを利用する力学量センサデバイスでは、半導体基板と熱膨張係数が異なるパッケージキャップから応力を受けて、センサのオフセット電圧や感度などのセンサ特性の高精度化が図れないという問題もあった。この問題に対応する特許文献2に記載された半導体加速度センサでは、パッケージキャップと実装基板との間に複数の支持体を設け、パッケージキャップと実装基板のパッドとの間の隙間にダイボンドペースト(接着材)を充填して、熱膨張係数の差によりセンサに発生する歪みを緩和している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−156507号公報
【特許文献2】特開2002−98709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記中空構造パッケージを利用する力学量センサデバイスでは、パッケージキャップの周縁部が樹脂で封止されて中空パッケージの内部は外気から遮断されるが、経年変化により中空パッケージの内部には外気が徐々に侵入し、中空パッケージの内部の気体は外気と同じになる。また、中空パッケージを利用する力学量センサデバイスでは、センサを実装する基板側の端子とセンサ側の電極パッドとをボンディングワイヤにより接続している。センサ側の電極パッドは、コストの観点からAu等の耐湿性の高い金属材料を用いることができず、Al、Al合金を用いている。力学量センサデバイスが湿気の多い場所で使用される場合、中空パッケージの内部も湿気の多い状態になり、センサ側のボンディングワイヤを接続する電極パッドが腐食する虞があり、その腐食により配線の断線することがある。
【0007】
上記特許文献1及び特許文献2では、パッケージキャップの周縁部を封止する樹脂及びダイボンドペースト(接着材)は、センサ側の電極パッドと、実装基板側の電極パッドと、これらの電極パッドを接続するボンディングワイヤとを含んで覆うように塗布されている。このため、センサの周囲の周囲に存在する樹脂及びダイボンドペーストと半導体基板の熱膨張係数の差による応力の影響によりセンサのオフセット電圧が大きくなる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、中空パッケージのセンサの金属電極を湿気から保護することと、センサ特性への影響を最小化することを両立させるセンサデバイスの製造方法及びセンサデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施の形態に係るセンサデバイスの製造方法は、固定部、前記固定部の内側に位置する可動部、前記固定部と前記可動部を接続する可撓部、及び複数の金属電極を有するセンサを基板上に配置し、前記センサの複数の金属電極及び前記基板の複数の端子をボンディングワイヤにより電気的に接続し、前記複数の金属電極と前記複数の端子の間にある前記ボンディングワイヤの一部が露出するように、前記センサの複数の金属電極の前記ボンディングワイヤと接続された部位を樹脂により覆うことを特徴とする。このセンサデバイスの製造方法によれば、センサの複数の金属電極上を樹脂により覆うため、湿気の多い外気による金属電極の腐食を防止し、かつ樹脂によりセンサに反りが発生することを防止してセンサ特性への影響を低減することができ、センサデバイスの信頼性を向上できる。
【0010】
また、本発明の一実施の形態に係るセンサデバイスの製造方法は、前記基板と前記センサの間に複数の金属電極を有する制御ICを配置し、前記制御ICの複数の金属電極と、前記センサの複数の金属電極及び前記基板の複数の端子を前記ボンディングワイヤにより電気的に接続し、前記制御ICの複数の金属電極と前記複数の端子の間にある前記ボンディングワイヤの一部は露出するように、前記制御ICの複数の金属電極の前記ボンディングワイヤと接続された部位を前記樹脂により覆ってもよい。このセンサデバイスの製造方法によれば、制御ICの複数の金属電極上を樹脂により覆うため、湿気の多い外気による金属電極の腐食を防止し、かつ樹脂によりセンサに反りが発生することを防止してセンサ特性への影響を低減することができ、センサデバイスの信頼性を向上できる。
【0011】
また、本発明の一実施の形態に係るセンサデバイスの製造方法は、前記センサの複数の金属電極と前記ボンディングワイヤが接続された部位は前記樹脂により個別に覆ってもよい。このセンサデバイスの製造方法によれば、センサの複数の金属電極上は樹脂により個別に覆われるため、樹脂がセンサに与える応力を更に低減でき、樹脂によりセンサに反りが発生することを防止してセンサ特性への影響を低減することができ、センサデバイスの信頼性を向上できる。
【0012】
また、本発明の一実施の形態に係るセンサデバイスの製造方法は、前記制御ICの複数の金属電極と前記ボンディングワイヤが接続される部位は前記樹脂により個別に覆ってもよい。このセンサデバイスの製造方法によれば、制御ICの複数の金属電極上は樹脂により個別に覆われるため、樹脂がセンサに与える応力を更に低減でき、樹脂によりセンサに反りが発生することを防止してセンサ特性への影響を低減することができ、センサデバイスの信頼性を向上できる。
【0013】
また、本発明の一実施の形態に係るセンサデバイスの製造方法は、前記センサの複数の金属電極間又は前記制御ICの複数の金属電極間には、前記樹脂を前記金属電極毎に分離する分離部を形成してもよい。このセンサデバイスの製造方法によれば、センサ又は制御ICの複数の金属電極上を覆う樹脂が分離部により分離されるため、各金属電極上を覆う樹脂が隣接する電極パッドに広がることを防止することができ、樹脂によりセンサに反りが発生することを防止することができる。
【0014】
また、本発明の一実施の形態に係るセンサデバイスの製造方法は、前記樹脂は、曲げ弾性率が5GPa以下のシリコン樹脂材料を使用してもよい。このセンサデバイスの製造方法によれば、樹脂がセンサに与える応力を低減できる。
【0015】
本発明の一実施の形態に係るセンサデバイスは、固定部、前記固定部の内側に位置する可動部、前記固定部と前記可動部を接続する可撓部、及び複数の金属電極を有するセンサと、複数の端子を有し、前記センサを載置する基板と、前記複数の金属電極と前記基板の複数の端子を電気的に接続するボンディングワイヤと、を備え、前記複数の金属電極と前記ボンディングワイヤが接続する部位は樹脂で覆われており、前記複数の金属電極と前記複数の端子の間にある前記ボンディングワイヤの一部は露出する、ことを特徴とする。このセンサデバイスによれば、センサの複数の金属電極上を樹脂により覆うため、湿気の多い外気による金属電極の腐食を防止し、かつ樹脂によりセンサに反りが発生することを防止してセンサ特性への影響を低減することができ、センサデバイスの信頼性を向上できる。
【0016】
また、本発明の一実施の形態に係るセンサデバイスは、前記基板と前記センサの間に配置され、複数の金属電極を有する制御ICをさらに備え、前記ボンディングワイヤは、前記制御ICの複数の金属電極と前記基板の複数の端子とを電気的に接続し、前記制御ICの複数の金属電極と前記ボンディングワイヤが接続される部位は前記樹脂により覆われており、前記制御ICの複数の金属電極と前記複数の端子の間にある前記ボンディングワイヤの一部は露出してもよい。このセンサデバイスによれば、制御ICの複数の金属電極上を樹脂により覆うため、湿気の多い外気による金属電極の腐食を防止し、かつ樹脂によりセンサに反りが発生することを防止してセンサ特性への影響を低減することができ、センサデバイスの信頼性を向上できる。
【0017】
また、本発明の一実施の形態に係るセンサデバイスは、前記センサは、前記複数の金属電極間に前記樹脂を分離する複数の分離部を有し、前記センサの複数の金属電極と前記ボンディングワイヤが接続される部位は前記樹脂により個別に覆われてもよい。このセンサデバイスによれば、センサの複数の金属電極上は樹脂により個別に覆われるため、樹脂がセンサに与える応力を更に低減でき、樹脂によりセンサに反りが発生することを防止してセンサ特性への影響を低減することができ、センサデバイスの信頼性を向上できる。
【0018】
また、本発明の一実施の形態に係るセンサデバイスは、前記制御ICは、前記複数の金属電極間に前記樹脂を分離する複数の分離部を有し、前記制御ICの複数の金属電極と前記ボンディングワイヤが接続される部位は前記樹脂により個別に覆われてもよい。このセンサデバイスによれば、制御ICの複数の金属電極上は樹脂により個別に覆われるため、樹脂がセンサに与える応力を更に低減でき、樹脂によりセンサに反りが発生することを防止することができ、センサデバイスの信頼性を向上できる。
【0019】
また、本発明の一実施の形態に係るセンサデバイスは、前記樹脂は、曲げ弾性率が5GPa以下のシリコン樹脂材料であってもよい。このセンサデバイスによれば、樹脂は吸水率が低く、かつ曲げ弾性率が5GPa以下の樹脂材料であるため、湿気の多い外気による電極パッドの酸化を防止することができ、かつ樹脂によりセンサに反りが発生することを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、センサの金属電極上を樹脂で各々覆うことにより、湿気の多い外気による金属電極の腐食を防止し、かつ樹脂によるセンサに反りが発生することを防止してセンサ特性への影響を低減するセンサデバイスの製造方法及びセンサデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る加速度センサの全体構成を示す図であり、(A)は加速度センサの全体構成を示す断面図、(B)は加速度センサの全体構成を示す平面図である。
【図2】図1の加速度センサの製造方法の一部を説明するための断面図であり、(A)は半導体基板によりセンサを形成する工程を説明するための断面図、(B)は(A)のセンサにセンサ上部キャップとセンサ下部キャップを接合する工程を説明するための断面図、(C)は基板の形成工程及び制御ICの接合工程を説明するための断面図である。
【図3】図1の加速度センサの製造方法の一部を説明するための断面図であり、(A)は図2(B)のセンサの接合工程とボンディングワイヤの接続工程とポッティング樹脂の塗布工程とを説明するための断面図、(C)はパッケージキャップの接合工程を説明するための断面図である。
【図4】図3(A)のボンディングワイヤの接続工程の一部を説明するための加速度センサの平面図である。
【図5】図3(A)のポッティング樹脂の塗布工程の一部を説明するための加速度センサの平面図である。
【図6】図3(A)のボンディングワイヤの接続工程の一部を説明するための加速度センサの平面図である。
【図7】図3(A)のポッティング樹脂の塗布工程の一部を説明するための加速度センサの平面図である。
【図8】第1の実施の形態に係るポッティング樹脂の塗布位置を説明するための加速度センサの部分断面図であり、(A)は貫通電極とボンディングワイヤと電極パッドとを含む領域にポッティング樹脂を塗布した状態を説明するための加速度センサの部分断面図、(B)は(A)の状態から貫通電極とセンサの電極パッドとをボンディングワイヤにより接続する工程を説明するための加速度センサの部分断面図、(C)は貫通電極とセンサの各電極パッドにポッティング樹脂を塗布した状態を説明するための加速度センサの部分断面図である。
【図9】第1の実施の形態に係るポッティング樹脂の塗布位置を説明するための加速度センサの部分断面図であり、(A)は制御ICの電極パッド上とセンサの電極パッド上をポッティング樹脂により覆う工程を説明するための加速度センサの部分断面図である。
【図10】第1の実施の形態に係るセンサの具体例を説明するための平面図であり、(A)はセンサの構成例を説明するための平面図、(B)は(A)のセンサの複数の電極パッドをポッティング樹脂により封止した状態を示す平面図である。
【図11】第1の実施の形態に係るオフセット電圧の測定対象の加速度検出方向を示す加速度センサの平面図である。
【図12】図11の加速度センサのXYZ3軸の各オフセット電圧の測定結果を示すグラフである。
【図13】第1の実施の形態に係るポッティング樹脂としてエポキシ系樹脂を用いて曲げ弾性率を変化させた場合のXYZ3軸の各オフセット電圧の測定結果を示すグラフである。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る加速度センサの概略構成を示す平面図である。
【図15】第2の実施の形態に係る電極パッド及び分離部の製造方法の一例を説明するための図14のA−A線断面図であり、(A)は電極パッド及び分離部の形成工程を説明するための図14のA−A線断面図、(B)はポッティング樹脂の塗布工程を説明するための図14のA−A線断面図である。
【図16】第2の実施の形態に係る電極パッド及び分離部の製造方法の他の例を説明するための図14のA−A線断面図であり、(A)は電極パッド及び分離部の形成工程を説明するための図14のA−A線断面図、(B)はポッティング樹脂の塗布工程を説明するための図14のA−A線断面図である。
【図17】第2の実施の形態に係る加速度センサの樹脂ポッティングの具体例を説明するためのセンサの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態では、センサデバイスとして加速度センサの例について図1〜図13を参照して説明する。
【0024】
<加速度センサの構成>
まず、第1の実施の形態に係る加速度センサの構成について図1を参照して説明する。図1は第1の実施の形態に係る加速度センサ100の全体構成を示す断面図である。本第1の実施形態では、加速度センサと共に制御ICをパッケージ化する場合を説明するが、本発明はこれに限定されず、センサのみがパッケージ化されてもよい。
【0025】
図1(A)は加速度センサ100の全体構成を示す断面図であり、図1(B)は加速度センサ100の全体構成を示す平面図である。図1(A)において、加速度センサ100は、基板101、貫通電極105、制御IC106、センサ下部キャップ107、センサ109、センサ上部キャップ115、パッケージキャップ116及びボンディングワイヤ118等を含む。図1(B)は、図1(A)に示す加速度センサ100のパッケージキャップ116を除いて、加速度センサ100を上面側から見た平面図である。図1(B)において、基板101の図中の左右領域及び上部領域には、各々複数の貫通電極105を有する電極群131〜133が配置されている。制御IC106の図中の左右領域及び上部領域には、各々複数の電極パッド140を有する電極群141〜143が配置されている。センサ109の図中の上部領域には複数の電極パッド113を有する電極群151が配置されている。
【0026】
基板101は、配線層102、絶縁層103及び配線層104を有する3層構造のプリント配線基板である。絶縁層103は絶縁物質を含み、配線層102及び104は導電物質を含む。導電物質とは、金属などであり、例えば、銅、銀、金、ニッケル、パラジウムなどを用いることができる。絶縁物質には、絶縁性樹脂を用いる。例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネートなどを用いることができる。上記樹脂は、単体で用いられてもよく、2種類以上の樹脂を組み合わせて用いられてもよい。また、上記樹脂に、ガラス、タルク、シリカなどの無機フィラーを併用して用いてもよい。本第1の実施の形態では、基板101が3層からなる例を説明するが、本発明はこれに限定されず、基板101の層は3層以下であってもよく、3層以上であってもよい。
【0027】
貫通電極105は、基板101を貫通して形成されて配線層102及び104と電気的に接続される。制御IC106は、図中に示す基板101の上面の所定位置に貫通電極105と接続するための複数の電極パッド140(金属電極)が形成されている。
【0028】
センサ109は、固定部110と、固定部110に接続された可撓部111と、可撓部111に接続された錘部112と、可撓部111に配置されて可撓部111の変位をXYZの3軸方向で検出する複数のピエゾ抵抗素子(図示せず)と、電極パッド113(金属電極)と、を含む。センサ109に加速度が加わると、錘部112が変位し、この変位に伴って可撓部111が撓む。可撓部111が撓むと、可撓部111に配置されたピエゾ抵抗素子に力が加わり、ピエゾ抵抗素子の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化を検出して、センサ109に加えられた加速度の大きさ、方向などを検出する。センサ109からの信号は、電極パッド113からボンディングワイヤ118及び貫通電極105などを通して制御IC106に伝達される。制御IC106からの信号はボンディングワイヤ117及び貫通電極105などを通して基板101の外部に伝達される。センサ109は、図中の下側に示す部分にセンサ下部キャップ107が接合されている。
【0029】
センサ上部キャップ115は、センサ109の可撓部111と錘部112の上部を覆うように形成され、樹脂114等によりセンサ109の固定部110の上面に接合される。センサ上部キャップ115は、錘部112と可撓部111の上方向への過大な変位を制限し、破損を防止する。センサ上部キャップ115は省略されてもよく、センサ上部キャップ115が省略される場合は、パッケージキャップ116がセンサ上部キャップ115と同一の役割を果たしてもよい。パッケージキャップ116がセンサ上部キャップ115と同一の役割を果たす場合、パッケージキャップ116のセンサ109の上面に対向する部分に凸形状のストッパーが形成されてもよい。
【0030】
パッケージキャップ116は、有機材料を含み、絶縁性樹脂など、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などが用いられる。パッケージキャップ116は、接着剤(図示せず)により基板101の基板101の上面に接合される。但し、センサ109は樹脂で封止されてはおらず、パッケージキャップ116の内側は中空である。すなわち、加速度センサ100は、中空パッケージを利用するものである。
【0031】
図1において、120はポッティング樹脂である。ポッティング樹脂120は、センサ109の電極パッド113上と、制御IC106の電極パッド140上にそれぞれ塗布されて、電極パッド113及び電極パッド140を覆う。ポッティング樹脂120は、センサ109の電極パッド113及び貫通電極105と制御IC106の電極パッド140及び貫通電極105が各々ボンディングワイヤ118により接続され、貫通電極105と制御IC106の電極パッド140がボンディングワイヤ117により接続された後に塗布される。ポッティング樹脂120は、センサ109の電極パッド113上と、制御IC106の電極パッド140上にそれぞれ塗布されるため、ボンディングワイヤ117及び118の一部は露出している。ポッティング樹脂120は、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ウレタン系樹脂等の絶縁性を有し、ワイヤボンディング後に電極パッドパッド上に塗布可能な樹脂材料を選択することが望ましい。また、ポッティング樹脂120は、吸水性(吸水率)が低い材料を選択することが望ましい。なお、本実施の形態1では、ポッティング樹脂120の耐湿性を評価する指標として吸水率を用いることにした。この吸水率は、例えば、温度85°C、湿度85%RHの恒温室内で樹脂を保存し、その保存前と72時間保存後の樹脂の質量変化を測定し、樹脂の質量に占める割合から求めることができる。この測定条件を用いてシリコン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ウレタン系樹脂の各吸水率を測定すると、シリコン系樹脂の吸水率は0.02%、アクリル系樹脂の吸水率は0.68%、エポキシ系樹脂の吸水率は1.0%、ポリイミド系樹脂の吸水率は0.12%、ウレタン系樹脂の吸水率は0.6%であった。このため、ポッティング樹脂120としては吸水率が低いシリコン系樹脂を選択することが望ましい。また、シリコン系樹脂の具体例として、型番:X35−247N(信越化学株式会社製)の吸水率を測定したところ、0.12%であった。
【0032】
ポッティング樹脂120は、湿気の多い外気から電極パッドの腐食を防止するために塗布される。このため、Alやアルミ合金、例えば、Al−Si、Al−Si−Cu、Al−Nd等の大気中の水分により酸化しやすい金属材料が用いられる電極パッドに対して、吸水率が低いポッティング樹脂120を塗布することは有効である。また、ポッティング樹脂120の塗布面積をワイヤボンディング後の電極パッド上に限定することにより、ポッティング樹脂120の塗布によるセンサ109に反りが発生することを防止し、かつ、ポッティング樹脂120がセンサ109に与える応力の影響を低減して、加速度センサ100のオフセット電圧や感度特性などに悪影響を与えることを防止することが可能になる。このため、ポッティング樹脂120として使用する材料は、上記シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ウレタン系樹脂等のうち、曲げ弾性率が低い樹脂材料を選択することが望ましい。
【0033】
<加速度センサの製造方法>
以下、加速度センサ100の製造方法について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2及び図3は、図1に示した加速度センサ100の断面図に基づいて各製造工程を示している。
【0034】
(1)半導体基板の加工(図2(A)参照)
半導体基板にピエゾ抵抗素子を形成した後、固定部110、可撓部111及び錘部112をエッチングすることにより、固定部110、可撓部111及び錘部112を有するセンサ109を形成する。エッチング方法として、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を用いることができる。
【0035】
(2)センサ上部キャップ及びセンサ下部キャップの接合(図2(B)参照)
次に、センサ109上面の所定位置に電極パッド113を形成する。次に、Si基板等からなるセンサ下部キャップ107をセンサ109の図中の下面側に樹脂接合等により接合するとともに、センサ上部キャップ115をセンサ109の図中の上面側に樹脂114等により接合する。
【0036】
(3)基板の加工及び制御ICの接着(図2(C)参照)
次に、配線層102と絶縁層103と配線層104とを含む基板101を製造し、図中に示す部分に貫通電極105を形成する。貫通電極105は、基板101を貫通する凹部(図示せず)を形成し、凹部に導電性材料を充填すること等により形成される。次に、貫通電極105が形成された基板101の図中に示す上面に制御IC106をダイアタッチ(ダイボンディング)108等により接着する。
【0037】
(4)センサの接着、配線及び樹脂ポッティング(図3(A)参照)
次に、図2(B)に示したセンサ109を図2(C)に示した制御IC106の上面にダイアタッチ(ダイボンディング)108等により接着する。次に、センサ109の電極パッド113及び基板101の貫通電極105と、制御IC106の上面に形成された一方の電極パッド140(図中の右側)及び基板101の貫通電極105と、をボンディングワイヤ118により各々接続するとともに、制御IC106の上面に形成された他方の電極パッド140(図中の左側)と基板101の貫通電極105とをボンディングワイヤ117により接続する。次に、ボンディングワイヤ118を接続した後のセンサ109の電極パッド113上と、制御IC106の一方および他方の各電極パッド140上に各々ポッティング樹脂120を塗布して覆う。なお、ボンディングワイヤ117及び118の接続工程及びポッティング樹脂120の塗布工程の一例については、図4〜図7を参照して詳述する。図4〜図7は、図1(A)に示した加速度センサ100のパッケージキャップ116を除いて、センサ上部キャップ115が接合された状態の加速度センサ100を上面側から見た平面図である。
【0038】
(4−1)基板及び制御ICのボンディングワイヤによる接続(図4参照)
図4において、まず、基板101の電極群131〜133と、制御IC107の電極群141〜143と、を複数のボンディングワイヤ117及び118により接続する。
【0039】
(4−2)制御ICの各電極群の樹脂封止(図5参照)
次に、制御IC106の各電極群141〜143上にポッティング樹脂120を各々塗布して覆う。
【0040】
(4−3)基板及びセンサのボンディングワイヤによる接続(図6参照)
次に、基板101の電極群133とセンサ109の電極群151とを複数のボンディングワイヤ118により接続する。
【0041】
(4−4)センサの電極群の樹脂ポッティング(図7参照)
次に、センサ109の電極群151上にポッティング樹脂120を塗布して覆う。以上の(4−1)〜(4−4)がボンディングワイヤ117及び118の接続工程及びポッティング樹脂120の塗布工程の一例である。
【0042】
(5)パッケージキャップの接合(図3(B)参照)
次に、パッケージキャップ116を基板101の上面に接着剤(図示せず)により接合して、センサ109と、センサ109の複数の電極パッド113と、制御IC106の複数の電極パッド140と、基板101の複数の貫通電極105を覆って封止する。但し、センサ109及び制御IC106は樹脂で封止されてはおらず、パッケージキャップ116の内側は中空である。
【0043】
(ポッティング樹脂の塗布位置)
次に、樹脂ポッティングの塗布位置について図8(A)、(B)及び(C)と図9に示す加速度センサの部分断面図を参照して説明する。図8(A)は基板の貫通電極とボンディングワイヤと制御ICの電極パッドとをポッティング樹脂により封止した状態の一例を示す部分断面図であり、図8(B)は基板の貫通電極とボンディングワイヤと制御ICの電極パッドとをポッティング樹脂により封止した状態の他の例を示す部分断面図、図8(C)は貫通電極とセンサの各電極パッドにポッティング樹脂を塗布した状態の他の例を示す部分断面図である。図9は制御ICの電極パッドとセンサの電極パッドとをポッティング樹脂により封止した状態の一例を示す部分断面図である。なお、図8(A)、(B)及び(C)と図9は、基板101の貫通電極105、制御IC106の電極パッド140、及びセンサ109の電極パッド113の各部分の一部の構成を簡略化して示す断面図である。また、図8(A)、(B)及び(C)と図9において、図1〜図7に示した加速度センサ100の構成と同一の構成には同一符号を付している。
【0044】
図8(A)では、基板101の貫通電極105と制御ICの電極パッド140とをボンディングワイヤ117により接続した後、貫通電極105と電極パッド140とボンディングワイヤ117とを含む領域にポッティング樹脂120を塗布して封止した状態を示す。このように貫通電極105と電極パッド140とボンディングワイヤ117とを含む領域をポッティング樹脂120で覆ってしまうと、図8(B)に示すようにポッティング樹脂120により基板101の貫通電極105とセンサ109の電極パッド113とのボンディングワイヤ117による接続が困難になる。
【0045】
そこで、図8(C)又は図9に示すように、制御IC106の電極パッド140とセンサ109の電極パッド113とをボンディングワイヤ117により接続した後、電極パッド140上及び電極パッド113上に各々ポッティング樹脂120を塗布して封止すればよい。
【0046】
なお、図9に示したポッティング樹脂120の塗布位置は、電極パッド140上と電極パッド113上だけであるため、電極パッド140及び電極パッド113の酸化を防止できるとともに、ポッティング樹脂120によりセンサ109に反りが発生することも防止できる。
【0047】
したがって、図9に示したように、制御IC106の電極パッド140とセンサ109の電極パッド113間をボンディングワイヤにより接続した後、各電極パッド113及び140上に各々ポッティング樹脂120を塗布して覆うことが望ましい。上記図4〜図7に示した基板101の貫通電極105、制御IC106上の電極パッド140、及びセンサ109上の電極パッド113間のボンディングワイヤ117、118による接続手順と、貫通電極105及び電極パッド113、140に対するポッティング樹脂120の塗布手順も同様である。したがって、図7に示した加速度センサ100において、制御IC106の各々複数の電極パッド140を有する電極群141〜143、及びセンサ109の複数の電極パッド113を有する電極群151に対してポッティング樹脂120を塗布して覆うことにより、電極パッド140及び電極パッド113の酸化を防止できるとともに、ポッティング樹脂120によりセンサ109に反りが発生することも防止できる。
【0048】
(樹脂ポッティングの具体例)
次に、センサの電極パッド上にポッティング樹脂を塗布した場合の具体例を図10(A)及び(B)に示す。図10(A)はポッティング樹脂を塗布する前のセンサを上面から見た平面図であり、図10(B)はポッティング樹脂を塗布した後のセンサを上面から見た平面図である。図10(A)及び(B)において、301はセンサであり、302はセンサ301に形成された電極パッドであり、303は基板に形成された電極パッドであり、304はボンディングワイヤである。まず、図10(A)において、センサ301の電極パッド302と基板の電極パッド303をボンディングワイヤ304により接続した。次に、図10(B)において、センサ301の電極パッド302上にポッティング樹脂401を塗布した。
【0049】
次に、図10(B)に示したセンサ301の電極パッド302上にポッティング樹脂120としてエポキシ系樹脂またはシリコン系樹脂を塗布した場合に、センサ301に発生するオフセット電圧のズレを測定した。このオフセット電圧のズレの測定結果について、図11及び図12を参照して説明する。図11は、オフセット電圧のズレの測定対象とした加速度検出方向を示す加速度センサの平面図である。図12は、エポキシ系樹脂またはシリコン系樹脂を塗布した後に図11に示す加速度センサの各加速度検出方向に対するオフセット電圧の測定結果を示すグラフである。
【0050】
図11に示すように、センサ301の電極パッド302上にポッティング樹脂401としてエポキシ系樹脂またはシリコン系樹脂を塗布した。また、センサ301上に示すY軸方向のX、Z軸方向の各オフセット電圧を測定した。なお、センサ301では、図1に示した可撓部111の変位をXYZ3軸方向で検出する複数のピエゾ抵抗素子は、図中のY軸方向にY軸方向の加速度を検出する複数のピエゾ抵抗素子が配置され、図中のX、Z軸方向にX、Z軸方向の加速度を検出する複数のピエゾ抵抗素子が配置されているものとする。図12は、ポッティング樹脂401として、曲げ弾性率が18[GPa]のエポキシ系樹脂と曲げ弾性率が18[GPa]のシリコン系樹脂を塗布した場合のXYZの3軸方向の各オフセット電圧[mV]の測定結果を比較して示す図である。この測定結果では、ポッティング樹脂401としてエポキシ系樹脂を塗布した場合、Y軸方向のオフセット電圧のズレは約4.8[mV]となり、X、Z軸方向のオフセット電圧のズレに比べて大きい。また、ポッティング樹脂401としてシリコン系樹脂を塗布した場合は、XYZの3軸方向の各オフセット電圧のズレは1.0[mV]以下であった。この結果から、オフセット電圧のズレを抑えるためには、ポッティング樹脂401としてシリコン系樹脂を選択することが望ましいことが判明した。この場合、エポキシ系樹脂は、型番:ES−347−1(サンユレック株式会社、曲げ弾性率:18[GPa](曲げ弾性率はJIS K9611により測定))を用い、シリコン系樹脂は、型番:TSJ3155B(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社、デュロメータ硬度:70〜82)を用いた。
【0051】
図12においてエポキシ系樹脂を塗布した場合にセンサ301に発生するオフセット電圧のズレは、エポキシ系樹脂の塗布後に、エポキシ系樹脂がセンサ301に与える応力の大きさに起因する。すなわち、エポキシ系樹脂の曲げ弾性率がセンサ301に発生させる反りの程度に関係する。このため、エポキシ系樹脂の曲げ弾性率を変化させて、センサ301のXYZ3軸方向のオフセット電圧を測定し、オフセット電圧のズレが小さくなるエポキシ系樹脂の曲げ弾性率の使用可能範囲を検証した結果を図13に示す。
【0052】
図13は、曲げ弾性率が26[GPa]、24[GPa]、9[GPa]、7[GPa]、6.5[GPa]、5[GPa]、3.5[GPa]、0.9[GPa]、0.13[GPa]のエポキシ系樹脂を各々用いてセンサ全体をモールドした場合に、センサ301のXYZ3軸方向のオフセット電圧を測定した結果を示すグラフである。このグラフから明らかなように、曲げ弾性率が5[GPa]〜0.13[GPa]のエポキシ系樹脂を用いた場合にセンサ301のXYZ3軸方向のオフセット電圧のズレが小さくなることが判明した。したがって、ポッティング樹脂401としてエポキシ系樹脂を用いる場合は曲げ弾性率が5[GPa]以下のものを用いることが望ましい。また、図13に示したオフセット電圧の測定結果は、エポキシ系樹脂を用いてセンサ全体をモールドした場合であるため、図9に示したように電極パッド113上及び電極パッド140上にエポキシ系樹脂を塗布した場合でも、エポキシ系樹脂がセンサ109に与える応力の影響は小さく、オフセット電圧のズレに対する問題はない。なお、エポキシ系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K6911規格に基づいて測定した。
【0053】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係る加速度センサでは、基板の貫通電極とセンサの電極パッドと制御ICの電極パッドとをボンディングワイヤにより接続した後、センサの電極パッド上と制御ICの電極パッド上の必要最小限の領域に吸湿性や曲げ弾性率を考慮した樹脂材料を用いたポッティング樹脂を塗布して覆うことにより、湿気の多い外気による電極パッドの腐食を防止でき、かつポッティング樹脂の塗布によるセンサの反りの発生を防止でき、ポッティング樹脂によるセンサに対する応力の影響を軽減できる。その結果、加速度センサのセンサ特性への影響を最小化することができ、加速度センサの信頼性を向上させることが可能になる。
【0054】
なお、本発明に係る第1の実施の形態では、加速度センサを例として説明したが、これに限るものではなく、角速度センサ等の他の力学量センサに対しても適用可能である。また、本発明に係る第1の実施の形態では、ポッティング樹脂としてシリコン系樹脂またはエポキシ系樹脂を塗布する場合を示したが、上記吸湿性及び曲げ弾性率の各条件を満たす樹脂材料であればよく、樹脂材料を特に限定するものではない。
【0055】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、センサデバイスとして加速度センサの例について、図14〜図17を参照して説明する。第2の実施の形態では、制御IC及びセンサの各電極パッドに対して個々にポッティング樹脂を塗布する例について説明する。
【0056】
図14は、加速度センサ500の概略構成を示す平面図である。なお、加速度センサ500の全体構成は、図1に示した加速度センサ100と同様の構成であるため、その図示及び構成説明は省略する。図14において、加速度センサ500のセンサ501には、図中の上部領域に複数の電極パッド502が形成されている。複数の電極パッド502には、各々ボンディングワイヤ503が接続されている。また、複数の電極パッド502の間には、各電極パッド502上に塗布されるポッティング樹脂506を分離するための複数の分離部505が形成されている。本発明の第2の実施の形態に係る加速度センサ500では、複数の電極パッド502の間にポッティング樹脂506を分離するための複数の分離部505を形成したことに特徴がある。
【0057】
<分離部の製造方法1>
図15(A)及び(B)は、図14のA−A線の部分断面図であり、電極パッド502間の分離部505の製造方法の一例を示す図である。
【0058】
(1)電極パッド及び分離部の形成(図15(A)参照)
図15(A)において、501はSi層511及びSiO層512からなる2層の半導体基板である。この半導体基板501上面の電極パッド形成位置に対応する位置にAl−Nd等を用いて複数の電極513をパターンニング等により形成する。この場合、後述する電極パッド502の形成位置の間に分離部材を形成するためのダミー電極513aも形成する。次に、複数の電極513とダミー電極513aが形成された半導体基板501上面にSiN層514を形成し、SiN層514をマスク(図示せず)によりエッチングして電極パッド502を形成する位置に複数の凹部(図示せず)を形成する。この複数の凹部に対してAlを用いてパターンニングして複数の電極パッド502を形成する。図15(A)に示すように、ダミー電極513aが形成された部分のSiN層514には凸部505が形成されて、この凸部505が分離部となる。
【0059】
(2)ワイヤボンディング及び樹脂ポッティング(図15(B)参照)
次に、複数の電極パッド502の各々にボンディングワイヤ503を接続する。次に、各電極パッド502上にポッティング樹脂506を塗布して、各電極パッド502を覆う。分離部となる凸部505を形成したことにより各電極パッド502上に塗布されたポッティング樹脂506が隣接する電極パッド502に広がることを防止できる。このため、ポッティング樹脂506の塗布領域は電極パッド502毎になるため、第1の実施の形態に示した複数の電極パッドを有する電極群毎にポッティング樹脂を塗布する場合よりもポッティング樹脂がセンサに与える応力の影響を低減できる。
【0060】
<分離部の製造方法2>
図16(A)及び(B)は、図14のA−A線の部分断面図であり、電極パッド502間の分離部521の製造方法の一例を示す図である。なお、図16(A)及び(B)において、図15(A)及び(B)に示した構成と同一の構成部分には同一符号を付している。
【0061】
(1)電極パッド及び分離部の形成(図16(A)参照)
図16(A)において、まず、半導体基板501上面の電極パッド形成位置に対応する位置にAl−Nd等を用いて複数の電極513をパターンニング等により形成する。次に、複数の電極513が形成された半導体基板501上面にSiN層514を形成し、SiN層514をマスク(図示せず)によりエッチングして電極パッド502を形成する位置に複数の凹部(図示せず)を形成する。この複数の凹部に対してAlを用いてパターンニングして複数の電極パッド502を形成すると同時に、複数の電極パッド502の間のSiN層514上面にAl−Nd等を用いてダミー電極521を形成する。このダミー電極521が分離部となる。
【0062】
(2)ワイヤボンディング及び樹脂ポッティング(図16(B)参照)
次に、複数の電極パッド502の各々にボンディングワイヤ503を接続する。次に、各電極パッド502上のポッティング樹脂506を塗布して、各電極パッド502を覆う。分離部となるダミー電極521を形成することにより各電極パッド502上に塗布されたポッティング樹脂506が隣接する電極パッド502に広がることを防止できる。このため、ポッティング樹脂506の塗布領域は電極パッド502毎になるため、第1の実施の形態に示した複数の電極パッドを有する電極群毎にポッティング樹脂を塗布する場合よりもポッティング樹脂がセンサに与える応力の影響を低減できる。
【0063】
(樹脂ポッティングの具体例)
次に、センサの電極パッド上にポッティング樹脂を塗布した場合の具体例を図17に示す。図17において、601はセンサであり、602はセンサ601に形成されたAlの複数の電極パッドであり、603は制御ICに形成されたAlの複数の電極パッドであり、604は複数のボンディングワイヤであり、605はポッティング樹脂を分離する複数の分離部であり、606はポッティング樹脂である。まず、図17において、センサ601の各電極パッド602と制御ICの各電極パッド603を複数のボンディングワイヤ604により各々接続した。次に、図17において、センサ601の各電極パッド602上にポッティング樹脂606を塗布した。複数の電極パッド602間に分離部605を形成したことにより、ポッティング樹脂606が隣接する電極パッド602に広がることを防止できることを確認した。
【0064】
なお、図15(B)、図16(B)及び図17において塗布したポッティング樹脂の材料は、第1の実施の形態において説明したように、上記吸湿性及び曲げ弾性率の各条件を満たすシリコン系樹脂またはエポキシ系樹脂を用いることが望ましい。但し、上記吸湿性及び曲げ弾性率の各条件を満たす樹脂材料であればよく、樹脂材料を特に限定するものではない。また、図15では分離部となる凸部505をダミー電極513aにより形成し、図16では分離部をダミー電極521により形成する場合を示したが、例えば、ダミー配線により形成するようにしてもよい。また、分離部を形成する位置は、センサ501の複数の電極パッド502の間に限定するものではなく、制御ICの複数の電極パッドの間に形成して、制御ICの複数の電極パッド上に塗布するポッティング樹脂が隣接する電極パッドに広がらないようにしてもよい。なお、図15及び図16では、ダミー電極により分離部を形成する場合を示したが、実際の電極又は配線を利用して分離部を形成するようにしてもよい。
【0065】
以上のように、本発明の第2の実施の形態に係る加速度センサでは、センサが有する複数の電極パッドの間にポッティング樹脂を分離する分離部を形成することにより、各電極パッド上に塗布されたポッティング樹脂が隣接する電極パッドに広がることを防止したため、複数の電極パッドを有する電極群毎にポッティング樹脂を塗布する場合よりもポッティング樹脂がセンサに与える応力の影響を低減できる。したがって、本発明の第2の実施の形態に係る加速度センサによれば、制御ICの電極パッドとセンサの電極パッドとをボンディングワイヤにより接続した後、センサの電極パッド上とセンサの電極パッド上の各々に吸湿性や曲げ弾性率を考慮した樹脂材料を用いたポッティング樹脂を塗布して覆うことにより、湿気の多い外気による電極パッドの腐食を防止できる。また、電極パッド上に塗布するポッティング樹脂が隣接する電極パッドに広がらないように、電極パッド間に分離部を形成することにより、ポッティング樹脂がセンサに与える応力の影響を低減でき、ポッティング樹脂の塗布によるセンサの反りの発生を防止できる。その結果、加速度センサの信頼性を向上させることが可能になる。なお、第2の実施の形態では、電極パッド毎にポッティング樹脂を分離する分離部を形成する場合を示したが、この構成に限るものではなく、分離部を形成せずに電極パッド毎にポッティング樹脂を塗布するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
100,500…加速度センサ、101…基板、105…貫通電極、106…制御IC、109、301、501、601…センサ、110…固定部、111…可撓部、112…可動部、113,140、302、502、602…電極パッド、116…パッケージキャップ、117、118、304、503、604…ボンディングワイヤ、120、401、506、606…ポッティング樹脂、501…半導体基板、505…分離部(凸部)、513a、521…ダミー電極(分離部)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部、前記固定部の内側に位置する可動部、前記固定部と前記可動部を接続する可撓部、及び複数の金属電極を有するセンサを基板上に配置し、
前記センサの複数の金属電極及び前記基板の複数の端子をボンディングワイヤにより電気的に接続し、
前記複数の金属電極と前記複数の端子の間にある前記ボンディングワイヤの一部が露出するように、前記センサの複数の金属電極の前記ボンディングワイヤと接続された部位を樹脂により覆う、
ことを特徴とするセンサデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記基板と前記センサの間に複数の金属電極を有する制御ICを配置し、
前記制御ICの複数の金属電極と、前記センサの複数の金属電極及び前記基板の複数の端子を前記ボンディングワイヤにより電気的に接続し、
前記複数の金属電極と前記複数の端子の間にある前記ボンディングワイヤの一部が露出するように、前記制御ICの複数の金属電極の前記ボンディングワイヤと接続された部位を前記樹脂により覆う、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記センサの複数の金属電極と前記ボンディングワイヤが接続された部位は前記樹脂により個別に覆うことを特徴とする請求項1に記載のセンサデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記制御ICの複数の金属電極と前記ボンディングワイヤが接続される部位は前記樹脂により個別に覆うことを特徴とする請求項2に記載のセンサデバイスの製造方法。
【請求項5】
前記センサの複数の金属電極間又は前記制御ICの複数の金属電極間には、前記樹脂を前記金属電極毎に分離する分離部を形成することを特徴とする請求項3又は4に記載のセンサデバイスの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂は、曲げ弾性率が5GPa以下のシリコン樹脂材料を使用することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のセンサデバイスの製造方法。
【請求項7】
固定部、前記固定部の内側に位置する可動部、前記固定部と前記可動部を接続する可撓部、及び複数の金属電極を有するセンサと、
複数の端子を有し、前記センサを載置する基板と、
前記複数の金属電極と前記基板の複数の端子を電気的に接続するボンディングワイヤと、を備え、
前記複数の金属電極と前記ボンディングワイヤが接続する部位は樹脂で覆われており、
前記複数の金属電極と前記複数の端子の間にある前記ボンディングワイヤの一部は露出する、ことを特徴とするセンサデバイス。
【請求項8】
前記基板と前記センサの間に配置され、複数の金属電極を有する制御ICをさらに備え、
前記ボンディングワイヤは、前記制御ICの複数の金属電極と前記基板の複数の端子とを電気的に接続し、
前記制御ICの複数の金属電極と前記ボンディングワイヤが接続される部位は前記樹脂により覆われており、前記制御ICの複数の金属電極と前記複数の端子の間にある前記ボンディングワイヤの一部は露出する、ことを特徴とする請求項7に記載のセンサデバイス。
【請求項9】
前記センサは、前記複数の金属電極間に前記樹脂を分離する複数の分離部を有し、
前記センサの複数の金属電極と前記ボンディングワイヤが接続される部位は前記樹脂により個別に覆われることを特徴とする請求項7に記載のセンサデバイス。
【請求項10】
前記制御ICは、前記複数の金属電極間に前記樹脂を分離する複数の分離部を有し、
前記制御ICの複数の金属電極と前記ボンディングワイヤが接続される部位は前記樹脂により個別に覆われることを特徴とする請求項8に記載のセンサデバイス。
【請求項11】
前記樹脂は、曲げ弾性率が5GPa以下のシリコン樹脂材料であることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載のセンサデバイス。


【図4】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−13528(P2012−13528A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150109(P2010−150109)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】