説明

タングステン膜の形成方法

【課題】本発明は半導体ウエハ等の被処理体に形成された凹凸部内にタングステン膜を形成するタングステン膜の形成方法に関し、Si基板上に形成された凹凸内に良好にタングステンの埋めこみを行うことを課題とする。
【解決手段】処理容器50内にMO−TiN膜からなるバリア膜3が形成されたSi基板Wを載置する工程と、処理容器50にWFガスとSiHガスとを交互に繰り返して供給する繰り返し工程を含み、前記バリア膜3上に第一のタングステン膜5を形成する工程と、処理容器50にWFガスとHガスとを同時に供給し、第一のタングステン膜5上に第二のタングステン膜6を形成する工程とを含むタングステン膜の形成方法であって、前記繰り返し工程では、Si基板Wの温度を150℃以上350℃以下に維持すると共に、前記WFガスの供給量を133Pa sec以上10kPa sec以下とし、WFガスのバリア膜3上への吸着量を飽和させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタングステン膜の形成方法に係り、特に半導体ウエハ等の被処理体に形成された凹凸部内にタングステン膜を形成するタングステン膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に半導体集積回路の製造工程では、被処理体である半導体ウエハ表面に成膜処理、酸化拡散処理、エッチング処理等の各種の処理が繰り返し行われる。この半導体集積回路の製造工程の途中におけるコンタクトホールやスルーホール等の凹凸部が形成される。凹凸部の穴埋めには、化学気相蒸着法(CVD法)による金属タングステン膜が多用される傾向にある。化学気相蒸着法(CVD法)による金属タングステン膜は、被覆性に優れ、断線が生じにくく、比較的成膜が容易で、比抵抗も小さい。
【0003】
この金属タングステンの成膜方法として、タングステン含有原料ガスとしてWFガス、還元ガスとしてHガスを供給し、400〜450℃の温度下で、主としてTiN膜を下地として、WFをHで還元して金属タングステンを成膜する方法が一般的である。
【0004】
物理気相蒸着法(PVD法)やCVD法で形成したTiNが、以下の理由から一般に下地として用いられる。第一に、ウエハ表面全体に均一にタングステンを成膜させる必要がある、これは、H還元法で形成される金属タングステンは、一般に金属表面と絶縁物表面とで成膜速度が異なるからである。第二に、タングステンの原料であるWFが、下層の配線などを侵食することを防止するバリアとして必要だからである。
【0005】
ここで、従来の金属タングステン層の形成を例にとって説明する。
【0006】
金属タングステン層の形成する際、初めからCVD法により膜形成を行おうとすると、膜付きが悪く、インキュベーションタイムが長くなる傾向にある。これを防止するために、最初は原料ガスであるWFガスと、還元ガスとしてHガス、SiHガスなどを少量ずつ流してウエハ表面に結晶種となるタングステンの核付け層を成長させている。次に、上記原料ガスや還元ガスを多量に流して、上記核付け層を種としてタングステン膜を高い成長速度で成長させている。このようにして、所望の厚さのタングステン膜を得ている(特許文献1参照)。
【0007】
図1は、上記成膜工程における時間と膜厚の関係を示したグラフである。前処理後に核付け層形成工程が行われる。この核付け層形成工程に入っても、しばらくは膜が付着しないインキュベーションタイムT1が存在する。また、核付け層形成工程から主タングステン膜形成工程に入ったときも、しばらくは膜が付着しないインキュベーションタイムT2が存在する。そして、主タングステン膜形成工程において多量のタングステン膜が形成される。
【0008】
ところで、現在、半導体集積回路の微細化、高集積化が進んだ結果、コンタクトホールやビアホールなどスルーホールの埋めこみがますます困難になっている。図2に示すように、特に上層配線間に用いられるビアホール2に関しては、下地バリア膜は、PVD法では、必要な被覆性が得られず、有機Tiソースを原料としたCVD膜で、プラズマ処理により改質したMO−TiN膜3を用いるのが主流である。PVD法では、必要な被覆性が得られない。このプラズマ処理には、有機物を原料としていることに由来して、不純物C(カーボン)が、成膜後に膜中に残留する。成膜後、プラズマでカーボンをたたきだし、膜の純度、密度を上げることができる。
【0009】
従来、PVD−TiN膜やTiClをソースとした無機系CVD−TiN膜に対してCVD−W成膜が行われていた。図3に示すように、ホールの上部平坦面及び底部には、プラズマが到達し十分に改質処理されているので、良質なタングステン膜がCVD−W成膜によって下地バリア膜に形成される。
【特許文献1】特開平07−022414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、プラズマの根本的な性質として、ホール側壁にはプラズマが到達しにくい。従って、改質がどうしても不充分になるので、その上へのタングステンの成膜が困難である。よって、たとえタングステン膜が形成されても粗悪なタングステン膜になり、また埋めこみが不充分になってしまうという問題点があった。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、Si基板上に形成された凹凸内に良好にタングステンの埋めこみを行いうるタングステン膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は、本発明の第1の観点からは、
処理容器内にMO−TiN膜からなるバリア膜が形成されたSi基板を載置する工程と、
前記処理容器にWFガスとSiHガスとを交互に繰り返して供給する繰り返し工程を含み、前記バリア膜上に第一のタングステン膜を形成する工程と、
前記処理容器に前記WFガスとHガスとを同時に供給し、前記第一のタングステン膜上に第二のタングステン膜を形成する工程とを含むタングステン膜の形成方法であって、
前記繰り返し工程では、前記Si基板の温度を150℃以上350℃以下に維持すると共に、前記WFガスの供給量を133Pa sec以上10kPa sec以下とし、前記WFガスの前記バリア膜上への吸着量を飽和させることを特徴とするタングステン膜の形成方法により解決することができる。
【0013】
また前記発明において、前記第一のタングステン膜の膜厚は0.2nm以上20nm以下であることが望ましい。
【0014】
また前記発明において、前記繰り返し工程は、前記WFガスまたはSiHガスの供給停止後に前記処理容器をHガスによりパージするパージ工程を含むことが望ましい。
【0015】
更に前記発明において、前記SiHガスの供給量を66Pa sec以上10kPa sec以下とし、前記SiHガスの前記バリア膜上への供給量を飽和させることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タングステン極薄膜をホール内に良好な状態で確実に形成することができ、よってこのタングステン極薄膜を核付け層として主タングステン膜を形成することにより、微細なホールであっても埋め込み性良く確実に主タングステン膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。各図面中、同一または実質的に同一の部分については、同じ番号を付す。
【0018】
本発明の発明者は、ビアホール2内に、下地バリア膜として、不純物を含むMO−TiN膜3が形成されていたとしてもCVD法によりタングステンを良好に埋めこむ方法を得る実験を重ねた。その結果、図4に示すように、CVD法によりタングステンを埋めこむ前に、被覆性の良いタングステンの極薄膜5を形成した場合には、全体として良好な埋めこみ性を示すタングステン配線が形成されることを見出した。発明者はまた、図5に示すように、タングステンの極薄膜5を核付け層として主タングステン膜6を成膜することを見出した。
【0019】
発明者は更に、タングステン極薄膜5の形成として、以下の方法により良好な被覆性を達成できることを見出した。先ず、原料ガス例えばWFやSiHを1種類ずつ供給する。互いに反応する可能性のある異種の原料ガスを順番に供給して、即ち、WFとSiHを順に供給して、真空引きをするか、Ar、N、Hなどの他のガスによる置換を行う方法を採用する。
【0020】
即ち、WFガスがホールの底まで十分到達する。成膜対象表面に当該ガスが吸着される。そして、真空排気または置換により、その温度と圧力で決まる均一な厚さの吸着層のみを形成する。余剰なWFが除去された後に、SiHガスが供給され、吸着した分のWFのみがSiHと反応してタングステン層が形成される。本発明によれば、ホールの底部のみならず上部でも原料ガスが消費される。従って、非常に良好な被覆性を得ることができた。
【0021】
図6は本発明のタングステン配線の形成方法を実施するための真空処理装置を示す概略構成図である。先ず、本発明方法を実施するための真空処理装置について説明する。
【0022】
この真空処理装置50は、処理容器60を有する。処理容器60は、例えばアルミニウム等により形成され円筒形状を有する。この処理容器60内には、処理容器底部より起立させた円筒状のリフレクタ7が設けられている。このリフレクタ7の上には、L字状の保持部材8が設けられている。保持部材8の上面には、被処理体として半導体ウエハWを載置するための載置台10が設けられる。この載置台10は、例えば厚さ数mm程度のカーボン素材、AlNなど、熱伝導性の良い材料で構成される。
【0023】
この載置台10の真下の処理容器60の底部には、石英よりなる透過窓12が気密に設けられている。透過窓12の下方には、透過窓12を囲むようにして箱状の加熱室14が設けられる。この加熱室14には、複数個の加熱ランプ16が反射鏡も兼ねる回転台18に取り付けられており、この回転台18は、回転モーター20によって回転される。従って、この加熱ランプ16により放出された熱線は、透過窓12を透過して載置台10の下面を照射する。よって、載置台10の上のウエハWを間接的に加熱される。
【0024】
処理容器60の底部周辺部には、排気口22が設けられている。排気口22には図6には図示しない真空ポンプに接続された排気通路24が接続されている。よって、処理容器60内を真空引きできるようになっている。また、処理容器60の側壁にはゲートバルブ26が設けられる。ゲートバルブ26は、ウエハを搬出入する際に開閉される。
【0025】
一方、上記載置台10と対向する処理容器天井部には、原料ガス等を処理容器60内へ導入するシャワーヘッド部28が設けられている。シャワーヘッド部28は、多数のガス噴出孔30が設けられている射出面28Aを有する。シャワーヘッド部28は更に、ガス導入口32を有する。ガス導入口32は、成膜処理等に必要な原料ガス等を供給するガス供給系が接続されている。具体的には、WF、SiH、Ar、N、Hの各ガス源がガス導入口32に接続されている。
【0026】
各ガス源の配管には、流量制御器としてのマスフローコントローラー34及び2個の開閉弁36、38が設けられている。開閉弁36、38の間には、マスフローコントローラー34が設けられている。よって、各ガスの流量制御及び供給の有無の選択を行うことができる。各ガスは所定量ずつ、単独或いは混合してこれらガス源からシャワーヘッド部28へ供給される。その後、下面のガス噴出孔30から処理容器60内へ略均等に供給される。同時に、排気口22から処理容器60の内部雰囲気を所定の排気速度で吸引排気することにより、処理容器60内を所定の真空度に保持することができる。
【0027】
次に、以上のように構成された装置を用いて行われる本発明方法の一実施例について図2、4、5、7を用いて説明する。図7は、本実施例におけるタングステン配線膜の形成方法を処理工程順に示すフローチャートである。図2は、従来法及び本発明によるタングステン配線の形成方法を説明するための成膜前のビアホールの構造を示す断面図である。図4は、本発明によるタングステン配線の形成方法を説明するための成膜途中のビアホールの構造を示す断面図である。図5は、本発明によるタングステン配線の形成方法を説明するための成膜後のビアホールの構造を示す断面図である。
【0028】
ステップ10では、処理容器60の側壁に設けたゲートバルブ26を開き、図6には図示しない搬送アームを用いて、処理容器60内にウエハWを搬入する。この際、予め加熱ランプ16を所定の温度、例えばウエハWが300℃となるようにセットしておき、所定の温度に加熱された載置台10にウエハWを載置する。尚、図2に示すようにこのウエハWの表面には、ビアホール2とMO−TiNによる下地バリア膜3が形成されている。
【0029】
ステップ10に続くステップ11では、Ar或いはNをガス源からシャワーヘッド部28へ供給する。処理容器60を所定の圧力、例えば400Paに保持して、内部を排気する。よって、ウエハWに載置台10の熱を伝導し、ウエハWは昇温する。
【0030】
ステップ11に続くステップ12では、ガス供給を停止する。処理容器60の内部が例えば10Pa以下になるまで処理容器60を真空排気する。
【0031】
ステップ12に続くステップ13では、WFガスに若干のAr,Nを混合したものをシャワーヘッド部28へ供給しつつ、処理容器60を所定の圧力に保持排気する。それによって、ウエハW上に略均等にWFを150Pa secとなるように供給する。
【0032】
ステップ13に続くステップ14では、ガス供給を停止して、処理容器60内が例えば10Pa以下になるまで処理容器60を真空排気する。この工程において、ウエハWのビアホールの上面、側面、底面に渡って、この温度と圧力で決まる均一な厚さのWFの吸着層のみが残留する。
【0033】
ステップ14に続くステップ15では、SiHガスに若干のAr,Nを混合したものをシャワーヘッド部28へ供給しつつ、処理容器60を所定の圧力に保持排気する。それによって、ウエハW上に略均等にSiH を70Pa secとなるように供給する。この工程において、ステップ14で残留した均一な厚さのWFの吸着層がSiHによって還元され、分子層レベルのタングステン膜(W膜)が形成される。
【0034】
ステップ15に続くステップ16では、ガス供給を停止して、処理容器60内が例えば10Pa以下になるまで処理容器60を真空排気する。
【0035】
ステップ17に示すように、上記したステップ13からステップ16までの処理を、図4に示すように所望の厚さ、例えば1nmのタングステン極薄膜5が得られるまで所定の回数、例えば17サイクル繰り返す。
【0036】
上記のように所定の厚さのタングステン極薄膜5が形成されると、続くステップ18では、主タングステン膜6を成膜する。主タングステン膜6は、タングステン極薄膜5を核付け層として、図5に示すように通常のCVD法で形成する。主タングステン膜6の成膜が終了すると、ステップ19において処理容器60の側壁に設けたゲートバルブ26を開いて、図6には図示しない搬送アームにより処理容器60内からウエハWを搬出する。
【0037】
本発明の結果では、上記のステップ19を経たウエハWの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、径が0.2μm、深さが1μmのビアホール内に欠陥なく良好な埋めこみが達成されていた。
【0038】
以上、上記実施例においては、タングステン極薄膜5を形成する場合、WFとSiHの供給の間は、真空排気する例を示した。ここで、WF或いはSiHガスの供給を停止した後、パージを実施しても良い。例えば200sccm以上の大流量のAr,Nなどの不活性ガス或いはHを供給し、処理容器60内のWF或いはSiHを押し出すいわゆるパージを実施しても良い。
【0039】
発明者の実験によれば、例えば、処理容器60内を1000Pa、ウエハ温度を350℃に維持したままの状況で、以下のステップを経てパージしてもよい。即ち、ステップ13でWFガスを38Pa sec、Arガスを3816Pa sec、Nガスを1145Pa sec供給する。次に、ステップ14でArガスを2308Pa sec、Nガスを692Pa sec供給する。更に、ステップ15で、SiHガスを112Pa sec、Arガスを3759Pa sec、Nガスを1127Pa sec供給する。次に、ステップ16で、Arガスを2308Pa sec、Nガスを692Pa sec供給する。そして、ステップ17で、上述したステップ13からステップ16までの処理を6回繰り返したところ、厚さ7.0nmのタングステン極薄膜が得られた。
【0040】
は、特にタングステン極薄膜を酸化させたくない場合に有効である。また、真空排気−パージ−真空排気を1つのセットとして運用する場合、総成膜時間が長くなる問題はあるが、WFガス或いはSiHガスの残留が除去されるという効果がある。
【0041】
上記実施例においては、ウエハWを処理容器60内に載置後、タングステン極薄膜5を形成する場合、前処理を行わずにWF供給から始める例を示した。しかるに、ウエハWを処理容器60内に載置後、タングステン極薄膜5を成膜する前に、図1に示されるような前処理工程を設けても良い。
【0042】
その前処理工程は、例えばウエハ表面にSiHガスをフローさせることでも良い。例えば、SiHガスを7000Pa sec供給することで、タングステン極薄膜5を形成時のインキュベーションタイムT1を減らすことができる。上記した前処理を行わない実施例においては、1nmのタングステン極薄膜5を形成するために、WFとSiHの供給を17サイクル実施した。17サイクルのうち、13サイクルはインキュベーションタイムT1に相当するものであり、13サイクル中にタングステン極薄膜5の成膜は見られない。そして、14サイクル目から成膜が始まり、17サイクルまでの4サイクルで実質的に1nmのタングステン極薄膜が形成されている。
【0043】
これに対し、前処理工程においてSiHガスを7000Pa sec供給することにより、インキュベーションタイムT1に相当するサイクル数が17サイクルから3サイクルへと大幅に短縮される。これにより、4サイクル目から成膜が始まるので、1nmのタングステン極薄膜の形成に要するWFとSiHの供給は、7サイクルに低減される。このように、前処理工程を入れることは、総成膜時間の大幅な低減につながって好適である。
【0044】
このSiHガスフローのSiH量は、1kPa sec以上でインキュベーションタイム低減効果が認められた。SiHガスフローのSiH量は、25kPa secを超えると処理時間が長くなり過ぎてスループットを低めたり、SiH分圧が高くなり過ぎてパーティクルを発生させたりする。従って、SiHガスフローは、25kPa sec以下が好ましい。
【0045】
また、上記実施例においては、タングステン極薄膜を形成する条件として、ウエハ温度300℃、WFガス供給150Pa sec、SiHガス供給70Pa secで、1サイクルあたりのWの成膜量が0.25nmである例を示した。しかしながら、本発明者らが、このタングステン極薄膜5の形成方法として種々検討した結果、図8、9、10に示すような以下の関係を見出した。
【0046】
図8は、本発明によるタングステン配線の形成方法を実施するための核付け層であるタングステン極薄膜の1サイクルあたり成膜厚さとウエハ温度の関係を示すグラフである。ウエハ温度150℃から350℃の領域では、ウエハ温度にかかわらず、1サイクルあたりの成膜厚さは0.23nmから0.28nmの範囲で実質的に一定である。ウエハ温度380℃から500℃の領域では、ウエハ温度にかかわらず、1サイクルあたりの成膜厚さは0.55nmから0.6 nmの範囲で実質的に一定である。
【0047】
これら2つの領域は、反応が原料の吸着を律速過程として進んでいることを示すものである。これら2つの領域は、制御性良く被覆性に優れたタングステン極薄膜を得られる領域として好適である。
【0048】
発明者の実験によれば、ウエハ温度が355℃から500℃の領域にある場合には、ウエハ温度が380℃から500℃の領域ある場合と同様に、制御性良く被覆性に優れたタングステン極薄膜を得ることが出来ることがわかった。
【0049】
図9は、本発明によるタングステン配線の形成方法を実施するための核付け層である。タングステン極薄膜の1サイクルあたり成膜厚さとSiHの供給量の関係を示すグラフである。ウエハ温度150℃から350℃の領域の代表としてウエハ温度300℃をまた、ウエハ温度380℃から500℃の領域の代表としてウエハ温度410℃を持って、実験した結果を示してある。
【0050】
図9より、ウエハ温度が150℃から350℃の場合は、SiH供給量66Pa sec以上で、1サイクルあたり成膜厚さが飽和していることがわかる。また、ウエハ温度が380℃から500℃の場合は、SiH供給量333Pa sec以上で、1サイクルあたり成膜厚さが飽和していることがわかる。これら2つの飽和領域は、反応が原料の吸着を律速過程として進んでいることを示すものである。これら2つの飽和領域では、制御性良く被覆性に優れたタングステン極薄膜を得ることができる。
【0051】
発明者の実験によれば、ウエハ温度が150℃から350℃の場合は、SiH供給量13Pa sec以上で、ウエハ温度が380℃から500℃の場合は、SiH供給量40Pa sec以上で、制御性良く被覆性に優れたタングステン極薄膜を得ることができることがわかった。
【0052】
また、図10は、本発明によるタングステン配線の形成方法を実施するための核付け層であるタングステン極薄膜の1サイクルあたり成膜厚さとWFの供給量の関係を示すグラフである。ウエハ温度150℃から350℃の領域の代表としてウエハ温度300℃をまた、ウエハ温度380℃から500℃の領域の代表としてウエハ温度410℃を持って、実験した結果を示している。
【0053】
図10より、いずれもWF供給量133Pa sec以上で、1サイクルあたり成膜厚さが飽和している。この飽和領域は、反応が原料の吸着を律速過程として進んでいることを示すものであり、制御性良く、被覆性に優れた、タングステン極薄膜を得られる領域として好適である。
【0054】
発明者の実験によれば、WF供給量5Pa sec以上で、WF供給量133Pa sec以上の場合と同様に、制御性良く被覆性に優れたタングステン極薄膜を得られることがわかった。
【0055】
SiH 供給量,WF供給量の上限としては、10kPa secを超えると1サイクルあたりに要する時間が長くなり過ぎてスループットを低めたり、供給量が多すぎてチャンバー内に残留し易くなりガスの置換が難しくなる。このため、SiH供給量,WF供給量の上限は10kPa sec以下が好ましい。
【0056】
本発明は、上述のタングステン極薄膜の厚さが1nmの例に限られるものではない。タングステン極薄膜の厚さは、0.2nm以上20.0nm以下の範囲であることが望ましい。タングステン極薄膜の厚さが0.2nm未満では、局所的に非常に薄い部分が存在するなどの理由により、核付け層としての役目を十分果たせない場合があり好ましくない。また20.0nmを超えると、核付け層としての機能に対しては問題ないが、総成膜時間を増大させ、スループットの低下を招く場合があり好ましくない。逆に0.2nmから20.0nmの範囲であれば、核付け層として十分機能しつつ、スループットの深刻な低下をもたらさないので好適である。
【0057】
尚、上記実施例では、ビアホール2にタングステン配線を形成する例について示したが、配線の材料はタングステンに限定されたものではなく、他の材料を用いた場合においても本発明を適用できることは勿論である。
【0058】
本出願は、2000年11月17日に出願された日本特許出願2000−351716号に基づく優先権主張を伴うものであり、その全内容が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、従来のタングステン配線の形成方法を説明するためのタイムチャートと膜厚との関係を示すグラフである。
【図2】図2は、従来法及び本発明によるタングステン配線の形成方法を説明するための成膜前のビアホールの構造を示す断面図である。
【図3】図3は、従来法によるタングステン配線の形成方法を説明するための成膜後のビアホールの構造を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明によるタングステン配線の形成方法を説明するための成膜途中のビアホールの構造を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明によるタングステン配線の形成方法を説明するための成膜後のビアホールの構造を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明によるタングステン配線の形成方法を実施するための真空処理装置を示す概略構成図である。
【図7】図7は、本発明によるタングステン配線の形成方法を実施するためのフローチャートである。
【図8】図8は、本発明によるタングステン配線の形成方法を実施するための核付け層であるタングステン極薄膜の1サイクルあたり成膜厚さとウエハ温度の関係を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明によるタングステン配線の形成方法を実施するための核付け層であるタングステン極薄膜の1サイクルあたり成膜厚さとSiHの供給量の関係を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明によるタングステン配線の形成方法を実施するための核付け層であるタングステン極薄膜の1サイクルあたり成膜厚さとWFの供給量の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
2 ビアホール
3 下地バリア膜3(MO−TiN膜)
5 タングステン極薄膜
6 主タングステン膜
7 リフレクタ
8 保持部材
10 載置台
14 加熱室
16 加熱ランプ
18 回転台
20 回転モーター
22 排気口
24 排気通路
26 ゲートバルブ
28 シャワーヘッド部
30 ガス噴出孔
32 ガス導入口
34 マスフローコントローラー
50 真空処理装置
60 処理容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内にMO−TiN膜からなるバリア膜が形成されたSi基板を載置する工程と、
前記処理容器にWFガスとSiHガスとを交互に繰り返して供給する繰り返し工程を含み、前記バリア膜上に第一のタングステン膜を形成する工程と、
前記処理容器に前記WFガスとHガスとを同時に供給し、前記第一のタングステン膜上に第二のタングステン膜を形成する工程とを含むタングステン膜の形成方法であって、
前記繰り返し工程では、前記Si基板の温度を150℃以上350℃以下に維持すると共に、前記WFガスの供給量を133Pa sec以上10kPa sec以下とし、前記WFガスの前記バリア膜上への吸着量を飽和させることを特徴とするタングステン膜の形成方法。
【請求項2】
前記第一のタングステン膜の膜厚は0.2nm以上20nm以下であることを特徴とする請求項1記載のタングステン膜の形成方法。
【請求項3】
前記繰り返し工程は、前記WFガスまたはSiHガスの供給停止後に前記処理容器をHガスによりパージするパージ工程を含む請求項1または2記載のタングステン膜の形成方法。
【請求項4】
前記SiHガスの供給量を66Pa sec以上10kPa sec以下とし、前記SiHガスの前記バリア膜上への供給量を飽和させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のタングステン膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−283220(P2008−283220A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209259(P2008−209259)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【分割の表示】特願2002−543685(P2002−543685)の分割
【原出願日】平成13年11月13日(2001.11.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】