説明

タービンエンジン翼の製造方法

本発明は、樹脂で含浸されるプリフォームを3D製織することによる翼の製造に関する。本発明によれば、曲線(20)を鮮明にするためにプリフォーム(16)の何本かの糸、例えば、縦糸の切断端部の視認性が高められ、プリフォームの正確な成形を確実にするために前記曲線の形状が基準形状と比較される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元(3D)製織によるターボ機械のブレードの製造方法に関し、特に、例えば、航空機ターボジェットファン用の大型のブレード(これに限定されない)の製造方法に関する。特に、本発明は、ブレードの最終的特性が、最適であると見なされる基準ブレードの特性にできる限り近くなるように、前記方法の特定の段階の性能をより綿密に検査することができる改良点に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第1777063号明細書は、縦糸と横糸との3D製織によって得られたプリフォームから得られるブレードの製造方法を記載している。一般的には、糸は炭素繊維製である。このようにして得られたプリフォームは、その後、圧密され硬化される前に、適切なモールド内で位置決めされることで成形される。最後に、このようにして作られたプリフォームは、窯を形成する加熱モールド内に配置されて、熱硬化性樹脂が注入される。モールドから抽出された未加工状態のブレードは、実際には最終製品が有するのと同じ形状および寸法を有するので、必要なのは機械加工による最小限の再加工のみである。
【0003】
プリフォームまたはブランクの製造では、実際の織機が使用され、これは前記プリフォームの全ての点における輪郭および厚さを決定するのに役立つ。一般的には、この種類の織機では、縦糸は、各層が数百の糸からなる32の層を占める。縦糸は、当技術分野ではストランドと呼ばれる場合もある。織機を使用して、これらの縦糸の全てを横糸が通る方向の両側に個々に位置決めすることができ、このことによりプリフォームの全ての点における輪郭、質感、厚さに関して完全に確定された製織が可能となる。この技術を使用して、ブレードの根元部もエアフォイルと一体に形成されてもよい。
【0004】
プリフォームに寸法特性をもたせるために、特定の糸は特定の段から織られなくなる。その後、特定の糸は製織体を残した位置で切断される。その結果、前記切断端部は点で描かれた曲線を画定する。これは、特に、縦糸の切断端部に適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1777063号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ブレードの最適な特性、すなわち、ブレードが使用される時間全体にわたって受ける可能性のある種々の衝撃に対して最大の強度を有するブレードを規定しようとする多数の試験による観察結果に起因するものである。ブレードの種類ごとに、ブレードの強度と曲線の形状との信頼性のある組み合わせを見つけることができた。一連の試験から、全ての曲線(すなわち、糸が切断される点の全ての正確な位置)に対して最適な形状で表わされた理想的な製織形状を画定することができ、得られたブレードがこの形状を有する場合、最高の性能を有すると見なすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、このようなブレードの製造全体にわたって、基準曲線のこの形状を参照し、ブレードの形状が予め決定されさまざまな形で記憶されている最適なブレードの対応する形状にできる限り近くなるようにし、その状態を維持するよう確実にする、またはそのことを検証するなど注意が払われる。
【0008】
より正確には、本発明は、プリフォームを3D製織することによってブレードを製造する方法にして、前記プリフォームの輪郭とボリュームとを画定するために縦糸と横糸とが所定の位置で切断され、前記プリフォームが成形され、前記成形されたプリフォームが含浸される方法であって:
曲線を鮮明にするために少なくとも何本かの糸の切断端部が視認できるようにするステップと、
これらの曲線の形状を基準形状と少なくとも比較するステップと、
ブレードを作成するのにこの比較結果を使用するステップとを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0009】
縦糸と横糸とは、好ましくは、炭素繊維系である。少なくとも何本かの糸は、好ましくは縦糸は、サイズ剤で被覆される。
【0010】
このアクティブまたはパッシブな検査工程は、適切な成形ステップの後に圧密ステップを含むブレードの製造の種々の段階で、特に、成形されている間に適用される。
【0011】
したがって、プリフォームが製織された後、縦糸と横糸とが織機からプリフォームを抜き出すために切断される。このことで、成形およびその後の圧密が必要な比較的展性のある質量体が形成され、それと同時に、樹脂含浸に進む前にその質量体に一定の剛性が付与される。含浸は、ほぼ最終の形状および寸法、さらには衝撃に耐える優れた能力をもたらすことになる。上述したような本発明の原理は、複数のこれらの段階で連続して適用される。
【0012】
したがって、一般に、成形時に、プリフォームに対してその曲線を基準形状の曲線とほぼ一致させる動作が行われる。したがって、プリフォームに対して含浸前の複数の段階でこのような動作を行うことも考えられるが、主にこの動作は製織の直後のブレードが成形されている間に行われる。視認できる(または少なくとも検出できる)曲線の形状を参照することができることで、プリフォームが成形テンプレート(例えば、圧密モールドの一部)内で位置決めされる向きを合わせることができ、まだ展性のある糸の交絡に作用して、曲線を実際に所定の最適な形状にできる限り近い形状にすることができる(このような検査は、「アクティブ」であると言われる場合がある)。
【0013】
さらに、圧密の後、後で検査を行うことも可能である。
【0014】
すなわち、方法は、成形後、前記プリフォームは圧密され、その曲線が対応する基準形状の曲線とほぼ一致することが検証されることを特徴とする。この検証または検査は、圧密がプリフォームの製織および最適な成形の両方を表わす曲線の最適な形状を変化させていないことを保証するのに役立つ。検証結果が良くない場合、曲線の許容可能な形状を得るために圧密ステップを繰り返すか、または許容可能な形状を得ることが不可能である場合ブランクを不合格とすることができる。
【0015】
その後、含浸後に同じタイプの最終検査を行うことができる。
【0016】
すなわち、製造されているブレードは含浸された後、その曲線が対応する基準形状の曲線とほぼ一致する場合に選択される。
【0017】
上述したように、方法は、好ましくは、縦糸の切断端部を識別することによって、例えば、それらの切断端部の視認性を高めることによって適用される。しかしながら、方法は、横糸の切断端部の視認性を高めることによって適用される場合もある。
【0018】
可能な一実施形態では、縦糸の切断端部または横糸の切断端部は(微量の顔料でマーキングされることで)着色される場合もある。異なる色を選択することで、両方のタイプの識別を組み合わせることも可能である。
【0019】
別の可能な形態では、少なくとも何本かの糸の切断端部の視認性を高めるために、それらの糸を被覆するサイズ剤を着色することも可能である。サイジングとは、糸の被覆のことであり、圧密動作時に熱影響下で溶融させることによって、糸が互いに接着できるようにし、ひいては、一定の剛性を有する構造が得られるようにするが、後の含浸を妨げるものではない。
【0020】
例として、上述の比較ステップは、プリフォームまたはブランクに、透明媒体にマーキングされた基準曲線の形状を配置することによって行われる。
【0021】
前記最適な形状はステップごとに少し異なる場合があり、その差が異なる複数の透明媒体を使用することに関係することに留意すべきである。
【0022】
さらに別の変形例では、上述の比較ステップは、プリフォームまたはブランクの前記曲線を光学的に撮像し、画像からコンピュータファイルを作成し、そのファイルを対応する基準コンピュータファイルと比較することにより行われる。
【0023】
さらに、異なる検査ステップに対応する複数の基準ファイルがある場合がある。
【0024】
本発明の原理に従った3D製織によるブレードの製造方法の一例の以下の説明から、本発明はより十分に理解され、本発明の他の利点がより明らかになる。以下の説明は、単に例として添付図面を参照して考察されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】プリフォームの3D製織を示す図である。
【図2】製織されたプリフォームの図である。
【図3】製織後の前記プリフォームの実際の成形を示す図である。
【図4】圧密ステップを示す図である。
【図5】含浸ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、例えば、各々が数百の糸を有する32の層を備える縦糸またはストランドの束12が配置されたジャガード織りタイプの織機を使用したブレードの適切な製織を示す。メカニズムは、図示された縦糸のシートに対して横方向にこれらの糸の各々に作用して、横糸14を挿入することができるものである。最も厚い部分であるブレード根元部を製織する間、全ての32の層が製織に関与し、その後、徐々に、ブレードの製織は減少する厚さに伴って継続し、縦糸12aの何本かが製織に関与しなくなり、ひいては、所望の連続的に可変の厚さおよび輪郭を有するプリフォームを得ることができる。製織の終了時に、プリフォーム16は2つの一連の糸、つまり縦糸と横糸との交絡の真ん中で保持されているように見える。これらの縦糸と横糸とは、その後、製織体の境界で切断される。
【0027】
このことで、図2に示されているプリフォーム16を得ることができる。
【0028】
本発明の重要な特徴によれば、少なくとも何本かの糸、例えば、ここでは、縦糸のみの切断端部18の視認性は、プリフォームの表面に点で曲線20を鮮明にするように強調される。上述したように、各切断端部は、少量の顔料で着色される場合がある。別の可能な形態では、糸が所望の色を持つサイジング材料の被覆で予め被覆される場合、糸を切断するだけで、異なる色すなわち炭素繊維の色を有する端部が見えることになる。
【0029】
いずれの場合も、プリフォーム16は、縦糸の切断端部が、色の対比によって点として非常に目立って現れることが注目される。
【0030】
方法は、続けて、プリフォーム16を、まだ展性が残っているうちに(プリフォームは製織によって絡み合った糸の質量体しか備えないので)、例えば、成形モールド23a、23bの底部で構成される成形モールド23a内に配置する。
【0031】
この段階で、プリフォームに(プロジェクタ25によって)所定の理想的なプリフォームの曲線の画像を投影することができる。したがって、操作者は、プリフォームの着色された線を投影された線と一致させるようにして、成形モールド23a内のプリフォームの配置を調節することができる。その結果は、図3に示されている。
【0032】
変形例では、反対に、成形モールド内のプリフォーム16の光学画像を撮って、画像、特に曲線20の画像をコンピュータファイルに変換し、ファイルの内容を基準ブレードの曲線を表わす基準ファイルの内容と比較することができる。
【0033】
次のステップは、図4に示されるように、従来通りである。次のステップは、プリフォーム16の圧密および初期硬化を実施するステップを含む。圧密モールドの上部23bが設置される。モールドは糸を被覆するサイズ剤を溶融させながら圧密するように加熱しながら圧力下で密閉され、これにより一定の剛性を有するプリフォームが得られる。圧密の終了時に、再度、少なくとも、プリフォームの正確な位置決めが圧密動作によって損なわれなかったことを検証するために、理想プリフォーム(製造のこの段階で理想であると考えられる)の曲線の形状を投影することで検査動作を再度実行することができる。
【0034】
次の動作は、図5に示されるように、プリフォーム16を樹脂で含浸するステップを含む。この動作は従来通りであり、圧密されたブレードが、熱硬化性樹脂を注入するための窯を形成するモールド29内に配置される。
【0035】
含浸動作の終了時に、曲線は含浸されたプリフォームの表面でまだ視認できる状態であり、含浸が前記曲線の形状を大幅に変化させていないことを保証するために再度検査動作を実行することができる。
【0036】
この検査終了時に、検査結果が合格であれば、プリフォームは選択され、最終の形状にするために機械加工が施される。検査結果が不合格であれば、含浸されたプリフォームは廃棄される。
【0037】
上述したように、方法において複数の段階で繰り返され得る検査動作は、最適なブレードの曲線に対応する基準曲線がマーキングされた少なくとも1つの透明媒体を使用して行われてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォーム(16)を3D製織することによってブレードを製造する方法にして、前記プリフォームの輪郭とボリュームとを画定するために縦糸(12a)と横糸(14)とが所定の位置で切断され、前記プリフォームが成形され、前記成形されたプリフォームが含浸される方法であって、
曲線(20)を鮮明にするために少なくとも何本かの糸の切断端部が視認できるようにするステップと、
これらの曲線の形状を基準形状と少なくとも比較するステップ(25)と、
ブレードを作成するのにこの比較結果を使用するステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
含浸段階の前に、曲線(20)が基準形状の曲線とほぼ一致するようにする動作が前記プリフォームに対して行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
製織後の前記プリフォームが成形されること(23a)、およびその曲線が対応する基準形状の曲線とほぼ一致するか否かが検証されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プリフォームが、成形された後に圧密されること(23a、23b)、およびその曲線が対応する基準形状の曲線とほぼ一致するか否かが検証されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
含浸(29)の後に、製造されているブレードがその曲線が対応する基準形状の曲線とほぼ一致する場合に選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも縦糸(12a)の切断端部の視認性を高めるステップを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
縦糸(12a)の切断端部を着色するステップを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
横糸(14)の切断端部を着色するステップを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも何本かの糸の切断端部の視認性を高めるために、少なくとも何本かの糸を被覆するサイズ剤を着色するステップを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
上述の比較ステップが、プリフォームの前記曲線を光学的に撮像し、前記画像からコンピュータファイルを作成し、そのファイルを対応する基準コンピュータファイルと比較することにより行われることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
上述の比較ステップが、前記プリフォームに透明媒体にマーキングされた基準曲線の形状を重ね合わせることによって行われることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−512765(P2012−512765A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541568(P2011−541568)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052596
【国際公開番号】WO2010/076513
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】