説明

チップ体の製造方法、デバイスの製造方法およびチップ体固着用粘接着シート

【課題】切断起点を有するワークの個片化をエキスパンド装置を使用することなく行い、かつ個片化されたチップに適正量の接着剤層を簡便に設けることが可能なデバイスの製法を提供する。
【解決手段】少なくとも1層の収縮性フィルム11と、伸長可能なフィルム12と、該伸長可能なフィルム上に該伸長可能なフィルムから剥離可能に積層された脆質状体の粘接着剤層13とからなるチップ体固着用粘接着シート20に、切断予定ラインに沿って形成された切断起点3を有するワーク1が貼着された状態とする工程と、チップ体固着用粘接着シート20の端部を固定する工程と、前記収縮性フィルム11を収縮させて前記切断起点にストレスを加え、前記ワークをチップ毎に割断すると同時に、該粘接着シートの粘接着剤層をチップと略同形状に破断する工程と、チップに粘接着剤層を同伴したままピックアップを行い、粘接着剤層を介してボンディングを行う工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ等のチップ体の製造方法、およびこの方法を利用した半導体装置等のデバイスの製造方法に関する。さらに詳しくは、チップ体の製造工程において、ウエハ等のワークに予め切断起点を形成しておき、これを起点としてワークの割断(チップ化)を行う際に、従来から行われてきたブレーキングやエキスパンド工程を行うことなく、ワークを割断すると同時にチップ間隔を拡張することができるチップ体の製造方法およびこの方法を利用したデバイスの製造方法に関する。また、本発明は、これらの方法に特に好ましく用いられるチップ体固着用粘接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ、セラミック等のワークを分割しチップ体を製造する方法として、一般的にはダイシングブレードによりワークをフルカットする工程がある。また、ワークをハーフカットすることで切断起点を設け、ブレーキングにより分割する方法も行われてきた。
【0003】
さらに、近年では、切断予定ラインに沿ってワークに切断起点を設けておき、エキスパンドすることで切断起点から割断を起こさせ、ワークをチップ化する方法も開発されている。切断起点の形成は、レーザーによりワーク内部に脆質層を形成する手法、上述のようなハーフカット工程による手法がある。このような切断起点が設けられたワークは、個片化されていない状態ではあるが、潜在的に脆質であり、機械的衝撃を加えることで、切断起点から割断が起こり容易にチップ化される。そのため、エキスパンド工程における衝撃によってもチップ化されうる。また、エキスパンドであれば整然とチップ間隔が拡張するため、チップ同士の接触によるチップの破損が防止され、さらにピックアップ時におけるチップの認識性も向上する。
【0004】
現状のエキスパンド工程は、エキスパンド装置を用いシートを引き伸ばすことで行われている。エキスパンド装置は、引き伸ばし量、引き伸ばし時のトルクが固定され、粘着シートの種類や、デバイスのサイズによって調整することが困難なものが多い。このため、粘着シートが軟らかい場合は、ワーク貼着部まで引伸応力が伝達せず、ワークが割断されなかったり、充分なチップ間隔が得られなくなる。一方、シートが硬い場合には、装置のトルクが不足したり、あるいは粘着シートが裂けてしまうことがあった。
【0005】
また、エキスパンド装置を用いてのエキスパンド操作は、リングフレームに張設された粘着シートにワークを貼着した状態で行う。エキスパンドの結果、粘着シートが引き伸ばされ、貼着されたウエハはリングフレームから垂れ下がるため、このまま状態ではリングフレームカセットに収納できない。すなわち、次工程への簡便な移送ができないため、エキスパンド装置上でチップのピックアップを行う必要があり、プロセス上の制約が多い。
【0006】
さらに、ピックアップ工程およびダイボンディング工程が終了すると、粘着シートがリングフレームに貼着されたまま、リングフレームはリングフレームカセットに収納されている。従来の工程では、エキスパンドにより変形された粘着シートを、熱風により形を復元させることが必要で、復元が不充分なものは、リングフレームカセットに粘着シートの粘着面が付着する結果、収納が不可能となってしまうことがあり、自動化が難しかった。
【0007】
このようなエキスパンド工程における問題は、前記した切断起点を形成したワークを、エキスパンドにより割断する際にも同様に発生する。このエキスパンド工程では特に、ワークを割断するために充分な引き伸ばし力が必要となり、変形された粘着シートを復元す
ることがさらに困難であった。
【0008】
エキスパンド工程における上記問題点を解決するため、特許文献1には、収縮性フィルムを用いてチップ間隔を拡張する方法が開示されている。より具体的には、少なくとも1層の収縮性フィルムと、伸張可能なフィルムと、被切断物貼着用粘着剤層とからなるチップ体製造用粘着シートに、被切断物を貼付する工程と、チップ体製造用粘着シートの端部を固定する工程と、被切断物をダイシングしてチップとする工程と、前記収縮性フィルムを収縮させて、チップ間隔を拡張する工程とからなるチップ体の製造方法が開示されている。
【0009】
この方法では、粘着シート上にワーク(被切断物)を貼着した状態でワークのフルカットダイシングを行っている。フルカットダイシングでは、ワークを完全に切断し、かつ粘着シートの伸長可能なフィルムを切断しないように行う必要があり、切断深さの厳密な制御が要求される。
【0010】
また、特許文献1の方法では、ピックアップされたチップは、チップ単体であって接着剤層等を有しない。このため、チップをリードフレーム等にボンディングする際には、チップに固着用接着剤層を形成するか、あるいはリードフレーム側に接着剤を塗布した後にチップのボンディングを行う必要がある。しかし、近年のチップの小型化、薄型化に伴い、このような接着剤層の形成が困難になっている。
【特許文献1】特許第3535968号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明に係るチップ体の製造方法は、切断起点を有するワークの個片化を、エキスパンド装置を使用することなく行うことを目的としている。
【0012】
本発明に係るデバイスの第1の製造方法は、エキスパンド装置を使用することなくチップ間隔を拡張すると同時に、チップに適正量の接着剤層を簡便に設けることを目的としている。
【0013】
本発明に係るデバイスの第2の製造方法は、切断起点を有するワークの個片化を、エキスパンド装置を使用することなく行いかつ、個片化されたチップに適正量の接着剤層を簡便に設けることを目的としている。
【0014】
また本発明は、上記デバイスの製法に特に好適に用いられるチップ体固着用粘接着シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
本発明に係るチップ体の製造方法は、
少なくとも1層の収縮性フィルムと、伸長可能なフィルムと、粘着剤層とからなる粘着シートに、切断予定ラインに沿って形成された切断起点を有するワークが貼着された状態とする工程と、
該粘着シートの端部を固定する工程と、
前記収縮性フィルムを収縮させて前記切断起点にストレスを加え、前記ワークをチップ毎に割断する工程とを含む。
【0016】
本発明に係るデバイスの第1の製造方法は、
少なくとも1層の収縮性フィルムと、伸長可能なフィルムと、該伸長可能なフィルム上に該伸長可能なフィルムから剥離可能に積層された脆質状体の粘接着剤層とからなるチップ体固着用粘接着シートに、個片化されたチップ群が貼着された状態とする工程と、
チップ体固着用粘接着シートの端部を固定する工程と、
前記収縮性フィルムを収縮させてチップ間の間隔を離間するとともに該粘接着シートの粘接着剤層をチップと略同形状に破断する工程と、
チップに粘接着剤層を同伴したままピックアップを行い、粘接着剤層を介してボンディングを行う工程を含む。
【0017】
本発明に係るデバイスの第2の製造方法は、
少なくとも1層の収縮性フィルムと、伸長可能なフィルムと、該伸長可能なフィルム上に該伸長可能なフィルムから剥離可能に積層された脆質状体の粘接着剤層とからなるチップ体固着用粘接着シートに、切断予定ラインに沿って形成された切断起点を有するワークが貼着された状態とする工程と、
チップ体固着用粘接着シートの端部を固定する工程と、
前記収縮性フィルムを収縮させて前記切断起点にストレスを加え、前記ワークをチップ毎に割断すると同時に、該粘接着シートの粘接着剤層をチップと略同形状に破断する工程と、
チップに粘接着剤層を同伴したままピックアップを行い、粘接着剤層を介してボンディングを行う工程を含む。
【0018】
本発明に係るチップ体固着用粘接着シートは、
少なくとも1層の収縮性フィルムと、伸長可能なフィルムと、該伸長可能なフィルム上に該伸長可能なフィルムから剥離可能に積層された脆質状体の粘接着剤層とからなる。
【0019】
上記チップ体固着用粘接着シートにおいては、収縮性フィルムが、粘接着剤層の周辺部に配置されてなることが好ましい。また、伸長可能なフィルムの室温(23℃)でのヤング率が500MPa以下であり、粘接着剤層の破断伸度が1〜350%であり、破断応力が
1000N/cm2以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るチップ体の製造方法によれば、切断起点を有するワークの個片化を、エキスパンド装置を使用することなく行うことができる。
本発明に係るデバイスの第1の製造方法によれば、エキスパンド装置を使用することなくチップ間隔を拡張すると同時に、チップに適正量の接着剤層を簡便に設けることができる。
【0021】
本発明に係るデバイスの第2の製造方法によれば切断起点を有するワークの個片化を、エキスパンド装置を使用することなく行いかつ、個片化されたチップに適正量の接着剤層を簡便に設けることができる。
【0022】
また本発明によれば、上記デバイスの製法に好ましく用いられるチップ体固着用粘接着シートが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について図面を参照しながらさらに具体的に説明する。
まず本発明に係るチップ体の製造方法について説明する。
本発明のチップ体の製造方法においては、図1、2に示すように、
少なくとも1層の収縮性フィルム11と、伸長可能なフィルム12と、粘着剤層13とからなる粘着シート10に、切断予定ライン2に沿って形成された切断起点3を有するワ
ーク1が貼着された状態とする。なお図2は、図1のa−a線断面図である。
【0024】
ワーク1としては、たとえば、表面に多数の回路が形成された半導体ウエハ、具体的にはSiウエハ、Geウエハ、GaAsウエハ;アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミック板、絶縁基板、各種電子素子;光学用素子として用いられるガラス板、石英等;プリント基板などの配線基板;鉄系、銅系などのリードフレーム;TAB(テープ・オートメイテッド・ボンディング;Tape Automated Bonding)用テープ;各種の樹脂成形体;およびこれらの複合体、具体的には半導体をリードフレーム上にマウンティングしたもの、その樹脂封止物、半導体をTAB用テープ上にマウンティングしたものの樹脂封止物等が挙げられる。これらワークは、所望の大きさに切断され、後の工程に移送され、半導体装置、光学装置などの各種デバイスの製造に供される。これらワークは、図1の破線で示した切断予定ライン2に沿って形成された切断起点3を有する。以下、半導体ウエハを例にとって説明するが、ワーク1はこれに限定されない。
【0025】
半導体ウエハ表面への回路の形成は、エッチング法、リフトオフ法などの従来より汎用されている方法を含む、様々な方法により行うことができる。半導体ウエハの回路形成工程において、所定の回路が形成される。半導体ウエハは回路毎に切断分離されチップ化した後、所定の基台にマウントされ、半導体装置となる。ウエハの厚みは、特に限定はされないが、200μm以下、さらに30〜150μm程度であることが好ましい。
【0026】
切断予定ライン2は、ウエハを回路毎に区画する仮想ラインであり、この切断予定ラインに沿って切断起点3が形成されている。切断起点3が形成された状態では、ウエハは一体的形状を保ち、いまだ個片化されていない。しかし、切断起点3は、潜在的に脆質であり、機械的衝撃を加えることで、切断起点から割断が起こりウエハはチップ化される。
【0027】
切断起点3の形成は、いわゆるステルスダイシング法やハーフカット法により行われる。
ステルスダイシング法は、ウエハの内部にのみ焦点を合わせてレーザーを照射し、焦点部分を改質させた後この軌跡をストレスにより割断させることによりチップ化する方法である。ステルスダイシング法では、半導体ウエハ内部に、半導体ウエハの各回路を区画する切断予定ライン2に沿って脆弱部(切断起点3)を形成する。この状態では、各チップ群が脆弱部を介して連接しており、全体としてウエハ形状を維持している。脆弱部の形成は、切断予定ラインに沿って半導体ウエハ内部に焦点を合わせてレーザー光を照射することで行われる。レーザー光の照射により、ウエハ内部が局所的に加熱され結晶構造の変化などにより改質される。改質された部分は、周辺の部位と比べ脆弱である。したがって、半導体ウエハにストレスを加えると、この脆弱部を起点としてウエハの上下方向に亀裂が成長し、ウエハをチップ毎に分割できる。
【0028】
このようなステルスダイシング法の詳細は、たとえば「電子材料、2002年9月、17〜21頁」、特開2003−88982号公報に記載されている。
また、ハーフカット法では、半導体回路が形成されたウエハ表面またはその裏面からそのウエハ厚さよりも浅い切込み深さの溝を形成する。図2は、図1におけるa−a線断面図であり、ハーフカット法を採用して切断起点3を形成した状態を示す。図2に示したように、この状態では、各チップ群が橋を介して連接しており、全体としてウエハ形状を維持している。橋部は、周辺の部位と比べ厚みが薄く、潜在的に脆弱である。したがって、半導体ウエハにストレスを加えると、この橋部で割断し、ウエハをチップ毎に分割できる。
【0029】
本発明のチップ体の製造方法においては、図1、2に示すように、
少なくとも1層の収縮性フィルム11と、伸長可能なフィルム12と、粘着剤層13と
からなる粘着シート10に、切断予定ライン2に沿って形成された切断起点3を有するワーク1が貼着された状態とする。
【0030】
この状態を達成するためには、切断起点を形成していないウエハを粘着シートに貼着して、ウエハが粘着シート上に固定された状態で、上記のステルスダイシング、ハーフカットを行うことで達成できる。また、ステルスダイシング、ハーフカットを行って、切断起点3を有するワーク1を予め形成しておき、これを粘着シート10に貼着してもよい。
【0031】
図2に示す状態は、粘着シート10に貼着されたワークのハーフカットを行って、切断起点3を有するワーク1を形成した状態である。
粘着シート10は、少なくとも1層の収縮性フィルム11と、伸長可能なフィルム12と、粘着剤層13とからなる。
【0032】
収縮性フィルム11としては、何ら限定されるものではないが、主として熱収縮性フィルムが用いられる。本発明で用いられる収縮性フィルムの収縮率は10〜90%が好ましく、さらに好ましくは20〜80%である。なお、ここで収縮率は、収縮前の寸法と収縮後の寸法とから、下記の数式に基づき算出する。
【0033】
【数1】

【0034】
熱収縮性フィルムの場合、上記収縮率は、フィルムを120℃に加熱した前後の寸法に基づいて算出される。上記のような収縮性フィルムとしては、従来、種々のものが知られているが、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム等を例示することができる。また、これら収縮性フィルムは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
上記のような収縮性フィルムの厚さは、通常5〜300μmであり、好ましくは10〜200μmである。収縮性フィルムとしては、特に熱収縮性のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムを用いることが好ましい。
【0036】
本発明のチップ体の製法で用いられる粘着シート10の伸張可能なフィルム12は、特に限定はされないが、耐水性および耐熱性に優れているものが適し、特に合成樹脂フィルムが適する。
【0037】
このような伸張可能なフィルム12としては、具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン・プロピレン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンフィルム、ポリアミドフィルム、アイオノマー等からなるフィルムなどが用いられる。また、これら伸張可能なフィルムは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。さらに、重合体構成単位としてカルボキシル基を有する化合物を含む重合体フィルムあるいはこれと汎用重合体フィルムとの積層体を用いることもできる。
【0038】
上記のような伸張可能なフィルム12の厚さは、通常5〜500μmであり、好ましく
は10〜300μmである。本発明で用いられる伸張可能なフィルムの23℃におけるヤング率は通常500MPa以下であり、好ましくは100〜300MPaの範囲にあることが望ましい。
【0039】
また収縮性フィルムあるいは伸張可能なフィルムの他層と接する面には密着性を向上するために、コロナ処理を施したりプライマー等の他の層を設けてもよい。
本発明では、後述するように、収縮フィルム11の収縮の前または後に、粘着剤層13に紫外線を照射することがあるが、この場合には、伸長可能なフィルム12は紫外線を透過する必要がある。
【0040】
粘着シート10の粘着剤層13は、従来より公知の種々の粘着剤により形成され得る。このような粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等の粘着剤が用いられる。また、放射線硬化型や加熱発泡型の粘着剤も用いることができる。さらに、ダイシング・ダインボンディング兼用可能な粘接着剤であってもよい。
【0041】
特に後述する本発明のデバイスの製法に用いる際には、特異な破断物性を有する粘接着剤を使用する。このような粘接着剤については、後に詳述する。
粘着剤層13の厚さは、その材質にもよるが、通常は3〜100μm程度であり、好ましくは10〜50μm程度である。上記のような粘着剤としては、種々の粘着剤が特に制限されることなく用いられる。放射線硬化(光硬化、紫外線硬化、電子線硬化)型粘着剤としては、たとえば、特公平1−56112号公報、特開平7−135189号公報、特公平7−15087号公報等に記載のものが好ましく使用されるがこれらに限定されることはない。本発明のチップ体の製法においては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。
【0042】
収縮性フィルム11と伸張可能フィルム12は、後述するように種々の形状で接合される。フィルムどうしの接合には、図2〜図4のようにワークを固定するための粘着剤層13を用いてもよく、また、図5、6のように、別の接着剤層14により収縮性フィルム11と伸張可能フィルム12とを接合してもよい。このような接着剤としては、特に制限されることなく、従来より汎用の接着剤が用いられ、アクリル系、ゴム系、シリコーン系などの接着剤;ポリエステル系、ポリアミド系、エチレン共重合体系、エポキシ系、ウレタン系等の熱可塑性または熱硬化性の接着剤;アクリル系、ウレタン系等の紫外線硬化型接着剤や電子線硬化型接着剤が挙げられる。また、接着剤層を用いない場合は、たとえばヒートシール等によって収縮性フィルム11と伸張可能なフィルム12とをラミネートすることができる。
【0043】
図2、4のように、収縮性フィルム11がリングフレーム4を固定する位置に配置される場合は、収縮性フィルム上にリングフレーム固定用の粘着剤層15を設けることができる。リングフレーム固定用の粘着剤層15は、粘着剤層13と同様に、従来より公知の種々の感圧接着剤が使用できるが、特に再剥離性感圧接着剤が好ましく使用できる。
【0044】
さらに、図7に示すように、収縮性フィルム11と伸長可能フィルム12との接合および収縮性フィルム上へのリングフレームの固定を同一の粘着剤層15で行ってもよい。
本発明のチップ体の製法においては、粘着シート10の粘着剤層13上のワーク1が貼付され、粘着シート10の端部をリングフレーム4で固定する。次いで収縮性フィルム11を収縮させると、ワーク貼着部よりも外部に配置されている収縮性フィルム11によってシート中心部から周縁方向に向けて引伸応力が発生する。この結果、収縮性フィルム11の収縮力が伸長可能なフィルム12に伝播し、伸長可能なフィルム12が周縁方向に引き伸ばされ、同時にワークには周縁方向に引き伸ばす力が加わる。前述したように、ワー
ク1の切断起点3は潜在的に脆弱であるため、図8に示すように、切断起点3においてワークの割断が起きチップ化すると同時に、チップ間隔が拡張する。このような本発明のチップ体の製法においては、粘着シート10における収縮性フィルム11は、粘着剤層13の周端部、具体的にはワーク貼着部より外部に配置されていることが特に好ましい。
【0045】
ワーク6の割断は、上述の通り収縮性フィルムの収縮により行われるが、このとき同時に、超音波振動のような別の機械的な衝撃を与えてもよい。
図2〜図7に、本発明のチップ体の製法において用いられる粘着シート10の好ましい構成について、リングフレーム4、ワーク1との配置関係とともに示す。粘着剤層13、収縮性フィルム11、接着剤層14および伸張可能なフィルム12の具体例および好適な態様は上記で説明したとおりである。なお、接着剤層14は、上述したように必須ではない。
【0046】
図2に示す構成では、伸張可能なフィルム12上に粘着剤層13が設けられ、該粘着剤層13の外周部上に収縮性フィルム11が積層されてなる。粘着シート10は、収縮性フィルム11上においてリングフレーム4によって固定され、粘着剤層13上にはワーク1が貼付される。なお、この構成をとる場合には、収縮性フィルム11上に、リングフレーム固定用の粘着剤層15を設けることが好ましい。
【0047】
図3に示す構成では、伸張可能なフィルム12上に粘着剤層13が設けられ、該粘着剤層13上面のワーク貼着部より外部であって、かつリングフレーム4よりも内部に、収縮性フィルム11が積層されてなる。なお、粘着シート10の端部は、粘着剤層13上周縁部においてリングフレーム4によって固定され、粘着剤層13上内周部にはワーク1が貼付される。
【0048】
図4に示す構成では、伸張可能なフィルム12上に粘着剤層13が設けられ、該粘着剤層13上面の外周部に、収縮性フィルム11が外縁部が延出した形で積層されてなる。粘着シート10は、収縮性フィルム11の延出した外縁部においてリングフレーム4によって固定され、粘着剤層13上にはワーク1が貼付される。なお、この構成をとる場合には、収縮性フィルム11上に、リングフレーム固定用の粘着剤層15を設けることが好ましい。
【0049】
図5に示す構成では、伸張可能なフィルム12下面の外周部に、接着剤層14を介して収縮性フィルム11が積層され、伸張可能なフィルム12上面に粘着剤層13が設けられてなる。粘着シート10の端部は、粘着剤層13上周縁部においてリングフレーム4によって固定され、粘着剤層13上内周部にはワーク1が貼付される。
【0050】
図6に示す構成では、伸張可能なフィルム12下面のワーク貼着部より外部であって、かつリングフレーム4よりも内部に、接着剤層14を介して収縮性フィルム11が積層され、伸張可能なフィルム12上面に粘着剤層13が設けられてなる。粘着シート10の端部は、粘着剤層13上周縁部においてリングフレーム4によって固定され、粘着剤層13上内周部にはワーク1が貼付される。
【0051】
図7に示す構成では、伸張可能なフィルム12上に粘着剤層13が設けられ、該伸張可能なフィルム12の下面の外周部に、粘着剤層15を介して、収縮性フィルム11が外縁部が延出した形で積層されてなる。粘着シート10は、収縮性フィルム11の延出した外縁部において粘着剤層15を介してリングフレーム4によって固定され、粘着剤層13上にはワーク1が貼付される。
【0052】
本発明のチップ体の製法においては、特に図2に示す構成を採用することが好ましい。
次に本発明に係るデバイスの第1の製法について説明する。
本発明に係るデバイスの第1の製法は、個片化されたチップ裏面(ボンディング面)に簡便に、チップ体固着用の接着剤層を形成することを目的としている。
【0053】
本発明に係るデバイスの第1の製法においては、まず図9に示すように、
少なくとも1層の収縮性フィルム21と、伸長可能なフィルム22と、該伸長可能なフィルム22上に該伸長可能なフィルム22から剥離可能に積層された脆質状体の粘接着剤層23とからなるチップ体固着用粘接着シート20に、個片化されたチップ群6が貼着された状態とする。
【0054】
チップ6としては、たとえば、表面に回路が形成された半導体チップ、具体的にはSiチップ、Geチップ、GaAsチップ;アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミック片、各種電子素子;光学用素子として用いられるガラス片などがあげられるが、これらに限定されない。これらチップは、切断ラインに沿って所望の大きさに完全に切断された状態でチップ体固着用粘接着シート20に固定されている。チップは、後の工程に移送され、半導体装置、光学装置などの各種デバイスの製造に供される。以下、半導体チップを例にとって説明するが、チップ6はこれに限定されない。
【0055】
チップ6の厚みは特に限定はされないが、本発明の製造方法は、極薄チップに対して特に有効であるため、半導体チップとして200μm以下、さらに30〜150μm程度であることが好ましい。
【0056】
なお、本発明において、チップのボンディング面とは通常チップの裏面を指すが、フリップチップボンディングのように回路面側が基板に対面してボンディングする場合は、回路形成面を指す。
【0057】
図9に示すような、ウエハ形状のチップ群6のボンディング面側が、チップ体固着用粘接着シート20に貼付された状態を実現する手段は特に限定はされない。結果として、図9に示す状態が実現されれば、如何なる経路を経てもよい。
【0058】
たとえば、チップ体固着用粘接着シート20をダイシングシートとして用い、チップ体固着用粘接着シート20の粘接着剤層23を完全に切断しないように半導体ウエハのみをチップにダイシング(フルカット)することにより、ウエハ形状を維持したチップ群がチップ体固着用粘接着シート20上に貼着された状態となる。
【0059】
また、別のダイシング工程を用いてウエハ形状を維持したチップ群を形成した後、チップ体固着用粘接着シート20に転写することにより、同じ形状を作ることができる。別のダイシング工程としては、ダイシングテープを用いた通常のダイシング工程であってもよいし、ウエハの回路面側をハーフカットした後、裏面側を研削してチップに分割する先ダイシング工程であってもよい。
【0060】
さらに、ダイシング装置はダイシングブレードを使用するダイシング装置の代わりに、レーザー光線によるダイシング装置(レーザーダイサー)によってもよい。レーザーダイサーはレーザー光線の焦点をコントロールしてウエハの分割を行うので、粘接着剤層を一緒に切断しないように制御しやすい。ウエハと一緒に粘接着剤層をレーザー光線で切断すると、粘接着剤の揮散分解成分が回路面に付着し汚染する虞があるため、本発明の方法が有効である。
【0061】
チップ体固着用粘接着シート20は、収縮性フィルム21、伸長可能なフィルム22およびその上に形成された粘接着剤層23とからなる。チップ体固着用粘接着シート20は
、テープ状、ラベル状などあらゆる形状をとりうる。
【0062】
収縮性フィルム21は、前記で説明した収縮性フィルム11と同様である。
伸張可能なフィルム22としては、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル系共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢ビフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、フッ素樹脂フィルム等の単層または積層のフィルムが用いられる。また、これらの架橋フィルムであってもよい。さらに後述の粘接着剤層23が紫外線硬化性である場合は、伸長可能なフィルム22は、透明(紫外線透過性)のフィルムが用いられるが、粘接着剤層23が非硬化性であったり電子線硬化性である場合は不透明フィルムも使用可能である。
【0063】
これらのフィルムの中でも特にヤング率(23℃)が、500MPa以下、さらには50〜300MPa程度のフィルムが好ましく用いられる。なお、後述するように粘接着剤層23の脆質化処理を冷却により行う場合は、当該冷却温度におけるヤング率が500MPa以下であることが好ましい。このような伸長可能なフィルム22を用いることで、後述する粘接着剤層の割断を円滑に行えるようになる。
【0064】
本発明に係るデバイスの第1の製法においては、後述するように、チップ6のボンディング面に粘接着剤層23を固着残存させて伸長可能なフィルム22からピックアップする。このため、伸長可能なフィルム22の粘接着剤層23に接する面の表面張力は、好ましくは40mN/m 以下、さらに好ましくは37mN/m 以下、特に好ましくは35mN/m 以下で
あることが望ましい。このような表面張力が低いフィルムは、材質を適宜に選択して得ることが可能であるし、またフィルムの表面に、シリコーン樹脂やアルキッド樹脂などの離型剤を塗布して離型処理を施すことで得ることもできる。
【0065】
このような伸長可能なフィルム22の膜厚は、通常は10〜500μm、好ましくは15〜300μm、特に好ましくは20〜250μm程度である。
粘接着剤層23は、本発明のデバイスの製造方法において、ピックアップされたチップのボンディング面に配置され、ダイボンド時にはチップ搭載用基板との固着用接着剤としての機能を有する。粘接着剤とは、初期状態において常温で粘着性を示し、加熱のようなトリガーにより硬化し強固な接着性を示す接着剤をいう。
【0066】
このような粘接着剤としては、従来公知の粘接着剤が特に制限されることなく用いられる。しかしながら、伸長可能なフィルム22表面からの剥離を容易にするために、粘接着剤層23は、エネルギー線硬化性成分を有することが好ましい。エネルギー線硬化性成分を硬化させることで、粘着力が減少するため、伸長可能なフィルム22表面からの剥離を容易に行えるようになる。また、ボンディング時にチップ搭載用基板との固着を強固にするために、熱硬化性成分を有することが好ましい。チップ搭載用基板への載置後、加熱することで熱硬化性成分が活性化し、チップ搭載用基板に対し強固に接着できるようになる。
【0067】
粘接着剤としては、たとえば常温で感圧接着性を有するバインダー樹脂と熱硬化性樹脂との混合物が挙げられる。常温で感圧接着性を有するバインダー樹脂としては、たとえばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル、ウレタン樹脂、ポリアミド等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、一般的にはエポキシ、フェノキシ、フェノール、レゾルシノール、ユリア、メラミン、フラン、不飽和ポリエステル、シリコーン等であり、適当な硬化促進剤と組み合わせて用いられる。このような熱硬化性樹脂は種々知られており、本発明においては特に制限されることなく従来より公知の様々な熱硬化性樹脂を用いること
ができる。また粘接着剤には伸長可能なフィルム22との剥離性を制御するため、ウレタン系アクリレートオリゴマーなどの紫外線硬化性樹脂を配合することが好ましい。紫外線硬化性樹脂を配合すると、紫外線照射前は伸長可能なフィルム22とよく密着し、紫外線照射後は伸長可能なフィルム22から剥離しやすくなる。
【0068】
上記のような各成分からなる粘接着剤は、エネルギー線硬化性と加熱硬化性とを有し、伸長可能なフィルム22に密着してチップ群6の固定に寄与し、マウントの際にはチップとチップ搭載用基板とを接着する接着剤として使用することができる。そして熱硬化を経て最終的には耐衝撃性の高い硬化物を与えることができ、しかも剪断強度と剥離強度とのバランスにも優れ、厳しい熱湿条件下においても充分な接着物性を保持しうる。
【0069】
本発明のデバイスの第1の製法においては、図9に示されるように粘着シート20の粘接着剤層23上のチップ群6が貼付され、粘着シート20の端部をリングフレーム4で固定する。次いで図10に示されるように、収縮性フィルム21を収縮させると、チップ群貼着部よりも外部に配置されている収縮性フィルム21によってシート中心部から周縁方向に向けて引伸応力が発生する。この結果、収縮性フィルム21の収縮力が伸長可能なフィルム22に伝播し、伸長可能なフィルム22が周縁方向に引き伸ばされ、同時に粘接着剤層23には周縁方向に引き伸ばす力が加わり、チップ間の間隔を離間するとともに粘着シート20の粘接着剤層23が割断する。このような本発明のデバイスの製法においては、粘着シート20における収縮性フィルム21は、粘接着剤層23の周端部、具体的にはチップ群貼着部より外部に配置されていることが特に好ましい。
【0070】
上述したように、本発明のデバイスの製法においては、収縮性フィルム21の収縮により、粘接着剤層23の割断を行う。したがって、本発明においては、この工程において、粘接着剤層23が下記のような特定の破断特性を示すように設定することが重要である。
【0071】
すなわち、収縮性フィルム21を収縮する際における粘接着剤層23の破断伸度は1〜350%、好ましくは20〜350%、さらに好ましくは50〜150%であり、破断応力は1000N/cm2以下、好ましくは100〜800N/cm2である。
【0072】
上記のような破断特性を示す粘接着剤層23は、所定の応力を受けると容易に割断する。しかしながら、チップ6のボンディング面に固着されている粘接着剤は、その変形(伸び)が拘束されるので、この部分では割断しない。一方、チップ間(すなわち切断ライン)にある粘接着剤は、変形が拘束されることがない。このため、チップ間の位置ではチップに面する位置よりも応力が集中し粘接着剤層23が破断する。この結果、図10に示すように、ボンディング面に粘接着剤を有するチップ6が、互いに所定の間隔で整列した状態が達成される。
【0073】
粘接着剤層23は、それ自体がエキスパンド条件を行う環境下で上記破断特性を有するものであってもよく、またそうでない場合には、エキスパンド工程に先立って、何らかの物理的あるいは化学的な処理によって、粘接着剤層23が上記破断特性を満たすようにしてもよい。
【0074】
たとえば、粘接着剤層23を冷却することで、上記の破断特性を達成することができる。一般に、接着剤の主成分であるポリマーは、低温において破断伸度は小さいため、粘接着剤層23も低温の方が脆質を示しやすい。したがって、粘接着剤層23の常温における破断特性が前述の値でなくても、収縮性フィルムの収縮時においてチップ群貼着部のみの温度を適宜冷却することにより、所望の破断特性が得られる。
【0075】
また、粘接着剤層23が硬化性であるので、収縮性フィルムの収縮に先立ち、粘接着剤
層23を硬化させることにより、破断特性をコントロールできる。一般に硬化性を有する接着剤は、硬化により破断伸度が小さくなり、脆質になりやすい。通常、硬化性の接着剤における硬化性成分(熱硬化性成分および/またはエネルギー線硬化性成分)の量が多くなると、硬化後の破断伸度は小さくなるので、硬化性成分の配合比を適宜選択することで、所望の破断特性を得ることができる。
【0076】
硬化性を有する粘接着剤層23を用いる場合は、粘接着シート20の全面にわたり硬化させるとダイボンディングができなくなる場合があるので、粘接着剤層23の硬化はチップ間のみ部分的に行うことが望ましい。粘接着剤層23がエネルギー線硬化性である場合は、チップ6がマスクとなるので、チップ側よりエネルギー線を照射することによりチップ間を部分的に硬化させることができる。粘接着剤層23が熱硬化性である場合は、特定の形状をした加熱コテや加熱用のワイヤーを粘接着シート20に当接することにより部分的な硬化を行うことができる。また、レーザー光線や赤外線ランプ等を用いて光線をチップ間に集光させることにより、粘接着剤層23の部分硬化を行ってもよい。
【0077】
粘接着剤層23の破断は、前述の通り収縮性フィルム21の収縮により行われるが、これと同時に、超音波振動のような別の機械的な衝撃を粘接着剤層23に与えてもよい。
本発明のデバイスの製法において用いられる粘着シート20の好ましい構成は、図9および前記チップ体の製法に関して説明した図3〜図7と同様であり、ただし、図3〜図7において、ワーク1は個片化されたチップ群6であり、粘着剤層13は粘接着剤層23であり、また、フィルム12はフィルム22である。収縮性フィルム11、接着剤層14の具体例および好適な態様はチップ体の製法に関して説明したとおりである。なお、接着剤層14は、上述したように必須ではない。
【0078】
上記のような工程を経て、図10に示すように、ボンディング面に粘接着剤を有するチップ6が、粘着シート20上で互いに所定の間隔で整列した状態が達成される。
本発明の第1のデバイスの製法においては、チップ6を粘接着剤層が同伴したままピックアップを行い、ボンディング面に形成された粘接着剤層を介してボンディングを行う。
【0079】
チップ6のピックアップは、吸引コレットなどを用いた公知の手法により行うことができる。また、必要に応じ、突き上げピンで、粘接着シート20側からチップを突き上げてもよい。
【0080】
このようなピックアップ操作により、チップ6のボンディング面に、チップ6と略同形状の粘接着剤層23が固着した状態で、チップ6がピックアップされる。
その後、粘接着剤層23を介してチップ6を、リードフレーム等の所定のチップ搭載用基板に載置し、必要に応じ加熱・加圧を行うことで、ダイボンディングが完了する。
【0081】
ダイボンディング後、ワイヤボンディング、樹脂封止などの通常の工程を経て半導体装置等のデバイスが得られる。
次に本発明に係るデバイスの第2の製法について説明する。
【0082】
本発明に係るデバイスの第2の製法は、ワークの割断および粘接着剤層の割断を同時に行い、個片化されたチップのボンディング面に簡便に、チップ体固着用の接着剤層を形成することを目的としている。
【0083】
本発明に係るデバイスの第2の製法においては、まず図1、2に示すように、
少なくとも1層の収縮性フィルム21と、伸長可能なフィルム22と、該伸長可能なフィルム22上に該伸長可能なフィルム22から剥離可能に積層された脆質状体の粘接着剤層23とからなるチップ体固着用粘接着シート20に、切断予定ラインに沿って形成され
た切断起点を有するワーク1が貼着された状態とする。
【0084】
ワーク1は、前記チップ体の製法に関して説明したものと同様であり、チップ体固着用粘接着シート20は、前記デバイスの第1の製法で説明したものと同様である。
上記の状態を達成するためには、切断起点を形成していないワークをチップ体固着用粘接着シート20に貼着して、ワークがチップ体固着用粘接着シート20上に固定された状態で、前述のステルスダイシング、ハーフカットを行うことで達成できる。また、ステルスダイシング、ハーフカットを行って、切断起点3を有するワーク1を予め形成しておき、これをチップ体固着用粘接着シート20に貼着してもよい。
【0085】
本発明のデバイスの第2の製法においては、粘着シート20の粘接着剤層23上のワーク1が貼付され、粘着シート20の端部をリングフレーム4で固定する。次いで収縮性フィルム21を収縮させると、ワーク貼着部よりも外部に配置されている収縮性フィルム21によってシート中心部から周縁方向に向けて引伸応力が発生する。この結果、収縮性フィルム21の収縮力が伸長可能なフィルム22に伝播し、伸長可能なフィルム22が周縁方向に引き伸ばされ、同時にワークおよび粘接着剤層23には周縁方向に引き伸ばす力が加わり、ワークが割断しチップ間の間隔を離間するとともに粘着シート20の粘接着剤層23が割断する。このような本発明のデバイスの製法においては、粘着シート20における収縮性フィルム21は、粘接着剤層23の周端部、具体的にはワーク貼着部より外部に配置されていることが特に好ましい。
【0086】
上述したように、本発明のデバイスの第2の製法においては、収縮性フィルム21の収縮により、粘接着剤層23の割断を行う。したがって、粘接着剤層23は、デバイスの第1の製法で示した特定の破断特性を示すように設定することが重要である。
【0087】
特定の破断特性を示す粘接着剤層23は、所定の応力を受けると容易に割断する。しかしながら、個片化されたチップのボンディング面に固着されている粘接着剤は、その変形(伸び)が拘束されるので、この部分では割断しない。一方、チップ間にある粘接着剤は、変形が拘束されることがない。このため、チップ間の位置ではチップに面する位置よりも応力が集中し粘接着剤層23が破断する。この結果、図10に示すように、ボンディング面に粘接着剤を有するチップ6が、互いに所定の間隔で整列した状態が達成される。
【0088】
粘接着剤層23の破断特性は、前記と同様にしてコントロールできる。
ワーク1および粘接着剤層23の破断は、前述の通り収縮性フィルム21の収縮により行われるが、これと同時に、超音波振動のような別の機械的な衝撃をワーク1および粘接着剤層23に与えてもよい。
【0089】
本発明のデバイスの第2の製法において用いられる粘着シート20の好ましい構成は、前記チップ体の製法に関して説明した図2〜図7と同様であり、ただし、粘着剤層13は粘接着剤層23であり、また、フィルム12はフィルム22である。ワーク1、収縮性フィルム11、接着剤層14の具体例および好適な態様はチップ体の製法に関して説明したとおりである。なお、接着剤層14は、上述したように必須ではない。
【0090】
上記のような工程を経て、図10に示すように、ボンディング面に粘接着剤を有するチップ6が、粘着シート20上で互いに所定の間隔で整列した状態が達成される。その後、前記デバイスの第1の製法で説明した工程と同様にしてデバイスの製造が行われる。
【0091】
本発明に係るチップ体固着用粘接着シート20は、
少なくとも1層の収縮性フィルム21と、伸長可能なフィルム22と、該伸長可能なフィルム22上に該伸長可能なフィルム22から剥離可能に積層された脆質状体の粘接着剤
層23とからなる。
【0092】
収縮性フィルム21、伸長可能なフィルム22、粘接着剤層23の具体例、構成例は、前記と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に係るチップ体の製造方法によれば、切断起点を有するワークの個片化を、エキスパンド装置を使用することなく行うことができる。
本発明に係るデバイスの第1の製造方法によれば、エキスパンド装置を使用することなくチップ間隔を拡張すると同時に、チップに適正量の接着剤層を簡便に設けることができる。
【0094】
本発明に係るデバイスの第2の製造方法によれば、切断起点を有するワークの個片化を、エキスパンド装置を使用することなく行いかつ、個片化されたチップに適正量の接着剤層を簡便に設けることができる。
【0095】
また本発明によれば、上記デバイスの製法に好ましく用いられるチップ体固着用粘接着シートが提供される。
(実施例)
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
〔リングフレーム固定用の粘着剤層15の組成物〕
アクリル系粘着剤〔n−ブチルアクリレート90重量部とアクリル酸10重量部との共
重合体〕100重量部と、イソシアナート系架橋剤〔コロネートL(日本ポリウレタン工
業(株))〕2重量部と、トルエンを固形濃度が30%となるよう
に混合し、リングフレーム固定用の粘着剤組成物とした。
〔粘着剤層15付き収縮性フィルム11の製造〕
上記で作成した粘着剤組成物を、剥離フィルム(リンテック社製、SP-3811厚さ38μ
m)上に乾燥後の厚さ10μmとなるように塗布し、100℃で1分間加熱した。乾燥した粘着剤面に、収縮性ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ40μm、120℃における収縮率が50%)を、該ポリエチレンテレフタレートフィルムに貼合し、粘着剤層を有する収縮性フィルムを得た。この積層された粘着剤を有する収縮フィルムを円形に型抜き加工し、160mmの内径の空孔を有しリングフレーム固定用粘着剤層15を有する収縮性フィルムを得た。
〔チップ体製造用の粘着シート10の製造〕
市販のダイシング粘着シート(リンテック社製、Adwill D-675、基材フィルムの厚み80μm、ヤング率215MPa)を用意した。この粘着シートから剥離フィルムを剥離して露出した粘着面上に、上記で作成した粘着剤層15付きの収縮性フィルム11の、収縮フィルム11側を積層し、露出した粘着面に再度剥離フィルムを貼合した。収縮フィルム11に設けた空孔に同心円になるように207mm径の円形に剥離フィルムを除いた層を型抜きして、図2に示す構成のチップ体製造用の粘着シート10を得た。
〔チップ体の製造〕
ワークとして、厚さ350μmに研削されたシリコンウエハ(6インチ径)を用意し、
上記で作成した粘着シート10のダイシング粘着シート側の粘着剤面(空孔の位置)にウエハを貼着し、端部に位置するリングフレーム固定用粘着剤層15面上にリングフレーム(ディスコ社製、2-6-1)を貼着した。これをダイシング装置(東京精密社製、AWD4000B
)で10mm×10mmのサイズで、ウエハ厚を20μm切り残すように初期のブレード位置
を設定してハーフカットを行い、これを切断予定ラインに沿って切断起点を有するワークとした。
【0096】
続いて、ワーク付き粘着シートを100℃に加熱したヒーター付きテーブルに搭載し、1分間保持した。
収縮フィルムが収縮し、切り残されたハーフカットラインが全領域で割断し、自動的にチップが形成した。チップの割断面を目視で観察したが、特に問題は見られなかった。
(実施例2)
〔粘接着剤23の作製〕
アクリルポリマー〔アクリル酸ブチル55重量部とアクリル酸メチル10重量部とメタクリル酸グリシジル20重量部とアクリル酸2−ヒドロキシエチル15重量部とを共重合してなる重量平均分子量800,000の共重合体〕10重量部と、エポキシ樹脂〔液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)社製)、エポキシ当量:180〜200)22重量
部と、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂((エピコート1055(ジャパンエポキシレジン(株)社製)、エポキシ当量:800〜900)44重量部と、o-ク
レゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN−104S(日本化薬(株)社製)、エポ
キシ当量:210〜230)14重量部との混合物)80重量部と、熱活性型潜在性硬化剤〔ジシアンジアミド1重量部と、2-フェニル-4,5- ヒドロキシメチルイミダゾール1重量部の混合物〕2重量部と、エネルギー線重合化合物〔ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〕10重量部と、ベンゾフェノン系光重合開始剤〔イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ社製)〕0.3重量部と、イソシアネート系架橋剤〔コロネートL(日本ポリウレタン工業(株))〕
0.3重量部と、メチルエチルケトンを固形濃度が50%になるように混合して、粘接着剤組成物を作製した。
【0097】
上記の粘接着組成物を剥離フィルム(リンテック社製、SP-3811)上に製膜した後、厚
み0.1mmまで積層し、UV照射装置(リンテック社製、RAD2000m/8)で紫外線硬化させたサンプルを作成した。このサンプルのJIS−K7127における破断伸度は55%であり、破断応力は680N/cm2であった。
〔粘接着剤層23付き伸張可能なフィルム21の製造〕
上述のように作製した粘接着剤組成物を、剥離フィルム(SP-3811)上に乾燥後の厚さ
10μmとなるように塗布し、100℃で1分間加熱した。次いで、伸張可能なフィルムとしてエチレン−メタクリル酸共重合フィルム(厚さ100μm、ヤング率215MPa、表面張力35mN/m)を粘接着剤層に貼合し、粘接着剤層23付きの伸張可能なフィルム11を製造した。
〔チップ体固着用粘接着シートの製造〕
実施例1と同様にして、160mmの内径の空孔を有しリングフレーム固定用粘着剤層15を有する収縮性フィルム21と同じものを用意した。
【0098】
上記の工程で得られた粘接着剤層23付きの伸張可能なフィルム11から剥離フィルムを剥離して露出した粘接着剤面上に、用意した粘着剤層15付きの収縮性フィルム21の、収縮フィルム21側を積層し、露出した粘着面に再度剥離フィルムを貼合した。収縮フィルム21に設けた空孔に同心円になるように207mm径の円形に剥離フィルムを除いた層を型抜きして、図2に示す構成のチップ体固着用の粘接着シート20を得た。
〔デバイスの製造〕
ワークとして、未研磨のシリコンウエハ(6インチ径)を用意し、これを10mm×10mmのサイズで切り込み深さが120μmとなるようにハーフカットダイシングし、ダイシング面に保護用粘着テープを貼付した後、裏面を研削して厚さ100μmとし、ウエハを
チップ化した(先ダイシング)。
【0099】
上記で作成した粘接着シート20の粘接着剤面(空孔の位置)にチップ化されたウエハ
を貼着し、端部に位置するリングフレーム固定用粘着剤層15面上にリングフレーム(ディスコ社製、2-6-1)を貼着した。次に、チップ上から保護用粘着シートを剥離し、伸長
可能なフィルム側より粘接着シート20の粘接着剤層に対しUV照射装置(RAD2000m/8)で紫外線照射し紫外線硬化を行った。
【0100】
続いて、ワーク付き粘接着シートを100℃に加熱したヒーター付きテーブルに搭載し、1分間保持した。
収縮フィルムが収縮してチップ間が離間し、ダイシングラインに沿った粘接着剤層が全領域で破断した。チップをピックアップをすると、チップ裏面の全面に粘接着剤層が形成しており、粘接着剤層の破断面を目視で観察したが、特に問題は見られなかった。ピックアップしたチップを粘接着剤層により回路基板へボンディングすることも問題なく行うことができた。
(実施例3)
実施例2と同様にしてチップ体固着用の粘接着シート20を用意した。
〔デバイスの製造〕
ワークとして、厚さ350μmに研削されたシリコンウエハ(6インチ径)を用意し、
粘接着シート20の粘接着剤面(空孔の位置)にウエハを貼着し、端部に位置するリングフレーム固定用粘着剤層15面上にリングフレーム(ディスコ社製、2-6-1)を貼着した
。これをダイシング装置(東京精密社製、AWD4000B)で10mm×10mmのサイズで、ウエハを20μmの厚さ分を切り残すように初期のブレード位置を設定してハーフカットを行
い、これを切断予定ラインに沿って切断起点を有するワークとした。
【0101】
次に、伸長可能なフィルム側より粘接着シート20の粘接着剤層に対しUV照射装置(RAD2000m/8)で紫外線照射し紫外線硬化を行った。続いて、ワーク付き粘接着シートを100℃に加熱したヒーター付きテーブルに搭載し、1分間保持した。
【0102】
収縮フィルムが収縮して、切り残されたハーフカットラインが全領域で割断するとともに、粘接着剤層も全領域で破断していた。チップをピックアップすると、チップ裏面の全面に粘接着剤層が形成しており、チップの割断面、粘接着剤層の破断面を目視で観察したが、特に問題は見られなかった。ピックアップしたチップを粘接着剤層により回路基板へボンディングすることも、問題なく行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係る製造方法の一工程を示す斜視図である。
【図2】図1のa−a線断面図である。
【図3】本発明に係る製造方法の一工程を示す。
【図4】本発明に係る製造方法の一工程を示す。
【図5】本発明に係る製造方法の一工程を示す。
【図6】本発明に係る製造方法の一工程を示す。
【図7】本発明に係る製造方法の一工程を示す。
【図8】本発明に係る製造方法の一工程を示す。
【図9】本発明に係る製造方法の一工程を示す。
【図10】本発明に係る製造方法の一工程を示す。
【符号の説明】
【0104】
1…ワーク
2…切断予定ライン
3…切断起点
4…リングフレーム
6…チップ(チップ群)
10…粘着シート
11…収縮性フィルム
12…伸長可能なフィルム
13…粘着剤層
14…接着剤層
15…粘着剤層
20…チップ体固着用粘接着シート
21…収縮性フィルム
22…伸長可能なフィルム
23…粘接着剤層








【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の収縮性フィルムと、伸長可能なフィルムと、粘着剤層とからなる粘着シートに、切断予定ラインに沿って形成された切断起点を有するワークが貼着された状態とする工程と、
該粘着シートの端部を固定する工程と、
前記収縮性フィルムを収縮させて前記切断起点にストレスを加え、前記ワークをチップ毎に割断する工程とを含むチップ体の製造方法。
【請求項2】
少なくとも1層の収縮性フィルムと、伸長可能なフィルムと、該伸長可能なフィルム上に該伸長可能なフィルムから剥離可能に積層された脆質状体の粘接着剤層とからなるチップ体固着用粘接着シートに、個片化されたチップ群が貼着された状態とする工程と、
チップ体固着用粘接着シートの端部を固定する工程と、
前記収縮性フィルムを収縮させてチップ間の間隔を離間するとともに該粘接着シートの粘接着剤層をチップと略同形状に破断する工程と、
チップに粘接着剤層を同伴したままピックアップを行い、粘接着剤層を介してボンディングを行う工程を含むデバイスの製造方法。
【請求項3】
少なくとも1層の収縮性フィルムと、伸長可能なフィルムと、該伸長可能なフィルム上に該伸長可能なフィルムから剥離可能に積層された脆質状体の粘接着剤層とからなるチップ体固着用粘接着シートに、切断予定ラインに沿って形成された切断起点を有するワークが貼着された状態とする工程と、
チップ体固着用粘接着シートの端部を固定する工程と、
前記収縮性フィルムを収縮させて前記切断起点にストレスを加え、前記ワークをチップ毎に割断すると同時に、該粘接着シートの粘接着剤層をチップと略同形状に破断する工程と、
チップに粘接着剤層を同伴したままピックアップを行い、粘接着剤層を介してボンディングを行う工程を含むデバイスの製造方法。
【請求項4】
少なくとも1層の収縮性フィルムと、伸長可能なフィルムと、該伸長可能なフィルム上に該伸長可能なフィルムから剥離可能に積層された脆質状体の粘接着剤層とからなるチップ体固着用粘接着シート。
【請求項5】
収縮性フィルムが、粘接着剤層の周端部に配置されてなる請求項4に記載のチップ体固着用粘接着シート。
【請求項6】
伸長可能なフィルムの室温(23℃)でのヤング率が500MPa以下であり、粘接着剤
層の破断伸度が1〜350%であり、破断応力が1000N/cm2以下である請求項4また
は5に記載のチップ体固着用粘接着シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−203133(P2006−203133A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15694(P2005−15694)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】